以下、図面に沿い、本発明の実施形態を参考例も踏まえ説明する。図1〜図3は本発明の車両用変速機の第1参考例を示す。図1にそのギヤトレイン構成をスケルトンで示すように、この変速機は、複数の回転要素11〜18を有し、これら回転要素を通る並列な動力伝達流れの選択により複数の変速段を達成する主変速機(実施形態及び参考例の説明において、M/T部という)Mと、プラネタリギヤ20からなる差動機構(同じく、プラネタリ部という)Sと、プラネタリ部Sの2つの要素21,22をM/T部Mの異なる回転要素に連結する手段として第1軸1と第2軸2を備えることを構成の基本とする。
この形態の場合、M/T部Mは、その回転要素として複数の常時噛合式の歯車対11〜18を包含し、回転要素を通る動力伝達流れを選択する2つのドッグクラッチ31,32を有する。このM/T部Mは、内外二重の第1軸1及び第2軸2をプラネタリ部Sに連結する入力手段とし、それらの上の回転要素としての歯車、すなわち各ドライブギヤ11,13,15,17から出力軸3上の各ドリブンギヤ12,14,16,18に平行軸で動力を伝達する構成とされている。第1軸1上の第2速及び第4速用のドライブギヤ13,17は第1軸1に回転自在に支持され、それらの間に配置されたドッグクラッチ31の軸方向移動により第1軸1に選択的に連結可能とされている。これら第2速及び第4速用のドライブギヤ13,17と対をなすそれぞれのドリブンギヤ14,18は、それぞれ出力軸3に一体回転可能に連結されている。第2軸2上の第1速及び第3速用のドライブギヤ11,15とリバース用のドライブギヤ19は、第2軸2に一体回転可能に連結されている。これら第1速及び第3速用のドライブギヤ11,15と対をなすそれぞれのドリブンギヤ12,16は、出力軸3上に回転自在に支持され、それらの間に配置されたドッグクラッチ32の軸方向移動により出力軸3に選択的に連結可能とされている。また、リバース用のドライブギヤ19とドッグクラッチ32の外周歯で構成されるリバース用のドリブンギヤは、カウンタギヤ30を介して相互に噛合い、ドッグクラッチ32の中立位置においてリバースギヤ列19,30,32を通る動力伝達を可能としている。
プラネタリ部Sのプラネタリギヤ20は、サンギヤ21と、リングギヤ23と、サンギヤ21とリングギヤ23に個々に噛合い且つ相互に噛合うピニオン24,25を有するダブルピニオン構成とされている。プラネタリギヤ20のサンギヤ21は、第2軸2に常時連結され、この第2軸2が第1の入力手段の一方を構成する第2クラッチ(C−2)を介して入力軸4に連結可能とされ、ピニオン24,25を支持するキャリア22は、第1軸1に常時連結されると共に、第1の入力手段の他方を構成する第1クラッチ(C−1)を介して入力軸4に連結可能とされている。リングギヤ23は、第2の入力手段の一部を構成する第3クラッチ(C−3)を介して入力軸4に連結可能とされている。そして、プラネタリ部Sの入力軸4は、エンジン(E/G)のフライホイールダンパ(F/W)に連結されている。
こうした構成からなる変速機は、図2にその作動を図表化して示すように、M/T部Mの第1歯車対11,12(以下、この実施形態及び参考例の説明において、第1歯車対を<1>で表す)をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)を係合することで第1速(1st)を達成する。この状態で、エンジン(E/G)の回転がプラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2からM/T部Mのドライブギヤ11に入力され、第1歯車対<1>で減速され、ドッグクラッチ32を経て出力軸3に伝達される。このときの変速比は、第1歯車対<1>のギヤ比に従う第1速の変速比となり、この変速機の最低速段となる。
次に、第2速(2nd)は、M/T部Mの第1歯車対<1>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結すると共に、第2歯車対13,14(同様に<2>で表す)をドッグクラッチ31で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第1速とする1−2変速で生じる場合、両ドッグクラッチ31,32の係合により第1歯車対<1>と第2歯車対<2>が共に出力軸3に連結された状態となることで、第1歯車対<1>のドライブギヤ11と第2歯車対<2>のドライブギヤ13に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第1歯車対<1>のギヤ比と第2歯車対<2>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第1速での走行状態で生じるとすると、サンギヤ21の回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、キャリア22の回転はそれより減速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第2クラッチ(C−2)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸2経由で両歯車対<1>,<2>を介して出力軸3に伝達されて第2速の変速段が達成される。
第3速(3rd)は、M/T部Mの第2歯車対<2>をドッグクラッチ31で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第1クラッチ(C−1)経由でキャリア22に入力され、その回転がドッグクラッチ31を経て第2歯車対<2>に伝達され、そこで第2歯車対<2>のギヤ比で減速されて出力軸3に伝達される。
第4速(4th)は、M/T部Mの第2歯車対<2>をドッグクラッチ31で出力軸3に連結すると共に、第3歯車対15,16(同じく<3>で表す)をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第3速とする3−4変速で生じる場合、両ドッグクラッチ31,32の係合により第2歯車対<2>と第3歯車対<3>が共に出力軸3に連結された状態となることで、第2歯車対<2>のドライブギヤ13と第3歯車対<3>のドライブギヤ15に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第2歯車対<2>のギヤ比と第3歯車対<3>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第3速での走行状態で生じるとすると、キャリア22の回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、サンギヤ21の回転はそれより増速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第1クラッチ(C−1)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸2経由で両歯車対<2>,<3>を介して出力軸3に伝達されて第4速の変速段が達成される。
第5速(5th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転が第3歯車対<3>に伝達され、そこで第3歯車対<3>のギヤ比で増速され、ドッグクラッチ32を経て出力軸3に伝達される。
第6速(6th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結すると共に、第4歯車対17,18(同じく<4>で表す)をドッグクラッチ31で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第5速とする5−6変速で生じる場合、両ドッグクラッチ31,32の係合により第3歯車対<3>と第4歯車対<4>が共に出力軸3に連結された状態となることで、第3歯車対<3>のドライブギヤ15と第4歯車対<4>のドライブギヤ17に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第3歯車対<3>のギヤ比と第4歯車対<4>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第5速での走行状態で生じるとすると、キャリア22の回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、サンギヤ21の回転はそれより増速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第2クラッチ(C−2)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸2経由で両歯車対<3>,<4>を介して出力軸3に伝達されて第6速の変速段が達成される。
第7速(7th)は、M/T部Mの第4歯車対<4>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第1クラッチ(C−1)経由で第1軸1に入力され、その回転がドッグクラッチ31を経て第4歯車対<4>に伝達され、そこで第4歯車対<4>のギヤ比で増速されて出力軸に伝達される。
なお、リバース(Rev)は、M/T部Mのドッグクラッチ32を中立として、リバースギヤ列19,30を出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転がリバースギヤ列19,30で減速且つカウンタギヤ30経由で前記各変速段とは逆転されて出力軸3に伝達される。
以上の各変速段達成の経緯から分かるように、各奇数の変速段がプラネタリギヤ20の変速要素を変速に関与しない単なる動力伝達部材すなわち動力通過部材として達成されるのに対して、各偶数の変速段は、プラネタリギヤ20の変速要素を機能させて達成される。しかも、これら各偶数の変速段は、それを挟む奇数の変速段の達成時に連結される2つの歯車対の同時連結により達成される。
このようにして達成される各変速段におけるプラネタリギヤ20の3つの変速要素の挙動を図3に速度線図で示す。この速度線図は、一般的な自動変速機の入力回転数を基準(速度比1)として変速特性を示す表記形式と異なり、出力軸3に伝達される出力回転数を基準(速度比1)として、各変速要素であるサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの速度比を●印で変速段を表す数字を白抜きして表しており、これらの速度比はすなわちエンジン回転数の速度比と同義である。ちなみに第1速におけるエンジン速度比が最も高いのは、エンジン回転に対して変速機の減速比が最も大きいことを表す。また○印で囲った数字は、その変速段において連結されるM/T部Mの第1〜第4歯車対を表す。
この速度線図から分かるように、偶数の変速段は、M/T部Mの第1〜第4歯車対<1>〜<4>により本来達成可能な奇数変速段に対する中間段としてのギヤ比で、隣り合う両偶数変速段を達成する歯車対による同時動力伝達により達成されるもので、隣り合う奇数の変速段に対する経過段としても機能するものである。したがって、この変速機によれば、従来形式の常時噛合式の4速変速機に対して、歯車対を増やさずに各変速段の中間に、ギヤ比ステップを密にする形態で3速の変速段を付加することができる。
次に示す図4及び図5は、本参考例の変速機と、従来の自動M/Tによる車両加速時の変速のタイムチャートを示す。図5に示す従来のものでは、各変速段間(図には第1速(1st)〜第3速(3rd)までを示す)にニュートラル(N)を通る際のトルク抜けによる加速度0の期間が生じ、そのときに惰行による速度増加の平坦期間が生じるのに対して、本参考例のものでは、シフト中も前変速段を達成していた何れかの歯車対による動力伝達状態が継続することで、変速の間にニュートラル期間が存在しないため、トルク抜けによる加速度0の期間が生じず、速度増加も連続した滑らかなものとなる。かくして、本参考例の変速機によれば、手動変速機に不可避の変速時のトルク抜けによる違和感の発生をなくすことができる。
この第1参考例におけるプラネタリ部SとM/T部Mの連結手段(第1軸1及び第2軸2)及び入力手段(第1クラッチ及び第2クラッチ)による連結関係は、種々に変更することができる。次に示す図6〜図8はこうした変形例を示す。図6に示す変形例は、第1参考例に対してサンギヤ21とキャリア22の第1軸1と第2軸2に対する連結関係のみを実質的に変更した例である。この変形例では、サンギヤ21が第1軸1に連結され、キャリア22が第2軸2に連結されている。各クラッチの位置は、この変更に合わせて入替わっているが、それらによる連結関係は特に変更されていない。また、図7に示す変形例は、先の変形例に対して第2クラッチ(C−2)の位置だけを変更したものである。次の図8に示す変形例は、第1参考例に対して接続関係を一切変更せずに、第1クラッチ(C−1)と第3クラッチ(C−3)の位置だけを入替えたものである。
また、前記第1参考例では、プラネタリ部Sをダブルプラネタリ構成としたが、これをシングルプラネタリ構成に変更することもできる。次に示す図9及び図10はこうした変形例を示す。図9に示す変形例は、シングルプラネタリギヤ20のサンギヤ21を第1軸1に連結すると共に、第1クラッチ(C−1)を介して入力軸4に連結可能とし、リングギヤ23を第2軸2に連結すると共に、第2クラッチ(C−2)を介して入力軸4に連結可能とし、キャリア22を第3クラッチ(C−3)を介して入力軸4に連結可能としたものである。また、図10示す変形例は、シングルプラネタリギヤ20のサンギヤ21を第2軸2に連結すると共に、第2クラッチ(C−2)を介して入力軸4に連結可能とし、リングギヤ23を第1軸1に連結すると共に、第1クラッチ(C−1)を介して入力軸4に連結可能とし、キャリア22を第3クラッチ(C−3)を介して入力軸4に連結可能としたものである。
次に、図11〜図13は、本発明の第2参考例を示す。この形態は、図11にスケルトンでギヤトレインを示すように、第1参考例に対してプラネタリ部Sの構成を変更したものである。この形態では、プラネタリ部Sのプラネタリギヤ20のキャリア22が第1クラッチ(C−1)を介して第1軸1に連結可能とされ、サンギヤ21が第2クラッチ(C−2)を介して第2軸2に連結可能とされると共に、第3クラッチ(C−D)を介して入力軸4に連結可能とされ、リングギヤ23が入力軸4に常時連結されている。この形態における第3クラッチ(C−D)は、第1参考例やその変更例の場合と異なり、プラネタリギヤ20のサンギヤ21とリングギヤ23を連結するダイレクトクラッチを構成している。
こうした構成からなる変速機は、図12にその作動を図表化して示すように、M/T部Mの第1歯車対11,12(以下、この実施形態及び参考例の説明においても、第1歯車対を<1>で表す)をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sのダイレクトクラッチ(C−D)を係合することでプラネタリギヤ20を一体回転させると共に第2クラッチ(C−2)を係合することで第1速(1st)を達成する。この状態で、エンジン(E/G)の回転がプラネタリ部Sのダイレクトクラッチ(C−D)と第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2からM/T部Mのドライブギヤ11に入力され、第1歯車対<1>で減速され、ドッグクラッチ32を経て出力軸3に伝達される。このときの変速比は、第1歯車対<1>のギヤ比に従う第1速の変速比となり、この変速機の最低速段となる。
次に、第2速(2nd)は、M/T部Mの第1歯車対<1>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結すると共に、第2歯車対13,14(同様に<2>で表す)をドッグクラッチ31で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)と第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第1速とする1−2変速で生じる場合、両ドッグクラッチ31,32の係合により第1歯車対<1>と第2歯車対<2>が共に出力軸3に連結された状態となることで、第1歯車対<1>のドライブギヤ11と第2歯車対<2>のドライブギヤ13に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第1歯車対<1>のギヤ比と第2歯車対<2>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第1速での走行状態で生じるとすると、プラネアリギヤ20は直結状態であるため、サンギヤ21、キャリア22及びリングギヤ23は全てエンジン回転と等しい回転となっている。この状態でダイレクトクラッチ(C−D)を解放し、第1クラッチ(C−1)の係合に移行して、サンギヤ21の空転が許容されるようになることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸経由で両歯車対<1>,<2>を介して出力軸3に伝達されて第2速の変速段が達成される。
第3速(3rd)は、M/T部Mの第2歯車対<2>をドッグクラッチ31で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転がキャリア22から第1クラッチ(C−1)経由で第1軸1に入力され、その回転がドッグクラッチ31を経て第2歯車対<2>に伝達され、そこで第2歯車対<2>のギヤ比で減速されて出力軸3に伝達される。
第4速(4th)は、M/T部Mの第2歯車対<2>をドッグクラッチ31で出力軸3に連結すると共に、第3歯車対15,16(同じく<3>で表す)をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)と第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第3速とする3−4変速で生じる場合、両ドッグクラッチ31,32の係合により第2歯車対<2>と第3歯車対<3>が共に出力軸3に連結された状態となることで、第2歯車対<2>のドライブギヤ13と第3歯車対<3>のドライブギヤ15に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第2歯車対<2>のギヤ比と第3歯車対<3>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第3速での走行状態で生じるとすると、プラネアリギヤ20は直結状態であるため、サンギヤ21、キャリア22及びリングギヤ23は全てエンジン回転と等しい回転となっている。この状態でダイレクトクラッチ(C−D)を解放し、第2クラッチ(C−2)の係合に移行して、プラネアリギヤ20は直結状態が解除されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸2経由で両歯車対<2>,<3>を介して出力軸3に伝達されて第4速の変速段が達成される。
第5速(5th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転がダイレクトクラッチ(C−D)と第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転が第3歯車対<3>に伝達され、そこで第3歯車対<3>のギヤ比で増速され、ドッグクラッチ32を経て出力軸3に伝達される。
第6速(6th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結すると共に、第4歯車対17,18(同じく<4>で表す)をドッグクラッチ31で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)と第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第5速とする5−6変速で生じる場合、両ドッグクラッチ31,32の係合により第3歯車対<3>と第4歯車対<4>が共に出力軸3に連結された状態となることで、第3歯車対<3>のドライブギヤ15と第4歯車対<4>のドライブギヤ17に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第3歯車対<3>のギヤ比と第4歯車対<4>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第5速での走行状態で生じるとすると、プラネアリギヤ20は直結状態であるため、サンギヤ21、キャリア22及びリングギヤ23は全てエンジン回転と等しい回転となっている。この状態でダイレクトクラッチ(C−D)を解放し、第1クラッチ(C−1)の係合に移行して、プラネアリギヤ20は直結状態が解除されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸経由で両歯車対<3>,<4>を介して出力軸3に伝達されて第6速の変速段が達成される。
第7速(7th)は、M/T部Mの第4歯車対<4>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第1クラッチ(C−1)経由で第1軸1に入力され、その回転がドッグクラッチ31を経て第4歯車対<4>に伝達され、そこで第4歯車対<4>のギヤ比で増速されて出力軸3に伝達される。
なお、リバース(Rev)は、M/T部Mのドッグクラッチ32を中立として、リバースギヤ列19,30を出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転がリバースギヤ列19,30で減速且つカウンタギヤ30経由で前記各変速段とは逆転されて出力軸3に伝達される。
以上の各変速段達成の経緯から分かるように、この第2参考例においても、各奇数の変速段がプラネタリギヤ20の変速要素を変速に関与しない単なる動力伝達部材として達成されるのに対して、各偶数の変速段は、プラネタリギヤ20の変速要素を機能させて達成される。しかも、これら各偶数の変速段は、それを挟む奇数の変速段の達成時に連結される2つの歯車対の同時連結により達成される。
このようにして達成される各変速段におけるプラネタリギヤ20の3つの変速要素の挙動を図13に速度線図で示す。この速度線図も、一般的な自動変速機の入力回転数を基準(速度比1)として変速特性を示す表記形式と異なり、出力軸3に伝達される出力回転数を基準(速度比1)として、各変速要素であるサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの速度比を●印で変速段を表す数字を白抜きして表しており、これらの速度比はすなわちエンジン回転数の速度比と同義である。ちなみに第1速におけるエンジン速度比が最も高いのは、エンジン回転に対して変速機の減速比が最も大きいことを表す。また○印で囲った数字は、その変速段において連結されるM/T部Mの第1〜第4歯車対を表す。
この速度線図から分かるように、偶数の変速段は、M/T部Mの第1〜第4歯車対<1>〜<4>により本来達成可能な奇数変速段に対する中間段としてのギヤ比で、隣り合う両偶数変速段を達成する歯車対による同時動力伝達により達成されるもので、隣り合う奇数の変速段に対する経過段としても機能するものである。したがって、この第2参考例の変速機によっても、従来形式の常時噛合式の4速変速機に対して、歯車対を増やさずに各変速段の中間に、ギヤ比ステップを密にする形態で3速の変速段を付加することができる。
このロックアップ方式を採るプラネタリ部についても、第1参考例の場合と同様に種々の変更が可能である。図14に示す第1変形例は、第2参考例に対してプラネタリギヤ20のキャリア22とサンギヤ21の第1軸1と第2軸2への連結関係を入替えたものである。すなわち、この例では、リングギヤ23を入力軸4に連結し、ダイレクトクラッチ(C−D)がリングギヤ23とサンギヤ21を直結する構成としてている点はそのままで、サンギヤ21を第1クラッチ(C−1)を介して第1軸1に連結し、キャリア22を第2クラッチ(C−2)を介して第2軸2に連結している。
次の図15に示す第2変形例は、先の第1変形例に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による連結対象をキャリア22とサンギヤ21に変更したものである。また、図16に示す第3変形例は、第2参考例に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による連結対象をキャリア22とサンギヤ21に変更したものである。この場合のダイレクトクラッチ(C−D)は、図17に示す第4変形例のように、プラネタリギヤ20の前側に配置することもできる。
更に図18に示す第5変形例は、第1変形例に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による連結対象をリングギヤ23とキャリア22に変更したものである。また、図19に示す第6変形例は、第2参考例に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による連結対象をリングギヤ23とキャリア22に変更したものである。この場合のダイレクトクラッチ(C−D)は、図20に示す第7変形例のように、プラネタリギヤ20の前側に配置することもできる。
以上の各変形例は、第2参考例に対してプラネタリ部の連結関係を変更したものであるが、プラネタリ部のプラネタリギヤ20をシングルプラネタリとした場合についても、同様の種々の連結関係の変更が可能である。この場合、キャリア22を入力軸4へ常時連結することが前提となる。先ず、図21に示す第8変形例は、シングルプラネタリギヤのリングギヤ23とサンギヤ21との間をダイレクトクラッチ(C−D)で直結可能とするもので、この例では、サンギヤ21が第1クラッチ(C−1)を介して第1軸1に連結可能とされ、リングギヤ23が第2クラッチ(C−2)を介して第2軸2に連結可能とされている。この場合のサンギヤ21とリングギヤ23の第1軸1と第2軸2に対する連結関係を入替えたのが、図22に示す第9変形例である。
次の図23に示す第10変形例は、第8変形例(図21参照)に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による直結要素をキャリア22とサンギヤ21に変更した例である。また、図24に示す第11変形例は、第9変形例(図22参照)に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による直結要素をキャリア22とサンギヤ21に変更した例である。この場合も、図25の第12変形例に示すように、ダイレクトクラッチ(C−D)をプラネタリギヤ20の前側に配置する変更が可能である。
更に図26に示す第13変形例は、第8変形例(図21参照)又は第10変形例(図23参照)に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による直結要素をリングギヤ23とキャリア22に変更した例である。また、図27に示す第14変形例は、第9変形例(図22参照)に対して、ダイレクトクラッチ(C−D)による直結要素をリングギヤ23とキャリア22に変更した例である。この場合も、図28の第15変形例に示すように、ダイレクトクラッチ(C−D)をプラネタリギヤ20に前側に配置する変更が可能である。
以上の各参考例とそれらの各変形例は、専らギヤトレインのプラネタリ部の構成を変更したものであるが、ギヤトレインの構成自体を変更することなく、その制御の変更で、達成される変速段数を変えることもできる。次の図29及び図30に示す第3参考例は、こうした変更の一例を示す。この場合、ギヤトレインとしては、先の第1参考例のものを用いるものとして、図29に示すように、先の形態における第4速を飛ばす変速を行なうことで、前進6速の変速機を構成している。
この場合、飛ばし変速段が介在する第3速と第4速間の変速が、図30に速度線図を示すように不連続(図に破線で示す)となるが、この変速期間中だけM/T部Mの2つの歯車対<2>, <3>を同時に出力軸3に連結しておくことで、プラネタリ部のキャリア21のエンジン回転に対して、サンギヤ21の回転を第3歯車対<3>によるギヤ比分だけ低速で回転させておき、在来の自動変速機のように第1クラッチ(C−1)と第2クラッチ(C−2)の掴み替えによるトルク移管で、トルク抜けを生じさせることなく、変速を行なうことができる。この場合のトルク移管は、予め車両の走行速度に適合した第1軸1と第2軸2間でのトルク移管となり、在来の自動変速機のように回転要素の速度変化を伴うものではないため、それによるイナーシャトルクが生じることなくなされるため、両クラッチの掴み替え制御は、在来の自動変速機のものに比べて単純なものとなる。
次の図31〜図33に示す第4参考例は、先の第1参考例に対して第1軸1と第2軸2を入替えたものである。この形態の場合のプラネタリ部の各クラッチの作動は、第1参考例に対して、第1クラッチ(C−1)と第2クラッチ(C−2)の作動が入れ替わった関係となり、これに伴って、図33に示す速度線図上では、変速段に対するエンジンとの連結要素がキャリア22とサンギヤ21が入れ替わった関係となる点が相違するが、実体的には第1参考例と同様となる。したがって、冗長を避ける意味で、この形態により達成される各変速段の作動説明は省略し、第1参考例の説明における第1クラッチと第2クラッチの相互読み替えと、キャリア22とサンギヤ21の相互読み替えによる参照を以って説明に代える。
次に、図34〜図36は、第5参考例を示す。この形態は、先の第1参考例におけるM/T部Mの第4歯車対<4>をなくして変速機を5速化したものである。この第4歯車対<4>の廃止に伴い、第2歯車対のドライブギヤ13は第1軸1に直接連結され、不要となったドッグクラッチ31は除去されている。このギヤトレインにおける作動は、図35に示すように、当然ながら高速段側の第6速と第7速がなくなり、図36に示す速度線図上でも、それらがなくなっている。プラネタリ部Sの各クラッチとM/T部Mの各ギヤ対の作動により達成される各変速段も第1〜第5速及び後進について全て第1参考例の場合と同様となるので、第1参考例の作動説明の参照を以って、説明に代える。
このようにM/T部Mの構成を簡略化した構成によっても、プラネタリ部Sのプラネタリギヤを多要素化することで7速を達成することができる。図37〜図39は、こうした第6参考例を示す。この第6参考例では、プラネタリギヤが、それを構成する要素として、大径及び小径の2つのサンギヤ21B,21Aと、それらに個々に噛み合い且つ相互に噛み合うロングピニオン25及びショートピニオン24を共に支持するキャリア22と、ロングピニオン25に噛み合うリングギヤ23を有するラビニヨタイプのものに置き換えられている。この形態では、大径サンギヤ21Bが第1軸1に連結され、小径サンギヤ21Aが第2軸2に連結され、全ての回転要素が入力軸4に各クラッチを介して連結可能とされている。すなわち大径サンギヤ21Bは第1クラッチ(C−1)を介して、小径サンギヤ21Aは第2クラッチ(C−2)を介して、キャリア22は第3クラッチ(C−3)を介して、またリングギヤ23は第4クラッチ(C−4)を介して、それぞれ入力軸4に連結可能とされている。
こうした構成からなる変速機は、図38にその作動を図表化して示すように、M/T部Mの第1歯車対11,12(以下、この実施形態及び参考例の説明においても、第1歯車対を<1>で表す)をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)を係合することで第1速(1st)を達成する。この状態で、エンジン(E/G)の回転がプラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2からM/T部Mのドライブギヤ11に入力され、第1歯車対<1>で減速され、ドッグクラッチ32を経て出力軸3に伝達される。このときの変速比は、第1歯車対<1>のギヤ比に従う第1速の変速比となり、この変速機の最低速段となる。
次に、第2速(2nd)は、M/T部Mの第1歯車対<1>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第4クラッチ(C−4)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第1速とする1−2変速で生じる場合、ドッグクラッチ32の係合により第1歯車対<1>と第2歯車対<2>が共に出力軸3に連結された状態となることで、第1歯車対<1>のドライブギヤ11と第2歯車対<2>のドライブギヤ13に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第1歯車対<1>のギヤ比と第2歯車対<2>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20の小径サンギヤ21Aと第1軸1に連結する大径サンギヤ21Bの回転関係が定まる。この状態が第1速での走行状態で生じるとすると、小径サンギヤ21Aの回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、大径サンギヤ21Bの回転はそれより減速された回転となり、キャリア22はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第2クラッチ(C−2)を解放し、第4クラッチ(C−4)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22キャリア22経由での両サンギヤ21A,21Bへのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸2経由で両歯車対<1>,<2>を介して出力軸3に伝達されて第2速の変速段が達成される。
第3速(3rd)も、M/T部Mの第1歯車対<1>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態でもM/T部Mの動力伝達流れは第2速時と同様である。ただ、この場合、プラネタリ部S側では、リングギヤ23入力がキャリア22入力に変更される。したがって、この状態が前変速段を第2速とする2−3変速で生じる場合、ドッグクラッチ32の係合により第1歯車対<1>と第2歯車対<2>が共に出力軸3に連結された状態であることで、第1歯車対<1>のドライブギヤ11と第2歯車対<2>のドライブギヤ13に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第1歯車対<1>のギヤ比と第2歯車対<2>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20の小径サンギヤ21Aと第1軸1に連結する大径サンギヤ21Bの回転関係が定まる。この状態が第2速での走行状態で生じるとすると、小径サンギヤ21Aの回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、大径サンギヤ21Bの回転はそれより減速された回転となり、キャリア22はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第4クラッチ(C−4)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22キャリア22経由での両サンギヤ21A,21Bへのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸2経由で両歯車対<1>,<2>を介して出力軸3に伝達されて第3速の変速段が達成される。
第4速(4th)は、M/T部Mのドッグクラッチ32を中立位置として、第2歯車対<2>のみ出力軸3に連結すると共に、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第1クラッチ(C−1)経由で第1軸1に入力され、それに常時連結の第2歯車対<2>のギヤ比で減速されて出力軸3に伝達される。
第5速(5th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第3クラッチ(C−3)経由でキャリア22に入力され。この状態が前変速段を第4速とする4−5変速で生じる場合、ドッグクラッチ32の係合により第3歯車対<3>が出力軸3に連結された状態となることで、第2歯車対<2>のドライブギヤ13と第3歯車対<3>のドライブギヤ15に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第2歯車対<2>のギヤ比と第3歯車対<3>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20の小径サンギヤ21Aと第1軸1に連結する大径サンギヤ21Bの回転関係が定まる。この状態が第4速での走行状態で生じるとすると、大径サンギヤ21Bの回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、小径サンギヤ21Aの回転はそれより増速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第1クラッチ(C−1)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のキャリア22にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うキャリア22から両サンギヤ21A,21Bへのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸経由で両歯車対<2>,<3>を介して出力軸3に伝達されて第5速の変速段が達成される。
第6速(6th)も、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第4クラッチ(C−4)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第5速とする5−6変速で生じる場合、ドッグクラッチ32の係合により第3歯車対<3>が出力軸3に連結された状態にあることで、第3歯車対<3>のドライブギヤ15と第2歯車対<2>のドライブギヤ17に連結する第2軸2と第1軸1との間に、第3歯車対<3>のギヤ比と第2歯車対<2>のギヤ比の中間のギヤ比が生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20の小径サンギヤ21Aと第1軸1に連結する大径サンギヤS1Bの回転関係が定まる。この状態が第5速での走行状態で生じるとすると、キャリア22の回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、サンギヤ21の回転はそれより増速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第3クラッチ(C−3)を解放し、第4クラッチ(C−4)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸経由で両歯車対<2>,<3>を介して出力軸3に伝達されて第6速の変速段が達成される。
第7速(7th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で出力軸3に連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転がドッグクラッチ32を経て第3歯車対<3>に伝達され、そこで第3歯車対<3>のギヤ比で増速されて出力軸に伝達される。なお、リバース(Rev)は、第1参考例の場合と同様である。
こうして得られる各変速段の速度線図は、図39に示すようなものとなる。この場合、第1、第4及び第7速が各ギヤ対単独のギヤ比に従う変速段となるのに対して、第2、第3、第5及び第6速が、中間的に生成されるギヤ比の変速段となる。
次に、図40〜図42は、第7参考例を示す。この形態は、先の第1参考例におけるM/T部Mのリバースギヤ列を廃して、代わってプラネタリ部でリバースを達成するものである。このリバースギヤ列の廃止に伴い、これに代わるべきブレーキ(Bー1)がリングギヤ23を変速機ケース9に係止可能に連結されている。このギヤトレインにおける作動は、図41に示すように、当然ながら先の第1参考例の場合と同様であるので、第1参考例の作動説明を以って説明に代える。
この形態におけるリバース(Rev)は、図41の作動図表に示すように、M/T部Mの第1歯車対<1>を出力軸3に連結し、第1クラッチ(C−1)とブレーキ(B−1)を係合することで達成される。この入力状態では、キャリア22がエンジン回転で回転するのに対して、リングギヤ23が係止されているため、サンギヤ21がキャリア22の回転とは反対方向の減速回転となる。そしてこの回転は、第2軸2経由で最低速段の第1歯車対<1>に入力され、ドッグクラッチ32経由で出力軸3に伝達され、リバースが達成される。
図42に示す速度線図は、先の各速度線図とは異なり、通常のエンジン回転を速度比1としたときのプラネタリギヤの各要素の出力回転数比を示す。図に示すように、キャリア入力による第1軸1の速度比1に対して、リングギヤは固定の速度比0となり、サンギヤの逆回転を意味する負の速度比により第2軸2の速度比は負の値となる。なお、この形態における各前進段の達成については、当然ながら第1参考例の場合と異なるものではない。
こうしたブレーキの追加は、リバースの達成だけでなく、前進段の追加に利用することもできる。次に図43〜図45を参照する第8参考例は、先の第4参考例(図31〜図33参照)を基に、それにブレーキを追加して前進8速の変速段を達成するものである。この形態では、プラネタリギヤのキャリア22を変速機ケース9に固定するブレーキ(B−1)を付設している。
この形態における第1〜第7速とリバースの達成作動は、先の第4参考例の場合と同様であるので、本形態の作動を示す図44の作動図表と、図45の速度線図の参照と先の第3参考例の作動説明の参照を以って説明に代える。この参考例における第8速は、第4歯車対<4>を第6速及び第7速時と同様にドッグクラッチを介して出力軸3に連結し、第3クラッチ(C−3)とブレーキ(B−1)を係合させることで達成される。この場合、第3クラッチ(C−3)係合によりプラネタリギヤのリングギヤ23にエンジン回転が入力されるのに対して、ブレーキ(B−1)の係合によりキャリア22が固定されるため、サンギヤ21はリングギヤ23の回転と同方向にリングギヤ−サンギヤギヤ比分増速回転する。この回転は第2軸2の回転としてドッグクラッチを介して第4歯車対<4>に入力され、出力軸3に出力される。
このようにブレーキの追加を前進段の追加に利用する場合も、プラネタリ部の構成を種々に変更することができる。図46〜図52はこうした変形例を示す。図46に示す第1変形例は、シングルプラネタリギヤを用いるものにおいて、サンギヤ21を係止するブレーキ(B−1)を設け、キャリア22入力用の第3クラッチ(C−3)を係合させることで、リングギヤ23と連結している第2軸2の回転を増速段の達成に利用するものである。図47に示す第2変形例は、同じくシングルプラネタリギヤを用いるものにおいて、リングギヤ23を係止するブレーキ(B−1)を設け、キャリア22入力用の第3クラッチ(C−3)を係合させることで、サンギヤ21と連結している第2軸2の回転を増速段の達成に利用するものである。次の図48に示す第3変形例は、ダブルプラネタリギヤを用いるものにおいて、サンギヤ21を係止するブレーキ(B−1)を設け、リングギヤ23入力用の第3クラッチ(C−3)を係合させることで、キャリア22と連結している第2軸2の回転を増速段の達成に利用するものである。
また、図49に示す第4変形例は、ダイレクトクラッチを有する場合の変形例であり、シングルプラネタリギヤを用いるものにおいて、サンギヤ21を係止するブレーキ(B−1)を設け、リングギヤ23とM/T部連結用の第2クラッチ(C−2)を係合させることで、リングギヤ23と連結する第2軸2の回転を増速段の達成に利用するものである。図50に示す第5変形例は、シングルプラネタリギヤのリングギヤ23を係止するブレーキ(B−1)を設け、サンギヤ21とM/T部連結用の第2クラッチ(C−2)を係合させることで、サンギヤ21と連結する第2軸2の回転を増速段の達成に利用するものである。図51に示す第6変形例は、ダブルプラネタリギヤのサンギヤ21を係止するブレーキ(B−1)を設け、キャリア22とM/T部連結用の第2クラッチ(C−2)を係合させることで、キャリア22と連結する第2軸2の回転を増速段の達成に利用するものである。また、図52に示す第7変形例は、ダブルプラネタリギヤのキャリア22を係止するブレーキ(B−1)を設け、サンギヤ21とM/T部連結用の第2クラッチ(C−2)を係合させることで、サンギヤ21と連結する第2軸2の回転を増速段の達成に利用するものである。
次の図53〜図55に示す第9参考例は、第1参考例に対して第4歯車対<4>を廃し、ドッグクラッチ31を第2歯車対<2>の連結とは反対側への移動で変速機ケース9にロック可能として、最高速段をなくして前進6速化したものである。この場合の第1速から第6速までの各前進変速段とリバースの達成作動は、第4歯車対<4>の部分をロックに置き換えることで第1参考例の場合と同様となるので、図54の作動図表と、第1参考例の作動説明の参照を以って説明に代える。ただし、この形態の場合、第6速では第1軸1がロックとなるため、このときのキャリア回転は0となる。
以上の各参考例は、いずれもプラネタリ部に各クラッチを配したものであるが、ダイレクトクラッチ(C−D)を除く各クラッチは、適宜の位置に配置することができる。次に示す図56は、第2参考例(図11〜図13参照)に対して第1クラッチ(C−1)と第2クラッチ(C−2)を出力軸側に移動させた第10参考例を示す。この場合、プラネタリギヤのキャリア22とサンギヤ21は直接第1軸1と第2軸2に連結され、代わって出力軸3側で、第2歯車対<2>のドリブンギヤと第4歯車対<4>のドリブンギヤは出力軸の外周に嵌る外軸3Aに固定支持されている。そして、この外軸3Aが第1クラッチ(C−1)を介して出力軸に連結可能とされ、内軸3Bは第2クラッチ(C−2)を介して出力軸に連結可能とされている。
この形態の場合の変速作動は、図11〜図13を参照する第2参考例の場合と同様であるので、作動図表及び速度線図を含めて第2参考例の参照を以って説明に代える。
次の図57に示す第11参考例は、先の第4参考例(図31〜図33参照)において、プラネタリギヤを変速機のリヤ側に移動し、併せて第3クラッチ(C−3)を変速機のリヤ側に移動させたものである。この配置の場合、第1軸1A及び第2軸2の内側に更に第3クラッチ(C−3)を入力軸4に連結する軸を通す必要があるため、第1歯車対<1>と第3歯車対<3>側で軸が3重軸となり、第2歯車対<2>と第4歯車対<4>側で、キャリア22からおり返してドッグクラッチにつながる軸1Bを通す必要があるため、4重軸となる。こうした事情から多重軸配置による軸の大径化は免れないが、原理的にはこうした配列も可能である。
次に、図58〜図60は、第12参考例を示す。この形態は、図58にスケルトンでギヤトレインを示すように、第1参考例に対してM/T部Mの構成を変更したものである。この場合、M/T部Mは、その変速要素としてプラネタリギヤ40,50を包含する。このM/T部Mは、内外二重の第1軸1及び第2軸2を入力軸とする点は、第1参考例と同様である。この形態では、第1軸1に連結する歯車対11A,12Aは1つとされ、代わってプラネタリギヤ40がこの歯車対11A,12Aに対する直列のギヤとして配置されている。第2軸2に連結する歯車対についても同様であり、歯車対13A,14Aは1つとされ、代わってプラネタリギヤ50がこの歯車対13A,14Aに対する直列のギヤとして配置されている。両プラネタリギヤ40,50は、シンプルプレネタリタイプとされ、それらのリングギヤ43,53が入力要素としてそれぞれ第1軸1と第2軸2に連結され、各サンギヤ41,51を反力要素とすべくブレーキ(B−2,B−3)を介して変速機ケース9に連結され、各キャリア42,52が各歯車対のドライブギヤ11A,13Aに連結されると共にクラッチ(C−4,C−5)を介してそれぞれ第1軸1と第2軸2に連結されている。なお、両歯車対のドリブンギヤ12A,14Aは、それぞれ出力軸3に一体回転可能に連結されている。
プラネタリ部Sの構成は、実質上第1参考例の場合と同様であるが、このギヤトレインでは、M/T部Mにリバース専用のギヤ列がないことから、リバース達成のために、リングギヤ23がブレーキ(B−1)を介して変速機ケース9に係止可能とされている点が第1参考例に対して異なる付加的構成である。
こうした構成からなる変速機は、図59にその作動を図表化して示すように、M/T部Mのブレーキ(B−2)を係合し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)を係合することで第1サンギヤ41を固定して第1速(1st)を達成する。この状態で、エンジン(E/G)の回転がプラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)からキャリア22と第1軸1経由でM/T部Mの第1リングギヤ43に入力され、第1サンギヤ41固定の反力による第1キャリア42の減速回転が第1歯車対11A,12Aに入力され、そこで更に第1歯車対のギヤ比で減速されて出力軸3に伝達される。
次に、第2速(2nd)は、M/T部Mのブレーキ(B−2)を係合すると共に、ブレーキ(B−3)を係合し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第1速とする1−2変速で生じる場合、共に出力軸3に連結された第1歯車対11A,12Aと第2歯車対13A,14Aが、両ブレーキ(B−2,B−3)の係合により第1及び第2プラネタリギヤ40,50を介して第1軸1と第2軸2に連結された状態となることで、第1歯車対11A,12Aのギヤ比と第1プラネタリギヤ40のギヤ比とを乗じたギヤ比と、第2歯車対13A,14Aのギヤ比と第2プラネタリギヤ50のギヤ比とを乗じたギヤ比の中間のギヤ比が第2軸2と第1軸1との間に生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第1速での走行状態で生じるとすると、キャリア22の回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、サンギヤ21の回転はそれより減速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第1クラッチ(C−1)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが第1軸1と第2軸2経由で両プラネタリギヤ40,50に入力され、両歯車対11A,12A,13A,14Aを介して出力軸3に伝達されて第2速の変速段が達成される。こうして、第1プラネタリギヤ40及び第1歯車対11A,12Aの直列減速のギヤ比と、第2プラネタリギヤ50及び第2歯車対13A,14Aの直列減速のギヤ比に対する中間のギヤ比の回転が出力軸3に伝達される。
第3速(3rd)は、M/T部Mのブレーキ(B−3)を係合し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態で、エンジンの回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転が第2プラネタリギヤ50の第2リングギヤ53に伝達される。この第2プラネタリギヤ50は、ブレーキ(B−3)の係合による第2サンギヤ51の固定を反力として第2キャリア52に減速回転を出力するため、この回転の入力による第2歯車対13A,14Aのギヤ比による減速回転が出力軸3に伝達される。この出力回転は、第2プラネタリギヤ及び第2歯車対直列減速のギヤ比による減速回転となる。
第4速(4th)は、M/T部Mの第1クラッチ(C−4)を係合すると共に、第2ブレーキ(B−3)を係合し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第3速とする3−4変速で生じる場合、共に出力軸3に連結された第1歯車対11A,12Aと第2歯車対13A,14Aが、第1歯車対11A,12Aについては第1クラッチ(C−4)を介して第1軸1に連結され、第2歯車対13A,14Aについてはブレーキ(B−3)の係合により第2プラネタリギヤ50を介して第2軸2に連結された状態となることで、第1歯車対11A,12Aのギヤ比と、第2歯車対13A,14Aのギヤ比と第2プラネタリギヤ50のギヤ比とを乗じたギヤ比の中間のギヤ比が第2軸2と第1軸1との間に生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第3速での走行状態で生じるとすると、サンギヤ21の回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、キャリア22の回転はそれより増速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第2クラッチ(C−2)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが一方で第1軸1経由で第1歯車対11A,12Aに入力され、それで減速された出力軸3に、他方で第2軸経由で第2プラネタリギヤ50に入力され、そこで第1段の減速がなされ、更に第2歯車対13A,14Aを経由して第2段目の減速がなされて出力軸3に伝達されて第4速の変速段が達成される。こうして、第2プラネタリギヤ及び第2歯車対直列減速の回転と第1歯車対単独減速に対する中間のギヤ比の回転が出力軸3に伝達される。
第5速(5th)は、M/T部Mのクラッチ(C−4)を係合し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第1クラッチ(C−1)経由で第1軸1に入力され、その回転がクラッチ(C−4)経由で第1歯車対11A,12Aを介して出力軸3に伝達される。この場合のギヤ比は、第1歯車対11A,12Aのギヤ比となる。
第6速(6th)は、M/T部Mの第1クラッチ(C−4)を係合すると共に、第2クラッチ(C−5)を係合し、プラネタリ部Sの第3クラッチ(C−3)を係合することで達成される。この状態が前変速段を第5速とする5−6変速で生じる場合、共に出力軸3に連結された第1歯車対11A,12Aが第1クラッチ(C−4)を介して第1軸1に連結され、第2歯車対13A,14Aが第2クラッチ(C−5)を介して第2軸2に連結された状態となることで、第1歯車対11A,12Aのギヤ比と第2歯車対13A,14Aのギヤ比との中間のギヤ比が第2軸2と第1軸1との間に生成され、第2軸2に連結するプラネアリギヤ20のサンギヤ21と第1軸1に連結するキャリア22の回転関係が定まる。この状態が第5速での走行状態で生じるとすると、キャリア22の回転はエンジン回転と等しい回転であるのに対して、サンギヤ21の回転はそれより増速された回転となり、リングギヤ23はこれらの回転に規制されて空転している。この状態で第1クラッチ(C−1)を解放し、第3クラッチ(C−3)の係合に移行して、空転中のリングギヤ23にエンジン回転が入力されることで、予め生成された前記中間のギヤ比に従うリングギヤ23からキャリア22へのトルク伝達と、リングギヤ23からキャリア22経由でサンギヤ21へのトルク伝達が並列的に生じ、これらのトルクが一方で第1軸1経由で第1歯車対11A,12Aに入力され、それで減速されて出力軸3に、他方で第2軸経由で第2歯車対13A,14Aに入力され、それで減速されて出力軸3に伝達されて第6速の変速段が達成される。こうして、第2歯車対単独のギヤ比と第1歯車対単独のギヤ比に対する中間のギヤ比の回転が出力軸3に伝達される。
第7速(7th)は、M/T部Mのクラッチ(C−5)を係合し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転がクラッチ(C−5)経由で第2歯車対13A,14Aを介して出力軸3に伝達される。この場合のギヤ比は、第2歯車対13A,14Aのギヤ比となる。
このギヤトレインでのリバース(Rev)は、M/T部Mのブレーキ(B−2)を係合し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)とブレーキ(B−1)を共に係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由でサンギヤ21に入力され、ブレーキ(B−1)によるリングギヤ23の係止を反力とするキャリア22の回転が第1軸1からM/T部Mの第1リングギヤ43に入力される。これに対して、第1プラネタリギヤ40のサンギヤ41は、ブレーキ(B−2)により固定されているため、第1キャリヤ42から出力される逆転の減速回転が第1歯車対11A,12Aで更に減速されて出力軸3に伝達される。
このようにして達成される各変速段におけるプラネタリギヤ20の3つの変速要素の挙動を図60に速度線図で示す。この速度線図の表記方法も第1参考例の場合と同様である。なお、この線図の場合、○印で囲った数字は、<1>が第1プラネタリギヤと第1歯車対の直列の伝達状態、<2>が第2プラネタリギヤと第2歯車対の直列の伝達状態、<3>が第1歯車対単独の伝達状態、<4>が第2歯車単独の伝達状態を表す。
この速度線図から分かるように、この第12参考例においても、M/T部Mの第1、第2歯車対と第1、第2プラネタリギヤにより本来達成可能な奇数変速段に対する中間段としてのギヤ比が生成されるため、偶数の変速段は、それに隣り合う変速段に対する経過段となるものである。したがって、この変速機の場合も、4速変速機に対して、歯車対やプラネタリギヤを増やさずに各変速段の中間に、ギヤ比ステップを密にする形態で3速の変速段を付加することができる。また、トルク抜けを生じない変速が可能な点についても第1参考例の場合と同様である。
次の図61〜図63は、本発明の第13参考例を示す。この形態もM/T部Mは、その変速要素としてプラネタリギヤ60を包含する。図61にそのギヤトレイン構成をスケルトンで示すように、先の各参考例のプラネタリ部に当たる前プラネタリ部は、シングルプラネタリギヤと、第1及び第2クラッチ(C−1,C−2)と、第1ブレーキ(B−1)で構成され、M/T部に当たる後プラネタリ部は、2列の歯車対11B,12B, 13B,14Bと単一のダブルプラネタリギヤ60と、第3〜第5クラッチ(C−3〜C−5)と、第2ブレーキ(B−2)で構成されている。
そして、前プラネタリ部では、プラネタリギヤのキャリア22が、第2歯車対13B,14Bに連結する第1軸1に常時連結されると共に、第1クラッチ(C−1)を介して入力軸4に連結可能とされ、サンギヤ21が、第1歯車対11B,12Bに連結する第2軸2に常時連結されると共に、第2クラッチ(C−2)を介して入力軸4に連結可能とされ、リングギヤ23が第1ブレーキ(B−1)を介して変速機ケース9に係止可能とされている。また、後プラネタリ部では、プラネタリギヤ60のキャリア62が、第2歯車対13B,14Bに連結する第1軸3Aに常時連結されると共に、第3クラッチ(C−3)を介して出力軸3に連結可能とされ、サンギヤ61が、第1歯車対11B,12Bに連結する第2軸3Bに常時連結されると共に、第4クラッチ(C−4)を介して出力軸3に連結可能とされ、リングギヤ63が、第5クラッチ(C−5)を介して出力軸3に連結可能とされると共に、第2ブレーキ(B−2)を介して変速機ケース9に係止可能とされている。
図62に作動を示すように、この変速機の場合、第1速(1st)〜第4速(4th)は、第2クラッチ(C−2)係合の入力による動力伝達となり、第4速(4th)〜第7速(7th)は、第1クラッチ(C−1)係合の入力による動力伝達となり、各変速段の出力は、主として出力側の第3クラッチ(C−3)〜第5クラッチ(C−5)の係合の選択によりなされるため、先にこれら2系統の動力伝達の流れをまとめて説明する。前プラネタリギヤのキャリア22の回転は、第1軸1を通り第2歯車対13B,14Bに伝達され、第2歯車対13B,14Bのギヤ比による減速が行なわれ(以下、便宜上このギヤ比を1として説明を簡略化する)、出力側第1軸3Aを経て後プラネタリ部のキャリア62に伝達される流れ(以下、第1流れという)となる。前プラネタリギヤのサンギヤ21の回転は、第2軸2を通り第1歯車対11B,12Bに伝達され、そのギヤ比による減速が行なわれ、出力側第2軸3Bを経て後プラネタリ部のサンギヤ61に伝達される流れ(以下、第2流れという)となる。
こうした2つの流れ生じるなかで、第1速(1st)は、後プラネタリ部の第3クラッチ(C−3)を係合させ、前プラネタリ部の第2クラッチ(C−2)と第1ブレーキ(B−1)を係合させることで達成される。このとき、第1流れが出力につながる流れとなり、その基となるキャリア22の回転は、リングギヤ23が固定されることで低速回転となり、この回転がキャリア62に伝達され、第3クラッチ(C−3)を経て出力されることで第1速回転となる。第2速(2nd)も同じ第2流れで、第5クラッチ(C−5)の係合による出力に切換わるだけである。このとき、後プラネタリ部のリングギヤ63の回転は、キャリア62の回転に対して増速回転となるため、第5クラッチ(C−5)を経て出力される第2速回転は第1速回転より若干高くなる。第3速(3rd)についても動力伝達の関係は実質上同様であり、第4クラッチ(C−4)係合による出力に切換わることで、この場合第2流れが出力されるようになるため、エンジン回転が前プラネタリ部のサンギヤ21を通過した後、第1歯車対11B,12Bのギヤ比分だけ減速され、後プラネタリ部のサンギヤ61を通過して出力される。この場合、動力伝達上は、第1ブレーキ(B−1)又は第1クラッチ(C−1)の係合は関与しないため、いずれか一方の係合を次の変速に備えて準備しておくことは可能である。ただし、両要素を同時に係合させると前プラネタリギヤがロックされてしまうため、第1ブレーキ(B−1)と第1クラッチ(C−1)の同時係合は許容されない。
第4速(4th)以降は、主体的な流れは第1流れとなる。第4速(4th)では、第1流れと第2流れにより、後プラネタリ部では、キャリア62のエンジン回転に対してサンギヤ61が第1歯車対11B,12Bによる減速分だけ低速回転するため、これら両回転の中間速度比の回転がリングギヤ63から第5クラッチ(C−5)を経て出力され、この回転が第4速回転となる。次の第5速(5th)では、第3クラッチ(C−3)経由の出力に切換わることで、第1流れがそのまま出力となり、エンジン回転が第3クラッチ(C−3)経由で出力軸3に出力される第5速回転となる。
第6速(6th)では、ブレーキ(B−1)が係合されることで、第2流れの基となるサンギヤ21の回転が増速され、これに伴いサンギヤ61の回転も増速回転となるため、リングギヤ63から第5クラッチ(C−5)を経て出力され第6速回転も増速回転となる。第7速(7th)では、同じ状態で、出力がサンギヤ61に切換わるため、更に増速された回転が第7速の回転として出力軸3に出力される。
なお、リバース(Rev)は、第2流れによるサンギヤ61の回転に対して第1ブレーキ(B−2)係合によるリングギヤ63の固定で逆回転するキャリア62の回転が第3クラッチ(C−3)経由で出力軸3に出力されることで達成される。
こうした各変速段における各回転要素の回転比の関係を図63に速度線図で示す。この速度線図は、エンジン回転速度比を1とする通常の表記に従うものである。
次の図64〜図66は、本発明の第14参考例を示す。この形態の特徴は、全ての係合要素とプラネタリギヤを入力軸側に集約配置した点にある。図64にそのギヤトレイン構成をスケルトンで示すように、この形態における第1プラネタリギヤP1は、シングルプラネタリギヤで構成され、増速回転を生成させる機能を果たす。第2プラネタリギヤP2も、シングルプラネタリギヤで構成され、第3プラネタリギヤP3は、ダブルプラネタリギヤで構成される。この形態における係合要素は、先の第13参考例と同様に、入力側の第1及び第2クラッチ(C−1,C−2)と、出力側の第3〜第5クラッチ(C−3〜C−5)と、反力支持のための第1及び第2ブレーキ(B−1,B−2)で構成されている。
第1プラネタリギヤP1は、そのサンギヤS1を変速機ケース9に常時固定とされ、キャリアC1が第1クラッチ(C−1)を介して入力軸4に連結可能とされ、リングギヤR1が第2プラネタリギヤP2のキャリアC2に直結されている。第2及び第3プラネタリギヤP2,P3は、両サンギヤS2,S3が直結されて、共に第2クラッチ(C−2)を介して入力軸4に、また第4クラッチ(C−4)を介してカウンタギヤ対に連結可能とされ、両キャリアC2,C3も直結されて、第3クラッチ(C−3)を介してカウンタギヤ対に連結可能とされ、それぞれのリングギヤR2,R3が第1ブレーキ(B−1)と第2ブレーキ(B−2)を介して変速機ケース9に固定可能とされ、第3プラネタリギヤP3のリングギヤR3については、更に第5クラッチ(C−5)を介してカウンタギヤ対に連結可能とされている。
この形態の場合も、第1プラネタリギヤP1のリングギヤR1から発する第1流れが、2つのキャリアC2,C3を通り第3クラッチ(C−3)に達している。また、第2流れは、2つのサンギヤS2,S3を通り、第4クラッチ(C−4)に達している。そして、図65に作動を示すように、第1〜第4速では、第2流れが主体となり、第4〜第7速では第1流れが主体となる。
第1速(1st)は、第2クラッチ(C−2)係合による第2サンギヤS2へのエンジン回転入力に対して、第1ブレーキ(B−1)係合による第2リングギヤR2に反力を取る第2キャリアC2の減速回転が第3クラッチ(C−3)を介して出力されることで達成される。第2速(2nd)も同じ状態で、第5クラッチ(C−5)係合による第3リングギヤR3の減速回転が出力されて達成される。また、第3速(3rd)は、第2クラッチ(C−2)経由のエンジン回転が両サンギヤS2,S3を通過して第4クラッチ(C−4)経由で出力されることで達成される。
第4速(4th)からは第1クラッチ(C−1)の係合による第1流れの増速回転が作用し始め、第3プラネタリギヤP3のキャリアC3への増速回転入力に対して、サンギヤS3のエンジン回転でリングギヤR3が増速回転するが、この回転がリングギヤR3の増速回転として第5クラッチ(C−5)経由で出力されて第4速が達成される。次の第5速(5th)では、第1リングギヤR1の増速回転がそのまま第3キャリアC3から第3クラッチ(C−3)経由で出力されて第5速回転となる。また、第6速(6th)では、この回転が第5クラッチ(C−5)出力の第3リングギヤR3出力に切換えられて更に増速された出力となる。そして、第7速(7th)は、第1ブレーキ(B−1)係合による増速回転が第2キャリアC2入力による第2サンギヤS2の増速回転として第4クラッチ(C−4)から出力されて最高速段となる。なお、リバース(Rev)は、第3プラネタリギヤP3で生成され、この場合、第1ブレーキ(B−1)の係合による第3リングギヤR3固定に対して、第3サンギヤS3にエンジン回転が入力されることで、第3キャリアC3が減速の逆回転となる出力を第3クラッチ(C−3)経由で出力することで達成される。
こうした各変速段における各回転要素の回転比の関係を図66に速度線図で示す。この速度線図も、エンジン回転速度比を1とする通常の表記に従うものである。また、図65の作動図表における括弧付の○印は、先の第13参考例の作動説明に記したと同じ理由から、その変速段において、その係合要素の係合状態の維持が変速に関係なく許容されることを表す。この場合も、両係合要素の同時係合はプラネタリギヤのロックにつながるため許容されない。
次の図67〜図69は、本発明の第1実施形態を示す。この形態の特徴は、先の参考例において動力伝達流れ上でM/T部Mより上流側に配置したプラネタリ部Sのプラネタリギヤ20を下流側に配置変更した点にある。図67にそのギヤトレイン構成をスケルトンで示すように、この形態におけるM/T部Mは、先の第1参考例の場合と実質的に同様のものであるが、プラネタリギヤ20の下流側配置に伴い、第2及び第4歯車対の出力軸3Aが二重軸の別軸とされている。この場合、第1出力軸3Aに第2及び第4歯車対のドリブンギヤ14,18が固定され、第2出力軸3Bに第1及び第3歯車対11,12,15,16のドッグクラッチ32が軸方向可動かつ回転不能に連結されている。
プラネタリ部Sは、2つの入力クラッチ(C−1,C−2)を残して、プラネタリギヤ20と変速制御のためのクラッチがダイレクトクラッチ(C−D)としてM/T部Mの下流側に移されている。この形態では、プラネタリギヤ20のサンギヤ21は、M/T部Mの第2出力軸3Bに連結され、この第2出力軸3Bがダイレクトクラッチ(C−D)を介して出力軸3に連結され、ピニオン24,25を支持するキャリア22は、第1出力軸3Aに連結され、リングギヤ23は、出力軸3に連結されている。
こうした構成からなる変速機は、図68にその作動を図表化して示すように、M/T部Mの第1歯車対11,12(この形態の説明においても第1参考例と同様に歯車対を<数字>で表記する)をドッグクラッチ32で第2出力軸3Bに連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで第1速(1st)を達成する。この状態で、エンジン(E/G)の回転がプラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)経由でM/T部Mのドライブギヤ11に入力され、第1歯車対<1>で減速され、ドッグクラッチ32を経て第2出力軸3Bに伝達され、ダイレクトクラッチ(C−D)を経て出力軸3Cに伝達される。
次に、第2速(2nd)は、M/T部Mの第1歯車対<1>をドッグクラッチ32で第2出力軸3Bに連結すると共に、第2歯車対<2>をドッグクラッチ31で第1出力軸3Aに連結し、プラネタリ部Sの両クラッチ(C−1,C−2)を共に係合することで達成される。この状態では、両クラッチ(C−1,C−2)の係合でエンジン回転が第1歯車対11,12と第2歯車対13,14に同時に入力され、それらで減速されて第1出力軸3Aと第2出力軸3Bに出力される。これらの回転の入力でプラネタリギヤ20のサンギヤ21とキャリア22の回転が、これらのギヤ比の中間のギヤ比に規制され、リングギヤ23からそれらの回転の中間の回転が出力軸3Cに伝達される。
第3速(3rd)は、M/T部Mの第2歯車対<2>をドッグクラッチ31で第1出力軸3Aに連結し、プラネタリ部Sのクラッチ(C−1)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転がクラッチ(C−1)経由で第2歯車対<2>に入力され、その回転がドッグクラッチ31を経て第2歯車対<2>に伝達され、そこで第2歯車対<2>のギヤ比で減速されて第1出力軸3Aに伝達される。この回転はプラネタリギヤ20のキャリア22入力となるが、プラネタリギヤ20はダイレクトクラッチ(C−D)の係合による直結状態にあるため、この回転はそのまま出力軸3Cに伝達される。
第4速(4th)は、M/T部Mの第2歯車対<2>をドッグクラッチ31で第1出力軸3Aに連結すると共に、第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で第2出力軸3Bに連結し、プラネタリ部Sの両クラッチ(C−1,C−2)を共に係合することで達成される。この状態で、両クラッチ(C−1,C−2)の係合でエンジン回転が第2歯車対<2>と第3歯車対<3>に同時に入力され、それらで減速されて第1出力軸3Aと第2出力軸3Bに出力される。これらの回転の入力でプラネタリギヤ20のサンギヤ21とキャリア22の回転が規制され、リングギヤ23からそれらの回転の中間の回転が出力軸3Cに伝達される。
第5速(5th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で第2出力軸3Bに連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、そこで第3歯車対<3>のギヤ比で減速されてドッグクラッチ32を経て第2出力軸3Bに伝達される。この回転はプラネタリギヤ20のサンギヤ21入力となるが、プラネタリギヤ20はダイレクトクラッチ(C−D)の係合による直結状態にあるため、この回転はそのまま出力軸3Cに伝達される。
第6速(6th)は、M/T部Mの第3歯車対<3>をドッグクラッチ32で第2出力軸3Bに連結すると共に、第4歯車対<4>をドッグクラッチ31で第1出力軸3Aに連結し、プラネタリ部Sの両クラッチ(C−1,C−2)を共に係合することで達成される。この状態で、両クラッチ(C−1,C−2)の係合でエンジン回転が第3歯車対<3>と第4歯車対<4>に同時に入力され、それらで減速されて第1出力軸3Aと第2出力軸3Bに出力される。これらの回転の入力でプラネタリギヤ20のサンギヤ21とキャリア22の回転が規制され、リングギヤ23からそれらの回転の中間の回転が出力軸3Cに伝達される。
第7速(7th)は、M/T部Mの第4歯車対<4>をドッグクラッチ31で第1出力軸3Aに連結し、プラネタリ部Sの第1クラッチ(C−1)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第1クラッチ(C−1)経由で第4歯車対<4>に入力され、その回転がドッグクラッチ31を経て第4歯車対<4>に伝達され、そこで第4歯車対<4>のギヤ比で減速されて第1出力軸3Aに伝達される。この回転はプラネタリギヤ20のキャリア22入力となるが、プラネタリギヤ20はダイレクトクラッチ(C−D)の係合による直結状態にあるため、この回転はそのまま出力軸3Cに伝達される。
なお、リバース(Rev)は、M/T部Mのドッグクラッチ32を中立として、リバースギヤ列19,30を第2出力軸3Bに連結し、プラネタリ部Sの第2クラッチ(C−2)とダイレクトクラッチ(C−D)を係合することで達成される。この状態で、エンジン(E/G)の回転が第2クラッチ(C−2)経由で第2軸2に入力され、その回転がリバースギヤ列19,30で減速且つカウンタギヤ30経由で前記各変速段とは逆転されて第2出力軸3Bに伝達され、ダイレクトクラッチ(C−D)経由で出力軸3Cに伝達される。
この第1実施形態においても、各奇数の変速段がプラネタリギヤ20の変速要素を変速に関与しない単なる動力伝達部材として達成されるのに対して、各偶数の変速段は、プラネタリギヤ20の変速要素を機能させて達成される。しかも、これら各偶数の変速段は、それを挟む奇数の変速段の達成時に連結される2つの歯車対の同時連結により達成される。
このようにして達成される各変速段におけるプラネタリギヤ20の3つの変速要素の挙動を図69に速度線図で示す。この速度線図は、一般的な自動変速機の入力回転数を基準(速度比1)として変速特性を示す表記形式に従うものであり、各変速要素であるサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの速度比を●印で変速段を表す数字を白抜きして表しており、これらの速度比はすなわちエンジン回転数を速度比1とするものである。したがって、第7速における出力軸速度比が最も高いのは、エンジン回転に対して変速機の減速比が最も小さいことを表す。また○印で囲った数字は、その変速段において連結されるM/T部Mの第1〜第4歯車対を表す。
この速度線図から分かるように、偶数の変速段は、M/T部Mの第1〜第4歯車対により本来達成可能な奇数変速段に対する中間段としてのギヤ比で、隣り合う両偶数変速段を達成する歯車対による同時動力伝達により達成されるもので、それに隣り合う奇数の変速段に対する経過段ともなるものである。したがって、この形態の変速機によっても、従来形式の常時噛合式の4速変速機に対して、各変速段の中間に、ギヤ比ステップを密にする形態で3速の変速段を付加することができる。
更にこの第1実施形態の場合、ギヤ比ステップを高速段側ほど狭くする設定を容易に行なうことができる利点が得られる。図70は先の2つの参考例(図1、図58参照)との比較を速度線図で示す(ただし、各変速段の表記については、単一の歯車対のギヤ比で達成される変速段を整数で表し、それらの中間のギヤ比による変速段を端数で表す)。この例では、最低速段と最高速段(第4速、参考例の第7速に相当)のギヤ比を0.342と2.044と同一に設定し、途中の変速段の第2、3速(参考例の第3、5速に相当)間で良好なギヤ比ステップが得られるようなギヤ比設定とした場合、図の(b)に示す本形態の配置の場合、中間段を含めて全ての変速段間のギヤ比ステップについて、低速段側ギヤ比ステップ>高速段側ギヤ比ステップの関係が成立するのに対して、図の(a)に示す形態の配置の場合、プラネタリギヤのキャリア−リングギヤ間のギヤ比λを単純に0.5とした場合、1.5−2速間、2.5−3速間及び3−3.5速間で、低速段側ギヤ比ステップ<高速段側ギヤ比ステップの逆転が生じるのが分かる。このように、本形態では、中間段としての偶数段を全て上位段側に寄せたギヤ比ステップが容易に設定可能となる。
このようにプラネタリギヤを出力側に配置した場合についても、前記第1参考例や第2参考例と同様に、プラネタリ部について種々の変更が可能である。これらを例示すると、次のようになる。先ず、シングルプラネタリ構成を前提とする場合、図71に示すように、サンギヤ21とリングギヤ23間のロックアップする場合、サンギヤ21は第1軸3Aへの連結とし、リングギヤ23を第2軸3Bに連結し、キャリア22を出力軸3Cに連結する構成がある。また、図72に示すように、サンギヤ21を第2軸3B連結とし、キャリア22を出力軸3Cに連結する構成も考えられる。次に、キャリア22とサンギヤ21をロックアップする場合、図73に示すように、サンギヤ21を第1軸3A連結、リングギヤ23を第2軸3B連結とし、キャリア22を出力軸3C連結とする構成と、図74に示すように、サンギヤ21を第2軸3B連結、リングギヤ23を第1軸3A連結とし、キャリア22を出力軸3C連結とする構成が考えられる。そして、リングギヤ23とキャリア22をロックアップする場合、図75に示すように、サンギヤ21を第1軸3A連結、リングギヤ23を第2軸3B連結とし、キャリア22を出力軸3C連結とする構成と、図76に示すように、リングギヤ23を第1軸3A連結、サンギヤ21を第2軸3B連結とし、キャリア22を出力軸3C連結とする構成が考えられる。
また、ダブルプラネタリ構成を前提とする場合、図77に示すように、リングギヤ23とサンギヤ21間をロックアップする場合、サンギヤ21は第1軸3Aへの連結とし、キャリア22を第2軸3Bに連結し、リングギヤ23を出力軸3Cに連結する構成も考えられる。次に、キャリア22とサンギヤ21をロックアップする場合、図78に示すように、サンギヤ21を第1軸3A連結、キャリア22を第2軸3B連結とし、リングギヤ23を出力軸3C連結とする構成と、図79に示すように、サンギヤ21を第2軸3B連結、キャリア22を第1軸3A連結とし、リングギヤ23を出力軸3C連結とする構成が考えられる。そして、リングギヤ23とキャリア22をロックアップする場合、図80に示すように、サンギヤ21を第1軸3A連結、キャリア22を第2軸3B連結とし、リングギヤ23を出力軸3C連結とする構成と、図81に示すように、キャリア22を第1軸3A連結、サンギヤ21を第2軸3B連結とし、リングギヤ23を出力軸3C連結とする構成が考えられる。
次の図82に示す第15参考例は、先の第1参考例に対する第11参考例(図57参照)と同様の改変を、ロックアップタイプの第1実施形態に施したものである。この形態では、ダブルプラネタリギヤ20とそのダイレクトクラッチ(C−D)を出力軸側の変速機後部に配置している。この配置の場合、出力軸側の第1軸3A及び第2軸3Bの内側に更に出力軸3Cを通す必要があるため、第1歯車対<1>と第3歯車対<3>側で軸が3重軸となるが、ロックアップタイプのものについても、原理的にはこうした配列が可能である。
次の図83に示す第16参考例は、先の第15参考例のプラネタリギヤをシングルプラネタリギヤとして出力軸側にセンタ配置とし、ダイレクトクラッチ(C−D)をM/T部Mの出力側に配したものである。この配置では、プラネタリギヤのサンギヤ21が出力側の第2軸3Bに連結され、リングギヤ23が出力側の第1軸3Aに連結され、キャリア22が出力軸3Cに連結されている。そしてこの場合のダイレクトクラッチ(C−D)は、出力側の第1軸3Aと出力軸3Cに連結され、プラネタリギヤのキャリア22とリングギヤ23をロックアップするものとされている。
更に、図84に示す第17参考例は、先の第1実施形態(図67参照)に対して、入力クラッチとして機能していた第1及び第2クラッチ(C−1,C−2)を、出力クラッチとしてM/T部Mの出力側に配したものである。この形態の場合、M/T部の入力側は、単軸で直接入力軸4に連結され、出力側の第1軸3Aとダブルプラネタリギヤのキャリア22が第1クラッチ(C−1)を介して連結可能とされ、出力側の第2軸3Bとプラネタリギヤのサンギヤ21が第2クラッチ(C−2)を介して連結可能とされ、リングギヤ23が出力軸3Cに常時連結とされている。そしてダイレクトクラッチ(C−D)は、プラネタリギヤのサンギヤ21とリングギヤ23をロックアップするものとされている。
次の図85及び図86に示す第18参考例は、当初の第1参考例(図1〜図3参照)に対して、プラネタリ部を全てM/T部Mの出力側に配したものである。この場合の作動は、入出力の関係が全て第1参考例に対して入れ替わるが、各変速段でのギヤ対と係合要素の作動関係は、図2に表記される作動と全く同様となるので図2の参照をもって説明に代える。また、この形態の場合の図86に示す速度線図は、第1実施形態の表記方法と同様に、一般的な自動変速機の入力回転数を基準(速度比1)として変速特性を示す表記形式に従うものであり、各変速要素であるサンギヤ、リングギヤ及びキャリアの速度比を●印で変速段を表す数字を白抜きして表しており、これらの速度比はすなわちエンジン回転数を速度比1とするものである。したがって、第7速における出力軸速度比が最も高いのは、エンジン回転に対して変速機の減速比が最も小さいことを表す。また○印で囲った数字は、その変速段において連結されるM/T部Mの第1〜第4歯車対を表す。
この第18参考例においても、当初の第1参考例と同様に、プラネタリ部の種々の改変が可能である。この場合の変形例については、第1参考例の変形例として図6〜図10に挙げた各例のフライホイールF/Wを出力軸3Cに置き換えた構成となるので、これらの図を参照した読み替えにより説明に代える。
また、先の第1実施形態(図67参照)のギヤトレインの場合も第4速の飛ばしによる6速化が可能である。この場合の作動表と速度線図を図87及び図88に示す。
次の図89〜図91に示す第19参考例は、第1実施形態の第1軸と第2軸を入替えたものである。この形態の場合の作動表と速度線図は、図90及び図91に示すようになる。
次の図92〜図94に示す第20参考例は、第1実施形態の第4歯車対を廃止したものである。この形態の場合の作動表と速度線図は、図93及び図94に示すようになる。
更に、図95及び図96に示す第21参考例は、先の第6参考例(図37〜図39参照)において、プラネタリ部をM/T部の出力側に移したものである。この場合の作動図表は、図38に示す図表と同様となるので、同図の参照を以って説明に代える。また、速度線図は、図96に示すようになる。
更に、図97及び図98に示す第22参考例は、先の第7参考例(図40〜図42参照)において、プラネタリ部をM/T部の出力側に移したものである。この場合の作動図表は、図41に示す図表と同様となるので、同図の参照を以って説明に代える。また、速度線図は、図98に示すようになる。
更に、図99〜図101に示す第23参考例は、先の第1実施形態(図67〜図69参照)において、ブレーキを追加して8速化を図ったものである。この場合、プラネタリギヤのキャリアがブレーキを介して変速機ケースに固定可能とされる構成が採られる。この場合の作動図表は、図100に示すようになり、速度線図は、図101に示すようになる。
最後に、図102〜図104に示す第24参考例は、先の第9参考例(図53〜図55参照)において、プラネタリ部をM/T部の出力側に移したものである。この場合、プラネタリ部の移設に伴い第2歯車対のドッグクラッチも出力軸側に移設されている。この場合の作動図表は、図103に示すようになり、速度線図は、図104に示すようになる。
以上、本発明の理解のために実施形態及び多くの参考例を挙げて説明したが、本発明は、例示の実施形態及び参考例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の個々の請求項に記載の事項の範囲内で種々に具体的な構成を変更して実施することができるものである。