JP5030841B2 - 病理組織検査標本作成用の包埋トレイ - Google Patents

病理組織検査標本作成用の包埋トレイ Download PDF

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本発明は病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関し、更に詳しくは、パラフィン収容部内に滞留する空気を排出して、カセット本体の底面に対するパラフィンの付着性を良くし、検体が内包されたパラフィンをスライスして顕微鏡標本を作製する際にパラフィンがカセットから剥離するのを防止できる病理組織検査標本作成用の包埋トレイに関する。
従来、この種の病理組織検査標本作成用の包埋トレイとしては、図15に示したようなものが多用されている。この包埋トレイTはパラフィン収容部T1と、その周縁に水平状に設けられたカセットを載置するためのカセット支承部T2と、その周縁に立設されたカセットの動きを止めるためのカセット係止壁T3と、その周縁に水平状に設けられた額縁部T4となり、更に、長手方向の額縁部T4の略中央部に水平状に横設された把持部T5とから構成されている。
また、近年では、方形の容器からなるパラフィン収容部とその周縁に設けられたパラフィンブロック付着体の載置部とからなり、前記載置部が少なくとも2個設けられており、サイズの異なる2種類以上のカセット等に対応できる病理組織検査標本作成用トレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記病理組織検査標本作成用トレイを使用して顕微鏡標本を作製するには、図16、図17に示すように、まず、カセット本体C1内に採取した検体Sを収容して蓋C2を取り付け、記録部C3に被験者名等のデーターを記録しておく。次いで、カセット本体C1の底部や蓋C2に穿設された透孔C4からホルマリンを流入させて検体Sを固定処理し、次いでアルコールにより検体Sの水分を除去し、キシレンにより後述する液状パラフィンとの親和性を付与する。
次に、図18に示すとおり、検体SをトレイTに移してパラフィン収容部T1に溶融パラフィンを注ぎ入れ、次いでカセット支承部T2にカセット本体C1の底部を載せ、カセット本体C1が浮き上がらないように指で押えつけて上方からパラフィンPを注ぎ足す。次いで、パラフィンPを冷却固化させた後、トレイTを取り除くことにより、図19に示したように、検体Sを包埋したパラフィンPがカセット本体C1の底部に付着してなるパラフィンブロックBを得る。その後、図示しないが、ミクロトームにカセットブロックBをカセット本体C1の開口部が下に向くように固定された状態でパラフィンに包埋された検体Sをスライスして薄片を得て、これに染色等の所定の処理を施すことにより顕微鏡標本を得るのである。
しかしながら、上記の方法では周囲を取り囲むカセット係止壁T3のためにカセット本体C1と包埋トレイTとの間に溶融パラフィンに含まれる空気や溶融パラフィンの注入の際に巻き込んだ空気が滞留しやすく、この滞留した空気の押し出しが不十分になり、カセット本体C1の底部に気泡Aが付着し、この気泡Aがカセット本体C1とパラフィンPとの付着を妨げ、付着力を低下させる場合がある。カセット本体C1とパラフィンPとの付着力が低下すると、検体Sのスライス中にパラフィンPがカセット本体C1の底部から剥離してしまい、目的とする薄片を得ることができなくなり、貴重な検体Sを台無しにするという重大な結果を招くことになる。
特開2006−300745号公報
本発明者らは、かかる実情に鑑み、上記問題点を解消するべく鋭意研究の結果、係止壁の角部に空気抜きのための切欠部を設ければ、パラフィン収容部内に滞留する空気を容易に排出でき、上記問題点が一挙に解消されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該収容部の上方外側に設けられたカセット支承部と、該支承部の上方外側に立設された3辺の係止壁と1辺の係止爪とを具備し、前記係止壁のうち対向する係止壁の上端から把持部が外方向に延設されており、係止壁の角部には空気抜きのための切欠部が設けられていることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
本発明の請求項2は、切欠部がスリット状であることを特徴とする請求項1に記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
本発明の請求項3は、切欠部が上側が広く下側が狭いVカット状であることを特徴とする請求項1に記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
本発明の請求項4は、把持部が枠状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
本発明の請求項5は、把持部が斜め上方向に延設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイを内容とする。
本発明の病理組織検査標本作成用の包埋トレイは、係止壁の角部に空気抜きのための切欠部を設けることにより、パラフィン収容部内に滞留する空気が抜け易くなるので、カセット本体の底部に気泡が付着し難くなり、カセットとパラフィンの付着性が向上し、検体のスライス中にパラフィンがカセットから剥離するといったトラブルが防止される。
切欠部の形状としては、スリット状や、Vカット状が好ましい。
係止爪又は係止壁の上端から把持部を横設すれば、包埋トレイを取り扱いやすくなり、作業性が向上する。この場合、把持部を内部に穴を有する枠状とすることにより、把持部によって空気の排出が殆ど妨げられることがなく、また、万一、パラフィンが上昇してきたとしても枠内の穴より容易に排出されるので好ましい。更に、把持部を斜め上方向に延設することにより、例えば、机上面や、ホットプレート面で作業する場合には、この机上面又はホットプレート面から距離が取れるので把持し易く、またホットプレートに触れ火傷をしたりする恐れも小さくなる。
本発明の包埋トレイ1は、その代表的な一例を図1乃至図4に示したように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなるパラフィン収容部2と、該収容部2の上方外側に設けられたカセット支承部5と、該支承部5の上方外側に立設された3辺の係止壁7と1辺の係止爪6とを具備し、前記係止壁7のうち対向する係止壁7の上端から把持部9が外方向に延設されており、係止壁の角部には空気抜きのための切欠部8が設けられていることを特徴とする。
本発明の包埋トレイ1は溶融パラフィンに耐える耐熱性素材から作られ、かかる素材としては、ステンレス等の金属、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の樹脂等が挙げられるが、熱伝導性が良好である点で金属が好ましい。
パラフィン収容部2は、パラフィンブロックBの脱型を容易にするため、通常、側壁4が底部3から開口部に向かって末広がりのテーパー状の容器からなる。
パラフィン収容部2の上方外側には、カセット本体を載置するためのカセット支承部5が設けられる。カセット支承部5はカセット本体を安定に載置できるかぎり特に限定されないが、通常、パラフィン収容部2の周囲やコーナー部に設けられる。
カセット支承部5の上方外側には、カセットCを包埋トレイ1の上に定置して、その滑動(横滑り)を防止するための係止壁7及び係止爪6が設けられるが、本発明の包埋トレイ1では、係止壁7が3辺に立設されるとともに、係止爪6が1辺に立設されている。従って、例えば、図16、図17に記載されているような斜面状の記録部C3を有するカセットCの場合は、その記録部C3が係止爪6側になるように載置してパラフィンブロックを作成すると、記録部C3がパラフィンで覆われることがなく、視認性を妨げることがない。
係止爪6の形状、大きさ、個数は特に限定されないが、余り幅が大きくなると、その部分に冷却固化したパラフィンが盛り上がって記録部C3を覆ってしまうことがあり、また余り幅が小さいとカセット本体C1の滑動を防止する効果が小さくなるので、通常幅1〜5mm程度、好ましくは2〜5mm程度で、係止爪の幅の合計は側壁の長さの1/5程度以下、更には1/20程度以下が好ましい。一辺当たりの係止爪6の幅の合計が側壁4の長さの1/5を超えると、空気の押し出しや余分のパラフィンの排出がしにくくなる。
係止爪6が設けられていない3辺には係止壁7が立設される。このため、立設された係止壁7にカセットCの側壁を押し当てるようにして包埋トレイ1上に載置できるので、カセットCの位置合わせが容易である。
係止壁7の高さはカセット支承部5の上に載置したカセット本体の滑動を防止できれば特に限定されないが、カセット本体の外壁面には付着するパラフィンを減らすために、低く(例えば2〜4mm程度)形成するほうが好ましい。
係止壁7も係止爪6と同様、カセット本体C1の滑動を抑えてカセット支承部5に安定に載置する機能を有する点で共通するが、カセット本体C1と包埋トレイ1の間に滞留する空気や余分なパラフィンを排出する機能が劣る点で異なる。このため、3辺に係止壁7を設ける本発明において、係止壁の角部、即ち、隣接する2辺に係止壁7が設けられている角部では、特に空気が滞留しやすい。この点、本発明では係止壁の角部に切欠部8が設けられているので、角部に滞留した空気はこの切欠部8から排出されるので、カセット本体C1の底部とパラフィンとの間の気泡もスムースに排出される。
切欠部8の形状は、包埋トレイ1内に滞留する空気を好適に排出できるかぎり特に限定されないが、スリット型やVカット型が例示できる。
切欠部8の形状を上側が広く下側が狭いVカット型とする場合、上方に行く程抵抗が小さくなるので、空気が抜けやすくなり、空気や気泡はスムーズに排出される。
切欠部8の大きさは、包埋トレイ1内で滞留する空気を排出できる程度であれば特に限定されないが、幅L1を通常、0.1〜4mm程度、好ましくは0.1〜2mm程度、深さを該切欠部8の下端がカセット支承部5より0.1〜2mm上方になる程度とすれば、包埋トレイ1内の空気や気泡を十分排出でき、カセット本体C1の底部への気泡の付着を抑えることができるので好ましい。
本発明の包埋トレイ1を扱いやすくするため係止壁7の上端から把持部9が設けられる。把持部9の形状は内側に穴のあいた枠状とすることにより、内側の穴から空気を押し出し、また余分のパラフィンを排出できるようにするのが好ましい。
把持部9は、包埋トレイ1から水平方向に延接しても良いし、斜め上方向に向けて延設することもできる。斜め上方に延接すると、例えば机上で作業する場合は机上面からの距離が取れるので把持しやすく、また、例えば包埋トレイ1をホットプレート上で使用する場合でも、把持部9とホットプレートの間の距離が大きくなるので、包埋トレイ1を把持する際にホットプレートなどに手指が触れ、火傷をする等の危険性が減少する。斜め上方向の把持部9は、例えば、パラフィン収容部2が浅い場合に特に有効である。
パラフィン収容部2の形状を左右非対称とすることにより、ミクロトームでスライスされた薄片の左右が明確に区別されるので、作業性が高められ、また左右誤認により検体を取り違えるといったトラブルが防止されるので、検査の信頼性が向上する。
左右非対称とする方法は特に限定されないが、例えば、パラフィン収容部2の角部のうち一箇所のアール半径を変える(大きくする)又は三角形状に切り欠く方法や、側壁4のうち一辺を波形や円弧形にするなどの方法が採用できる。
本発明の包埋トレイ1とともに用いるカセットは、カセット本体の底面に透孔を有するカセットであれば特に限定はないが、図16、図17に示したような斜面状の記録部C3を備えたカセットに対して、特に有効である。
また、本発明の包埋トレイ1は図18、図19に例示された一般的な方法で用いることができるが、溶融パラフィンの流動性を高め、空気を排出しやすくするため、予め包埋トレイ1を暖めておくか、パラフィン注入中または注入後に包埋トレイ1を一時的に適温まで加熱するのが好ましい。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されないことは云うまでもない。
実施例1
本実施例の包埋トレイ1は、図1乃至図4に示すように、底部3とその周りに立設された側壁4とからなり、平面視左下側(図1内の方向。本実施例において以下同じ)の角部が三角形状に切り欠かれた形状のパラフィン収容部2と、該収容部2の上方外側に設けられ、平面視左右側で広く、平面視上下側で狭いカセット支承部5と、該支承部5の上方外側に立設された3辺の係止壁7と1辺の係止爪6とを具備する。また、実施例1に係る包埋トレイ1の縦横比(把持部9を除く)は、凡そ1:1.4である。
前記係止壁7のうち対向する係止壁7の上端から枠型の、即ち、中央部に穴が設けられた把持部9が外方向且つ水平に延設されている。
係止壁の角部には、図4に示したとおり、Vカット状の切欠部8が空気抜きのために設けられており、その大きさは上端部における幅L1が2mm、深さが3.5mmであり、カセット支承部5から切欠部8下端間での長さは0.5mmである。
実施例2
本実施例の包埋トレイ1は、図5乃至図8に示すように、実施例1の包埋トレイ1とほぼ同様であるが、把持部9が斜め上約45°の方向に延接されている点、係止壁の角部に設けられた切欠部8の形状がスリット状である点、及びパラフィン収容部2の形状が異なる。
本実施例における切欠部8の大きさは、幅が1mm、深さが3.5mmであり、カセット支承部5から切欠部8下端間での長さは0.5mmである。
実施例3
本実施例の包埋トレイ1は、図9乃至図11に示すように、実施例1の包埋トレイ1とほぼ同様であるが、パラフィン収容部2、カセット支承部5の形状、及びVカット状の切欠部8の上端部における幅L1を4mmとした点で異なる。また、本実施例に係る包埋トレイ1の縦横比(把持部9を除く)は、凡そ1:3である。
実施例4
本実施例の包埋トレイ1は、図12乃至図14に示すように、実施例2の包埋トレイ1とほぼ同様であるが、パラフィン収容部2及びカセット支承部5の形状が異なる。また、本実施例に係る包埋トレイ1の縦横比(把持部9を除く)は、凡そ1:3である。
叙上のとおり、本発明の病理組織検査標本作成用の包埋トレイは、パラフィンブロック付着体を作成する際にカセットと包埋トレイの間に滞留する空気が排出されて冷却固化パラフィンとカセット本体との結合が強くなるため、検体をスライスする時にパラフィンがカセット本体から剥離するトラブルが防止され、病理組織検査標本を作成する作業性や検査の信頼性が大幅に高められる。
本発明の包埋トレイの実施例1を示す平面図である。 実施例1の正面図である。 実施例1の右側面図である。 図1における包埋トレイを矢印の方向から見た部分拡大図である。 本発明の包埋トレイの実施例2を示す平面図である。 実施例2の正面図である。 実施例2の右側面図である。 図5における包埋トレイを矢印の方向から見た部分拡大図である。 本発明の包埋トレイの実施例3を示す平面図である。 実施例3の正面図である。 実施例3の右側面図である。 本発明の包埋トレイの実施例3を示す平面図である。 実施例3の正面図である。 実施例3の右側面図である。 従来の包埋トレイの一例を示す斜視図である。 カセットの一例を示す斜視図である。 カセット内に検体を入れた状態を示す断面図である。 顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。 顕微鏡標本の作製方法を示す説明図である。
符号の説明
1 包埋トレイ
2 パラフィン収容部
3 底部
4 側壁
5 カセット支承部
6 係止爪
7 係止壁
8 切欠部
9 把持部
C カセット
C1 本体
C2 蓋
C3 記録部
C4 透孔
P パラフィン
S 検体
T 従来のトレイ
T1 パラフィン収容部
T2 カセット支承部
T3 カセット係止壁
T4 額縁部
T5 把持部
B パラフィンブロック
A 気泡
L1 切欠部の幅

Claims (5)

  1. 底部とその周りに立設された側壁とからなるパラフィン収容部と、該収容部の上方外側に設けられたカセット支承部と、該支承部の上方外側に立設された3辺の係止壁と1辺の係止爪とを具備し、前記係止壁のうち対向する係止壁の上端から把持部が外方向に延設されており、係止壁の角部には空気抜きのための切欠部が設けられていることを特徴とする病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
  2. 切欠部がスリット状であることを特徴とする請求項1に記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
  3. 切欠部が上側が広く下側が狭いVカット状であることを特徴とする請求項1に記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
  4. 把持部が枠状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
  5. 把持部が斜め上方向に延設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の病理組織検査標本作成用の包埋トレイ。
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