JP5019103B2 - 受信装置、受信方法、およびプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、受信装置、受信方法、およびプログラムに関し、特に、マルチパスによる歪みのある受信信号を精度良く復号することができるようにする受信装置、受信方法、およびプログラムに関する。
例えば、所定の装置の筐体内において、電波(電磁波)による無線通信が行われる場合、受信機は、送信された電波が筐体内の障害物によって反射および回折し、複数の経路から同じ電波を受信してしまう。このように、送信された電波が筐体内の障害物によって反射および回折し、複数の経路からの電波を受信することをマルチパスという。なお、マルチパスは、筐体内に限らず、例えば、ビルなどの建造物や地形などを障害物として、筐体外でも発生する。
マルチパスでは、経路距離が異なる、換言すれば、伝送にかかる時間の異なる複数の経路の電波を受信機は受信するため、その受信した波形には歪みが生じている。このマルチパスによる、受信した波形の歪み(以下、マルチパスフェージングという)のために、符号の復号ができなくなることがある。
図1は、ある装置の筐体内と筐体外で放射された電波を受信したときの受信波形を示している。なお、変調方式はASK(Amplitude Shift Keying)変調方式である。
図1において、右側の4つの波形は、筐体内での通信による受信波形を、左側の4つの波形は、筐体外での通信による受信波形を示し、それぞれ、伝送速度が、250kbps,500kbps,1Mbps、および2Mbpsのときの4通りについて示している。
例えば、一番特徴がよく表れている、最下段に示される伝送速度が2Mbpsのときを見ると、筐体外での受信波形は、“0”と“1”の区間がきれいに表示されているのに対し、筐体内での受信波形は、“0”となるべき区間に反射波が覆い被さってきているために波形が崩れ、“1”と判定される可能性が高くなっている。また、この筐体内での受信波形の歪みは、伝送速度が速くなるほど大きい。つまり、送信信号の速度によって、受信時の影響が大きく異なるとともに、反射によって通信品質が大きく劣化することが分かる。
従って、マルチパスフェージングの影響により、通信路容量を増加させることが出来ない、および、簡単な信号処理では任意の信号品質を保つことが困難である、という問題が生じる。
マルチパスフェージングの要因の一つとして、マルチパスによって発生するDCオフセット(直流オフセット)が考えられる。そのため、一般的には、フィードバックループを介した自動利得制御(AGC: Automatic Gain Control)を用いて、マルチパスにより受信機への入力電力が飽和して増幅器にてDCオフセットが生じるのを防止する手法などが採用されている。
また、入力電力の電力レベルの変動を記憶素子に記憶しておき、その記憶された値を用いて利得制御を行うことでマルチパスによって発生するDCオフセットを除去するものもある(例えば、特許文献1参照)。
特表2005−522082号公報
しかしながら、特許文献1で提案されている方式は、高速動作可能な記憶素子および演算素子が必要になったり、記憶素子間の配線を、高速通信を行うための配線とする必要があり、高速大容量の通信を想定した場合にはコストが増大するという問題があった。
マルチパスフェージングを解決するその他の方式として、インタリーブした信号を畳み込み符号化し、ビタビ復号とデインタリーブを行うことが考えられる。しかしながら、この場合、ビタビ復号演算を行うための記憶素子を必要とし、画像データの通信などにおけるリアルタイム性が必要とされるバースト信号には、記憶素子の高速動作がボトルネックとなるので、リアルタイムな高速通信を行うには不向きである。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、マルチパスによる歪みのある受信信号を精度良く復号することができるようにするものである。
本発明の一側面の受信装置は、マルチパスの定常性を有する信号を受信して、復号する受信装置において、前記信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をビット判定する奇数個のビット判定部と、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部とを備え、前記奇数個のビット判定部のそれぞれは、前記現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求めるサンプリング手段と、前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定する閾値判定手段とを有し、前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、前記奇数個のビット判定部のそれぞれの前記閾値判定手段では、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
前記サンプリング手段と前記ビット判定手段が動作の基準とするクロック信号は、前記信号に同期したクロック信号および前記受信装置の基準クロック信号とは非同期な信号であるようにさせることができる。
本発明の一側面の受信方法は、マルチパスの定常性を有する信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をビット判定する奇数個のビット判定部と、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部とを備え、前記信号を受信して、復号する受信装置の受信方法において、前記奇数個のビット判定部のそれぞれが、前記現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求め、前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定し、前記多数決判定部が、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定するステップを含み、前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、前記奇数個のビット判定部のそれぞれでは、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
本発明の一側面のプログラムは、マルチパスの定常性を有する信号を受信して、復号する処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって前記コンピュータを、ビット判定する奇数個のビット判定部と、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部として機能させ、前記奇数個のビット判定部のそれぞれは、前記現在ビット時間の前記信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求めるサンプリング手段と、前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定する閾値判定手段とを有し、前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、前記奇数個のビット判定部のそれぞれの前記閾値判定手段では、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
本発明の一側面においては、奇数個のビット判定部のそれぞれにおいて、マルチパスの定常性を有する信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の信号をサンプリングしてサンプリング値が求められ、現在ビット時間のサンプリング値と現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれのサンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値が、現在ビット時間の一つのサンプリング値と比較されて、現在ビット時間の信号のビットが判定される。そして、多数決判定部において、奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果が、現在ビット時間の信号のビットと判定される。最大値および最小値を求める際の現在ビット時間のサンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、複数の過去ビット時間それぞれのサンプリング値の個数はn個以下であって、奇数個のビット判定部のそれぞれでは、閾値を求めるために利用する過去ビット時間か、または、過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる。
本発明の一側面によれば、マルチパスによる歪みのある受信信号を精度良く復号することができる。
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面の受信装置は、マルチパスの定常性を有する信号を受信して、復号する受信装置(例えば、図5のLSI100)において、前記信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をビット判定する奇数個のビット判定部と、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部(例えば、図16の多数決判定部381)とを備え、前記奇数個のビット判定部のそれぞれは、前記現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求めるサンプリング手段(例えば、図6のADC301)と、前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定する閾値判定手段(例えば、図6の比較部305)とを有し、前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、前記奇数個のビット判定部のそれぞれの前記閾値判定手段では、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
本発明の一側面の受信方法は、マルチパスの定常性を有する信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をビット判定する奇数個のビット判定部と、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部とを備え、前記信号を受信して、復号する受信装置の受信方法において、前記奇数個のビット判定部のそれぞれが、前記現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求め(例えば、図12のステップS12)、前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定(例えば、図12のステップS18)、前記多数決判定部が、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定するステップを含み、前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、前記奇数個のビット判定部のそれぞれでは、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図2は、本発明を適用した情報処理装置の一実施の形態の構成例を示している。
情報処理装置1は、その筐体2のなかに、基板11乃至14と、その基板11乃至14が装着されるベース基板15を有している。基板11および12は、基板固定冶具16を介してベース基板15に装着され、基板13および14は、ベース基板15に直に装着されている。
基板11乃至14それぞれは、無線通信の機能を有するLSI(Large Scale Integration)とアンテナを少なくとも1つ以上有している。即ち、基板11は、LSI100とアンテナ101を有し、基板12は、LSI102とアンテナ103を有している。また、基板13は、LSI104とアンテナ105、および、LSI106とアンテナ107を有し、基板14は、LSI108とアンテナ109を有している。このLSI100,102,104,106、または108は、それぞれ、アンテナ101,103,105,107、または109を介して、電波(電磁波)を伝送媒体とする送信装置および受信装置としての機能を有する。
なお、図2に示される基板の配置、設置方法、および枚数などは、あくまで一例であり、これに限定されるものではない。
LSI100は、電波を伝送媒体とする無線通信により、画像や音声などの所定のデータを、情報処理装置1内の他のLSI(LSI102,104,106、または108)にアンテナ101を介して送信したり、他のLSIから送信されたデータを、アンテナ101を介して受信する。LSI100では、リアルタイム性が必要とされるバースト信号、および、間欠パケット信号の両方の通信が可能である。
LSI102,104,106、および108もLSI100と同様に、情報処理装置1内の他のLSIと無線通信を行う。以下では、LSI100が他のLSIにデータを送信したり、受信する場合について説明し、その他のLSIのデータの送信および受信についての説明は省略する。
筐体2の中に存在する白色ノイズ(熱雑音)、有色ノイズ(LSIから放射されるノイズ)、および、筐体2内の壁面や基板で反射および回折した信号によって、受信側で受信した信号には波形歪みが生じる。即ち、情報処理装置1内のLSI100が受信する信号の波形には、マルチパスによる歪みが生じている。
図3は、他のLSI(以下では、例えば、LSI102とする)から送信された送信データに対応する送信波形と、その送信波形をLSI100が受信したときの受信波形を示している。
図3において、横軸は時間を表し、縦軸は、信号波形の振幅値を表す。また、灰色の線は、送信または受信した信号波形そのもの(data)を表し、黒色の線は、送信または受信した信号波形の包絡線の波形(env)を表す。なお、信号の変調方式は、ASK変調方式である。
図3を参照して分かるように、LSI102から送信された送信データに対応する信号波形を、LSI100が受信したときには、波形に歪みが生じている。
図4は、図3に示した、14波ある送信波形および受信波形の包絡線の位相を揃え、重ねて表示したものである。図4の灰色の線は、14波の波形それぞれ(data)を表し、黒色の線は、その14波の波形を平均した波形(ave)を表す。
図4によれば、筐体2内で発生するマルチパスによる受信波形の劣化は、時間に対してほぼ一定であり、受信波形へマルチパス波が影響を及ぼす時間は短いことが分かる。従って、筐体2内のマルチパス環境下においては、LSI100が受信する受信波形は、短時間で、時間に対して一定とみなすことができる影響を受けるということができる。このように、マルチパス環境下で受信することによって、短時間で、時間に対して一定とみなすことができる影響を受けた受信信号を、定常性のあるマルチパス信号と称する。また、時間に対して一定とみなすことができる影響を定常性と称する。
LSI100は、マルチパスの定常性を有する受信信号を精度良く復号する。
図5は、LSI100の構成例を示すブロック図である。
LSI100は、入出力I/F(Interface)201、アルゴリズム処理部202、RF (Radio Frequency)信号処理部203、およびBB(Base band)信号処理部204により構成される。
入出力I/F201は、制御信号および基準クロック信号に基づいて、基板11上の他のブロック(不図示)と、アルゴリズム処理部202との間で、データを仲介する。入出力I/F201が基板11上の他のブロックとやり取りする信号は、例えば、LVDS(Low Voltage Differential Signal)などの規格に従う信号である。なお、制御信号および基準クロック信号は、必要に応じてLSI100内の各部に供給される。
アルゴリズム処理部202は、入出力I/F201またはBB信号処理部204から供給される信号に対して所定の信号処理を行う。例えば、BB信号処理部204から供給されるデジタル信号が画像信号である場合、アルゴリズム処理部202には、線形補間処理を施したり、高画質化処理を行うDRC(Digital Reality Creation)などを行わせることができる。また、BB信号処理部204から供給されるデジタル信号が音声信号である場合、アルゴリズム処理部202には、供給された音声信号をサラウンド信号に分離する処理などを行わせることができる。
なお、アルゴリズム処理部202は、入力された信号に対応するデータに対する乗算や除算の処理を、基準クロック信号が表す基準クロックよりも高速に動作を行うことが可能である。従って、アルゴリズム処理部202は、BB信号処理部204から供給される信号の信号レートが基準クロックよりも高速であったとしても、演算を行うことができる。また、BB信号処理部204から供給される信号の信号レートが基準クロックよりも遅い場合にも勿論対応可能である。
アルゴリズム処理部202は、入出力I/F201から供給された信号に所定の信号処理を施した後の、処理後のデジタル信号をRF信号処理部203に供給する。また、アルゴリズム処理部202は、BB信号処理部204から供給された信号に所定の信号処理を施した後の、処理後のデジタル信号を入出力I/F201に供給する。
RF信号処理部203は、アルゴリズム処理部202から供給されるデジタル信号に対して、ASK変調などの変調処理を施し、変調処理後の信号を、キャリア周波数fcのキャリア信号とさらに乗算して、RF信号を生成し、アンテナ101に供給する。
また、RF信号処理部203は、アンテナ101から供給されるRF信号としての、ASK変調された変調波を同期検波し、ベースバンド信号に変換してBB信号処理部204に供給する。
なお、本実施の形態では、RF信号処理部203は、ASK変調されたアナログ信号を送受信することとするが、その他、PSK(Phase Shift Keying)変調されたアナログ信号、スペクトラム拡散方式によるアナログ信号などを送受信するようにしてもよい。
BB信号処理部204は、RF信号処理部203から供給されたアナログのベースバンド信号を、デジタル信号に変換し、アルゴリズム処理部202に供給する。RF信号処理部203から供給されるベースバンド信号は、定常性のあるマルチパス信号であり、マルチパスにより歪んだ波形となっている。
図6は、BB信号処理部204の詳細な構成例を示すブロック図である。
BB信号処理部204は、ADC(Analog/Digital Converter)301、データ保持部302、閾値決定部303、過去ビットRAM(Random Access Memory)304、および比較部305により構成される。ADC301、データ保持部302、閾値決定部303、および比較部305は、所定の内部クロック信号に従って動作する。
ADC301は、RF信号処理部203から供給されたアナログのベースバンド信号を、内部クロック信号に従ってサンプリングして、デジタル信号に変換する。ADC301によりベースバンド信号がサンプリングされた値であるサンプリング値は、データ保持部302に供給される。ADC301は、基準クロック信号の少なくとも2倍以上の速度で動作する。
データ保持部302は、ADC301から供給される、ベースバンド信号の受信データの1ビットを表す時間(以下、1ビット時間という)あたり所定数のサンプリング値から、3個のサンプリング値を閾値決定部303に供給する。データ保持部302は、例えば、シフトレジスタなどで構成され、シフトレジスタの所定の3個の出力を閾値決定部303と接続することにより、ADC301から供給される所定数のサンプリング値のうちの3個のサンプリング値を閾値決定部303に供給する。
また、データ保持部302は、ADC301から供給される所定数のサンプリング値のうちの1つを、所定時間だけ遅延させた後、比較部305に供給する。ここで、遅延させる時間は、閾値決定部303で閾値Vthが決定され、比較部305に供給されるまでの時間である。なお、本実施の形態では、比較部305に供給されるサンプリング値は、閾値決定部303に供給される3個のサンプリング値のうちの、時間的に真ん中のサンプリング値とするが、閾値決定部303に供給されるサンプリング値と比較部305に供給されるサンプリング値が必ずしも一致する必要はない。
閾値決定部303は、データ保持部302から供給される、最近の1ビット時間(以下、現在ビット時間という)中のベースバンド信号からサンプリングされた3個のサンプリング値と、過去ビットRAM304に記憶されている、過去の2ビット時間にそれぞれサンプリングされた計2個のサンプリング値とから、サンプリング値の最大値Maxおよび最小値Minを検出する。さらに、閾値決定部303は、検出された最大値Maxと最小値Minの中間値を閾値Vthに決定する。即ち、(Max+Min)/2により、閾値Vthが求められる。
閾値決定部303は、現在ビット時間の閾値Vthを決定した後、その閾値Vthを比較部305に供給するとともに、現在ビット時間の3個のサンプリング値のうちの所定の1個のサンプリング値を、次の閾値計算のために過去ビットRAM304に供給する。本実施の形態では、現在ビット時間の3個のサンプリング値のうちの時間的に真ん中のサンプリング値を過去ビットRAM304に供給するものとする。
過去ビットRAM304は、閾値Vthの計算に用いられる、過去の2ビット時間の2個サンプリング値を記憶する。過去ビットRAM304は、閾値決定部303から供給されたサンプリング値を、いま記憶している2個のサンプリング値のうちのビット時間の古い方のデータに上書きする。
比較部305は、データ保持部302から供給される現在ビット時間のサンプリング値が、閾値決定部303から供給される閾値Vthよりも大きいか否かを判定することにより、現在ビット時間のビットを決定し、アルゴリズム処理部202(図5)に供給する。即ち、現在ビット時間のサンプリング値が閾値Vthよりも大きい場合には、現在ビット時間のビットを“1”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給し、現在ビット時間のサンプリング値が閾値Vth以下である場合には、現在ビット時間のビットを“0”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給する。なお、比較部305の動作には、白色性のガウス雑音を考慮してヒステリシスを持たせるようにしてもよい。
次に、図7乃至図11を参照して、アナログのベースバンド信号を受信して復号する、BB信号処理部204の復号処理について詳しく説明する。
閾値決定部303は、図7に示すように、現在ビット時間にサンプリングされた3個のサンプリング値と、過去ビットRAM304に記憶されている、現在ビット時間よりも1ビット時間前および2ビット時間前それぞれ1個のサンプリング値の、合わせて5個のサンプリング値のなかから、最大値Maxおよび最小値Minを検出する。
例えば、データ保持部302が、図8に示すように、1ビット時間の時刻t1においてサンプリング値a1,a2,a3を閾値決定部303に供給し、1ビット時間の時刻t2においてサンプリング値a4,a5,a6を閾値決定部303に供給し、以下同様に、時刻t3においてサンプリング値a7,a8,a9を、時刻t4においてサンプリング値a10,a11,a12を、時刻t5においてサンプリング値a13,a14,a15を、それぞれ閾値決定部303に供給するものとする。
そして、図9に示すように、現在ビット時間が時刻t3のときには、閾値決定部303は、時刻t3にサンプリングされた3個のサンプリング値a7,a8,a9と、過去ビットRAM304に記憶されている、時刻t1にサンプリングされたサンプリング値a2および時刻t2にサンプリングされたサンプリング値a5のなかから、最大値Maxおよび最小値Minを検出する。この場合、最大値Maxとしてサンプリング値a8が検出され、最小値Minとしてサンプリング値a5が検出される。
さらに、閾値決定部303は、最大値Maxとしてのサンプリング値a8と、最小値Minとしてのサンプリング値a5の中間値((a5+a8)/2)を閾値Vth3に決定する。図9では、閾値Vth3が1点鎖線で図示されている。
比較部305には、現在ビット時間にサンプリングされた3個のサンプリング値a7,a8,a9のうちの真ん中の時刻のサンプリング値a8が、データ保持部302から供給され、比較部305は、サンプリング値a8が閾値Vth3よりも大きいので、時刻t3の受信信号のビットを“1”とするデジタル信号を出力する。
図10に示すように、現在ビット時間が時刻t4のときには、サンプリング値a5,a8,a10,a11、およびa12のなかから、サンプリング値a12が最大値Maxとして検出され、サンプリング値a5が最小値Minとして検出される。
そして、比較部305は、データ保持部302から供給された時刻t4のサンプリング値a11が、閾値Vth4(=(a5+a12)/2)よりも大きいので、時刻t4の受信信号のビットを“1”とするデジタル信号を出力する。
さらに、図11に示すように、現在ビット時間が時刻t5のときには、サンプリング値a8,a11,a13,a14、およびa15のなかから、サンプリング値a14が最大値Maxとして検出され、サンプリング値a11が最小値Minとして検出される。
そして、比較部305は、データ保持部302から供給された時刻t5のサンプリング値a14が、閾値Vth5(=(a11+a14)/2)よりも大きいので、時刻t5の受信信号のビットを“1”とするデジタル信号を出力する。
従って、1ビット時間ごとの時刻t3,t4,t5においては、他のLSIから、時系列に“1”,“1”,“1”の信号を受信したと復号される。
図12は、BB信号処理部204の復号処理のフローチャートである。この処理は、RF信号処理部203からベースバンド信号が供給されたときに開始され、ベースバンド信号の供給が停止するまで繰り返し実行される。
初めに、ステップS11において、ADC301は、RF信号処理部203から供給されたアナログのベースバンド信号を受信する。ステップS11で受信した1ビット時間分のベースバンド信号を現在ビット時間のベースバンド信号とする。
ステップS12において、ADC301は、現在ビット時間のベースバンド信号を、所定のサンプリング周波数でA/D変換する。
ステップS13において、データ保持部302は、現在ビット時間のベースバンド信号からサンプリングされて得られた所定数のサンプリング値から、3個のサンプリング値を閾値決定部303に供給する。供給された3個のサンプリング値のうちの真ん中の時刻のサンプリング値は、データ保持部302において所定時間だけ保持される。
ステップS14において、閾値決定部303は、現在ビット時間の3個のサンプリング値、現在ビット時間よりも1ビット時間前および2ビット時間前それぞれ1個のサンプリング値の、合わせて5個のサンプリング値のなかから、最大値Maxおよび最小値Minを検出する。
ステップS15において、閾値決定部303は、閾値Vthを決定する。即ち、閾値決定部303は、検出された最大値Maxと最小値Minの中間値を閾値Vthとして決定する。決定された閾値Vthは、比較部305に供給される。
ステップS16において、閾値決定部303は、現在ビット時間の3個のサンプリング値のうちの真ん中の時刻のサンプリング値を、次の閾値計算のために過去ビットRAM304に記憶させる。過去ビットRAM304は、供給されたサンプリング値を、いま記憶している2個のサンプリング値のうちの時刻の古い方のデータに上書きして記憶する。
ステップS17において、データ保持部302は、保持しておいたサンプリング値、即ち、閾値決定部303に供給した3個のサンプリング値のうちの真ん中の時刻のサンプリング値を、比較部305に供給する。
ステップS18において、比較部305は、データ保持部302から供給された現在ビット時間のサンプリング値と、閾値決定部303から供給された閾値Vthを比較する。そして、比較部305は、現在ビット時間のサンプリング値が閾値Vthよりも大きい場合には、現在ビット時間のビットを“1”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給し、現在ビット時間のサンプリング値が閾値Vth以下である場合には、現在ビット時間のビットを“0”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給する。
他のLSIから送信された送信データが、例えば、“1,1,1,1,0,1,・・・”のように、“1”が連続した後に“0”となり、その後再び“1”となっている場合などには、BB信号処理部204に供給されるベースバンド信号にDCオフセットが含まれている。図12を参照して説明したように、現在ビット時間のサンプリング値の他に、過去のビット時間のサンプリング値を含めて最大値Maxおよび最小値Minを検出することにより閾値Vthを決定し、ビット判定に用いる閾値Vthを各ビット時間で変化させることでDCオフセットを除去することができるので、マルチパスによる歪みのある受信信号を精度良く復号することができる。
図13は、BB信号処理部204のその他の構成例を示すブロック図である。なお、図6と対応する部分については同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
図13のBB信号処理部204は、閾値決定部303、過去ビットRAM304、比較部305、ADC331−1乃至331−3、クロック信号変換部332−1および332−2、並びにデータ保持部341−1乃至341−3により構成されている。
RF信号処理部203(図5)から供給されたアナログのベースバンド信号は、ADC331−1乃至331−3に供給される。
ADC331−1は、クロック信号変換部332−1から供給されるクロック信号のタイミングで、RF信号処理部203から供給されるアナログのベースバンド信号をデジタル信号に変換し、データ保持部341−1に供給する。
ADC331−2は、そこに供給される内部クロック信号のタイミングで、RF信号処理部203から供給されるアナログのベースバンド信号をデジタル信号に変換し、データ保持部341−2に供給する。
ADC331−3は、クロック信号変換部332−2から供給されるクロック信号のタイミングで、RF信号処理部203から供給されるアナログのベースバンド信号をデジタル信号に変換し、データ保持部341−3に供給する。
クロック信号変換部332−1は、内部クロック信号よりもTds時間だけ位相が早いクロック信号を生成し、ADC331−1に供給する。クロック信号変換部332−2は、内部クロック信号よりもTds時間だけ位相が遅いクロック信号を生成し、ADC331−3に供給する。ここで、Tds時間は、内部クロック信号よりも非常に短い時間であり、配線長さや内部クロックの両エッジを用いる等で作り出すことが可能である。
データ保持部341−1乃至341−3それぞれは、そこに供給される1ビット時間あたり所定数のサンプリング値から、1個のサンプリング値を閾値決定部303に供給する。データ保持部341−1乃至341−3それぞれは、例えば、シフトレジスタなどで構成され、シフトレジスタの所定の1個の出力を閾値決定部303と接続することにより、所定数のサンプリング値のうちの1個のサンプリング値を閾値決定部303に供給する。
また、データ保持部341−2は、閾値決定部303に供給するサンプリング値を、所定時間だけ遅延させた後、比較部305に供給する。ここで、遅延させる時間は、閾値決定部303で閾値Vthが決定され、比較部305に供給されるまでの時間である。
図13のBB信号処理部204は、図6のBB信号処理部204と同様の入出力を行うが、ADC331−1乃至331−3それぞれの動作処理速度を、図6のADC301の1/3に遅くさせることができるというメリットがある。
また、ADC331−1乃至331−3は、内部クロック信号のクロック周波数fpの2倍以上のサンプリング周波数fsにしなければ正確に復元することができないというサンプリング定理を満たしていないが、受信データの復号に有利となる高速なサンプリングが可能である。ADC331−1乃至331−3がサンプリング定理を満たさないことで、受信信号に同期したクロック信号を生成するクロック同期回路を省略することができるので、構成の簡素化および低消費電力を実現できる。
図14は、BB信号処理部204のさらにその他の構成例を示すブロック図である。なお、図13と対応する部分については同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
BB信号処理部204は、過去ビットRAM304、ADC331−1乃至331−3、クロック信号変換部332−1および332−2、データ保持部341−1乃至341−3、最大値最小値検出部361、並びに距離比較部362により構成されている。
即ち、図14のBB信号処理部204では、図13のBB信号処理部204と比較して、閾値決定部303に代えて最大値最小値検出部361が設けられ、比較部305に代えて距離比較部362が設けられている点が相違する。
最大値最小値検出部361は、データ保持部341−1乃至341−3それぞれから1個ずつ供給されるサンプリング値と、過去ビットRAM304に記憶されている過去の2ビット時間にサンプリングされたサンプリング値とから、サンプリング値の最大値Maxおよび最小値Minを検出する。
また、最大値最小値検出部361は、検出された最大値Maxと最小値Minを距離比較部362に供給するとともに、供給された3個のサンプリング値のうちの真ん中の時刻のサンプリング値、即ち、データ保持部341−2から供給されたサンプリング値を過去ビットRAM304に供給する。
距離比較部362は、データ保持部341−2から供給された現在ビット時間のサンプリング値が、最大値最小値検出部361から供給された最大値Maxと最小値Minのどちらに近いかを判定することにより、現在ビット時間のビットを決定し、アルゴリズム処理部202(図5)に供給する。即ち、現在ビット時間のサンプリング値が最大値Maxに近い場合には、現在ビット時間のビットを“1”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給し、現在ビット時間のサンプリング値が最小値Minに近い場合には、現在ビット時間のビットを“0”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給する。
図15は、図14のBB信号処理部204による復号処理のフローチャートである。この処理も、図12の処理と同様に、RF信号処理部203からベースバンド信号が供給されたときに開始され、ベースバンド信号の供給が停止するまで繰り返し実行される。
初めに、ステップS31において、ADC331−1乃至331−3それぞれは、RF信号処理部203から供給されたアナログのベースバンド信号を受信する。ステップS31で受信した1ビット時間分のベースバンド信号を現在ビット時間のベースバンド信号とする。
ステップS32において、ADC331−1乃至331−3それぞれは、現在ビット時間のベースバンド信号を、所定のサンプリング周波数でA/D変換する。
ステップS33において、データ保持部341−1乃至341−3それぞれは、1ビット時間あたり所定数のサンプリング値のなかから1個のサンプリング値を最大値最小値検出部361に供給する。供給されたサンプリング値は、データ保持部341−2において所定時間だけ保持される。
ステップS34において、最大値最小値検出部361は、データ保持部341−1乃至341−3それぞれから1個ずつ供給されるサンプリング値と、過去ビットRAM304に記憶されている過去の2ビット時間にサンプリングされたサンプリング値とから、サンプリング値の最大値Maxおよび最小値Minを検出する。検出された最大値Maxと最小値Minは、距離比較部362に供給される。
ステップS35において、最大値最小値検出部361は、供給された3個のサンプリング値のうちの真ん中の時刻のサンプリング値、即ち、データ保持部341−2から供給されたサンプリング値を、次の閾値計算のために過去ビットRAM304に記憶させる。過去ビットRAM304は、供給されたサンプリング値を、いま記憶している2個のサンプリング値のうちの時刻の古い方のデータに上書きして記憶する。
ステップS36において、データ保持部341−2は、保持しておいたサンプリング値を、距離比較部362に供給する。
ステップS37において、距離比較部362は、データ保持部341−2から供給された現在ビット時間のサンプリング値が、最大値最小値検出部361から供給された最大値Maxと最小値Minのどちらに近いかを判定する。そして、距離比較部362は、現在ビット時間のサンプリング値が最大値Maxに近い場合には、現在ビット時間のビットを“1”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給し、現在ビット時間のサンプリング値が最小値Minに近い場合には、現在ビット時間のビットを“0”とするデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給する。
以上のように、図15の復号処理によれば、現在ビット時間のサンプリング値が、現在ビット時間と過去のビット時間の複数のサンプリング値の最大値Maxおよび最小値Minのいずれに近いかによって、現在ビット時間のビットの判定を行うことでDCオフセットを除去することができるので、マルチパスによる歪みのある受信信号を精度良く復号することができる。
図16は、BB信号処理部204のさらにその他の構成例を示すブロック図である。
図16のBB信号処理部204は、図6で示したADC301、データ保持部302、閾値決定部303、過去ビットRAM304、および比較部305のセット(点線で示されている)が3つ設けられている。各セットのADC301、データ保持部302、閾値決定部303、過去ビットRAM304、および比較部305それぞれには、“−(ハイフン)1”、“−2”、または“−3”が付され、他のセットと区別がなされている。なお、図16においては、内部クロック信号の図示が省略されている。
3つのセットそれぞれは、図6のBB信号処理部204と同様に、現在ビット時間のサンプリング値が、現在ビット時間と過去のビット時間の複数のサンプリング値の最大値Maxおよび最小値Minから求めた閾値Vthよりも大きいか否かによって、現在ビット時間のビットの判定を行う。
但し、3つのセットそれぞれでは、サンプリング値の最大値Maxおよび最小値Minを求めるときのサンプリング値の取り方が異なる。例えば、ADC301−1、データ保持部302−1、閾値決定部303−1、過去ビットRAM304−1、および比較部305−1からなるセットでは、図7を参照して説明したように、現在ビット時間の3個のサンプリング値、現在ビット時間よりも1ビット時間前および2ビット時間前それぞれ1個のサンプリング値の、合わせて5個のサンプリング値のなかから最大値Maxおよび最小値Minを検出する。
また、ADC301−2、データ保持部302−2、閾値決定部303−2、過去ビットRAM304−2、および比較部305−2からなるセットでは、現在ビット時間と、現在ビット時間よりも1ビット時間前および2ビット時間前のいずれも3個のサンプリング値の、合わせて9個のサンプリング値のなかから最大値Maxおよび最小値Minを検出する。そして、ADC301−3、データ保持部302−3、閾値決定部303−3、過去ビットRAM304−3、および比較部305−3からなるセットでは、図17に示すように、現在ビット時間の3個のサンプリング値と、現在ビット時間よりも2ビット時間前および4ビット時間前それぞれ1個のサンプリング値の、合わせて5個のサンプリング値のなかから最大値Maxおよび最小値Minを検出する。
従って、閾値決定部303−1乃至303−3から出力される閾値Vthは、それぞれ異なり、比較部305−1乃至305−3が出力するビット判定結果としての現在ビット時間のビットも異なるものとなることが有り得る。
比較部305−1乃至305−3それぞれから出力される、現在ビット時間のビットを表すデジタル信号は、多数決判定部381に供給される。多数決判定部381は、比較部305−1乃至305−3それぞれのビット判定結果の多数決を取り、数の多い方のビットを表すデジタル信号をアルゴリズム処理部202に供給する。
図18を参照して、BB信号処理部204によるビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を説明する。ビット誤り率は、1ビット時間を等間隔に500サンプリングした500点についてそれぞれ計算し、図18の横軸は、500サンプリングの各サンプリング順番を表し、縦軸は、ビット誤り率を表す。
図18において、1点鎖線で示されるBER1は、例えば、受信したアナログベースバンド信号の取り得る最大値と最小値の中間の値など、予め決定された所定の閾値を基準にビットを判定する硬判定による復号を行った場合のビット誤り率を示している。また、実線で示されるBER2は、図6のBB信号処理部204による復号を行った場合のビット誤り率を示し、点線で示されるBER3は、図16のBB信号処理部204による復号を行った場合のビット誤り率を示している。
従って、図18によれば、図6のBB信号処理部204は、硬判定よりも精度良く復号することができる。また、最大値Maxと最小値Minの検出に用いられるサンプリング値の取り方が異なる複数のビット判定結果の多数決結果を最終的なビット判定結果とする図16のBB信号処理部204は、図6のBB信号処理部204よりもさらに精度良く復号することができる。
また、図18の横軸は、1ビット時間を500サンプリングしたときのサンプリング位置を表すということもできるので、図6および図16のBB信号処理部204の復号は、1ビット時間中のどの位置のサンプリング値を使っても、ほぼ同様のビット誤り率を得ることができる。即ち、1ビット時間中のサンプリング位置は問題とならない。
従って、BB信号処理部204に供給される内部クロック信号は、受信したRF信号からクロック同期回路を動作させて得られる、受信信号に同期したクロック信号でもよいし、LSI100内部の基準クロック信号に同期したクロック信号でもよいし、受信信号に同期したクロック信号および基準クロック信号に同期したクロック信号のいずれとも非同期な信号でもよい。LSI100内部の基準クロック信号に同期したクロックか、または、受信信号に同期したクロック信号および基準クロック信号に同期したクロック信号のいずれとも非同期なクロックで動作する場合には、受信したRF信号に同期したクロック信号を生成するクロック同期回路を省略することができる。
ところで、図6のBB信号処理部204などでは、現在ビット時間の3個のサンプリング値、現在ビット時間よりも1ビット時間前および2ビット時間前それぞれ1個のサンプリング値の、合わせて5個のサンプリング値に基づいて、現在ビット時間の受信信号のビットを判定するようにしたが、現在ビット時間で何点のサンプリングを行うのが良いか、および、現在ビット時間のサンプリング値以外にどのビット時間のサンプリング値を何点利用するのが良いかは、受信信号の信号レートおよび定常性のパターン(種類)によっても変わってくる。従って、現在ビット時間のサンプリング数、および、現在ビット時間以外に利用するサンプリング値の時間およびサンプリング数については、同一のマルチパス環境においてテストし、最適なサンプリング値の取り方を決めることが望ましい。
図19は、サンプリング値の取り方を条件1乃至条件5にそれぞれ設定してビット誤り率をテストしたときのテスト結果の例を示している。
現在ビット時間については、条件1乃至5のいずれも3点のサンプリングを行い、過去のビット時間については、条件1が過去の4ビット時間で1点ずつの4点のサンプリングを行い、条件2乃至5が過去の3ビット時間で1点ずつの3点のサンプリングを行っている。また、未来のビット時間については、条件1および2が未使用で、条件3が未来の1ビット時間で1点、条件4が未来の2ビット時間で各1点の計2点、条件5が未来の3ビット時間で各1点の計3点のサンプリングをそれぞれ行っている。未来のビット時間を利用する場合、BB信号処理部204は、現在ビット時間の数ビット先の信号を受信するまで待機してから、現在ビット時間の処理を行う。
図19に示されるテスト結果によれば、条件1から5のなかで、条件2が最もビット誤り率が低いことから、テスト環境と同一環境下でのマルチパス信号の復号処理では、現在ビット時間については3個のサンプリング値を使用するとともに過去の3つのビット時間で1点ずつサンプリングされた計3個のサンプリング値を使用することが決定される。
また、図19において、点線は、同一環境下における硬判定のビット誤り率を示しており、条件1乃至5のいずれであっても、硬判定による受信信号の復号よりは、ビット誤り率を改善することができる。
なお、図19は、現在ビット時間のサンプリング点数が3点である場合についての例であるが、現在ビット時間のサンプリング点数は、図示は省略するが、3点以外の、1点、2点、または4点以上であっても、硬判定による受信信号の復号よりは、ビット誤り率を改善することができる。但し、現在ビット時間中の受信波形の変化を十分に捉えるためには、サンプリング点数を3点以上とすることが望ましい。
以上のように、BB信号処理部204によれば、マルチパスによる歪みのある受信信号を精度良く復号することができる。なお、BB信号処理部204は、バースト信号とパケット信号の両方に対応可能である。
また、BB信号処理部204では、従来の受信装置のように、常にプリアンブルを送信して、そのプリアンブルの変更に追従するようにBB信号処理部204を初期化または更新する必要がない。
以上では、無線通信の伝送媒体として“電波”を用いる例について説明したが、無線通信の伝送媒体としては、その他、光や、個体、液体、気体等の中における粗密波または表面弾性波など、波の性質を有するものであればなんでもよい。従って、例えば、ビル間や山と山を結ぶ固定のマイクロ波通信、および、電波塔間における電波無線通信などに対しても本発明は適用可能である。例えば、北極海の氷で閉ざされた海の中における通信などにも適用することができる。
また、マルチパスの定常性は、ケーブルによる反射や、回路内に分岐等を持ちインピーダンス不整合を伴う固定の有線通信、例えば、電力線通信やバス接続された配線などにも起こり得る。
従って、例えば、図20に示すように、入出力I/F201とアルゴリズム処理部202との間に、BB信号処理部204と同様のBB信号処理部441を設け、入出力I/F201から出力されるデジタル信号に対して、上述した復号処理を行わせることによって、インピーダンス不整合等によるマルチパスの定常性を除去したデジタル信号を生成し、アルゴリズム処理部202に供給することができる。
上述した復号処理などの一連の処理を、筐体2内のLSIどうしではなく、所定の閉鎖された空間内に配置されたコンピュータ間で行うことも可能である。
図21は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)501は、ROM(Read Only Memory)502、または記憶部508に記憶されているプログラムに従って上述した機能の処理の他、各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)503には、CPU501が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU501、ROM502、およびRAM503は、バス504により相互に接続されている。
CPU501にはまた、バス504を介して入出力インタフェース505が接続されている。入出力インタフェース505には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部506、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部507が接続されている。CPU501は、入力部506から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU501は、処理の結果を出力部507に出力する。
入出力インタフェース505に接続されている記憶部508は、例えばハードディスクからなり、CPU501が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部509は、電波を媒体として外部の装置と無線で通信する。また、通信部509は、必要に応じてルータ、モデムなどを備え、有線による通信も行う。
入出力インタフェース505に接続されているドライブ510は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア511が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部508に転送され、記憶される。
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを格納するプログラム記録媒体は、図21に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア511、または、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM502や、記憶部508を構成するハードディスクなどにより構成される。プログラム記録媒体へのプログラムの格納は、通信部509を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の通信媒体を利用して行われる。
本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
マルチパスフェージングを説明する図である。 本発明を適用した情報処理装置の一実施の形態の構成例を示す斜視図である。 他のLSIから送信された送信波形と、その送信波形を受信したときの受信波形を示す図である。 図3の送信波形および受信波形を平均した波形を示す図である。 図2のLSIの構成例を示すブロック図である。 BB信号処理部の詳細な構成例を示すブロック図である。 閾値決定部による最大値Maxおよび最小値Minの検出について説明する図である。 データ保持部のサンプリング値の供給について説明する図である。 閾値Vthの決定例について説明する図である。 閾値Vthの決定例について説明する図である。 閾値Vthの決定例について説明する図である。 図6のBB信号処理部の復号処理について説明するフローチャートである。 BB信号処理部のその他の構成例を示すブロック図である。 BB信号処理部のさらにその他の構成例を示すブロック図である。 図14のBB信号処理部の復号処理について説明するフローチャートである。 BB信号処理部のさらにその他の構成例を示すブロック図である。 データ保持部によるサンプリングについて説明する図である。 BB信号処理部によって復号した場合のビット誤り率を示す図である。 サンプリング値の取り方について説明する図である。 LSIのその他の構成例を示すブロック図である。 本発明を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
符号の説明
1 情報処理装置, 2 筐体, 11乃至14 基板, 100,102,104,106,108 LSI, 204 BB信号処理部, 301 ADC, 302 データ保持部, 303 閾値決定部, 304 過去ビットRAM, 305 比較部, 361 最大値最小値検出部, 362 距離比較部, 381 多数決判定部

Claims (4)

  1. マルチパスの定常性を有する信号を受信して、復号する受信装置において、
    前記信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をビット判定する奇数個のビット判定部と、
    前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部と
    を備え、
    前記奇数個のビット判定部のそれぞれは、
    前記現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求めるサンプリング手段と、
    前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定する閾値判定手段と
    を有し、
    前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、
    前記奇数個のビット判定部のそれぞれの前記閾値判定手段では、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
    受信装置
  2. 前記サンプリング手段と前記閾値判定手段が動作の基準とするクロック信号は、前記信号に同期したクロック信号および前記受信装置の基準クロック信号とは非同期な信号である
    請求項1に記載の受信装置。
  3. マルチパスの定常性を有する信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をビット判定する奇数個のビット判定部と、前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部とを備え、前記信号を受信して、復号する受信装置の受信方法において、
    前記奇数個のビット判定部のそれぞれが、
    前記現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求め、
    前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定し、
    前記多数決判定部が、
    前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する
    ステップを含み、
    前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、
    前記奇数個のビット判定部のそれぞれでは、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
    受信方法
  4. マルチパスの定常性を有する信号を受信して、復号する処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって
    前記コンピュータを、
    ビット判定する奇数個のビット判定部と、
    前記奇数個のビット判定部のビット判定結果の多数決結果を、前記現在ビット時間の前記信号のビットと判定する多数決判定部
    として機能させ、
    前記奇数個のビット判定部のそれぞれは、
    前記現在ビット時間の前記信号を1ビットに相当するビット時間単位に区切ったときの、最近に受信した現在ビット時間の前記信号をサンプリングしてサンプリング値を求めるサンプリング手段と、
    前記現在ビット時間の前記サンプリング値と前記現在ビット時間より前の少なくとも2つの異なるビット時間である複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の最大値および最小値から求めた閾値を、前記現在ビット時間の一つの前記サンプリング値と比較して、前記現在ビット時間の前記信号のビットを判定する閾値判定手段と
    を有し、
    前記最大値および最小値を求める際の前記現在ビット時間の前記サンプリング値の個数はn個(n≧3)であり、前記複数の過去ビット時間それぞれの前記サンプリング値の個数はn個以下であって、
    前記奇数個のビット判定部のそれぞれの前記閾値判定手段では、前記閾値を求めるために利用する前記過去ビット時間か、または、前記過去ビット時間のサンプリング値の個数が異なる
    プログラム
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