JP5020163B2 - 張り出し床版用支保工 - Google Patents

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Description

本発明は、橋梁の床版をコンクリート打設する際に、鋼又はコンクリートからなる主桁の上部フランジ部より張り出して設けられるコンクリート床版用型枠の張り出し部を下方から支持するための支保工に関する。
道路等が架けられる橋梁においては、路盤にはコンクリート床版が用いられるが、そのコンクリート荷重を支持し、かつコンクリート床版用型枠を所定位置に固定するために、通常、水平支保梁が2個の立設された主桁の間に架け渡され、そして、その上にコンクリート床版用型枠が設けられ、さらにコンクリート床版が打設される。
近年、道路等が架けられる橋梁においては、主桁数を減らすとともにコンクリート床版の断面を増大させる傾向にある。その結果、主桁の上部フランジ部より張り出して設けられるコンクリート床版用型枠の張り出し部の張り出し寸法が大きくなり、またコンクリート床版の厚さも従来の橋梁に比べて厚くなっている。
従来から、主桁の上部フランジ部より張り出して設けられるコンクリート床版用型枠の張り出し部を下方から支持するために、コンクリート床版用型枠の張り出し部の下側に配置される大引き材(横腕材ともいう。)と、この大引き材を斜め下方から支える長さ調節可能な斜材からなる支保工が設置されてきた。支保工を構成する大引き材の上部には、根太材を介して、ベニヤ板等からなるコンクリート床版用型枠が設けられ、その上にコンクリートを流し込むことによって、張り出し部を含むコンクリート床版が形成される。
図1は、従来例に係る橋梁のコンクリート床版の一例を示す断面図である。
ここでは、鋼製の主桁1、1が左右に立設されており、そして、主桁1、1のそれぞれ内側に設置されたパイプサポート5、5の上端部間には、水平支保梁4が架け渡されている。コンクリート床版2の型枠3は、2個の主桁1、1によって支持されているが、型枠3は2つの主桁1、1の上部フランジ部1bの外側に張り出しており、この張り出し部3aは、その下側に配置される大引き材6と長さ調節可能な斜材7からなる支保工によって下方から支持されている。すなわち、この型枠の張り出し部3aの下側には、根太材9を介して、大引き材6が配置されており、この大引き材6は、その一端部において主桁1の上部フランジ1bの先端部に取り付けられた吊りボルト10によって吊り下げられ、そして、非端部において長さ調節可能な斜材7によって下方から支えられている。さらに、この斜材7の下端部は、主桁1のウェブ1aの下端部と下部フランジ1cとの隅部に取付角度自在に取り付けられている。また、主桁1のウェブ1a上端部にはチェーン8が取り付けられ、型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって発生する外向きの水平力を打ち消すべく、斜材7を引っ張っている。
コンクリート床版は、このような2個の主桁及びその外側に設置された支保工によって支持された型枠の上にコンクリートを打設することによって形成される。
図2は、主桁の外側に設置された、従来例に係る支保工の一例(側面図)である。
コンクリート床版2の型枠の張り出し部3aの下側には、根太材9を介して、大引き材6が配置されている。そして、この大引き材6は、その一端部(図では左端部)において、鋼製の主桁1の上部フランジ1bの先端部にフランジ接続ピース12を介して取り付けられた吊りボルト10によって吊り下げられ、そして、非端部において長さ調節可能な斜材7によって下方から支えられている。この斜材7の下端部は、主桁1のウェブ1aの下端部と下部フランジ1cとの隅部に取付角度自在に取り付けられている。大引き材6の非端部には、斜材7の上端を取付角度自在に連結できる取付金具13が3個設けられており、そのうちの1個に斜材7の上端が取り付けられている。また、主桁1のウェブ1aの上端部にはチェーン8が取り付けられ、型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって発生する外向き(図では右向き)の水平力を打ち消すべく、斜材7を引っ張っている。
そして、大引き材6の他端部(図では右端部)の近傍の上側には作業員14が作業をするための足場板15が設置されている。また、作業員14の転落防止のために、大引き材6の他端部(図では右端部)には手摺柱16と手摺材17が取り付けられている。
特許文献1には、鋼製の主桁からの型枠の張り出し部の寸法を拡大するとともに、コンクリート床版の重量化に対応できるようにした支保工が提案されている。これは、型枠の張り出し部の下側に配置される大引き材を長さ調節可能にするとともに、その大引き材の下に設けた逆山形のトラス構造を介して、長さ調節可能な斜材で支えるものである。
図3は、特許文献1において提案された、主桁の外側に設置された支保工の側面図である。
コンクリート床版2の型枠の張り出し部3aの下側には、根太材9を介して、長さ調節可能な大引き材6の一端部(図では左端部)が、受け金具21を介して、鋼製の主桁1のウェブ1aの上端部の近傍の側部に固定されている。ここでは、ウェブ1aを貫通するボルト挿入用の孔が横方向に穿たれており、ここにボルト22とナットでねじ締めすることによって、受け金具21がウェブ1aの上端部の近傍に固定される。型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって外向き(図では右向き)の水平力が発生するが、この外向きの水平力はボルト22とナットとでねじ締めして得られる内向き(図では左向き)の水平力によって打ち消されるので、大引き材の横方向への動きは拘束される。
そして、この長さ調節可能な大引き材6は、角筒状の外筒部材6aと、この外筒部材6a内に横方向に移動可能に嵌挿される内筒部材6bとからなる。外筒部材6aと内筒部材6bのそれぞれ内側の端部には、所要間隔で複数個の孔が穿たれており、両部材6a、6bに穿たれた孔からそれぞれ1個を選択し、ピン(図示せず)を貫通させて挿着して、両部材6a、6bの位置を固定することによって、大引き材6の長さを所定長さに調節することができるものである。
また、この長さ調節可能な大引き材の外筒部材6aの左端部近傍と内筒部材6bの非端部には、それぞれ、固定長さの斜材11及び長さ調節可能な斜材7の上端部がピン結合されるとともに、固定長さの斜材11及び長さ調節可能な斜材7のそれぞれの下端部同士がブラケット18にピン接合されることによって、逆山形のトラス構造が形成されている。なお、逆山形のトラス構造を構成する長さ調節可能な斜材7の上端部は内筒部材6bに設けられた取付金具13に、取付角度自在に取り付けられている。さらに、この逆山形のトラス構造は、外筒部材6aの右端部近傍とブラケット18とをつなぐ補強杆19によって補強されている。
そして、この長さ調節可能な大引き材6と固定長さの斜材11と長さ調節可能な斜材7とで構成される逆山形トラス構造の頂部にあるブラケット18は、長さ調節可能な斜材7によって下方から支えられている。逆山形トラス構造を介して、この長さ調節可能な大引き材6を下方から支える長さ調節可能な斜材7の下端部は、主桁1のウェブ1aの下端部と下部フランジ1cとの隅部に設けられた取付金具13に、取付角度自在に取り付けられている。
図4は、図3で示された特許文献1において提案された支保工の一部拡大図であり、固定構造として受け金具方式を採用したものである。
鋼製の主桁1のウェブ1aの上端部の近傍の側面に、受け金具21を横方向の取り付けボルト22及びナット27で固定する。
受け金具21は、取付基板21aの前面下部に台板21bを突設するとともに、この台板21bより上方の左右両側に側板21cをそれぞれ突設したものであって、取付基板21aにはボルト挿通孔29を上下に間隔をおいて複数設けている。そして、台板21b上に固着ナット23を溶接により固着し、また2つの側板21cのそれぞれには縦長孔25を設けている。また、主桁1のウェブ1aの上端部の近傍には、横方向の取り付けボルト22を挿通させる横ボルト挿通孔30が穿たれている。
この受け金具21の取り付けにあたっては、取付基板21aに穿たれたボルト挿通孔29のうちの一つと、主桁1のウェブ1aの上端部の近傍に穿たれたボルト挿通孔30とに、取り付けボルト22を通してナット27で締め付けることにより、この受け金具21を主桁1のウェブ1aの上端部の近傍の所要位置に取り付けるとともに固定する。
このようにして主桁1のウェブ1aの上端部の近傍の側面に取り付けた受け金具21の2つの側板21cの間に、大引き材6の外筒部材6aの左端部を挿入する。大引き材6の外筒部材6aの両側面の左端部には通し孔(図示せず)が穿たれており、受け金具21の側板21cの両方に設けた縦長孔25と、大引き材6の外筒部材6aの両側面の左端部に設けた通し孔(図示せず)とに通しボルト26を挿し通した後に、ナット(図示せず)で抜け止めして、大引き材6の外筒部材6aの左端部の横方向の動きを拘束する。
そして、受け金具21の台板21b上に固着された固着ナット23に、その下方より押し上げボルト24を螺入して、この押し上げボルト24の先端部でもって大引き材6の外筒部材6aの左端部の下面を支持する。そして、この状態で押し上げボルト24を上下させることによって、大引き材6の外筒部材6aの左端部の高さレベルを調整することができる。
なお、ここでは、受け金具21の取り付け時に主桁1のウェブ1aと接触する取付基板21aの背面には、主桁1の塗装面を保護する目的で、ネオプレンゴム等のシート材31が貼着されている。また、押し上げボルト24の上端部が当たる外筒部材6aの外端部下面には当て板32が取り付けられている。
また、大引き材6の外筒部材6aの左端部の上面には、主桁1の上部フランジ部1bの下面に押し当てる突っ張り材(当てボルトともいう。)33が突設され、その上端部には、上部フランジ部1bの下面に吸着するような形状の吸着カップ34が取り付けてある。これは、大引き材6の先端に作業員14等の作業荷重がかかることによって大引き材の端部の跳ね上がりが発生するのを防止するために設置されている。その結果、大引き材の端部の上下方向の動きが拘束されるので、大引き材の端部がガタつくのを防止することができる。
図5は、特許文献1において提案された他の実施形態にかかる支保工の一部拡大図であり、固定構造として、受け金具方式に代えて、吊りボルト方式を採用したものである。
鋼製の主桁1の上部フランジ1bの先端部の上面に溶接によって固着したフランジ接続ピース12より吊りボルト10を垂下し、この吊りボルト10を大引き材6の外筒部材6aの左端部に縦方向に穿ったボルト挿通孔35に貫通させて、この吊りボルト10の下端部に受けナット37をねじ止めすることによって、大引き材6の外筒部材6aの左端を支持するようにしている。
この吊りボルト方式の場合、吊りボルト10には型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって外向き(図では右向き)の水平力が発生することから、大引き材6の外筒部材6aの左端部を、引張金具38を介して主桁1のウェブ1aの上端部に取り付けることで、吊りボルト10にかかる外向き(図では右向き)の水平力を打ち消している。この引張金具38の右端部は、大引き材6の外筒部材6aの左端部にボルト止めされ、引張金具38の左端部は主桁1のウェブ1aと上部フランジ部1bとの隅部に固着された取付板39にボルト止めされている。
また、大引き材6の外筒部材6aの左端部の上面には、主桁1の上部フランジ部1bの下面に押し当てる突っ張り材33が突設され、その上端部には、上部フランジ部1bの下面に吸着するような形状の吸着カップ34が取り付けてある。これは、大引き材6の先端に作業員14等の作業荷重がかかることによって大引き材の端部の跳ね上がりが発生するのを防止するために設置されている。その結果、大引き材の端部の上下方向の動きが拘束されるので、大引き材の端部がガタつくのを防止することができる。
特開2004−60312号公報
しかしながら、図1、図2及び図5に示される支保工は、いずれも、大引き材6の主桁側の一端部が、鋼製の主桁の上部フランジ部1bに取り付けられた吊りボルト10によって吊り下げられている。しかし、吊りボルト10には型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって外向きの水平力が発生する。このままでは、大きなモーメントが発生して、吊りボルト10が曲がるおそれがあるので、図1〜2に示される支保工においては、主桁1のウェブ1aの上端部にはチェーン8が取り付けられ、型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって発生する外向きの水平力を打ち消すべく、長さ調節可能な斜材7を引っ張っている。また、図5に示される支保工においては、大引き材6の外筒部材6aの左端部を、引張金具38を介して主桁1のウェブ1aの上端部に取り付けることで、吊りボルト10にかかる外向きの水平力を打ち消している。
次に、図3及び図4に示される支保工は、大引き材6の主桁側の一端部(図では左端部)が、受け金具21を介して、鋼製の主桁1のウェブ1aの上端部の近傍に横方向の取り付けボルト22とナットによって固定されている。型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって外向き(図では右向き)の水平力が発生するが、横方向の取り付けボルト22の長さ方向に引張力がかかるだけであるので、この取り付けボルト22が曲がるおそれはない。また、型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって下向きの垂直力が発生して、横方向の取り付けボルト22には剪断力がかかるだけであるから、この取り付けボルト22が曲がるおそれはない。
しかしながら、大引き材6の先端に作業員14等の作業荷重がかかることによって大引き材の端部の跳ね上がりが発生し、その結果、大引き材6の端部がガタつくようになる。これを防止するために、大引き材6の外筒部材6aの左端部の上面には、主桁1の上部フランジ部1bの下面に押し当てる突っ張り材33を突設し、その上端部には、上部フランジ部1bの下面に吸着するような形状の吸着カップ34を取り付けることによって、大引き材6の端部の上下方向の動きを拘束している。
この大引き材6の端部の跳ね上がりは、図5に示される支保工においても発生し、その結果、大引き材の端部がガタつくようになる。これを防止するために、大引き材6の外筒部材6aの左端部の上面には、主桁1の上部フランジ部1bの下面に押し当てる突っ張り材33を突設し、その上端部には、上部フランジ部1bの下面に吸着するような形状の吸着カップ34を取り付けることによって、大引き材の端部の上下方向の動きを拘束している。
このように、従来例に係る支保工は、大引き材の一端部を保持するために、吊りボルト方式を採用した場合には、吊りボルトの曲がりを防止すべく、型枠の張り出し部にかかる荷重によって発生する外向きの水平力に対抗するために、調整の面倒な吊りチェーンを設けるか又は引張金具を設ける必要がある。
そして、従来例に係る支保工は、大引き材の一端部を保持するために、受け金具方式を採用した場合には、受け金具は横方向の取り付けボルトとナットによって固定されるから、外向きの水平力によってこの取り付けボルトが曲がるおそれはないものの、大引き材の端部の跳ね上がりが発生し、その結果、大引き材の端部がガタつくようになる。これを防止するために、突っ張り材を突設する必要がある。
さらに、従来例に係る支保工は、作業員が大引き材の他端部の上面に設置された足場板の上で作業することになるが、橋梁が掛けられる道路等の断面傾斜が急であるときは、大引き材の傾斜角度もそれに応じて急になる。したがって、作業員が作業する足場板の踏面角度も急になるから、足場板の上で作業がし難くなるという問題に加えて、作業員の安全上の問題がある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、吊りチェーンと突っ張り材のいずれをも不要とする支保工を提供することを第一の目的とする。さらに、必要に応じて作業員が作業する足場板の踏面を略水平に保持できる支保工を提供することを第二の目的とする。
本発明者は、吊りチェーンと突っ張り材のいずれも不要とする支保工について、種々に検討した。さらに、作業員が作業する足場板の踏面を略水平に保持できる支保工についても、種々に検討した。その結果、次の(a)〜(j)の知見を得た。
(a) 鋼製の主桁の上部フランジ部より張り出して設けられるコンクリート床版用型枠の張り出し部が大型化すると、その分、この型枠の張り出し部の下側に横方向に配置する大引き材も大型化し、重量も大きくなる。しかしながら、大引き材が大型化しても、コンクリート床版用型枠の張り出し部を支持するための支保工としては、型枠の張り出し部の下側に横方向に配置される大引き材とこの大引き材を斜め下方から支える長さ調節可能な斜材から構成し、大引き材の一端部を受け金具を介して主桁に固定するとともに、この大引き材を斜め下方から斜材で支えるという基本的なコンセプトは維持してよい。
また、この支保工の基本的なコンセプトは、鋼製の主桁の上部フランジ部より張り出して設けられるコンクリート床版用型枠の張り出し部を支持するための支保工だけでなく、コンクリート製の主桁の上部フランジ部より張り出して設けられるコンクリート床版用型枠の張り出し部を支持するための支保工にも適用することができる。
(b) そして、大引き材を斜め下方から支える長さ調節可能な斜材は、その上端部は大引き材の他端部又は非端部に取付角度自在に連結され、かつ斜材の下端部は主桁のウェブ部又は下部フランジ部に取付角度自在に取り付けられるのが好ましい。斜材の長さを可変とする手法に特に制限はなく、たとえば、中空の外筒部材とこの外筒部材の中にスライド可能に挿入される内筒部材から構成してなる斜材とすることができる。あるいは、ねじジャッキ又は油圧ジャッキを斜材の途中に組み込んで、長さ可変としてもよい。さらには、これらを組み合わせて、斜材の長さを可変としてもよい。また、大引き材は固定長さであってもよいし、又は可変長さであってもよい。大引き材を可変長さとした場合には、図3にみるごとく、逆山形トラス構造を介して、長さ調節可能な斜材で大引き材を斜め下方から支えてもよい。
(c) ボルトは曲げ応力に弱いが剪断応力には強いことを考慮すると、大引き材の一端部を主桁に取り付ける際には、大引き材の端部を主桁と離間させることになる吊りボルトは用いるべきではなく、主桁と密着させてボルトによって固定できる受け金具を用いるべきである。
この際、大引き材の端部を取り付ける受け金具を主桁と密着させるべき受け金具は、主桁のウェブの上端部の側面に密着して固定する場合と、主桁の上部フランジの下面に密着して固定する場合の2通りが考えられる。
主桁のウェブの上端部の側面に受け金具を密着して固定する場合には、型枠の張り出し部にかかる荷重によって外向きの水平力が発生するが、横方向にボルトが取り付けられるので、取り付けボルトの長さ方向に引張力がかかるだけであるので、この取り付けボルトが曲がるおそれはない。また、型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって下向きの垂直力が発生して、横方向の取り付けボルトには剪断力がかかるだけであるから、この取り付けボルトが曲がるおそれはない。
また、主桁の上部フランジの下面に密着して固定する場合には、型枠の張り出し部にかかる荷重によって外向きの水平力が発生しても、縦方向にボルトが取り付けられるので、取り付けボルトには剪断力がかかるだけであるから、この取り付けボルトが曲がるおそれはない。また、型枠の張り出し部3aにかかる荷重によって下向きの垂直力が発生するが、取り付けボルトの長さ方向に引張力がかかるだけであるので、この取り付けボルトが曲がるおそれはない。
(d) このように、大引き材の端部は主桁に密着させた受け金具に取り付けることができる。そして、受け金具を主桁に取り付けるための取り付けボルトは、主桁と密着させるため、横方向と縦方向のいずれで用いても、曲がるおそれはない。
受け金具をボルトによって主桁に取り付ける際には、横方向又は縦方向のいずれで用いられるにせよ、主桁に予め取り付けられた又は埋め込まれたボルトにナットを締め付けてもよいし、又は、主桁に予め取り付けられた又は埋め込まれたナットにボルトを螺入して締め付けてもよい。なお、主桁が鋼製のときは、ボルトの挿入孔を主桁のウェブの上端部を横方向に穿つか又は主桁の上部フランジに縦方向に穿つことになる。また、主桁がコンクリート製のときは、アンカーボルト又はアンカーナットを主桁のウェブの上端部に横方向に埋め込むか又は主桁の上部フランジに上方向に埋め込むことになる。
ただし、この支保工は、型枠の張り出し部へのコンクリート打設後は解体されて撤去されることを考慮すると、主桁に取り付けられた又は埋め込まれたナットにボルトを締め付ける手法を採用するのが好ましい。この場合、主桁に取り付けられた又は埋め込まれたナットは主桁に残るが、このナットに螺入したボルトは除去できるから、支保工の撤去後には主桁からの突出物がなくなるから、景観面から好ましいからである。なお、コンクリート製主桁に取り付けられる又は埋め込まれるナットとしては、インサートナットを用いるのが好ましい。
(e) 次に、大引き材の端部の跳ね上がりの発生の防止に関しては、主桁のウェブの上端部の側面に密着して固定する受け金具方式による固定構造が図3及び4に示されている。これは、受け金具21の側板21cの両方に設けた縦長孔25と、大引き材6の左端部に設けた通し孔(図示せず)とに通しボルト26を挿し通した後に、ナット(図示せず)で抜け止めして、大引き材6の左端部の横方向の動きを拘束するものである。しかしながら、大引き材6の左端部の縦方向の動きを拘束していないために、大引き材の端部の跳ね上がりが発生することが分かった。
すなわち、図3及び4で示される受け金具方式による固定構造では、受け金具21の側板21cには縦長孔25が設けられているがために、大引き材6の左端部の横方向の動きは拘束するが、縦方向の動きは拘束していないのが、その理由である。
ここで、本発明者らは、受け金具方式による固定構造にあっては、その側板に設けられる縦長孔の角度を傾斜させれば、大引き材6の左端部の横方向の動きだけでなく、縦方向の動きをも拘束することができることに思い至り、もって大引き材の端部の跳ね上がりの発生を防止することができることを見出した。具体的には、主桁のウェブの上端部の側面に密着して固定する受け金具方式による固定構造において、受け金具21の側板21cに縦長孔25を設けることに代えて、上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜角度θだけ傾斜してなる斜め縦長孔を設けることによって、大引き材6の左端部の横方向の動きを拘束するだけでなく、縦方向の動きをも拘束することができることを見出した。
(f) 本発明者らは、主桁のウェブの上端部の側面に密着して固定する受け金具方式による固定構造において、上端が主桁方向に傾斜角度θだけ傾斜してなる斜め縦長孔を設けるとの着想を、主桁の上部フランジの下面に密着して固定する受け金具方式による固定構造にも適用したところ、大引き材6の左端部の横方向の動きと縦方向の動きの両方を拘束することによって、大引き材の端部の跳ね上がりの発生を防止することができることに加えて、縦方向に取り付けられるボルトの長さ方向にかかる引抜力を軽減させることができることを見出した。
なお、この受け金具方式による固定構造では、斜め縦長孔と、大引き材の左端部に設けた通し孔との間に通しボルトを挿し通し、ナットで固定する代わりに、Lピンなどのピンを用いて、大引き材の左端部の横方向の動きと縦方向の動きを拘束してもよい。
(g) まず、主桁の上部フランジの下面に密着して固定する受け金具方式による固定構造における大引き材の端部の跳ね上がりの発生状況について、受け金具の側板に縦長孔(θ=0゜)を設けた場合と斜め縦長孔(θ=30゜)を設けた場合とでどのように異なるかを検証してみる。ここでは、通しボルトに代えて、Lピンを用いた。
図6は、受け金具の側板に縦長孔(θ=0゜)を設けた場合の大引き材の端部の跳ね上がりの発生状況を示す。コンクリート打設前には大引き材の先端に作業員14等の作業荷重が作用するので、大引き材と大引き材を下方から支える斜材との交差部を支点として、跳ね上がり(上向き)の力F2Vが発生する。これに対して、跳ね上がりに抵抗する力は、F2H×(摩擦係数)である。図示されるように、F2V>F2H×(摩擦係数)であるから、跳ね上がりが発生することがわかる。
図7は、受け金具の側板に縦長孔(θ=30゜)を設けた場合の大引き材の端部の跳ね上がりの発生状況を示す。コンクリート打設前には大引き材の先端に作業員14等の作業荷重が作用するので、大引き材と大引き材を下方から支える斜材との交差部を支点として、跳ね上がり(上向き)の力F2Vが発生する。これに対して、跳ね上がりに抵抗する力は、F2H×(摩擦係数)である。図示されるように、F2V<F2H×(摩擦係数)であるから、跳ね上がりは発生しないことがわかる。
(h) このように、受け金具方式による固定構造を採用し、その側板に設けられる縦長孔に代えて、その上端を主桁のウェブ中心方向に角度θだけ傾斜させてなる斜め縦長孔を設けることによって、F2V<F2H×(摩擦係数)であれば、大引き材の端部の跳ね上がりの発生を防止することができ、もって、大引き材6の左端部がガタ付くことがないことが分かった。
そして、本発明者らは、F2V<F2H×(摩擦係数)となる条件について種々に検討した結果、斜め縦長孔に挿し通されたピンの節点と大引き材を斜め下方から支える長さ調節可能な斜材の下端との間の垂直距離Hによって多少の変動はあるが、支保工として一般的によく用いられる垂直距離H=1800mmのときは、上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔の傾斜角度をθ=25゜より大きくするのが好ましいことが分かった。また、傾斜角度がθ=45°を上回ると長孔が横向きになってきて縦長孔本来の目的である大引き材6の高さレベル調整機能が損なわれるため、斜め縦長孔の傾斜角度はθ=25〜45°とするのが好ましいことが分かった。
(i) 次に、主桁の上部フランジの下面に密着して固定する受け金具方式による固定構造において、縦方向に取り付けられるボルトの長さ方向にかかる引抜力を軽減させることができることについて、説明する。なお、ここでは、コンクリート製の主桁を例にとって説明するが、鋼製の主桁にも適用できることはいうまでもない。
図8は、コンクリート製の主桁の上部フランジの下面に密着して固定する受け金具方式による固定構造の支保工において、受け金具に掛かる水平荷重と鉛直荷重を示している。
ここで、Pは斜材の上端に掛かる荷重(kN)、Lは斜材の上端に掛かる荷重Pが作用する位置(cm)、Hは斜め縦長孔に挿し通されたピンの節点と斜材の下端との間の垂直距離(cm)である。
このとき、斜材の上端に作用するモーメントMは
M=P×L(kN・cm)
であり、そして、受け金具の斜め縦長孔に挿し通されたピンの節点に作用する荷重は、水平方向の荷重PHと鉛直方向の荷重PVとに分けると、それぞれ、
PH=M/H(kN)
PV=P(kN)
となる。
図9は、受け金具をコンクリート製の主桁の上部フランジの下面に密着して固定する受け金具方式として、アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が75mm偏心している場合に、受け金具の斜め縦長孔に挿し通されたピンの節点に作用する水平方向の荷重PHと鉛直方向の荷重PVを示している。
このようにアンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が75mm偏心している場合には、水平方向の荷重PHにより作用するモーメントと鉛直方向の荷重PVにより作用するモーメントが互いに打ち消し合うため、アンカーボルトに作用する荷重は小さくなる。
図10は、(a)が水平方向の荷重PHについて、そして、(b)が鉛直方向の荷重PHについて、それぞれ、アンカーボルトを基点として回転する方向を表す。
(a)においてはアンカーボルトを基点として反時計回りに回転し、そして、(b)においてはアンカーボルトを基点として時計回りに回転するので、両モーメントが相殺し合って、アンカーボルトに作用する荷重は小さくなることが分かる。
次に、アンカーボルトに作用する荷重について、検証してみる。
水平方向の荷重PHを10kN、鉛直方向の荷重PVを2kN、そして、アンカーボルトからピン位置までの鉛直距離hを10cmとすると、
反時計回りに作用するモーメントM1は、水平方向の荷重PHによって発生し、その値は次のとおりになる。
M1=PH×h=10kN×10cm=100kN・cm
そして、時計回りに作用するモーメントM2は、鉛直方向の荷重PVによって発生し、その値は、次のとおりになる。
M2=PV×7.5cm=2kN×7.5cm=15kN・cm
M1>M2であるから反時計回りのモーメントが発生するが、時計回りのモーメントの分だけ相殺されるので、反時計回りのモーメントMの値は、次のとおりになる。
M=M1−M2=100−15=85kN・cm
この相殺後のモーメントMによってアンカーボルトに作用する引抜力P1は次のとおりとなる。
P1=M/14.5=85/14.5=5.86kN
そして、アンカーボルトには、もともと鉛直方向の荷重PV(=P(kN))が掛かっているから、アンカーボルトに作用する総引抜力ΣPは次のとおりになる。
ΣP=PV+P1=2+5.86=7.86kN
比較のために、受け金具をコンクリート製の主桁の上部フランジの下面に密着して固定する受け金具方式として、アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が偏心していない場合についても検証する。
図11は、アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が偏心していないこと、すなわち、アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が同一の鉛直線上にあることを示している。
この場合のアンカーボルトに作用する荷重について、検証してみる。
図10と同様に、水平方向の荷重PHを10kN、鉛直方向の荷重PVを2kN、そして、アンカーボルトからピン位置までの鉛直距離hを10cmとすると、
反時計回りに作用するモーメントM1は、水平方向の荷重PHによって発生し、その値は次のとおりになる。
M1=PH×h=10kN×10cm=100kN・cm
しかしながら、次のとおり、鉛直方向の荷重PVによって時計回りに作用するモーメントM2は発生しない。すなわち、
M2=PV×0cm=2kN×0cm=0kN・cm
M2=0kN・cmであるから、反時計回りのモーメントMの値は、相殺されることがないので、次のとおりになる。
M=M1−M2=100−0=100kN・cm
この反時計回りのモーメントMによってアンカーボルトに作用する引抜力P1は次のとおりとなる。
P1=M/14.5=100/14.5=6.9kN
そして、アンカーボルトには、もともと鉛直方向の荷重PV(=P(kN))が掛かっているから、アンカーボルトに作用する総引抜力ΣPは次のとおりになる。
ΣP=PV+P1=2+6.9=8.9kN
このように、アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が偏心している場合には、アンカーボルトに作用する引抜力を小さくすることができる。ただし、アンカーボルトから主桁のウェブ中心までの距離が、ピンから主桁ウェブ中心までの距離よりも小さいことが必要となる。アンカーボルトから主桁のウェブ中心までの距離が、ピンから主桁ウェブ中心までの距離よりも大きい場合には、アンカーボルトに作用する引抜力は、逆に大きくなってしまう。
(j) さらに、橋梁が掛けられる道路等の断面傾斜が急である場合には、大引き材の傾斜角度もそれに応じて急になり、作業員が作業する足場板の踏面角度も急になるという問題点に関しては、橋梁が掛けられる道路等の断面傾斜の角度にかかわらず、足場板の踏面を略水平に保つことができれば解決する。したがって、必要に応じて、大引き材の端部に足場材を取付角度調節可能に連結し、この足場材の上に足場板を設置すればよい。
足場材を取付角度調節可能に連結する方法としては、例えば、複数個の角度調整孔を有し、足場材及び/又は大引き材に対して回転自在なつなぎ材を介して、大引き材の先端に足場材を連結し、その上に設置された足場板の踏面が略水平になるように角度調整孔の一つを選択してピン止めすればよい。
本発明にかかる支保工は、これらの知見に基づいて完成したものであり、その要旨は次の(1)〜(8)に記載したとおりである。
(1)主桁の上部フランジ部より張り出して設けられる床版張り出し部のコンクリート型枠を支持するための、型枠の張り出し部の下側に配置される大引き材とこの大引き材を斜め下方から支える長さ調節可能な斜材からなる支保工であって、上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔を有し、かつ、主桁の上部フランジ部の下面に密着して固定されている受け金具を介して、この斜め縦長孔と大引き材の一端部に設けられた通し孔との間に横方向に通しボルト又はピンが挿通されて、大引き材が受け金具に取り付けられていることを特徴とする支保工。
(2) 斜め縦長孔の傾斜角度θ=25〜45゜であることを特徴とする、上記(1)の支保工。
(3) 受け金具は、主桁に取り付けられた又は埋め込まれたボルトにナットを締め付けることによって、主桁の上部フランジ部の下面に密着して固定されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)の支保工。
(4) 主桁に取り付けられた又は埋め込まれたボルトから主桁のウェブ中心までの距離が、通しボルト又はピンから主桁ウェブ中心までの距離よりも小さいことを特徴とする、上記(3)の支保工。
(5) 受け金具は、主桁に取り付けられた又は埋め込まれたナットにボルトを締め付けることによって、主桁の上部フランジ部の下面に密着して固定されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)の支保工。
(6) 主桁に取り付けられた又は埋め込まれたナットから主桁のウェブ中心までの距離が、通しボルト又はピンから主桁ウェブ中心までの距離よりも小さいことを特徴とする、上記(5)の支保工。
(7) 受け金具は、その下部に固着された固着ナットと、この固着ナットに螺合できる押し上げボルトを有していることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかの支保工。
(8) 大引き材の他端部に足場材が取付角度調節可能に連結されていることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかの支保工。
本発明に係る支保工は、調整の面倒な吊りチェーンと突っ張り材のいずれをも不要とするものであって、大引き材の端部を主桁の上部フランジ部の下面に密着させてボルトによって固定できる受け金具を用いるから、型枠の張り出し部にかかる荷重によって発生する外向きの水平力に対抗できるとともに、受け金具は上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔を有するから、大引き材の端部の跳ね上がりの発生を防止できることに加えて、縦方向に取り付けられるボルトの長さ方向にかかる引抜力を軽減させることができる。
また、必要に応じて、大引き材の端部に足場材を取付角度調節可能に連結することができるから、橋梁が掛けられる道路等の断面傾斜が急である場合には、この足場材の上に足場板を設置することで、作業員が作業する足場板の踏面を略水平に保つことができ、作業員の安全を図ることができる。
本発明に係る支保工を、以下に図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図12は、コンクリート製の主桁の外側に設置された、本発明に係る支保工の一例(側面図)であり、図13は図12で示された大引き材の主桁側の端部近傍の一部拡大図である。
コンクリート製の主桁1の上部フランジ1bの下面にはインサートナット52が縦方向に埋め込まれており、このインサートナット52に縦方向に取り付けボルト22をねじ締めすることによって、主桁1の上部フランジ部1bの下面に密着して受け金具21が固定されている。この受け金具21の両側面には、上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔53が、それぞれ設けられている。なお、斜め縦長孔53の傾斜角度θは30゜である。
一方、コンクリート床版2の型枠の張り出し部3aの下側には、根太材9を介して、大引き材6が配置されている。この大引き材6の端部の両側面には、それぞれ接続板41が溶接されている。これらの接続板41には、それぞれ通し孔(図示せず)が穿たれており、これらの接続板41はいずれも受け金具21の内部に収容されたのち、受け金具に設けられた斜め縦長孔53と接続板41に穿たれた通し孔に、1個のLピン54を挿し通すことによって、大引き材6の端部が浮き上がらないように受け金具21に保持する。
また、この受け金具21の下部には、高さレベル調節金具55が溶接されており、高さレベル調節金具55の下部に固着された固着ナット23と、この固着ナット23に螺合されて上下移動可能な押し上げボルト24を備えている。一方、この大引き材6の端部には、台座金具56が横方向に溶接されており、この台座金具56をこの押し上げボルト24の上面に差し込むことによって、大引き材6の端部の高さレベル調節を調整することができる。
そして、大引き材6の非端部には取付金具13が設けられ、ここに長さ調節可能な斜材7の上端が取付角度自在に取り付けられている。この長さ調節可能な斜材7は、中空の外筒部材7aとこの外筒部材の中にスライド可能に挿入される内筒部材7bから構成されており、両部材7a、7bに穿たれた孔からそれぞれ1個を選択し、ピン(図示せず)を貫通させて挿着して、両部材7a、7bの位置を固定することで長さ調節可能となっている。さらに、この斜材7はねじジャッキ36を斜材7の途中に組み込んでおり、このねじジャッキ36を操作することによっても長さ調節可能となっている。
また、長さ調節可能な斜材7の下端には取付角度自在の取付金具13が接続されている。一方、主桁1の下部フランジ1cの上面にはインサートナット52が斜め方向に埋め込まれており、ここに長さ調節可能な斜材7の下端に設けられた取付金具13を取り付けボルト22で固定することによって、大引き材6を下方から支えている。
さらに、大引き材6の他端部には、足場材20が足場材取付金具58を介して連結されている。足場材20の上には作業員14が作業をするための足場板15が設置されているが、この足場材取付金具58は、足場材20を大引き材6の他端部に対して取付角度の調節ができるようにすることによって、足場材20の上に設置された足場板15の踏面を略水平に保つことができるようにするためのものである。また、作業員14の転落防止のために、大引き材6の他端部には手摺柱16と手摺材17が取り付けられている。
図14に、本発明に係る大引き材の一例を示す。(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は左側面図、そして、(d)はA−A矢視断面図である。
この大引き材6は断面矩形の管であって、その一端部の両側面には、それぞれ、接続板41が溶接されている。大引き材6の一端部の両側面に溶接されてなる接続板41には、それぞれ通し孔42が穿たれている。なお、この2つの接続板41はいずれも受け金具21の内部に収容されたのち、受け金具21に設けられた2つの斜め縦長孔53と2つの接続板41のそれぞれに穿たれた通し孔42に、1個のLピン(図示せず)を挿し通すことによって、大引き材6の一端部が浮き上がらないように受け金具21に大引き材6が保持される。
また、この大引き材6の一端部には、台座金具56が横方向に溶接されている。なお、この台座金具56を高さレベル調節金具55の押し上げボルト24の上面に差し込むことによって、大引き材6の一端部の高さレベルが調節される。
また、この大引き材6の非端部には、取付金具13が設けられており、ここに斜材7の上端部が取付角度自在に取り付けられる。
さらに、この大引き材6の他端部(図では右端部)には、左から順に3組のLピン通し孔61と1組のボルト通し孔62が穿たれている。なお、この大引き材6の他端部には、足場材20が溶接によって接合された足場材取付金具58が取り付けられる(図12参照)。ここでは、この大引き材6の他端部に穿たれたボルト通し孔62にボルトを通し、ナットで締め付けることによって、足場板取付金具58を大引き材6の他端部に接続するとともに、3組のLピン通し孔61のうちの1組のLピン通し孔を選択することによって、足場材20を略水平に保つことができるので、その上に設置された足場板15の踏面を略水平に保つことができる。したがって、橋梁が掛けられる道路等の断面傾斜が急である場合には、大引き材の端部に足場材を取付角度調節可能に連結し、この足場材の上に足場板を設置することによって、作業員の転落を防止し、その安全を図ることができる。
図15により、本発明に係る受け金具を用いて大引き材6の一端部をコンクリート製の主桁の上部フランジ部の下面に保持する際の手順を説明する。(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
この受け金具21は、断面がコの字形を有し、両側面にはそれぞれ、θ=30゜の斜め縦長孔53が設けられている。そして、受け金具21の上面には上部補強座金60が溶接Wによって接合され、上部補強座金60と受け金具21の上面を貫く形で縦方向にボルト挿通孔35が穿たれている。コンクリート製の主桁の上部フランジ部の下面に埋め込まれたインサートナットに、受け金具21のボルト挿通孔35を位置合わせした後、取り付けボルト22をねじ締めすることによって、主桁に受け金具21が固定される。
なお、受け金具21の内部に大引き材6の端部の両側面に溶接された接続板41を収容した後、受け金具21の両側面に設けられた斜め縦長孔53と、大引き材6の端部の両側面に溶接された接続板41のそれぞれに穿たれた通し孔(図示せず)に、1個のLピン54を挿し通すことによって、大引き材6の端部が浮き上がらないようにすることができた。
また、この受け金具21の下部には、断面がコの字形の高さレベル調節金具55が溶接Wによって接合されている。そして、この高さレベル調節金具55の下部の外側には下部補強座金59が溶接Wによって接合され、下部補強座金59と高さレベル調節金具55の下部を貫く形で縦方向にボルト挿通孔35が穿たれている。そして、高さレベル調節金具55の下部の内側には固着ナット23が固着され、この固着ナット23に螺合されて上下移動可能な押し上げボルト24を備えている。
なお、この押し上げボルト24の上面に大引き材6の端部に横方向に溶接された台座金具56を差し込み、押し上げボルト24を上下移動させることによって、大引き材6の端部の高さレベル調節を調整することができる。
このように、大引き材の端部はコンクリート製の主桁の上部フランジ部の下面に密着させてボルトによって固定できる受け金具に取り付けられていることから、型枠の張り出し部にかかる荷重によって発生する外向きの水平力に対抗できるとともに、受け金具は上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔を有するから、大引き材の端部の跳ね上がりの発生を防止できることに加えて、縦方向に取り付けられるボルトの長さ方向にかかる引抜力を軽減させることができる。
図16は、鋼製の主桁の外側に設置された、本発明に係る支保工の他の例(側面図)であり、図17は図16で示された大引き材の主桁側の端部近傍の一部拡大図である。
受け金具21は、鋼製の主桁1の上部フランジ1bの下面に、フランジ上面に配されるインサートナット52に縦方向に取り付けボルト22をねじ締めすることによって、密着するように固定されている。この受け金具21の両側面には、上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔53が、それぞれ設けられている。なお、斜め縦長孔53の傾斜角度θは30゜である。
一方、コンクリート床版2の型枠の張り出し部3aの下側には、根太材9を介して、大引き材6が配置されている。この大引き材6の端部の両側面には、それぞれ接続板41が溶接されている。これらの接続板41には、それぞれ通し孔(図示せず)が穿たれており、これらの接続板41はいずれも受け金具21の内部に収容されたのち、受け金具に設けられた斜め縦長孔53と接続板41に穿たれた通し孔に、1個のLピン54を挿し通すことによって、大引き材6の端部が浮き上がらないように受け金具21に保持する。
また、この受け金具21の下部には、高さレベル調節金具55が溶接されており、高さレベル調節金具55の下部に固着された固着ナット23と、この固着ナット23に螺合されて上下移動可能な押し上げボルト24を備えている。一方、この大引き材6の端部には、台座金具56が横方向に溶接されており、この台座金具56をこの押し上げボルト24の上面に差し込むことによって、大引き材6の端部の高さレベル調節を調整することができる。
そして、大引き材6の非端部には取付金具13が設けられ、ここに長さ調節可能な斜材7の上端が取付角度自在に取り付けられている。この長さ調節可能な斜材7は、中空の外筒部材7aとこの外筒部材の中にスライド可能に挿入される内筒部材7bから構成されており、両部材7a、7bに穿たれた孔からそれぞれ1個を選択し、ピン(図示せず)を貫通させて挿着して、両部材7a、7bの位置を固定することで長さ調節可能となっている。さらに、この斜材7はねじジャッキ36を斜材7の途中に組み込んでおり、このねじジャッキ36を操作することによっても長さ調節可能となっている。
また、長さ調節可能な斜材7の下端には取付角度自在の取付金具13が接続されている。そして、主桁1のウェブ1aの下端部と下部フランジ1cとの隅部に取り付けボルト22とナット27によって、この取付金具13を取付角度自在に固定することによって、大引き材6を下方から支えている。
さらに、大引き材6の他端部には、足場材20が足場材取付金具58を介して連結されている。足場材20の上には作業員14が作業をするための足場板15が設置されているが、この足場材取付金具58は、足場材20を大引き材6の他端部に対して取付角度の調節ができるようにすることによって、足場材20の上に設置された足場板15の踏面を略水平に保つことができるようにするためのものである。また、作業員14の転落防止のために、大引き材6の他端部には手摺柱16と手摺材17が取り付けられている。
この大引き材6は、実施例1で用いたものと同じである。すなわち、断面矩形の管であって、その一端部の両側面には、それぞれ、接続板41が溶接されている。大引き材6の一端部の両側面に溶接されてなる接続板41には、それぞれ通し孔42が穿たれている。なお、この2つの接続板41はいずれも受け金具21の内部に収容されたのち、受け金具21に設けられた2つの斜め縦長孔53と2つの接続板41のそれぞれに穿たれた通し孔42に、1個のLピン(図示せず)を挿し通すことによって、大引き材6の一端部が浮き上がらないように受け金具21に大引き材6が保持される。また、この大引き材6の一端部には、台座金具56が横方向に溶接されており、この台座金具56を高さレベル調節金具55の押し上げボルト24の上面に差し込むことによって、大引き材6の一端部の高さレベルが調節される点、並びに、この大引き材6の非端部には、取付金具13が設けられており、ここに斜材7の上端部が取付角度自在に取り付けられる点も、実施例1と同じである。
さらに、この大引き材6の他端部には、3組のLピン通し孔61と1組のボルト通し孔62が穿たれており、ここに足場材20が溶接によって接合された足場材取付金具58が、足場材20を略水平に保つことができるので、その上に設置された足場板15の踏面を略水平に保つことができる点も、実施例1と同じである。
このように、大引き材の端部は鋼製の主桁の上部フランジ部の下面に密着させてボルトによって固定できる受け金具に取り付けられていることから、型枠の張り出し部にかかる荷重によって発生する外向きの水平力に対抗できるとともに、受け金具は上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔を有するから、大引き材の端部の跳ね上がりの発生を防止できることに加えて、アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重が作用する位置を偏芯させることにより、縦方向に取り付けられるボルトの長さ方向にかかる引抜力を軽減させることができる。
本発明によれば、吊りチェーンと突っ張り材のいずれをも不要とする支保工を提供することができるから、容易に支保工の施工をすることができることに加えて、縦方向に取り付けられるボルトの長さ方向にかかる引抜力を軽減させることができる。また、必要に応じて作業員が作業する足場板の踏面を略水平に保持できるから、橋梁が掛けられる道路等の断面傾斜が急であっても、作業員の安全を図ることができる。
従来例に係る橋梁のコンクリート床版の一例を示す断面図である。 主桁の外側に設置された、従来例に係る支保工の一例(側面図)である。 特許文献1において提案された、主桁の外側に設置された支保工の側面図である。 図3で示された特許文献1において提案された支保工の一部拡大図であり、固定構造として受け金具方式を採用したものである。 特許文献1において提案された他の実施形態にかかる支保工の一部拡大図であり、固定構造として、受け金具方式に代えて、吊りボルト方式を採用したものである。 受け金具の側板に縦長孔(θ=0゜)を設けた場合の大引き材の端部の跳ね上がりの発生状況を示す。 受け金具の側板に縦長孔(θ=30゜)を設けた場合の大引き材の端部の跳ね上がりの発生状況を示す。 受け金具に掛かる水平荷重と鉛直荷重を示している。 アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が75mm偏心している場合に、受け金具の斜め縦長孔に挿し通されたピンの節点に作用する水平方向の荷重PHと鉛直方向の荷重PVを示している。 (a)が水平方向の荷重PHについて、そして、(b)が鉛直方向の荷重PVについて、それぞれ、アンカーボルトを基点として回転する方向を表す。 アンカーボルトの位置と鉛直方向の荷重PVが作用する位置が偏心していない場合に、受け金具の斜め縦長孔に挿し通されたピンの節点に作用する水平方向の荷重PHと鉛直方向の荷重PVを示している。 コンクリート製の主桁の外側に設置された、本発明に係る支保工の一例(側面図)である。 図12で示された大引き材の主桁側の端部近傍の一部拡大図である。 本発明に係る大引き材の一例を示す。(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は左側面図、そして、(d)はA−A矢視断面図である。 本発明に係る受け金具を用いて大引き材の一端部をコンクリート製の主桁の上部フランジ部の下面に保持する際の手順を説明する。(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。 鋼製の主桁の外側に設置された、本発明に係る支保工の他の例(側面図)である。 図16で示された大引き材の主桁側の端部近傍の一部拡大図である。
符号の説明
1 主桁
1a 主桁のウェブ部
1b 主桁の上部フランジ部
1c 主桁の下部フランジ部
2 コンクリート床版
3 型枠
3a 型枠の張り出し部
4 水平支保梁
5 パイプサポート
6 大引き材
6a 長さ調節可能な大引き材の外筒部材
6b 長さ調節可能な大引き材の内筒部材
7 長さ調節可能な斜材
7a 長さ調節可能な斜材の外筒部材
7b 長さ調節可能な斜材の内筒部材
8 吊りチェーン
9 根太材
10 吊りボルト
11 固定長さの斜材
12 フランジ接続ピース
13 取付金具
14 作業員
15 足場板
16 手摺柱
17 手摺材
18 ブラケット
19 補強杆
20 足場材
21 受け金具
21a 取付基板
21b 台板
21c 側板
22 取り付けボルト
23 固着ナット
24 押し上げボルト
25 縦長孔
26 通しボルト
27 ナット
29 取付基板のボルト挿通孔
30 ウェブのボルト挿通孔
31 シート材
32 当て板
33 突っ張り材
34 吸着カップ
35 ボルト挿通孔
36 ねじジャッキ
37 受けナット
38 引張金具
39 取付板
41 接続板
42 通し孔
52 インサートナット
53 斜め縦長孔
54 Lピン
55 高さレベル調整金具
56 台座金具
58 足場材取付金具
59 下部補強座金
60 上部補強座金
61 足場材取付金具のLピン通し孔
62 足場材取付金具のボルト通し孔
W 溶接

Claims (8)

  1. 主桁の上部フランジ部より張り出して設けられる床版張り出し部のコンクリート型枠を支持するための、型枠の張り出し部の下側に配置される大引き材とこの大引き材を斜め下方から支える長さ調節可能な斜材からなる支保工であって、上端が主桁のウェブ中心方向に傾斜してなる斜め縦長孔を有し、かつ、主桁の上部フランジ部の下面に密着して固定されている受け金具を介して、この斜め縦長孔と大引き材の一端部に設けられた通し孔との間に横方向に通しボルト又はピンが挿通されて、大引き材が受け金具に取り付けられていることを特徴とする支保工。
  2. 斜め縦長孔の傾斜角度θ=25〜45゜であることを特徴とする、請求項1に記載の支保工。
  3. 受け金具は、主桁に取り付けられた又は埋め込まれたボルトにナットを締め付けることによって、主桁の上部フランジ部の下面に密着して固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の支保工。
  4. 主桁に取り付けられた又は埋め込まれたボルトから主桁のウェブ中心までの距離が、通しボルト又はピンから主桁ウェブ中心までの距離よりも小さいことを特徴とする、請求項3に記載の支保工。
  5. 受け金具は、主桁に取り付けられた又は埋め込まれたナットにボルトを締め付けることによって、主桁の上部フランジ部の下面に密着して固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の支保工。
  6. 主桁に取り付けられた又は埋め込まれたナットから主桁のウェブ中心までの距離が、通しボルト又はピンから主桁ウェブ中心までの距離よりも小さいことを特徴とする、請求項5に記載の支保工。
  7. 受け金具は、その下部に固着された固着ナットと、この固着ナットに螺合できる押し上げボルトを有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載の支保工。
  8. 大引き材の他端部に足場材が取付角度調節可能に連結されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれかに記載の支保工。
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