以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。説明する実施形態は、発明を説明するための例であり、本発明はこれに限定されるものではない。実施形態では、反射波長特性の異なる3枚のコレステリック液晶層(パネル)を積層した表示素子10を有する表示装置を説明する。入射光を反射するプレーナ状態を初期化状態とする。従って、初期化状態がもっとも明るい状態、すなわち最大輝度の状態である。書込み処理ではプレーナ状態からフォーカルコニック状態に変化させて輝度を低下させ、フォーカルコニック状態の割合に応じて階調を表示する。ここでは、輝度値0から3の4階調表示を行う例を説明する。
図2は、本発明の原理を説明する図である。図2の(A)は、青色コレステリック液晶層(パネル)10B、緑色コレステリック液晶パネル10G、赤色コレステリック液晶パネル10Rを積層した積層カラー表示素子を示す。図2の(B)は、通常モードにおける各パネル10B、10G、10Rの表示と、積層カラー表示素子全体の表示を示す。図2の(C)は、選択モードにおける各パネル10B、10G、10Rの表示と、積層カラー表示素子全体の表示を示す。実施形態の表示装置では、表示切り換え信号が入力される入力部が設けられており、ユーザの操作に応じて表示切り換え信号が入力されると、(B)の通常モードと(C)の選択モードが切り換えられる。
図2の(B)に示すように、通常モードでは、従来例と同様に、各パネル10B、10G、10Rはカラー画像のB成分、G成分、R成分をそれぞれ表示する。これにより、積層カラー表示素子は、フルカラー表示を行う。
図2の(C)に示すように、選択モードでは、パネル10Bをカーソル層として使用し、矩形領域Aでカーソルを表示する。パネル10Gおよび10Rは、ユーザが選択するメニュー形式の複数の表示部分を表示する。図2の(C)の例では、8個の表示部分が表示される。パネル10Bの矩形領域Aは、ユーザの操作に従って各表示部分に重なるように移動する。矩形領域A以外の部分は初期化状態であり、矩形領域Aは初期化状態から変化された状態である。例えば、コレステリック液晶において、プレーナ状態を初期化状態、フォーカルコニック状態を書き込み後状態とすると、領域Aでは、青色を反射しない状態、すなわちパネル10Gおよび10Rの緑色と赤色を合わせた表示が見え、領域A以外では、青色が反射され、パネル10Gおよび10Rの緑色と赤色を合わせた表示全体が青味を帯びて表示される。いずれにしろ、青味を帯びていない領域Aと、青味を帯びているそれ以外の領域が表示され、カーソルである領域Aが識別できる。なお、フォーカルコニック状態を初期化状態とし、プレーナ状態を書き込み後状態とすると、領域Aは青味を帯びた部分として識別される。
図3は、パネル10Bの矩形領域Aを書き換える処理を説明する図であり、(A)が移動(書換え)前の状態を、(B)がリセットした初期化後の状態を、(C)が移動(書換え)後の状態を示し、上側がパネル10Bの表示を、下側が積層カラー表示素子の表示を示す。
図3の(A)に示すように、パネル10Bはカーソルに対応する矩形領域Aを表示し、積層カラー表示素子10は、メニュー表示と矩形領域Aを表示している。カーソルを移動する場合、パネル10Bをリセットして初期化状態にする。これにより、パネル10Bは、図3の(B)に示すように、何も表示しない状態になる。この時、残りのパネル10Gおよび10Rの表示は維持されるので、積層カラー表示素子10は、矩形領域Aを表示しない以外、移動前のメニュー表示を維持する。次に、パネル10Bに、移動後のカーソルに対応する矩形領域A’を書き込む。これにより、図3の(C)に示すように、パネル10Bは矩形領域A’を表示し、積層カラー表示素子10は、メニュー表示と移動後の矩形領域Aを表示する。
以上説明したように、本発明の積層カラー表示素子10は、通常モードでは3枚のパネルの表示機能をフルに活用してフルカラー表示を行い、選択モードでは3枚のパネルのうちの1枚をカーソル表示用パネル(ここでは青色パネル)としてカーソル表示を行う。カーソル表示用パネルでは、矩形領域を表示するだけで、ほかの画像を表示する必要がないので、全面を同時リセットした後矩形領域に対応するスキャンラインとデータラインを選択して矩形領域を同時に書き込むことが可能であり、高速で書込みが行える。従って、高速で移動するカーソルを表示することが可能である。選択モードでは、メニュー画像およびカーソルのフルカラー表示は行えないが、メニュー画面の選択を行えればよいので、特に問題は生じない。
なお、上記の例では、青色パネル10Bでカーソル表示を行ったが、緑色パネル10Gまたは赤色パネル10R、または2枚のパネルでカーソル表示を行うことも可能である。黒色の文字ある画像データを表示する場合、青色パネル10Bが反射状態にあると青の文字に見えることになるが、赤色の文字や緑色の文字であるよりも、青色文字の方が輝度が黒に近く違和感がないため、青色パネルをカーソル表示用に使用することが望ましい。
以下、実施形態のコレステリック液晶表示装置をさらに説明する。
図4は、実施形態で使用する表示素子10の構成を示す図である。図4に示すように、この表示素子10は、見る側から順番に、青(ブルー)用パネル10B、緑(グリーン)用パネル10G、および赤(レッド)用パネル10Rの3枚のパネルが積層されており、レッド用パネル10Rの下側には光吸収層17が設けられている。パネル10B、10Gおよび10Rは、同じ構成を有するが、パネル10Bは反射の中心波長が青色(約480nm)、パネル10Gは反射の中心波長が緑色(約550nm)、パネル10Rは反射の中心波長が赤色(約630nm)になるように、液晶材料およびカイラル材が選択され、カイラル材の含有率が決定されている。パネル10B、10Gおよび10Rは、青層用制御回路18B、緑層用制御回路18Gおよび赤層用制御回路18Rで、それぞれ駆動される。
図5は、図4の表示素子10を構成する3枚のパネル10B、10G、10Rのうちの1枚のパネル10Aの基本構成を示す図である。3枚のパネル10B、10G、10Rは、反射波長以外はほぼ共通の構成を有する。実施形態で使用するパネルについて、図5を参照して説明する。
図5に示すように、表示素子10Aは、上側基板11と、上側基板11の表面に設けられた上側電極層14と、下側基板13の表面に設けられた下側電極層15と、シール材16と、を有する。上側基板11と下側基板13は、電極が対向するように配置され、間に液晶材料を封入した後シール材16で封止される。なお、液晶層12内にスペーサが配置されるが図示は省略している。上側電極層14と下側電極層15の電極には、駆動回路18から電圧パルス信号が印加され、それにより液晶層12に電圧が印加される。液晶層12に電圧を印加して、液晶層12の液晶分子をプレーナ状態またはフォーカルコニック状態にして表示を行う。前述のように、この表示素子10Aは、メモリ性を有しており、プレーナ状態およびフォーカルコニック状態は、パルス電圧の印加を停止した後も維持される。
上側基板11と下側基板13は、いずれも透光性を有しているが、パネル10Rの下側基板13は不透光性でもよい。透光性を有する基板としては、ガラス基板があるが、ガラス基板以外にも、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)などのフィルム基板を使用してもよい。
上側電極層14と下側電極層15の電極の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO: Indium Tin Oxide)が代表的であるが、その他インジウム亜鉛酸化物(IZO: Indium Zic Oxide)などの透明導電膜を使用することが可能である。
上側電極層14の透明電極は、上側基板11上に互いに平行な複数の帯状の上側透明電極として形成され、下側電極層15の透明電極は、下側基板13上に互いに平行な複数の帯状の下側透明電極として形成されている。そして、上側基板11と下側基板13は、基板に垂直な方向から見た時に、上側電極と下側電極が交差するように配置され、交差部分に画素が形成される。電極上には絶縁性のある機能膜が形成される。機能膜は、液晶表示素子の電極間の短絡を防止したり、ガスバリア層として液晶表示素子の信頼性を向上させる機能を有する薄膜である。この薄膜が厚いと駆動電圧を高くする必要があり、汎用STNドライバで駆動回路を構成するのが難しくなる。逆に、薄膜がないとリーク電流が流れるため、消費電力が増大するという問題を生じる。ここでは、薄膜は比誘電率が約5であり、液晶よりもかなり低いため、薄膜の厚さは約0.3μm以下とするのが適している。
なお、この絶縁性薄膜は、SiO2の薄膜、あるいは配向安定化膜として知られているポリイミド樹脂、アクリル樹脂などの有機膜で実現できる。
上記のように、液晶層12内にスペーサが配置され、上側基板11と下側基板13の間隔、すなわち液晶層12の厚さを一定にする。スペーサは、一般に樹脂製または無機酸化物製の球体であるが、基板表面に熱可塑性の樹脂をコーティングした固着スペーサを使用することも可能である。このスペーサによって形成されるセルギャップは3.5μm〜6μmの範囲が適正である。セルギャップがこの値より小さいと反射率が低下して暗い表示になり、逆のこの値より大きいと駆動電圧が上昇して汎用ドライバICによる駆動が困難になる。
液晶層12を形成する液晶組成物は、ネマティック液晶混合物にカイラル材を10〜40重量%(wt%)添加したコレステリック液晶である。ここで、カイラル材の添加量は、ネマティック液晶成分とカイラル材の合計量を100wt%とした時の値である。
ネマティック液晶としては、従来から公知の各種のものを使用可能であるが、誘電率異方性(Δε)が15〜50の範囲の液晶材料であることが望ましい。誘電率異方性がこの範囲より低すぎると、駆動電圧が高くなってしまい、逆にこの範囲より高すぎると駆動電圧自体は低下するが比抵抗が小さくなり、特に高温時の消費電力が増大し、素子としての安定性や信頼性が低下し、画像欠陥、画像ノイズが発生しやすくなる。誘電率異方性が15以上であれば、駆動電圧が比較的低くなり、20以上であれば、使用可能なカイラル材の選択範囲が広くなる。
また、屈折率異方性(Δn)は、0.18〜0.24であることが望ましい。屈折率異方性が、この範囲より小さいと、プレーナ状態の反射率が低くなり、明るさの不足した暗い表示となり、この範囲より大きいと、フォーカルコニック状態での散乱反射が大きくなるため、色純度とコントラストが不足したぼやけた表示となってしまうのに加えて、粘度も高くなり、応答速度が低下する。粘度は低い方が低温時の電圧上昇やコントラスト低下を抑制できる。
図6は、実施形態の表示装置の全体構成を示す図である。表示素子10は、640×480画素を有する。電源21は、例えば3V〜5Vの電圧を出力する。昇圧部22は、DC−DCコンバータなどのレギュレータにより、電源21からの入力電圧を36V〜40Vに昇圧する。この昇圧レギュレータは、専用ICが広く使用されており、そのICにはフィードバック電圧を設定することにより、昇圧電圧を調整する機能を有している。従って、抵抗による分圧などにより生成した複数の電圧を選択してフィードバック端子に供給するように構成することで、昇圧電圧を変化させることが可能である。
電圧切替部23は、抵抗分割などにより各種の電圧を生成する。電圧切替部23におけるリセット電圧と階調書込み電圧のスイッチングには、高耐圧のアナログスイッチを用いてもよいが、トランジスタによる単純なスイッチング回路を使用することも可能である。電圧安定部24は、電圧切替部23から供給される各種の電圧を安定化させるために、オペアンプのボルテージフォロア回路を使用することが望ましい。オペアンプは、容量性負荷に対して強い特性を有するものを使用するのが望ましい。なお、オペアンプに接続する抵抗を切り替えることにより増幅率を切り替える構成が広く知られており、この構成を使用すれば、電圧安定部24から出力する電圧を容易に切り替えることが可能である。
原振クロック部25は、動作の基本となる基本クロックを発生する。分周部26は、基本クロックを分周して、後述する動作に必要な各種クロックを生成する。
制御回路27は、基本クロック、各種クロックおよび画像データDに基づいて制御信号を生成して、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29に供給する。制御回路27は、マイクロコンピュータやFPGAなどで実現される。コモンドライバ28およびセグメントドライバ29は、3枚のパネル10B、10G、10Rをそれぞれ独立に駆動する。コモンドライバ28は各パネルの480本のスキャンラインを駆動し、セグメントドライバ29は640本のデータラインを駆動する。本実施形態では、ドライバICは、汎用の2値出力のSTNドライバを使用した。利用可能な汎用STNドライバは、様々なものが使用可能である。
セグメントドライバ29へ入力する画像データは、フルカラーの原画像を誤差拡散法によりRGB各16階調の4096色のデータに変換した、4ビットのデータD0−D3である。この階調変換は、高い表示品質を得られる方法が好ましく、誤差拡散法のほかにブルーノイズマスク法などが使用できる。
図7は、3枚のパネル10B、10G、10Rを駆動するコモンドライバ28とセグメントドライバ29を汎用STNドライバを使用して構成した時の回路図である。図示のように、青色パネル10Bのスキャンラインを駆動するコモンドライバ28Bは、2個のドライバIC28B−1および28B−2で構成され、データラインを駆動するセグメントドライバ29Bは、1個のドライバIC29Bで構成される。他のパネルについても同様である。汎用STNドライバICを使用した駆動回路は広く知られており、ここでは説明は省略する。また、パネルのリセット処理および表示データの書込み処理は、特許文献1などに記載されており、広く知られているので、説明は省略するが、書込み処理では、表示する階調に応じて、所定の電圧パルスを印加する回数を調整するものとする。
なお、上記の例では、スキャンラインを駆動するコモンドライバ28はパネルのごとに設けたが、パネル10Bをカーソル表示用に使用する場合には、パネル10G、10Rのコモンドライバ28を共通にすることも可能である。
図8は、制御回路27の機能ブロック図である。入力処理部31は、スイッチやセンサなどからの入力信号のほかに、画像の表示およびカーソル表示の支持、カーソルの移動指示などユーザによる操作信号が入力される。ここでは、「画像表示」、「メニュー表示」およびメニュー表示における「カーソル移動」の3命令が入力されるとする。画像格納部32は、表示する画像データDを保持する。画像データDは、3枚のパネルのそれぞれの画素の輝度値を表すデータで構成される。表示内容制御部33は、入力部で受けた命令に応じて表示素子10で所望の表示を行うように各部を制御する。画像処理部34は、画像格納部32から読み出した画像データDに対して、選択モードでパネル10Gおよび10Rに表示する輝度値を算出する。この算出処理については後述する。
輝度値・印加時間変換テーブル35は、輝度値に対応する電圧の印加時間を記憶している。ここでは、輝度値が低いほど印加時間が長くなる。
制御対象パネル選択部36は、リセット処理および書込み処理を行うパネルを選択する。電極選択部37は、対象パネルで処理対象の電圧を印加するスキャンラインおよびデータラインを選択する。
駆動信号生成部38は、電圧安定部24から供給される電圧を、制御対象パネル選択部36および電極選択部37で指定されたパネルのスキャンラインおよびデータラインに対して印加するように、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29の駆動信号を生成して出力する。
図9は、実施形態の表示装置の基本処理動作を示すフローチャートである。
ステップS11では、操作ボタンや操作パネルなどを利用したユーザの操作に応じた表示指示を入力処理部31で受け付ける。表示指示は、制御プログラムで決められた順番で自動的に設定される場合もある。表示指示は、「通常モード」と「選択モード」のいずれかであり、さらに「選択モード示」は「メニュー表示」と「カーソル移動」のいずれかである。「メニュー表示」は、それまで「通常モード」の表示を行っていた状態から、「選択モード」のための表示を行う状態に変化させる指示である。「カーソル移動」は、すでに「選択モード」で、「メニュー表示」が行われている状態でのカーソルの移動の指示である。
ステップS12では、表示指示が「選択モード」であるか判定し、「選択モード」であればステップS13に進み、「選択モード」でなければステップS21に進む。
ステップS13では、表示指示が「カーソル移動」であるか判定し、「カーソル移動」であればステップS41に進み、「カーソル移動」でなければ、すなわち「メニュー表示」であればステップS31に進む。
ステップS21からS23は、従来例と同様に、3枚のパネル10B、10G、10Rを使用してフルカラー表示を行う処理である。ステップS21では、3枚のパネル10B、10G、10Rに対してリセット処理を行い、初期化状態(ここではプレーナ状態)にする。ステップS22では、画像データを読み込み、画像格納部32に記憶する。ステップS23では、3枚のパネル10B、10G、10Rに対して書込み処理を行い、フルカラー表示を行う。
ステップS31からS34は、2枚のパネル10G、10Rにメニュー画面を表示する処理である。ステップS31では、2枚のパネル10G、10Rに対してリセット処理を行い、初期化状態にする。ステップS32では、画像データを読み込み、画像格納部32に記憶する。ここで読み込む画像データが、メニュー表示用の2枚のパネル10G、10Rの画像データのみである場合には、ステップS33を実行せずにステップS34に進む。読み込む画像データが、フルカラー表示用のデータである場合には、ステップS33に進む。ステップS33では、フルカラー表示用のRGB画像データを補正して、B画像データの表示内容をRG画像データに加える処理を行う。これにより、「メニュー表示」において、B画像データが失われることなく表示される。この補正処理については後述する。ステップS34では、RG画像データを2枚のパネル10G、10Rに書込み、「メニュー表示」画面を表示し、ステップS41に進む。
ステップS41では、1枚のパネル10Bに対してリセット処理を行い、初期化状態にする。ステップS42では、パネル10Bに表示する矩形のカーソル領域を指示するデータを生成する。ステップS43では、カーソル領域を指示するデータに基づいて、パネル10Bにカーソル領域を書き込む。
図10および図11は、ステップS21からS23で行われる通常モードの処理をより詳しく示すフローチャートである。
ステップS51では、電圧切替部23および電圧安定部24でリセット電圧を生成する。
ステップS52では、制御対象パネル選択部36が3枚のパネル10B、10G、10Rをすべて制御対象のパネルとして選択する。
ステップS53では、電極選択部37が480本のスキャンラインおよび640本のデータラインをすべて選択する。
ステップS54では、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29が、3枚のパネル10B、10G、10Rにおいて、480本のスキャンラインと640本のデータラインにリセット電圧を同時に印加する。これにより、すべての画素がプレーナ状態、すなわち初期化状態になる。この状態が最高輝度の状態である。具体的には、スキャンラインとデータライン間に数十msのパルス幅の±36Vの電圧パルスを印加する。
ステップS55では、電圧切替部23および電圧安定部24で階調電圧を生成する。
ステップS56では、表示するRGB画像データを画像格納部32に記憶する。
ステップS57では、時間カウンタtの値を2Tに設定する。
ステップS58では、コモンドライバ28の選択コモン電極(スキャンライン)番号X=0とする。
ステップS59では、セグメントドライバ29の選択セグメント電極(データライン)番号Y=0とする。
ステップS60では、X番目のスキャンラインの画像データ(1ライン分)を画像格納部32から取得する。
ステップS61では、コモンドライバ28に、X番目の(スキャン)ラインを選択状態に設定し、X番目以外のラインを非選択状態に設定する。
ステップS62では、1ライン分の画像データのうちY番目の画素のRGB輝度値RXY、GXY、BXYを取得する。
ステップS63では、t=Tであるか判定し、t=TであればステップS67に、t≠TであればステップS64に進む。
ステップS64では、R画素の輝度値RXYが2または3であれば、赤色パネル10Rのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か1であれば非選択状態に設定する。
ステップS65では、G画素の輝度値GXYが2または3であれば、緑色パネル10Gのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か1であれば非選択状態に設定する。
ステップS66では、B画素の輝度値BXYが2または3であれば、青色パネル10Bのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か1であれば非選択状態に設定する。この後ステップS70に進む。
ステップS67では、R画素の輝度値RXYが1または3であれば、赤色パネル10Rのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か2であれば非選択状態に設定する。
ステップS68では、G画素の輝度値GXYが1または3であれば、緑色パネル10Gのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か2であれば非選択状態に設定する。
ステップS69では、B画素の輝度値BXYが1または3であれば、青色パネル10Bのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か2であれば非選択状態に設定する。この後ステップS70に進む。
ステップS70では、Yを1増加させる。
ステップS71では、Yが640以下であるか判定し、640以下であれば、ステップS62にもどる。以下、Yが641になるまでS62からS71を繰り返すことにより、1スキャンライン分のセグメントドライバの出力が設定される。
ステップS72では、tミリ秒の間所定の階調電圧を印加する。1サブシーケンスの1スキャンライン分の電圧パルスの印加が終了する。
ステップS73では、Xを1増加させる。
ステップS74では、Xが480以下であるか判定し、480以下であれば、ステップS59に戻る。以下、Xが481になるまでS59からS74を繰り返すことにより、1サブシーケンスの全スキャンラインの電圧パルスの印加が終了する。この後ステップS75に進む。
ステップS75では、tがTであるか判定し、Tでなければ、すなわち2TであればステップS76に進み、Tであれば終了する。
ステップS76では、tをTに設定した後、ステップS58に戻る。
以上の処理により、輝度値0の画素に対しては階調電圧の印加が行われず、輝度値1の画素に対しては階調電圧がTミリ秒間印加され、輝度値2の画素に対しては階調電圧が2Tミリ秒間印加され、輝度値3の画素に対しては階調電圧が3Tミリ秒間印加されることになる。これにより、階調電圧の印加が輝度値に対応した時間期間行われる。最高輝度値からの輝度値の低下量は、ほぼ階調電圧の印加時間に比例するので、各画素は所定の輝度値になる。階調電圧は、例えば2tミリ秒の±24Vの電圧パルスである。なお、スキャンラインおよび/またはデータラインが非選択状態の場合、小さな電圧パルスが印加されるだけなので、液晶の状態はほとんど変化しない。
図12および図13は、ステップS31からS34で行われる「メニュー表示」の命令を受け取った時の処理をより詳しく示すフローチャートである。
ステップS81では、電圧切替部23および電圧安定部24でリセット電圧を生成する。
ステップS82では、制御対象パネル選択部36が2枚のパネル10G、10Rを制御対象のパネルとして選択する。
ステップS83では、電極選択部37が480本のスキャンラインおよび640本のデータラインをすべて選択する。
ステップS84では、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29が、2枚のパネル10G、10Rにおいて、480本のスキャンラインと640本のデータラインにリセット電圧を同時に印加する。これにより、すべての画素がプレーナ状態、すなわち初期化状態になる。
ステップS85では、電圧切替部23および電圧安定部24で階調電圧を生成する。
ステップS86では、表示するRGB画像データを画像格納部32に記憶する。
ステップS87では、RGB画像データDの全画素のRGBデータに対してYCrCb変換を行い、明度Yの値を算出する。
ステップS88では、RGB画像データDの全画素のRGBデータで、Bの値のみ最も明るい輝度値に置き換えたRGBデータに対してYCrCb変換を行い、色差CrとCbの値を得る。
ステップS89では、ステップS87で得られた明度Yと、ステップS88で得られた色差CrとCbに対してRGB変換を行い、補正RG画像データA’を得る。
ステップS90では、時間カウンタtの値を2Tに設定する。
ステップS91では、コモンドライバ28の選択コモン電極(スキャンライン)番号X=0とする。
ステップS92では、セグメントドライバ29の選択セグメント電極(データライン)番号Y=0とする。
ステップS93では、上記の補正RG画像データA’からX番目のスキャンラインの画像データ(1ライン分)を取得する。
ステップS94では、コモンドライバ28に、X番目の(スキャン)ラインを選択状態に設定し、X番目以外のラインを非選択状態に設定する。
ステップS95では、1ライン分の画像データA’のうちY番目の画素のRG輝度値RXY、GXYを取得する。
ステップS96では、t=Tであるか判定し、t=TであればステップS99に、t≠TであればステップS97に進む。
ステップS97では、R画素の輝度値RXYが2または3であれば、赤色パネル10Rのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か1であれば非選択状態に設定する。
ステップS98では、G画素の輝度値GXYが2または3であれば、緑色パネル10Gのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か1であれば非選択状態に設定する。この後ステップS101に進む。
ステップS99では、R画素の輝度値RXYが1または3であれば、赤色パネル10Rのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か2であれば非選択状態に設定する。
ステップS100では、G画素の輝度値GXYが1または3であれば、緑色パネル10Gのセグメントドライバ29のY番目の(データ)ラインを選択状態に、0か2であれば非選択状態に設定する。この後ステップS101に進む。
ステップS101では、Yを1増加させる。
ステップS102では、Yが640以下であるか判定し、640以下であれば、ステップS95にもどる。以下、Yが641になるまでS95からS102を繰り返すことにより、1スキャンライン分のセグメントドライバの出力が設定される。
ステップS103では、tミリ秒の間所定の階調電圧を印加する。1サブシーケンスの1スキャンライン分の電圧パルスの印加が終了する。
ステップ104では、Xを1増加させる。
ステップ105では、Xが480以下であるか判定し、480以下であれば、ステップS92に戻る。以下、Xが481になるまでS92からS105を繰り返すことにより、1サブシーケンスの全スキャンラインの電圧パルスの印加が終了する。この後ステップS106に進む。
ステップS106では、tがTであるか判定し、Tでなければ、すなわち2TであればステップS107に進み、Tであれば終了する。
ステップS107では、tをTに設定した後、ステップS91に戻る。
以上の処理により、2枚のパネル10G、10Rの各画素に対して補正RG画像データA’の輝度値に対応した時間階調電圧の印加が行われ、各画素は所定の輝度値になる。以上のようにして、赤色パネル10Rおよび緑色パネル10Gによるメニュー画面が表示される。
図14は、ステップS41からS43で行われる「カーソル移動」の命令を受け取った時の処理をより詳しく示すフローチャートである。
ステップS111では、電圧切替部23および電圧安定部24でリセット電圧を生成する。
ステップS112では、制御対象パネル選択部36が1枚のパネル10Bを制御対象のパネルとして選択する。
ステップS113では、電極選択部37が480本のスキャンラインおよび640本のデータラインをすべて選択する。
ステップS114では、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29が、1枚のパネル10Bにおいて、480本のスキャンラインと640本のデータラインにリセット電圧を同時に印加する。これにより、すべての画素がプレーナ状態、すなわち初期化状態になる。
ステップS115では、電圧切替部23および電圧安定部24で階調電圧を生成する。
ステップS116では、電極選択部37が、スキャンラインとデータラインのうち、表示するカーソルの領域を通過するスキャンラインとデータラインを選択する。これに応じて、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29において、選択したスキャンラインとデータラインを選択状態に、それ以外を非選択状態に設定する。この設定は、ドライバICに、高速クロックを入力し、非選択状態を示す信号を、対応するクロック数分”0”、”1”、”0”にすることにより短時間で設定可能である。
ステップS117では、コモンドライバ28およびセグメントドライバ29から階調電圧を出力し、カーソル領域に所定期間(例えば3T)印加する。これにより、青色パネル10Bのカーソル領域はほぼ透過状態(最低輝度)になり、カーソル領域が表示される。
以上のように、青色パネル10Bにおけるカーソル領域の書換え処理は短時間のうちに実行可能であり、ユーザの操作に応じて高速にカーソルをシフトさせる表示が行える。
次に、図9のステップS33、図12のステップS87からS89で行った補正RG画像データA’の生成について、図15を参照してさらに説明する。図15の(A)は赤色パネル10Rの表示画面の例を、(B)は緑色パネル10Gの表示画面の例を、(C)は青色パネル10Bの表示画面の例を、示す。また、上側は通常モードで表示される補正前のRGB画像データによる画像を示す。選択モードでは、この通常モード時の画像を「メニュー表示」としてそのまま表示し、カーソルを移動させて選択操作を行う。下側は補正RG画像データA’による画像を示す。
補正前のRGB画像データによれば、青色パネル10Bにも画像が表示される。しかし、下側に示すように、選択モードでは青色パネル10Bにはカーソル領域が表示されるだけである。従って、青色パネル10Bの画像は表示されず失われることになる。青色だけで表示される情報が重要な情報である場合、それが表示されずに正確な選択が行えない場合も起こり得る。そこで、通常モードで青色パネル10Bに表示される画像を、緑色パネル10Gと赤色パネル10Rでも表示して、B画像データの表示が失われないようにする。そのため、(A)および(B)に示すように、赤色パネル10Rおよび緑色パネル10Gにおける補正RG画像データA’の表示では、通常モードでの表示には存在しなかった青色パネル10Bの表示画像に対応する画像が表示される。具体的には、上記のステップS87からS89の処理により行われるが、それに限定されるものではない。
例えば、上記の例では、RGB画像のYCrCb変換を使用したが、ほかの色空間座標に変換するようにしてもよい。
以上説明したように、特許文献2に記載されたように、カーソルの移動により変化する部分の画像を書き換える場合には、書き換える部分のみをリセットして初期化するが、このリセット処理はスキャンラインごとに行う必要があるのに対して、本発明ではカーソル用パネルを一括リセットするので処理時間を大幅に短縮できる。また、特許文献2に記載されたように、初期化した部分に移動したカーソルを画像と共に書き込む場合も、書込み処理はスキャンラインごとに行う必要があるのに対して、本発明ではカーソル用パネルを一括して書き込むことが可能であるので処理時間を大幅に短縮できる。
また、本発明では、特許文献3のようにカーソル専用の表示層(パネル)を設ける必要はない。
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。例えば、上記の実施形態では3層のパネルを積層したフルカラー表示可能な表示装置の例を説明したが、2層のパネルを積層した表示装置で1層のパネルをカーソル用に使用する選択モードに切替可能にすることもできる。
さらに、コレステリック液晶パネルを積層した表示装置の例を説明したが、メモリ性を有するパネルを積層した表示装置であれば、どのような装置にも適用可能である。
また、各表示層(パネル)は、階調表示可能である必要はなく、2値表示でもよい。