しかし、このような車両用側突検出装置においては、センサが配置された特定位置の衝突を検出するように構成されているため、例えば、衝突による補強部材の変形に伴う、センサの破損や衝突衝撃によるセンサの脱落等は考慮されていない。従って、確実に車両搭乗者の保護を実行するためにも瞬間的に大きな衝撃を伴うような衝突発生時であっても、センサの衝突検知精度を低下させないための改善が必要であり、補強部材の変形に伴うセンサの破損や脱落を防止する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、衝突による補強部材の変形が発生しても、補強部材に取り付けられた衝突検知センサの破損や衝突衝撃によるセンサの脱落等を防止することが可能であり、センサの衝突検知精度を低下させない車両用側突検出装置及びそれを利用した車両用乗員保護システム、を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の車両用側突検出装置は、
車両に搭載された側面ドアの外板と、
前記外板の車室内側に前記外板に対向して離隔配置される前記側面ドアの内板と、
前記外板と前記内板との間であって前記内板に対して離隔配置され、前記外板の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する補強部材と、
前記内板、および、前記内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である被検出部材と前記補強部材との離隔距離を検知するセンサと、
前記センサの出力値に基づいて前記車両と物体との衝突を判定する判定手段と、
を有する車両用側突検出装置であって、
前記センサは、前記補強部材に対して、前記衝突に伴って前記補強部材が変形した場合に前記センサの少なくとも一部と前記補強部材との距離を変位させる取付手段により取り付けられていることを特徴とする。
すなわち、この発明の車両用側突検出装置において、センサは、車両に搭載された側面ドアの外板と、この外板に対向して車室内側に隔離配置して設けられた側面ドアの内板との間に配置される。そして、この側面ドアの内板および、内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方である被検出部材と、この被検出部材に対して隔離配置された補強部材との隔離距離を検知するセンサである。そして、車両用側突検出装置はこのセンサの出力値に基づいて車両と物体の衝突を判定するのであるが、このセンサは、衝突に伴う補強部材の変形が生じても、補強部材に対して少なくともセンサの一部が取り付けられた補強部材との距離を変位させるように取り付けられているのである。
つまり、補強部材とセンサの係合部位の少なくとも一部が、補強部材との距離を変位させるように取り付けられているため、補強部材の変形を生ずる衝突が発生しても該補強部材に係合されたセンサの一部がセンサ破損を防ぐように距離を変位させるため、瞬間的に大きな衝撃を受けてもセンサに衝撃が及ばずに破損しない。
また、補強部材に係合されたセンサの一部が補強部材との距離を変位させるよう取り付けられているため、衝突発生時の衝撃によるセンサの脱落も防止できる。このようにセンサの破損や脱落による衝突検知精度の低下を招かずに、確実に衝突を検知できるため、衝突発生時にはエアバッグ等の乗員保護装置を確実に作動させることが可能となり、乗員保護性能を高めた乗員保護システムを提供することができる。
本発明の好適な態様として、前記被検出部材は、金属または強磁性体からなり、
前記センサは、前記被検出部材と前記補強部材との間であって前記被検出部材から離隔した状態で前記補強部材に取り付けられ、前記被検出部材と前記補強部材とが対向する方向に磁界を発生させ、前記被検出部材との離隔距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルであり、前記判定手段は、前記コイルの前記インダクタンスの変化に基づいて前記車両と物体との衝突を判定することを特徴とする。
このように、衝突を検知するセンサが被検出部材と補強部材とが対向する方向に磁界を発生させるものであり、側面ドアの内板および、内板に取り付けられた内側部材の少なくとも何れか一方の被検出部材との離隔距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルで構成されても良い。
車両用側突検出装置が有する衝突判定手段は、コイルのインダクタンスの変化に基づいて行われるため、高速応答が可能となり、短時間で大きく変化する衝撃であっても確実に検知することができる。また、センサの取り付けに必要な配置領域をコンパクトにすることが可能であるため、省スペースやセンサ取り付け・配置といった製造工数の削減、さらにはコイルセンサ自身の小型化による取り付けの容易化をも実現することができる。
また、本発明の好適な態様として、前記取付手段は、前記センサに設けられ、前記補強部材に係合する複数の固定用部材を備え、前記衝突に伴って前記補強部材が変形した場合に、前記複数の固定用部材のうち少なくとも1つは、前記補強部材から離脱可能となるように前記補強部材に取り付けられている離脱可能固定用部材であり、前記複数の固定用部材の少なくとも他の1つは、前記補強部材から離脱不能に前記補強部材に固定されている離脱不能固定用部材であることを特徴とする。
このように、センサと補強部材との取り付け手段はセンサの少なくとも一部が補強部材から離脱可能としてもよい。衝突発生時の補強部材の変形に対する衝撃力に対して、センサの破損を招かずに補強部材から離脱させることにより確実にセンサ破損を防止できる。加えて、補強部材に係合している他の取り付け箇所によりセンサの脱落防止をも達成される。
また、センサと補強用部材との係合手段は、複数の固定用部材を備えるものであり、そして、センサと補強部材とが衝突発生時の補強材の変形に伴い、複数の固定用部材で係合された少なくとも一部が離脱可能なように離脱可能固定部材を備えるものでも良い。複数の固定用部材を備えることにより、離脱可能固定部材と固定部材とを使い分けることが可能となり、補強部材に係合されたセンサに対する変形時の衝撃力を分散させることが期待できるため、センサ破損防止やセンサ脱落防止に効果的である。
また、固定用部材の少なくとも他の1つは、補強部材の変形を伴う衝突発生時であっても離脱不能なように固定されていることにより、衝突発生時の衝撃に伴うセンサの補強部材からの脱落を確実に防止できる。
さらに、本発明の好適な態様として、前記離脱可能固定用部材は、補強部材側へ突出するとともに開口を有するばね材で構成されていることを特徴とする。
このように、補強部材側へ突出するとともに補強部材側に開口を有するばね材でセンサを係止させることにより、衝突発生時の特定方向の衝撃に対して(補強部材の変形を伴う開口方向への衝撃)、補強部材とセンサとの係合をより効果的に離脱させることができる。
さらに、本発明の好適な形態として、前記補強部材に対して前記固定用部材を前記補強部材の周方向に回転規制する回転規制手段を備えることを特徴とする。
例えば、固定用部材のみではセンサが補強部材に対して回転することが考えられる。そうすると、物体との衝突が発生しても検出できない虞がある。そこでこのように、センサが係合された補強部材の周方向に対して回転規制する規制手段を備えることにより、衝突発生時のセンサ破損やセンサ脱落のみならず、取り付けられた補強部材の軸回りへのセンサ回転を防止できるため、より一層の、衝突検出精度低下への防止効果が得られることとなる。特に、被検出部材との離隔距離の変化に応じてインダクタンスが変化するコイルセンサに対する衝突検出精度の低下防止には有効である。
さらに、本発明の好適な形態として、前記補強部材は、軸直角方向断面形状が非円形からなる非円形外周面部を有し、前記固定用部材は、前記非円形外周面部に対して前記補強部材の周方向に係合し、前記回転規制手段は、前記非円形外周面部と前記固定用部材であることを特徴とする。
このように、補強部材を軸直角方向断面形状が非円形からなる非円形外周面部(例えば、断面形状が半円形や長方形等)を有するように構成しても良い。固定部材を、補強部材に含まれる軸直角方向断面形状が非円形である非円形外周部に対して周方向に係合させる構成とすることで、補強部材が有する非円形外周面部と固定用部材とで衝突発生時の補強部材の周方向へのセンサ回転を防止でき、衝突検知精度の低下を確実に防止できる。
また、本発明の好適な形態として、前記回転規制手段は、前記補強部材と前記センサとを接着する接着剤であることを特徴とする。
このような形態であっても、補強部材の変形を伴う衝突発生時のセンサ破損やセンサ脱落、センサの回転に伴う衝突検出精度の低下を防ぐことが可能であり、補強部材とセンサとを接着剤により接着させることにより、補強部材の周方向へのセンサ回転を防止できる。そして、このような接着剤で実現される回転規制手段は非常に簡便なため、量産時の加工コストの大幅な低減が期待できる。
また、本発明の好適な形態として、前記取付手段は、所定の接着強度を有する第一の接着剤と前記所定の接着強度より高い接着強度を有する第二の接着剤とを備え、前記センサと前記補強部材とが前記第一の接着剤により接着される部位が離脱可能であることを特徴とする。
このように、補強部材とセンサとの係合において、接着強度が異なる第一の接着剤と第二の接着剤とを備え、補強部材とセンサとの接着力の強弱によって、弱接着剤(第一の接着剤)の部位が補強部材の変形を伴う衝突発生時に、離脱可能な取り付け手段であっても良い。このような形態であっても、補強部材の変形を伴う衝突発生時のセンサ破損やセンサ脱落、センサの回転に伴う衝突検出精度の低下を防ぐことが可能となり、補強部材とセンサとの係合は全て接着剤により実現できるため、固定手段の簡便さにおいて量産時の加工コストの大幅な低減が期待できる。
また、本発明の好適な形態として、前記取付手段は、前記コイルと前記補強部材とに挟持され、前記コイルと前記補強部材とが対向する方向に伸長可能な緩衝材を備える。
このように、補強部材とコイルとの係合において、補強部材とコイルとで緩衝材を挟持する構造を取り付け手段に持たせた上で、補強部材とコイルとが対向する方向に伸長可能な緩衝材を備えるものでもよい。すなわち、補強部材の変形方向は補強部材から対向する内板側へ向かう変形力であるから、補強部材とコイルとが対向する方向に伸長可能な緩衝材を挟持することにより、補強部材の変形伴う衝突を検出しても挟持された緩衝材が補強部材とセンサとの間で伸長するため、取り付けられたセンサの破損や脱落を防止することが可能となる。
さらに、本発明の好適な形態として、前記緩衝材は、縦弾性係数が異なる複数の材料から構成され、前記縦弾性係数が小さい材料からなる部位が、前記縦弾性係数が大きい材料からなる部位より前記対向する方向に伸長可能であることを特徴とする。
このように、縦弾性係数が異なる複数の材料から構成される緩衝材であってもセンサ破損防止、センサ脱落防止の効果を奏することが可能であり、複数種類の材料を組み合わせることにより対向方向に伸長する緩衝材の特性を調整することが可能となる。
さらに、本発明の好適な形態として、上記した車両用側突検出装置と、衝突発生時に動作して、前記車両の乗員を衝突による衝撃から保護する乗員保護装置と、を備え、前記車両用側突検出装置の判定に基づいて前記乗員保護装置が動作する車両用乗員保護システムを特徴とする。
このように、車両用側突検出装置は、補強部材の変形を伴う衝突発生時においても、センサ破損や衝突時のセンサ脱落、補強部材の周方向へのセンサ回転が防止できるため、該車両用側突検出装置と、衝突発生時に動作して車両の乗員を衝突による衝撃から保護する乗員保護装置とを備えることにより、補強部材に対するセンサの取り付け状態の変化(破損、脱落、補強部材の周方向への回転)に伴う衝突検知精度の低下を招かずに衝突判定が行えるので、確実に車両搭乗者(乗員)を保護する車両用乗員保護システムが提供できることとなる。
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。
<第一実施形態>
第一実施形態の車両用側突検出装置について、図1〜図7を参照にして説明する。第一実施形態は、平面状コイル21を含むコイル部材2が補強部材13に離脱可能な固定部材(3a、3c)によって係合された形態である。ここで、平面状コイル21は、内板12との離間距離を検出する形態を採っている。
尚、この実施形態でのセンサは平面状コイル21を対象として説明するが、補強部材13に取付可能な衝突検知センサであれば、衝突発生時の補強部材13の変形を検知する圧力センサや補強部材13に対する一定量の変形を検出するように施された機械式センサ(カムスイッチ、リミットスイッチ等)、さらには補強部材13から対向する内板12側への加速度を検出する加速度センサでも良い。
図1は車両に搭載された側面ドア1を車両左右方向の垂直に切断した断面図である。図2は、側面ドア1の車室内側から見た斜視図であって、内板12の一部を取り除いた状態を示す図である。図3は、コイル部材2が補強部材13に取り付けられた状態を示す斜視図である。図中の一点鎖線で示されたA−A´、B−B´、C−C´はそれぞれコイル部材2と補強部材13との係合を示す断面線である。図4は、内板12と平面状コイル21との離間距離に対する平面状コイル21のインダクタンスLsの関係を示す図である。図5は、車両用側突検出装置を構成する検出回路の回路構成図である。図6は図3に示された断面線での補強部材13とコイル部材2との係合を示す図である。図7は、第一実施形態の係合による衝突時の動作説明図である。
図1および図2に示すように、側面ドア1は、車両の外側に位置する外板11と、外板11から車室内側に離隔して且つ外板11に対向して配置される強磁性体の内板12とを備える。さらに、側面ドア1は、円柱棒状からなり、車両前後方向に延びるように、外板11と内板12との間のうち車両左右方向のほぼ中央であって、車両上下方向のほぼ中央に配置されている補強部材13を備えている。つまり、補強部材13は、内板12に対向して離隔配置されている。この補強部材13は、少なくとも外板11の曲げ剛性より高い曲げ剛性を有する。つまり、外板11に物体が衝突した場合に、曲げ剛性の低い外板11が変形したとしても、補強部材13により側面ドア1全体が変形することを抑制している。ここで、第一実施形態においては、内板12が本発明における被検出部材となる。
側面ドア1の内板12には、側面ドア1の内部に配置するパワーウインドウ機構やスピーカなどの組み付けや調整用、および、補強部材13に取り付けられるコイル部材2の組み付けや調整用を目的としたサービスホールが形成されることがある。内板12にサービスホールなどの貫通穴が形成されている場合、貫通穴がコイルのインダクタンスの変化に対して影響を及ぼすことがある。そこで、このような場合には、内板12そのものを被検出部材とするのではなく、内板12に取り付けられた別部材である内側部材を被検出部材としてもよい。つまり、サービスホールが形成されているとしても、サービスホールの影響を受けることを防止できるため、同様に衝突検出が可能となる。
コイル部材2は、図3に示すように、全体として平面状に形成されている。このコイル部材2は、平面状コイル21と、一対のフィルム22とから構成されている。平面状コイル21は、例えば銅などの導電性材料により平面状に巻回するようにパターン印刷形成されている。一対のフィルム22は、平面状コイル21を両面から挟持して、平面状コイル21が露出しないように被覆している。このフィルム22は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの可撓性材料により薄膜状に形成されている。つまり、フィルム22は、屈曲自在である。また、平面状コイル21自体についても屈曲変形可能である。従って、コイル部材2全体として、屈曲変形可能であり、非常に柔軟性が高い。つまり、少なくともコイル部材2は補強部材13よりも柔軟性が高いため、補強部材13が屈曲した場合であっても、コイル部材2は破損することなく屈曲する。
しかしながら、補強部材13を屈曲させる変形力が瞬間的に生ずるような場合や補強部材13の屈曲量が大きな場合には、可撓性を有するフィルム22に被覆されていても導電性材料によって印刷形成されたコイルパターンにヒビや亀裂等の断線障害を生ずる虞がある。また、このような衝撃力に対して、係合された補強部材13からの脱落によって衝突検知精度が低下することも考えられる。従って、確実に搭乗者の保護を行うためには、このような場合であってもコイルパターンの断線(センサ破損)や脱落等を防止する対策を講ずる必要がある。
このコイル部材2は、図1および図2に示すように、補強部材13のうち内板12に対向するように補強部材13に取り付けられている。つまり、コイル部材2は、内板12と補強部材13との間に配置されている。そして、コイル部材2の法線方向、すなわち、平面状コイル21のコイル軸方向が、被検出部材としての内板12と補強部材13とが対向する方向に一致するように、コイル部材2が配置されている。従って、平面状コイル21に電流を供給した場合に、被検出部材としての内板12と補強部材13とが対向する方向に磁界を発生させる。
ここで、側面ドア1の外板11に物体が衝突すると、外板11が車室内側に変形する。そして、この衝撃が大きい場合には、物体は補強部材13を車室内側へ変形させる。つまり、被検出部材としての内板12と補強部材13との離間距離が短くなる。そうすると、平面状コイル21が発生する磁界によって、内板12に渦電流が流れ、内板12に磁界が発生する。つまり、衝突によって内板12と平面状コイル21との離間距離が短くなることに伴って、平面状コイル21に鎖交する渦電流によって発生した磁界が増加する。そうすると、図4に示すように、内板12と平面状コイル21との間の距離が減少するに従って、平面状コイル21のインダクタンスLsは減少する。このように、平面状コイル21のインダクタンスは、内板12と平面状コイル21との離間距離の変化に応じて変化する。
この車両用側突検出装置は、図5に例示するように、平面状コイル21を一部に構成する検出回路30を備える。平面状コイル21は、電気的にインダクタンスLsと抵抗Rsとの直列回路に相当し、上述したように補強部材13と内板12との離間距離によってインダクタンスLsが変化する。この平面状コイル21の一端を、例えば発振周波数F、電圧振幅Viである交流電圧発振回路に接続すれば、補強部材13の変形に伴う内板12との離間距離の変化を検出回路30の出力電圧振幅Voの変化として検出することができる。つまり、離間距離が内板12に近づくように変化した場合、平面状コイル21のインダクタンスLs小さくなるので、検出回路30の出力電圧振幅Voは大きくなる。
従って、衝突判定は検出回路30からの出力電圧振幅Voに基づいて、外板11に物体が衝突し、補強部材13を変形させる状態に至ったかを否かを判定すればよい。例えば、予め記憶させた閾値と検出された電圧振幅値との比較により衝突判定を行うことができる。
コイル部材2は、図3に示すように、平面状コイル21が内板12に対向するように補強部材13に取り付けられている。すなわち、内板12を被検出部材として衝突発生時の補強部材13の変形による離間距離の変化を平面状コイル21のインダクタンスの変化として検出する。この平面状コイル21を含み構成されるコイル部材2と補強部材13との係合形態を、図中一点鎖線(A−A´、B−B´、C−C´断面)で示された断面図を図6に例示する。
A−A´断面における補強部材13とコイル部材2との係合は、図6(a)に示すように、コイル部材2側に設けられた一対の断面C字形の取り付けブラケット3aによって補強部材13が挟持されている。この取り付けブラケット3aは、補強部材13側(すなわち、内板12側から外板11側に向かう方向)に突出して設けられる。つまり、補強部材13は円柱棒状であるから、断面の周形状は円を構成する。そして、この補強部材13の周形状に沿うように形成された断面C字形の取り付けブラケット3aの対で補強部材13を挟持させることにより、係合構造としてコイル部材2と補強部材13とが離脱可能となる開口が構成される。
このように、一対の断面C字形の取り付けブラケット3aで補強部材13を係合させずに、例えば、プラグとソケットとの関係のように対向する方向への抜挿力により離脱可能な係合構造としても良い。この場合には、取り付け用部材として補強部材13に固着させたプラグ若しくはソケットを設け、このプラグ若しくはソケットに対応するソケット若しくはプラグを取り付け用部材としてコイル部材2側に固着させ、両者を嵌合させれば、補強部材13の変形に伴う変形力をプラグ/ソケットの抜挿力として離脱可能な取り付け手段が実現できる。
また、例えば、補強部材13に一定の変形力が加えられた場合に破断されるような固定用部材3で補強部材13とコイル部材2とを係合させても良い。補強部材13とコイル部材2とを一体的に被覆できるビニール材等で両者を覆い、係止箇所にはミシン目を設けたり被覆材の膜厚を薄くさせる等の破断構造を備えることができる。さらには、補強部材13側に被覆材を破断できる刃状の破断構造を持たせることもできる。
コイル部材2と補強部材13とが離脱可能なように開口を有するように構成される固定用部材3は、ばね材で構成させるようにしても良い。コイル部材2を係合させた補強部材13に開口方向からの変形力が加えられた場合に確実に離脱可能であり、ばね係数を調整することにより変形力に対する離脱時の閾値設定が可能となる。
一方、同図B−B´断面に示すように、補強部材13とコイル部材2の外板11側の面とは、補強部材13の周形状を覆う取り付けブラケット3bにより係合されている。この取り付けブラケット3bも補強部材13側に突出して設けられている。
図例の如く、離脱可能な開口を有さない離脱不能固定用部材を使用せず(すなわち、離脱可能な開口を有する離脱可能固定用部材のみでコイル部材2と補強部材13とを係合する)ともコイル部材2と補強部材13との係合は可能であるが、このように、コイル部材2と補強部材13とが離脱不能である固定部材を備えて係合させることにより、補強部材13が大きく屈曲変形するような衝突検出時でも、センサ(コイル部材2)の補強部材13からの脱落を確実に防止できる。
さらに、補強部材13の周形状を覆う取り付けブラケット3bや、離脱可能な開口を形成する取り付けブラケット3aの湾曲内面(すなわち、補強部材13との接触面)側に摩擦係数の高い樹脂材やゴム材を挿入・接着させることにより、係合されたコイル部材2の回転規制が実現される。つまり、摩擦係数の高い緩衝部材により、円柱棒状の補強部材であっても、係合された補強部材の周方向へのコイル部材回転が抑止できる。このような、補強部材の周方向への回転を抑止する手段は、例えば、図6(a)に示す、B−B´断面において、離脱不能固定用部材で係合させた上で固定用部材3と補強部材13とを溶着させることでも実現できる。
また、図6(a)に例示された係合構造として、コイル部材の補強部材側の面にA−A´、C−C´断面に例示された離脱可能な開口面を有する取り付けブラケット3aをコイル部材2の長手幅一杯に成形させ、取り付けブラケット3aの断面C字形の湾曲外側に曲げた端部をB−B´断面に例示する如く、補強部材13を挟んだ端部対を溶着させ、離脱不能とするようにしても良い。
A−A´断面における補強部材13とコイル部材2との係合は、図6(b)に示すように、コイル部材側に設けられた一対の断面C字形の取り付けブラケット3cによって補強部材13aを挟持するように構成しても良い。この取り付けブラケット3cも、補強部材13側に突出して設けられている。断面C字形の取り付けブラケット3cの補強部材13aを挟持する端部は、C字形の湾曲する内側に向かって曲げ加工が施されている。そして、挟持される補強部材13aの断面形状は長方形であり、非円形の周形状を備える。断面C字形の取り付けブラケット3cの曲げ加工が施された端部は、湾曲する内側に向かって突出する挟持面により非円形の周形状を有する補強部材13aに接する。図6(a)に示す断面C字形の取り付けブラケット3aと同様に、取り付けブラケット3cの対で補強部材13aを挟持させることにより、コイル部材2と補強部材13aとが離脱可能となる開口を構成している。
このような固定用部材3の係合構造と、補強部材が有する非円形の周形状とにより、コイル部材2の破損を防止し、係合させた補強部材からの脱落を防止した上で補強部材の周方向に対するコイル部材の回転を防止できる。断面C字形の取り付け用ブラケット3cもばね材で構成することにより、開口方向への離脱を確実なものとし、ばね係数を調整することによる離脱時の閾値設定も可能となる。図6(b)に例示された補強部材の断面形状は長方形であるが、非円形の周形状を備えれば、例えば円弧を有する半円形や、円弧を挟持方向に上下に合わせた瞳状の形状を有するものでも良い。固定用部材3との係合構造とにより、上述した効果が期待できる。また、当然のことながら、図6(b)に例示された補強部材の如く、係合箇所のみを非円形の周形状とする他に、図6(c)に例示する補強部材の如く、補強部材全体として非円形の周形状を有する単一形態の物でも良い。
さらに、図6(d)に例示されるように、離脱可能な開口を有する固定用部材3との係合箇所では断面形状が円形(楕円形を含む)の周形状を備えるものであり(A−A´、C−C´断面参照)、離脱不能な固定用部材3で係合された箇所では、非円形の周形状を備える(B−B断面)補強部材であっても良い。
さらに、上述した固定用部材3を用いての効果は、補強部材13とコイル部材2とを接着させる、接着剤を用いても実現できる。例えば、離脱可能な係合箇所のみを接着剤による係合とするケース、離脱不能な係合箇所のみを接着剤による係合とするケース、さらには、接着強度が異なる2以上の接着剤を用い、一の接着剤は離脱不能な係合箇所に、離脱不能な係合箇所に使用された接着剤より強度が弱い他の接着剤を離脱可能な係合箇所にと、使い分けて係合させるケースが可能である。このような場合でも、コイル部材の破損(パターン断線障害)や補強部材からの脱落、補強部材の周方向への回転規制の効果が得られ、固定手段としては簡便なものとなる。
このような固定部材による係合を備えた補強部材13とコイル部材2とに関する、衝突発生時の動作を図7に沿って説明する。図7(a)には、離脱可能な固定用部材(3a、3c)と離脱不能な固定用部材(3b、3d)により、補強部材13に係合されたコイル部材2が示されている。平面状コイル21と一対のフィルム22から成るコイル部材2は、被検出部材である内板12に対向する。補強部材13とコイル部材2とは、コイル部材2から補強部材13側に突出した固定用部材3で係合されている。
図7(b)および(c)には、衝突物体として電柱が車両に搭載した側面ドア1(図示せず)に衝突した場合が示されている。衝突物体との側突発生時には、側面ドアの外板11(図示せず)に対して内板12側へと向かう方向に、変形力が発生する(電柱下側の矢印方向)。この変形力により、外板11(図示せず)と内板12との間であって、それぞれに離隔配置された補強部材13が内板12側へ屈曲変形する。補強部材13の屈曲変形を伴う物体との衝突箇所が、図7(b)に示されるように、離脱不能な固定用部材(3b、3d)で係合された付近の場合では、衝突に伴う押圧力(外板から内板へと向かう変形力)により、係合されたコイル部材2(衝突検知センサ)は内板12側へと離間距離を変位させる。一方、補強部材13は外板11より高い曲げ剛性を有し、衝突衝撃を自身の変形として緩和させる。つまり、衝突箇所を支点として、支点以外の部位は外板側に相対的に変位する。するとこの補強部材13に係合されたコイル部材2は全体として内板12側へ向かう押圧力を受けつつ、補強部材13と離脱可能な固定用部材(3a、3c)により係合された箇所は補強部材13から離脱するため、補強部材13の屈曲変形に合わせた変形はコイル部材2に生じない。すなわち、コイル部材12の破損(コイルパターンの断線障害)は生ずることなく、衝突検出精度を維持することができる。
図7(c)は、衝突箇所が離脱可能な固定用部材(3a、3c)付近の場合である。補強部材13は、衝突箇所を支点として、支点以外の部位が相対的に外板側へと変位する。しかし、補強部材13を内板12側へと屈曲させる押圧力により、補強部材13に係合されたコイル部材2は全体として内板12側へと離間距離を変位させつつ、外板側へと変位する補強部材13に離脱不能に係合された固定用部材(3b、3d)が追従する一方、衝突箇所付近の離脱可能な固定用部材(3a、3c)は相対的に補強部材13から離脱するため、図7(b)と同様にコイル部材の破損を生ずることなく、衝突検出精度が維持できる。
<第二実施形態>
第二実施形態の車両用側突検出装置について、図8、9を参照して説明する。第二実施形態は、平面状コイル21を含むコイル部材2と補強部材13との間に伸長可能な緩衝材を備える係合形態である。内板12との離間距離を検出する形態は第一実施例と同様であり、車両に搭載された側面ドアにおける他の部材との配置関係も第一実施例と同様である。
図8は、伸長可能な緩衝材を備えた補強部材13とコイル部材2との係合を示す図であり、図9は、第二実施形態の係合による衝突時の動作説明図である。
図8に示されるコイル部材2は、図3に示すように全体として平面状に形成され、平面状コイル21と一対のフィルム22とから構成される。補強部材13との係合ではコイル部材2との間に緩衝材4を挟持する構造を有する。尚、図中4aは、補強部材13とコイル部材2とで緩衝材4を確実に挟持するために設けられた搭載板である。補強部材13の形状が円柱棒状以外に、例えば、緩衝材4に対する十分な接着領域が確保できる(平面板状の形状等)のであれば、必ずしも必要なものではない。
ここで、補強部材13とコイル部材2との間に挟持される緩衝材4は、補強部材13とコイル部材2とが対向する方向に伸長可能な材料で構成されており、例えばウレタンや発砲スチロール等で構成された緩衝材である。このような緩衝材4を補強部材13とコイル部材2とで挟持させることにより、補強部材13が屈曲変形する変形力を受けても第一実施形態の固定用部材3と同様な効果を奏することができる。つまり、挟持された緩衝材4は補強部材13とコイル部材2とが対向する方向へ伸長可能であるから、補強部材13の屈曲変形に伴い緩衝材4自身が伸長するため、コイル部材2の破損や係合された補強部材13からの脱落、補強部材13の周方向への回転移動を防止することができる。
ここで、補強部材13とコイル部材2とで挟持される緩衝材4は、縦弾性係数が異なる複数の材料から構成されても良い。緩衝材4は補強部材13とコイル部材2との挟持される方向に厚みを有するので、例えば一の縦弾性係数を有する材料を挟んで、補強部材13側およびコイル部材2側にそれぞれ、一の縦弾性係数より大きな材料を備えることにより(つまり、2種類の材料でサンドイッチ状に挟む)、緩衝材の伸長効果を高めることができる。
第二実施形態の係合を備えた衝突時の動作を図9に沿って説明する。図9(a)には、補強部材13との間に伸長可能な緩衝材4を挟持させて係合させたコイル部材2が示されている。平面状コイル21と一対のフィルム22から成るコイル部材2は、被検出部材である内板12に対向している。
図9(b)および(c)には、衝突物体として電柱が車両に搭載した側面ドア1(図示せず)に衝突した場合が示されている。衝突物体との側突発生時には、側面ドアの外板11(図示せず)に対して内板12側へと向かう方向に、変形力が発生する(電柱下側の矢印方向)。この変形力により、外板11(図示せず)と内板12との間であって、それぞれに離隔配置された補強部材13が内板12側へ屈曲変形する。
物体との衝突箇所が、図9(b)に示されるように、係合されたコイル部材2の中心付近の場合には、衝突に伴う押圧力(外板から内板へと向かう変形力)により、外板11より高い曲げ剛性を有する補強部材13が衝突衝撃を自身の変形により緩和させ、挟持された緩衝材は補強部材の屈曲変形に伴って圧縮される。そして、衝突箇所を支点として、支点以外の補強部材13の部位は外板側に相対的に変位するため、緩衝材4は変位する補強部材13に追従して伸長することとなる。この結果、コイル部材2は、全体として内板12側に向かう押圧力を受けつつ、被検出材との離間距離を変位させるとともに、補強部材13に追従して伸長した緩衝材4に相対する部位は補強部材13の屈曲変形力を受けないため変形しない。すなわち、第一実施例の係合形態と同様の効果(コイル部材12の破損(コイルパターンの断線障害)を生じずに、衝突検出精度が維持できる)を奏することができる。
図9(c)は、衝突箇所が、係合されたコイル部材2との位置関係において、車両後方側に位置する箇所で生じた場合である。補強部材13は、衝突箇所付近では内板12側へ、付近以外の部位は、衝突箇所を支点として外板11側へと変位する。一方、伸長可能な緩衝材4を介在させて係合されたコイル部材2は、全体として内板12側へと離間距離を変位させつつ、補強部材13との係合領域が大きな部分に追従する一方で、衝突箇所付近の挟持された、係合領域が小さな緩衝材4は内板12側へと伸長するため、図9(b)と同様に第一実施例の係合形態と同様の効果を奏することができる。
このように、補強部材とセンサとの係合形態において、第一実施形態および第二実施形態の係合形態を備える車両用側突検出装置は、補強部材の変形を伴う衝突発生時においても、センサ破損や補強部材からのセンサ脱落、補強部材に対する周方向への回転移動が確実に防止できる。
以上のようにして構成された車両用側突検出装置は、以下のように利用することができる。図10に車両用乗員保護システムの概要をブロック図で示した。この車両用乗員保護システムは、エアバッグモジュール400を備えている。エアバッグモジュール400は、衝突発生時にエアバッグを展開することによって車両乗員を衝突による衝撃から保護するものである。ここで図10中の車両用側突検出装置は、既に説明した車両用側突検出装置のうちの何れであってもよい。エアバッグモジュール400は、車両に搭載されたシート(図示しない)の側面付近(例えば側面ドアやシートの側面部)に搭載され、車両用側突検出装置と電気的に接続されている。そして、車両用側突検出装置は、車両衝突ありと判定した場合、エアバッグモジュール400に対して展開指令を出力する。これを受けたエアバッグモジュール400は、エアバッグを展開する。これにより、乗員に作用する衝突の衝撃が低減されることとなる。
つまり、第一実施形態および第二実施形態の係合形態を備えた車両用側突検出装置と、エアバッグモジュール400(乗員保護装置)とを備えることにより、衝突発生時には、確実に衝突検知が可能であり、また検知センサの状態変化(破損、脱落、補強部材の周方向への回転)に伴う検知精度の低下を招かずに衝突判定が行えるので、安全性および、乗員保護性能を向上させた車両用乗員保護システムが提供できることとなる。