JP3665695B2 - ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物およびポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物からなる薄肉筒状部を有する成型品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、機械的特性、電気的特性および化学的特性等に優れた結晶性樹脂であり、合成繊維から工業用フィルム・食品用ボトルまで幅広く使用されている。しかし、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶化速度が遅く射出成形における成形サイクルが長いこと、あるいは離型時に本来の強度を発現できず成型品の変形や破れを引き起こすことなどのために、射出成形部品が主として用いられる電気・電子分野や自動車分野等においては十分な発展がなされていない。
【0003】
樹脂の潤滑性を向上するために、シリコンゴムとシリコン油とを含む熱可塑性樹脂が特開昭50−121344号公報に開示されている。しかしながら、金属芯軸のインシュレータ等の電気・電子部品等において必要な難燃性と剛性に優れ、且つ流動性と離型性に優れたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、剛性と難燃性に優れ、且つ流動性と離型性に優れたポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物、およびかかるポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物からなる薄肉筒状部を有する成型品を提供することにある。
【0005】
【課題が解決するための手段】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その要旨は、(A)ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に、(B)ポリプロピレン系樹脂2〜30重量部、(C)下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなり、25℃で測定した粘度が10〜100,000センチストークスの有機ポリシロキサン0.5〜10重量部、(D)臭素化エポキシ化合物10〜40重量部及び(E)繊維状充填剤0〜150重量部を配合してなるポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物。
−Si(R1)(R2)−O− (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)に存する。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における(A)ポリエチレンテレフタレート系樹脂としては、エチレングリコールとテレフタール酸とを主成分とし、これらの縮合反応によって得られる飽和ポリエステル重合体および共重合体が挙げられ、好ましくは、エチレンテレフタレート成分を繰り返し単位として100〜80重量%含むポリエチレンテレフタレート系樹脂が挙げられる。
【0007】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂が共重合体である場合、エチレングリコールと共に用いられる共重合成分としては、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコールやシクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール、又はこれらの誘導体などが挙げられ、テレフタール酸と共に用いられる共重合成分としては、アジピン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの多価脂肪族あるいは芳香族カルボン酸、又はその誘導体などが挙げられる。
【0008】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度は、好ましくは0.4〜1.0dl/gであり、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。ここで固有粘度は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の溶媒中23℃で測定する。固有粘度が0.4未満であると機械的特性が低下しやすく、1.0を越えると流動性が低下しやすい。
【0009】
本発明における(B)ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンまたはプロピレンと他のエチレン性単量体とを重合してなる結晶性の重合体が挙げられ、好ましくは、プロピレン成分を繰り返し単位として100〜60重量%含むポリプロピレン系樹脂が挙げられる。プロピレン以外のエチレン性単量体としては、例えば、エチレン、ブテン−1などのα−オレフィンが挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、好ましくは、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンまたはブテン−1とを共重合させたブロックまたはランダム共重合体等が挙げられる。
【0010】
ポリプロピレン系樹脂の配合量は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、2〜30重量部である。2重量部未満であると流動性が低下し、30重量部を超えると離型性や難燃性が低下する。ポリプロピレン系樹脂の配合量は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、好ましくは3〜25重量部であり、より好ましくは5〜20重量部である。
【0011】
本発明における(C)有機ポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなるポリジオルガノシロキサンが挙げられる。
【0012】
【化1】
−Si(R1)(R2)−O− (1)
【0013】
式中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。R1およびR2としては、好ましくは、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0014】
有機ポリシロキサンとしては、1種類の繰り返し単位のみから成っていても、または2種類以上の繰り返し単位から成っていてもよい。2種類以上の繰り返し単位から成る場合は、各繰り返し単位がランダム状、ブロック状、またはテーパー状のいずれの形態で有機ポリシロキサン鎖中に結合していてもよい。
【0015】
有機ポリシロキサンの具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルベンジルシロキサン等が挙げられ、好ましくはポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0016】
有機ポリシロキサンの粘度は、25℃での測定で、好ましくは10〜100,000センチストークスであり、より好ましくは100〜10,000センチストークスである。有機ポリシロキサンは1種類のみを使用しても、または2種類以上の使用してもよい。
【0017】
有機ポリシロキサンの配合量は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、0.5〜10重量部である。0.5重量部未満であると離型性が不十分であり10重量部を超えると成型時の発生ガス量が増加し、難燃性が低下しやすい。有機ポリシロキサンの配合量は、離型性と難燃性の点より、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.8〜8重量部であり、より好ましくは1〜6重量部である。
【0018】
本発明における(D)臭素化エポキシ化合物としては、例えば、テトラブロモビスフェノールAエポキシに代表されるビスフェノールA型臭素化エポキシ化合物が挙げられる。臭素化エポキシ化合物の臭素含量は、十分な難燃性を付与する上で、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上である。
【0019】
臭素化エポキシ化合物の分子量としては特に限定されるものではない。臭素化エポキシ化合物としてはオリゴマーを併用することもできる。臭素化エポキシ化合物としてはオリゴマーを併用する場合。例えば、分子量5000以下のオリゴマーを0〜50重量%程度用いることで、難燃性、離型性および流動性を満足せせることができる。
【0020】
臭素化エポキシ化合物の配合量は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、5〜40重量部である。5重量部未満であると難燃性が不十分であり、40重量部を越えると機械的特性が低下しやすい。臭素化エポキシ化合物の配合量は、難燃性と機械的特性の点より、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、好ましくは8〜35重量部であり、より好ましくは10〜30重量部である。
【0021】
本発明においては、必要に応じて、難燃助剤、好ましくは無機系難燃助剤を使用することができる。かかる無機系難燃助剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等のアンチモン化合物が挙げられ、好ましくは、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等のアンチモン化合物が挙げられる。
【0022】
難燃助剤の配合量は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、0〜20重量部である。難燃助剤の配合量が20重量部を越えると物性が低下する。難燃助剤の配合量は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0023】
本発明における(E)繊維状充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維等が挙げられ、作業性の面から集束剤にて処理されたチョップドストランドガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂との密着性を高めるために繊維状充填剤の表面がカップリング剤やバインダーで処理されたものが好ましい。
【0024】
繊維状充填剤の配合量は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、0〜150重量部である。繊維状充填剤の配合量が150重量部を越えると流動性が低下する。繊維状充填剤の配合量は、機械的特性、寸法安定性等の点より、ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に対し、好ましくは1〜120重量部、より好ましくは5〜100重量部である。
【0025】
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物には、更に公知の充填剤、添加剤等を配合することもできる。充填剤としては、金属粉末、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、粘土鉱物類、炭素粉等が挙げられ、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカーアルミナ、チタニア、マグネシア、亜鉛華、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、ベントナイト、ノバキュライト、硅砂、石英粉、グラファイト粉、マイカ、板状ガラス、ガラス粉、カーボンブラック等が挙げられる。添加剤としては、染顔料、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、触媒失活剤、滑剤、帯電防止剤、色調改良剤、発泡剤等、可塑剤、核剤等が挙げられる。
【0026】
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物は、公知の方法により製造でき、製造方法としては、例えば、ブレンダーやミキサー等を用いてドライブレンドする方法、押出機を用いて溶融混合する方法等が挙げられる。通常、スクリュー押出機を用いて各種配合物を溶融混合してストランドに押出し、ペレット化する。本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物は、電気、電子部品や自動車部品等の各種成形品の材料として有用であり、特に、薄肉筒状部を有する成型品用樹脂組成物として適している。
【0027】
本発明の薄肉筒状部を有する成型品は、上記ポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物を、射出成形することにより得られる。薄肉筒状部を有する成型品における薄肉筒状部は、円筒状中空体の形状であり、円筒の一端の径と他端の径とは必ずしも同じでなくてもよい。薄肉筒状部の厚みは、通常、2mm以下である。薄肉筒状部における筒の高さは筒の内径あるいは外径に比較し大きく、通常、筒の高さと筒の内径の比は2以上である。かかる薄肉筒状部を有する成型品の成形においては、一般に金型への充填が不十分になりやすく、また、金型からの成形品の離型が困難であるが、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物を用いて成形することで、金型への充填性と離型性との問題を克服できる。
【0028】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
これらの実施例及び比較例においては下記の成分を使用した。
(1)ポリエチレンテレフタレート:ポリエチレンテレフタレート、固有粘度0.6、三菱エンジニアリングプラスチックス社製。
(2)ポリプロピレン:ポリプロピレン、日本ポリケム社製。
【0029】
(3)有機ポリシロキサン:ポリジメチルシロキサン、信越シリコーン社製。
(4)ポリエチレンワックス:マイクロクリスタリンワックス、日本精櫓社製。
(5)臭素化エポキシ化合物:ビスフェノールA型臭素化エポキシ樹脂、ブロムケム社製。
(6)ハロゲン化ポリスチレン:パイロチェック、フェロー化学社製。
(7)無機難燃助剤:三酸化アンチモン、住友金属鉱山製。
(8)繊維状充填剤:ガラス繊維、日本電気硝子社製。
(9)核剤:ステアリン酸ナトリウム、日本油脂社製。
【0030】
測定は下記の方法に基づいて行った。
(10)燃焼性:1/32インチ厚試験片を用いてULー94垂直試験法に準拠して測定した。
(2)曲げ弾性率:ASTM D790に準拠して評価した。
(3)流動性:小型射出成形機(FANUC社製、FANUC−50B)により、図1および図2に示す筒状部分の厚み1mmの薄肉筒状成型品の離型性評価金型を用い、樹脂温度280℃で成形を行い、最低充填圧の条件下での充填性の程度により評価した。○:充填性良好、△:充填性やや不十分、×:充填性不十分、を表す。
【0031】
(4)離型性:小型射出成形機(FANUC社製、FANUC−50B)により、図1および図2に示す筒状部分の厚み1mmの薄肉筒状成型品を成形し、最低充填圧の条件の下での離型性の可否、突き出しピンの跡の付き具合により離型性の評価を行った。○:離型可且つピン跡なし、△:離型可且つピン跡あり、×:離型不可、を表す。
【0032】
〔実施例1〜2、比較例1〜4〕
表−1に記載の各成分を表−1に示す割合で配合、ブレンドし、30mmのベント式2軸押出機(TEX−30C)を用いて260℃にて溶融混練した後、ストランドに押出してペレット化した。得られたペレットについて、射出成形機を用いて、成形温度265℃、金型温度80℃で射出成形を行い、各種試験片を作成し評価を行った。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1および2は、本発明の樹脂組成物が、曲げ弾性率、流動性および離型性に優れ、且つ難燃性にも優れていることを示す。比較例1はポリプロピレンを用いないと離型性と流動性が低下することを示し、比較例2はポリジメチルシロキサンの代わりにポリエチレンワックスを使用すると離型性が低下することを示す。比較例3はハロゲン化エポキシ化合物の代わりにハロゲン化ポリスチレンを使用すると、離型性と難燃性が低下することを示し、比較例4は、ポリプロピレンを過剰に添加した場合、曲げ弾性率が低下し、且つ離型性と燃焼性が低下することを示す。
【0035】
【発明の効果】
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物は、剛性と難燃性に優れ、且つ流動性と離型性にも優れている。従って、電気電子部品について要求される特性を満足し、且つ金属芯軸のインシュレータ等の薄肉筒状部を有する成型品の用途の適しており、工業的価値が非常の大きい。また、本発明の薄肉筒状部を有する成型品は、成形時の成形や離型にトラブルが少なく、且つ剛性と難燃性に優れており、電気電子部品や自動車部品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】薄肉筒状部を有する成型品の例を示す断面説明図
【図2】薄肉筒状部を有する成型品の例を示す平面説明図
【符号の説明】
a 12mm
b 9mm
c 8.5mm
d 9.5mm
e 28mm
Claims (5)
- (A)ポリエチレンテレフタレート系樹脂100重量部に、(B)ポリプロピレン系樹脂2〜30重量部、(C)下記一般式(1)で表される繰り返し単位からなり、25℃で測定した粘度が10〜100,000センチストークスの有機ポリシロキサン0.5〜10重量部、(D)臭素化エポキシ化合物10〜40重量部及び(E)繊維状充填剤0〜150重量部を配合してなるポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物。
−Si(R1)(R2)−O− (1)
(式中、R1及びR2は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。) - ポリエチレンテレフタレート系樹脂が、エチレンテレフタレート成分を繰り返し単位として100〜80重量%含むポリエチレンテレフタレート系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- ポリエチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度が、0.4〜1.0dl/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- ポリプロピレン系樹脂が、プロピレン成分を繰り返し単位として100〜60重量%含むポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂組成物からなる薄肉筒状部を有する成型品。
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