以下、本発明の実施の形態による建設機械として、クローラ式の下部走行体を備えた超小型な油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図12に従って詳細に説明する。
図1ないし図3において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械の代表例をなすキャブ仕様の油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置5と、前記下部走行体2の前側に設けられた地均し作業等を行う排土板6とにより大略構成されている。
また、下部走行体2には、図4に示す如く、アクチュエータをなす左,右の走行モータ2A,2Bが設けられ、これらの走行モータ2A,2Bは左,右の履帯をそれぞれ周回駆動するものである。また、旋回装置3には、下部走行体2上で上部旋回体4を旋回させるアクチュエータとしての旋回モータ3Aが設けられている。
一方、作業装置5は、図1等に示すように、後述する旋回フレーム7の前部に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト5Aと、該スイングポスト5Aに俯仰動可能に取付けられたブーム5Bと、該ブーム5Bの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム5Cと、該アーム5Cの先端部に回動可能に取付けられたバケット5Dと、これらのブーム5B、アーム5C、バケット5Dを俯仰動(または回動)させるアクチュエータとしてのブームシリンダ5E、アームシリンダ5F、バケットシリンダ5Gとによって大略構成されている。
さらに、上部旋回体3は、油圧ショベル1の車格に対応して非常にコンパクトに形成されている。そして、上部旋回体3は、図1、図3、図4等に示す如く、支持構造体をなす旋回フレーム7と、該旋回フレーム7の後側に設けられ、スタータ8Aによって始動されるエンジン8と、該エンジン8によって駆動される油圧源となる油圧ポンプ9、パイロット油圧ポンプ10と、前記エンジン8のスタータ8A等に給電するバッテリ等の電源11と、該電源11とアース12との間に接続され、エンジン8を制御するコントローラ13と、旋回フレーム7の後側等に設けられ、エンジン8等の機器を覆う外装カバー14と、旋回フレーム7の後部に取付けられたカウンタウエイト15と、後述の運転席16、キャブ25等とにより大略構成されている。ここで、コントローラ13は、例えば車両のキースイッチ23等が閉成されたときに、電源11からスタータ8Aに給電を行い、これによってエンジン8を始動させる。
16はカウンタウエイト15の前側に位置して旋回フレーム7の上方に設けられた運転席である(図1参照)。この運転席16は、オペレータが着座するもので、後述のキャブ25によって覆われている。また、運転席16の前側には、下部走行体2を走行させるための走行レバー・ペダル17,18(図3、図4参照)が設けられ、左,右両側には、作業装置5等を操作する作業レバー19,21が設けられている。
次に、油圧ショベル1による機械作業、例えば下部走行体2による走行作業、旋回装置3による旋回作業、作業装置5による掘削作業等を行うときにオペレータに操作される各種のレバー等について説明する。
17は運転席16の前側に位置して旋回フレーム7上に設けられた左走行レバー・ペダルである。この左走行レバー・ペダル17は、後述の左走行制御弁24Aに連結され、下部走行体2の左走行モータ2Aを操作するものである。
一方、18は運転席16の前側に位置して旋回フレーム7上に設けられた右走行レバー・ペダルである。この右走行レバー・ペダル18は、右走行制御弁24Bに連結され、下部走行体2の右走行モータ2Bを操作するものである。
19は運転席16の左側に設けられた左作業レバー(図3、図4参照)、20は該左作業レバー19を前,後方向と左,右方向とを合わせた任意の方向に傾転可能に支持する減圧弁型の左油圧パイロット弁をそれぞれ示している。これらの左作業レバー19と左油圧パイロット弁20は、例えば上部旋回体4を旋回させたり、作業装置5のアーム5Cを回動させるものである。
ここで、左油圧パイロット弁20は、4個の減圧弁20A,20B,20C,20Dによって構成され、これらの減圧弁20A〜20Dの入力側は、後述の制御弁停止弁48を介してパイロット油圧ポンプ10に接続されている。また、各減圧弁20A〜20Dの出力側は、後述する旋回制御弁24Cとアーム制御弁24Dの油圧パイロット部に接続されている。
21は運転席16の右側に設けられた右作業レバー、22は該右作業レバー21を前,後方向と左,右方向とを合わせた任意の方向に傾転可能に支持する減圧弁型の右油圧パイロット弁をそれぞれ示している。これらの右作業レバー21と右油圧パイロット弁22は、例えば作業装置5のブーム5Bを俯仰動させたり、バケット5Dを回動させるものである。
ここで、右油圧パイロット弁22は、4個の減圧弁22A,22B,22C,22Dによって構成され、これらの減圧弁22A〜22Dの入力側は、制御弁停止弁48を介してパイロット油圧ポンプ10に接続されている。また、各減圧弁22A〜22Dの出力側は、後述するブーム制御弁24Eとバケット制御弁24Fの油圧パイロット部に接続されている。
一方、23は運転席16の近傍に位置して設けられたキースイッチを示し、このキースイッチ23は、油圧ショベル1の電源投入、エンジン8の始動等を行うもので、コントローラ13等に接続されている。
さらに、24は旋回フレーム7上に設けられた制御弁装置を示している。この制御弁装置24は、油圧ポンプ9と機械作業を行う各走行モータ2A,2B、旋回モータ3A、各シリンダ5E,5F,5G等との間に設けられ、これらの走行モータ2A,2B、旋回モータ3A、各シリンダ5E,5F,5G等を制御するものである。
また、制御弁装置24は、下部走行体2の左走行モータ2Aに圧油を給排することによりこれを制御する左走行制御弁24Aと、下部走行体2の右走行モータ2Bを制御する右走行制御弁24Bと、旋回装置3の旋回モータ3Aに圧油を給排することによりこれを制御する旋回制御弁24Cと、作業装置5のアームシリンダ5Fを制御するアーム制御弁24Dと、ブームシリンダ5Eを制御するブーム制御弁24Eと、バケットシリンダ5Gを制御するバケット制御弁24Fとを含んで構成されている。
そして、左走行制御弁24Aは、左走行レバー・ペダル17により操作され、右走行制御弁24Bは、右走行レバー・ペダル18により操作される。また、旋回制御弁24Cとアーム制御弁24Dは、左作業レバー19によって操作される。また、ブーム制御弁24Eとバケット制御弁24Fは、右作業レバー21によって操作される。
次に、旋回フレーム7上に設けられた本実施の形態によるキャブ25の構成について説明する。
25は旋回フレーム7の上側に搭載された油圧ショベル1のキャブを示している。このキャブ25は、運転席16の周囲と上方を覆うもので、ボックス状に形成されている。また、キャブ25は、例えば前側が旋回フレーム7上のフロアに防振マウント(いずれも図示せず)を介して取付けられ、後側がカウンタウエイト15の上部に防振マウントを介して取付けられている。そして、キャブ25は、後述のキャブボックス26、乗降口33、窓34,35,36,39、ドア37、ヒンジ部材40、ドアストッパ43、ドアスイッチ47、制御弁停止弁48等により大略構成されている。
26はキャブ25の外形を形成するキャブボックスで、該キャブボックス26は、運転席16を取囲む隔壁として形成されている。そして、キャブボックス26は、図8に示す如く、上,下方向に延びる後述の左前ピラー27、右前ピラー28、左後ピラー29、右後ピラー30および前,後方向に延びる左ルーフピラー31、右ルーフピラー32を有し、これらのピラー27〜32により前面部26A、後面部26B、左側面部26C、右側面部26D、天面部26Eが設けられている。
次に、キャブボックス26を構成する各ピラー27〜32について詳しく述べる。まず、左前ピラー27は、キャブボックス26の左前部に配設され、前面部26Aと左側面部26Cとの間の稜線を形成している。また、右前ピラー28は、キャブボックス26の右前部に位置して前面部26Aと右側面部26Dとの間の稜線を形成している。一方、左後ピラー29は、左側面部26Cの後側に設けられ、右後ピラー30は、右側面部26Dの後側に設けられている。そして、左後ピラー29の位置には、後述の乗降口33を開閉するドア37が水平方向に回動可能に取付けられている。
また、左ルーフピラー31は、キャブボックス26の左上側を前,後方向に延び、キャブボックス26の左側面部26Cと天面部26Eとの間の稜線を形成している。一方、右ルーフピラー32は、キャブボックス26の右上側を前,後方向に延び、キャブボックス26の右側面部26Dと天面部26Eとの間の稜線を形成している。
ここで、左ルーフピラー31は、乗降口33の上部に位置し、その内側面31Aには、図10、図11に示す如く、後述のドアスイッチ47を取付けるためのスイッチブラケット31Bが固着されている。さらに、各ルーフピラー31,32の後側は、屈曲して凸湾曲状に形成され、後面部26Bの上側部分を形成している。
また、キャブボックス26の左側面部26Cには、図3、図8に示すように、左前ピラー27と左後ピラー29との間に位置して乗降口33が設けられている。この乗降口33は、オペレータがキャブ25に乗り降りするときに通る開口であり、後述のドア37によって開閉される。
34はキャブボックス26の前面部26Aに設けられた前窓で、該前窓34は、例えば開いて天面部26E側に格納することができる。また、35は後面部26Bに設けられた後窓で、該後窓35は、後側に突出した湾曲面を形成している。
さらに、36はキャブボックス26の右側面部26Dに設けられた右窓である。この右窓36は、例えば前,後方向に移動可能な2枚の窓ガラス36A,36Bを重ねるように配置して形成されている。これにより、右窓36は、各窓ガラス36A,36Bを前,後方向にスライドさせることによって開閉することができ、各窓ガラス36A,36Bを開いたときには、後述するドア37のドア窓39と共にキャブ25内を換気することができる。
37はキャブ25を構成するドアを示している。このドア37は、キャブボックス26の乗降口33を開閉するもので、左後ピラー29に後述のヒンジ部材40を介して前,後方向に回動可能に取付けられている。また、ドア37は、閉じることによってキャブボックス26の左側面部26Cの多くの部分を形成している。そして、ドア37は、キャブボックス26の乗降口33を閉じる閉ドア位置(図7参照)と、乗降口33を開放する開ドア位置(図8参照)との間で開閉される。
ここで、ドア37の最大開度について説明する、ドア37は、最大限に開く角度が後述のドアストッパ43によって規制されている。このときのドア37の角度は、例えば約110度に設定されている。この110度という開き角度は、ドアの大きさ、構造、車体の種類等によって異なるもので、オペレータがキャブ25に出入りできるスペースが得られる開き角度であればこれに限るものではない。また、本実施の形態において、ドア37の最大開度を約110度とした理由は、約110度を越えてドア37を後側に回動した場合、このドア37がカウンタウエイト15よりも後方に突出してしまうためである。そして、ドア37は、ドアパネル38とドア窓39とにより大略構成されている。
まず、ドアパネル38は、簡単に歪んだりしないように、例えばプレス成型されたパネル材を重ねて溶接手段等を用いて固着することにより製造され、その形状は乗降口33に嵌まるようになっている。また、ドアパネル38の前側には、後述するロック機構41が設けられている。一方、ドアパネル38の後側上部には、作業停止装置42のドアストッパ43とガスばね46を取付けるための取付ブラケット38Aが設けられている。
一方、ドア窓39は、前述した右窓36とほぼ同様に形成されている。即ち、ドア窓39は、例えば前,後方向に移動可能な2枚の窓ガラス39A,39Bを重ねるように配置して形成されている。これにより、ドア窓39は、右窓36と一緒に開くことにより、ドア37を閉じた状態でも、空気を流通させることができ、キャブ25内を換気することができる。
40はキャブボックス26とドア37との間に設けられたヒンジ部材を示している。このヒンジ部材40は、ドアパネル38の後側(基端側)に上,下方向に間隔をもって2個設けられている。また、各ヒンジ部材40は、図9に示す如く、キャブボックス26側の左後ピラー29に固定される一方のヒンジ片としてのキャブ側ヒンジ片40Aと、ドア37側のドアパネル38に固定される他方のヒンジ片としてのドア側ヒンジ片40Bと、キャブ側ヒンジ片40Aとドア側ヒンジ片40Bとに亘って挿嵌することにより、各ヒンジ片40A,40B間を回動可能に連結する連結ピン40Cとにより大略構成されている。
ここで、連結ピン40Cは、各ヒンジ片40A,40B間の回動中心となるもので、着脱可能に挿嵌されている。また、連結ピン40Cの先端には、係合溝40C1が形成され、該係合溝40C1には、抜止め用の止め輪(スナップリング)40Dが着脱可能に係合される。
そして、ヒンジ部材40は、キャブボックス26に対しドア37を開閉可能に支持している。しかも、このヒンジ部材40は、キャブ側ヒンジ片40Aとドア側ヒンジ片40Bとが、連結ピン40Cによって連結、分離可能となっている。従って、キャブ25内でメンテナンス作業等を行う場合には、連結ピン40Cを各ヒンジ片40A,40B間から抜取ることにより、キャブ側ヒンジ片40Aとドア側ヒンジ片40Bとを分離することができる。これにより、キャブボックス26からドア37を取外すことができ、広い作業スペースでメンテナンス作業等を容易に、かつ安全に行うことができる。
また、ドア37をキャブボックス26から取外すときには、キャブ25の製造工程において、ボルト等を用いて位置合わせしつつ取付けた各ヒンジ片40A,40Bは取外すことなく、連結ピン40Cだけを抜き差ししている。従って、連結ピン40Cを各ヒンジ片40A,40Bに挿着したときには、キャブボックス26の所定位置にドア37を正確に取付けることができ、このときの位置合わせ作業等を省略することができる。
41はドアパネル38の前側(先端側)に設けられたロック機構である。このロック機構41は、ドア37をドアパネル38に対して閉扉状態で固定するものである。一方、ロック機構41は、例えば把手を回動操作することにより、ロックを解除してドア37の開扉を許可することができる。
次に、ドア37が所定の開度まで開いたときに油圧ショベル1の機械作業を停止する作業停止装置42について説明する。
図10ないし図12において、42はキャブ25等に設けられた作業停止装置を示している。この作業停止装置42は、ドア37を所定の開度よりも閉じた状態、即ち、ドア37を閉じた状態や僅かに開いた状態では、走行レバー・ペダル17,18、作業レバー19,21等を操作して行う機械作業を許可し、前記ドア37を所定の開度まで開いたときに、これらの機械作業を停止(禁止)するものである。そして、作業停止装置42は、後述のドアストッパ43、ドアスイッチ47、制御弁停止弁48等により構成されている。
43は作業停止装置42の一部を構成するドアストッパである(図8参照)。このドアストッパ43は、ドアスイッチ47を動作させる操作レバーとしても利用されている。また、ドアストッパ43は、図8、図10に示すように、ドア37の最大開度を規制するものであり、本実施の形態によるドアストッパ43の最大開度は、図3に示す如く、例えば上部旋回体4の後部(カウンタウエイト15、キャブ25等の後端部)までに収まる位置に規制されている。このときにキャブボックス26の左側面部26Cに対するドア37の開き角度は、前述したように約110度となっている。
そして、ドアストッパ43は、断面コ字状の樋構造体として形成され、その基端側がドアパネル38の取付ブラケット38Aに取付具44Aを介して水平方向に回動可能に取付けられたドア37側の外枠44と、該外枠44内に長さ方向にスライド可能(伸縮可能)に配置され、その先端側がキャブボックス26を構成する左ルーフピラー31に水平方向に回動可能に取付けられたキャブ25側の内枠45とにより大略構成されている。
また、外枠44の底面には、2個のストッパ部材44B,44C(図11、図12参照)が取付けられ、内枠45の底面には、長さ方向に延びて前記各ストッパ部材44B,44Cにスライド可能に係合する長溝45Aが形成されている。
さらに、内枠45の先端部には、上側に延びてスイッチ操作部45Bが設けられている。このスイッチ操作部45Bは、ドア37がキャブボックス26の左側面部26Cに対して所定の開度まで開いたときに、後述するドアスイッチ47のスイッチ部47Aを押動して開成させるように、位置、形状、角度等が設定されている。
ここで、ドア37の所定の開度とは、ドア37が上部旋回体4の旋回半径からはみ出す(突出する)まで開いた角度であり、本実施の形態による油圧ショベル1では、例えばドア37がキャブボックス26の左側面部26Cに対して約45度まで開いたときの角度となる。
従って、ドア37を開いたときには、ドアストッパ43の外枠44から内枠45が伸び、該内枠45の長溝45Aの端部が外枠44のストッパ部材44Bが当接した位置で伸びを停止させる。これにより、ドア37の開き角度は、上部旋回体4の後部までに収まる位置に規定することができる。
46はドアストッパ43内に設けられたガスばねである。このガスばね46は、外枠44、内枠45内に収められ、チューブ46Aの基端部が外枠44と一緒にドアパネル38の取付ブラケット38Aに回動可能にボルト止めされている。一方、ロッド46Bの先端部は、内枠45と一緒にキャブボックス26の左ルーフピラー31に回動可能にボルト止めされている。これにより、ガスばね46は、ドア37を開くときに軽い力で開くことができるように補助し、また、ドア37が一定の速度で開くようにしている。
47は左ルーフピラー31のスイッチブラケット31Bに取付けられたドアスイッチを示している。このドアスイッチ47は、図10、図11に示す如く、ドア37が所定の開度まで開いたときに、ドアストッパ43(スイッチ操作部45B)の動きにより機械作業を停止するためのドア開信号を出力するものである。また、ドアスイッチ47は、図6に示す如く、例えば常閉(ノーマル・クローズ)型の2位置切換スイッチ等によって構成されている。そして、ドアスイッチ47は、後述する制御弁停止弁48の電磁パイロット部48Bとアース12との間に接続されている。
これにより、図5、図11に示す如く、ドア37を開いてドアストッパ43が回動し、その内枠45のスイッチ操作部45Bがドアスイッチ47のスイッチ部47Aを押動したときには、ドアスイッチ47が開成した状態となる。これにより、ドアスイッチ47は、制御弁停止弁48の電磁パイロット部48Bにドア開信号を出力し、該制御弁停止弁48の電磁パイロット部48Bをアース12から遮断することにより、制御弁停止弁48を遮断位置(a)に保持する。
一方、ドアスイッチ47は、図6、図10に示す如く、ドア37を閉じた状態(またはドア37を僅かに開いた状態)では、スイッチ操作部45Bがスイッチ部47Aから離間することにより閉成し、これによって制御弁停止弁48の電磁パイロット部48Bとアース12とを接続する。この結果、ドアスイッチ47から電磁パイロット部48Bにドア閉信号が入力されるので、制御弁停止弁48は接続位置(b)に切換えられる。
48はドアスイッチ47によって開閉される制御弁停止手段としての制御弁停止弁を示している。この制御弁停止弁48は、図5に示す如く、ドアスイッチ47が開成してドア開信号が出力されることによって遮断位置(a)となり、これによって油圧パイロット弁20,22をパイロット油圧ポンプ10から切り離し、制御弁装置24の動作を停止する。また、制御弁停止弁48は、図6に示す如く、ドアスイッチ47が閉成してドア閉信号が出力されることによって接続位置(b)となり、これにより、油圧パイロット弁20,22をパイロット油圧ポンプ10と接続し、制御弁装置24を動作状態に保持するものである。
ここで、制御弁停止弁48は、例えば電磁パイロット式の3ポート2位置切換弁等によって構成され、パイロット油圧ポンプ10と油圧パイロット弁20,22との間に設けられている。また、制御弁停止弁48は、非通電時に遮断位置(a)を保持するための戻しばね48Aと、車両の電源11から通電されることによって制御弁停止弁48を接続位置(b)に切換える電磁パイロット部48Bとを有している。
そして、ドア37を所定の開度まで大きく開いたときには、ドアスイッチ47が開成することにより、電磁パイロット部48Bがアース12から遮断されて非通電状態となる。この結果、制御弁停止弁48は、戻しばね48Aによって遮断位置(a)に保持され、油圧パイロット弁20,22には、パイロット油圧ポンプ10からのパイロット圧が供給されなくなる。この状態では、オペレータが作業レバー19,21を操作したとしても、油圧パイロット弁20,22から旋回制御弁24C、アーム制御弁24D、ブーム制御弁24E、バケット制御弁24F等にパイロット圧が出力されないので、下部走行体2、作業装置5は強制的に停止された状態となる。
一方、ドア37を閉じたときには、ドアスイッチ47が閉成することにより、電源11から電磁パイロット部48Bに通電が行われ、制御弁停止弁48が接続位置(b)に切換えられる。この結果、油圧パイロット弁20,22は、制御弁停止弁48によってパイロット油圧ポンプ10と接続されるので、オペレータの操作に応じて下部走行体2や作業装置5が作動する構成となっている。
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、油圧ショベル1の運転を開始するときには、オペレータはドア37のロック機構41のロックを解除し、該ドア37を開いて乗降口33からキャブ25内に乗り込む。このときには、ドア37を大きく開いたことにより、作業停止装置42の制御弁停止弁48が遮断位置(a)に切換わるから、各種のレバー17,18,19,21等の操作が無効になり制御弁装置24の動作が停止する。これにより、ドア37を開いた状態での走行、作業を禁止することができる。また、キャブ25に乗降するときに、誤ってレバー17,18,19,21等に触れることによる誤作動を防止することができる。
そして、オペレータは、ドア37を閉めて運転席16に着座する。このときにはドア37を閉めたことにより、作業停止装置42の制御弁停止弁48が接続位置(b)に切換わるから、各種のレバー17,18,19,21等の操作が有効になる。これにより、オペレータは、キースイッチ23を操作してエンジン8を始動し、油圧ポンプ9から圧油を吐出する。この状態で、オペレータが走行レバー・ペダル17,18を傾転操作することにより、走行制御弁24A,24B介して下部走行体2の走行モータ2A,2Bを作動し、油圧ショベル1を作業現場等に向けて走行させることができる。
そして、作業現場等では、左,右の作業レバー19,21を傾転操作することにより、その操作状態に応じたパイロット圧が油圧パイロット弁20,22から旋回制御弁24C、アーム制御弁24D、ブーム制御弁24E、バケット制御弁24F等の油圧パイロット部に出力される。これにより、上部旋回体4を旋回させたり、作業装置5のブーム5B、アーム5C、バケット5Dを回動(俯仰動)させることができ、土砂等の掘削作業を行うことができる。
一方、上述した走行時、作業時には、作業停止装置42により制御弁装置24を停止することによってドア37を大きく開いたままでの走行、作業を防止することができる。詳しくは、ドア37を開いたときには、作業停止装置42の制御弁停止弁48がパイロット油圧ポンプ10からの制御圧を遮断し、各種のレバー17,18,19,21等の操作が無効になる。従って、油圧ショベル1を運転するときには、ドア37を閉めておく必要がある。
しかし、キャブ25内の湿度が高くなった場合には、ガラスが曇って視界が悪くなるから、キャブ25内を換気する必要がある。この場合でも、ドア37を開いたままで作業することはできない。そこで、本実施の形態では、キャブ25の右窓36の各窓ガラス36A,36Bおよびドア窓39の各窓ガラス39A,39Bを前,後方向にスライドさせて開くことにより、ドア37を開くことなく、キャブ25内を換気することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、キャブ25には、ドア37が所定の開度まで開いたときに下部走行体2、作業装置5による機械作業を停止するためのドア開信号を出力するドアスイッチ47を設ける構成としている。従って、キャブ25のドア37を所定の開度よりも閉じた状態、即ち、ドア37を閉じた状態や僅かに開いた状態では、ドア37は、上部旋回体4の旋回半径からはみ出さず周囲の障害物と干渉することもない。このときには、ドアスイッチ47からのドア閉信号によって制御弁停止弁48が下部走行体2、作業装置5等による機械作業を許可しているから、運転席16に着座したオペレータは、キャブ25内の各種レバー17,18,19,21等を操作することにより、下部走行体2を走行させたり、作業装置5を俯仰動させて作業することができる。
一方、キャブ25のドア37を所定の開度まで開いた状態では、ドア37が旋回半径からはみ出して周囲の障害物と干渉する虞がある。このときには、ドアスイッチ47から出力されるドア開信号によって制御弁停止弁48を停止させることにより、下部走行体2、作業装置5等による機械作業を停止することができる。
この結果、超小型な油圧ショベル1のように、開いたドア37が旋回半径からはみ出してしまう場合でも、作業停止装置42のドアスイッチ47により機械作業を停止することで、ドア37の損傷等を未然に防ぐことができ、安全性、信頼性等を向上することができる。
また、キャブ25のドア37は、後部に設けたヒンジ部材40を支点として、前側を後方向に開く構成としている。この場合、超小型な油圧ショベル1では、開いたドア37が上部旋回体4の後部から突出する場合がある。しかし、キャブ25にはドアストッパ43を設けることにより、このドアストッパ43によって上部旋回体4の後部までに収まる位置(開度が約110度)でドア37の最大開度を規制することができる。この結果、キャブ25のドア37を開いたときに、このドア37が後方の障害物に衝突するのを防止できるから、ドア37の損傷を防止できる。
しかも、ドアスイッチ47は、このドアストッパ43がドア37と共に回動する動作を利用し、このドアストッパ43により開成、閉成する構成としている。従って、ドアストッパ43を利用してドアスイッチ47を作動させることができ、構成を簡略化することができる。
一方、キャブボックス26にドア37を連結しているヒンジ部材40は、キャブ側ヒンジ片40Aと、ドア側ヒンジ片40Bと、該各ヒンジ片40A,40B間に着脱可能に挿嵌される連結ピン40Cとにより構成している。これにより、連結ピン40Cを各ヒンジ片40A,40B間から抜取ることにより、キャブ側ヒンジ片40Aとドア側ヒンジ片40Bとを分離でき、キャブボックス26からドア37を取外すことができる。従って、キャブ25内のメンテナンス作業等を行う場合には、ドア37を取外すことによって容易に作業を行うことができる。
しかも、キャブボックス26からドア37を取外すときには、例えばボルト等を用いて位置合わせしつつ取付けた各ヒンジ片40A,40Bは取外していない。従って、連結ピン40Cを各ヒンジ片40A,40B間に挿着するだけで、キャブボックス26の所定位置にドア37を正確に取付けることができる。これにより、位置合わせ作業等を省略してキャブ25の組立作業性を高めることができる。
さらに、キャブ25を構成するキャブボックス26の右側面部26Dに設けた右窓36は、その窓ガラス36A,36Bを前,後方向にスライドして開閉することができる。また、左側のドア窓39も、その窓ガラスを前,後方向にスライドして開閉することができる。これにより、左,右の窓ガラス39A,39B,36A,36Bを前,後にスライドして開くことにより、ドア37を閉じた状態でもキャブ25内を換気することができ、作業環境を良好にすることができる。
なお、実施の形態では、キャブボックス26とドア37との間にガスばね46と一緒にドアストッパ43を設け、前記ドア37を開いたときのドアストッパ43の角度変化を利用してドアスイッチ47を作動させる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばキャブボックス26とドア37との間にガスばね46を設け、このガスばね46のピストンの位置をドアスイッチをなすセンサによって検出することにより、制御弁停止弁48にドア開信号を出力する構成としてもよい。
また、ドアストッパは、ドアの最大開度を規制できるものであればよく、例えばチェーン、ワイヤ等により構成してもよい。
一方、実施の形態では、作業レバー19,21によって油圧パイロット弁20,22を操作することにより、この油圧パイロット弁20,22からの油圧パイロット信号によって制御弁装置24を動作させる構成とした場合を例示した。しかし、本発明はこれに限ることなく、例えば作業レバーの操作を電気的に検出し、この電気信号によって制御弁装置を動作させる構成としてもよい。この場合には、ドアスイッチからのドア開信号によって電気式の作業レバーの操作を直接的に停止させることができる。
さらに、実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、クレーン等の旋回式の建設機械にも広く適用することができる。