JP5030884B2 - 船尾形状 - Google Patents
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Description
このような問題の解決策、すなわち船舶が航走する際の船体抵抗低減に有効な船尾形状として、トリムタブ、ウェッジ及びダックテイルと呼ばれるように、船尾端の形状に水平からやや後方下がりの傾斜を付けることが知られている。(たとえば、特許文献1及び2参照)
さらに、船舶の船体抵抗を低減する船尾形状は、船舶の航走速度に応じて異なるものと考えられるため、速度変化に対応可能な船尾形状が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、船尾形状を改良することにより、船体抵抗のさらなる低減が可能となる船尾形状を提供することにある。また、本発明の目的は、船舶の航走速度に応じて最も船体抵抗低減効果が大きい船尾形状を選択できるようにするため、速度変化に応じた形状変化が可能となる船尾形状を提供することにある。
本発明の船尾形状(第1の態様)は、高速船舶の船尾底面に対して隙間無く固定され、船体縦断面上の前記船尾底面に対して後ろ下がりに傾斜した下面を有する水流偏向体を備えている船尾形状であって、前記水流偏向体より下側に突出するとともに、前記水流偏向体の圧力上昇部から船尾方向へ延びる整流板を備え、前記整流板が、前記水流偏向体の中間部に一対または複数対設けられるとともに、前記整流板の長さが、前記水流偏向体の高さに応じて複数対の対毎に異なることを特徴とするものである。
この整流板は、水流偏向体の中間部に一対または複数対設けられているので、特に水流偏向体の高さが中央(船体中心線)部で高く左右で低くなる場合の整流を効率よく行うことができる。また、複数対の整流板を設けた場合には、船体中心線側の整流板が効率よく整流を行い、外側(船側)の整流板が外側に向かう流れの形成を防止する。なお、各対の整流板は、船体中心線の左右に対称に配置されることが好ましい。
この場合、整流板の長さは、水流偏向体の高さに応じて複数対の対毎に異なるので、整流板自身の抵抗を最小化することができる。
さらに、整流板の長さを回動に連動して可変とする伸縮機構が設けられているので、整流板可動範囲において幅方向に平らではないため、整流板の向きに応じて必要長さが大きく変化するような船底形状の船舶にも適用可能となる。なお、整流板の好適な伸縮機構としては、たとえば入れ子式がある。
このような船尾形状によれば、水流偏向体より下側に突出するとともに、水流偏向体の圧力上昇部から船尾方向へ延びる整流板を備え、水流偏向体を整流板とともに船体幅方向へ動作させる水流偏向体幅可変機構を設けたので、船舶の航走速度に応じて船尾形状を変化させることができる。具体的には、船舶の航走速度が高い領域で水流偏向体を船体幅方向へ広げ、反対に、船舶の航走速度が低い領域で水流偏向体を船体幅方向へ狭めるようにして、船尾形状を変化させることができる。そして、水流偏向体幅可変機構が、水流偏向体の側面位置で船体幅方向にスライドさせる船尾側整流板と、船尾側整流板より船体前方側に設置され、船体前後方向を複数に分割されて船体幅方向に複数列配列された1または複数対の可動収納式の船首側整流板とを備えているので、船底形状が複雑になる通常の3次元面形状を有する船舶についても適用可能となる。この場合、異なる航走速度に対応して複数列配列した複数対の船首側整流板から、実際の船速に合わせて選択した一対を使用して船尾形状を変化させることができる。このとき、可動収納式の船首側整流板は、船体側の収納位置から出し入れする構造や、一端を船体面に支持されて回転する構造等を採用すればよい。
図2において、(a)は水流偏向体を備えた高速船舶を示す側面図、(b)は船尾底面部分の要部拡大図、(c)は船尾底面部分の背面図(船体後方から見た図)である。
船体1の船尾2には、船尾2の底面部分である船尾底面3に対し、水流偏向体としてウェッジ4が、船体中心線CLを中心として左右対称となるように取り付けられている。このウェッジ4は、船尾底面3に対して後ろ下がりの角度θとなるように傾斜させた傾斜面(下面)5の形成部分であり、船体1との間に隙間なく別部品を固定して取り付けたものでもよいし、あるいは、船尾底面3側に一体成形されたものでもよい。
なお、このような水流偏向体のウェッジ4は、トリムタブやダックテイルとも呼ばれており、図中の符号7は船体1の船尾後面、8は船首、9はプロペラである。
ここで、高速船舶とは、船体1にウェッジ(水流偏向体)4を取り付けた場合、ウェッジ4で低減される抵抗が、ウェッジ4によって生じる抵抗に比べて大きくなり得る全ての船舶を意味するものであり、たとえばフルード数が0.35以上の船舶が該当する。しかしながら、フルード数が0.35より小さな船舶であっても、ウェッジ4で低減される抵抗力が大きくなり得る船舶については、船舶規模の大小を問わず全て含むものとする。
この整流板10の取付範囲を決める圧力上昇部の範囲は、ウェッジ後端を後端として、長さは、例えば、概ねウェッジ4の高さを基準として60倍程度か、あるいは、ウェッジ4の船長方向長さを基準として10倍程度である。
このような構成とすれば、ウェッジ4の左右両側端部に接して整流板10が取り付けられているので、ウェッジ4に沿って後方へ流れる水流は、外側へ向かう流れが整流板10によって規制される。すなわち、ウェッジ4に沿って後方へ向かう水流が整流板10の規制を受けて整流されることにより、外側へ向かう流れはほとんどなくなり、流線に生じる乱れも小さなものとなる。この結果、ウェッジ4による船体表面の圧力上昇効果が向上するとともに、ウェッジ4の外側に向かう流れに起因する造波及び波崩れも抑制される。従って、ウェッジ4に整流板10を組み合わせることにより、圧力上昇効果の向上により船体抵抗が低減され、さらに、造波及び波崩れの抑制による抵抗の増加も防止される。
この実施形態では、ウェッジ4Aの断面形状が傾斜面5Aを下に凸の曲面とされ、ウェッジ高さが船体1の中央部で高くなっている場合、左右一対の整流板10Aがウェッジ4Aの中間部に設けられた構成を示している。すなわち、左右一対の整流板10Aは、ウェッジ4Aの両端部ではなく、船体中心線CLを挟んで左右対称となる途中位置に設けられている。この場合の整流板10Aについても、上述した整流板10と同様に、船体抵抗とならないように配慮して取り付けられている。
なお、この場合のウェッジ4Aは中央部が高い曲面であるから、船尾船底3に取り付けた状態において、前端部の平面形状は円弧状の曲線となる。
なお、本実施形態の整流板10Aは、船体幅方向にウェッジ高さが均一な場合においても適用可能であり、さらに、ウェッジ両端に取り付ける整流板10との組合せも可能である。
このような構成とすれば、上述した実施形態と同様に、ウェッジ4Aによる船体表面の圧力上昇効果を向上させることができる。そして、整流による圧力上昇効果の大小に応じて整流板10A,10Bの長さを変えることで、整流板10A,10B自体により生じる抵抗を最小限に抑え、船尾形状全体としての抵抗低減効果を向上させることができる。すなわち、突起物である整流板自体の抵抗を最小限に抑えることで、整流板を取り付けたことによる抵抗低減効果の相殺減少分を低減することができる。
このような構成とすれば、上述した実施形態と同様に、ウェッジ4Aによる船体表面の圧力上昇効果を向上させることができる。そして、整流板10Cには、高さの高いウェッジ4Aの中央付近へ向けて流れを整流するように傾斜角度が設けられているので、船体表面の圧力上昇効果をより一層向上させることができる。
このような構成とすれば、上述した実施形態と同様に、ウェッジ4Aによる船体表面の圧力上昇効果を向上させることができる。特に、船体1の船底が水平でない場合、船底面に対して垂直な整流板10Dを取り付けることができるので、スムーズな整流が可能となり、この結果、船体表面の圧力上昇効果をより一層向上させることができる。
また、この整流板10,10A〜10Dは、ウェッジ4,4Aから外側へ向かう流れの形成を防止した整流を行うので、外向きの流れによる造波及び波崩れに起因する抵抗の増加を防止することができる。
この実施形態では、ウェッジ40より下側に突出するとともに、ウェッジ40の圧力上昇部から船尾方向へ延びる整流板10を備え、ウェッジ40を整流板10Eとともに船体幅方向へ動作させるウェッジ幅可変機構20を設けてある。このウェッジ幅可変機構20は、高速船舶の航行速度に応じて、ウェッジ幅を最大のW1から最小のW2までの範囲で適宜変化させるための水流偏向体幅可変機構である。すなわち、ウェッジ幅可変機構20は、航行速度が高速域にあると広いウェッジ幅W1を選択し、航行速度が低速域にあると狭いウェッジ幅W2を選択して、所望のウェッジ幅を設定するための装置である。
図示のウェッジ幅可変機構20は、整流板10Eの前端部側が支点Cを中心として角度αの範囲を回動する。この整流板10Eには、後端部側にウェッジ40の可動部41が連結されている。この可動部41は、船尾船底3に固定された箱部42に収納されることでウェッジ幅が小さくなり、箱部42から船幅方向外向きに突出することでウェッジ幅が大きくなる。
駆動機構43は、たとえば電動機を駆動源とし、必要に応じて変速機構等を介在させるなどして、整流板10E及び可動部41に船体中心線CL方向の押圧力Fを付与するものである。この押圧力Fは、可動部41を船幅方向外向きに押圧するばね44の付勢に打ち勝つものとなっている。すなわち、駆動機構43が動作しない場合には、ばね44の付勢を受けることにより、整流板10Eが広がって最大のウェッジ幅W1となる位置にあり、駆動機構43が動作した場合には、押圧力Fでばね44を圧縮することにより、整流板10Eが整流板10E′まで狭められた最小のウェッジ幅W2となる位置にある。
すなわち、実験では、ウェッジ幅Wが船幅(B)の半分(W=0.5B)となる船尾形状を基準にしてウェッジ幅Wを変化させ、抵抗の増減を比較する。
このような伸縮機構45を備えた整流板10Eは、船底形状が整流板可動範囲において幅方向に平らではないため、整流板10Eの向きに応じて必要長さが大きく変化するような船舶にもウェッジ可変機構20を適用可能となる。
この変形例では、ウェッジ幅可変機構20Aの整流板50が、ウェッジ40Aの側面位置で船体幅方向にスライドさせる船尾側整流板51と、船尾側整流板51より船体前方側に設置され、船体前後方向を複数に分割されて船体幅方向に複数列配列された1または複数対の可動収納式の船首側整流板52とを備えている。
船首側整流板52は、たとえば図12に示すように、船体前後方向が複数枚に分割されている。この船首側整流板52は可動収納式とされ、船体1側の収納位置から軸53を中心に回転させて出し入れする構造や、軸53により一端を船体面に支持されて回転する構造等を採用すればよい。すなわち、船尾底面3に設けた凹部(不図示)を収納位置とし、この収納位置から略90度の回転により船尾船底3から略真下に突出する使用位置まで移動する構造や、船尾船底3に略密着する収納位置と略真下突出する使用位置との間を略90度回転して移動する構造等を採用すればよい。
すなわち、低速域においては、船体幅方向の内側に配置された船首側整流板52′を使用位置とし、かつ、船体幅方向の外側に配置された船首側整流板52を収納位置とすることにより、航行時の船体抵抗を低減することができる。また、高速域においては、船体幅方向の内側に配置された船首側整流板52′を収納位置とし、かつ、船体幅方向の外側に配置された船首側整流板52を使用位置とすることにより、航行時の船体抵抗を低減することができる。
従って、本発明の船尾形状は、特に高速航走時の船体抵抗をより一層低減可能することができるので、船舶の航走性能や運行効率を向上させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
2 船尾
3 船尾底面
4,4A ウェッジ(水流偏向体)
5,5A 傾斜面(下面)
10,10A〜E,50 整流板
20,20A ウェッジ幅可変機構
40,40A ウェッジ
45 伸縮機構
51 船尾側整流板
52 船首側整流板
Claims (5)
- 高速船舶の船尾底面に対して隙間無く固定され、船体縦断面上の前記船尾底面に対して後ろ下がりに傾斜した下面を有する水流偏向体を備えている船尾形状であって、
前記水流偏向体より下側に突出するとともに、前記水流偏向体の圧力上昇部から船尾方向へ延びる整流板を備え、
前記整流板が、前記水流偏向体の中間部に一対または複数対設けられるとともに、前記整流板の長さが、前記水流偏向体の高さに応じて複数対の対毎に異なることを特徴とする船尾形状。 - 前記整流板が、平面視で船体前方側を開いたハの字状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の船尾形状。
- 前記整流板が、船体前後方向から見て下方を開いたハの字状に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の船尾形状。
- 高速船舶の船尾底面に対して隙間無く固定され、船体縦断面上の前記船尾底面に対して後ろ下がりに傾斜した下面を有する水流偏向体を備えている船尾形状であって、
前記水流偏向体より下側に突出するとともに、前記水流偏向体の圧力上昇部から船尾方向へ延びる整流板を備え、
前記水流偏向体を前記整流板とともに船体幅方向へ動作させる水流偏向体幅可変機構を設け、
前記水流偏向体幅可変機構が、前記整流板の船体前方側端部を支点にして船尾側を船体幅方向に回動させるとともに、
前記整流板の長さを回動に連動して可変とする伸縮機構が設けられていることを特徴とする船尾形状。 - 高速船舶の船尾底面に対して隙間無く固定され、船体縦断面上の前記船尾底面に対して後ろ下がりに傾斜した下面を有する水流偏向体を備えている船尾形状であって、
前記水流偏向体より下側に突出するとともに、前記水流偏向体の圧力上昇部から船尾方向へ延びる整流板を備え、
前記水流偏向体を前記整流板とともに船体幅方向へ動作させる水流偏向体幅可変機構を設け、
前記水流偏向体幅可変機構が、前記水流偏向体の側面位置で船体幅方向にスライドさせる船尾側整流板と、前記船尾側整流板より船体前方側に設置され、船体前後方向を複数に分割されて船体幅方向に複数列配列された1または複数対の可動収納式の船首側整流板とを備えていることを特徴とする船尾形状。
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