JP5020803B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品に関し、詳しくは生理用ナプキン等に適した吸収性物品およびそれに用いられる複合素材の製造方法に関する。
生理用ナプキン等の吸収性物品用の表面シートには、排出された経血や尿等の液体を素早く吸収できる吸収性能と同時に着用者の肌に接して刺激を与えないという表面特性が要求される。従来、吸収性物品用の表面シートとしては、各種の不織布からなるもの、それに穿孔を施したもの、ポリエチレン等の合成樹脂からなる有孔フィルムなどが用いられてきた。近年、吸収性物品の液体吸収性や外観を向上させるため、さらにその構造を改良した種々の製品が提案されている。その1つとして表面に溝(エンボス)加工を施した吸収性物品が挙げられる。
溝(エンボス)加工とは吸収体を熱圧縮処理し、表面に熱圧縮部と非圧縮部とを設ける加工法である。この技術により、吸収性物品の表面部分の液体吸収性を変化させたり、液滲みやヨレを防止したり、液体の流動性を制御したりすることなどが試みられてきた(特許文献1〜3参照)。しかしながら、溝加工に代表される熱圧縮加工は、表面シートを吸収体深さ方向に引き伸ばす分、表面材との密着度を高めて吸収速度を高める効果はあるものの、引き伸ばされた表面シートは、本来有するべき風合いを損なってしまうという課題があり、上述の吸収性能及び表面特性の両立については未だ満足できるものは開発されていない。
特開2000−262558号公報 特開2001−178768号公報 特許第2620305号公報
そこで本発明は、液体吸収性及び液漏れ防止性に優れ、しかも、肌に対してやさしい、ふんわりした風合い及びムレにくさが維持され、装着感に優れた吸収性物品の提供を目的とする。
本発明は、液透過性表面シートと裏面シート、及び両シートの間に吸収体を介在させた吸収性物品において、前記液透過性表面シートが不織布からなり、前記吸収体がパルプ繊維で構成され、前記液透過性表面シートと前記吸収体接合されて、吸収体と表面シートが一体化した状態で肌当接面側に隆起した多数の凸部を有し、前記凸部の裏面側の非肌当接面側には、該凸部に対応して窪んだ形状の窪み部が形成されており、該窪み部にはさらに、該窪み部より小さな凹部が該窪み部内に複数肌当接面側に窪むように形成されている吸収性物品により上記目的を達成したものである。
本発明の吸収性物品は、表面層に排出された経血や尿等の液体が接したとき、素早くそれらを吸収し内部に移行させる、高い吸収性(吸蔵性)を発揮する。また、その表面層は常に着用者の肌に接し、とりわけ突起形状が対圧縮性と身体追従性に優れ肌への当りがソフトであり良好な装着感(クッション感)を与え、しかも液体の内部移行性に優れ、かつ吸収体への液拡散性能に優れ、液体吸収性及び液漏れ防止性に優れる。本発明の吸収体は生理用ナプキンとして好適である。
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は本発明の吸収性物品の2辺を断面で示した斜視図である。本発明の吸収性物品は液透過性表面シート1と裏面シート2、及び両シートの間に介在された吸収体3を有する。液透過性表面シート1と吸収体3は直接的に重ね合わされ、且つ、図1では上方側の肌当接面側に隆起し多数の凸部4を有している。
液透過性表面シート1は吸収性物品の表面材として液透過性を有しており、不織布からなる。例えばカード法により製造されたエアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布等の種々のものが挙げられる。
ただし、不織布の繊維材料としては後述する熱伸長性の繊維を用いることが好ましい。その構成繊維の繊度は表面シートの強度確保、肌触りの向上等の点から1〜20dtexであることが好ましく、1.5〜4dtexであることがより好ましい。また、界面活性剤等を用いて繊維の表面に親水化処理を施しておくことが好ましい。
親水化処理に用いる界面活性剤としては、親水基と親油基を持つ親水性の界面活性剤であれば特に制限されないが、アニオン系界面活性剤、及び、エチレンオキサイド系の付加モル数の高いノニオン系界面活性剤が好ましい。具体的には、スルホコハク酸エステル、アルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルなどが好ましい。
液透過性表面シート1の坪量は10〜50g/mであることが好ましく、15〜40g/mであることがより好ましい。吸収性、装着感、経済性の観点から好ましい範囲といえるものである。
本発明の吸収性物品においては、液透過性表面シート1の不織布を形成する繊維として、嵩高性を有する繊維、例えば、機械的にクリンプ状に変形させられた捲縮繊維、熱などの所定の処理によって初めて収縮を開始しクリンプ状に変形する潜在性捲縮繊維、芯鞘型の複合繊維で芯が偏芯されることで嵩高に変形する繊維、所定の処理を行うことで見かけ繊維長さが伸長する繊維等が用いられる。この中でも特に好ましくは熱処理により伸長挙動を示す熱伸長性繊維を用いることが好ましい。熱伸長性繊維としては、例えば、第1樹脂成分と、該第1樹脂成分の融点よりも低い融点又は軟化点を有する第2樹脂成分とからなり、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している二成分系の複合繊維が好ましい。この複合繊維の形態には芯鞘型やサイド・バイ・サイド型など種々の形態があり、本発明においてはいずれの形態も含む。
裏面シート2は、液体の漏れを防ぐ機能を有するものであれば特に限定されない。裏面シート2の素材としては、防水性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂もしくはそれらの混合物からなる樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及び紙や熱可塑性樹脂からなる疎水性或いは親水性不織布と上述の樹脂フィルムとの複合材料等が挙げられる。また、水蒸気透過性とする裏面シート2の形成材料としては、防水性があり水蒸気透過性を有していれば特に限定されないが、ポリエチレンやポリプロピレンもしくはそれらの混合物からなる熱可塑性樹脂に、炭酸カルシウムや硫酸バリウム等からなる微小な無機フィラーを溶融混合してフィルムを製膜し、該フィルムを1軸又は2軸延伸して得られる多孔性のフィルムや、サイズ処理された防水紙や、メルトブローン等の製法により得られる撥水性の不織布や、それら多孔性のフィルム、防水紙、疎水性の微細な熱可塑性繊維からなる不織布の複合シート等が挙げられる。裏面シート2の厚さは特に限定されないが、10〜300μmが好ましく、20〜50μmがより好ましい。10μm未満では、裏面シート2の充分な強度が得がたく、使用中や脱着時に破れてしまう可能性がある。また、300μmを超えると、裏面シート2が硬くなりすぎて、装着感を損なう可能性がある。
吸収体3はパルプ繊維で構成され、好ましくは主成分として天然系繊維を解繊して得られたパルプ繊維から構成されたものである。ここで、天然系繊維とは、天然の植物由来の繊維状物質をいう。吸収体3を構成するパルプ繊維としては、例えば、木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維、レーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維などが挙げられ、ポリビニルアルコール繊維及びポリアクリロニトリル繊維等の親水性合成繊維などと組み合わせてもよい。用いられる合成繊維の含有量は、パルプ繊維に対して、その重量の50%以下であることが好ましい。
また、吸収体3は、副成分として、高吸収性ポリマーを含んでいても良い。高吸収性ポリマーとしては、自重の20倍以上の体液を吸収保持でき、且つゲル化し得るものが好ましい。例えば、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又はそれらの共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩が好ましい。
吸収層3の坪量は50〜500g/mであることが好ましく、50〜300g/mであることがより好ましい。いずれも、吸収性、装着感、経済性の観点から好ましい範囲といえるものである。また、吸収体3が副成分として高吸収性ポリマーを含むものである場合には、高吸収性ポリマーの坪量は、10〜100g/mの範囲であることが、吸収性、装着感、経済性の観点から好ましい。
液透過性表面シート1と吸収体3とは、一体化して接合され複合シートとされることが好ましい。本発明において「一体化して接合する」とは、保形目的の紙製シートや穴あけフィルム等を間に挿入せず、液透過性表面シート1と吸収体3とが略全面的に接するよう少なくともその一部を接着することをいい、熱圧着により接着することが好ましい。このとき、液体吸収性を妨げなければ、液透過性表面シート1と吸収体3との間に機態性シートを設けてもよいし、液透過性表面シート1と吸収体3の間や液透過性表面シート1と機能性シート、機能性シートと吸収体3との間をホットメルトにより接着させてもよい。また、吸収体3の1部においてのみ表層の液透過性表面シート1と熱接着され、その他の部分においては弱く接着されている、あるいは接着されずに接している状態であってもよい。
図1に示す態様においては、液透過性表面シート1と吸収体3が直接的に重ね合わされて、一体化し、肌当接面側に隆起した多数の凸部4が周期的に配列して設けられている。そして、液透過性表面シート1における凸部の頂点1aが、吸収体3の凸部の頂点の直上に設けられていることが好ましい。
吸収性物品の厚さは、裏面シート2の非肌当接面から液透過性表面シート1における凸部の頂点1aまでの最短距離でいうと、1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。1mm未満では、漏れに対して充分な吸収容量を設計しにくく、液戻り等肌への不快感や汚れを誘発してしまう可能性がある。10mmを超えると、吸収性物品の厚みが違和感に繋がり、装着感を損なってしまう。吸収体3の凸部の高さは、肌当接面側の高低差を0.3〜10mmとすることが好ましく、0.3〜6mmとすることがより好ましい。0.3mm未満では、湿気を逃がしてムレを防止できるような充分な隙間を得ることができない。10mmを超えると、凸高さが違和感となり装着感を損なってしまう。また、凸部4の肌当接面側の高低差を0.5〜10mmとすることが好ましく、0.5〜8mmとすることがより好ましい。0.5mm未満では、不織布の風合いを損なう可能性があり、10mmを超えると凸高さが違和感となり装着感を損なってしまう。
凸部4の単位面積当りの個数は、1cm当り1〜9個であることが好ましく、1〜5個であることがより好ましい。特に1cm当り9個を超えると、吸収性物品全体が硬くなり、装着感を損なう可能性がある。
以下、液透過性表面シート1に好適に用いられる熱伸長性複合繊維についてさらに詳しく説明する。
第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であることが好ましく、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分であることが好ましい。第1樹脂成分はその配向指数が30〜60%になっていることが好ましく、35〜55%になっていることがより好ましい。一方、第2樹脂成分はその配向指数が40%以上になっていることが好ましく、50%以上になっていることがより好ましい。第2樹脂成分の配向指数の上限値は特に限定されず高いほど好ましいが、通常70%程度であればよい。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。そして、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数がそれぞれ前記の値であることによって、熱伸長性複合繊維に良好な加熱伸長性を与えることができる。
熱伸長性複合繊維としては、先に述べたとおり、芯鞘型のものやサイド・バイ・サイド型のものを用いることができる。芯鞘型の熱伸長性複合繊維としては、同芯タイプや偏芯タイプのものを用いることができる。特に同芯タイプの芯鞘型であることが好ましい。この場合、第1樹脂成分が芯を構成し且つ第2樹脂成分が鞘を構成していることが、熱伸長性複合繊維の熱伸長率を高くし得る点から好ましい。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の種類に特に制限はなく、繊維形成能のある樹脂であればよい。特に、両樹脂成分の融点差、又は第1樹脂成分の融点と第2樹脂成分の軟化点との差が20℃以上、特に25℃以上であることが、熱融着による不織布製造を容易に行いうる点から好ましい。熱伸長性複合繊維が芯鞘型である場合には、鞘成分の融点又は軟化点よりも芯成分の融点の方が高い樹脂を用いる。また、第1樹脂成分は結晶性を有することが好ましい。結晶性を有する樹脂とは溶融紡糸し通常行われる範囲で延伸した場合、十分な配向と結晶を生成する樹脂を総称し、後に述べる方法で融点を測定すると明確な溶解ピーク温度が測定でき、融点が定義できる樹脂である。第1樹脂成分と第2樹脂成分との好ましい組み合わせとしては、第1樹脂成分をポリプロピレン(PP)とした場合の第2樹脂成分としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレンなどが挙げられる。また、第1樹脂成分としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂を用いた場合は、第2成分として、前述した第2樹脂成分の例に加え、ポリプロピレン(PP)、共重合ポリエステルなどが挙げられる。更に、第1樹脂成分としては、ポリアミド系重合体や前述した第1樹脂成分の2種以上の共重合体も挙げられ、また第2樹脂成分としては前述した第2樹脂成分の2種以上の共重合体なども挙げられる。これらは適宜組み合わされる。
第1樹脂成分と第2樹脂成分の特に好ましい組み合わせは、第1樹脂成分がポリプロピレンで、第2樹脂成分がポリエチレン、とりわけ高密度ポリエチレンである組み合わせである。この理由は、両樹脂成分の融点差が20〜40℃の範囲内であるため、不織布を容易に製造できるからである。また繊維の比重が低いため、軽量で且つコストに優れ、低熱量で焼却廃棄できる不織布が得られるからである。更にこの組み合わせを用いることで、熱伸長性複合繊維の熱伸長性も高くなる。この理由は次のように考えられる。上記の熱伸長性複合繊維においては、第1樹脂成分の配向係数が特定の範囲に抑えられ、第2樹脂成分の配向係数が高められている。第2樹脂成分であるポリエチレン、特に高密度ポリエチレンは結晶性が高い。したがって熱伸長性複合繊維を加熱していきその温度がポリエチレンの融点に達するまでは、繊維の熱伸長がポリエチレンによって拘束される。繊維をポリエチレンの融点以上まで加熱すると、ポリエチレンが溶融しはじめ、その拘束が解かれるので、第1樹脂成分であるポリプロピレンの伸長が可能になり、繊維全体が伸長すると考えられる。
ポリプロピレンとポリエチレンの好ましい組み合わせは、次の(1)、特に(2)であることが好ましい。このような組み合わせを採用することで、溶融紡糸時に第2樹脂成分であるポリエチレンが配向しやすくなって、その結晶性が高まり、且つ第1樹脂成分のポリプロピレンが適度な配向となって、繊維の熱伸長性が高くなる。
(1)ポリプロピレンとして、そのメルトフローレート(以下、MFRともいう)が10〜35g/10minで、そのQ値が2.5〜4.0のものを用い、ポリエチレンとして、そのMFRが8〜30g/10minで、そのQ値が4.0〜7.0のものを用いる組み合わせ。
(2)ポリプロピレンとして、そのMFRが12〜30g/10minで、そのQ値が3.0〜3.5のものを用い、ポリエチレンとして、そのMFRが10〜25g/10minで、そのQ値が4.5〜6.0のものを用いる組み合わせ。
ポリプロピレンのMFRは、JISK7210に準じ、温度230℃、荷重2.16kgで測定される。同様に、ポリエチレンのMFRは、JISK7210に準じ、温度190℃、荷重2.16kgで測定される。
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱分析装置DSC−50(島津社
製)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル質量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。
第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合は、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とする。
上記の熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(重量比)は10:90〜90:10%、特に30:70〜70:30%であることが好ましい。この範囲内であれば繊維の力学特性が十分となり、実用に耐え得る繊維となる。また融着成分の量が十分となり、繊維どうしの融着が十分となる。熱伸長性複合繊維の太さは、複合繊維の具体的用途に応じて適切な値が選択される。一般的な範囲として1.0〜10dtex、特に1.7〜8dtexであることが、繊維の紡糸性やコスト、カード機通過性、生産性、コスト等の点から好ましい。
熱伸長性繊維については、例えば、特願2005−353780号明細書に記載されたものを用いることができる。
上記の熱伸長性複合繊維はそれ自体が熱融着しうるので、この繊維を用いることで、サーマルボンド不織布、すなわち熱の付与によって繊維どうしが結合(つまり融着)している不織布を容易に得ることができる。不織布製造時の熱の付与によって熱伸長性複合繊維を不織布中で伸長しうる。
図2は図1における吸収体を部分的に拡大して模式的に示した部分断面図である。本実施形態においては、吸収体3は、吸収体3と表面シート1が一体化した状態で肌当接面側に隆起した凸部4に対応して窪んだ形状の窪み部5が形成されており、窪み部5にはさらに、窪み部5より小さな凹部6が窪み部5内に複数肌当接面側に窪むように形成されている。図2に示したものでは、吸収体3が凸頂部3a、凸部の側壁部3b、および底部を形成し、且つ、凹部6が、図1に示す凸部4に対応して窪んだ形状の窪み部5の内部に複数肌当接面側に窪むように形成されている。本発明においては、特に断らない限り、「凸頂部」とは凸形状をなす部分の頂上周辺の領域をいう。「凸部の側壁部」とは凸形状をなす部分の側面もしくは斜面をなす領域をいう。「底部」とは複数の凸形状をなす部分に挟まれた谷間の部分をいう。)。
このような凸部4と凹部6は、例えば、予め裏面からエンボス処理されたパルプシートを、噛み込み式のエンボス処理により立体化することで形成することができる。図2では、凸部4と凹部6はそれぞれこのようにエンボス処理で形成されたものである。また、図2に示されるように、凹部6は窪み部5の非肌当接面側領域以外の吸収体3の非肌当接面側に存在していても良い。
また、図2において、7で示される長さが図1に示す凸部4のピッチであり、8で示される長さが凹部6のピッチである。凸部4の隣接する凸部のピッチは2〜10mmが好ましく、3〜7mmがさらに好ましい。また、凸部4の吸収性物品表面に占める面積率は30〜80%が好ましく、40〜70%がさらに好ましい。
凹部6の隣接する凹部のピッチは3〜20mmが好ましく、3〜10mmがさらに好ましい。また、凹部6の吸収性物品表面に占める面積率は1〜30%が好ましく、1〜20%がさらに好ましい。
ここで、凹部または凸部の面積率とは、平面視の拡大写真から、長さ60mm×幅40mmの範囲内における凹部の底部の面積を得ることによって求められたものである。底部の面積は、画像解析システムによって得ることができる。光源〔サンライト SL−230K2;LPL(株)社製〕、スタンド〔コピースタンドCS−5;LPL(株)社製〕、レンズ〔24mm/F2.8Dニッコールレンズ〕、CCDカメラ〔(HV−37;日立電子(株)社製)Fマウントによるレンズとの接続〕及びビデオボード〔スペクトラ3200;カノープス(株)社製〕を用いて、エンボス凹凸の画像を取り込む。取り込まれた画像の凹凸底部の部分を、NEXUS社製の画像解析ソフトNEW QUBE(ver.4.20)によって二値化処理し、二値化処理された部分の面積を求める。
また、アーチ状に変形された窪み部5の吸収体3の肌当接面側の底辺からの高さは0.3〜3.0mmが好ましく、一方凹部6の高さ(凹部6が無い場合に形成されると推定される吸収体3の外表面からの高さ)は0.1〜2.0mmが好ましい。
また、吸収体の密度は、底部3cにおける密度が、窪み部5の周壁部の密度より高い、すなわち繊維が密である関係を有することが好ましい。
ここで窪みの周壁部とは、非肌当接面側の窪み部5の外表面から概ね0.1mm以深の領域をいう。ここでいう外表面とは、吸収体3の裏面側のことをいう。
本発明の吸収性物品においては、液透過性表面シート1及び吸収体3の2層構造が、個々の凸部4の中に積層配設されている。そして液透過性シート1に用いうる不織布繊維は粗な状態にあり、そのためその外部で発生した液体を素早く取り込み、吸収体3へと移行させる。このとき、吸収体3として液透過性表面シート1より吸収保持力のパルプ繊維を用いることで、液透過性表面シート1を通過してきた液体を取り込み、逆戻りさせずに確実に保持することができる。
このとき、本発明の吸収性物品については、液透過性表面シート1で捉えた液体を素早く吸収体3に移行させ、保持するように作用し、優れた液吸収性及び液保持性を実現しうる。そして、肌と接する部分については、粗状態にある繊維を凸部の頂部をなすように突起して配設して、液体の存在下でもサラッとしていてかつソフトな肌触りを実現することができる。
また、吸収体3は液透過性表面シート1と一体化して形成した凸部4の内部に、大きな窪み部5と小さな凹部6を有するので、それら2種の窪み(凹部)の無い吸収性物品に比べ、突起形状の凸部4の対圧縮性が向上し、また、凸部4の身体追従性が向上する。吸収体3の凸頂部3aおよび凸部の側壁部3bの内部においても、凹部6の周壁部ではパルプ密度が密となり、それ以外の部分との間で粗密の多い構造となるので、液吸収速度が高く、吸収体3への液拡散が促進されたものとなる。
次に、本発明の吸収性物品の全体構造を、その一実施形態を模式的に示す図3により説明する(これを拡大して2辺を断面により示した斜視図が図1に相当する。)。ただし、本発明の吸収性物品はこの形態に限定して解釈されるものではない。本実施形態の吸収性物品10は、液透過性表面シート及び吸収体からなる複合シート9が裏面シート2にホットメルト型接着剤による接合手段により接合されている。さらに吸収性物品の周辺部分においては、裏面シート2のみが延出され、裏面シート2と熱シール、超音波シール等の接合手段、もしくは、ホットメルト型接着剤の併用により接合されている。また、着用者の排泄部に対向する排泄部対向部(縦横の中央部)を囲むように防漏溝11が形成されている。着用者に当接する表面には、凸部4が多数連設されている。
上述のように、本発明の吸収性物品は吸収体3(パルプ繊維からなり、親水性が高く体液を引き込みやすい材料が好ましい)と液透過性表面シート1(不織布からなり、嵩高い材料が好ましい)と組み合わせて用いる。しかし、単にエンボス加工したのでは、それらの材料を接合できたとしても、良好な液体吸収性と表面特性とを両立した吸収性物品は得られない。すなわち、通常のエンボス加工においては、エンボスロールが、液透過性表面シート1を引張り伸ばし圧縮し、内層となる吸収体3に押し込んで接合する。そのため、嵩高い液透過性表面シート1を使用しても引張り伸ばされてしまい、その作用は損なわれてしまう。本発明者らは、そのような課題を解決し、上述した図1に示したような優れた凸部4を有する吸収性物品を効率的に製造しうる、本発明の製造方法を見出した。
以下に、本発明の吸収性物品として好ましく用いられる複合シートの製造方法を説明する。ただし、本発明の吸収性物品用複合シートの製造方法はこれにより限定して解釈されるものではない。
まず、予め、パルプシートにエンボスによるパターン成型を施す。ここで用いられるエンボスとしては、多数の凸部を持つピンロールとフラットロールを用い、パルプシートを通すことで部分的に圧縮するなどのエンボス処理を用いることができる。図4はエンボス処理されたパルプシート21の1例を示す平面図である。図5は、図4に示すパルプシート21のA−A’切断面の断面図である。図中、31は凹部6の底部を示し、矢印で示された長さは凹部6の高さを示す。
次いで、パルプシート21のエンボス処理がされていない面に不織布シート22を重ね合わせる。パルプシート21と不織布シート22とを重ね合わせる手段としては、例えば搬送時のパルプシート21の位置ズレなどをふせぐために、不織布シート22に吸収性を阻害しない程度の量を塗布したホットメルトを用いることができる。
次に、図6の模式的な断面図に示されるように、所定のパターンで凹凸成型された、凸部23と凹部24からなる噛み込み方式のエンボスロール上で、パルプシート21と不織布シート22とを一体変形し、同時にエンボスロールの凸部23にて不織布シート22とパルプシート21を部分的に圧着させる。このとき凸部23のピン状部材が、上方から不織布シート22を押し下げるようにして、不織布シート22とパルプシート21を部分的に圧着させる。このエンボス加工によりパルプシート21に圧着された部分の不織布シート21は伸ばされ、フィルム状に厚密化された状態になる。一方、パルプシート21に密着されなかった部分の不織布シートは疎な空間を維持できる。凹部24の内面は点線32囲った部分で示されるような傾斜面を有することが好ましい。不織布シートと重ね合わされたパルプシート21は、不織布シートのみの場合と比べて噛みあわせた際の凹部24の形状を維持しやすい。このため傾斜面を有することで、窪み部5を傾斜面に沿ったなだらかな形状にでき、凸部4は肌触りが良いものとなる。また、傾斜面を有しないと吸収体の破断等の生じる恐れがある。
次いで、不織布シート22を熱処理する。
本発明の複合シートおいては、熱処理を行うことで、複合シートの凸部の頂部を中心にその周辺の圧縮を解き嵩高く柔らかな状態にすることができる。このとき不織布シートに前記熱伸長性繊維を用いれば(例えば、特願2005−353780号明細書に開示されたものを用いれば)、より効果的に熱処理による嵩高さを得ることができる。このようにして、吸収性物品に用いられる複合シート(吸収シート)に、優れた液体吸収機能と、柔らかなふんわり感とを与えることができる。具体的には例えば、図1に示した実施形態のような優れた機能を発揮しうる凸部を有する吸収性物品を連続した工程で効率的に製造することができる。なお、上記のようにフィルム状に厚密化された不織布シート22は、このような熱処理により伸長することはなく、密度は高いままである。
本発明の吸収性物品は、上記で得られた不織布シート22とパルプシート21(繊維層)とを一体化した複合に裏面シートを積層する。このとき裏面シートは、パルプシート21の不織布シート21を付されていない側に積層される。これにより、不織布シート22は液透過性表面シートとなり、パルプシート21は吸収体となり、図1に示したような、液透過性表面シート、吸収体、及び裏面シートの設けられた吸収性物品の構成が得られる。
また、上記の不織布シートの加熱処理は裏面シートを積層する前に限定されるものではなく、裏面シートの積層後であってもよく、また複数回行ってもよい。加熱処理の具体的な方法は特に限定されないが、例えばホットエアを吹き付けることで不織布シート全体に熱を供給する方法等が好ましい。
本発明の吸収性物品の好ましい一実施形態の要部断面により示す斜視図である。 図1における吸収体を部分的に拡大して模式的に示した部分断面図である。 本発明の吸収性物品の好ましい一実施形態を模式的に示した平面図である。 エンボス処理されたパルプシートの1例を示す平面図である。 エンボス処理されたパルプシートの1例を示す断面図である。 本発明の吸収性物品用複合シートの製造方法の一部の工程を模式的に説明する断面図である。
符号の説明
1 液透過性シート
1a 液透過性シートの凸部表面層の頂部
2 液不透過性シート
3 吸収体
3a 吸収体の凸頂部
3b 吸収体の凸部の側壁部
3c 吸収体の底部
4 凸部
5 窪み部
6 凹部
7 凸部のピッチ
8 凹部のピッチ
9 複合シート
10 吸収性物品
11 防漏溝
21 パルプシート
22 不織布シート
23 噛み込み方式のエンボスロールの凸部
24 噛み込み方式のエンボスロールの凹部
31 凹部の底部
32 傾斜面を示す点線

Claims (2)

  1. 液透過性表面シート、裏面シート、及び両シート間に吸収体を介在させた吸収性物品において、
    前記液透過性表面シートが、熱伸長性繊維を含み繊維同士が熱の付与によって結合した不織布からなり、
    前記吸収体がパルプ繊維で構成され、
    前記液透過性表面シートと前記吸収体とが略全面的に接するよう少なくともその一部を接着してあり前記吸収体と前記表面シートが一体化した状態で肌当接面側に隆起した多数の凸部を有し、該凸部において、前記表面シートの凸部の頂点が前記吸収体の凸部の頂点の直上に設けられており、
    前記吸収体と表面シートとが一体化してなる凸部の裏面側の非肌当接面側には、該凸部に対応して窪んだ窪み部がアーチ状に形成されており、
    前記窪み部にはさらに、該窪み部より小さな複数の凹部が該窪み部内に肌当接面側に窪むように形成されており、かつ、前記窪み部以外の吸収体の非肌当接面側にも前記凹部が配設されており、
    前記凸部の単位面積当たりの個数は1cm 当たり1〜9個であり、前記凸部の隣接する凸部のピッチが2〜10mm、かつ該凸部の吸収性物品表面に占める面積率が30〜80%であり、前記非肌当接面側の窪み部に形成された前記凹部の隣接する凹部のピッチが3〜20mm、かつ該凹部の吸収性物品表面に占める面積率が1〜30%であり、前記アーチ状の窪み部の、吸収体の肌当接面側の底辺からの高さが0.3〜3.0mmであり、凹部の深さが0.1〜2.0mmであり、
    前記窪み部の周壁部よりも底部の方が、吸収体の繊維が密である吸収性物品。
  2. 請求項1記載の吸収性物品に用いられる、前記表面シートと前記吸収体とが一体化されてなる吸収性物品用複合シートの製造方法であって、
    予め、パルプシートの一面側にエンボスによるパターン成型を施し凹部を形成する工程、
    熱伸長性繊維を含む不織布シートと前記パルプシートのエンボス処理されていない面とを重ね合わせる工程、
    前記不織布シートとパルプシートとを所定のパターンで凹凸成型された噛み込み方式のエンボスロール上で一体変形し、同時にエンボスロールの凸部を前記不織布シートの上方から押し下げて前記不織布シートと前記パルプシートを部分的に圧着させる工程、及び、
    前記工程の後、不織布表面シートを熱処理する工程
    からなる吸収性物品用複合シートの製造方法。

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