JP4888709B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の切削加工を、高い発熱を伴うとともに切刃に断続的かつ衝撃的な高負荷がかかる高速断続切削条件で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着した状態でα型またはκ型の結晶構造の酸化アルミニウム(以下、Alで示す)と酸化ジルコニウム(以下、ZrOで示す)の2相混合酸化物組織を有し、かつ、0.1〜10重量%のZrOがAl素地に分散した2相混合酸化物層(以下、単に「従来2相混合酸化物層」という)、
を蒸着形成してなる被覆工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられることは良く知られている。
また、上記の従来被覆工具において、硬質被覆層の下部層を構成するTi化合物層のTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
特開2001−38504号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削加工や断続切削加工に用いた場合には問題はないが、特にこれを高い発熱を伴うと共に、切刃に断続的かつ衝撃的な高負荷がかかる高速断続切削加工に用いた場合には、硬質被覆層の上部層を構成する従来2相混合酸化物層における粒界強度が十分でないために、そこから生じたクラックによりチッピングが発生しやすくなり、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来2相混合酸化物層が硬質被覆層の上部層を構成する被覆工具に着目し、特に、高速断続切削加工における硬質被覆層の耐チッピング性の向上を図るべく研究を行った結果、
(a)従来被覆工具の硬質被覆層を構成する上部層としての従来2相混合酸化物層は、すぐれた高温硬さと所定の高温強度を備えており、この層は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
(イ)反応ガス組成(容量%):
AlCl:1〜10 %、
ZrCl:0.01〜10 %、
CO2:1〜30 %、
HCl:0.5〜10 %、
:1〜15%
S:0.02〜2 %、
2:残り、
(ロ)反応雰囲気温度 :850〜1050 ℃、
(ハ)反応雰囲気圧力 :5.3〜53.2 kPa
の条件(通常条件という)で、従来被覆工具の下部層であるTi化合物層上に蒸着形成されるが、このような従来2相混合酸化物層からなる上部層では、既に述べたように、Al相とZrO相間の結晶粒界強度が十分でないため、高速断続切削加工において満足できる耐チッピング性を示さないこと。
(b)そこで、蒸着形成した硬質被覆層の下部層であるTi化合物層上に、通常の化学蒸着装置にて、
(イ)反応ガス組成(容量%):
AlCl:6〜10%、
ZrCl:0.6〜1.2%、
CO2:4〜8%、
HCl:3〜5%、
S: 0.25〜0.6%、
Ar:5〜50%、
2:残り、
(ロ)反応雰囲気温度;1060〜1100℃、
(ハ)反応雰囲気圧力;6〜10 kPa、
の条件で蒸着を行い、2〜15μmの平均層厚の酸化アルミニウム(以下、Alで示す)相と酸化ジルコニウム(以下、ZrOで示す)相の2相混合酸化物層(以下、「改質2相混合酸化物層」という)からなる上部層を形成すると、この条件で形成された上部層は、ZrOがAl素地に均一に分散した2相混合酸化物組織を有し、そして、該層におけるAl成分との合量に占めるZr成分の含有割合をX(但し、原子比)とした場合に、X=0.003〜0.2を満足し、さらに、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子を有する酸化アルミニウムの結晶粒の構成結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位(以下、小角粒界面という)が全結晶粒界面単位の30%以上の割合を占める結晶粒界面配列を示す(以下、このような結晶粒界面配列を、小角粒界面比率30%以上の結晶粒界面配列という)こと。
(c)上記(b)の化学蒸着条件で蒸着形成された改質2相混合酸化物層からなる上部層は、特に、分散相であるZrO相と素地相であるAl相間の結晶粒界強度が高められ、さらに、潤滑性と耐熱性も高められるため、前記(a)の通常条件で形成された従来被覆工具の従来2相混合酸化物層の備えるすぐれた高温硬さに加えて、さらに、一段とすぐれた高温強度、潤滑性、耐熱性を具備するようになることから、これを硬質被覆層の上部層として備えた被覆工具は、高い発熱を伴い断続的かつ衝撃的な高負荷のかかる高速断続切削という厳しい条件下での切削加工においても、従来被覆工具に比して、硬質被覆層が一段とすぐれた耐チッピング性を発揮し、また、長期にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮すること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、2〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着された状態で酸化ジルコニウム相が酸化アルミニウム相に均一に分散した2相混合酸化物層からなり、かつ、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子を有する酸化アルミニウムの結晶粒の構成結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位(小角粒界面)が全結晶粒界面単位の30%以上の割合を占める結晶粒界面配列(小角粒界面比率30%以上の結晶粒界面配列)を示し、さらに、2相混合酸化物層におけるジルコニウム成分の含有割合がAl成分との合量における原子比(Zr/(Al+Zr))で、0.003〜0.2である2相混合酸化物層、
以上(a)、(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具。(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆工具の硬質被覆層の構成層について、より詳細に説明する。
(a)下部層(Ti化合物層)
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層は、硬質被覆層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と改質2相混合酸化物層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する接合強度を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴う高速断続切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)上部層(改質2相混合酸化物層)
化学蒸着された状態で酸化ジルコニウム相が酸化アルミニウム相に均一に分散した改質2相混合酸化物層の構成成分であるAl成分は、層の高温硬さおよび耐熱性を向上させ、同Zr成分は、層中に微量(Alとの合量に占める割合で、Zr/(Al+Zr)が0.003〜0.2(但し、原子比))含有されることにより、上部層(改質2相混合酸化物層)の高温強度、潤滑性、耐熱性の向上に寄与するが、Zr成分の含有割合が0.003未満では、上記作用を期待することはできず、一方、Zr成分の含有割合が0.2を超えた場合には、酸化ジルコニウム相が粗大化し、欠損が生じやすくなるため、Al成分との合量に占めるZr成分の含有割合(Zr/(Al+Zr)の比の値)を0.003〜0.2(但し、原子比))と定めた。
Al23相素地中にZrO2相が均一に分散した組織の2相混合酸化物層を化学蒸着で形成するためには、蒸着時の反応ガス組成、反応雰囲気温度および反応雰囲気圧力の各化学蒸着条件を、以下のとおり調整することが必要である。
即ち、
(イ)反応ガス組成(容量%):
AlCl:6〜10%、
ZrCl:0.6〜1.2%、
CO2:4〜8%、
HCl:3〜5%、
S: 0.25〜0.6%、
Ar:5〜50%、
2:残り、
(ロ)反応雰囲気温度;1060〜1100℃、
(ハ)反応雰囲気圧力;6〜10 kPa、
の条件で、2〜15μmの平均層厚の蒸着層を成膜すると、Al23相素地中にZrO2相が均一に分散した2相混合酸化物組織の改質2相混合酸化物層を形成することができる。
そして、上記蒸着形成された改質2相混合酸化物層の分散相であるZrO2相は、その摩擦係数が低くまた熱伝導性も低いことから、上記ZrO2相が素地中に均一に分散していることによって、改質2相混合酸化物層の潤滑性が高められ、また、耐熱性も高められる。
上記改質2相混合酸化物層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子を有する酸化アルミニウムの結晶粒の構成結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し(図1)、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下(図2)の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の30%以上の割合を占める結晶粒界面配列(小角粒界面比率30%以上の結晶粒界面配列)を示していることから、Al23層を化学蒸着で形成する際に、その反応ガス中に微量(0.6〜1.2%)のZrClを添加し1060〜1100℃の反応雰囲気温度で蒸着を行い、層中に微量のZr成分を含有させることによって、小角粒界面比率が増大し、Al23相とZrO2相間の結晶粒界強度が強化され、そして、その結果として、高速断続切削加工という厳しい切削条件の下であっても、硬質被覆層の上部層を構成する改質2相混合酸化物層中にクラックが発生することが抑えられ、また、仮にクラックが発生したとしても、クラックの成長・伝播が防止され、硬質被覆層の耐チッピング性の向上が図られる。
ただ、上部層の層厚が2μm未満では、上記上部層のすぐれた特性を十分に発揮することができず、一方、上部層の層厚が15μmを超えるとチッピングが発生しやすくなることから、上部層の平均層厚を2〜15μmと定めた。
一方、硬質被覆層の上部層が、従来2相混合酸化物層からなる従来被覆工具においては、その上部層について、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子を有する酸化アルミニウムの結晶粒の構成結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、小角粒界面比率は30%未満に過ぎないために、Al23相とZrO2相間の結晶粒界強度は弱く、その結果、高速断続切削加工という厳しい切削条件下では、上部層(従来2相混合酸化物層)にクラックが発生しやすく、また、発生したクラックの成長・伝播を抑えることもできないため、従来被覆工具の硬質被覆層の耐チッピング性は劣ったものとなる。
上記のとおり、この発明の被覆工具は、上部層を構成する酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムの改質2相混合酸化物層において、ZrO2相がAl23相からなる素地に均一に分散分布すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子を有する酸化アルミニウムの結晶粒の構成結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し(図1)、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下(図2)の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の30%以上の割合を占める結晶粒界面配列(小角粒界面比率30%以上の結晶粒界面配列)を示すことにより、従来被覆工具の従来2相混合酸化物層のもつすぐれた高温硬さに加えて、一段とすぐれた高温強度、潤滑性、耐熱性を具備し、各種の鋼や鋳鉄などを、高い発熱と断続的かつ衝撃的な負荷がかかる高速断続切削条件下で用いた場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも2〜4μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG160412に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG160412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表5に示される組み合わせおよび目標層厚でTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成した。
次に、表4に示される蒸着条件により、同じく表5に示される目標層厚の改質2相混合酸化物層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の上部層として、表4に示される条件で、表6に示される目標層厚で従来2相混合酸化物層を形成することにより比較被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する改質2相混合酸化物層および従来2相混合酸化物層について、電界放出型走査電子顕微鏡および電子後方散乱回折像装置を用いて、結晶粒界面配列を調査した。
すなわち、上記の本発明被覆工具1〜13の改質2相混合酸化物層および比較被覆工具1〜13の従来2相混合酸化物層について、まず、それぞれの表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記表面研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、それぞれの前記表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記結晶粒の各結晶粒のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位に占める割合(小角粒界面比率という)を算出し、表5、6にそれぞれ示した。
なお、本発明被覆工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する改質2相混合酸化物層については、透過型電子顕微鏡により調査したところ、Al23相の素地中にZrO2相が均一に分散していることが確認されている。
表5、6にそれぞれ示される通り、本発明被覆工具の改質2相混合酸化物層の小角粒界面比率は、いずれも30%以上であるのに対して、比較被覆工具ではいずれも小角粒界面比率が30%未満の値であった。
また、本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13の各種の被覆工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
[切削条件A]
被削材:JIS・S25Cの長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度: 365 m/min、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.4 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、250m/min)、
[切削条件B]
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 360 m/min、
切り込み: 2 mm、
送り: 0.24 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件でのニッケルクロムモリブデン鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、200m/min)、
[切削条件C]
被削材:JIS・FCD500の長さ方向等間隔4本縦溝入の丸棒、
切削速度: 365 m/min、
切り込み: 1.7 mm、
送り: 0.48 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件でのダクタイル鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は、180m/min)
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7に示した。
Figure 0004888709
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表5〜7に示される結果から、本発明被覆工具1〜13は、硬質被覆層の上部層が、Al23相中にZrO2相が均一に分散した2相混合酸化物組織からなる改質2相混合酸化物層として蒸着形成され、さらに、該改質2相混合酸化物層は、六方晶結晶格子を有する酸化アルミニウムの結晶粒の構成結晶面の結晶粒界面配列が、小角粒界面比率30%以上の値を示し、すぐれた高温硬さ、粒界強度、潤滑性、耐熱性を備え、高い発熱を伴い、かつ、切刃に対する断続的かつ衝撃的な負荷がかかる鋼や鋳鉄の高速断続切削でも、硬質被覆層の下部層を形成するTi化合物層の有する高温強度と高い接合強度に加え、前記改質2相混合酸化物層が具備するすぐれた高温硬さ、高温強度、潤滑性、耐熱性により、硬質被覆層の耐チッピング性が著しく改善され、長期にわたってすぐれた工具特性を示すのに対して、硬質被覆層の上部層として従来2相混合酸化物層が蒸着形成された比較被覆工具1〜13においては、高速断続切削という厳しい切削条件下では、硬質被覆層の特に粒界強度および高温強度が不十分であるために、硬質被覆層にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に高い発熱を伴い断続的かつ衝撃的な負荷がかかる高速断続切削加工でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
表面研磨面の法線と、改質2相混合酸化物層における酸化アルミニウムの結晶粒の(0001)面の法線、{10−10}面の法線の関係を示す概略説明図である。 隣接する結晶粒相互の界面において、(0001)面の法線C,C’同士、また、{10−10}面の法線a,a’同士の交わる角度が15度以下であることを示す概略説明図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層が、3〜20μmの全体平均層厚を有するTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
    (b)上部層が、2〜15μmの平均層厚を有し、化学蒸着された状態で酸化ジルコニウム相が酸化アルミニウム相に均一に分散した2相混合酸化物層からなり、かつ、電界放出型走査電子顕微鏡と電子後方散乱回折像装置を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、六方晶結晶格子を有する酸化アルミニウムの結晶粒の構成結晶面のそれぞれの法線が前記表面研磨面の法線と交わる角度を測定し、この測定結果から、結晶粒の構成結晶面である(0001)面および{10−10}面を選び出し、さらに、選び出した(0001)面および{10−10}面において、それぞれ隣接する結晶粒相互の界面(結晶粒界面単位)における(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(0001)面の法線同士および{10−10}面の法線同士の交わる角度が15度以下の結晶粒界面単位が全結晶粒界面単位の30%以上の割合を占める結晶粒界面配列を示し、さらに、2相混合酸化物層におけるジルコニウム成分の含有割合がAl成分との合量における原子比(Zr/(Al+Zr))で、0.003〜0.2である2相混合酸化物層、
    以上(a)、(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具。
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