JP5019255B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着されたAlとZrの複合酸化物組織を有し、Zr成分の含有割合がAl成分との合量における原子比(Zr/(Al+Zr))で0.003〜0.05であり、さらに、Σ3の分布割合が60〜80%であるAlとZrの複合酸化物層(以下、「従来(Al,Zr)2O3層」という)、
を蒸着形成してなる被覆工具(以下、従来被覆工具という)が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの高速断続切削加工に用いられることが知られている。
例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.3〜4%、ZrCl4:0.02〜0.13%、CO2:1〜5%、HCl:1.5〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で、下部層であるTi化合物層の表面に、
組成式:(Al1−YZrY)2O3、(ただし、原子比で、Y:0.003〜0.05)を満足するAlとZrの複合酸化物核を形成し、引き続いて、加熱雰囲気を圧力:3〜13kPaの水素雰囲気に変え、かつ加熱雰囲気温度を1100〜1200℃に昇温した条件で前記AlとZrの複合酸化物核薄膜に加熱処理を施した状態で、硬質被覆層の上部層として、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.3〜4%、ZrCl4:0.02〜0.13%、CO2:3〜8%、HCl:1.5〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1020〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で、同じく組成式:(Al1−YZrY)2O3、(ただし、原子比で、Y:0.003〜0.05)を満足するAlとZrの複合酸化物層を形成することによって得られることも知られている。
(a)従来被覆工具の硬質被覆層を構成する上部層としての従来(Al,Zr)2O3層は、すぐれた高温硬さと所定の高温強度を備えているが、AlとZrの複合酸化物からなる結晶粒の粒界強度が十分でないために、難削材の高速断続切削加工においては、十分に満足できる耐チッピング性を示さないが、
例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成(容量%):AlCl3:6〜10%、ZrCl4:0.2〜0.5%、CO2:4〜8%、HCl:3〜5%、H2S:0.25〜0.6%、Ar:5〜50%、H2:残り、
反応雰囲気温度;980〜1100℃、
反応雰囲気圧力;5〜10kPa、
の条件で蒸着を行い、2〜15μmの平均層厚のAlとZrの複合酸化物層を形成すると、この条件で形成されたAlとZrの複合酸化物層(以下、「改質(Al,Zr)2O3層」という)は、該層におけるAl成分との合量に占めるZr成分の含有割合をX(但し、原子比)とした場合に、X=0.0001〜0.002を満足し、この結果形成された改質(Al,Zr)2O3層は、従来(Al,Zr)2O3層のもつすぐれた高温硬さに加え、従来(Al,Zr)2O3層に比し、一段とすぐれた高温強度を具備するようになること。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2〜4%、CO2:4〜8%、HCl:1〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1020〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で蒸着形成されるが、
上記非改質(従来)α型Al2O3層の化学蒸着条件を変更し、通常の化学蒸着装置にて、例えば、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6〜10%、CO2:4〜8%、HCl:3〜5%、H2S:0.25〜0.6%、H2:残り、
反応雰囲気温度:920〜1000℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で蒸着形成すると、この結果形成されたα型Al2O3層(以下、改質α型Al2O3層という)は、従来α型Al2O3層自身のもつすぐれた高温硬さおよび耐熱性に加え、従来α型Al2O3層に比して、一段とすぐれた高温強度を具備すること。
また、改質(Al,Zr)2O3層と改質α型Al2O3層は層間密着性にすぐれているが、両層の間に非改質(従来)α型Al2O3層を中間層として介在形成した場合には、該中間層を介したことにより、より一層、層間密着強度が大となるとともに、該中間層は、改質(Al,Zr)2O3層と改質α型Al2O3層の界面に生ずる内部応力を緩和する作用があることから、改質(Al,Zr)2O3層と改質α型Al2O3層を(あるいは更に非改質α型Al2O3層からなる中間層を介在させて)積層構造として構成することにより、硬質被覆層の耐チッピング性、耐摩耗性を損なうことなく、硬質被覆層の厚膜化を図ることができ、その結果として、長期に亘って、すぐれた工具特性を発揮すること。
以上(a)〜(e)に示される研究結果を得たのである。
「(1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
(a)下部層は、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層からなり、
(b)上部層は、2〜15μmの平均層厚を有し化学蒸着で形成されたAlとZrの複合酸化物層(改質(Al,Zr)2O3層)と、2〜20μmの平均層厚を有し化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する改質α型酸化アルミニウム層(改質α型Al2O3層)の積層構造からなり、
(c)上記AlとZrの複合酸化物層(改質(Al,Zr)2O3層)は、Al成分との合量に占めるZr成分の含有割合(Zr/(Al+Zr))が、原子比で、0.0001〜0.002であり、さらに、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶粒の各結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の35%以上の割合を占める結晶粒界面配列を示し、
(d)上記改質α型酸化アルミニウム層(改質α型Al2O3層)は、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶粒の各結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の45%以上の割合を占める結晶粒界面配列を示す、
ことを特徴とする、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(被覆工具)。
(2)前記(1)1記載の表面被覆切削工具において、上部層を構成する上記AlとZrの複合酸化物層(改質(Al,Zr)2O3層)と、上記改質α型酸化アルミニウム層(改質α型Al2O3層)の層間に、0.1〜2μmの平均層厚を有し化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する非改質α型酸化アルミニウム層(非改質α型Al2O3層)からなる中間層を介在させ、上記非改質α型酸化アルミニウム層
(非改質α型Al2O3層)からなる中間層は、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶粒の各結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の45%未満の割合を占める結晶粒界面配列を示す、
ことを特徴とする、前記(1)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
(a)下部層(Ti化合物層)
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層は、硬質被覆層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と、上部層を構成する改質(Al,Zr)2O3層および改質α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する接合強度を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴い切刃に対して断続的かつ衝撃的な高負荷がかかる難削材の高速断続切削では、熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b−1)改質(Al,Zr)2O3層
化学蒸着された改質(Al,Zr)2O3層の構成成分であるAl成分は、層の高温硬さおよび結晶粒界強度を向上させ、同Zr成分は、層中に微量(Alとの合量に占める割合で、Zr/(Al+Zr)が0.0001〜0.002(但し、原子比))含有されることにより、改質(Al,Zr)2O3層の高温強度の向上に寄与するが、Zr成分の含有割合が0.0001未満では、上記作用を期待することはできず、一方、Zr成分の含有割合が0.002を超えた場合には、AlとZrの複合酸化物層にZrO2粒子が析出し、AlとZrの複合酸化物の粒界強度が低下するため、Al成分との合量に占めるZr成分の含有割合(Zr/(Al+Zr)の比の値)を0.0001〜0.002(但し、原子比))と定めた。
即ち、
反応ガス組成(容量%):AlCl3:6〜10%、ZrCl4:0.2〜0.5%、CO2:4〜8%、HCl:3〜5%、H2S: 0.25〜0.6%、Ar:5〜50%、H2:残り、
反応雰囲気温度;980〜1100℃、
反応雰囲気圧力;5〜10kPa、
の条件で、2〜15μmの平均層厚の蒸着層を成膜すると、Zr/(Al+Zr)の比の値が原子比で0.0001〜0.002である改質(Al,Zr)2O3層を形成することができる。
ただ、改質(Al,Zr)2O3層の層厚が2μm未満では、前記のすぐれた特性を十分に発揮することができず、一方、その層厚が15μmを超えるとチッピングが発生しやすくなることから、改質(Al,Zr)2O3層の平均層厚を2〜15μmと定めた。
通常の化学蒸着装置にて、例えば、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6〜10%、CO2:4〜8%、HCl:3〜5%、H2S:0.25〜0.6%、H2:残り、
反応雰囲気温度:920〜1000℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で蒸着すると、改質α型Al2O3層が蒸着形成され、そして、そして、この改質α型Al2O3層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶粒の各結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記改質α型Al2O3層は、(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位(小角粒界面)が全結晶粒界面単位の45%以上の割合を占める結晶粒界面配列を示し、本発明の改質α型Al2O3層は、小角粒界面が全結晶粒界面単位の45%以上の割合を占める結晶粒界面配列をとることによって、非改質α型Al2O3層に比して、特に高温強度の改善が図られ、その結果として、一段とすぐれた高温強度を持つようになる。
非改質(従来)α型Al2O3層からなる中間層は、すでに述べたように、通常の化学蒸着装置にて、例えば、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2〜4%、CO2:4〜8%、HCl:1〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1020〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で蒸着形成されるが、この結果形成された非改質(従来)α型Al2O3層からなる中間層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用いた測定により小角粒界面の割合を求めると、小角粒界面は全結晶粒界面単位の25%以下にすぎず、改質α型Al2O3層に比してそれ自体の高温強度は劣ったものであるが、その一方、改質(Al,Zr)2O3層および改質Al2O3層のいずれに対しても強固な密着性を有するので、改質(Al,Zr)2O3層および改質Al2O3層の両層間に中間介在層として設けることによって、両層間の接合強度を高める作用を有すると同時に、両層の界面に生じる内部応力を緩和する作用があるため、結果として、上部層の高温強度を高め耐チッピング性の更なる向上を図ることができる。
ただ、非改質(従来)α型Al2O3層の層厚が0.1μm未満の場合には、改質(Al,Zr)2O3層と改質Al2O3層の両層間の接合強度を高める作用、界面の内部応力緩和作用を期待できず、一方、その層厚が2μmを超えると、非改質(従来)α型Al2O3層自体の高温強度がそれほど大きくないため、層間剥離等を生じやすくなるので、非改質(従来)α型Al2O3層の層厚を0.1〜2μmと定めた。
次に、表4に示される蒸着条件により、同じく表7に示される目標層厚の改質(Al,Zr)2O3層を、さらに、表5に示される蒸着条件により、同じく表7に示される目標層厚の改質Al2O3層を蒸着し、積層構造の硬質被覆層上部層を形成することにより、本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
なお、いくつかの被覆工具については、改質(Al,Zr)2O3層と改質Al2O3層間に、表5に示される蒸着条件により、同じく表7に示される目標層厚の非改質(従来)Al2O3層からなる中間層を介在形成した。
すなわち、上記の本発明被覆工具1〜13の改質(Al,Zr)2O3層、改質Al2O3層、非改質Al2O3層および比較被覆工具1〜13の従来(Al,Zr)2O3層について、まず、それぞれの表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記表面研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記結晶粒の各結晶粒のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位に占める割合(小角粒界面比率という)を算出し、表7、8にそれぞれ示した。
また、本発明被覆工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する改質(Al,Zr)2O3層および比較被覆工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する従来(Al,Zr)2O3層におけるZrの含有割合を、電子線マイクロアナライザー(EPMA)により測定(測定条件:加速電圧 15kV,プローブ電流 5×10−8A,ビーム径 φ30μm)し、その値(5点測定の平均値)を表7、8に示した。
なお、上記改質(Al,Zr)2O3層および従来(Al,Zr)2O3層について、透過型電子顕微鏡により調査したところ、Zrが粒界に偏析していた。
[切削条件A]
被削材:JIS・SUS430の長さ方向等間隔6本縦溝入の丸棒、
切削速度: 270 m/min、
切り込み: 1.2 mm、
送り: 0.25 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、150m/min)、
[切削条件B]
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔6本縦溝入の丸棒、
切削速度: 350 m/min、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.3 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件での軟鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は350m/min)、
[切削条件C]
被削材:JIS・SMn443の長さ方向等間隔6本縦溝入の丸棒、
切削速度: 270 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.22 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件での高マンガン鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、150m/min)
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表9に示した。
Claims (2)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
(a)下部層は、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層からなり、
(b)上部層は、2〜15μmの平均層厚を有し化学蒸着で形成されたAlとZrの複合酸化物層と、2〜20μmの平均層厚を有し化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する改質α型酸化アルミニウム層の積層構造からなり、
(c)上記AlとZrの複合酸化物層は、Al成分との合量に占めるZr成分の含有割合(Zr/(Al+Zr))が、原子比で、0.0001〜0.002であり、さらに、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶粒の各結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の35%以上の割合を占める結晶粒界面配列を示し、
(d)上記改質α型酸化アルミニウム層は、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶粒の各結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の45%以上の割合を占める結晶粒界面配列を示す、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。 - 請求項1記載の表面被覆切削工具において、上部層を構成する上記AlとZrの複合酸化物層と、上記改質α型酸化アルミニウム層の層間に、0.1〜2μmの平均層厚を有し化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有する非改質α型酸化アルミニウム層からなる中間層を介在させ、上記非改質α型酸化アルミニウム層からなる中間層は、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子からなる結晶粒の各結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の25%未満の割合を占める結晶粒界面配列を示す、
ことを特徴とする、請求項1記載の表面被覆切削工具。
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