JP5035922B2 - 口部に中栓を装着するガラスびん - Google Patents

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Description

本発明は、各種飲料、調味料等の容器として使用される、口部に中栓と外蓋を装着するガラスびんに関する。
中栓はびん口部に対し機械的に上方から一挙に打栓されるため、内容物である食用油、調味料、飲料等を消費した後にこれを容器から取り外すことは極めて困難であった。昨今は、びんを極力リターナブル化し、また、びんとプラスチック製の中栓とを分別回収し、資源をリサイクルする要請が高まり、下記特許文献1に示されるように、びん口部のリップ部直下に栓体を取り外すための縦溝を設け、中栓をびんから取り外しやすくしたガラスびんが提案されている。
また、下記特許文献2には、リップ部下方の傾斜面が水平面となす角度を30°〜50°とすることで、中栓を容易に取り外すことができ、かつ、中栓が不用意に外れることがない旨が開示されている。この文献が提案されて以降、口部に中栓を装着するほとんどのガラスびんのリップ部下の傾斜面の水平面となす角度は30°〜33°程度になっている。
また、中栓を容易に取り外すための器具(取外し具)が、下記特許文献3、4などに開示されている。
実開昭56−84912号公報 特開平11−348953号公報 特開2003−237892号公報 特開2003−2395号公報
近年、消費者又はリサイクル業者が器具(取外し具)を用いて中栓をガラスびんから取り外す際、ガラスびん口部のリップ部が割れ、ケガをする事故が起きている。
出願人は、取外し具による中栓の取り外しにおいて、ガラスびん口部のリップ部が割れる原因を研究した結果、次のようなことが判明した。
例えば、図1に示すような取外し具3で中栓2をガラスびん1から取り外す場合、先ず図1に示すように取外し具3の先端部31を、その凹形部32が中栓を跨ぐように中栓に載せ、爪33を中栓2の外筒壁20下端に引っ掛ける。この状態では、爪33の位置は図2のようになっている。なお、図中符号17は外蓋を装着するための螺条、22は注出筒、23は内筒壁である。
図1の状態から矢印Aの方向に柄30を持って力を入れると、中栓2と取外し具の先端部31が接触する支点において、矢印B方向の力が生じ、中栓に対して取外し具の先端部31が矢印B方向にスリップ移動する。
その結果、図3に示すように、爪33の先端がびんの内側方向(矢印C方向)に変位してリップ部下の環状凹部11に入り込み、この状態で爪33の先端に矢印D方向の大きな力が加わるため、リップ部が破損するのである。
本発明は、取外し具を用いて中栓をガラスびんから取り外す際、ガラスびん口部のリップ部が割れるのを防止することを課題とする。
本発明は、口部外面上端部に中栓外筒壁の内周面が接触するリップ部が、その下方に中栓外筒壁内周面下端部に形成された環状突条に係合する環状凹部が形成され、該環状凹部は内側方向に向かって下降傾斜する傾斜面を有し、口部の軸線を通る縦断面において、前記リップ部の縦方向の直線の下端に形成された外に凸のアール部の下方に前記傾斜面の直線が続き、該傾斜面の直線が水平面となす角度が5°〜6°であることを特徴とする口部に中栓を装着するガラスびんである
口部の軸線を通る縦断面において傾斜面の直線が水平面となす角度(以下、単に「傾斜面の角度」という)を55°以上にすると、図1に示す取外し具で中栓を取り外したときにリップ部が欠ける確率が従来の1/10以下となる。これは、図3の状態から爪33を矢印D方向に上昇させたときにガラスに発生する応力が、従来(傾斜面の角度32.5°の場合)に比べて54%になるためと思われる。
特に、傾斜面の角度を58°以上とすると、図3の状態から爪33を上昇させたときにガラスに発生する応力が、従来(傾斜面の角度32.5°の場合)に比べてほぼ半分以下となり、爪は完全に傾斜面12の表面を滑って上昇し、リップが欠けるおそれはほとんどなくなる。
傾斜面の角度が大きくなると中栓が抜けやすくなるが、消費者が使用するに際して中栓が不用意に抜けることは避けなければならない。いろいろな使用状態を勘案した結果、消費者の通常の使用に際して中栓に最も大きな抜ける力が作用するのは、中栓のプルリングを引っ張って注出筒の内側の注出口を開口するときである。
傾斜面12の角度が65°以下の場合、中栓のプルリングを引っ張って注出筒の内側の注出口を開口するときに中栓がびん口から抜けることが無く、したがって、消費者の通常の使用に際して中栓が不用意にびん口から抜けるおそれがない。
これは、本発明のガラスびんの場合、口部の軸線を通る縦断面において、リップ部10の外側面に縦方向の直線部分を有し、中栓2の外筒壁20がこの直線部分と干渉するので、その摩擦力により中栓の抜けが防止されるからである。
傾斜面12の角度が65°を超えると、傾斜面12と中栓外筒壁の環状突条21が干渉する可能性があり、好ましくない。
傾斜面12の角度を62°以下にすると、傾斜面12と中栓外筒壁の環状突条21が干渉するおそれは全くなくなり、また、実用上中栓が不用意に抜けるおそれも全くなく、非常に好ましい。
本発明のガラスびんは、取外し具を用いて中栓をガラスびんから取り外す際、ガラスびん口部のリップ部が割れるのを防止することができる。
また、消費者の通常の使用に際して中栓が不用意にびん口から抜けるおそれもない。
びん口部に取外し具を当てた状態の説明図である。 図1の爪付近の拡大図である。 爪が内側方向に移動した状態の説明図である。 実施例のガラスびんの口部断面形状の説明図である。 実施例のガラスびんに取り外し治具による力Fが作用した状態の説明図である。 従来のガラスびんに取り外し治具による力Fが作用した状態の説明図である。 傾斜面に直角に負荷力が作用した場合のガラス表面に生じる応力分布の説明図である。
図4に実施例のガラスびん1の口部断面形状(軸線を通る縦方向断面)を示す。
天面15の周縁のアール部16に続いて、縦断面において縦方向の直線をなすリップ部10(の外周面)が形成されている。リップ部10には、中栓2の外筒壁20の内周面が接触する。
リップ部10の下方には、中栓2の外筒壁20内周面下端部に形成された環状突条21に係合する環状凹部11が形成されている。
環状凹部11は、内側に向かって(下方ほど外径が減少するように)下降傾斜した傾斜面12を有する。縦断面において、傾斜面12は直線であり、リップ部10の縦方向の直線の下端に形成された外に凸のアール部13(半径0.5mm)の下方に続いて形成されている。本実施例の場合、傾斜面12の角度θは60°である。
傾斜面12の下方は、外側が凹のアール部14に続いている。
図5は実施例のガラスびん(θ=60°)に取外し具による力Fが作用した状態の説明図、図6は従来例のガラスびん(θ=32.5°)における同様図である。
傾斜面12に取り外し治具による力Fが作用した場合、力Fは、傾斜面12に平行なスリップ力Sと、傾斜面12に垂直な負荷力Eに分解できる。
本実施例の場合、取外し具により作用する力Fの多くはスリップ力Sとなり、爪33は傾斜面12に沿ってスリップしやすくなる。
一方、リップ部欠けの原因となるガラスへの負荷力Eは、従来例に比べて約40%減少する。
上記の実施例及び従来例について、傾斜面に直角に1kgfの負荷力Eが作用した場合のガラス外表面に生じる応力分布をコンピュータ解析により求めた結果を図7に示す。同図において、色の黒い部分ほど大きな引張応力が作用している。負荷力が作用している部分は圧縮応力が発生して白く表されており、その周囲の濃い黒の部分に最大(引張)応力が発生している。
最大応力が、実施例は23MPa、従来例は29MPaとなり、同じ負荷力が作用した場合に実施例は従来例に比べて最大応力が約20%減少することがわかった。
実施例は従来例に比べて、負荷力が約4割減少し、負荷力が同じであっても発生応力が約2割減少することから、傾斜面に取外し具による力Fが作用した場合、ガラスに発生する応力は半分以下になる。
以上のことから、傾斜面の角度を60°とした実施例は、取外し具を用いて中栓をガラスびんから取り外す際、ガラスびん口部のリップ部が割れるのをほぼ完全に防止することができる。
なお、各図において、便宜上、中栓を、取り外すに際の変形を無視して表示しているが、中栓はポリエチレンなどの軟質プラスチック製であるので、取外しに際して大きく変形する。
1 ガラスびん
10 リップ部
11 環状凹部
12 傾斜面
13 アール部
14 アール部
15 天面
16 アール部
17 螺条
2 中栓
20 外筒壁
21 環状突条
22 注出筒
23 内筒壁
3 取外し具
30 柄
31 先端部
32 凹形部
33 爪

Claims (1)

  1. 口部外面上端部に中栓外筒壁の内周面が接触するリップ部が、
    その下方に中栓外筒壁内周面下端部に形成された環状突条に係合する環状凹部が形成され、
    該環状凹部は内側方向に向かって下降傾斜する傾斜面を有し、
    口部の軸線を通る縦断面において、前記リップ部の縦方向の直線の下端に形成された外に凸のアール部の下方に前記傾斜面の直線が続き、
    該傾斜面の直線が水平面となす角度が5°〜6°であることを特徴とする口部に中栓を装着するガラスびん。
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