JP5023433B2 - 熱伝導性樹脂成形品およびその製造方法 - Google Patents

熱伝導性樹脂成形品およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導性樹脂成形品に関し、詳しくは、熱伝導性および表面平滑性に優れた熱伝導性樹脂成形品およびその製造方法に関する。
例えば、オーバーヘッドプロジェクターに使用されるレンズホルダーは、使用中の温度上昇を少しでも抑えるため、熱伝導性に優れた樹脂による成形品であることが望まれる。
樹脂材料に熱伝導性を付与させる方法として、樹脂材料に高熱伝導性無機繊維や高熱伝導性無機粉末を混合する方法が多数報告されている。例えば、高熱伝導性無機繊維としては、炭素ウイスカー(特許文献1)、黒鉛化炭素繊維(特許文献2)、熱伝導性カーボン繊維(特許文献3)が知られ、高熱伝導性無機粉末としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、炭素及び金属(特許文献1)、黒鉛(特許文献3)が知られている。
特開平8−283456号公報 特開2002−88250号公報 特開2003−49081号公報
しかしながら、本発明者らの解析の結果、通常の金属製金型を使用して得た樹脂成形品の場合、使用中の温度変化により、樹脂に配合された前記の様な熱伝導性フィラー等が欠落するという問題が見い出された。斯かる問題は、本発明者らの知見によれば、樹脂成形品の表面が粗面化している、換言すれば、樹脂成形品の表面では熱伝導性フィラー等の樹脂中への埋没が不十分であることに起因して惹起される。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、樹脂に熱伝導性フィラー等が配合された熱伝導性樹脂成形品であって、樹脂に配合された熱伝導性フィラー等の欠落が抑制された熱伝導性樹脂成形品を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の熱伝導性樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、断熱構造の金型を使用して得られる射出成型品の表面は、熱伝導性フィラー等の樹脂中への埋没が十分であって平滑性に優れているとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その第1の要旨は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、平均繊維径5〜20μmの黒鉛化処理された炭素繊維5〜100重量部と平均粒子径1〜500μmの熱伝導性粉体0〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を射出成形して成る樹脂成形品であって、当該樹脂成形品の外面の輪郭構成面のうちの最大面における表面粗さRzが20μm以下であることを特徴とする熱伝導性樹脂成形品に存する。
そして、本発明の第2の要旨は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、平均繊維径5〜20μmの黒鉛化処理された炭素繊維5〜100重量部と平均粒子径1〜500μmの熱伝導性粉体0〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を射出成形する熱伝導性樹脂成形品の製造方法であって、射出成形用の金型として、キャビティ内の成形面であって、樹脂成形品の外面の輪郭構成面のうちの少なくとも最大面に相当する成形面が熱伝導率0.3〜6.3W/m・Kの材料で構成されている金型を使用することを特徴とする熱伝導性樹脂成形品の製造方法に存する。
本発明の熱伝導性樹脂成形品は、熱伝導性に優れ、成形品の反りが少なく、且つ成形品表面が円滑であり、成形品の使用中に粉落ちと呼ばれる熱伝導性フィラー等の欠落がない。
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明の熱伝導性樹脂成形品およびその製造方法で使用する原料について説明する。本発明においては、必須成分として、熱可塑性樹脂と黒鉛化処理された炭素繊維とを使用し、任意成分として、熱伝導性粉体を使用する。
先ず、熱可塑性樹脂について説明する。本発明で使用する熱可塑性樹脂の種類は、特に制限されず、非晶性熱可塑性樹脂、結晶性熱可塑性樹脂の何れであってもよい。非晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、芳香族ビニル化合物重合体などが挙げられ、結晶性熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートの何れをも使用することが出来るが、芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネートは、芳香族ヒドロキシ化合物またこれと少量のポリヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸のジエステルとを反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体または共重合体である。製造方法は、ホスゲン法(界面重合法)、溶融法(エステル交換法)等から任意に選択できる。更に、溶融法で製造された、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネートを使用することも出来る。
芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、これらの中では、ビスフェノールAが好ましい。難燃性を更に高める目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物および/またはシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマー又はオリゴマーを使用することも出来る。
分岐した芳香族ポリカーボネートを得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−ト4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等で示されるポリヒドロキシ化合物、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等を前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として使用すればよく、その使用量は、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を使用すればよく、一価芳香族ヒ
ドロキシ化合物の具体例としては、m−及p−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネートとしては、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または、2、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。難燃性を高める目的でシロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーを共重合することも出来る。芳香族ポリカーボネートとしては2種以上の樹脂を混合して使用してもよい。
芳香族ポリカーボネートの分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量として、通常13,000〜30,000、好ましくは15,000〜27,000、更に好ましくは17,000〜24,000である。粘度平均分子量が13,000未満の場合は機械的強度が不足し、30,000を超える場合は成形性が不良となる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、下記一般式(1)で示される構造を有する単独重合体または共重合体である。
Figure 0005023433
式(1)中、Q1 は、各々、ハロゲン原子、第一級もしくは第二級アルキル基、アリール基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基またはハロ炭化水素オキシ基を表し、Q2 は、各々、水素原子、ハロゲン原子、第一級もしくは第二級アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、炭化水素オキシ基またはハロ炭化水素オキシ基を表し、nは10以上の数を表す。
Q1及びQ2の第一級アルキル基の好適な例は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−アミル、イソアミル、2−メチルブチル、n−ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2−、3−若しくは4−メチルペンチル又はヘプチルである。第二級アルキル基の好適な例は、イソプロピル、sec−ブチル又は1−エチルプロピルである。多くの場合、Q1は、アルキル基またはフェニル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、Q2は水素原子である。
好適なポリフェニレンエーテルの単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−14−フェニレンエーテル単位から成る重合体である。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−14−フェニレンエーテル単位との組合せから成るランダム共重合体である。また、分子量、溶融粘度、耐衝撃強度などの特性を改良する分子構成部分を含むポリフェニレンエーテルも好適である。
ポリフェニレンエーテルの固有粘度は、クロロホルム中、30℃で測定した値として、通常0.2〜0.8dl/g、好ましくは0.2〜0.7dl/g、更に好ましくは0.25〜0.6dl/gである。固有粘度が0.2dl/g未満の場合は耐衝撃性が不足し、0.8dl/gを超える場合は成形性が不良である。
芳香族ビニル化合物重合体は、下記一般式(2)で示される構造を有する単量体化合物から誘導された重合体である。
Figure 0005023433
式(2)中、Rは、水素原子、低級アルキル基またはハロゲン原子を表し、Zは、水素原子、低級アルキル基、塩素原子またはビニル基を表し、nは1〜5の整数を表す。
芳香族ビニル化合物重合体の具体例としては、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂とは、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィン同士の共重合体、α−オレフィン(複数種でもよい)を主成分とし、他の不飽和単量体(複数種でもよい)を副成分とする共重合体などである。ここで、共重合体とは、ブロック、ランダム、グラフト、これらの複合物などの如何なる共重合のタイプでもよい。また、これらのオレフィン重合体の塩素化、スルフォン化、カルボニル化等の変性されたものを含む。
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテ
−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられるが、入手の簡便さからC2〜C8のα−オレフィンが好ましい。
上記不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(以下、両者を併せて「(メタ)アクリル酸」と略記する。)、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸などの不飽和有機酸、その誘導体(エステル、無水物など)、不飽和脂肪族環状オレフィン等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メル−ペンテン−1、プロピレン−エチレンブロック又はランダム共重合体、エチレンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体などが挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ジカルボン酸またはその誘導体(低級アルキルエステル、酸ハライド、酸無水物など)と、グリコール又は二価フェノールとを縮合させて得られる熱可塑性ポリエステルが挙げられる。
上記ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ア
ジピン酸、スべリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸類、テレフタル酸、イソフタル酸、p,p’−ジカルボキシジフェニルスルホン、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシプロピオン酸、p−カルボキシフェノキシ酪酸、p−カルボキシフェノキシ吉草酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、2,7−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類またはこれらのカルボン酸の混合物が挙げられる。
上記グリコールの具体例としては、炭素数2〜12の直鎖アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブテングリコール、1,6−ヘキセングリコール、1,12−ドデカメチレングリコール等の脂肪族グリコール類の他、p−キシリレングリコール等の芳香族グリコール類、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール類が挙げられる。一方、二価フェノールとしては、ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン又はこれらの化合物のアルキル置換誘導体が挙げられる。
ポリエステルの他の例としては、ラクトンの開環重合により得られるポリエステルも挙げられる。例えば、ポリピバロラクトン、ポリ(ε−カプロラクトン)等である。また、ポリエステルの更に他の例としては、溶融状態で液晶を形成するポリマー(Thermotropic Liquid Crystal Polymer;TLCP)としてのポリエステルがある。これらの区分に入るポリエステルとしては、イーストマンコダック社のX7G、ダートコ社のXyday(ザイダー)、住友化学社のエコノール、セラニーズ社のベクトラ等が代表的な商品である。
前述のポリエステルの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)又は液晶性ポリエステル等が好適である。
ポリアミド樹脂としては、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸から得られるポリアミドの他、ジアミンと二塩基酸との重縮合によって得られるポリアミドを使用することが出来る。
3員環以上のラクタムとしてはε−カプロラクタムが代表的であり、ω−アミノ酸としては、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。ジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン等が挙げられ、二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸などが挙げられる。
ポリアミド樹脂の商品としては、例えば、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I、MXD6等が挙げられる。これらは、複数種併用することも出来る。
本発明におけるポリアミド樹脂の末端は、カルボン酸またはアミンで封止されていてもよく、特に、炭素数6〜22のカルボン酸またはアミンで封止されたポリアミド樹脂が好ましい。封止用カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、封止用アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第一級アミンが挙げられる。封止に使用するカルボン酸またはアミンの量は、通常30μeq/g程度である。
ポリアミド樹脂の重合度は、JIS K 6810に従い、98重量%の硫酸中濃度1重量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度として、通常2.0〜6.5、好ましくは2.8〜5.5である。相対粘度が2.0より低い場合は、溶融粘度が小さいために成形が困難になり、機械的強度も低下する。また、相対粘度が6.5を超える場合は溶融流動性を損う。
本発明において特に好ましいポリアミド樹脂は、難燃性、機械的強度、成形性の観点から、ナイロン6、共重合ナイロン6/66及び/又はナイロン66である。
ポリアセタール樹脂は、ホルムアルデヒド又はトリオキサンの重合によって製造される高分子量の重合体であり、オキシメチレン基を繰り返し単位とする単独重合体が挙げられる。耐熱性および化学的抵抗性を増加させるために、末端基をエステル基またはエーテル基に変換することが一般に行われている。
ポリアセタール樹脂はブロック共重合体であってもよい。この種の共重合体は、上記オキシメチレン基を繰り返し単位とする単独重合体ブロックと他種の重合体ブロックとから構成される。他種の重合体ブロックの具体例には、ポリアルキレングリコール、ポリチオール、ビニルアセテート−アクリル酸共重合体、水添ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
ポリアセタール樹脂はランダム共重合体であってもよい。この種の共重合体では、ホルムアルデヒド及びトリオキサンは、他のアルデヒド、環状エーテル、ビニル化合物、ケテン、環状カーボネート、エポキサイド、イソシアネート、エーテル等と共重合される。共重合される化合物の具体例としては、エチレンオキサイド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキセペン、エピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、イソブチレンオキサイド及びスチレンオキサイドが挙げられる。この種の共重合体では、カチオン重合後、重合触媒の失活化、末端安定化などが一般に行われる。また、オキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、炭素数2以上のオキシアルキレン基を含有する共重合体が汎用される。
前記の熱可塑性樹脂は、単独使用の他、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。特に、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂および芳香族ビニル化合物重合体の群から選択される1種または2種以上の組み合わせが好ましい。また。本発明においては、必要に応じ、前記の熱可塑性樹脂に対し、本発明の目的を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することが出来る。斯かる添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、顔料、染料、滑剤、可塑剤、難燃剤、離型剤、無機強化材(ガラス繊維、ガラスフレーク、チタン酸カリウム、ワラストナイト、タルク、マイカ等)が挙げられる。また、耐衝撃改良剤として常用されているエラストマーも使用することが出来る。
次に、黒鉛化処理された炭素繊維について説明する。黒鉛化処理の程度は、特に制限されないが、黒鉛繊維に近づくに従って長さ方向の熱伝導率が増加する。本発明において、黒鉛化処理された炭素繊維の長さ方向の熱伝導率は通常100W/m・K以上、好ましくは400W/m・K以上である。
黒鉛化処理された炭素繊維としては、例えば、特開2000−143826号公報に記載されている、2〜20mmにカットされた炭素繊維(チョップドストランド)を嵩密度450〜800g/lで収束して成り、次いで、黒鉛化されて成る炭素繊維収束体が好ましい。斯かる炭素繊維収束体は、炭素繊維をサイジング剤で収束させた後、所定の長さに切断し、黒鉛化処理することにより、サイジング剤の含有量を0.1重量%以下にしたものである。サイジング剤の含有量が0.1重量%より多い場合は熱伝導率の低下を招く。
上記の黒鉛化処理の条件としては、例えば、不活性ガス雰囲気中、2800℃−3300℃で加熱する方法が挙げられる。また、他の方法として、連続した繊維(ロービング)を黒鉛化処理した後、所定の長さにカットする方法も可能である。
本発明において、黒鉛化処理された炭素繊維は平均繊維径5〜20μmの範囲のものが使用される。平均繊維径が5μm未満の場合は、樹脂へ混合充填した時の熱伝導性が低下したり、成形品の反りが大きくなる等の問題を生じ易く、20μmを超える場合は、寸法安定性が低下し、外観不良となる。また、黒鉛化処理された炭素繊維の平均長さは、熱伝導性および反りの観点から、通常1〜30mm、好ましくは2〜20mmである。平均繊維径5〜20μmの黒鉛化処理された炭素繊維の市販品としては、例えば、三菱化学産資(株)製の石油ピッチ系炭素繊維の商品「ダイヤリード」シリーズの「K223HG」等がある。また、これと同等品としては、日本グラファイトファイバー(株)製の商品「グラノック」シリーズの「XN−80」、「XN−90」、「XN−100」等がある。
均繊維径5〜20μmの黒鉛化処理された炭素繊維の使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、5〜100重量部である。炭素繊維の使用量が5重量部未満の場合は十分な熱伝導率が得らず、100重量部を超える場合は、成型加工性や寸法安定性が低下し、反りが大きくなる。炭素繊維の使用量は、好ましくは10〜40重量部、更に好ましくは15〜35重量部である。
次に、熱伝導性粉体について説明する。熱伝導性粉体の熱伝導率は、特に制限されないが、通常10W/m・K以上である。斯かる熱伝導性粉体としては、例えば、炭素繊維、黒鉛、金属被覆炭素繊維、金属被覆黒鉛、金属被覆ガラス、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属繊維および金属粉末から成る群の1つ又は2つ以上から成る熱伝導性粉末が挙げられる。
本発明において、熱伝導性粉体は、平均粒子径1〜50μmの範囲のものが使用される。平均粒子径が500μmを超える場合は成形加工性が低下し、平均粒子径が1μm未満の場合は、配合時に飛散する等して取り扱いが困難であり、しかも、樹脂中に均一に分散させるのも困難である。
熱伝導性粉体は任意成分である。従って、その使用量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し0〜100重量部である。熱伝導性粉体の使用量が100重量部を超える場合は成型加工性が低下する。熱伝導性粉体の使用量は、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは10〜80重量部である。
次に、説明の便宜上、本発明に係る熱伝導性成形品の製造方法について説明する。本発明に係る熱伝導性成形品は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、平均繊維径5〜20μmの黒鉛化処理された炭素繊維5〜100重量部と平均粒子径1〜500μmの熱伝導性粉体0〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を射出成形することによって製造される。
図1は本発明に係る熱伝導性成形品の一例としての箱形レンズホルダー(1a)を正面側から示した斜視図、図2は図1に示す箱形レンズホルダー(1a)を背面側から示した斜視図、図3は図1に示す箱形レンズホルダー(1a)のA−A線に沿った断面図である。
図1〜図3に示す様に、箱形レンズホルダー(1a)は、平面形状が長方形である。箱形レンズホルダー(1a)の正面側(図1参照)は、長手方向に沿って形成された凹み部を備え、当該凹み部の中央部が上面に到らない高さの凸部形状となされ、当該凸部の中央には長手方向に沿って溝状のレンズ装着穴(11)が形成されている。箱形レンズホルダー(1a)の背面側(図2参照)の中央には長手方向に沿って且つレンズ装着穴(11)に通じる溝状の透光穴(12)が形成されている。また、透光穴(12)の長手方向に沿った両側部分は、リブ付きの肉抜き構造となされている。そして、レンズ装着穴(11)には長方形断面の棒状のレンズ(2)が装着され、正面側から入射した光は、レンズ(2)及び透光穴(12)を通しして背面側から出射される。
図5は本発明に係る熱伝導性成形品の他の一例としての円形レンズホルダー(1b)の一例を示した正面図、図6は図5に示す円形レンズホルダー(1b)のB−B線に沿った断面図である。
図5及び図6に示す様に、円形レンズホルダー(1b)はリング状に形成され、その正面側の開口は背面側の開口より小径になされている。レンズ(2)は、正面側が凸状に形成され、円形レンズホルダー(1b)の小径の開口に凸部を嵌合させて装着され、その背面側からレンズ固定リング(3)により固定されている。なお、レンズ固定リング(3)は、ネジにより円形レンズホルダー(1b)に取り付けられている。
図4は図1に示す箱形レンズホルダー(1a)を製造するための成形金型の一例の断面図である。成形金型(4a)は、固定金型(41)、中間金型(42)、可動金型(43)にて構成され、固定金型(41)と中間金型(42)との型締状態においてキャビティ(5)が形成される様になされている。なお、符号(71)はスプルー、(72)スプルーロックピン、(73)はエジュクタピンを示す。
図7は図5に示す円形レンズホルダー(1b)を製造するための成形金型の一例の断面図である。成形金型(4b)は、固定金型(41)、中間金型(42)、可動金型(43)にて構成され、固定金型(41)と中間金型(42)との型締状態においてキャビティ(5)が形成される様になされている。なお、符号(71)はスプルー、(72)スプルーロックピン、(73)はエジュクタピンを示す。また、符号(74)は、レンズ固定リング(3)の取付け用のネジを螺着するためのネジ穴形成用のピンを示す。
本発明の製造方法の特徴は、射出成形用の金型として、キャビティ内の成形面であって、樹脂成形品の外面の輪郭構成面のうちの少なくとも最大面に相当する成形面が熱伝導率0.3〜6.3W/m・Kの材料で構成されている金型を使用することを特徴とする。
すなわち、図4及び図7に示す成形金型(4a)及び(4b)においては、キャビティ(5)の内面はジルコニアセラミック製の被覆材(6)にて構成されている。被覆材(6)としては上記の熱伝導率を有する各種の材料を使用することが出来る。例えば、ジルコニア系材料、アルミナ系材料、K2O−TiO2の群から選択される各種のセラミックス、ソーダガラス、石英ガラス、耐熱ガラス、結晶化ガラスの群から選択される各種のガラス等を使用することが出来る。そして、上記のセラミックスの具体例としては、ZrO、ZrO−CaO、ZrO−Y、ZrO−MgO、ZrO−SiO、KO−TiO、Al、Al−TiC、Ti、3Al−2SiO、MgO−SiO、2MgO−SiO、MgO−Al−SiO等が挙げられる。被覆材(6)としては、ZrO、ZrO−Y、石英ガラス、結晶化ガラスの群から選択される何れかの材料が好ましい。
被覆材(6)の構造は、材料の種類に応じ、例えば、塗布構造、溶射構造、貼付構造(すなわち入れ子タイプ)の何れであってもよい。被覆材(6)の厚さは、熱伝導率や上記の構造にも依存するが、通常0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mmである。また、被覆材(6)の表面粗さは、Rzとして通常0.01〜15μmである。
次に、本発明の熱伝導性樹脂成形品について説明する。本発明の熱伝導性樹脂成形品は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、平均繊維径5〜20μmの黒鉛化処理された炭素繊維5〜100重量部と平均粒子径1〜500μmの熱伝導性粉体0〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を射出成形して成る樹脂成形品である。そして、本発明は、例えば前述の製造方法によって得られ、樹脂成形品の外面の輪郭構成面のうちの最大面における表面粗さRzが20μm以下であることを特徴とする。
上記の「輪郭構成面」とは角で区画された1つの連続面を意味し、輪郭構成面のうちの「最大面」とは角で区画された最も大きな連続面を意味し、斯かる最大面が2個以上ある場合はこれらの全てを意味する。例えば、樹脂成形品の外面の輪郭構成面のうちの最大面は、図1〜図3に示す箱形レンズホルダー(1a)の場合、長方形の長手方向に沿った左右の外側面のそれぞれが該当し、図5及び図6に示す円形レンズホルダー(1b)の場合、短軸円筒形状の外周面が該当する。
本発明における好ましい態様において、表面粗さRzが20μm以下(好ましくは10μm以下)の平滑面とされる面は、樹脂成形品の使用態様における露出面の実質的に全面であり、レンズホルダーの場合は、その使用態様における露出面の実質的全面とレンズ接触面である。図1〜図3に示す箱形レンズホルダー(1a)の場合、図4に示す成形金型(4a)のキャビティ(5)の内面の実質全面はジルコニアセラミック製の被覆材(6)にて構成されているため、箱形レンズホルダー(1a)の露出面の実質的全面とレンズ接触面は平滑面に形成される。また、図5及び図6に示す円形レンズホルダー(1b)の場合、図7に示す成形金型(4a)のキャビティ(5)の内面のレンズ固定リング当接面対応部を除く全面はジルコニアセラミック製の被覆材(6)にて構成されている。
本発明の樹脂成形品は、上記の様に、主要外面が平滑面にて形成されるため、換言すれば、主要外面における熱伝導性フィラー等の樹脂中への埋没が十分であるため、いわゆる粉落ちが少ないという効果を奏する。
本発明は、各種用途の樹脂成形品を対象とし得るが、使用中の温度上昇を少しでも抑える必要がある樹脂成形品に好適である。斯かる成形品としては、例えば、オーバーヘッドプロジェクターに使用されるレンズホルダー、OA機器、電気電子機器、精密機器の部品や筐体などが挙げられる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
以下の諸例で採用した物性および評価項目の測定方法は次の通りである。
(1)表面粗さ(十点平均粗さ)Rz:
(株)小坂研究所製の表面粗さ測定機(「SF−3F」)によって得られる断面曲線から、基準長さ(2.5mm)だけ抜き取った部分の断面曲線における最高から5番目までの山頂の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差で表した。表面粗さRzは、試料の測定表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の表面粗さRzの平均値で表した。なお、測定に使用した触針の半径は2.0μm、荷重30mg、カットオフ値0.8mmとした。
(2)粉落ち評価:
ニチバン製のセロファンテープ(「CT405A−18」)を使用し、試料の測定表面に貼付け、90°の方向に勢い良く引っ張って剥離する。この操作を略同一位置で10回連続して行い、粉落ちの有無を観察した。粉落ち無しを「○」、粉落ち有りを「×」で表した。
以下の諸例で使用した成分は次の通りである。
ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略記する):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ユーピロンS 3000、粘度平均分子量21,000
ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETと略記する):三菱化学(株)製、商品名:ノバペックスGG500
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBTと略記する):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバデュラン5010
高密度ポリエチレン樹脂(以下、HDPEと略記する):日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバテックHD HF310
ポリアミド樹脂(以下、PAと略記する):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバミッド1010C2
変性ポリフェニレンエーテル(以下、変性PPEと略記する):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:エピエースAH40
炭素繊維(1):三菱化学産資(株)製、商品名:ダイアリード(登録商標)K223HG、繊維平均径10μm、平均長さ6mm、長さ方向の熱伝導率540W/m・K
炭素繊維(2):日本グラファイトファイバー(株)製、商品名:グラノックXN−100−06、繊維平均径9μm、平均長さ6mm、長さ方向の熱伝導率900W/m・K
黒鉛粉体(1):鱗状黒鉛、西村黒鉛(株)製、商品名:PB−90、平均粒子径26μm
人造黒鉛微粉末(2):昭和電工(株)製、商品名:UFG−30、平均粒子径11μm
窒化ホウ素:水島合金鉄(株)製、商品名:HP−1、平均粒子径10μm
窒化アルミニウム:昭和電工(株)製、商品名:AS−10、平均粒子径39μm
難燃剤:リン酸エステル化合物:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、旭電化工業(株)製、商品名:FP500
フッ素樹脂:ポリテトラフルオロエチレン、ダイキン工業(株)製、商品名:ポリフロンF 201L
エラストマー:(ブタジエン&スチレン)コア/アクリルシェルの多層構造重合体、三菱レイヨン(株)製、商品名:メタブレンE 901
実施例1〜8:
添付図面の図1〜図3に示す箱形レンズホルダー(1a)又は図5及び図6に示す円形レンズホルダー(1b)を製造した。成形機としてエス・エイチ・アイブラスチックマシナリー製の射出成形機「SH100」を使用し、成形金型として、図4に示す成形金型(4a)又は図7に示す成形金型(4b)を使用した。各成形金型の鋼材にて構成されたキャビティ(5)の内面に配置された被覆材(6)は、熱伝導率4W/m・K、厚さ2.5mmのジルコニアセラミック製入れ子にて構成されている。ジルコニアセラミック製入れ子としては、表面のRzが0.1μnmにラッピング処理されたものを使用した。
表1に示す配合組成の樹脂組成物より成るペレットを調製し、同表に示す金型を使用し、同表に示す条件でレンズホルダーを製造し、その外面の輪郭構成面のうちの最大面において、表面粗さRzの測定と粉落ちの評価を行った。得られた結果を表1に示す。
表1中の「組成物の熱伝導率(w/m・k)」は次の方法で測定した値である。すなわち、先ず、射出成形機として、住友重機械工業(株)製の「サイキャップM−2」(型締め力75T)を使用し、各例の組成物を射出形成して100mm×100mm×3mm(t)のシートを作成し、次いで、迅速熱伝導率測定装置として、京都電子工業(株)製の「Kemtherm QTM−D3」を使用し、上記のシートを3枚重ねたサンプルの熱伝導率を測定する。
比較例1〜8:
上記の実施例1〜8において、キャビティ(5)の内面が鋼材にて構成される様にジルコニアセラミック製入れ子の使用を止めた以外は、実施例1〜8と同様に操作してレンズホルダーを製造した。得られたレンズホルダーの外面の輪郭構成面のうちの最大面において、表面粗さRzの測定と粉落ちの評価を行った。得られた結果を表2に示した。
Figure 0005023433
Figure 0005023433
箱形レンズホルダーの一例を正面側から示した斜視図 図1に示すレンズホルダーを背面側から示した斜視図 図1に示すレンズホルダーのA−A線に沿った断面図 図1に示すレンズホルダーを製造するための成形金型の断面図 円形レンズホルダーの一例を示した正面図 図5に示すレンズホルダーのB−B線に沿った断面図 図5に示すレンズホルダーを製造するための成形金型の断面図
符号の説明
1 :樹脂成形品
1a:箱形レンズホルダー
1b:円形レンズホルダー
11:レンズ装着穴
12:透光穴
2 :レンズ
3 :レンズ固定リング
4 :成形金型
4a:箱形レンズホルダー成形用金型
4b:円形レンズホルダー成形用金型
41:固定金型
42:中間金型
43:可動金型
5:キャビティ
6:被覆材
71:スプルー
72:スプルーロックピン
73:イジェクタピン
74:ネジ穴成形用ピン

Claims (1)

  1. 熱可塑性樹脂100重量部に対し、平均繊維径5〜20μmの黒鉛化処理された炭素繊維5〜100重量部と平均粒子径1〜500μmの熱伝導性粉体0〜100重量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物を射出成形する熱伝導性樹脂成形品の製造方法であって、射出成形用の金型として、キャビティ内の成形面であって、樹脂成形品の外面の輪郭構成面のうちの少なくとも最大面に相当する成形面が熱伝導率0.3〜6.3W/m・Kの材料で構成されている金型を使用することを特徴とする熱伝導性樹脂成形品の製造方法。
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