JP5029498B2 - 鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置 - Google Patents

鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置 Download PDF

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Description

本発明は、可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられた金型の温度を調整しながらダイカスト鋳造により製品を製造する鋳造品の製造方法、及び、可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられておりダイカスト鋳造に使用される金型の温度を調整する金型温度調整装置に関する。
可動型と固定型との間のキャビティ部に溶湯を充填して製品を製造する方法は、製造コストが安い割りには複雑な形状の製品を作ることができるなどのメリットから、産業界で多く使用されている。例えば、自動車産業では、ハイブリッド用モータを入れるためのケースや、トランスミッションケースなどのケース類や、ロッカーカバーなどのカバー類が、ダイカスト鋳造によって成形されている。
金型が溶湯注入時に決められた温度にされていないと、湯廻りが悪くなって寸法精度が低下するなどの不具合を生じる。一方、金型を加熱し過ぎると、溶湯が金型に焼き付いて離型性が低下し、製品の製造サイクルが遅くなるなどの不具合を生じる。よって、金型を適正温度に調整しながら鋳造品を製造する鋳造品の製造方法が必要になる。
例えば、特許文献1には、金型を予熱する場合に、キャビティ部に溶湯を充填し、金型内の溶湯が凝固した後、その金型を開放する際に、途中で金型の開放を止め、押し出しピンで粗材を金型に張り付かない位置まで押し出し、所定時間結果後に金型を最終位置まで開放する方法が記載されている。
また、樹脂の射出成形に使用する金型の温度を調整する方法としては、特許文献2及び特許文献3に記載するものがある。特許文献2及び特許文献3に記載される金型温度調整方法では、低温の熱媒体を貯めるための低温タンクと、高温の熱媒体を貯めるための高温タンクとを備え、金型の内部に熱媒体流路を設けている。このような特許文献2及び特許文献3に記載される金型温度調整方法は、高温タンクから熱媒体流路へ高温の熱媒体を供給する高温熱媒体系統と、低温タンクから熱媒体流路へ低温の熱媒体を供給する低温熱媒体系統とを選択的に切り替えることにより金型温度を設定温度に制御している。
特開2000−218355号公報 特開平2−70406号公報 特開2005−225042号公報
しかしながら、上記特許文献1〜特許文献3記載の技術には以下の問題があった。
(1)特許文献1記載の方法は、キャビティ部が、型開きした隙間を介して外気に接触する内壁から放熱する。そのため、キャビティ部の内壁は、隙間に近い部分が隙間から遠い部分より温度を低下させやすく、温度にバラツキを生じていた。温度のバラツキがあるキャビティ部では、溶湯が温度の低い部分で早く凝固する一方、温度の高い部分でゆっくり凝固するため、鋳造品各部の品質の均一性が維持できない恐れがあった。特に、近年、製品の複雑な形状への対応や小型・軽量化の視点より、固定型と可動型を複数の部品で構成することが多い。複数の部品で構成する金型は、部品間の熱伝達効率が悪く、固定型と可動型のキャビティ部に温度のバラツキを生じやすく、鋳造品の品質の均一化を図りにくい。よって、特許文献1記載の方法では、捨て打ちを数回行わなければ、キャビティ部の内壁を均一な温度に加熱することができず、予熱に使用する材料や時間のロスが大きかった。しかも、キャビティ部の内壁の温度を直接測定することができないため、特許文献1記載の方法では、作業者が捨て打ちされた粗材の表面等を目視してキャビティ部の内壁が均一な温度になったか否かを経験的に判断しなければならず、作業性が悪かった。
(2)特許文献2及び特許文献3に記載の金型温度調整方法は、射出成形時における金型の温度を制御するものであり、射出成形を中断若しくは開始する場合の金型の温度調整について何ら記載及び示唆されていない。樹脂は、金属と比べて粘性が低い。そのため、樹脂の射出成形では、キャビティ部の内壁に温度のバラツキがあっても、殆ど問題にならなかった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、キャビティ部の内壁の温度を容易に均一化することができ、予熱時のロスを減らして鋳造品の品質の均一化を図ることができる鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成ずべく、本発明に係る鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置は以下の構成を有する。
(1)可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられた金型の温度を調整しながらダイカスト鋳造により製品を製造する鋳造品の製造方法において、前記ダイカスト鋳造を中断する場合には、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填した状態で、前記可動型と前記固定型に熱媒体を供給して保温する。
(2)可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられた金型の温度を調整しながらダイカスト鋳造により製品を製造する鋳造品の製造方法において、前記ダイカスト鋳造を停止する前に、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填し、前記ダイカスト鋳造を再開する場合には、前記ダイカスト鋳造の停止前に前記キャビティ部に充填した前記溶湯が凝固した粗材を前記キャビティ部に保有した状態で、前記ダイカスト鋳造を行う際の前記キャビティ部の設定温度より高温の熱媒体を前記可動型と前記固定型に供給することにより予熱を行う。
(3)可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられておりダイカスト鋳造に使用される金型の温度を調整する金型温度調整装置において、前記可動型と前記固定型に、温度調整した熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、前記ダイカスト鋳造を中断する場合には、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填した状態で、前記熱媒体供給手段に前記熱媒体を供給させて前記可動型と前記固定型を保温する熱媒体供給制御手段と、を有する。
(4)可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられておりダイカスト鋳造に使用される金型の温度を調整する金型温度調整装置において、前記可動型と前記固定型に熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、前記ダイカスト鋳造を停止する場合に、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填する溶湯充填手段と、前記ダイカスト鋳造を再開する場合に、前記溶湯充填手段により前記キャビティ部に充填された溶湯が凝固した粗材を前記キャビティ部に保有した状態で、前記ダイカスト鋳造を行う際の前記キャビティ部の設定温度より高温の前記熱媒体を供給させて前記可動型と前記固定型を予熱する熱媒体供給制御手段と、を有する。
本発明の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置は、例えば、ダイカスト鋳造を含む製造ラインが、ダイカスト鋳造工程の前工程又は後工程で異常を生じ、ダイカスト鋳造が中断される場合には、可動型と固定型とを型締めしてキャビティ部に溶湯を充填した状態で、可動型と固定型に熱媒体を供給して保温する。
固定型と可動型は、ダイカスト鋳造を中断する間、熱媒体を供給されて保温される。固定型と可動型は、仮に複数の部品で構成されていても、キャビティ部に保有している粗材を介して相互に熱伝達し、キャビティ部の内壁を均一な温度にする。このため、ダイカスト鋳造を再開する場合には、固定型と可動型を予熱する予熱時間や、キャビティ部の内壁を設定温度に昇温させるための捨て打ちの回数が減り、予熱時のロスが低減する。しかも、金型は、短い予熱時間でキャビティ部の内壁を均一な温度にされるので、溶湯がキャビティ部内を均一に流れ、鋳造品の品質の均一性を維持しやすい。
よって、本発明の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置によれば、キャビティ部の内壁の温度を容易に均一化することができ、予熱時のロスを減らして鋳造品の品質の均一化を図ることができる。
本発明の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置は、ダイカスト鋳造を停止する前に、可動型と固定型とを型締めしてキャビティ部に溶湯を充填し、ダイカスト鋳造を再開する場合には、ダイカスト鋳造の停止前にキャビティ部に充填した溶湯が凝固した粗材をキャビティ部に保有した状態で、ダイカスト鋳造を行う際のキャビティ部の設定温度より高温の熱媒体を可動型と固定型に供給することにより予熱を行う。
例えば、連休前にダイカスト鋳造が停止される場合には、可動型と固定型とを型締めしてキャビティ部に溶湯を充填する。ダイカスト鋳造により金型が設定温度に昇温しているため、溶湯は、キャビティ部に空隙がないように適切に充填される。金型は、ダイカスト鋳造の停止後から温度を低下させ始め、それに伴い、溶湯がキャビティ部内で凝固する。その後ダイカスト鋳造を開始する場合には、キャビティ部に粗材を保有したまま、ダイカスト鋳造を行う際のキャビティ部の設定温度より高温の熱媒体を可動型と固定型に供給することにより予熱を行う。固定型と可動型は、キャビティ部の粗材を介して一つのブロック体となっており、熱媒体の熱をキャビティ部の内壁から粗材を介して相互に熱伝達し、キャビティ部の内壁を均一な温度にする。そのため、固定型と可動型は、キャビティ部の内壁全体を設定温度に昇温させるための予熱時間や捨て打ちの回数が減り、予熱時のロスが低減する。しかも、キャビティ部の内壁が粗材により必然的に均一な温度に予熱されるので、短時間の予熱で湯流れを良好にして、鋳造品の品質の均一性を維持しやすい。
よって、本発明の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置によれば、キャビティ部の内壁の温度を容易に均一化することができ、予熱時のロスを減らして鋳造品の品質の均一化を図ることができる。
次に、本発明に係る鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、金型温度調整装置1の概略構成を示す図である。
金型温度調整装置1は、例えば自動車のハイブリッドモータ用ケースをダイカスト鋳造によって生産する場合に用いられる。金型温度調整装置1は、固定型3と可動型4とからなる金型2を備える。固定型3と可動型4には、温度調整をするための熱媒体が流れる熱媒体流路3a,4aがそれぞれ設けられている。
金型温度調整装置1は、ダイカスト鋳造時におけるキャビティ部46(図3参照)の設定温度より高温の熱媒体を貯める第1タンク5と、ダイカスト鋳造時におけるキャビティ部46(図3参照)の設定温度より低温の熱媒体を貯める第2タンク6を備える。本実施形態では熱媒体を油とし、ダイカスト鋳造時におけるキャビティ部46(図3参照)の設定温度を110℃とする。第1タンク5は、図示しないヒータを内蔵し、熱媒体の温度THOを200℃に温度調整している。また、第2タンク6は、図示しないチラーを内蔵し、熱媒体の温度TLOを5℃に温度調整している。第1及び第2タンク5,6は、互いに連通して熱媒体を補充し合えるようになっている。
第1流路11は、第2タンク6を熱媒体流路4aの入口に接続する。第1流路11には、第2タンク6側から順に、第1ポンプ21と、第1流体制御弁22と、第2流体制御弁23とが配置されている。
第2流路12は、熱媒体流路4aの出口を第2タンク6に接続する。第2流路12は、第2タンク6の入口に第3流体制御弁24が配置されている。
第3流路13は、第1及び第2流体制御弁22,23の間の第1接続点P1から分岐して熱媒体流路3aの入口に接続する。第3流路13には、第4流体制御弁25が配置されている。
第4流路14は、熱媒体流路3aの出口を第2流路12上の第3流体制御弁24の上流側に設けた第2接続点P2に接続している。
第5流路15は、第2接続点P2と第3流体制御弁24との間の第3接続点P3から分岐して第1タンク5に接続している。第5流路15は、第1タンク5の入口に第5流体制御弁26が配置されている。
第6流路16は、第1流体制御弁22と第1接続点P1との間の第4接続点P4に第1タンク5を接続している。第6流路16には、第1タンク5側から第2ポンプ27と第6流体制御弁28とが配置されている。
第7流路17は、第2ポンプ27と第6流体制御弁28との間の第5接続点P5から分岐して、第5流体制御弁26と第3接続点P3との間の第6接続点P6に接続している。第7流路17には、第7流体制御弁29が配置されている。
図2は、制御装置7のブロック図である。
制御装置7は、周知のマイクロコンピュータであって、CPU51とROM52とRAM53と入出力インターフェース54とを備える。制御装置7は、金型温度調整装置1に内蔵されても良いし、ダイカストマシンのメインコントローラに内蔵されても良い。制御装置7は、入出力インターフェース54に第1及び第2ポンプ21,27と第1〜第7流体制御弁22〜26,28,29とダイカスト鋳造開始指示入力手段8とダイカスト鋳造中断設定手段9とダイカスト鋳造停止手段10が接続されている。
ダイカスト鋳造開始指示入力手段8は、ダイカスト鋳造の開始指示を入力するものである。ダイカスト鋳造中断設定手段9は、ダイカスト鋳造を一時停止(中断)させる指示を入力するものである。ダイカスト鋳造停止手段10は、ダイカスト鋳造を停止する指示を入力するものである。
ROM52は、金型温度を調整するための金型温度調整プログラム55を格納している。
制御装置7は、金型温度調整プログラム55を実行することにより、ダイカスト鋳造時に熱媒体流路3a,4aに低温熱媒体を循環させて金型2から蓄熱を除去する蓄熱除去モードと、ダイカスト鋳造を中断する場合にキャビティ部46に溶湯を充填した状態で熱媒体流路3a,4aに高温熱媒体を循環させて金型2を保温する保温モードと、ダイカスト鋳造を開始する場合にキャビティ部46に溶湯を充填した状態で熱媒体流路3a,4aに高温熱媒体を循環させて金型2を予熱する予熱モードとを切り替え、固定型3と可動型4を蓄熱除去、保温、予熱に適した温度に温度調整する。
図3は、図1に示す金型2の断面図である。図4は、図3に示す固定型3の平面図である。図5は、図3に示す可動型4の平面図である。
図3に示すように、金型2は、固定型3と可動型4が図示しないダイカストマシンの型締部に取り付けられ、可動型4を固定型3に近づける図中K方向と固定型3から遠ざける−K方向へ往復直線運動されることにより型締めと型開きとを行う。固定型3と可動型4は、コスト低減や型の作りやすさなどの理由から、入れ子方式を採用している。
図3及び図4に示すように、固定型3は、主型31に、モータケースの外側形状を型彫りした入れ子32,33,34が取り付けられている。一方、図3及び図5に示すように、可動型4は、主型41に、モータケースの内側形状を型彫りした入れ子42,43,44が取り付けられている。図3に示すように、固定型3と可動型4は、型締めしたときに、入れ子32〜34と入れ子42〜44の間にキャビティ部46が設けられる。そして、可動型4には、キャビティ部46に開口するゲート47と、溶湯をゲート47を介してキャビティ部46に供給する湯道48が設けられている。このような固定型3と可動型4は、主型31,41が炭素鋼を材質とし、入れ子32〜34,42〜44がダイス鋼を材質とする。
図3〜図5に示すように、固定型3と可動型4は、熱媒体流路3a,4aがキャビティ部46の周りに設けられている。図3に示すように、主型31,41には、第3及び第1流路13,11から熱媒体流路3a,4aへ熱媒体を入力するための入力ポート39,49と、熱媒体流路3a,4aから第4及び第2流路14,12へ熱媒体を出力するための出力ポート40,50が設けられている。
また、図3〜図5に示すように、固定型3と可動型4は、金型2を冷却するための冷却水を流すための冷却水管35,45が多数設けられている。
<動作説明>
金型温度調整装置1は、ダイカスト鋳造開始指示入力手段8にダイカスト鋳造開始指示が入力されると、ROM52から金型温度調整プログラム55を読み出して実行し、金型2の温度を調整する。
先ず、ダイカスト鋳造を行う場合の金型2の温度調整について説明する。
ダイカスト鋳造では、図示しないダイカストマシンが、湯流れを良くするために、固定型3と可動型4を加熱してキャビティ部46を設定温度(ここでは110℃)に昇温させる。そして、ダイカストマシンは、可動型4を固定型3から離れる方向(図3の−K方向)へ移動させて金型2を型開きした後、キャビティ部46へ離型剤を塗布し、その後、可動型4を固定型3に近づける方向(図3のK方向)へ移動させて型締めを行う。そして、ダイカストマシンは、湯道48からゲート47を介してキャビティ部46へ600乃至680℃に加熱したアルミ溶湯を充填する。ダイカストマシンは、冷却水管35,45に冷却水を循環させて金型2を冷却し、キャビティ部46内でアルミ溶湯を凝固させる。ダイカストマシンは、所定時間が経過すると、金型2を型開きし、粗材を金型2から押し出して取り出す。この一連の動作をダイカスト鋳造の1サイクルとする。例えば、ダイカスト鋳造は、1サイクルを80秒間で行い、鋳造品を多数製造する。
ここで、金型2は、固定型3と可動型4が主型31,41に入れ子32〜34,42〜44を嵌め込んで複数の部品で構成されており、部品間の熱伝達効率が悪い。そのため、金型2は、上記サイクルを8秒間という短いサイクルで繰り返すうちに、キャビティ部46の周辺に蓄熱してしまっていた。
アルミは、金型2の材質である鉄より熱膨張係数が3倍程度大きい。そのため、アルミ溶湯は、キャビティ部46に充填されたときにキャビティ部46の内壁に押圧されて内部応力を発生する。キャビティ部46の周辺が蓄熱していると、キャビティ部46のアルミ粗材は、内部応力を発生したままキャビティ部46から取り出され、反りなどの変形を生じる恐れがある。この傾向は、金型2の軽量化や加工容易化を図るために、金型2を複数の部品で構成して小型化するほど顕著になる。そこで、この金型2の蓄熱を除去する方法が必要になる。
本実施形態の金型温度調整装置1は、上記サイクルを繰り返す間、蓄熱除去モードを実行する。金型温度調整装置1は、蓄熱除去モードでは、低温の熱媒体を金型2に供給する「低温熱媒体供給動作」を行う。すなわち、制御装置7は、第2ポンプ27を駆動停止すると共に第6及び第7流体制御弁28,29を弁閉する一方、第1ポンプ21を駆動すると共に第1〜第6流体制御弁22〜26を弁閉状態から弁開状態にする。これにより、第2タンク6の5℃に温度調整された熱媒体は、第1流路11と第3流路13を介して熱媒体流路3a,4aに供給されて固定型3と可動型4から熱回収した後、第2流路12と第4流路14と第5流路15を介して第2タンク6に戻される。第2タンク6に戻された熱媒体は、固定型3と可動型4から熱回収して昇温しているので、図示しないチラーにより冷却される。
このように、金型温度調整装置1は、ダイカスト鋳造時にアルミ溶湯を凝固させるために金型2を冷却する冷却水と別に、キャビティ部46の周りに設けた熱媒体流路3a,4aに低温の熱媒体を循環させる。そのため、金型2は、キャビティ部46の周辺の熱が熱媒体に回収されて除去される。よって、金型温度調整装置1は、図示しないダイカストマシンが上記サイクルを繰り返してもキャビティ部46の内壁を設定温度に維持するので、粗材が内部応力を発生したままキャビティ部46から取り出されて反りなどの変形が生じることがなく、歩留まりを向上させることができる。
次に、ダイカスト鋳造を中断する場合に金型2を保温する方法について説明する。
例えば、ダイカスト鋳造を含む生産ラインにおいて、ダイカスト鋳造工程の前工程又は後工程で異常が生じた場合などに、ダイカスト鋳造を中断する場合には、作業者がダイカスト鋳造中断設定手段9を操作してダイカスト鋳造の中断指示を制御装置7に入力する。これを受けて、金型温度調整装置1は、保温モードを実行する。
すなわち、制御装置7は、金型2を型締めし、アルミ溶湯をキャビティ部46へ供給する。そして、制御装置7は、高温熱媒体を金型2に供給する「高温熱媒体供給動作」を行う。すなわち、制御装置7は、第1ポンプ21を駆動停止すると共に第1及び第7流体制御弁22,29を弁閉する一方、第2ポンプ27を駆動すると共に第2〜第6流体制御弁23〜26,28を弁閉状態から弁開状態にする。これにより、第1タンク5の200℃に温度調整された熱媒体が第6流路16、第1流路11、第3流路13を介して熱媒体流路3a,4aに供給されて固定型3と可動型4に熱伝達した後、第2流路12、第4流路14、第5流路15を介して第1タンク5に戻される。第1タンク5では、固定型3と可動型4に熱伝達して冷却された熱媒体が、図示しないヒータで200℃に加熱される。
保温時において、金型2は、キャビティ部46にアルミ粗材を保有し、固定型3と可動型4が一つのブロック体となっている。熱媒体流路3a,4aを流れる熱媒体の熱は、固定型3と可動型4の入れ子32,42に伝達されて入れ子32,42を加熱する。入れ子32,42の熱は、主型31,41や入れ子33,34,43,42へ伝達されると共に、キャビティ部46の内壁からアルミ粗材に伝達される。そのため、金型温度調整装置1は、金型2が主型31,41や入れ子32〜34,42〜44などの複数の部品からなる場合でも、キャビティ部46の内壁や固定型3、可動型4の温度のばらつきが小さい。
ここで、アルミ溶湯が冷やされて凝固すると、アルミ粗材とキャビティ部46の内壁との間に隙間ができ、空気層が形成される。空気は、アルミ等の金属と比べて熱を伝達しにくい。しかし、この場合に形成される空気層は、薄く、キャビティ部46からアルミ粗材に熱伝達しやすい。よって、アルミ粗材と金型2との間に僅かな隙間ができた場合でも、固定型3と可動型4はアルミ粗材を介して高温の熱媒体の熱を伝達し合い、保温される。また、キャビティ部46を均一に保温しているので、アルミ粗材が凝固する際にキャビティ部46の内壁に張り付かない。
尚、ここでは、保温時に高温の熱媒体を熱媒体流路3a,4aに連続的に供給するが、高温の熱媒体を熱媒体流路3a,4aに断続的に供給しても良い。この場合、保温時におけるキャビティ部46の温度が低下するものの、高温の熱媒体を循環させたり熱媒体を図示しないヒータで加熱するために使用するエネルギーを削減できる。
また、ここでは、保温時に第1タンク5の高温の熱媒体を熱媒体流路3a,4aに循環させたが、アルミ溶湯がキャビティ部46の内壁に張り付くことを防止できる温度であれば、第2タンク6から低温の熱媒体を熱媒体流路3a,4aに循環させても良いし、第1及び第2タンク5,6の高温熱媒体と低温熱媒体を流量調整して混合することにより熱媒体の温度調整を行い、温度調整した熱媒体を熱媒体流路3a,4aに循環させても良い。この場合、アルミ溶湯がキャビティ部46の内壁に張り付くことを防止できる温度以上にキャビティ部46を加熱するエネルギーを削減することが可能である。
次に、ダイカスト鋳造を開始する場合に金型2を予熱する方法について説明する。
例えば、作業者は、1日の作業終了時、正月やお盆などの連休前などに、ダイカスト鋳造停止設定手段10を操作して、ダイカスト鋳造を停止させる。この場合、金型温度調整装置1は、ダイカスト鋳造を停止する前にアルミ溶湯をキャビティ部46に充填する。固定型3と可動型4は、ダイカスト鋳造停止後から放熱して温度を低下させ始める。これに伴い、溶湯は、キャビティ部46内で凝固し始める。
そして、例えば、翌日の作業開始時や連休明けの作業開始時に作業者が、ダイカスト鋳造開始指示入力手段8を操作してダイカスト鋳造開始指示を制御装置7に入力すると、制御装置7は、予熱モードを実行する。すなわち、制御装置7は、金型2を型閉じしてアルミ溶湯をキャビティ部46に供給した後、上記高温熱媒体供給動作を行う。
固定型3と可動型4は、ダイカスト鋳造開始時には、例えば10℃程度まで冷え切っており、この状態では、ダイカスト鋳造開始直後から捨て打ちによってキャビティ部46の内壁を加熱することはできない。
しかし、本実施形態の金型温度調整装置1は、ダイカスト鋳造停止前に設定温度に加熱した金型2にアルミ溶湯を充填し、キャビティ部46にアルミ溶湯を行き渡らせている。そのため、可動型4と固定型3は、ダイカスト鋳造開始時点においてアルミ粗材をキャビティ部46に既に保有し、一つのブロック体にされている。このような固定型3と可動型4は、保温時と同様に、熱媒体流路3a,4aを流れる熱媒体の熱をキャビティ部46の内壁からアルミ粗材を介して相互に熱伝達し、キャビティ部46の内壁を加熱する。
よって、金型温度調整装置1は、固定型3と可動型4が主型31,41と入れ子32〜34,42〜44の複数の部品で構成されていても、キャビティ部46の内壁を設定温度である110℃に短時間で均一に昇温させることができる。
従来技術で説明した予熱方法は、キャビティ部46の各部を設定温度に昇温させるまでに、捨て打ちを5ショット程度しなければならなかった。しかし、本実施形態の金型温度調整装置1は、捨て打ちを最初の1ショットで済ませることが可能になった。よって、本実施形態の金型温度調整装置1は、捨て打ち回数を減らして、材料や時間、エネルギーのロスを低減できる。
尚、本実施形態の金型温度調整装置1は、ダイカスト鋳造停止後からダイカスト鋳造を再開するまでの間に、アルミ粗材が完全に凝固するため、予熱時に焼き付きの問題が生じない。
<温度確認実験>
発明者は、型開きと型締めが金型2の予熱に与える影響を調べる実験と、熱媒体が金型の保温に与える影響を調べる実験と、キャビティ部46に充填したアルミ溶湯が金型2の保温に与える影響を調べる実験と、を行った。
各実験では、図4及び図5に示すように、固定型3と可動型4に熱電対M1〜M4,M11〜14、N1〜N4,N11〜N14を配置し、固定型3と可動型4の各部温度変化を調べた。
<型開きと型締めが金型の予熱に与える影響を調べる実験について>
型開きが金型の予熱に与える実験では、アルミ溶湯を充填した金型2の固定型3と可動型4を約30℃に均一に加熱し、その金型2を型開きしてアルミ粗材をキャビティ部46に接触しない位置まで押し出した状態で、200℃の熱媒体を0.2MPaで金型2を循環させて予熱した。そして、熱媒体を供給し始めてからの固定型3と可動型4の温度変化を、熱電対M1〜M4,M11〜M14,N1〜N4,N11〜N14により測定した。この実験結果を図6及び図7に示す。
型開きして予熱する場合には、図6に示すように、固定型3は、予熱開始から1時間40分が経過した時点の最高温度が、熱電対M3の測定した約115℃であった。一方、固定型3は、予熱開始から1時間40分が経過した時点の最低温度が、熱電対M11の測定した約85℃であった。よって、固定型3は、予熱開始から約1分40秒後に、約40℃の温度差が生じた。
また、型開きして予熱する場合には、図7に示すように、可動型4は、予熱開始から1時間40分が経過した時点の最高温度が、熱電対N12の測定した約110℃であった。一方、可動型4は、予熱開始から1時間40分が経過した時点の最低温度が、熱電対N3の測定した約70℃であった。よって、可動型4は、予熱開始から約1分40秒後に、約40℃の温度差が生じた。
これに対して、型締めが金型の予熱に与える実験では、アルミ溶湯を充填した金型2の固定型3と可動型4を約25℃に均一に加熱する。この状態で型締めした金型2に200℃の熱媒体を0.2MPaで循環させて予熱する。そして、熱媒体を供給し始めてからの固定型3と可動型4の温度変化を、熱電対M1〜M4,M11〜M14,N1〜N4,N11〜N14により測定した。この実験結果を図8及び図9に示す。
型締めして予熱する場合には、図8に示すように、固定型3は、予熱開始から1時間40分経過後の最高温度が、熱電対M13の測定した約83℃であった。一方、固定型3は、予熱開始から1時間40分経過後の最低温度が、熱電対M11の測定した約58℃であった。よって、固定型3は、予熱開始から約1分40秒後に、約25℃の温度差が生じた。
また、型締めして予熱する場合には、図9に示すように、可動型4は、予熱開始から約1時間40分経過後の最高温度が、熱電対N12の測定した約80℃であった。一方、可動型4は、予熱開始から約1時間40分経過後の最低温度が、熱電対N3の測定した約60℃であった。よって、可動型4は、予熱開始から約1分40秒後に、約20℃の温度差が生じた。
上記実験結果より、型開きして予熱する場合、固定型3の各部温度差が約40℃、可動型4の各部温度差が約40℃であったのに対して、型締めして予熱する場合には、固定型3の各部温度差が約25℃、各部可動型4の温度差が約20℃であり、型締めして予熱する場合は、型開きして予熱する場合より、固定型3と可動型4の各部温度差が約半分になることが判明した。換言すれば、型締めして予熱した金型2は、キャビティ部46の温度バラツキが型開きして予熱した金型2と比べて半減することが判明した。
<熱媒体が金型の保温に与える影響を調べる実験について>
実験では、先ず、45℃に加熱した金型2に鋳込みを行った後、アルミ粗材をキャビティ部46から取り出し、その後、金型2を型締めした状態でアルミ溶湯と熱媒体を金型2に供給することなく金型2を30分間放置してから、再度鋳込みを行った。そして、熱電対M1〜M4の測定値に基づいて固定型3の各部温度変化を調べた。この実験結果を図10に示す。
図10に示すように、固定型3は、最も温度上昇しやすい位置に配置された熱電対M2が、最初の鋳込み開始時に45℃を測定し、鋳込み開始から2時間30分経過後に約105℃を測定する。また、固定型3は、最も温度上昇しにくい位置に配置された熱電対M1が、最初の鋳込み開始時に45℃を測定し、鋳込み開始から2時間30分経過後に約80℃を測定する。その後、キャビティ部46からアルミ粗材を取り出した後、金型2を型締めして30分間放置すると、固定型3は、熱電対M1〜M4の測定する温度が60℃まで低下する。その後、鋳込みを再開すると、固定型3は、熱電対M12が、鋳込み再開から2時間30分経過後に約115℃を測定し、熱電対M1が鋳込み再開から約2時間30分経過後に85℃を測定する。
次に、固定型3を80℃まで昇温させた金型2に鋳込みを行った後、キャビティ部46にアルミ溶湯を充填せずに金型2を型締めして200℃の熱媒体を金型2に供給して保温を30分間行い、その後、再度鋳込みを行う実験を行った。そして、熱電対M1〜M4の測定値に基づいて固定型3の各部温度変化を調べた。この実験結果を図11に示す。
図11に示すように、80℃に昇温した金型2を用いて鋳込みを行うと、固定型3は、最も温度上昇しやすい位置に配置された熱電対M2が、鋳込み開始から約1時間後に約110℃を測定する。また、固定型3は、最も温度上昇しにくい位置に配置された熱電対M1が、鋳込み開始から約1時間経過後に約90℃を測定する。その後、キャビティ部46からアルミ粗材を取り出した後、金型2を型締めした状態で200℃の熱媒体を0.20MPaで熱媒体流路3a,4aに循環させて保温を行うと、固定型3は、熱電対M2が測定する温度が約80℃に低下し、熱電対M1が測定する温度が約85℃に低下する。その後、金型2を型締めして200℃の熱媒体を熱媒体流路3a,4aに供給しながらアルミ溶湯をキャビティ部46に供給して鋳込みを行うと、固定型3は、鋳込み再開から約50分経過後に、熱電対M2が約115℃を測定し、熱電対M1が約90℃を測定する。
上記実験結果より、熱媒体を供給せずに放置した金型2の固定型3は、放置前の鋳込み開始時と、放置後の鋳込み終了後との温度差が最大で70℃に達したのに対して、熱媒体を供給して保温した金型2の固定型3は、保温前の鋳込み開始時と、保温後の鋳込み終了後との温度差が最大で35℃に達することが判明した。よって、熱媒体を金型2に供給して保温することにより、鋳込みと保温を繰り返す場合の金型2の温度バラツキを半減できる。このことは、熱媒体を供給して金型2を保温すると、熱媒体を供給せずに金型2を保温する場合と比べ、キャビティ部46の温度のバラツキを小さくできることを意味する。
また、保温した金型2は、保温後に鋳込みにより熱電対M2が115℃を測定する間での時間が50分であるのに対して、放置した金型2は、放置後に鋳込みにより熱電対Mが115℃を測定するまでの時間が約2時間30分であり、保温した金型2は放置した金型2と比べて固定型3を早く昇温させることができる。このことは、キャビティ部46の内壁の温度を設定温度に昇温させる時間が、熱媒体を供給して金型2を保温することにより短縮できることを意味する。
ところが、図11の熱電対M1〜M4が測定した測定値に示すように、金型2は、熱媒体による保温中に固定型3の各部で温度が低下し、エネルギーロスを生じていた。これは、熱媒体の熱が、冷却水管35,45に残留する残留水を沸騰させるのに用いられるためと考えられる。保温時に固定型3の温度、換言すればキャビティ部46の温度が低下すると、ダイカスト鋳造の再開時に予熱時間が長くなったり、捨て打ち回数が多くなる等、ロスを生じる原因となる。
<キャビティ部に充填したアルミ溶湯が金型の保温に与える影響を調べる実験>
キャビティ部46に充填したアルミ溶湯が金型2の保温に与える影響を調べる実験では、固定型3を80℃まで昇温させた金型2に鋳込みを行った後、金型2を型締めしてアルミ溶湯をキャビティ部46に充填すると共に200℃の熱媒体を0.20MPaで金型2に供給して保温を30分間行い、その後、再度鋳込みを行う実験を行った。そして、熱電対M1〜M4,M11〜M14,N1〜N4,N11〜N14の測定値に基づいて固定型3と可動型4の各部温度変化を調べた。その実験結果を図12及び図13に示す。
図12に示すように、固定型3は、熱電対M12が、保温開始時には約115℃を測定し、保温開始から30分経過した時には約110℃を測定する。一方、固定型3は、熱電対M3が、保温開始時には約95℃を測定し、保温開始から30分経過した時には約90℃を測定する。更に、固定型3は、熱電対M14が、保温開始時には約90℃を測定し、保温開始から30分が経過した時には約95℃を測定している。よって、固定型3は、保温開始時の温度差が約25℃であるのに対して、保温開始から30分が経過した時の温度差が約20℃であって、保温によって固定型3の各部温度差が小さくなっている。
しかも、固定型3は、保温開始から50分間保温を続けても、熱電対M1〜M4,M11〜M14が測定する値は、保温開始から30分経過した時点とほぼ同じである。
また、図13に示すように、可動型4は、熱電対N14が、保温開始時には約105℃を測定し、保温開始から30分経過した時には約95℃を測定する。一方、固定型3は、熱電対N3が、保温開始時には約90℃を測定し、保温開始から30分経過した時には約95℃を測定する。更に、固定型3は、熱電対N1が、保温開始時には約80℃を測定し、保温開始から30分が経過した時には約85℃を測定している。このように、可動型4は、保温開始時の温度差が約25℃であるのに対して、保温開始から30分が経過した時の温度差が約10℃であって、保温によって可動型4の各部温度差が小さくなっている。
しかも、可動型4は、保温開始から50分間保温を続けても、熱電対N1〜N4,N11〜N14が測定する値は、保温開始から30分経過した時点とほぼ同じである。
上記実験結果より、アルミ溶湯を充填した状態で高温の熱媒体を金型2に供給して保温を行うことにより、保温時に固定型3と可動型4の温度低下を抑制しつつ、固定型3と可動型4の各部温度を均一にならすことができることが判明した。これは、保温開始時に冷却水管35,45に残留する冷却水の沸騰にアルミ溶湯や熱媒体の熱が消費されても、固定型3と可動型4がキャビティ部46に保有するアルミ粗材を介して一つのブロック体にされ、熱媒体流路3a,4aを流れる熱媒体の熱を固定型3と可動型4がキャビティ部46の内壁を介して互いに熱伝達し合って均一に昇温するためと考えられる。このように保温された金型2は、保温前の鋳込み終了時と保温後の鋳込み開始時との温度差が小さく、保温後の予熱時間を大幅に短縮することができる。また、固定型3と可動型4の各部温度の差が小さいことは、キャビティ部46の内壁の温度バラツキを小さくできたことを意味する。
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置1は、例えば、ダイカスト鋳造を含む製造ラインが、ダイカスト鋳造工程の前工程又は後工程で異常を生じ、ダイカスト鋳造が中断される場合には、可動型4と固定型4とを型締めしてキャビティ部46に溶湯を充填した状態で、可動型4と固定型3に熱媒体を供給して保温する。
固定型3と可動型4は、ダイカスト鋳造を中断する間、熱媒体を供給されて保温される。固定型3と可動型4は、主型41,42や入れ子32〜34,42〜43という複数の部品で構成されていても、キャビティ部46に保有している粗材を介して相互に熱伝達し、キャビティ部46の内壁を均一な温度にする。そのため、ダイカスト鋳造を再開する場合には、固定型3と可動型4を予熱する予熱時間や、キャビティ部46の内壁を設定温度に昇温させるための捨て打ちの回数が減り、予熱時のロスが低減する。しかも、金型2は、短い予熱時間でキャビティ部46の内壁を均一な温度にされるので、溶湯がキャビティ部46内を均一に流れ、鋳造品の品質の均一性を維持しやすい。
よって、本実施形態の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置1によれば、キャビティ部46の内壁の温度を容易に均一化することができ、予熱時のロスを減らして鋳造品の品質の均一化を図ることができる。
本実施形態の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置1は、ダイカスト鋳造を停止する前に、可動型4と固定型3とを型締めしてキャビティ部46に溶湯を充填し、ダイカスト鋳造を再開する場合には、ダイカスト鋳造の停止前にキャビティ部46に充填した溶湯が凝固した粗材をキャビティ部46に保有した状態で、ダイカスト鋳造を行う際のキャビティ部46の設定温度より高温の熱媒体を可動型4と固定型3に供給することにより予熱を行う。
例えば、1日の作業終了時や、正月休みなどの連休前にダイカスト鋳造が停止される場合には、可動型4と固定型3とを型締めしてキャビティ部46に溶湯を充填する。ダイカスト鋳造により金型2が設定温度に昇温しているため、溶湯は、キャビティ部46に空隙がないように適切に充填される。金型2は、ダイカスト鋳造の停止後から温度を低下させ始め、それに伴い、溶湯がキャビティ部46内で凝固する。その後ダイカスト鋳造を開始する場合には、キャビティ部46に粗材を保有したまま、ダイカスト鋳造を行う際のキャビティ部46の設定温度より高温の熱媒体を可動型4と固定型3に供給することにより予熱を行う。固定型3と可動型4は、キャビティ部46の粗材を介して一つのブロック体となっており、熱媒体の熱をキャビティ部46の内壁から粗材を介して相互に熱伝達し、キャビティ部46の内壁を均一な温度にする。そのため、固定型3と可動型4は、キャビティ部46の内壁全体を設定温度に昇温させるための予熱時間や捨て打ちの回数が減り、予熱時のロスが低減する。しかも、キャビティ部46の内壁が粗材により必然的に均一な温度に予熱されるので、短時間の予熱で湯流れを良好にして、鋳造品の品質の均一性を維持しやすい。
よって、本実施形態の鋳造品の製造方法及び金型温度調整装置によれば、キャビティ部46の内壁の温度を容易に均一化することができ、予熱時のロスを減らして鋳造品の品質の均一化を図ることができる。
尚、例えばダイカスト鋳造を含む生産ラインが、ダイカスト鋳造の前工程又は後工程の異常により、ダイカスト鋳造を中断する場合には、ダイカスト鋳造を中断する間、高温の熱媒体を熱媒体流路3a,4aに循環させてキャビティ部46の内壁を設定温度に保温しておけば、異常解消後にダイカスト鋳造を再開した場合の予熱時間を大幅に短縮できる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、保温時に利用した粗材を予熱時にそのまま利用しても良いし、保温時に使用したアルミ粗材を破棄し、予熱時に新たに溶湯をキャビティ部46に充填して予熱を行っても良い。更に、キャビティ部46を空気層にしてダイカスト鋳造を停止した後に、ダイカスト鋳造を再開する場合には、キャビティ部46にアルミ溶湯を充填して熱媒体を供給しながら金型2を20分〜30分間放置することにより、予熱を行っても良い。
例えば、上記実施形態では、アルミを溶湯の一例として挙げたが、黄銅、亜鉛合金、マグネシウム合金、鉛およびすず合金、鉄合金などを溶湯の一例としても良い。
本発明の実施形態に係り、金型温度調整装置の概略構成を示す図である。 図1に示す制御装置のブロック図である。 図1に示す金型をダイカストマシンに取り付けた状態の断面図である。 図3に示す固定型の平面図である。 図3に示す可動型の平面図である。 型開きして予熱した場合の固定型の温度変化を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(時間)を示す。 型開きして予熱した場合の可動型の温度変化を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(時間)を示す。 型締めして予熱した場合の固定型の温度変化を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(時間)を示す。 型締めして予熱した場合の可動型の温度変化を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(時間)を示す。 熱媒体が金型の保温に与える影響を調べる実験において、熱媒体を金型に供給せずに保温する場合の実験結果を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(分)を示す。 熱媒体が金型の保温に与える影響を調べる実験において、熱媒体を金型に供給して保温する場合の実験結果を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(分)を示す。 図1に示す金型温度調整装置において型締めしてキャビティに溶湯を充填した状態で保温した場合の固定型の温度変化を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(時間)を示す。 図1に示す金型温度調整装置において型締めしてキャビティに溶湯を充填した状態で保温した場合の可動型の温度変化を示す図である。縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(時間)を示す。
符号の説明
1 金型温度調整装置
2 金型
3 固定型
4 可動型
21,27 第1,第2タンク(熱媒体供給手段)
11〜16 第1〜第6流路(熱媒体供給手段)
22〜26,28 第1〜第6流体制御弁(熱媒体供給手段)
46 キャビティ部

Claims (4)

  1. 可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられた金型の温度を調整しながらダイカスト鋳造により製品を製造する鋳造品の製造方法において、
    前記ダイカスト鋳造を中断する場合には、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填した状態で、前記可動型と前記固定型に熱媒体を供給して保温する
    ことを特徴とする鋳造品の製造方法。
  2. 可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられた金型の温度を調整しながらダイカスト鋳造により製品を製造する鋳造品の製造方法において、
    前記ダイカスト鋳造を停止する前に、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填し、
    前記ダイカスト鋳造を再開する場合には、前記ダイカスト鋳造の停止前に前記キャビティ部に充填した前記溶湯が凝固した粗材を前記キャビティ部に保有した状態で、前記ダイカスト鋳造を行う際の前記キャビティ部の設定温度より高温の熱媒体を前記可動型と前記固定型に供給することにより予熱を行う
    ことを特徴とする鋳造品の製造方法。
  3. 可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられておりダイカスト鋳造に使用される金型の温度を調整する金型温度調整装置において、
    前記可動型と前記固定型に熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、
    前記ダイカスト鋳造を中断する場合には、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填した状態で、前記熱媒体供給手段に前記熱媒体を供給させて前記可動型と前記固定型を保温する熱媒体供給制御手段と、
    を有することを特徴とする金型温度調整装置。
  4. 可動型と固定型との間に溶湯を充填するためのキャビティ部が設けられておりダイカスト鋳造に使用される金型の温度を調整する金型温度調整装置において、
    前記可動型と前記固定型に熱媒体を供給する熱媒体供給手段と、
    前記ダイカスト鋳造を停止する場合に、前記可動型と前記固定型とを型締めして前記キャビティ部に前記溶湯を充填する溶湯充填手段と、
    前記ダイカスト鋳造を再開する場合に、前記溶湯充填手段により前記キャビティ部に充填された溶湯が凝固した粗材を前記キャビティ部に保有した状態で、前記ダイカスト鋳造を行う際の前記キャビティ部の設定温度より高温の前記熱媒体を供給させて前記可動型と前記固定型を予熱する熱媒体供給制御手段と、
    を有することを特徴とする金型温度調整装置。
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