JP5014796B2 - ポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリマーで修飾された金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法に関する。また本発明は、該方法により製造されるポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子に関する。
粒子径100nm以下の金属カルコゲン化物ナノ粒子は、その表面積の大きさや量子特性を利用して、触媒、紫外線遮蔽材料、蛍光材料、発光材料、塗料、磁性材料など多くの用途への展開が検討されている。ところがこのような金属カルコゲン化物ナノ粒子は表面活性が高いため凝集しやすく、安定した分散形態で製造することが困難であり、また原料から分離精製することが困難であった。従来このようなナノ粒子の凝集を防止し、安定に単離するための技術として保護剤によるナノ粒子の修飾が提案されている。保護剤としては例えば、ドデカンチオールやメルカプト酢酸などの低分子チオール、オレイン酸やステアリン酸などの長鎖アルキルカルボン酸、オレイルアミンやドデシルアミンなどの長鎖アルキルアミン、トリオクチルホスフィンオキシドやトリブチルホスフィンオキシドなどの長鎖アルキルホスフィンオキシド、ポリビニルピロリドンやポリビニルピリジンなどの配位性ポリマーなどを挙げることができる。
しかしドデカンチオールを始めとする低分子化合物はナノ粒子安定化の効果が不十分であり、得られるナノ粒子は室温で1週間以内に凝集してしまうという問題があった。例えば特許文献1では、低分子チオールと低分子アミンで表面を複合修飾された金属カルコゲン化物ナノ粒子が提案されているが、1ヶ月を超えるような長期保存はできない。特許文献2には、半導体ナノ粒子を脂溶性表面修飾分子を用いて有機溶媒中へ抽出する方法が記載されているが、該脂溶性表面修飾分子の分子量が小さいために有機溶媒中における分散安定性が不十分であった。脂溶性表面修飾分子として分子量の大きなものを用いた場合には、有機溶媒への抽出に時間がかかるため生産性が低く実用的ではなかった。特許文献3には、表面安定化剤により安定化された半導体ナノ粒子の表面安定化剤を置換して親水性と親油性の相互変換を行い、半導体ナノ粒子を水層と有機層に相互移動させて回収する方法が記載されている。しかし該方法は複層半導体ナノ粒子を製造するための方法であり、表面安定化剤としてポリマーを利用すると外殻層を形成できなくなるために、表面安定化剤としては低分子化合物を使用せざるを得ず、したがってナノ粒子の安定性が乏しいという欠点があった。
また非特許文献1に記載されているようにカルボキシル基含有ポリスチレンのような配位性ポリマーを用いた場合も、ナノ粒子への付着力が弱いため長期安定性に問題があった。さらに配位性ポリマーを用いた場合、ナノ粒子合成の原料をも取り込んでしまうため、ナノ粒子を精製することが困難であった。半導体ナノ粒子を強固に修飾できるポリマーとして、特許文献4と特許文献5に末端にSH基を有するポリアルキレングリコールを利用する技術が記載されている。しかし該ポリマーは親水性であるため、親水性溶媒中で合成された半導体ナノ粒子を疎水性溶媒中へ抽出することができず、半導体ナノ粒子を単離精製することができなかった。特許文献6には、リン原子含有配位子を有するポリマーで表面修飾された半導体ナノ粒子について記載されているが、該ポリマーの合成が煩雑であり生産性も低いため実用的ではなかった。
特開2003‐89522 特開2003‐73126 特開2003‐226521 特開2002‐121548 特開2002‐121549 特開2002‐105325 X.Yangら、Langmuir 2004,20,6071
本発明が解決しようとする課題は、凝集を防止して長期間安定に存在するポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子を、簡便かつ経済的に製造・精製する方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段として、本発明者は以下の方法を提案する。
本発明のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法は、親水性溶媒中で合成された数平均粒子径100nm以下の金属カルコゲン化物ナノ粒子を、官能基含有疎水性低分子化合物で修飾することにより疎水性溶媒中へ抽出し、次いで該疎水性低分子化合物を官能基含有疎水性高分子化合物で置換することを特徴とする。
本発明の好適な実施態様は、上記金属カルコゲン化物ナノ粒子が、親水性溶媒中で金属化合物とカルコゲン化剤とを混合することにより得られるものである。
本発明の好適な実施態様は、上記金属化合物が、金属のハロゲン化物、金属の有機酸塩、金属の硝酸塩、金属の硫酸塩、金属の過塩素酸塩、金属のアセチルアセトナートからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
本発明の好適な実施態様は、上記カルコゲン化剤が、MOH、M2S、MSH、H2S、M2Se、MSeH、H2Se、M2Te、MTeH、H2Te、チオ尿素(Mはアルカリ金属)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
本発明の好適な実施態様は、上記金属カルコゲン化物ナノ粒子中の金属が、Zn、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Cu、Ag、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、ランタノイド、アクチノイドからなる群より選ばれる1種以上の元素からなるものである。
本発明の好適な実施態様は、上記金属カルコゲン化物ナノ粒子の数平均粒子径が1nm〜20nmの範囲である。
本発明の好適な実施態様は、上記官能基含有疎水性低分子化合物および上記官能基含有疎水性高分子化合物における官能基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルバモイル基、ホルミル基、チオホルミル基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、トリアルコキシシリル基、ヒドロキシル基のアルカリ金属塩、カルボキシル基のアルカリ金属塩、メルカプト基のアルカリ金属塩、ジチオカルボキシル基のアルカリ金属塩からなる群より選ばれる1種以上の基である。
本発明の好適な実施態様は、上記官能基含有疎水性高分子化合物が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニルからなる群より選ばれる1種以上のモノマーを重合させて得られる構造を有するものである。
本発明の好適な実施態様は、上記官能基含有疎水性高分子化合物が、チオカルボニルチオ化合物を連鎖移動剤とする可逆的付加脱離連鎖移動重合により合成されたものである。
本発明の好適な実施態様は、上記官能基含有疎水性高分子化合物が、可逆的付加脱離連鎖移動重合の後に末端をメルカプト基に変換されたものである。
また本発明は、上記記載の製造方法により得られるポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子も含有する。
本発明の方法により、金属カルコゲン化物ナノ粒子を簡便かつ経済的にポリマーで修飾することができ、凝集を防止して長期間安定に保存することが可能となる。また本発明の方法によれば、金属カルコゲン化物ナノ粒子を未反応原料から容易に分離精製することが可能となり、純度の高い金属カルコゲン化物ナノ粒子を製造することが可能となる。本発明の方法により得られるポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子は光学的、電子的、量子的特性に優れるため、紫外線遮蔽材料、蛍光材料、発光材料、磁性材料などとして優れる。
オレイン酸によりヘキサン層に抽出されたZnOナノ粒子。右側がオレイン酸を含まない場合で、左側がオレイン酸を含む場合。それぞれ上層がヘキサン層、下層がメタノール層。UVランプ(365nm)照射下に撮影。
本発明の方法は、親水性溶媒中で合成された数平均粒子径100nm以下の金属カルコゲン化物ナノ粒子を、官能基含有疎水性低分子化合物で修飾することにより疎水性溶媒中へ抽出し、次いで該疎水性低分子化合物を官能基含有疎水性高分子化合物で置換することを特徴とする。
本発明において親水性とは、水に対する溶解度がトルエンに対する溶解度の2倍以上となる性質と定義する。本発明において金属カルコゲン化物ナノ粒子の合成時に使用する親水性溶媒としてはこの条件を満たしていれば特に限定されないが、入手性および金属カルコゲン化物の合成に適する点で、水、メタノール、エタノール、2‐プロパノール、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)が好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。また親水性を損なわない範囲で少量の疎水性溶媒を添加して用いてもよい。
本発明の金属カルコゲン化物ナノ粒子は、数平均粒子径100nm以下のものである。粒子径が100nmを超えるとナノ粒子特有の性質が消失してバルクとしての性質に近いものとなってしまう。サイズ効果による特性発現が顕著となる点で、金属カルコゲン化物ナノ粒子の数平均粒子径は1〜50nmの範囲にあることが好ましく、1〜20nmの範囲にあることがより好ましい。金属カルコゲン化物ナノ粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)分析あるいは動的光散乱(DLS)分析により求めることができる。なお本発明において、金属カルコゲン化物ナノ粒子が球形でない場合、たとえば棒状やフットボール型の場合には、短い方の径を選んで計算するものとする。
本発明の金属カルコゲン化物ナノ粒子の合成方法としては特に限定されないが、反応が簡便で高収率である点で、親水性溶媒中で金属化合物とカルコゲン化剤とを混合する方法が好ましい。
本発明で使用する上記金属化合物としては特に限定されないが、入手性の点で金属のハロゲン化物、金属の有機酸塩、金属の硝酸塩、金属の硫酸塩、金属の過塩素酸塩、金属のアセチルアセトナートが好ましく、金属の有機酸塩がより好ましく、反応性の点で金属の有機酸塩のうち金属のカルボン酸塩、金属のジチオカルバミン酸塩、金属のキサントゲン酸塩がさらに好ましい。上記カルボン酸塩としては特に限定されないが、酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、サリチル酸塩が入手性の点で特に好ましい。上記ジチオカルバミン酸塩としては特に限定されないが、ジメチルジチオカルバミン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸塩、ジブチルジチオカルバミン酸塩、N‐エチル‐N‐フェニルジチオカルバミン酸塩、N‐ペンタメチレンジチオカルバミン酸塩、ジベンジルジチオカルバミン酸塩が入手性の点で特に好ましい。上記キサントゲン酸塩としては特に限定されないが、ブチルキサントゲン酸塩、イソプロピルキサントゲン酸塩が入手性の点で特に好ましい。これらは結晶水を含んでいてもよい。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
上記金属化合物における金属元素としては特に限定されないが、光学的・電子的特性に優れる点で、Zn、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Cu、Ag、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、ランタノイド、アクチノイドからなる群より選ばれる元素が好ましく、Zn、Ti、Mn、Ni、Co、Cu、Cd、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、La、Eu、Tbからなる群より選ばれる元素がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。複数を組み合わせて用いる場合には、それぞれの成分比については特に限定されないが、量子的特性に優れる点で1種類の金属を主成分として90モル%以上含有することが好ましく、95モル%以上含有することがより好ましい。主成分としての金属元素は特に限定されないが、合成の容易さと量子的特性に優れる点でZn、Ti、Cdが好ましく、安全性の点でZn、Tiが特に好ましい。
上記金属化合物の具体例としては特に限定されないが、入手性の点で、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、安息香酸亜鉛、クエン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、ギ酸亜鉛二水和物、ラウリン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛三水和物、塩化亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、N‐エチル‐N‐フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N‐ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、アセチルアセトナト亜鉛水和物、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、クレシル酸チタン(IV)、酸化チタン(II)アセチルアセトナート、酢酸コバルト(II)四水和物、アセチルアセトナトコバルト(II)、安息香酸コバルト(II)、塩化コバルト(II)、クエン酸コバルト(II)二水和物、シュウ酸コバルト(II)二水和物、ステアリン酸コバルト(II)、酢酸ニッケル(II)四水和物、アセチルアセトナトニッケル(II)二水和物、ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、ギ酸ニッケル(II)二水和物、乳酸ニッケル(II)四水和物、ステアリン酸ニッケル(II)、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)、臭化銅(II)、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)2.5水和物、ギ酸銅(II)四水和物、グルコン酸銅(II)、オレイン酸銅(II)、フタル酸銅(II)、ジメチルジチオカルバミン酸銅、酢酸カドミウム二水和物、臭化カドミウム四水和物、塩化カドミウム、ギ酸カドミウム二水和物、ステアリン酸カドミウム、酢酸マンガン(II)四水和物、ギ酸マンガン(II)二水和物、マンガン(III)アセチルアセトナートが好ましく、反応性の点で酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、クエン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、ギ酸亜鉛二水和物、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、N‐エチル‐N‐フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N‐ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、アセチルアセトナト亜鉛水和物、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、酢酸マンガン(II)四水和物、ギ酸マンガン(II)二水和物、マンガン(III)アセチルアセトナートがより好ましい。
本発明で使用する上記カルコゲン化剤としては特に限定されず、上記金属化合物と反応してO、S、Se、あるいはTe原子を与える化合物を使用することができる。このようなカルコゲン化剤としては、反応性の点で、MOH、M2S、MSH、H2S、M2Se、MSeH、H2Se、M2Te、MTeH、H2Te、チオ尿素が好ましい(式中、Mはアルカリ金属を表す)。これらのうち入手性の点でLiOH、KOH、NaOH、Na2S、Li2S、NaSH、H2S、チオ尿素がより好ましく、安全性の点でLiOH、KOH、NaOH、Na2S、NaSH、チオ尿素がさらに好ましい。
本発明において親水性溶媒中で金属化合物とカルコゲン化剤とを反応させるときの条件については特に限定されず、任意の反応条件を採用可能である。反応の方式としては例えば親水性溶媒中に金属化合物とカルコゲン化剤とを単体あるいは溶液として同時に加えてもよく、一方を親水性溶媒中に溶解させておいて他方を単体あるいは溶液として添加してもよい。均一なナノ粒子が得られる点で反応は攪拌下に行うことが好ましく、超音波照射下に行うことがより好ましい。反応温度についても限定されないが、反応性の点で0℃〜150℃の範囲が好ましく、20℃〜100℃の範囲がより好ましい。濃度についても限定されず任意であるが、反応性と生産性の点で、金属化合物とカルコゲン化剤ともに0.001mol/L〜1mol/Lの範囲が好ましく、0.01mol/L〜0.7mol/Lの範囲がより好ましい。反応時間についても限定されないが、生産性の点で5分〜20時間が好ましく、20分〜10時間がより好ましい。温度・濃度・反応時間を調節することにより金属カルコゲン化物ナノ粒子の粒子径を制御することが可能であるため、所望の粒子径のナノ粒子が得られるように反応条件を設定することが好ましい。一般的に温度を高くし、濃度を大きくし、反応時間を長くすることにより得られるナノ粒子の粒子径は大きくなる傾向にある。
本発明で使用する官能基含有疎水性低分子化合物において、官能基とは金属カルコゲン化物ナノ粒子の表面に配位または結合することのできる官能基を意味する。このような官能基としては特に限定されないが、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルバモイル基、ホルミル基、チオホルミル基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、トリアルコキシシリル基、ヒドロキシル基のアルカリ金属塩、カルボキシル基のアルカリ金属塩、メルカプト基のアルカリ金属塩、ジチオカルボキシル基のアルカリ金属塩、イミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、スルホ基のアルカリ金属塩、ハロホルミル基、シアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基などを挙げることができる。これらのうち安定性および修飾能力の点でヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルバモイル基、ホルミル基、チオホルミル基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、トリアルコキシシリル基、ヒドロキシル基のアルカリ金属塩、カルボキシル基のアルカリ金属塩、メルカプト基のアルカリ金属塩、ジチオカルボキシル基のアルカリ金属塩が好ましく、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルバモイル基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、トリアルコキシシリル基、ヒドロキシル基のアルカリ金属塩、カルボキシル基のアルカリ金属塩、メルカプト基のアルカリ金属塩、ジチオカルボキシル基のアルカリ金属塩がより好ましい。
上記官能基含有疎水性低分子化合物は分子量が600以下の化合物である。また疎水性とは、疎水性溶媒としてのトルエンまたはn‐ヘキサンに対する溶解度のいずれかが、親水性溶媒としての水に対する溶解度に対して2倍以上となる性質と定義する。このような官能基含有疎水性低分子化合物しては特に限定されないが、入手性および修飾能力の点で、3,3,5‐トリメチル‐1‐ヘキサノール、3‐メチル‐1‐ブタノール、イソデシルアルコール、オレイルアルコールなどのヒドロキシル基含有化合物およびこれらのアルカリ金属塩;イソノナン酸、オレイン酸、ステアリン酸などのカルボキシル基含有化合物およびこれらのアルカリ金属塩;1‐オクタンチオール、1‐デカンチオール、1‐ドデカンチオール、1‐ヘキサデカンチオール、チオフェノールなどのメルカプト基含有化合物およびこれらのアルカリ金属塩;ジイソブチルアミン、3‐(ドデシルオキシ)プロピルアミン、2‐エチルヘキシルアミン、n‐オクチルアミン、オレイルアミンなどのアミノ基含有化合物;オレアミド、ステアリルアミドなどのカルバモイル基含有化合物;チオ安息香酸などのチオカルボキシル基含有化合物およびこれらのアルカリ金属塩;ジチオ安息香酸、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸、N‐エチル‐N‐フェニルジチオカルバミン酸、エチルキサントゲン酸、イソプロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸などのジチオカルボキシル基含有化合物およびこれらのアルカリ金属塩;トリメトキシオクチルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリエトキシフェニルシランなどのトリアルコキシシリル基含有化合物が好ましい。また上記官能基を1分子中に2種以上含有する化合物を用いることもできる。上記アルカリ金属塩中のアルカリ金属としては、入手性の点でLi、Na、Kが好ましい。
本発明の官能基含有疎水性高分子化合物は分子量が1000以上の化合物である。疎水性および官能基については上記官能基含有疎水性低分子化合物と同じ定義である。本発明の官能基含有疎水性高分子化合物の主鎖構造としては特に限定されず、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α‐メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、塩化ビニリデンなどのビニル系モノマーを重合させたもの;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリカーボネート;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;ポリビニルブチラールなどを使用することができる。これらのうち高分子の性質をコントロールしやすい点でビニル系モノマーを重合させて得られる構造を有するものが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニルからなる群より選ばれる1種以上のモノマーを重合させて得られる構造を有するものがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの例としては特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n‐ブチル、(メタ)アクリル酸t‐ブチル、(メタ)アクリル酸2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2‐メトキシエチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸フェニルなどを挙げることができる。複数のモノマーを重合させて共重合体とする場合には、その構造は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、傾斜共重合体など任意である。
本発明の官能基含有疎水性高分子化合物の分子量や分子量分布については特に限定されないが、低分子化合物を置換して金属カルコゲン化物ナノ粒子を修飾する効率が高い点で、数平均分子量は2000〜50000の範囲にあることが好ましい。また得られるポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の物性が均一となる点で、分子量分布は1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。ここで数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により決定される値であり、分子量分布はMw/Mnとして計算される値である。
本発明の官能基含有疎水性高分子化合物における官能基については、上記官能基含有疎水性低分子化合物と同じである。ただし該官能基含有疎水性高分子化合物は、官能基含有疎水性低分子化合物を置換して金属カルコゲン化物ナノ粒子を修飾するため、その官能基は官能基含有疎水性低分子化合物における官能基よりも金属カルコゲン化物ナノ粒子に対する修飾能力の高いものが好ましい。上記記載の官能基のうち、最も修飾能力の高いものがメルカプト基であるため、官能基含有疎水性高分子化合物における官能基としてはメルカプト基が好ましい。メルカプト基を官能基として有する疎水性高分子化合物を得るための方法としては、メルカプト酢酸の存在下にモノマーをラジカル重合させた後、高分子末端のスルフィド部分を分解することによりメルカプト基に変換する方法;チオカルボニルチオ化合物を連鎖移動剤とする可逆的付加脱離連鎖移動重合により合成する方法などが挙げられる。生産性、簡便性、官能基導入率の点で、チオカルボニルチオ化合物を連鎖移動剤とする可逆的付加脱離連鎖移動重合により合成する方法が好ましい。
上記チオカルボニルチオ化合物を連鎖移動剤とする可逆的付加脱離連鎖移動重合に関しては特に限定はなく、例えば“HANDBOOK OF RADICAL POLYMERIZATION”,K.Matyjaszewski and T.P.Davis Ed.,Wiley,2002,661ページに記載の方法、あるいは同書記載の参考文献記載の方法を適用可能である。ただし反応性の点で70℃以上の温度で反応させることが好ましく、80℃以上がより好ましい。重合の形式は塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合など限定されないが、重合後の後処理が容易である点で塊状重合または溶液重合が好ましく、溶液重合がより好ましい。
本発明において使用するチオカルボニルチオ化合物としては特に限定されないが、入手性、反応性の点で以下の化合物が好ましい;
(式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、Acはアセチル基を表し、rは1以上の整数である)。これらのチオカルボニルチオ化合物のうちより好ましいものとしてはトリチオカーボネート構造を有する化合物を挙げることができる。トリチオカーボネート構造を有する化合物は一般に可逆的付加脱離連鎖移動重合の反応性が高い。
上記可逆的付加脱離連鎖移動重合により得られたポリマーを用いて金属カルコゲン化物ナノ粒子の表面を修飾する際、修飾効率が高くする目的で末端をメルカプト基に変換しておくことが好ましい。末端をメルカプト基に変換する方法としては処理剤により処理する方法が挙げられる。処理剤としては特に限定されないが、SH基に変換する効率が高い点で、水素‐窒素結合含有化合物、塩基性化合物、還元剤からなる群より選ばれる化合物が好ましい。
上記処理剤のうち、水素‐窒素結合含有化合物としては特に限定されないが、アンモニア、ヒドラジン、1級アミン、2級アミン、アミド化合物、アミン塩酸塩、水素‐窒素結合含有高分子、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)などを挙げることができる。上記1級アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、n‐プロピルアミン、n‐ブチルアミン、t‐ブチルアミン、2‐エチルヘキシルアミン、2‐アミノエタノール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,2‐ジアミノプロパン、1,4‐ジアミノブタン、シクロヘキシルアミン、アニリン、フェネチルアミンなどを挙げることができる。上記2級アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ‐2‐エチルヘキシルアミン、イミノジ酢酸、ビス(ヒドロキシエチル)アミン、ジ‐n‐ブチルアミン、ジ‐t‐ブチルアミン、ジフェニルアミン、N‐メチルアニリン、イミダゾール、ピペリジンなどを挙げることができる。上記アミド化合物の例としては、アジピン酸ヒドラジド、N‐イソプロピルアクリルアミド、オレアミド、チオアセトアミド、ホルムアミド、アセトアニリド、フタルイミド、コハク酸イミドなどを挙げることができる。上記アミン塩酸塩の例としては、アセトアミジン塩酸塩、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、モノエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、塩酸グアニジンなどを挙げることができる。上記水素‐窒素結合含有高分子の例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどを挙げることができる。上記HALSの例としては、アデカスタブLA‐77(旭電化工業(株)製)、チヌビン144(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカスタブLA‐67(旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。
上記処理剤のうち塩基性化合物の例としては特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水硫化ナトリウム、硫化ナトリウムなどを挙げることができる。
上記処理剤のうち還元剤の例としては特に限定されないが、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム、LiAlH4、NaBH4、LiBEt3H(スーパーハイドライド)、水素などを挙げることができる。
上記処理剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。反応性の点でn‐ブチルアミンなどの1級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水硫化ナトリウム、硫化ナトリウム、LiAlH4、NaBH4、LiBEt3H(スーパーハイドライド)が好ましい。上記処理剤の使用量は特に限定されないが、反応性と経済性の点で、ポリマー100重量部に対して0.01〜100重量部が好ましく、0.1〜50重量部がより好ましい。温度や溶媒の有無、混合条件などの反応条件は特に限定されないが、操作が簡便である点で重合後の溶液に処理剤を直接添加して処理する方法が好ましく、反応温度は0℃〜150℃の範囲が好ましい。
本発明において親水性溶媒中で合成された金属カルコゲン化物ナノ粒子を、官能基含有疎水性低分子化合物で修飾して疎水性溶媒中へ抽出する際、使用する親水性溶媒と疎水性溶媒の組み合わせとしては、両者が互いに混ざり合わないものを用いる必要がある。このような親水性溶媒/疎水性溶媒の組み合わせとしては例えば、水/トルエン、水/キシレン、水/ベンゼン、水/クロロホルム、水/ジクロロメタン、水/四塩化炭素、水/1,2‐ジクロロエタン、水/ペンタン、水/ヘキサン、水/ヘプタン、水/オクタン、水/シクロヘキサン、水/シクロオクタン、水/ジエチルエーテル、水/メチルイソブチルケトン、メタノール/ヘプタン、メタノール/ヘキサン、メタノール/ヘプタン、メタノール/オクタンなどを挙げることができる。これらのうち入手性、安全性、溶解性の点で、水/トルエン、水/クロロホルム、水/ヘキサン、メタノール/ヘキサンの組み合わせが好ましい。
金属カルコゲン化物ナノ粒子に対する官能基含有疎水性低分子化合物の使用量としては特に限定されないが、修飾効率とコストのバランスに優れる点で、金属カルコゲン化物ナノ粒子中の金属原子のモル数に対して、1モル%〜500モル%が好ましく、10モル%〜300モル%がより好ましい。
官能基含有疎水性低分子化合物で金属カルコゲン化物ナノ粒子を修飾する際の操作としては特に限定されず、親水性溶媒と疎水性溶媒が互いに接触しあうようにすればよい。効率と生産性の点で、激しく混合攪拌することが好ましく、超音波照射することがより好ましい。温度についても特に限定されないが、効率の点で0℃〜150℃が好ましく、15℃〜100℃がより好ましい。
金属カルコゲン化物ナノ粒子を疎水性溶媒に抽出後、官能基含有疎水性高分子化合物で官能基含有疎水性低分子化合物を置換する際、操作としては特に限定されず、例えば疎水性溶媒中に官能基含有疎水性高分子化合物を単体であるいは溶液として添加してもよく、一旦疎水性溶媒を留去して低分子化合物で修飾された金属カルコゲン化物ナノ粒子を単離した後、官能基含有疎水性高分子化合物の溶液に添加してもよい。いずれの場合においても効率の点で、官能基含有疎水性高分子化合物と金属カルコゲン化物ナノ粒子の両方が疎水性溶媒中に溶解していることが好ましい。また効率の点で溶液を激しく攪拌することが好ましく、超音波照射することがより好ましい。温度については特に限定されないが、効率の点で0℃〜150℃が好ましく、15℃〜100℃がより好ましい。官能基含有疎水性高分子化合物の使用量としては特に限定されないが、修飾効率とコストのバランスに優れる点で、金属カルコゲン化物ナノ粒子中の金属原子のモル数に対して1モル%〜500モル%が好ましく、10モル%〜300モル%がより好ましい。
本発明のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子は疎水性高分子化合物により修飾されているため、疎水性溶媒に対する溶解度が高い。本発明のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子を親水性溶媒に溶解させる場合には、例えばポリ(メタ)アクリル酸t‐ブチルを官能基含有疎水性高分子化合物として使用して金属カルコゲン化物ナノ粒子を修飾し、次に熱分解あるいは酸触媒による分解など一般に広く知られている方法を用いてt‐ブチル基をイソブチレンとして分解し、ポリ(メタ)アクリル酸に変換することにより達成できる。酸触媒としては特に限定されず、例えば塩酸、硫酸、硝酸、p‐トルエンスルホン酸などを使用できる。
このようにして得られたポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子は、上記疎水性溶媒中に分散または溶解させた状態で使用してもよく、単離して使用してもよく、樹脂中に分散させて使用してもよい。本発明のポリマー修飾カルコゲン化物ナノ粒子を単離する場合には、溶液中からポリマーを単離する一般的な方法を適用可能であり、例えば溶媒を留去する方法、貧溶媒を加えて析出させる方法などを採用できる。本発明のポリマー修飾カルコゲン化物ナノ粒子を樹脂中に分散させる場合には、上記疎水性溶媒中に分散または溶解させた状態で樹脂を単体または溶液として添加してもよく、一旦単離したポリマー修飾カルコゲン化物ナノ粒子を溶液または溶融状態の樹脂と混合してもよい。
本発明においてポリマー修飾カルコゲン化物ナノ粒子を樹脂中に分散させる場合の樹脂としては特に限定されず、一般に広く知られている熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴムなどを使用可能である。なかでも得られる樹脂組成物の有用性の点で、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、スチレン‐ブタジエン共重合体、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリビニルブチラール系熱可塑性エラストマー、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエン共重合体(EPDM)が好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの樹脂の使用量としては特に限定されないが、ナノ粒子の特性がよく発現される点で、ポリマー修飾カルコゲン化物ナノ粒子100重量部に対して20〜100000重量部が好ましく、50〜50000重量部がより好ましい。
以下に本発明の実施例を示すが、これらに限定されるものではない。
本発明においてポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により求めた。Waters社製システムを使用し、カラムはShodex K−806とK−805(昭和電工(株)製)を連結して用い、クロロホルムを溶出液とし、ポリスチレン標準で解析した。ポリマーを重合する際、モノマーの反応率はガスクロマトグラフィー(GC)分析により決定した。GC分析は、サンプリング液を酢酸エチルに溶解し、キャピラリーカラムDB‐17(J&W SCIENTIFIC INC.製)を使用し、ガスクロマトグラフGC‐14B((株)島津製作所製)で実施した。核磁気共鳴(NMR)分析は重水素化クロロホルムを溶媒として使用し、ASX‐400(ブルッカー社製)を用いて実施した。金属カルコゲン化物ナノ粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)JEM‐1200EX(日本電子(株)製)を使用し、加速電圧80kVで観察した。コロイド溶液試料の場合はコロジオン膜を貼り付けたメッシュ上に乾燥固定して観察した。ナノ粒子の数平均粒子径は、TEM写真において100個以上のナノ粒子をノギスを用いて計測して計算した。発光スペクトルは、分光蛍光光度計FP‐6500DS(日本分光(株)製)を用いて溶液またはフィルム試料に対して290〜320nmの励起光を使用し、350〜700nmの範囲でフォトルミネッセンススペクトルを測定した。超音波照射は超音波ホモジナイザーUH‐600((株)エムエステー製)を使用して実施した。連鎖移動剤として使用したチオカルボニルチオ化合物は、特表2000‐515181あるいはMacromolecules 2002,35,4123に記載の方法に従って合成した。
(製造例1)
可逆的付加脱離連鎖移動重合によるポリメタクリル酸メチル(PMMA)の合成 1L3口フラスコにメタクリル酸メチル(501g)、2‐(2‐フェニルプロピル)ジチオベンゾエート(8.0g)、アゾビスイソブチロニトリル(1.1g)、トルエン(260g)を入れ、反応器内を窒素置換した。溶液を攪拌しながら90℃で1時間加熱することにより、反応率42%でPMMAを得た。次にn‐ブチルアミン(25g)を添加し、80℃で4時間攪拌することにより、PMMAの末端をメルカプト基に変性した。反応溶液を400mLまで濃縮し、メタノール(2L)に注ぐことによってメルカプト基を有するPMMAを単離した。得られたメルカプト基を有するPMMAの分子量および分子量分布は、Mw=13500、Mn=11300、Mw/Mn=1.19であった。
(製造例2)
可逆的付加脱離連鎖移動重合によるポリアクリル酸t‐ブチル(PtBA)の合成 50mL3口フラスコにアクリル酸t‐ブチル(18.0g)、ジベンジルトリチオカーボネート(0.205g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.023g)、トルエン(17.4g)を入れ、反応器内を窒素置換した。溶液を攪拌しながら90℃で3時間攪拌することにより、反応率95%でPtBAを得た。次にn‐ブチルアミン(3g)を添加し、70℃で5時間攪拌することにより、PtBAの末端をメルカプト基に変性した。反応溶液をメタノール(100mL)に注ぐことによってメルカプト基を有するPtBAを単離した。得られたメルカプト基を有するPtBAの分子量および分子量分布は、Mw=11200、Mn=9500、Mw/Mn=1.18であった。
(製造例3)
可逆的付加脱離連鎖移動重合によるポリアクリル酸n‐ブチル(PBA)の合成 100mL3口フラスコにアクリル酸n‐ブチル(49.8g)、ジベンジルトリチオカーボネート(0.504g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.072g)を入れ、反応器内を窒素置換した。溶液を攪拌しながら90℃で1時間攪拌することにより、反応率65%でPBAを得た。未反応のアクリル酸n‐ブチルを留去し、PBAを単離した。このPBAを酢酸エチル(30mL)に溶解し、n‐ブチルアミン(4g)を加えて50℃で6時間攪拌することにより、PBAの末端をメルカプト基に変性した。この溶液をメタノール(200mL)に注ぐことにより、メルカプト基を有するPBAを単離した。得られたメルカプト基を有するPBAの分子量および分子量分布は、Mw=8100、Mn=7000、Mw/Mn=1.16であった。
(製造例4)
可逆的付加脱離連鎖移動重合によるポリスチレン(PSt)の合成
500mL4口フラスコに、スチレン(100g)、2‐(2‐フェニルプロピル)ジチオベンゾエート(3.22g)、アゾビスイソブチロニトリル(0.61g)、トルエン(98g)を入れ、反応器内を窒素置換した。溶液を攪拌しながら70℃で14時間攪拌することにより、反応率42%でPStを得た。反応溶液を50℃に保ち、ジエチルアミン(25g)を加えて8時間攪拌することにより、PStの末端をメルカプト基に変性した。室温まで冷却後、反応溶液をメタノール(500mL)に注いでメルカプト基を有するPStを析出させた。得られたメルカプト基を有するPStの分子量および分子量分布は、Mw=4300、Mn=3700、Mw/Mn=1.16であった。
(製造例5)
ZnOナノ粒子の合成
酢酸亜鉛二水和物(220mg)をメタノール(80mL)に溶解し、50℃で30分間攪拌した後メタノールを加えて全量を920mLとし、0℃に冷却した。ここに0.02M NaOH/メタノール溶液(80mL)を一度に加え、65℃で2時間攪拌した。得られたコロイド溶液は透明であった。TEM分析より数平均粒子径5.1nmのZnOナノ粒子が生成していることを確認した。このZnOナノ粒子はメタノール中320nmの光で励起することにより、559nmに発光スペクトルを示した。
(製造例6)
ZnSナノ粒子の合成
酢酸亜鉛二水和物(2.5g)をジメチルホルムアミド‐水(1:1(体積))(250mL)に溶解させ、室温で攪拌しながら硫化ナトリウム九水和物(2.7g)を添加した。室温で1時間攪拌後、65℃で10時間攪拌した。若干沈殿が生成したためろ過して取り除き、透明なコロイド溶液を得た。TEM分析より数平均粒子径4.7nmのZnSナノ粒子が生成していることを確認した。このZnSナノ粒子はジメチルホルムアミド‐水(1:1(体積))中290nmの光で励起することにより、401nmに発光スペクトルを示した。
(製造例7)
MnドープZnS(ZnS:Mn)ナノ粒子の合成
ポリリン酸(10.2g)を純水(60mL)に溶解させ、室温で攪拌しながら酢酸亜鉛二水和物の1M水溶液(10mL)と酢酸マンガン四水和物の0.1M水溶液(10mL)を同時に添加した。次に硫化ナトリウム九水和物の0.85M水溶液(20mL)を加えた。生成した沈殿を遠心分離により単離し、純水とエタノールで洗浄することにより、ZnS:Mnナノ粒子を得た。得られたZnS:Mnナノ粒子の数平均粒子径が5.0nmであることをTEM観察により確認した。このZnS:Mnナノ粒子の水分散液は310nmの光で励起することにより、590nmに発光スペクトルを示した。
(実施例1)
製造例5で得られたZnOナノ粒子のメタノール溶液(100mL)と、オレイン酸(28mg)のヘキサン溶液(50mL)とを室温で5分間激しく混合し、ZnOナノ粒子をオレイン酸で修飾することによりヘキサン層に抽出した。二層を分離してそれぞれの溶液の発光スペクトルを測定し、その強度比から求めた抽出効率は99%であった。図1にヘキサン層に抽出されたZnOナノ粒子の写真を示す。右側がオレイン酸を含まない場合で、左側がオレイン酸を含む場合である。それぞれ上層がヘキサン層、下層がメタノール層である。オレイン酸を含む場合にはZnOナノ粒子がヘキサン層に抽出された結果、メタノール層は発光せずにヘキサン層のみが発光している。なお写真は365nmのUVランプ照射下に撮影されたものである。
製造例1で得られたメルカプト基を有するPMMA(0.1g)をトルエン(20mL)に溶解し、上記オレイン酸修飾ZnOナノ粒子のヘキサン溶液(3mL)を加え、80℃で15分間超音波照射を行った。室温まで冷却後、溶液をヘキサン(50mL)に注ぐことによってポリマーを析出させた。NMR分析から上澄み液にはオレイン酸が存在することを確認したが、上澄み液は発光スペクトルを示さなかった。析出したポリマーを減圧乾燥し、クロロホルムに溶解させて発光スペクトルを測定したところ、320nmの光で励起することにより563nmに発光スペクトルを示した。このことからオレイン酸を置換してPMMAがZnOナノ粒子を修飾できたことを確認した。
得られたPMMA修飾ZnOナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させて固化したPMMA修飾ZnOナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例1)
実施例1におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに市販PMMA(Mw約15000、アルドリッチ製、製品番号20,033‐6)を用いて、実施例1と全く同様の実験を行った。しかし市販PMMAでZnOナノ粒子を修飾することはできず、単離したPMMAからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で2週間保存すると濁りが生じ、発光スペクトルが消失した。ZnOナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例2)
実施例1におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例2で得られたメルカプト基を有するPtBAを用いて、実施例1と全く同様の実験を行ない、PtBA修飾ZnOナノ粒子を得た。このPtBA修飾ZnOナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPtBA修飾ZnOナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(実施例3)
実施例1におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例3で得られたメルカプト基を有するPBAを用いて、実施例1と全く同様の実験を行ない、PBA修飾ZnOナノ粒子を得た。このPBA修飾ZnOナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPBA修飾ZnOナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例2)
実施例3におけるメルカプト基を有するPBAの代わりに市販PBA(Mn約20000、アルドリッチ製、製品番号18,141‐2)を用いて、実施例3と全く同様の実験を行った。しかし市販PBAでZnOナノ粒子を修飾することはできず、単離したPBAからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で10日間保存すると濁りが生じ、発光スペクトルが消失した。ZnOナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例4)
実施例1におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例4で得られたメルカプト基を有するPStを用いて、実施例1と全く同様の実験を行ない、PSt修飾ZnOナノ粒子を得た。このPSt修飾ZnOナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPSt修飾ZnOナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例3)
実施例4におけるメルカプト基を有するPStの代わりに市販PSt(Mw約4000、アルドリッチ製、製品番号32,772‐7)を用いて、実施例4と全く同様の実験を行った。しかし市販PStでZnOナノ粒子を修飾することはできず、単離したPStからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で11日間保存すると濁りが生じ、発光スペクトルが消失した。ZnOナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例5)
製造例6で得られたZnSナノ粒子のジメチルホルムアミド‐水(1:1(体積))溶液(100mL)と、1‐ドデカンチオール(0.93g)のヘキサン溶液(150mL)とを室温で10分間激しく混合し、ZnSナノ粒子を1‐ドデカンチオールで修飾することによりヘキサン層に抽出した。ヘキサン層と水層を分離してそれぞれの溶液の発光スペクトルを測定し、その強度比から求めた抽出効率は96%であった。
製造例1で得られたメルカプト基を有するPMMA(1g)をクロロホルム(30mL)に溶解し、上記1‐ドデカンチオール修飾ZnSナノ粒子のヘキサン溶液(3mL)を加え、室温で15分間超音波照射を行った。溶液を15mLまで濃縮後、ヘキサン(80mL)に注ぐことによりポリマーを析出させた。NMR分析から上澄みには1‐ドデカンチオールが存在することを確認したが、上澄み液は発光スペクトルを示さなかった。析出したポリマーを減圧乾燥し、クロロホルムに溶解させて発光スペクトルを測定したところ、290nmの光で励起することにより396nmに発光スペクトルを示した。このことから1‐ドデカンチオールを置換してPMMAがZnSナノ粒子を修飾できたことを確認した。
得られたPMMA修飾ZnSナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させて固化したPMMA修飾ZnSナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例4)
実施例5におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに市販PMMA(Mw約15000、アルドリッチ製、製品番号20,033‐6)を用いて、実施例5と全く同様の実験を行った。しかし市販PMMAでZnSナノ粒子を修飾することはできず、単離したPMMAからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で7日間保存すると濁りが生じ、発光スペクトルが消失した。ZnSナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例6)
実施例5におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例2で得られたメルカプト基を有するPtBAを用いて、実施例5と全く同様の実験を行ない、PtBA修飾ZnSナノ粒子を得た。このPtBA修飾ZnSナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPtBA修飾ZnSナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(実施例7)
実施例5におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例3で得られたメルカプト基を有するPBAを用いて、実施例5と全く同様の実験を行い、PBA修飾ZnSナノ粒子を得た。このPBA修飾ZnSナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPBA修飾ZnSナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例5)
実施例7におけるメルカプト基を有するPBAの代わりに市販PBA(Mn約20000、アルドリッチ製、製品番号18,141‐2)を用いて、実施例7と全く同様の実験を行った。しかし市販PBAでZnSナノ粒子を修飾することはできず、単離したPBAからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で11日間保存すると濁りが生じ、発光スペクトルが消失した。ZnSナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例8)
実施例5におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例4で得られたメルカプト基を有するPStを用いて、実施例5と全く同様の実験を行い、PSt修飾ZnSナノ粒子を得た。このPSt修飾ZnSナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPSt修飾ZnSナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例6)
実施例8におけるメルカプト基を有するPStの代わりに市販PSt(Mw約4000、アルドリッチ製、製品番号32,772‐7)を用いて、実施例8とまったく同様の実験を行った。しかし市販PStでZnSナノ粒子を修飾することはできず、単離したPStからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で11日間保存すると濁りが生じ、発光スペクトルが消失した。ZnSナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例9)
製造例7で得られたZnS:Mnナノ粒子(100mg)を純水(100mL)に添加して超音波照射することにより分散させ、オレアミド(60mg)のヘキサン溶液(50mL)と混合した。この混合液を超音波照射しながら室温で15分間激しく攪拌し、ZnS:Mnナノ粒子をオレアミドで修飾することによりヘキサン層に抽出した。二層を分離してそれぞれの溶液の発光スペクトルを測定し、その強度比から求めた抽出効率は93%であった。
製造例1で得られたメルカプト基を有するPMMA(0.2g)をトルエン(20mL)に溶解し、上記オレアミド修飾ZnS:Mnナノ粒子のヘキサン溶液(5mL)を加え、室温で20分間超音波照射を行った。溶液をヘキサン(80mL)に注ぐことによってポリマーを析出させた。NMR分析から上澄み液にはオレアミドが存在することを確認したが、上澄み液は発光スペクトルを示さなかった。析出したポリマーを減圧乾燥し、クロロホルムに溶解させて発光スペクトルを測定したところ、320nmの光で励起することにより560nmに発光スペクトルを示した。このことからオレアミドを置換してPMMAがZnS:Mnナノ粒子を修飾できたことを確認した。
得られたPMMA修飾ZnS:Mnナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させて固化したPMMA修飾ZnS:Mnナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例7)
実施例9におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに市販PMMA(Mw約15000、アルドリッチ製、製品番号20,033‐6)を用いて、実施例9と全く同様の実験を行った。しかし市販PMMAでZnS:Mnナノ粒子を修飾することはできず、単離したPMMAからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で2週間保存すると濁りが生じ、経時で発光スペクトルの強度が減少した。ZnS:Mnナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例10)
実施例9におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例2で得られたメルカプト基を有するPtBAを用いて、実施例9と全く同様の実験を行い、PtBA修飾ZnS:Mnナノ粒子を得た。このPtBA修飾ZnS:Mnナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPtBA修飾ZnS:Mnナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(実施例11)
実施例9におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例3で得られたメルカプト基を有するPBAを用いて、実施例9と全く同様の実験を行い、PBA修飾ZnS:Mnナノ粒子を得た。このPBA修飾ZnS:Mnナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPBA修飾ZnS:Mnナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にトルエンに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例8)
実施例11におけるメルカプト基を有するPBAの代わりに市販PBA(Mn約20000、アルドリッチ製、製品番号18,141‐2)を用いて、実施例11と全く同様の実験を行った。しかし市販PBAでZnS:Mnナノ粒子を修飾することはできず、単離したPBAからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で7日間保存すると濁りが生じ、経時で発光スペクトルの強度が減少した。ZnS:Mnナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
(実施例12)
実施例9におけるメルカプト基を有するPMMAの代わりに製造例4で得られたメルカプト基を有するPStを用いて、実施例9と全く同様の実験を行い、PSt修飾ZnS:Mnナノ粒子を得た。このPSt修飾ZnS:Mnナノ粒子のクロロホルム溶液は室温で6ヶ月以上保存しても濁りを生じず、発光スペクトルにも変化なく安定であった。また乾燥させたPSt修飾ZnS:Mnナノ粒子を、室温で6ヶ月保存した後にクロロホルムに溶解させた場合も、濁りは生じず発光スペクトルにも変化なく安定であった。
(比較例9)
実施例12におけるメルカプト基を有するPStの代わりに市販PSt(Mw約4000、アルドリッチ製、製品番号32,772‐7)を用いて、実施例12とまったく同様の実験を行った。しかし市販PStでZnS:Mnナノ粒子を修飾することはできず、単離したPStからは発光スペクトルを確認できなかった。上澄み液は発光スペクトルを示したが、室温で10日間保存すると濁りが生じ、経時で発光スペクトルの強度が減少した。ZnS:Mnナノ粒子が不安定で凝集してしまったものと考えられる。
本発明の方法により得られるポリマー修飾ナノ粒子は、凝集することなく安定的に量子効果を発現する材料として、ディスプレイ用蛍光体、光電変換素子、発光ダイオード、波長変換材料、紫外線遮蔽材料、色素増感太陽電池、蛍光塗料、蛍光フィルム、発光塗料、発光フィルム、診断薬、微量成分検出試薬、分析用試薬、ドラッグデリバリーシステム、量子トランジスタ、量子ドットレーザー、ディスプレイ用発光体、バリスター、触媒などの用途に有用である。

Claims (11)

  1. 親水性溶媒中で合成された数平均粒子径100nm以下の金属カルコゲン化物ナノ粒子を、官能基含有疎水性低分子化合物で修飾することにより疎水性溶媒中へ抽出し、次いで該疎水性低分子化合物を官能基含有疎水性高分子化合物で置換することを特徴とする、ポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  2. 金属カルコゲン化物ナノ粒子が、親水性溶媒中で金属化合物とカルコゲン化剤とを混合することにより得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー修飾カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  3. 金属化合物が、金属のハロゲン化物、金属の有機酸塩、金属の硝酸塩、金属の硫酸塩、金属の過塩素酸塩、金属のアセチルアセトナートからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項2に記載のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法
  4. カルコゲン化剤が、MOH、M2S、MSH、H2S、M2Se、MSeH、H2Se、M2Te、MTeH、H2Te、チオ尿素(Mはアルカリ金属)からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項2または3に記載のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法
  5. 金属カルコゲン化物ナノ粒子中の金属が、Zn、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Cu、Ag、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、ランタノイド、アクチノイドからなる群より選ばれる1種以上の元素からなることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  6. 金属カルコゲン化物ナノ粒子の数平均粒子径が1nm〜20nmの範囲であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のポリマー修飾カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  7. 官能基含有疎水性低分子化合物および官能基含有疎水性高分子化合物における官能基が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、カルバモイル基、ホルミル基、チオホルミル基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、トリアルコキシシリル基、ヒドロキシル基のアルカリ金属塩、カルボキシル基のアルカリ金属塩、メルカプト基のアルカリ金属塩、ジチオカルボキシル基のアルカリ金属塩からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  8. 官能基含有疎水性高分子化合物が、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニルからなる群より選ばれる1種以上のモノマーを重合させて得られる構造を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  9. 官能基含有疎水性高分子化合物が、チオカルボニルチオ化合物を連鎖移動剤とする可逆的付加脱離連鎖移動重合により合成されたものであることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  10. 官能基含有疎水性高分子化合物が、可逆的付加脱離連鎖移動重合の後に末端をメルカプト基に変換されたものであることを特徴とする、請求項9に記載のポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子の製造方法。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載の製造方法により得られる、ポリマー修飾金属カルコゲン化物ナノ粒子。
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