JP5029005B2 - 非水電解質及び非水電解質電池 - Google Patents

非水電解質及び非水電解質電池 Download PDF

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Description

本発明は、1,3−プロペンスルトンに代表される不飽和スルトンを含有する非水電解質及びそれを用いた非水電解質電池に関する。
近年、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、高い作動電圧と高エネルギー密度を有することから、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオカムコーダーなどのポータブル電子機器の駆動用電源として実用化され、急速な成長を遂げており、小型二次電池をリードする電池として、生産量は増え続けている。
非水電解質電池の正極活物質としては、一般に、六方晶構造を有するLiCoO、LiNiOやスピネル構造を有するLiMn等の4V級の高電圧を発現するリチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、なかでも、作動電圧が高く、高エネルギー密度が得られるLiCoOが主として用いられている。負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出し得る炭素材料が用いられており、なかでも、放電電位が平坦で高容量密度である黒鉛材料が主として用いられている。
近年、小型民生用途のみならず、電力貯蔵や電気自動車などに用いられる大容量で大型の非水電解液電池の開発が加速してきている。例えば、環境問題の打開策として、ニッケル水素電池を搭載したハイブリッド電気自動車(HEV)は、既に量産ベースで市販されるまでに至っている。一方、ニッケル水素電池の代わりに非水電解液二次電池を搭載したHEVの開発も進められており、一部実用化されている。このような用途においては、小型民生機器用では考えられないような高温環境において使用されることも想定する必要がある。このため、高温においても性能低下の小さい電池が求められていた。
特許文献1には、「高温保存を行なっても、電池の容量低下、ガス発生の抑制、および電池の負荷特性の劣化が抑制される非水電解液を提供することを目的」(段落0019)として、1,3−プロペンスルトン等の不飽和スルトンを含有する非水電解液を用いることで、「自己放電が小さく、負荷特性、抵抗の劣化が大幅に抑制され、かつ、電池内のガス発生量が大きく減じられた非水電解液二次電池を得ることができる。」(段落0129)ことが記載されている。
しかしながら、非水電解質が不飽和スルトンを含有することにより、高温保存による電池の性能低下については抑制できるものの、電池の内部抵抗が初期から大きなものとなってしまう結果、充分な放電容量を有する非水電解質電池とすることができないといった問題点があった。
特許文献2には、トリエチルアミンが添加された非水電解質に、「アミン化合物が炭素極表面を不活性化する。このため、充電時の非水電解液の炭素極表面での分解(還元分解)が抑制され、充放電サイクル特性及び保存特性が向上する。」(段落0015)という作用があることが記載されている。しかしながら、不飽和スルトンとアミン類を併用すること、及び、不飽和スルトンとアミン類を併用することで、不飽和スルトンを含有する非水電解液を用いた電池における上記問題点が解決できることについては記載がない。
特開2002−329528 特開平8−236155号公報
本発明は、不飽和スルトンを含有する非水電解液を用いた電池における上記問題点に鑑みてなされたものであり、電池を高温で使用することによる電池の性能低下を抑制できるという不飽和スルトンの効果が奏されたものとしながらも、電池の初期内部抵抗が抑制された非水電解質電池を提供することを目的とする。
本発明の技術的構成およびその作用効果は以下の通りである。ただし、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。
本発明は化1で示される不飽和スルトン、化2又は化3で示されるアミン類、及び、含フッ素リチウム塩を含有する非水電解質である
また、本発明は、前記非水電解質を用いた非水電解質電池である。
本願明細書において、不飽和スルトンは、化1で示されるものである。
(ここで、R〜Rは、水素、フッ素、又は、炭素数1〜12のフッ素を含んでもよい炭化水素基であり、nは0〜3の整数である。)
本願明細書において、アミン類は、化2で示されるものであるが、非水電解液中において前記アミン類は化3で占められる如くプロトン配位体となっていてもよく、アミン類の一部又は全部がプロトン配位している非水電解質も本発明の範囲内のものである。
(化2、化3において、R5〜R7のうちの1又は2以上が炭素数1から4の同一種もしくは異種のアルキル基である。)
本発明の構成により、不飽和スルトンを含有する非水電解液を用いた電池において、電池を高温で使用することによる電池の性能低下を抑制できるという不飽和スルトンの効果が奏されたものとしながらも、電池の初期内部抵抗が抑制された非水電解質電池とすることのできる非水電解質を提供できる作用機構については必ずしも明らかではなく、あくまでの推定の域を出ないが、本発明者らは次のように考えている。
即ち、不飽和スルトンを含有している非水電解質においては、リチウム塩として例えばLiPF等の含フッ素塩が用いられている場合、非水電解質中の微量水分の影響で、下記(1)式及び(2)式の如く、HFやLiFを生成することがある。ところが、この生成物と不飽和スルトンが反応することにより、正極上に高抵抗の被膜を形成させるために、電池の初期内部抵抗が大きなものとなってしまう。しかしながら、本発明の構成によれば、非水電解質がアミン類を含有しているので、(3)式の如く前記遊離物がアミン類によって捕捉される結果、電池の初期内部抵抗を低く抑えることができる。
従って、上記(3)式から明らかなように、本発明に係る非水電解質が含有するアミン類は、その一部又は全部がプロトン配位体となっていることがある。
本発明によれば、不飽和スルトンを含有する非水電解液を用いた電池において、電池を高温で使用することによる電池の性能低下を抑制できるという不飽和スルトンの効果が奏されたものとしながらも、電池の初期内部抵抗が抑制された非水電解質電池とすることのできる非水電解質を提供できる。
また、本発明によれば、不飽和スルトンを含有する非水電解液を用いた電池において、電池を高温で使用することによる電池の性能低下を抑制できるという不飽和スルトンの効果が奏されたものとしながらも、電池の初期内部抵抗が抑制された非水電解質電池を提供できる。
以下に、本発明の実施の形態を例示するが、本発明は、これらの記述に限定されるものではない。
本願の発明に係る不飽和スルトンは、具体的には、特許文献1にて開示されている化7、化8に示される化合物を例示でき、これらの1種又は2種以上とすることができる。
なかでも、化9で示される1,3−プロペンスルトンが好ましい。
本願の発明に係るアミン類は、化2で示されるものであり、化2で示されるアミン類としては、1級アミン、2級アミン、3級アミンを用いることができる。具体的には、プロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン等を例示でき、これらの1種又は2種以上とすることができる。なかでも、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミンが好ましい。
非水電解質としては、電解液、ゲル電解質、固体電解質のいずれも使用することができる。
電解液又はゲル電解質に用いることのできる非水溶媒としては、何ら限定されるものではなく、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート等の極性溶媒、もしくはこれらの混合物を使用してもよい。
また、電解液溶媒に溶解す含フッ素リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiCFCO、 LiCF(CF、LiCF(C、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiN(COCFおよびLiN(COCFCF、LiPF(CFCF が挙げられ、これらを1種又は2種以上混合して用いることができる。なかでも、LiPFを単独で、又は、LiPFと他の塩を混合して用いることが好ましい。LiPFと混合して用いる他の塩としてはLiN(SOCF、LiN(SOCFCFが好ましい。
本発明に係る非水電解質の製造方法は何ら限定されるものではないが、含フッ素リチウム塩と、非水溶媒と、不飽和スルトンと、アミン類とを混合することによって好適に製造できる。
このような製造方法により、含フッ素リチウム塩に起因する前記遊離物があっても、アミン類によって補足されるので、もって、不飽和スルトンを含有する非水電解液を用いた電池において、電池を高温で使用することによる電池の性能低下を抑制できるという不飽和スルトンの効果が奏されたものとしながらも、電池の初期内部抵抗が抑制された非水電解質電池とすることのできる非水電解質の製造方法を提供できる。
本発明に係る非水電解質において、不飽和スルトン及びアミン類の好ましい含有量は次の通りである。
不飽和スルトン及びアミン類を含有しない状態の非水電解質に対して、不飽和スルトンの量は0.2重量%以上2.0重量%以下が好ましい。なかでも、電池を高温で使用することによる電池の性能低下を抑制する観点からは0.5重量%以上、1.0重量%以下がより好ましく、繰り返し充放電サイクル性能を良好なものとする観点からは、0.2重量%以上0.5重量%以下がより好ましい。
本発明の効果を充分なものとするため、アミン類の量は、不飽和スルトン及び3級アミンを含有しない状態の非水電解質に対して、0.005重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましい。また、アミン類の量が多すぎると、逆に初期内部抵抗を壮大させる虞があるので、アミン類の量は、不飽和スルトン及びアミン類を含有しない非水電解質に対して、0.1重量%以下が好ましく、0.05重量%以下がより好ましい。
正極活物質としては、組成式LiMO、Li、組成式NaMO(ただし、Mは一種類以上の遷移金属、0≦x≦1、0≦y≦2)で表される複合酸化物、トンネル構造または層状構造の金属カルコゲン化物または金属酸化物を用いることができる。その具体例としては、LiCoO、LiCoNi1−x、LiMn、LiMn、MnO、FeO、V、V13、TiO、TiS等が挙げられる。また、有機化合物としては、例えばポリアニリン等の導電性ポリマー等が挙げられる。さらに、無機化合物、有機化合物を問わず、上記各種活物質を混合して用いてもよい。
さらに、負極材料たる化合物としては、Al、Si、Pb、Sn、Zn、Cd等とリチウムとの合金、LiFe、WO、MoO、SiO、CuO等の金属酸化物、グラファイト、カーボン等の炭素質材料、Li(LiN)等の窒化リチウム、もしくは金属リチウム、又はこれらの混合物を用いてもよい。
また、本発明に係る非水電解質電池のセパレータとしては、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等を用いることができ、特に、合成樹脂微多孔膜を好適に用いることができる。中でもポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合した微多孔膜等のポリオレフィン系微多孔膜が、厚さ、膜強度、膜抵抗等の面で好適に用いられる。
また、電池の形状は特に限定されるものではなく、本発明は、角形、楕円形、コイン形、ボタン形、シート形電池等の様々な形状の非水電解質二次電池に適用可能である。本願発明は、電池が高温環境下に放置された際の電池の膨れを抑制するものであるので、電池ケースの機械的強度が弱い場合、特に、アルミケースや、アルミラミネートケースを用いた場合により大きな効果が得られる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではなく、その主旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(比較例1)
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=4:6(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/l溶解することにより、非水電解質を調整した。
(比較例2)
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=4:6(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/l溶解し、その総電解液量に対して1,3−プロペンスルトンを2.0wt%添加した。
(実施例1〜19)
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=4:6(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/l溶解し、その総電解液量に対して1,3−プロペンスルトン及びトリエチルアミンを表1に示す通りの重量比で添加した。
(実施例20〜24)
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=4:6(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/l溶解し、その総電解液量に対して1,3−プロペンスルトン及びトリブチルアミンを表2に示す通りの重量比で添加した。
上記比較例1〜3及び実施例1〜24に示したそれぞれの非水電解質を用いて、次の構成及び手順で非水電解質電池を作製した。
正極板は、結着剤であるポリフッ化ビニリデン8重量%と導電剤であるアセチレンブラック5重量%とリチウムコバルト複合酸化物である正極活物質87重量%とを混合してなる正極合材に、N−メチルピロリドンを加えてペースト状に調製した後、これを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体両面に塗布、乾燥することによって作製した。
負極板は、グラファイト(黒鉛)95重量%とカルボキシメチルセルロース2重量%およびスチレンブタジエンゴム3重量%を適度な水分を加えてペースト状に調製した後、これを厚さ14μmの銅箔集電体両面に塗布、乾燥することによって作製した。
セパレータには、ポリエチレン微多孔膜を用い、非水電解質を適用し、密閉後、初期充放電工程を経て、実施例に係る角形の非水電解質電池を作製した。
実施例に係る非水電解質電池の概略断面図を図1に示す。非水電解質電池1は、アルミ集電体に正極合材を塗布してなる正極3と、銅集電体に負極合材を塗布してなる負極4とがセパレータ5を介して巻回された扁平巻状電極群2と、非水電解液とを電池ケース6に収納してなる、幅34mm×高さ49mm×厚さ5.2mmのものである。電池ケース6には、安全弁8を設けた電池蓋7がレーザー溶接によって取り付けられ、負極端子9は負極リード11を介して負極4と接続され、正極3は正極リード10を介して電池蓋と接続されている。
(初期放電容量及び初期内部抵抗)
前記初期充放電工程は、25℃にて、充電電流600mA、充電電圧4.20V、充電時間2.5時間の定電流定電圧充電を行った後、放電電流600mA、終止電圧2.75Vの定電流放電を条件で放電を行った。このときの放電容量を「初期放電容量(mAh)」とし、表1、2に併記した。また、1kHzのインピーダンスメーターを用いて、該放電後の電池の内部抵抗を測定した。ここで、1,3−プロペンスルトンを添加しトリエチルアミンを添加していない比較例2の非水電解質を適用した比較電池の内部抵抗の値に対する、それぞれの電池の内部抵抗の値の百分率を求め、「初期内部抵抗(%)」として表1、2に併記した。
(高温サイクル試験)
完成した各電池に対して、高温サイクル試験を行った。高温サイクル試験は、60℃にて、充電電流600mA、充電電圧4.20V、充電時間2.5時間の定電流定電圧充電と、放電電流600mA、終止電圧2.75Vの定電流放電とからなる充放電を50サイクル繰り返した。ここで、50サイクル目の放電容量を「60℃充放電サイクル後放電容量(mAh)」として表1に併記した。各電池を25℃まで冷却し、上記と同様に、1kHzのインピーダンスメーターを用いて、放電後の電池の内部抵抗を測定した。ここでも、比較例2に係る電池の初期内部抵抗の値に対する百分率を「60℃充放電サイクル後内部抵抗(%)」として表1、2に併記した。
表1より、1,3−プロペンスルトンを単独で添加した比較例2の電池は、1,3−プロペンスルトンを添加していない比較例1の電池にくらべて、初期においては放電容量が小さく内部抵抗も上昇しているが、高温サイクル後には高い放電容量を維持しており、内部抵抗の上昇率も小さいことがわかる。
次に、1,3−プロペンスルトンに加えてトリエチルアミンを添加した実施例1〜20の電解液を用いた本発明の非水電解質電池は、いずれも、高温サイクル後において、内部抵抗の上昇率が小さく、放電容量の低下が抑えられており、電池を高温で使用することによる電池の性能低下を抑制できるという不飽和スルトンの効果が依然として奏されていることがわかる。
さらに、実に驚くべきことに、該実施例1〜20に係る電池は、いずれも、初期内部抵抗の値が、比較例2に比べて小さいものとなっていることから、1,3−プロペンスルトンにトリエチルアミンを併用することにより、1,3−プロペンスルトンを用いたことによる初期内部抵抗の増加が抑制されていることがわかる。
また、表2より、3級アミンとして、トリエチルアミンに代えてトリブチルアミンを用いた場合でも、同様の効果が奏されることがわかる。
なお、上記実施例では、溶媒としてエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを用いたが、エチルメチルカーボネートの代わりに、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ―ブチロラクトンを用いた場合や、溶質であるLiPFの濃度を変化させた場合や、種類を変化させた場合についても、同様の結果が得られる。したがって、非水電解質の溶媒、溶質は、実施例に示した組み合わせに限定されるべきものではない。
また、実施例では1,3−プロペンスルトンに加えてトリエチルアミン又はトリブチルアミンを添加した場合について記述したが、トリエチルアミンの代わりに、化2で示されるアミン誘導体を用いた場合にも同様の効果が得られる。
さらに、正極活物質、負極活物質についても、実施例で示した組み合わせに限定されることなく、上記の実施の形態の中で述べた様々に活物質を使用することができる。
実施例に係る非水電解質電池の縦断面図である。
符号の説明
1 非水電解質電池
2 電極群
3 正極
4 負極
5 セパレータ
6 電池ケース
7 蓋
8 安全弁
9 負極端子
10 正極リード
11 負極リード

Claims (2)

  1. 化1で示される不飽和スルトン、化2又は化3で示されるアミン類、及び、含フッ素リチウム塩を含有する非水電解質。
  2. 請求項記載の非水電解質を用いた非水電解質電池。
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