以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.集積回路装置のレイアウト
図1に本実施形態の集積回路装置のレイアウト例を示す。この集積回路装置は、コモントランシーバマクロセルCTMと、それ以外の回路である外部回路(他の回路)を含む。この外部回路は、例えば1又は複数のマクロセルで実現できる。なおマクロセル(メガセル、マクロブロック)は、論理機能を有する中規模又は大規模な回路の単位である。
コモントランシーバマクロセルCTMは、USB等のシリアルバスを介したデータ転送のためのマクロセルであって、ホスト動作に必要な回路とデバイス動作に必要な回路を含む。例えばマクロセルCTMは、ホスト動作とデバイス動作で共用できる回路と、ホスト動作で使用される回路と、デバイス動作で使用される回路などを含むことができ、主に物理層回路により構成される。
マクロセルCTMは、例えばその配線及び回路セル配置が固定化されるハードマクロになっている。より具体的には、例えば、配線や回路セル配置が手作業のレイアウトにより行われる。なお配線、配置の一部を自動化してもよい。
一方、外部回路は、例えばその配線及び回路セル配置が自動配置配線されるソフトマクロなどを含み、物理層よりも上位層(リンク層、トランザクション層又はアプリケーション層)の回路等により構成できる。ここでソフトマクロでは、例えば、ゲートアレイの自動配置配線ツールにより基本セル間の配線等が自動的に行われる。なお配置、配線の一部を固定化してもよい。
2.集積回路装置の回路構成
図2に本実施形態の集積回路装置により実現されるデータ転送制御装置の回路構成例を示す。なお本実施形態の集積回路装置により実現される装置は図2の構成に限定されない。例えば図2とは異なる構成のデータ転送制御装置を実現してもよい。或いは図2の構成にアプリケーション層デバイスやCPU(広義にはプロセッサ)などの構成を加えて、集積回路装置として1チップ化してもよい。
図2のデータ転送制御装置は、コモントランシーバマクロセルCTM、受信ロジック回路206、送信ロジック回路207、転送コントローラ210、バッファコントローラ220、データバッファ230を含む。なおこれらの回路ブロックの一部を省略したり、これらの回路ブロック間の接続形態を変更したり、これらとは異なる回路ブロックを追加してもよい。例えばバッファコントローラ220やデータバッファ230を省略した構成にしてもよい。或いは、アプリケーション層デバイスが接続されるDMAバスやCPU(処理部)が接続されるCPUバスを介したインターフェースを実現するインターフェース回路を更に設けてもよい。
コモントランシーバマクロセルCTMは、高速ロジック回路2(論理層回路)や、シリアルバスを介してデータを転送するための回路を有するアナログフロントエンド回路8を含む。より具体的には高速ロジック回路2は、パラレル/シリアル変換やシリアル/パラレル変換やサンプリングクロックの生成を行う回路などを含む。またアナログフロントエンド回路8は、差動データ信号(差動対)を構成するDP、DMの信号線(広義には第1、第2の信号線)を用いてデータを送信する回路やデータを受信する回路を含む。
受信ロジック回路206は、シリアルバスを介したデータ受信のための回路である。具体的には、マクロセルCTMの高速ロジック回路2のシリアル/パラレル変換回路においてシリアルデータから変換されたパラレルデータを受け、所定のロジック処理を行う。例えば受信ロジック回路206は、受信データのSYNC、SOP、EOPを検出して削除する処理やビットアンスタッフィング処理などを行うことができる。
送信ロジック回路207は、シリアルバスを介したデータ送信のための回路である。具体的には、所定のロジック処理を施したパラレルデータを、マクロセルCTMの高速ロジック回路2のパラレル/シリアル変換回路に出力する。例えば送信ロジック回路207は、送信データにSYNC、SOP、EOPを付加する処理やビットスタッフィング処理などを行うことができる。
転送コントローラ210は、USBを介したデータ転送を制御するためのコントローラであり、いわゆるSIE(Serial Interface Engine)の機能などを実現するためのものである。例えば転送コントローラ210は、パケットハンドル処理、サスペンド&レジューム制御、或いはトランザクション管理などを行う。この転送コントローラ210は、図示しないリンクコントローラやトランザクションコントローラを含むことができる。またホスト動作時のデータ転送を制御するホストコントローラやデバイス動作時のデータ転送を制御するデバイスコントローラなどを含むことができる。
設定情報レジスタ212は、コモントランシーバマクロセルCTMを、ホスト用のトランシーバマクロセルとして使用するか、デバイス用のトランシーバマクロセルとして使用するかを設定するための情報を記憶するレジスタである。
例えば設定情報レジスタ212にホスト動作の設定が行われると、転送コントローラ210はホストコントローラとして動作する。そしてマクロセルCTMをホスト用のトランシーバマクロセルとして使用してデータ転送を行う。こうすることで、データ転送制御装置やデータ転送制御装置が組み込まれる電子機器をUSBホストとして動作させることができる。一方、設定情報レジスタ212にデバイス動作の設定が行われると、転送コントローラ210はデバイスコントローラとして動作する。そしてマクロセルCTMをデバイス用のトランシーバマクロセルとして使用してデータ転送を行う。こうすることで、データ転送制御装置やデータ転送制御装置が組み込まれる電子機器をUSBデバイスとして動作させることができる。
なお設定情報レジスタ212への情報の設定は、上位層(ファームウェア、CPU)によりソフトウェア的に行ってもよいし、スイッチなどを用いてハードウェア的に行ってもよい。
バッファコントローラ220は、データバッファ230に記憶領域(エンドポイント領域、パイプ領域等)を確保したり、データバッファ230の記憶領域に対するアクセス制御を行う。より具体的にはバッファコントローラ220は、アプリケーション層デバイス側からのアクセスや、CPU側からのアクセスや、USB(転送コントローラ210)側からのアクセスを制御したり、これらのアクセスの調停を行ったり、アクセス・アドレスの生成・管理を行う。
データバッファ230(パケットバッファ)は、USBを介して転送されるデータ(送信データ又は受信データ)を一時的に格納(バッファリング)するためバッファ(FIFO)である。このデータバッファ230はRAMなどのメモリにより構成できる。
3.コモントランシーバマクロセル
次にコモントランシーバマクロセルCTMの詳細な構成例について説明する。図3に、マクロセルCTMが含む高速ロジック回路2の構成例を示す。図3に示すように、高速ロジック回路2は、パラレル/シリアル変換回路3、第1のパラレルインターフェース4、シリアル/パラレル変換回路5、第2のパラレルインターフェース6を含む。またサンプリングクロック生成回路7を含む。なおこれらの回路の一部を省略したり、これらの回路間の接続形態を変更したり、これらとは異なる回路を追加する変形実施も可能である。
パラレル/シリアル変換回路3は、マクロセルCTMの外部回路(送信ロジック回路、転送コントローラ)からのパラレルデータをパラレルインターフェース4を介して受け、シリアルデータに変換する。そして得られたシリアルデータをアナログフロントエンド回路8に出力する。
パラレルインターフェース4は、外部回路(送信ロジック回路、転送コントローラ)とパラレル/シリアル変換回路3とのインターフェースとなる回路である。このパラレルインターフェース4は、信号のバッファ回路などを含む。具体的にはパラレルインターフェース4は、例えば8ビットのパラレルデータや、そのパラレルデータが有効か否かを示すデータバリッド信号や、各種制御信号を受け、パラレル/シリアル変換回路3に出力する。
シリアル/パラレル変換回路5は、シリアルバスを介して受信したシリアルデータをアナログフロントエンド回路8から受け、パラレルデータに変換する。そして得られたパラレルデータをマクロセルCTMの外部回路(受信ロジック回路、転送コントローラ)に出力する。このシリアル/パラレル変換回路5は、高い周波数のクロック(例えば480MHzのクロック)で入力されるシリアルデータを受けて保持し、データセルのデータを、周波数が低いクロック(例えば60MHzのクロック)で出力するエラスティシティバッファを含むことができる。このようなエラスティシティバッファを設ければ、シリアル/パラレル変換回路5に対して、シリアル/パラレル変換機能のみならず、クロック周波数差、位相差等を吸収(補償)するバッファ機能を持たせることが可能になる。
パラレルインターフェース6は、シリアル/パラレル変換回路5と外部回路(受信ロジック回路、転送コントローラ)とのインターフェースとなる回路である。このパラレルインターフェース6は、信号のバッファ回路などを含む。具体的にはパラレルインターフェース6は、例えば32ビットのパラレルデータや、パラレルデータを構成する各8ビットのデータセルが有効か否かを示すデータバリッド信号を外部回路に出力したり、データストローブ信号などの各種制御信号を外部回路から受ける。
サンプリングクロック生成回路7(HSDLL)は、シリアルバスを介して受信したシリアルデータをサンプリングするためのサンプリングクロックを生成する。シリアル/パラレル変換回路5は、このサンプリングクロックに基づいてシリアルデータをサンプリングしてパラレルデータに変換する。このサンプリングクロック生成回路7は、例えば、周波数が同一で位相が互いに異なる第1〜第Nのクロックのエッジの中のいずれのエッジ間にデータのエッジがあるかを検出するエッジ検出回路を含むことができる。またエッジ検出回路でのエッジ検出情報に基づいて、第1〜第Nのクロックの中からいずれかのクロックを選択し、選択したクロックをサンプリングクロックとして出力するクロック選択回路を含むことができる。なおこの場合の第1〜第Nのクロックは、アナログフロントエンド回路8が有するクロック生成回路108(PLL)により生成できる。
図4にアナログフロントエンド回路8の構成例を示す。アナログフロントエンド回路8は、LS(Low Speed)用の送信回路50、FS(Full Speed)用の送信回路52、HS(High Speed)用の送信回路54を含む。またシングルエンドの受信回路56、58、FS用の受信回路90、HS用の受信回路92を含む。また検出回路94、96、98や、プルアップ回路100、プルダウン回路102、104を含む。更にリファレンス回路106やクロック生成回路108(PLL)を含む。なおこれらの回路の一部を省略したり、これらの回路間の接続形態を変更したり、これらとは異なる回路を追加する変形実施も可能である。
送信回路50は、USBのLSモード(広義には第1の転送モード)でUSB(広義にはシリアルバス)を介してデータを送信する回路である。即ちUSBのDP、DMの信号線を駆動してLS(ロースピード)のデータ送信を行う。
送信回路52は、USBのFSモード(広義には第2の転送モード)でUSBを介してデータを送信する回路である。即ちUSBのDP、DMの信号線を駆動してFS(フルスピード)のデータ送信を行う。なお送信回路50、52の出力が接続される第1、第2のノードTN1、TN2とDP、DMの間には、ダンピング抵抗RSP、RSM(固定抵抗)が設けられている。
送信回路54(差動電流ドライバ)は、USBのHSモード(広義には第3の転送モード)でUSBを介してデータを送信する回路である。即ちUSBのDP、DMの信号線を電流駆動してHS(ハイスピード)のデータ送信を行う。
受信回路56(シングルエンドレシーバ)は、USBのDPの信号線(広義には第1の信号線)に接続されるシングルエンドの受信回路である。即ちDPを介して入力されるシングルエンドの信号を増幅して、後段の回路に出力する。受信回路58は、USBのDMの信号線(広義には第2の信号線)に接続されるシングルエンドの受信回路である。即ちDMを介して入力されるシングルエンドの信号を増幅して、後段の回路に出力する。これらの受信回路56、58を用いることで、DP、DMのラインステートのモニターが可能になる。
受信回路90(差動レシーバ)は、FSモードでUSBを介してデータを受信する回路である。この受信回路90が、DP、DMの差動信号を増幅することで、FSモードでの12MHzのシリアルデータを受信できるようになる。
受信回路92(差動レシーバ)は、HSモードでUSBを介してデータを受信する回路である。この受信回路92が、DP、DMの差動信号を増幅することで、HSモードでの480MHzのシリアルデータを受信できるようになる。この受信回路92は、通常のデータ受信時のみならず、チャープの受信時にも使用される。
検出回路94(スケルチ回路、送信エンベロープディテクタ)は、USBの差動データ信号線のデータの有効、無効を検出する回路であり、480MHzのシリアルデータとノイズとを区別するための検出処理を行う。具体的には、差動データ信号の振幅がスケルチのしきい値を上回る場合に、データが有効であることが検出される。この検出回路94により、データが有効であることが検出されると、HS用の受信回路92の受信データの高速ロジック回路2への出力がイネーブルにされる。
検出回路96(切断エンベロープディテクタ)は、HSモードのホスト動作時にUSB(USBケーブル)の切断検出を行う回路である。具体的には差動データ信号の振幅が所定電圧以上になると、切断(ディスコネクション)が検出される。なおFSモード時にはシングルエンドの受信回路56、58を用いて切断を検出できる。またデバイス動作時にはVBUSを監視することで切断を検出できる。
検出回路98は、VBUS検出を行う回路である。具体的には、USBのVBUS(広義にはシリアルバスを構成する電源ライン)の電圧を抵抗R1、R2で分圧した電圧を監視することで、VBUSの電圧を監視する。そしてVBUS電圧が所定電圧を超えた場合に検出信号をアクティブにする。
プルアップ回路100は、DPの信号線(第1の信号線)をプルアップするための回路である。プルダウン回路102は、DPの信号線をプルダウンするための回路である。プルダウン回路104は、DMの信号線(第2の信号線)をプルダウンするための回路である。これらのプルアップ回路100、プルダウン回路102、104の各々は、抵抗とトランジスタ(スイッチ素子)で構成でき、これらのトランジスタは図示しない抵抗制御回路によりそのオン・オフが制御される。なおトランジスタのオン抵抗をプルアップ抵抗やプルダウン抵抗として代用してもよい。またDMの信号線にはダミー回路(ダミートランジスタ)が設けられている。
リファレンス回路106は、各種の基準電圧や基準電流を生成する回路であり、生成された基準電圧や基準電流を用いて、アナログフロントエンド回路8に含まれるアナログ回路(演算増幅器)が動作する。
クロック生成回路108は、USBの480MHzのクロックを生成する回路であり、PLLなどを含む。具体的にはクロック生成回路108は、周波数が同一(480MHz)で位相が異なる例えば5相のクロックを生成する。そして図3のサンプリングクロック生成回路7は、生成された5相のクロックに基づいてサンプリングクロックを生成する。
以上のように本実施形態では、USBホストとして必要な回路と、USBデバイスとして必要な回路が、1つのコモントランシーバマクロセルCTMに内蔵される。従ってCPU上で動作する上位層のファームウェア等は、マクロセルCTMをホスト用のマクロセルとしても使用できるし、デバイス用のマクロセルとしても使用できる。具体的には、マクロセルCTMを、ソフトウェア的にホスト用又はデバイス用に切り替えることもできるし、ハードウェア的にホスト用又はデバイス用に切り替えることもできる。またユーザアプリケーションにより、マクロセルCTMをホスト用として利用したり、デバイス用として利用することも可能になる。
例えば従来のUTMI準拠のトランシーバマクロセルは、デバイス用にしか使用できず、ホスト用には使用できなかった。一方、USBホストのデータ転送制御装置に組み込まれるトランシーバマクロセルは、ホスト用にしか使用できず、デバイス用には使用できなかった。
またホスト及びデバイスの両機能を実現できる比較例として図5のような構成のデータ転送制御装置も考えられる。図5では、ホスト用のトランシーバマクロセルTM1とデバイス用のトランシーバマクロセルTM2が設けられている。そして図2では、マクロセルCTMは1つのポートしか持たないのに対して、図5の比較例では、ホスト用のマクロセルTM1はダウンストリームポートを持ち、デバイス用のマクロセルTM2はアップストリームポートを持つ。
図5の比較例では、ホスト用のアナログフロントエンド回路902とデバイス用のアナログフロントエンド回路904の両方が組み込まれるため、無駄が多く、全体としての回路規模が大きくなってしまう。また、ホスト、デバイスで共用される回路が、レイアウト方法の違いにより、マクロセルTM1とTM2で同等の特性を得ることができないという問題がある。
これに対して本実施形態のマクロセルCTMは、ホストとしてもデバイスとしても使用でき、必要最小構成のアナログフロントエンド回路が1つのハードマクロとして構成される。従って、図5の比較例のように2つのマクロセルTM1、TM2を必要とせず、1つのマクロセルCTMでホストとデバイスの両方に対応できるため、アナログフロントエンド回路を大幅に小規模化できる。また上位層においてホストとデバイスの選択が行われるため、マクロセルCTMのアナログ特性の劣化を防止できる。例えば図4のHS用送信回路54を最適な回路特性になるようにレイアウトしておけば、マクロセルCTMがホスト用として使用された場合にも、デバイス用として使用された場合にも、同等の回路特性を維持できる。
また例えば集積回路装置の製品出荷時のテスト(検査)において、マクロセルCTMの全ての回路部品をテストしておけば、マクロセルCTMがホスト用として使用されるか、デバイス用として使用されるかに依存せずに、その性能、品質を保証できるようになり、テスト工程を簡素化できる。
また図3では、パラレルインターフェース4、6の部分で、マクロセルCTMと外部回路を切り分けている。このような切り分けにすれば、ホスト機能、デバイス機能の区別に関係無く共通的に使用できる回路部品をハードマクロ化して、マクロセルCTMとして構成できる。即ち図3において、パラレルインターフェース4よりも後段のパラレル/シリアル変換回路3等の回路部分や、パラレルインターフェース6よりも前段のシリアル/パラレル変換回路5等の回路部分は、ホスト動作時にも、デバイス動作時にも共通的に使用できる回路部分である。一方、パラレルインターフェース4よりも前段の回路部分やパラレルインターフェース6よりも後段の回路部分は、ホスト動作時とデバイス動作時とでその構成や動作が変化する可能性がある回路部分である。従って図3のような切り分けにすれば、マクロセルCTMを必要最小限の回路構成とすることができ、集積回路装置の小規模化を図れる。
また図3のような切り口にすれば、クロック生成回路108で生成された480MHzのHS送信用とHS受信用のクロックを、外部回路に出力せずに、マクロセルCTM内だけで完結できるようになる。即ちマクロセルCTMの上位層の外部回路では、60MHzのクロックだけを使用すれば済むようになる。
また図5の比較例では、図6(A)のように2つのポートが存在するため、回路基板の配線や設計が繁雑化する。また図6(B)に示すようにポートを1つにしようとすると、特性インピーダンスの合わせ込みが難しくなる。
これに対して本実施形態のマクロセルCTMでは、図6(C)に示すように1つのポートを設けるだけで済むため、回路基板におけるUSBレセプタクルへの配線や設計を簡素化でき、特性インピーダンスの合わせ込みを容易化できる。
なお本実施形態では図7(A)に示すように、集積回路装置に複数のコモントランシーバマクロセルを配置するようにしてもよい。具体的には図7(A)では、集積回路装置の側辺部SD1、SD2、SD3、SD4のうちの1つの側辺部SD2に、複数のマクロセルCTM1、CTM2が配置されている。なお集積回路装置の側辺部とは、集積回路装置の各辺の内側(周縁部)の所与の幅の領域である。マクロセルCTM1、CTM2は、その辺が集積回路装置の各辺に完全に一致するように配置しても良いし、集積回路装置の辺から少しだけ離れた位置に配置してもよい。
図7(A)のようにすれば集積回路装置に複数のポートを持たせることが可能になる。例えば図7(A)に示すようにCTM1をホスト用のマクロセルとして使用し、CTM2をデバイス用のマクロセルとして使用すれば、集積回路装置にダウンストリームポートとアップストリームポートの両方を持たせることが可能になる。或いはCTM1、CTM2の両方をホスト用として使用したり、デバイス用として使用することも可能となる。
なおマクロセルCTM1、CTM2をホスト用、デバイス用のどちらに使用するかは、設定情報レジスタ212に設定される情報により上位層(ファームウェア、アプリケーション)が切り替えることができる。例えば図7(A)では、マクロセルCTM1がホスト用に設定され、マクロセルCTM2がデバイス用に設定されているが、設定情報レジスタ212の情報を書き換えることで、CTM1をデバイス用に設定し、CTM2をホスト用に設定することもできる。
また集積回路装置の1つの側辺部のみならず、複数の側辺部にコモントランシーバマクロセルを配置してもよい。即ち集積回路装置の第1〜第4の側辺部SD1〜SD4のうちの少なくとも2つの側辺部に、少なくとも1つのコモントランシーバマクロセルを配置するようにしてもよい。例えば図7(B)では、側辺部SD1にはマクロセルCTM1が配置され、側辺部SD2にはマクロセルCTM2、CTM3が配置され、側辺部SD3にはマクロセルCTM4が配置され、側辺部SD4にはマクロセルCTM5が配置されている。
例えばマクロセルの配置が集積回路装置のコーナー部に限定されていると、最大で4個のポートしか集積回路装置に持たせることができない。これに対して図7(A)(B)では、集積回路装置の側辺部へのマクロセルの配置が可能であるため、5個以上のポートを集積回路装置に持たせることが可能になる。
以上のように本実施形態では、コモントランシーバマクロセルを集積回路装置の側辺部の任意の位置に配置できると共に、コモントランシーバマクロセルをホスト用、デバイス用として自由に切り替えることができる。従って、ユーザの様々な要求に応えることができ、ユーザのアプリケーションの自由度の幅を広げることができる。しかも、本実施形態では各コモントランシーバマクロセルは、ホスト用として使用された場合にも、デバイス用として使用された場合にも、同等のアナログ特性を発揮する。従って集積回路装置に複数のポートを持たせた場合にも、アナログ特性がほぼ揃ったコモントランシーバマクロセルを配置できるため。ポート間の回路特性の違いを最小限に抑えることができる。
本実施形態のアプリケーションとしては以下のようなものが考えられる。例えばカーナビゲーションのシステムに本実施形態の集積回路装置を組み込んだ場合には、集積回路装置のコモントランシーバマクロセルをホスト用に設定することで、カーナビゲーション(ホストストレージ)から携帯型音楽プレーヤ(デバイスストレージ)に音楽データや画像データを移動できる。或いは携帯型音楽プレーヤの音楽データをカーナビゲーションに移動して、カーナビゲーションのアンプで再生することも可能になる。
一方、集積回路装置のコモントランシーバマクロセルをデバイス用に設定することで、カーナビゲーション(デバイスストレージ)からPC(パーソナルコンピュータ)などのホスト(ホストストレージ)に音楽データや画像データを移動できる。或いはインターネットのWEBサイトからPCにダウンロードした地図データを、カーナビゲーションに移動することも可能になる。
なお、図8にコモントランシーバマクロセルCTMのレイアウト例を示す。図8のようにDM、DPのパッドのD2方向(集積回路装置の外側から内側に向かう方向)側にHS用送信回路54(スイッチ素子)が配置される。またHS用送信回路54のD1及びD3方向(D2に直交する方向)側にLS用送信回路50、FS用送信回路52、後述する終端抵抗回路が配置される。更にそのD1方向側にプルアップ回路100、プルダウン回路102、104が配置され、D3方向側に切断の検出回路96、HS用受信回路92、スケルチの検出回路94、リファレンス回路106が配置される。またHS用送信回路54のD2方向側にシングルエンドの受信回路56、58、FS用受信回路90、VBUSの検出回路98などが配置される。更にそのD3方向側にHS用送信回路54の定電流回路が配置され、そのD2方向側にパラレル/シリアル変換回路3、第1のパラレルインターフェース4、シリアル/パラレル変換回路5、第2のパラレルインターフェース6、サンプリングクロック生成回路7が配置される。またサンプリングクロック生成回路7のD3方向側にクロック生成回路108が配置される。
4.LS、FS用送信回路
図9にLS、FS用の送信回路50、52や、その送信制御回路60、62の構成例を示す。LS用の送信回路50は、DP、DMの信号線を駆動(電圧駆動)する第1の送信ドライバ71、72を含む。FS用の送信回路52は、DP、DMの信号線を駆動する第3、第4の送信ドライバ73、74を含む。なおHS用の送信回路54の詳細については後述する。
LS用のDP側送信ドライバ71を構成する第1のP型トランジスタPT1は、送信ドライバ71の出力ノードである第1の出力ノードQN1とAVDD(広義には第1の電源)との間に設けられると共にそのゲートに第1のP側送信制御信号OP1が入力される。また送信ドライバ71を構成する第1のN型トランジスタNT1は、出力ノードQN1とAVSS(広義には第2の電源)との間に設けられると共にそのゲートに第1のN側送信制御信号ON1が入力される。
LS用のDM側送信ドライバ72を構成する第2のP型トランジスタPT2は、送信ドライバ72の出力ノードである第2の出力ノードQN2と電源AVDDとの間に設けられると共にそのゲートに第2のP側送信制御信号OP2が入力される。また送信ドライバ72を構成する第2のN型トランジスタNT2は、出力ノードQN2と電源AVSSとの間に設けられると共にそのゲートに第2のN側送信制御信号ON2が入力される。
FS用のDP側送信ドライバ73を構成する第3のP型トランジスタPT3は、送信ドライバ73の出力ノードである第3の出力ノードQN3と電源AVDDとの間に設けられると共にそのゲートに第3のP側送信制御信号OP3が入力される。また送信ドライバ73を構成する第3のN型トランジスタNT3は、出力ノードQN3と電源AVSSとの間に設けられると共にそのゲートに第3のN側送信制御信号ON3が入力される。
FS用のDM側送信ドライバ74を構成する第4のP型トランジスタPT4は、送信ドライバ74の出力ノードである第4の出力ノードQN4と電源AVDDとの間に設けられると共にそのゲートに第4のP側送信制御信号OP4が入力される。また送信ドライバ74を構成する第4のN型トランジスタNT4は、出力ノードQN4と電源AVSSとの間に設けられると共にそのゲートに第4のN側送信制御信号ON4が入力される。
なお送信ドライバ71、72、73、74は図9の構成に限定されず、その接続関係を変更したり他のトランジスタを追加する構成としてもよい。
LS用の第1の送信制御回路60は、LS用のデータ信号LSDPOUT、LSDMOUTとイネーブル信号LSOUTENBを受け、第1のP側、N側送信制御信号OP1、ON1と第2のP側、N側送信制御信号OP2、ON2を生成して出力する。この送信制御回路60は、信号OP1、ON1を生成する第1の信号生成回路81と信号OP2、ON2を生成する第2の信号生成回路82を含む。
FS用の第2の送信制御回路62は、FS用のデータ信号FSDPOUT、FSDMOUTとイネーブル信号FSOUTENBを受け、第3のP側、N側送信制御信号OP3、ON3と第4のP側、N側送信制御信号OP4、ON4を生成して出力する。この送信制御回路62は、信号OP3、ON3を生成する第3の信号生成回路83と信号OP4、ON4を生成する第4の信号生成回路84を含む。
HS用の送信制御回路64は、HS用のデータ信号HSDPUOT、HSDMOUTとイネーブル信号HSOUTENBを受け、第1〜第3の送信制御信号GC1、GC2、GC3を生成して出力する。
そしてLS用の送信制御回路60は、FS用の送信制御回路62が出力する送信制御信号OP3、ON3、OP4、ON4よりも立ち上がり時間又は立ち下がり時間が長い送信制御信号OP1、ON1、OP2、ON2を出力する。別の言い方をすればスルーレートが低い送信制御信号を出力する。ここで立ち上がり時間は、信号レベルが波高の10パーセントになった時刻から波高の90パーセントになった時刻に至るまでの時間と定義できる。また立ち下がり時間は、信号レベルが波高の90パーセントになった時刻から波高の10パーセントになった時刻に至るまでの時間と定義できる。
また図9に示すように本実施形態の集積回路装置は、送信ドライバ71、73の出力ノードQN1、QN3が接続される第1のノードTN1と、DPの信号線との間に設けられる第1のダンピング抵抗RSP(固定抵抗)を含むことができる。また送信ドライバ72、74の出力ノードQN2、QN4が接続される第2のノードTN2と、DMの信号線との間に設けられる第2のダンピング抵抗RSM(固定抵抗)を含むことができる。
更に図10に示すように、ノードTN1と電源AVSSとの間に設けられる第1の終端抵抗回路30と、ノードTN2と電源AVSSとの間に設けられる第2の終端抵抗回路32を設けてもよい。これらの終端抵抗回路30、32は、HSのデータ転送時にDP、DMの信号線を終端するための回路であり、その終端抵抗値が例えば可変に制御される。
また図10に示すように終端抵抗制御回路40を設けてもよい。この終端抵抗制御回路40は、終端抵抗回路30、32の終端抵抗値を可変に制御(設定)するための回路であり、終端抵抗設定情報レジスタ42を含む。具体的には終端抵抗制御回路40は抵抗制御信号CP(CP1〜CP3)、CM(CM1〜CM3)を終端抵抗回路30、32に出力する。抵抗制御信号CP、CMの電圧レベルは、終端抵抗設定情報レジスタ42の設定情報(設定値)に基づき設定される。この終端抵抗設定情報レジスタ42への設定情報の書き込みは、例えばファームウェア(処理部、CPU)により行うことができる。
図10では、LS、FSモード時には、例えば終端抵抗回路30、32の抵抗を構成するトランジスタをオフ状態にすることで、抵抗RSP、RSMを、LS、FS用のダンピング抵抗として用いる。一方、HSモード時には、LS用、FS用の送信回路50、52をディスエーブル状態に設定することで、抵抗RSPと終端抵抗回路30からなる抵抗と、抵抗RSMと終端抵抗回路32からなる抵抗を、HS用の終端抵抗として用いることが可能になる。従って、LS、FSモード時とHSモード時で抵抗RSP、RSMを共用できるようになるため、回路の小規模化を図れる。
図11に、LS、FS用の送信回路50、52等のレイアウト例を示す。図11において第1の領域AR1にはDP側の回路が配置され、第2の領域AR2にはDM側の回路が配置される。これらの領域AR1、AR2は、図11のD2方向に沿ったラインを対称軸として例えば線対称に配置される。
DP側の領域AR1は第1のP型トランジスタ領域ARP1、第1のN型トランジスタ領域ARN1を含む。また第1の抵抗領域ARR1を含む。そして領域ARP1とARN1は隣接して形成され、ARN1とARR1も隣接して形成される。
一方、DM側の領域AR2は第2のP型トランジスタ領域ARP2、第2のN型トランジスタ領域ARN2を含む。また第2の抵抗領域ARR2を含む。そして領域ARP2とARN2は隣接して形成され、ARN2とARR2も隣接して形成される。
そして本実施形態では図11に示すように、図9、図10のLS用のDP側送信ドライバ71を構成するP型トランジスタPT1とFS用のDP側送信ドライバ73を構成するP型トランジスタPT3が、P型トランジスタ領域ARP1に形成される。またLS用のDP側送信ドライバ71を構成するN型トランジスタNT1とFS用のDP側送信ドライバ73を構成するN型トランジスタNT3が、N型トランジスタ領域ARN1に形成される。
一方、LS用のDM側送信ドライバ72を構成するP型トランジスタPT2とFS用のDM側送信ドライバ74を構成するP型トランジスタPT4が、P型トランジスタ領域ARP2に形成される。またLS用のDM側送信ドライバ72を構成するN型トランジスタNT2とFS用のDM側送信ドライバ74を構成するN型トランジスタNT4が、N型トランジスタ領域ARN2に形成される。
このように本実施形態では、LS用の送信ドライバを構成するP型トランジスタとFS用の送信ドライバを構成するP型トランジスタが同じP型トランジスタ領域にまとめて形成される。またLS用の送信ドライバを構成するN型トランジスタとFS用の送信ドライバを構成するN型トランジスタが同じN型トランジスタ領域にまとめて形成される。
また図11では、図9、図10のダンピング抵抗RSPが、N型トランジスタ領域ARN1に隣接する抵抗領域ARR1に形成される。またダンピング抵抗RSMが、N型トランジスタ領域ARN2に隣接する抵抗領域ARR2に形成される。これらのダンピング抵抗RSP、RSMは例えばN型拡散層(N+拡散層、アクティブ領域)で形成できる。
また図11では、図10のDP側の終端抵抗回路30を構成するN型トランジスタNTRTPが、DP側のN型トランジスタ領域ARN1に形成される。またDM側の終端抵抗回路32を構成するN型トランジスタNTRTMが、DM側のN型トランジスタ領域ARN2に形成される。
図12に領域AR2の詳細なレイアウト例を示す。なお領域AR1のレイアウトも図12と同様である。図12に示すようにP型トランジスタ領域ARP2には、LS用送信ドライバ72のP型トランジスタPT2とFS用送信ドライバ74のP型トランジスタPT4がD2方向に並んで配置されている。またN型トランジスタ領域ARN2には、LS用送信ドライバ72のN型トランジスタNT2とFS用送信ドライバ74のN型トランジスタNT4がD2方向に並んで配置されている。更にこれらのN型トランジスタNT2、NT4と、図10の終端抵抗回路32を構成するN型トランジスタNTRTMがD2方向に並んで配置されている。また抵抗領域ARR2には、N型拡散領域(N+拡散領域)で形成されるダンピング抵抗RSMが形成されている。
DMのパッドからの信号線86は、抵抗領域ARR2のダンピング抵抗RSMの一端に接続される。そしてダンピング抵抗RSMの他端に接続される信号線88は、トランジスタPT2、PT4、NT2、NT4のドレインに接続される。
図9、図10に示すように、USB2.0では非常に高速なHS用の送信回路54が設けられ、この送信回路54はDP、DMの信号線を電流駆動する。従って、LS用の送信回路として、送信回路の出力ノードに大きな容量が付加される構成の回路を採用すると、HSモード時にこの大きな容量の充放電が必要になってしまい、HSの高速データ転送の実現が困難になる。更に送信回路が大規模化したり制御が複雑化するなどの問題も招く。
この点、図9、図10のLS用の送信回路50では、ノードTN1、TN2にはそれほど大きな容量が付加されない。従って、HS用の送信回路54によるHS転送に悪影響が及ぶのを防止できる。またLS用の送信回路50は、FS用の送信回路52と同様の構成により実現できるため、その回路規模を大幅に小さくできる。そして、このように回路規模が小さければ、マクロセルCTM内の空いたスペースにLS用の送信回路50を配置できるため、集積回路装置のレイアウト面積を小規模化できる。特に図11では、領域AR1、AR2においてLS用の送信回路50を構成するトランジスタとFS用の送信回路52を構成するトランジスタとがまとめて形成される。従って、LS用の送信回路50を設けたことによる回路面積の増加を最小限に抑えることが可能になる。
なお図9〜図12では集積回路装置にダンピング抵抗RSP、RSMを内蔵させているが、これを内蔵しない構成とする変形実施も可能である。この場合にはダンピング抵抗RSP、RSMを外付けパーツで実現すればよい。
また図10〜図12では、集積回路装置に終端抵抗回路30、32や終端抵抗制御回路40を設けているが、これを設けない構成とすることもできる。この場合には、HSモード時にFS用の送信回路52がDP、DMの信号線を「0」でドライブし、ダンピング抵抗RSP、RSMを終端抵抗として機能させればよい。
また図11、図12では、P型トランジスタ領域ARP1とN型トランジスタ領域ARN1が隣接し、P型トランジスタ領域ARP2とN型トランジスタ領域ARN2が隣接しているが、これらを隣接させない変形実施も可能である。例えばP型トランジスタ領域ARP1とN型トランジスタ領域ARN1の間に抵抗領域ARR1を形成したり、P型トランジスタ領域ARP2とN型トランジスタ領域ARN2の間に抵抗領域ARR2を形成する変形実施も可能である。
図13(A)に、送信制御回路60、62の含む信号生成回路81、82、83、84の詳細な構成例を示す。また図13(B)に、図13(A)の信号生成回路の真理値表を示す。
信号OUTENBがH(High)レベルである場合には、トランジスタTA12、TA13がオン状態になり、これらのトランジスタTA12、TA13を介してノードN1とN2が接続される。この状態で、信号INがL(Low)レベルであると、トランジスタTA1がオン状態になり、ノードN1及びN2が共にHレベルになる。従ってインバータINV2、INV4の出力である送信制御信号OP、ONは共にHレベルになる。そして信号OP、ONがHレベルになると、図9から明らかなように、信号OP、ONが入力される送信ドライバの出力はLレベルになる。
一方、信号INがHレベルであると、トランジスタTA2がオン状態になり、ノードN1及びN2が共にLレベルになる。従って信号OP、ONは共にLレベルになる。そして信号OP、ONがLレベルになると、図9から明らかなように、信号OP、ONが入力される送信ドライバの出力はHレベルになる。
信号OUTENBがLレベルである場合には、トランジスタTA11、TA14がオン状態になり、ノードN1はHレベルになり、ノードN2はLレベルになる。従って信号OPはHレベルになり、信号ONはLレベルになる。すると、図9から明らかなように、信号OP、ONが入力される送信ドライバの出力はハイインピーダンス状態になる。
図14(A)(B)に、LS用の送信ドライバ71、72に入力される送信制御信号OP1、ON1、OP2、ON2の波形例を示し、図14(C)に、LS用の送信ドライバ71、72の出力信号DP、DMの波形例を示す。
図14(A)(B)に示すように、信号OP1、OP2は立ち下がり時間が長く、立ち上がり時間が短い波形になっている。これは、図13(A)のN型トランジスタTA6のトランジスタサイズ(W/L、電流供給能力)を小さくし、P型トランジスタTA5のトランジスタサイズを大きくすることで実現される。一方、信号ON1、ON2は立ち上がり時間が長く、立ち下がり時間が短い波形になっている。これは、図13(A)のP型トランジスタTA9のトランジスタサイズを小さくし、N型トランジスタTA10のトランジスタサイズを大きくすることで実現される。
図14(A)のD1のように信号OP1の立ち下がり時間を長くすれば、図14(C)のE1のように信号DPの立ち上がり時間を長くできる。また図14(A)のD2のように信号ON1の立ち上がり時間を長くすれば、図14(C)のE2のように信号DPの立ち下がり時間を長くできる。従って、信号DPの立ち上がり時間及び立ち下がり時間の両方を長くできる。
図14(B)のD3のように信号ON2の立ち上がり時間を長くすれば、図14(C)のE3のように信号DMの立ち下がり時間を長くできる。また図14(B)のD4のように信号OP2の立ち下がり時間を長くすれば、図14(C)のE4のように信号DMの立ち上がり時間を長くできる。従って、信号DMの立ち上がり時間及び立ち下がり時間の両方を長くできる。
このように本実施形態では、図13(A)のトランジスタTA5、TA6、TA9、TA10等のトランジスタサイズを変えるだけで、信号DP、DMの立ち上がり時間、立ち下がり時間を制御して長くすることが可能になる。従って、50〜350pfの範囲の負荷容量に対して、DP、DMの立ち上がり時間及び立ち下がり時間を75〜300nsの範囲に容易に収めることが可能になり、LSモードにおけるUSBの規格を遵守できる。またトランジスタTA5、TA6、TA9、TA10のトランジスタサイズを変更しても、送信ドライバ71、72の出力ノードQN1、QN2の負荷容量は変化しないため、送信回路54によるHSモードのデータ転送に悪影響が及ぶのを防止できる。
5.HS用送信回路
図15にHS用の送信回路54(電流ドライバ)の構成例を示す。このHS用送信回路54は、定電流回路10、第1〜第3のスイッチ素子SW1、SW2、SW3を含む。
定電流回路10(電流源、電流回路)は電源AVDDとノードNDとの間に設けられる。スイッチ素子SW1は、ノードNDと、DPの信号線との間に設けられる。スイッチ素子SW2は、ノードNDと、DMの信号線との間に設けられる。スイッチ素子SW3はノードNDと電源AVSSとの間に設けられる。これらのスイッチ素子SW1、SW2、SW3はトランジスタ(CMOSトランジスタ、N型トランジスタ)により構成でき、そのオン・オフ制御は送信制御信号GC1、GC2、GC3により行われる。
HS用送信回路54は、定電流回路10からの電流により、スイッチ素子SW1又はSW2を介してDP又はDMの信号線を駆動(電流駆動)する。具体的には、図9の送信制御回路64からの送信制御信号GC1、GC2、GC3に基づいてスイッチ素子SW1、SW2、SW3がオン・オフ制御されて、DP、DMの信号線が駆動される。
なお定電流回路10から流れる電流の値を可変に制御する電流制御回路を更に設けてもよい。このようにすれば、DP、DMの出力ハイレベル電圧の調整が可能になる。またスイッチ素子SW1を構成するトランジスタのゲートに対して第1の送信制御信号を出力する第1のバッファ回路と、スイッチ素子SW2を構成するトランジスタのゲートに対して第2の送信制御信号を出力する第2のバッファ回路を設けてもよい。そして第1、第2のバッファ回路の各々に、第1のインバータと、第1のインバータの出力ノードにその入力ノードが接続される第2のインバータと、第1のインバータの出力ノードに接続される容量調整回路を含ませてもよい。このようにすれば、HS用送信回路54の出力のスルーレートを調整できるようになる。
6.終端抵抗回路
図16に、図10の終端抵抗回路30の構成例を示す。なお終端抵抗回路32、34も図16と同様の構成になる。
終端抵抗回路30は抵抗回路36、37、38を含む。これらの抵抗回路36、37、38の各々は複数のトランジスタにより構成される。具体的には図17(A)(B)(C)に示すように抵抗回路36、37、38は、各々、例えば5個、12個、3個の並列接続されたN型トランジスタにより構成される。これらのN型トランジスタは、図11、図12においてN型トランジスタ領域ARN1、ARN2に形成されるトランジスタNTRTP、NTRTMである。そしてこれらのN型トランジスタのドレインにはノードTN1が接続され、ソースには電源AVSSが接続される。また抵抗回路36、37、38を構成するN型トランジスタのゲートには、各々、終端抵抗制御回路40からの抵抗制御信号CP1、CP2、CP3が入力される。そして抵抗制御信号CP1、CP2、CP3がアクティブになると、抵抗回路36、37、38を構成するN型トランジスタがオンになり、そのオン抵抗値が、抵抗回路36、37、38の抵抗値(終端抵抗値)になる。
例えば抵抗制御信号CP1〜CP3が全てアクティブである場合には、抵抗回路36、37、38を構成する並列接続された20個(=5+12+3)のトランジスタが全てオン状態になり、これらのトランジスタのオン抵抗値により形成される並列抵抗値は例えば2.4Ωになる。そしてRSPの固定抵抗値rsp=39Ωであるため、終端抵抗値は41.4Ωになる。
また抵抗制御信号CP1、CP3がアクティブであり、CP2が非アクティブである場合には、抵抗回路36、38を構成する並列接続された8個(=5+3)のトランジスタがオン状態になり、これらのトランジスタのオン抵抗値により形成される並列抵抗値は例えば6.0Ωになる。従って終端抵抗値は39+6.0=45Ωになる。
また抵抗制御信号CP1がアクティブであり、CP2、CP3が非アクティブである場合には、抵抗回路36を構成する並列接続された5個のトランジスタがオン状態になり、これらのトランジスタのオン抵抗値により形成される並列抵抗値は例えば9.6Ωになる。従って終端抵抗値は39+9.6=48.6Ωになる。
以上のように図10、図16では、DP、DMの終端抵抗値を可変に制御できる。これにより、DP、DMの出力ハイレベル電圧を調整できるようになる。また受信側の終端抵抗値とのインピーダンスマッチングがとれていない場合に、送信側の終端抵抗値を変更することで、インピーダンスマッチングをとることも可能になる。
7.受信回路、検出回路
図18に、図4のシングルエンドの受信回路56の構成例を示す。なお受信回路58も図18と同様の構成になる。受信回路56は、DP(DM)の信号が入力される第1のインバータ140と、第1のインバータ140の出力ノードNC1がその入力に接続される第2のインバータ141を含む。更に第3、第4のインバータ142、144を含む。
図18においてDPの信号がLレベルの場合には、出力ノードNC2の電圧がLレベルになり、トランジスタTC5がオンになり、P型トランジスタ側のオン抵抗が小さくなる。これにより、DP(DM)の信号がLベルからHレベルに変化する時のしきい値電圧が高くなる。一方、DP(DM)の信号がHレベルの場合には、出力ノードNC2の電圧がHレベルになり、トランジスタTC7がオンになり、N型トランジスタ側のオン抵抗が小さくなる。これにより、DP(DM)の信号がHレベルからLレベルに変化する時のしきい値電圧が低くなる。以上によりしきい値電圧についてのヒステリシス特性が実現される。
また図18では、イネーブル信号SEENB1(SEENB2)がLレベル(ノンアクティブ)になると、トランジスタTC6がオンになり、インバータ140の出力ノードNC1がHレベル(AVDD)に設定される。またトランジスタTC11がオンになり、インバータ141の出力ノードNC2がLレベル(AVSS)に設定される。またトランジスタTC8がオフになり、インバータ141のトランジスタTC8、TC9、TC10の経路で流れる電流がオフにされる。
USBケーブルの接続前では、DP、DMの信号線は、何も信号が供給されない浮いた状態になっている。従って、この浮いた状態のDP、DMの信号線がインバータ140のトランジスタTC2、TC3に接続されると、インバータ140に貫通電流が発生する可能性がある。これに対して図18では、イネーブル信号SEENB1(SEENB2)がLレベルになると、インバータ140、141の出力ノードNC1、NC2が電源電圧(AVDD、AVSS)に設定される。従ってUSBケーブルの接続前において、イネーブル信号SEENB1、SEENB2をLレベルに設定するようにすれば、インバータ140、141、142、144において貫通電流が発生する事態を防止できる。
図19に図4のFS用の受信回路90(差動レシーバ)の構成例を示す。なおHS用の受信回路92も図19と同様の構成になる。
受信回路90は、演算増幅回路120、122と、出力回路124と、インバータ126、128を含む。DP、DMの信号は、演算増幅回路120の第1、第2の差動入力であるトランジスタTB3、TB4のゲートに入力される。演算増幅回路120の出力ノードNB2、NB1からの出力信号は、演算増幅回路122の第1、第2の差動入力であるトランジスタTB8、TB9のゲートに入力される。演算増幅回路122の出力ノードNB4からの出力信号は、出力回路124のトランジスタTB11のゲートに入力される。そして出力回路124の出力ノードNB5からの出力信号は、トランジスタTB14、TB15により構成されるインバータ126とトランジスタTB16、TB17により構成されるインバータ128によりバッファリングされて、信号DINとして出力される。
図19では、イネーブル信号ENBがLレベル(AVSS)である場合には、基準電圧VREFもLレベルになる。これにより電流源用トランジスタTB5、TB10、TB12がオフになり、低消費電力化を図れる。またトランジスタTB13がオンになるため、出力回路124の出力ノードNB5がHレベル(AVDD)になり、インバータ126、128に貫通電流が発生してしまう事態を防止できる。
図20に図4のスケルチの検出回路94の構成例を示す。なお切断の検出回路96も同様の構成になる。検出回路94は、差動アンプ回路160、第1及び第2のピークホールド回路162、164、定電位設定回路166、比較回路168を含む。差動アンプ回路160は、DP、DMの差分の電圧を増幅し、差動出力信号GP、GMを生成する。第1のピークホールド回路162は、差動出力信号の一方の出力信号GPのピーク値を検出し、ノードPKHに保持する。第2のピークホールド回路164は、差動出力信号の他方の出力信号GMのピーク値を検出し、ノードPKHに保持する。定電位設定回路166は、ノードPKHの電位変化速度よりもゆっくり変化するような時定数で、ノードPKHの電位を、信号の未検出状態に対応した一定電位に戻す。比較回路168は、基準電位RPとノードPKHの電位を比較し、その結果をHS_SQとして出力する。このように図20の検出回路94は、DP、DMの差動データ信号に基づき得られた差動出力信号GP、GMのピーク値をノードPKHに保持し、このPKHの電位を、信号未検出状態に関連付けられた一定電位に、ゆっくりとした時定数で戻すようにしている。そして、このノードPKHの電位を、基準レベルRPと比較するようにしたので、DP、DMの差動データ信号が微小振幅かつ高速の場合でも、受信データの有無を精度良く判別できるようになる。
図21に図4の検出回路98の構成例を示す。図21の検出回路98は、図18のシングルエンドの受信回路90とほぼ同一構成であり、異なる点は、図18のトランジスタTC6、TC8、TC11に相当するトランジスタが図21では無い点である。
図21のような、しきい値電圧についてのヒステリシス特性を有する検出回路98を用いることで、信号ノイズに対する耐性が高くなり、より信頼性が高く確実なVBUS電圧の検出が可能になる。
8.電子機器
図22に本実施形態の電子機器の構成例を示す。この電子機器300は、本実施形態で説明した集積回路装置であるデータ転送制御装置310と、ASICなどで構成されるアプリケーション層デバイス320と、CPU330と、ROM340と、RAM350と、表示部360と、操作部370を含む。なおこれらの機能ブロックの一部を省略する構成としてもよい。
ここでアプリケーション層デバイス320は、例えば、携帯電話のアプリケーションエンジンを実現するデバイスや、情報記憶媒体(ハードディスク、光ディスク)のドライブを制御するデバイスや、プリンタを制御するデバイスや、MPEGエンコーダ、MPEGデコーダ等を含むデバイスなどである。処理部330(CPU)はデータ転送制御装置310や電子機器全体の制御を行う。ROM340は制御プログラムや各種データを記憶する。RAM350は処理部330やデータ転送制御装置310のワーク領域やデータ格納領域として機能する。表示部360は種々の情報をユーザに表示する。操作部370はユーザが電子機器を操作するためのものである。
なお図22ではDMAバスとCPUバスが分離されているが、これらを共通化してもよい。またデータ転送制御装置310を制御する処理部と、電子機器を制御する処理部とを別々に設けてもよい。
また本実施形態の電子機器300としては、携帯電話機、携帯型音楽プレーヤ、携帯型映像プレーヤ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、光ディスクドライブ装置、ハードディスクドライブ装置、オーディオ機器、携帯型ゲーム機、電子手帳、電子辞書又は携帯型情報端末等の種々のものが考えられる。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電源、第2の電源、第1の信号線、第2の信号線等)と共に記載された用語(AVDD、AVSS、DP、DM等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また集積回路装置、データ転送制御装置、電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定に限定されず、種々の変形実施が可能である。また、本実施形態では、USB2.0への本発明の適用例について説明したが、本発明は、USB2.0と同様の思想に基づく規格や、USB2.0を発展させた規格等にも適用できる。