しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ひび割れの発生位置が目地305からずれることを考慮して、図7に示したように、目地部材300の止水シート302を目地305よりも広い範囲に亘って配置する必要がある。このことにより、図7に示すように目地部材300の外形形状が複雑となり、目地部材300の外形形状が、形成する目地305に応じきれず、その大きさが目地305の大きさに対して大きくなるという問題があった。
また、この外形形状のため、例えば壁面下地材301とコンクリート310の境界部分にひび割れが発生する可能性があり、その場合、止水シート302及び透水目地材303によって止水を行うことができないという問題があった。
さらに、止水シート302を構成する非加硫ブチルゴムは、コンクリート310に対する付着強度が1kgf/cm2程度であり、コンクリート310からの剥離が生じないための十分な付着強度を有していない。このため、止水シート302がコンクリート310から剥がれる可能性があり、確実に止水を行うことができない虞があるという問題点があった。
また、特許文献1に記載の技術では、目地部材300を型枠に取り付けるために、仮留め手段を目地部材300と型枠との間に設ける必要がある。ここで、仮留め手段としては、例えば両面テープが考えられる。この場合、両面テープの一方の面は型枠表面に接着され、他方の面は目地部材300の壁面下地材301に接着される。両面テープを用いることにより、仮留めを簡便且つ安価で行うことができるとともに、型枠の取り外しを簡便に行うことができる。
しかし、両面テープでは、仮留め程度にしか型枠と目地部材300とを接着させることができない。このため、型枠の表面状態や目地部材300の表面状態によっては、両面テープが型枠又は目地部材300から剥離する場合があり、目地部材300の取り付けを確実に行うことができないという問題があった。一方で、両面テープに代わるものを用いて、目地部材300を型枠に取り付けると、取り付けの強度が高すぎて、目地部材300をコンクリート310に埋設させた状態での型枠の取り外しが困難になるという問題がある。
本発明の目的は、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材の、型枠への取り付けを確実に、且つ安価で簡便に行うことができるとともに、型枠のコンクリートからの取り外しを簡便に行うことができる建築物の施工方法、並びに当該建築物の施工方法に用いる目地部材付きの型枠を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の建築物の施工方法は、建築物の施工方法であって、コンクリートの壁面の目地に応じた外形形状を有する基材と、前記外形形状に沿って前記基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シートとを備えた目地部材を準備する工程と、型枠を準備する工程と、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系シートの外側に、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープを配置し、当該エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの一端部及び他端部を前記型枠に取り付けることにより、前記目地部材を前記型枠に取り付ける工程と、前記目地部材が取り付けられた前記型枠を用いて形成された空間内にコンクリートを打ち込む工程と、前記型枠を前記コンクリートから取り外す工程とを備えたことを特徴とする。
本発明の建築物の施工方法によれば、基材及びエチレン酢酸ビニル樹脂系シートの双方がコンクリートの壁面の目地に応じた外形形状を有している目地部材が準備される。この目地部材は、全体としても、複雑な外形形状を有しておらず、このため、目地部材は、従来よりも小型化されている。また、この目地部材は、エチレン酢酸ビニル樹脂系シートを備えているので、従来(例えば非加硫ブチルゴム)よりも止水性に優れているだけでなくコンクリートへの付着性に優れている。
また、本施工方法によれば、エチレン酢酸ビニル樹脂系シートの外側に、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープを配置し、当該エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの一端部及び他端部を型枠に取り付けることで、目地部材が型枠に取り付けられる。つまり、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープは、一端部及び他端部が型枠に取り付けられた状態で、目地部材が移動しないように拘束する。これにより、目地部材の型枠への取り付けを確実に行うことができる。ここで、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープを構成するエチレン酢酸ビニル系樹脂は、テープ状であればよいので、材料費が少なくて済み、安価である。また、エチレン酢酸ビニル樹脂は、テープ状であっても、目地部材の移動を拘束するのに必要な強度を有しているので、目地部材の型枠への取り付けをより確実に行うことができる。さらに、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの一端部及び他端部を型枠に取り付けるだけで済むので、目地部材の型枠への取り付けが簡便である。
さらに、本施工方法によれば、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープは、型枠の、コンクリートが打ち込まれる側に配置されているため、硬化したコンクリートに固着する。ここで、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの型枠への取り付け箇所が一端部及び他端部に制限されているので、コンクリートが硬化した後においては、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープと型枠との取り付けは、容易に外れる。このため、型枠を、目地部材をコンクリートに埋設させた状態で、コンクリートから簡便に取り外すことができる。
また、係る建築物の施工方法において、前記目地部材を前記型枠に取り付ける工程では、結合部材を用いて、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの前記一端部及び前記他端部を前記型枠に固定すること、が好ましい。これにより、目地部材の型枠への取り付けをより確実に行うことができる。
さらに、係る建築物の施工方法において、前記型枠は木製であり、前記結合部材は金属製であること、がより好ましい。この場合、型枠の強度が結合部材の強度よりも低い。このため、型枠のコンクリートからの取り外しをさらに容易に行うことができる。
また、係る建築物の施工方法において、前記型枠を前記コンクリートから取り外した後、前記コンクリートの表面仕上げを行う工程をさらに備えること、が好ましい。これにより、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープがコンクリートの表面から露出したとしても、それを目立たなくすることができる。
さらに、係る建築物の施工方法において、前記表面仕上げは、前記コンクリートの表面に複数のタイルを配置するタイル仕上げであること、がより好ましい。タイル仕上げには、下地モルタルが用いられる。ところで、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープは、下地モルタルへの付着性に優れている。このため、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープがコンクリートの表面から露出したとしても、その露出部分は、その上に配置される下地モルタルと良好に付着するため、下地モルタルによってしっかりと覆われ隠される。これにより、建築物にタイル仕上げによる美観を付与することができる。
さらに、係る建築物の施工方法において、前記表面仕上げを行う工程は、前記目地部材の前方であって、前記複数のタイル間に形成されるタイル目地に、シーリング材を配置する工程を含むこと、がさらに好ましい。
これにより、目地部材やタイルに変形が生じるような外力が発生したとしても、その外力の少なくとも一部をシーリング材で吸収することができる。
さらに、係る建築物の施工方法において、前記表面仕上げを行う工程は、前記シーリング材と前記目地部材との間にバックアップ材を配置する工程を含むこと、がさらに好ましい。バックアップ材を配置することにより、シーリング材を所定の形状寸法に充填しやすくなる。
さらに、係る建築物の施工方法において、前記基材には、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系シートが配置された側とは反対側において、前記目地部材の長手方向に沿って切欠部が形成されており、前記コンクリートの表面に平行な面において前記切欠部の前記長手方向に垂直な方向における寸法は、前記タイル目地の幅方向における寸法に等しいか、又はそれよりも小さいこと、がより好ましい。これにより、建築物に安定性の高い目地が形成される。
また、本発明の目地部材付き型枠は、型枠と、コンクリートの壁面の目地に応じた外形形状を有する基材と、前記外形形状に沿って前記基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シートとを備えた目地部材と、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系シートの外側に配置され、一端部及び他端部が前記型枠に取り付けられ、前記目地部材を前記型枠に取り付けるためのエチレン酢酸ビニル樹脂系テープとを備えたことを特徴とする。
本発明の目地部材付き型枠によれば、目地部材は、基材及びエチレン酢酸ビニル樹脂系シートの双方がコンクリートの壁面の目地に応じた外形形状を有しているので、全体としても、複雑な外形形状を有していない。このため、目地部材は、従来よりも小型化されている。また、この目地部材は、エチレン酢酸ビニル樹脂系シートを備えているので、従来(例えば非加硫ブチルゴム)よりも止水性に優れているだけでなくコンクリートに対する付着強度も高い。
また、この目地部材付き型枠によれば、エチレン酢酸ビニル樹脂系シートの外側に、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープが配置されて、当該エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの一端部及び他端部が型枠に取り付けられている。これにより、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープは、一端部及び他端部が型枠に取り付けられた状態で、目地部材が移動しないように目地部材の外側から拘束する。これにより、目地部材の型枠への取り付けを確実に行うことができる。ここで、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープを構成するエチレン酢酸ビニル系樹脂は、テープ状であればよいので、材料費が少なくて済み、安価である。また、エチレン酢酸ビニル樹脂は、テープ状であっても、目地部材の移動を拘束するのに必要な強度を有しているので、目地部材の型枠への取り付けをより確実に行うことができる。さらに、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの一端部及び他端部を型枠に取り付けるだけで済むので、目地部材の型枠への取り付けが簡便である。
さらに、この目地部材付き型枠によれば、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープが配置された側が、型枠のコンクリートが打ち込まれる側となるようにして、この型枠を用いることにより、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープは硬化したコンクリートに固着する。ここで、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープの型枠への取り付け箇所が一端部及び他端部に制限されているので、コンクリートが硬化した後においては、エチレン酢酸ビニル樹脂系テープと型枠との取り付けは、容易に外れる。このため、型枠のコンクリートからの取り外しも簡便に行うことができる。
本発明の建築物の施工方法及び目地部材付き型枠によれば、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材の、型枠への取り付けを確実に、且つ安価で簡便に行うことができるとともに、型枠のコンクリートからの取り外しを簡便に行うことができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る建築物の施工方法によって構築される建築物の外周壁の主構造をなす躯体の概略的な構成を示す断面図である。
本実施の形態では、少なくとも、図1に示すようなコンクリート製の躯体を主構造とする建築物1を構築する。そして、この躯体には、表面仕上げが施される(後述)。
この建築物1は、地面から鉛直方向に立設する躯体として、外周壁2を備える。図1に示す外周壁2の壁面2aは、外周壁2の厚み方向に垂直な面であって、表面仕上げが施される前においては、建築物1の外側表面となっている。
外周壁2は、鉄筋コンクリート製であり、外周壁2の躯体をなすコンクリート内には、横筋3や縦筋4が埋設されている。さらに、コンクリート内には、鉛直方向に沿って配置された中空のパイプ5が埋設されており、このパイプ5の中空部には、無収縮モルタル6が充填されている。パイプ5は、コンクリートとの界面付着がほとんどない材料で構成されており、例えば塩化ビニル製である。パイプ5は、外周壁2の鉛直方向に並ぶ複数の横筋3に鉄製の番線(図示せず)によって結束されている。
また、図1に示すように、外周壁2には、目地部材20(図3参照)が、壁面2aから一部露出するように、鉛直方向に沿ってコンクリートに埋設されている(後述)。目地部材20は、壁面2aの水平方向において等間隔(例えば3mピッチ)で配置される。目地部材20がコンクリートに埋設されることで、それらの間には、境界面が形成される。この境界面に対応するコンクリート側の面を目地10という。目地10は、壁面2aにおいて、鉛直方向に沿う長い溝状の凹部をなしている。また、目地部材20には、図1や図3に示すように、切欠部21bが壁面2a側に形成されている。切欠部21bは、壁面2aにおいて、鉛直方向に沿う長い溝状の凹部をなしている。目地10の溝形状(凹部形状)は、円弧形状であり、切欠部21bの溝形状(凹部形状)は、台形状である。このように、外周壁2において目地10に対応する位置に、切欠部21bを備える目地部材20を埋設することにより、コンクリート内にひび割れが発生した場合、そのひび割れは切欠部21bを備える目地部材20に向かって誘発される。また、この外周壁2では、ひび割れがパイプ5と切欠部21bを備える目地部材20との間に誘発されやすくなっている。これは、パイプ5がコンクリートとの間で界面付着をほとんどしていないために、パイプ5を埋設した部分では、外周壁2の厚み方向における寸法が、パイプ5を埋設していない部分よりも小さく(薄く)なっているからである。
続いて、本実施の形態に係る建築物の施工方法について説明する。
図2は、図1に示す建築物1の外周壁2を構築するための施工方法を示すフローチャート(工程図)である。本実施の形態では、外周壁2の躯体の壁面2aに、タイル仕上げを施すことで建築物1を構築する。
図2において、まず、ステップS10では、図3に示す目地部材20を準備する。
目地部材20は、図3に示すように、平面と曲面で構成された略かまぼこ型の断面形状を有する。この目地部材20は、基材21と、エチレン酢酸ビニル樹脂系シート(以下、「EVAシート」という)22とを備えている。基材21は、図1に示す目地10に応じた外形形状を有する。EVAシート22は、該外形形状に沿って基材21に配置されており、基材21の表面の一部(曲面)を覆っている。つまり、基材21及びEVAシート22の双方がコンクリートの壁面2aの目地10に応じた外形形状を有している。なお、本実施の形態では、目地10の形状、基材21のEVAシート22側の外形形状、EVAシート22の外形形状は、円弧状である。
基材21は、無収縮グラウト又はポリマーセメントモルタルなどのセメント系基材で構成されている。基材21は、EVAシート22に覆われていない平らな面21a,21a(以下に説明する切欠部21bを除く表面)を有する。これらの面21a,21aは、外周壁2の壁面2aと略同一平面を構成する。
また、基材21には、EVAシート22が配置された側とは反対側において、切欠部21bが基材21の長手方向に沿って形成されている。基材21に切欠部21bを形成することで、基材21を破断しやすくしている。なお、本実施の形態では、基材21の断面における切欠部21bの形状は、外側に向かうにつれて拡がる台形である。
ここで、上記切欠部21bが形成された目地部材20の準備方法(製造方法)の一例を説明する。
まず、EVAシート22を、目地10に応じた外形形状を有する金型に配置する。続いて、切欠部21bに対応する位置に、切欠部21bの形状に応じた外形形状(台形形状)を有する棒状部材(図示せず)を配置する。その後、棒状部材とEVAシート22との間に、基材21を構成するセメント系基材を流入させる。そして、セメント系基材の硬化に伴ってセメント系基材と棒状部材とが互いに固着する前に、棒状部材をセメント系基材から取り出す。このようにすることで、切欠部21bが形成された目地部材20を容易に準備(製造)することができる。
ところで、目地部材20の製造時において、セメント系基材(基材21)と棒状部材とが互いに固着した後に、基材21を傷付けずに、棒状部材をセメント系基材から取り出そうとすると、棒状部材を破損させることが考えられる。なお、棒状部材を破損させずに取り出そうとすると、基材21を傷付ける虞がある。しかし、上述した切欠部21bの形成方法によれば、棒状部材を破損させる必要がないので、棒状部材を再利用することができる。このため、目地部材20を安価で準備することができる。なお、棒状部材を構成する材料は、セメント系基材に固着しにくい材質であれば、いかなる材料であってもよい。
EVAシート22は、優れた止水性を有する。このため、目地10にひび割れが生じたとしても、当該ひび割れに水が浸入するのを防止することができる(目地部材20の止水機能)。具体的には、EVAシート22は、伸び率が非常に高く、ひび割れなどによる変形に追従する。さらに、EVAシート22は、表面(両面)が起毛しており、非加硫ブチルゴムに比較して、セメント系基材などに対する付着強度が高い。セメント系基材に対する付着強度は、非加硫ブチルゴムが1kgf/cm2であるのに対して、EVAシート22が9kgf/cm2である。このように、EVAシート22に高い付着強度を確保することにより、目地部材20の止水機能を、非加硫ブチルゴムを用いた場合よりも確実に高くすることができる。
ここで、上述したように、基材21に切欠部21bを形成して基材21を破断しやすくしておくことで、建築物1の外周壁2に予想外の外力が加わっても、先に基材21が破断される。このため、EVAシート22の破れや、EVAシート22のコンクリートからの剥離が起こりにくくなる。そして、基材21が破断したとしても、EVAシート22は、コンクリートに付着した状態を維持したまま、破断した基材21を保持することができるので、目地部材20の止水機能が損なわれることはない。
本実施の形態では、EVAシート22が外周壁2の躯体をなすコンクリートから剥離するよりも前、且つ、EVAシート22が破れるよりも前に、基材21が確実に破断されるように、切欠部21bの深さ(面21aからの深さ)などが予め設計されている。
続くステップS20では、堰板としての型枠200,200’(図4(a),図4(b),図5(a)参照)を準備する。型枠200,200’としては、ベニヤ合板などの合板パネル(木製)を用いることが好ましい。これにより、安価に型枠200を準備することができる。より好ましくは、打ち込んだコンクリートを剥がれやすくするための剥離材が表面に塗布されているものを用いる。続いて、目地部材20を型枠200に取り付ける(ステップS30)。なお、本実施の形態では、型枠200’に、目地部材20を取り付けない。
目地部材20の型枠200への取り付けは、例えば以下のように行う。
まず、図4(a)の正面図に示すように、クラフト粘着テープなどの粘着テープ90を用いて、型枠200に配置される目地部材20の位置決めを行う。続いて、上述したEVAシート22と同じエチレン酢酸ビニル樹脂系シートを、例えば幅1cm,長さ10cmの帯状(テープ状)に切断した帯状部材(以下、「EVAテープ」という)100を、EVAシート22の外側表面に密着するように配置する。EVAテープ100は、1本の目地部材20に、複数枚、配置される。
次に、結合部材としての釘110を用いて、EVAテープ100の一端部及び他端部を型枠200に固定する。釘110としては、型枠200よりも強度の高いもの、例えば金属製のものを用いることができる。好ましくは、釘110として、錆が発生しにくいステンレス製のものを用いる。釘110は、図4(b)の断面図に示すように、型枠200の表面に対して斜めに打ち込まれる。これにより、型枠200と、目地部材20(面21a,21a)との密着性が高まり、目地部材20は、型枠200にしっかりと確実に固定される。ただし、しっかりと固定しすぎると、後述する脱型が困難となるため、釘110を打ち込む方向は、型枠200の表面に垂直な方向に近い方向であることが好ましい。また、本実施の形態では、1枚のEVAテープ100に対して用いる釘110の数は、2本である。このように、釘110の数を最少にとどめることにより、後述する脱型を容易にしている。
そして、位置決めに用いた粘着テープ90を型枠200から剥離する。これにより、目地部材20の型枠200への取り付けを完了する。このようにして、目地部材20付きの型枠200が形成される。この状態では、目地部材20は、EVAテープ100によって外側から拘束されているため、型枠200上において移動する(位置がずれる)ことはない。
そして、外周壁2の躯体を構築する(ステップS40〜S60)。
具体的には、まず、図5(a)に示すように、上述した目地部材20付きの型枠200や、目地部材20が取り付けられていない型枠200’を設置する(ステップS40)。なお、ステップS40において型枠200,200’を設置する際には、横筋3、横筋4、及び、無収縮モルタル6が充填されたパイプ5や、型枠200,200’を支持するためのセパレータや支保工(図示せず)なども所定位置に配置される。このとき、パイプ5は、横筋3に鉄製の番線によって結束される。
続いて、型枠200,200’を用いて形成された空間内(EVAテープ100が配置されている側)に、コンクリート(セメント系基材)を打ち込む(ステップS50;図5(b)参照)。ここで、打ち込まれたコンクリートは、EVAテープ100及び型枠200の間にもわずかに流入する。このため、EVAシート22が壁面2aから露出しにくくなる。
そして、コンクリートが硬化した後で、型枠200,200’をコンクリートから取り外す脱型を行う(ステップS60)。
釘110が打ち込まれている型枠200の取り外しは、釘110が打ち込まれていない型枠200’の取り外しほどは容易ではない。しかし、釘110の頭部がコンクリート内に埋設されているため、型枠200のコンクリート及び目地部材20からの取り外しも比較的容易である。ここで、上述したように、型枠200に木製のものを用い、且つ、釘110に金属製のものを用いることで、型枠200の強度が釘110の強度よりも確実に低くなるため、型枠200の取り外しをさらに容易にすることができる。一方で、目地部材20は、EVAシート22の高い付着強度によって、コンクリートと強固に接合している。このため、脱型の際、目地部材20がコンクリートから脱落することはなく、コンクリートに埋設された状態で残存する。また、EVAテープ100も、その高い付着強度によって、コンクリートに固着しており、コンクリートに残存する。
脱型後には、釘110の先端部(型枠200内に配置されていた部分)が壁面2aから突出しているので、当該突出部分を切断する。これにより、作業員などの安全が確保される。こうして、図1に示したような外周壁2の躯体が建築物1の一部として構築される。
続くステップS70では、上述したように構築した外周壁2の躯体の壁面2aに、表面仕上げとしてタイル仕上げを施す。これにより、外周壁2にタイル仕上げによる美観を付与することができる。タイル仕上げは、図6に示すように、壁面2aに、下地モルタル7、張付けモルタル8、及び複数枚のタイル9を、この順で配置することで行う。下地モルタルの厚さは、例えば15mmであり、張付けモルタル8の厚さは、例えば8mmである。張付けモルタル8を配置することにより、下地モルタル7とタイル9とが接合される。少なくとも下地モルタル7を壁面2aに配置することで、釘110やEVAテープ100が壁面2aから露出していたとしても、それらの露出部分を覆うことができる。ここで、EVAテープ100は、下地モルタル7への付着性に優れている。このため、EVAテープ100の露出部分は、その上に配置される下地モルタル7と良好に付着するため、下地モルタル7によってしっかりと覆われ隠される。
また、下地モルタル7を配置する際、目地部材20の切欠部21bの前方であって、2枚のタイル9,9間に形成されるタイル目地に、バックアップ材7’が配置される。バックアップ材7’は、クッション性を有する材料(例えば、発泡プラスチック)で構成される。バックアップ材7’は、切欠部21bに入り込まないように配置されており、このため、切欠部21bとバックアップ材7’で画成される領域は空洞部となる。さらに、バックアップ材7’の前方であって、2枚のタイル9,9間に形成されるタイル目地には、シーリング材8’が配置される。シーリング材8’としては、弾性を有する不定形のものが用いられる。本実施の形態では、シーリング材8’を配置すべきスペースの後方にバックアップ材7’を配置しているので、不定形のシーリング材8’を所定の寸法、例えばタイル目地の寸法に充填しやすい。また、シーリング材8’を配置することにより、目地部材20やタイル9に変形が生じるような外力が発生したとしても、その外力の少なくとも一部をシーリング材8’で吸収することができる。
上述したような工程を経ることにより、躯体の壁面2aに表面仕上げが施された外周壁2(図6)が構築される。また、外周壁2以外の部分(図示せず)も構築することにより建築物1が構築される。
以上詳細に説明したように、建築物1(外周壁2)の施工方法によれば、ステップS10において、基材21及びEVAシート22の双方がコンクリートの壁面2aの目地10に応じた外形形状を有している目地部材20が準備される。この目地部材20は、全体としても、複雑な外形形状を有しておらず、このため、目地部材20は、複雑な外形形状を有する目地部材よりも小型化されている。また、この目地部材20は、EVAシート22を備えているので、従来(例えば非加硫ブチルゴム)よりも、コンクリートを構成するセメント系基材に対する付着強度が高く、止水性も優れている。
また、本施工方法によれば、EVAシート22の外側に、EVAテープ100を配置し、当該EVAテープ100の一端部及び他端部を型枠200に取り付けることで、目地部材20が型枠200に取り付けられる。つまり、EVAテープ100は、一端部及び他端部が型枠200に取り付けられた状態で、目地部材20が移動しないように拘束する。これにより、目地部材20の型枠200への取り付けを確実に行うことができる。ここで、EVAテープ100を構成するエチレン酢酸ビニル系樹脂は、帯状(テープ状)であればよいので、材料費が少なくて済み、安価である。また、エチレン酢酸ビニル樹脂は、テープ状であっても、目地部材20の移動を拘束するのに必要な強度を有しているので、目地部材20の型枠200への取り付けをより確実に行うことができる。さらに、EVAテープ100の一端部及び他端部を型枠200に取り付けるだけで済むので、目地部材20の型枠200への取り付けが簡便である。このため、目地部材20付きの型枠200を建築物1の施工時に容易且つ迅速に準備することができる。
さらに、本施工方法によれば、EVAテープ100及び釘110の頭部は、型枠200の、コンクリートが打ち込まれる側に配置されているため、硬化したコンクリートに固着する。ここで、EVAテープ100の型枠200への取り付け箇所が一端部及び他端部に制限されているので、コンクリートが硬化した後においては、EVAテープ100と型枠200との取り付けは、容易に外れる。このため、型枠200のコンクリートからの取り外しも簡便に行うことができ、もって、建築物1の施工作業がはかどる。
したがって、上述した施工方法は、従来よりも小型化した目地部材20であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材20の、型枠200への取り付けを確実に、且つ安価で簡便に行うことができるとともに、型枠200のコンクリートからの取り外しを簡便に行うことができる。
また、上記施工方法によれば、上記EVAテープ100の型枠200への取り付けの際、釘110が用いられる。このため、目地部材20を傷付けることがない。また、釘110を用いているので、上記取り付けの際、型枠200と目地部材20との間、つまり、型枠200に当接する目地部材20の面21a,21aに、接着材(例えば、両面テープ)を配置する必要がない。
なお、上記取り付けに、EVAテープ100及び釘110を用いずに、型枠200と目地部材20とを接着する接着材(例えば両面テープ)のみを用いた場合、以下のような不具合が発生する。第1に、型枠200が木製であるために、又は、型枠200の表面に塗布されている剥離材のために、十分な接着強度が得られない。第2に、型枠200や目地部材20の表面が濡れていると接着材を用いることができないため、例えば雨天時には、接着材の配置を、型枠200を収容可能な広い屋内で行う必要があり作業性が悪い。第3に、接着材(特に、厚みのある両面テープ)を用いると、型枠200における目地部材20の位置がずれる場合がある。これに対して、本施工方法は、釘110を用いているので、型枠200の表面状態に関わらず、確実に取り付けを行うことができる。このため、コンクリート打ち込み中などにおける型枠200の脱落の虞もない。さらには、雨天時であっても屋外などで取り付け作業を行うことができ、作業性が高い。また、釘110を用いているので、目地部材20の位置がずれにくい。
一方で、釘110を用いて、目地部材20を型枠200に取り付けると、取り付けの強度が高すぎて、目地部材20をコンクリートに埋設させた状態での型枠200の取り外しが困難になる虞があるが、上述したように、本施工方法では、釘110の位置が、EVAテープ100の一端部及び他端部に制限されているので、型枠200の取り外しが困難になることはない。
また、本施工方法によれば、表面仕上げが行われるので(ステップS70)、EVAテープ100や釘110が外周壁2の躯体の壁面2aから露出したとしても、それらを目立たなくすることができる。
ところで、本実施の形態では、目地部材20の切欠部21bの幅方向寸法d1(図3,図6参照)は、タイル目地の幅方向寸法d2によって決められている。なお、切欠部21bの幅方向は、壁面2aに平行な面において目地部材20の長手方向に垂直な方向であり、つまり、外周壁2の厚み方向に垂直な方向である。上記幅方向寸法d1は、本実施形態では、切欠部21bの形状が台形であるため、切欠部21bの幅方向における最大寸法に該当する。
具体的には、上記幅方向寸法d1が上記幅方向寸法d2よりも小さくなるように決められており、例えばd2が8mmである場合、d1は7mmである。このようにすることで、外周壁2に安定性の高い目地を形成することができる。これにより、目地部材20とタイル9との間でひび割れが発生したときに、そのひび割れはタイル目地に誘起されやすくなる。これに対して、幅方向寸法d1が幅方向寸法d2よりも大きい場合、発生したひび割れがタイル目地に誘起されず、タイル9にもひび割れが生じる可能性が高まることになるので、好ましくない。したがって、幅方向寸法d1は幅方向寸法d2に等しいか、又はそれよりも小さいことが好ましい。また、幅方向寸法d1が幅方向寸法d2よりも小さくなるようにすることで、幅方向寸法d2(タイル目地の幅)よりも大きくなるようにシーリング材8’を配置する必要がなくなり、タイル目地の幅が均一化され、建築物1の意匠性が高まる。
なお、上述した建築物1(外周壁2)の施工方法において、ステップS70の表面仕上げ工程における、バックアップ材7’の配置やシーリング材8’の配置を省略してもよい。目地部材20が優れた止水性を有するためである。これにより、バックアップ材7’やシーリング材8’の分だけコストを削減することができる。
また、上記施工方法では、タイル仕上げの際、張付けモルタル8を用いて下地モルタル7とタイル9とを接合したが、張付けモルタル8に代えて、樹脂系接着材(例えば、変成シリコーン樹脂又はウレタン樹脂)を用いて下地モルタル7とタイル9とを接合してもよい。この場合、樹脂系接着材は、止水性を有するため、バックアップ材7’及びシーリング材8’の配置を省略することができ、コストを削減することができる。なお、この場合にも、上記幅方向寸法d1が幅方向寸法d2よりに等しいか、又はそれよりも小さくなるようにすることが好ましい。
また、本実施の形態では、表面仕上げとして、タイル仕上げを例示したが、タイル仕上げに限られることはなく、例えば、塗装仕上げなどであってもよい。塗装仕上げであっても、釘110やEVAテープ100が壁面2aから露出している部分を目立たなくすることができる。
又は、ステップS70の表面仕上げ工程を省略してもよい。この場合、壁面2aにおいて、釘110の突出部分を切断した箇所の周囲や、EVAテープ100が壁面2aから露出している部分を、パテなどにより覆うことが好ましい。これによっても、釘110やEVAテープ100が壁面2aから露出している部分を目立たなくすることができる。
なお、上述した実施の形態では、結合部材として、釘110を用いたが、釘110以外のもの、例えばステープラ用つづり針(ホッチキス針)を用いてもよい。
また、目地部材20の基材21は、セメント系基材で構成されるとしたが、セメント系基材に限られることはない。しかし、セメント系基材は、硬化性を有するため、その硬化性を利用して、EVAシート22とセメント系基材が強固に付着した目地部材20を製造することができるので、目地部材20の準備が容易である。
さらに、目地10の形状、基材21のEVAシート22側の外形形状、EVAシート22の外形形状は、円弧状であるとしたが、円弧状に限られることはない。円弧状に代えて、例えば、半楕円状、又はU字形状であってもよい。
また、切欠部21bの形状は、台形であるとしたが、台形に限られることはなく、例えば、長方形であってもよい。また、上記表面仕上げを行わない場合、切欠部21bの幅方向寸法が小さくなるように形成することが好ましく、これにより、建築物1において切欠部21bが凹部として露出する面積が少なくなり、建築物1の壁面2a側から観たときの意匠性が高まる。
また、上述した実施の形態において、表面仕上げを行った場合、切欠部21bは、建築物1内の空洞部を形成することになる(図6参照)。そこで、この空洞部に、低強度モルタル、シーリング材(樹脂や塩化ビニル)などを充填してもよい。また、表面仕上げを行わなかった場合にも、切欠部21bにこれらのような材料を充填してもよい。
上述した実施の形態では、目地10を鉛直方向に形成する場合について説明したが、目地10が形成される方向は、鉛直方向に限られることはなく、例えば、水平方向や、水平方向に交差する方向であってもよい。また、目地部材20において、基材21に切欠部21bが形成されていなくてもよい。
また、上述した実施の形態では、外周壁2の躯体が有する表面のうち、壁面2aに、目地10を形成するとしたが、さらに、壁面2aに対向する躯体の壁面にも目地10を形成してもよい。また、上述した実施の形態では、パイプ5を外周壁2のコンクリート内に埋設させるとしたが、必ずしも埋設させる必要はない。また、外周壁2は、鉄筋コンクリート製であるとしたが、これに代えて、横筋3及び縦筋4を備えないコンクリート製であってもよい。
また、上述した実施の形態では、建築物1の外周壁2を構築する場合について説明したが、本発明は、外周壁を施工する場合に限られて適用されるものではなく、コンクリート製の建築物であって目地が形成される建築物を施工する場合に適用可能である。
上記実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。