JP5014555B2 - 溶鉄精錬炉の炉内観察方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉、AOD、RH等の溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶融金属から放射される電磁波を検知することにより非接触で観測するための単管又は2重管羽口において、安定した観察を可能とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
転炉に代表される精錬炉内溶鉄の温度や組成を、炉壁や炉底から耐火物を貫通する管を通じて非接触で観測する方法は以前より知られている。
【0003】
例えば、精錬炉内溶鉄の温度については、特開平11−142246号公報に開示されているようなイメージファイバーを用いた方法、特開平01−314928号公報に開示されているような光ファイバーを用いた方法があり、また、精錬炉内溶鉄成分については特開昭60−42644号公報に開示されているようなレーザー光を用いた方法がある。
【0004】
これらの技術において、観察用羽口が常時開口することが観察の前提となる。一般に羽口から溶鉄へガスを供給した場合には、羽口先端のマッシュルームと呼ばれる固体鉄が凝固生成し閉塞するため観察が不可能になる。また、酸素ガスを供給して発熱反応により開口させた場合には、羽口前面が酸化発熱に伴う高温状態となるため温度の測定はできなくなり、また、酸素ガスにより吸収を受ける軽元素の成分も測定できなくなる。このマッシュルームの生成状況は、管から供給されるガス組成や流量だけでなく、溶鋼の温度、成分にも大きな影響を受けるが、適正な制御条件について明らかにした知見は全く知られていない。このように、従来技術では、観察用羽口を常時開口させるための条件について、全く知られていないため、精錬中に安定して炉内を観察することができないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、精錬の状況に応じて観察用羽口を常時開口させ、安定した精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成の観察を可能とする方法提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は以下の各方法にある。
【0007】
(1)溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶融金属から放射される電磁波を検知することにより非接触で観測するための単管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から開口率を測定し、
測定して得られた羽口の開口率(%)が、羽口内直径 (mm)により(1)式で計算されるα 以下の場合に、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給し、前記羽口の開口率(%)、α よりも大きい場合には不活性ガスのみを供給することにより、前記羽口の開口率(%)をα 以上の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
【0008】
α =765/ 2 …(1)
ここで、開口期は、測定される羽口先端の溶鉄温度が1800℃以上となったことをもって判断して終了する。また、開口率の上限は特に限定しないが、羽口溶損を防止するためには95%以下であることが望ましい。
【0009】
(2) 溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶鉄から放射される電磁波を検知することにより非接触で観察するための2重管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から内管羽口先端の開口率を測定し、
測定して得られた前記内管羽口先端の開口率(%)が、内管羽口内直径r (mm)により(5)式で計算されるα (%)よりも小さい場合に、前記2重管羽口の外管から不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給して前記内管羽口先端の開口率(%)を増加させる羽口開口期を設け、
当該開口期以外は、前記外管から羽口冷却ガス、不活性ガスを単独又は混合して供給し、
前記羽口開口期及び当該羽口開口期以外の期を通して、内管から常時不活性ガスを供給することにより、
前記内管羽口先端の開口率(%)を、α 以上の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
α =850/r ・・・(5)
【0012】
溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、
当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶鉄から放射される電磁波を検知することにより非接触で観察するための2重管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から開口率を測定し、該測定した開口率が、内管羽口内直径r (mm)により(5)式で計算されるα よりも小さい場合に、式(2)及び式(3)に基づいて、内管羽口先端の開口率を推定し、推定して得られた前記内管羽口先端の開口率(%)が、α 以上95%以下となるように、外管から不活性ガスと酸化性ガスの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給して前記内管羽口先端の開口率(%)を増加させる羽口開口期を設け、
当該開口期以外は、前記外管から羽口冷却ガス、不活性ガスを単独又は混合して供給し、
前記羽口開口期及び前記羽口開口期以外の期間を通して、内管から常時不活性ガスを供給することにより、
前記内管羽口先端の開口率(%)を、α 以上95%以下の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
κ=M ×(T−Ts)×Q =a+b×(υ1+υ2)・・・(2)
ここで、
ガス顕熱による冷却指数(υ1):ガス比熱の関数
ガス潜熱による冷却指数(υ2):ガス反応熱の関数
κ:マッシュルームの溶鉄からの受熱指数
a,b,n:定数
Q:全ガス流量(Nm /h/t)
T:溶銑温度(℃)
Ts:固相線温度(℃)
(K/r )=β−0.165×(M/r )・・・(3)
ここで、M:マッシュルーム直径(mm)
:羽口内直径(mm)
K:開口部の円相当直径(mm)
β:1.0〜1.3
α =850/r …(5)
【0013】
溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶鉄から放射される電磁波を検知することにより非接触で観察するための2重管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から内管羽口先端の開口率を測定し、
測定して得られた前記内管羽口先端の開口率が、内管羽口内直径r (mm)により(5)式で計算されるα (%)よりも小さい場合に、前記2重管羽口の内管から不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給することにより開口率を増加させる羽口開口期を設け、
当該開口期以外は、前記内管から不活性ガスのみを供給し、
前記内管羽口先端の開口率(%)を、α 以上の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、観察用羽口の開口面積と、羽口先端に生成するマッシュルームのサイズとの間に相関があり、マッシュルームサイズを制御することで開口面積の制御が可能であるという新規な知見に基づく。図1に、本発明者らが行った1トン規模の溶解炉を用いた詳細な実験結果を示すが、羽口内管内直径をr、観察用羽口の開口部直径をK、羽口先端に生成するマッシュルームの直径をMとすると、M/rとK/rの間には図1のような強い相関関係がある。つまり、羽口を観察に必要な開口率に制御するには、ガスの流量、組成を変更してマッシュルームサイズを制御すれば良いことになる。
【0015】
ここで、電磁波とは、放射測温における光や、レーザー発光分析における各成分に固有の波長を持つ発光々の総称であり、本発明において、単管羽口としたのはガス組成系が単独のため設備投資額が少なく、また、2重管羽口としたのは、内外管のガス組成、流量が独立で制御できるためである。内外管に用いるガスは、羽口冷却ガス、不活性ガス、酸化性ガスを、単独または2種以上混合したものであり、外管の羽口冷却ガスとしてはLPGに代表されるガスの分解により積極的に冷却効果を得るガスがあり、不活性ガスとしてはAr、窒素、一酸化炭素ガスが、酸化性ガスとしては酸素、空気、2酸化炭素がある。また、内管の不活性ガスとしてはAr、窒素、一酸化炭素ガスが、酸化性ガスとして酸素、空気、2酸化炭素がある。
【0016】
本発明の第1は、転炉、電気炉、AOD に代表される溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶融金属から放射される電磁波を検知することにより非接触で観測するための単管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から開口率を測定し、不活性ガスと酸化性ガスを、単独または混合して用いる溶融金属精錬炉の炉内観察方法である。
【0017】
ここで、観察に必要な開口面積は、観察対象が温度の場合のように電磁波の強度が強い場合と、成分分析のためのレーザー発光光のように微弱な場合とでは異なり、さらに、羽口内径、羽口長さによっても異なる。一般に羽口長さは大型転炉の耐火物厚みを考えると1〜2m程度となるが、その場合には6mm2 の観察面積が必要であることが実験的に知られている。これを数式化したものが(1)式である。したがって、羽口の開口率(%)が、羽口内直径 (mm)により(1)式で計算されるα 以下の場合に、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給し(開口期)、開口率がα よりも大きい場合(定常期)には不活性ガスのみを供給する溶鉄精錬炉の炉内観察方法である。
【0018】
α =765/ 2…(1)
該単管羽口において、羽口先端の開口状況に応じて、不活性ガスと酸化性ガスを、単独または混合して用いることにある。つまり、観察は羽口先端での、溶鉄面と吹き込まれたガス気泡との界面から放射される電磁波を検知するものであり、電磁波の強度を観察方法に応じて決定される強度に足るように羽口先端の開口率をガス組成で制御するものである。ここで、不活性ガスとは、Ar、窒素、COを示し、酸化性ガスとは、酸素、空気、CO2 を示す。つまり、羽口先端の開口率が小さすぎる場合には観察精度が低下するため、不活性ガスに酸化性ガスを混合し羽口先端に生成しているマッシュルームを溶解し、逆に、羽口先端の開口率が大きすぎる場合には羽口溶損が大きいため、不活性ガスを単独で用い観察精度を低下させない範囲でマッシュルームを生成させる。
【0019】
ここで、開口率とは、羽口先端でマッシュルームに覆われていない開口領域の面積を羽口断面積で割った値をパーセント表示したものであり、予め開口率とガス背圧の関係を測定した場合にはガス背圧の変化で検知でき、また、羽口の鉄皮側先端の設置したイメージファイバーによる観察により直接的に検知することもできる。
【0020】
図2は本発明をイメージファイバーを用いた放射測温に適用した例であり、縦軸の精度は測定された温度の2σ(σは標準偏差)に対応する。これより、α × 2が765以上の場合に精度良く温度を観察することができることがわかるが、α × 2が765よりも小さい場合には閉塞により観察視野が狭くなるため観察精度が低下している。
【0021】
具体的には、羽口の開口率が観測に必要な臨界値、α × 2が765よりも小さい場合に、羽口パイプ内径、溶鉄温度、溶鉄炭素濃度に応じて、酸素、空気、CO2の酸化性ガス流量、Ar、窒素、COの不活性ガス流量の1種又は2種以上を調整し開口率を制御することになる。
【0022】
制御の指針となる羽口先端のマッシュルーム直径は、以下の各項目の熱バランスで計算することができ、マッシュルーム径と開口率の間に実験的関係を求めることで制御することが可能となる。
【0023】
1)ガス顕熱による冷却指数(υ1):ガス比熱の関数
2)ガス潜熱による冷却指数(υ2):ガス反応熱の関数
3)マッシュルームの溶鉄からの受熱指数(κ)
マッシュルームを半球とすると以下の熱バランスが成立する。
【0024】
κ=M2×(T−Ts)×Qn=a+b×(υ1+υ2)…(2)
ここで、a、b、nは定数であり、Qは全ガス流量(Nm3/h/t)、Tは溶銑温度(℃)、Tsは固相線温度(℃)である。υ1、υ2は用いたガスの物性と反応熱から、実験によりマッシュルーム生成への寄与率を決めれば計算することができ、また、Tsは状態図等により求めることができる。これらを(2)式へ入れて実験的に得られたマッシュルーム直径と合うように定数を決めれば、実機でのマッシュルーム直径の推定式を得ることが出来る。尚、反応熱の寄与率は本発明者らによる実験では、酸素(空気中の酸素分も含む)は2Fe+O2=FeOの反応で計算されるFeOの生成反応の潜熱の70〜80%の寄与を持つが、CO2の場合はCO2+[C]=2COの反応で計算される潜熱の2〜5%の寄与しか持たないことを見出している。さらに、本発明者らによる実験では、マッシュルーム直径M(mm)、羽口内直径r(mm)、開口部の円相当直径K(mm)とには、(3)式の関係が得られている。
【0025】
(K/r)=β−0.165×(M/r)…(3)
ここで、βは1.0〜1.3の値をとる。
【0026】
本発明の第1の他の形態としては、溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶融金属から放射される電磁波を検知することにより非接触で観測するための単管羽口を用いて、羽口先端の開口状況に応じて、不活性ガス流量を制御する溶融金属精錬炉の炉内観察方法であり、不活性ガス流量を制御することでマッシュルームサイズを制御するものである。つまり、羽口先端の開口率が小さすぎる場合には観察精度が低下するため、不活性ガス流量を低下させガス顕熱による冷却能を低下させることで羽口先端に生成しているマッシュルームを溶解し、逆に、羽口先端の開口率が大きすぎる場合には羽口溶損が大きいため、不活性ガス流量を増大させてガス顕熱による冷却能を増加させることで観察精度を低下させない範囲でマッシュルームを生成させる。
【0027】
これは、例えば、レーザー等により発光した炭素や燐といった短波長の発光光を観察する場合には、配管内の酸素による吸収が大きく、発光光を減衰なく伝送させるためには、常時、管内を不活性ガス雰囲気に保つ必要がある場合に必要なものであり、本発明者らにより、常時不活性ガスであっても羽口の開口率を制御できることを見出したものである。
【0029】
さらに、炭素濃度は装入溶鉄の炭素濃度を基準に、送酸量と経験的に知られる脱炭酸素効率から計算する方法や、排ガス分析や溶鉄の直接サンプリングから推定する方法のいずれか、又は、それらの組み合わせで推定できる。また、温度も直接的な連続、又は、半連続の測温で知る方法や、装入溶鉄の温度を基準に、経験的に知られる昇熱効率から計算する方法のいずれか、又は、それらの組み合わせで推定できる。また、不活性ガス流量を、溶鉄の温度と組成に応じて制御する理由は、マッシュルームの大きさが溶鉄温度と溶鉄の固相線温度の差に大きな影響を受けるためであり、溶鉄温度と、溶鉄組成(特に炭素濃度)で決まる固相線温度との差を検知しつつ、その値に基づき不活性ガス流量を増減する必要があるためである。
【0030】
ここでも、制御の指針となる羽口先端のマッシュルーム直径は、以下の各項目の熱バランスで計算することができ、マッシュルーム径と開口率の間に実験的関係を求めることで制御することが可能となる。
【0031】
1)ガス顕熱による冷却指数(υ1):ガス比熱の関数
2)マッシュルームの溶鉄からの受熱指数(κ)
マッシュルームを半球とすると以下の熱バランスが成立する。
【0032】
κ=M2×(T−Ts)×Qn=a+b×υ1…(4)
ここで、a、b、nは定数であり、Qは全ガス流量(Nm3/h/t)、Tは溶銑温度(℃)、Tsは固相線温度(℃)である。υ1は用いたガスの物性から計算することができ、また、Tsは状態図等により求めることができる。これらを(4)式へ入れて実験的に得られたマッシュルーム直径と合うように定数を決めれば、実機でのマッシュルーム直径の推定式を得ることが出来る。また、マッシュルーム直径Mと開口部の円相当直径Kの関係は(3)式で計算できる。
【0033】
また、羽口については、図4に一態様を示すような、溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶融金属から放射される電磁波を検知することにより非接触で観測するための単管羽口であって、羽口先端の開口状況に応じて、不活性ガスと酸化性ガスを、単独または混合して用いることができる制御機能を有する溶融金属精錬炉の炉内観察用羽口である。
【0034】
この場合、観察羽口の内径については、羽口パイプの内径を2〜6mmとしたものである。2mmよりも小さい場合には、観察に必要な開口面積を確保するにはマッシュルームを生成させることができず、羽口寿命が短い。また、6mmよりも大きい場合には、ガス流量が大きくなるためガスコストがかかり経済的ではない。
【0035】
次に、本発明における2重管羽口を採用した場合について述べる。
【0036】
本発明の第は、観察は、内管羽口先端での溶鉄面と吹き込まれたガス気泡との界面から放射される電磁波を検知するものであり、電磁波の強度が観察方法に応じて要求される強度に足りるように内管羽口先端の開口率を、内外管のガス組成、流量で制御する必要があり、そのために羽口の鉄皮側先端に設置したイメージファイバーによる観察で開口率を検知する。この検知した開口率に基づき、その変化に応じて、内外管のガス流量及び/又は組成を変更してマッシュルームサイズを制御することにより、観察に必要な開口率を維持する。
【0037】
本発明の第3は、上記2の発明の具体的な制御方法であり、外管の冷却能を溶鉄の温度と組成に応じて制御することにより羽口の開口率を観察に必要な臨界値より常に大きく維持する方法である。つまり、外管の羽口冷却ガス、不活性ガス、酸化性ガスのガス流量及び/又は組成を、溶鉄の温度と組成に基いて推定したマッシュルームサイズに応じて変更することで羽口の開口率(%)を(5)式におけるα (%)以上、95%以下の範囲に維持する。
【0038】
α =850/ 2 …(5)
ここで、 は内管羽口内直径(mm)であり、 は3mm以上が望ましいため、α は95%よりも小さな値をとる。さらに、この時、内管は常時、不活性ガスを供給することが望ましい。また、開口率とは、羽口先端でマッシュルームに覆われていない開口領域の面積を羽口断面積で割った値をパーセント表示したものである。
【0039】
開口率の臨界値は、観察対象が温度の場合のように電磁波の強度が強い場合と、成分分析のためのレーザー発光光のように微弱な場合とでは異なり、さらに、羽口内径、羽口長さによっても異なる。一般に羽口長さは大型転炉の耐火物厚みを考えると1〜2m程度となるが、その場合には、6mm2以上の観察面積が必要であることが実験的に知られている。これを数式化したものが(5)式である。つまり、内直径 (mm)の羽口において先端にRmm2の観察面積を有するためには開口率は(6)式で計算されるα 以上が必要となる。
【0040】
α =R/(π×( /2)2)×100=127×R/ 2(%)…(6)
ここで、Rとして上記の6mm2以上という値を代入すると(5)式が得られる。開口率がα よりも小さい場合には、羽口先端の開口面積が小さいため観察精度が低下し、開口率が95%よりも大きい場合には、羽口先端のマッシュルームが小さすぎるため羽口が保護できず、羽口寿命が短い。図3は内直径が10mmのイメージファイバーを用いた放射測温の測温精度の例であり、縦軸の精度は測定された温度の2σ(σは標準偏差)に対応する。これより、開口率が8.5%((5)式におけるα に相当)以上の場合に精度良く温度を観察することができることがわかるが、8.5%よりも小さい場合には閉塞により観察視野が狭くなるため観察精度が低下し、逆に、開口率が95%よりも大きい場合には開口率が大きすぎるためマッシュルームが十分に生成せず羽口溶損が大きい。
【0041】
この発明は、観察用羽口の開口面積に密接な関係を持つ、羽口先端に生成するマッシュルームのサイズが、内管ガスよりも外管ガスにより大きな影響を受けるという新しい知見に基づきなされたものである。従って、羽口の開口率を制御するために外管のガス流量及び/又は組成を制御することとした。外管の羽口冷却ガスとしてはLPG、不活性ガスとしてはAr、窒素、一酸化炭素ガス、酸化性ガスとしては酸素、空気、二酸化炭素が例示できる。具体的には、開口率をα 以上にする場合には、以下の(1)〜(4)のアクションのうち1つ以上を実施し、羽口外管先端の温度を上昇させてマッシュルームを溶解させる。ここで、内管を常に不活性ガスとすれば、電磁波の測定には何らの影響も無い。
(1) 不活性ガス流量を低下させる。
(2) 不活性ガスに酸化性ガスを混合する。
(3) 不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガスにおいて、合計流量を一定として酸化性ガスの混合比を高め、又は、不活性ガス流量は一定で酸化性ガス流量を高める。
(4) 酸化性ガスのみを吹き込む。
【0042】
逆に、開口率を95%以下にする場合には、以下の(1)〜(3)のアクションのうち1つ以上を実施し、羽口外管先端の温度を低下させてマッシュルームを成長させ羽口を保護する。ここで、内管を常に不活性ガスとすれば、電磁波の測定には何らの影響も無い。
(1) 不活性ガス流量を増加させる。
(2) 不活性ガスに羽口冷却ガスを混合する。
(3) 不活性ガスと羽口冷却ガスとの混合ガスにおいて、合計流量を一定として羽口冷却ガスの混合比を高め、又は、不活性ガス流量は一定で羽口冷却ガス流量を高める。
【0043】
また、マッシュルームの生成挙動は溶鉄の組成と温度によって大きな影響を受けるため、溶鉄の組成と温度に応じた制御が必要となる。ここで、溶鉄組成、温度ともに、当該観察用羽口を通して得た電磁波に基づき測定される結果を用いることが最も合理的であるが、炭素濃度は、装入溶鉄の炭素濃度を基準に、送酸量と経験的に知られる脱炭酸素効率から計算する方法や、排ガス分析や溶鉄の直接サンプリングから推定する方法のいずれか、又は、それらの組み合わせからも推定できる。また、温度も、装入溶鉄の温度を基準に、経験的に知られる昇熱効率から計算する方法でも推定できる。
【0044】
具体的には、図1に示した関係に基づき、羽口先端に生成するマッシュルームの直径MをM/ として制御することになる。マッシュルーム直径Mの推定は、以下の1)〜4)の各項目の熱バランスで計算することができる。
【0045】
1)外管ガス顕熱による冷却指数(υ1):外管ガス比熱の関数
2)外管ガス潜熱による冷却指数(υ2):外管ガス反応熱の関数
3)内管ガス顕熱による冷却指数(υ3):内管ガス比熱の関数
4)マッシュルームの溶鉄からの受熱指数(κ)
マッシュルームを半球とすると以下の熱バランスが成立する。
【0046】
κ=M2×(T−Ts)×Qn=a+b×(υ1+υ2+υ3)…(7)
ここで、a、b、nは定数であり、Qは全ガス流量(Nm3/h/t)、Tは溶銑温度(℃)、Tsは溶鉄の組成に応じて決まる固相線温度(℃)である。υ1、υ2、υ3は用いたガスの物性と反応熱から、実験によりマッシュルーム生成への寄与率を決めれば計算することができ、また、Tsは状態図等により求めることができる。これらを(7)式へ入れて実験的に得られたマッシュルーム直径と合うように定数を決めれば、実機でのマッシュルーム直径の推定式を得ることが出来る。
【0047】
本発明の第4は、羽口閉塞時に内管から酸化性ガスを供給して開口する方法である。つまり、羽口の開口率が(5)式におけるα (%)よりも小さい場合に、内管から不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給することにより開口率を増加させる羽口開口期を設け、当該羽口開口期以外は、内管から不活性ガスのみを供給する。ここで、羽口開口期とは、開口率がα よりも小さくなり開口のためのアクションを実施した時点から開口率が95%以上になった時点までをいい、羽口先端温度が高温のため開口率が測定できない場合には、本発明者らの知見によれば羽口先端温度が1800℃以上になったことをもって開口と判断し羽口開口期を終了することができる。開口のためのアクションとしては、以下の(1)、(2)のアクションのうち1つ以上を実施し、羽口先端の温度を上昇させてマッシュルームを溶解させる。
(1) 内管が不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガスにおいて、合計流量を一定として酸化性ガスの混合比を高め、又は、不活性ガス流量は一定で酸化性ガス流量を高める。
(2) 内管から酸化性ガスのみを吹き込む。
【0048】
ここで、内管から開口のアクションを実施する理由は、ガス流量を大きくできるため短時間で確実な開口が可能となるためである。
【0049】
具体的には、図1から分かるように、M/ を2以下とするとK/ が1以上になる。K/ が1ということは、開口直径と羽口直径とが一致している、つまり完全開口していることを意味する。したがって、閉塞した場合は、M/ を2以下にするアクションをとってK/ を1以上にして開口させることになる。マッシュルーム直径Mの推定は、以下の各項目の熱バランスで計算することができる。
【0050】
1)外管ガス顕熱による冷却指数(υ1’):外管ガス比熱の関数
2)外管ガス潜熱による冷却指数(υ2’):外管ガス反応熱の関数
3)内管ガス顕熱による冷却指数(υ3’):内管ガス比熱の関数
4)内管ガス潜熱による冷却指数(υ4’):内管ガス反応熱の関数
5)マッシュルームの溶鉄からの受熱指数(κ’)
マッシュルームを半球とすると以下の熱バランスが成立する。
κ’=M2×(T−Ts)×Qn=a'+b'×(υ1'+υ2'+υ3'+υ4')…(8)
ここで、a’、b’、nは定数であり、Qは全ガス流量(Nm3/h/t)、Tは溶銑温度(℃)、Tsは溶鉄の組成に応じて決まる固相線温度(℃)である。υ1’、υ2’、υ3’、υ4’は用いたガスの物性と反応熱から、実験によりマッシュルーム生成への寄与率を決めれば計算することができ、また、Tsは状態図等により求めることができる。これらを(8)式へ入れて実験的に得られたマッシュルーム直径と合うように定数を決めれば、実機でのマッシュルーム直径の推定式を得ることが出来る。ここで、本発明者らによれば、内管酸素による発熱量のマッシュルーム直径に対する寄与は反応熱の3%に過ぎず、また、内管ガス顕熱の寄与率も30%に過ぎないことがわかった。
【0051】
2重管羽口を用いた本発明において、羽口閉塞時に羽口を開口させるには、内管からは常時不活性ガスを供給し、羽口の開口率が(5)式で示すα よりも小さい場合に、外管から不活性ガスと酸化性ガスの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給することにより開口率を増加させる羽口開口期を設け、当該羽口開口期以外は、外管から羽口冷却ガス、不活性ガスを単独又は混合して供給する。開口のためのアクションとしては、以下の(1)〜(3)のアクションのうち1つ以上を実施し、羽口先端の温度を上昇させてマッシュルームを溶解させる。
(1) 外管の不活性ガスに酸化性ガスを混合する。
(2) 外管の羽口冷却ガスを酸化性ガスに切り替える。
(3) 外管のガスを酸化性ガスのみとする。
【0052】
ここで、内管は常時不活性ガスとして、外管ガスで開口する理由は以下の通りである。つまり、例えば、レーザー等により発光した炭素や燐といった短波長の発光光を観察する場合には、配管内の酸素による吸収が大きく、発光光を減衰なく伝送させるためには、常時、内管を不活性ガス雰囲気に保つ必要がある。本発明者らによれば、内管からは常時不活性ガスであっても、外管のガス組成を制御することで羽口を開口できる。
【0053】
具体的には前記(4)に係る発明と同様に、図1に示した関係に基づき、羽口先端に生成するマッシュルームの直径MをM/ として2以下にすることになる。マッシュルーム直径Mの推定は、以下の各項目の熱バランスで計算することができる。
【0054】
1)外管ガス顕熱による冷却指数(υ1''):外管ガス比熱の関数
2)外管ガス潜熱による冷却指数(υ2''):外管ガス反応熱の関数
3)内管ガス顕熱による冷却指数(υ3''):内管ガス比熱の関数
4)マッシュルームの溶鉄からの受熱指数(κ'')
マッシュルームを半球とすると以下の熱バランスが成立する。
【0055】
κ''=M2×(T−Ts)×Qn=a''+b''×(υ1''+υ2''+υ3'')…(9)
ここで、a''、b''、nは定数であり、Qは全ガス流量(Nm3/h/t)、Tは溶銑温度(℃)、Tsは溶鉄の組成に応じて決まる固相線温度(℃)である。υ1''、υ2''、υ3''は用いたガスの物性と反応熱から、実験によりマッシュルーム生成への寄与率を決めれば計算することができ、また、Tsは状態図等により求めることができる。これらを(9)式へ入れて実験的に得られたマッシュルーム直径と合うように定数を決めれば、実機でのマッシュルーム直径の推定式を得ることが出来る。ここで、本発明者らによれば、外管酸素による発熱量のマッシュルーム直径に対する寄与は反応熱の75%、外管ガス顕熱の寄与率は100%であることがわかった。
【0056】
次に、本発明の炉内観察方法を実施するための羽口について述べる。2重管羽口としたのは、内外管のガス組成、流量を独立して制御するためである。該2重管羽口において、内管羽口先端の開口率を検知して、その情報に基づいて、内外管のガス流量及び/又は組成を制御する。このような操作を可能とするため、羽口は図5に示すように、精錬炉耐火物Fを貫通する内管2と外管3とからなる同心の2重管構造とし、内管2と外管3をそれぞれ独立な配管とし、ガス組成と流量の制御装置に独立に連結した内管ガス供給用配管9と外管ガス供給用配管10とを介して独立にガス流量及び/又はガス組成を制御可能としている。なお、観察羽口の内径を5〜20mmに規定したものである。5mmよりも小さい場合には、観察に必要な開口面積を確保するにはマッシュルームを生成させることができず、羽口寿命が短くなる。また、20mmよりも大きい場合には、ガス流量が多くなるためガスコストがかかり経済的ではない。
【0057】
【実施例】
実施例においては3トン規模の上底吹き転炉を用いて実施した。観察用羽口は炉底に設けた直径が4mmの単管羽口を用いた((1)式におけるα は47.8になる。)。羽口から窒素単独、または、Arと酸素の混合ガスを用いた。[C]が4.2%、[Mn]が0.16%、[Si]が0.21%、[P]が0.085%の溶鉄を装入し、送酸脱炭した。吹酸開始時の溶鉄温度は1315℃であった。ここで%は質量パーセントを意味し以下も同様である。吹き止めの成分は[C]が0.04%、[Mn]が0.07%、[Si]が0.01%、[P]が0.017%で、温度は1657℃であった。観察用羽口を通してイメージファイバーによる放射測温を実施するとともに、該羽口を通してレーザーを照射し、炭素の発光光を観察し炭素濃度を測定した。イメージファイバー観察で得られる画像から開口率を測定し、その変化に応じてガス組成と流量を制御した。
【0058】
[実施例1]
表1に示す条件で、炭素濃度と温度毎に適正にAr流量を制御した。その結果、全精錬期間を通して正確な測温と炭素濃度の分析が可能であった。
【0059】
【表1】
Figure 0005014555
【0060】
[実施例2]
初期の昇温速度が遅く[C]=約0.05%、温度=1600℃の時点で閉塞した(表2の(1))。そのため、表2の(2)に示す条件で、ガス組成と流量を制御した結果、再び開口し、その後は全精錬期間を通して正確な測温と炭素濃度の分析が可能であった。
【0061】
【表2】
Figure 0005014555
【0062】
[比較例1]
比較例1は表3に示す条件で、炭素濃度と温度によらずAr流量は一定で操業した。その結果、精錬末期に開口率が低下し観察不能となった。
【0063】
【表3】
Figure 0005014555
【0064】
[実施例3]
3トン規模の上底吹き転炉を用いて実施した。観察用羽口は炉底に設けた内管羽口内直径が10〜15mm、内管と外管の間隙が1mmの2重管羽口を用いた。内管から窒素及び/又は酸素、外管からは窒素、酸素、LPG の一種又は二種以上を用いた。[C]が4.2%、[Mn]が0.16%、[Si]が0.21%、[P]が0.085%の溶鉄を装入し、送酸脱炭した。吹酸開始時の溶鉄温度は1315℃であった。ここで、%は質量パーセントを意味する。吹き止めの成分は[C]が0.04%、[Mn]が0.07%、[Si]が0.01%、[P]が0.017%で、温度は1657℃であった。観察用羽口をしてイメージファイバーによる放射測温を実施するとともに、レーザーを内管から照射し、炭素の発光光を観察し炭素濃度を測定した。内管のイメージファイバー観察で得られる画像から開口率を測定し、その変化に応じて内外管のガス組成と流量を変更して内管羽口先端のマッシュルームサイズを制御した。
【0065】
内管羽口内直径が15mmの2重管羽口を用い、表4に示す条件で、測定された開口率の変化に応じて、炭素濃度と温度毎にマッシュルームサイズを推定しながら適正に外管窒素流量を制御した。その結果、全精錬期間を通して正確な測温(表中の2×σを示す)と炭素濃度の分析が可能であった。尚、内管流量は差し込み限界流量の1.5倍で一定とした。また、(5)式のα は内直径が15mmであるから3.8%になる。
【0066】
【表4】
Figure 0005014555
【0067】
ここで、差し込み限界流量(F;Nm3/h)は以下の式で計算した。
【0068】
F=5.5×(ρg/ρ1)-5/8×(1+H/1.48)3/8×
( /1000)5/2…(10)
ρgはガス密度(kg/m3)、ρ1は溶鉄密度(kg/m3)、Hは浴深(m)である。
【0069】
[実施例4]
実施例4は前提条件を実施例3と同じにして、内管羽口内直径が10mmの2重管羽口を用い、表5に示す条件で、測定された開口率の変化に応じて、炭素濃度と温度毎にマッシュルームサイズを推定しながら適正に外管ガス組成と流量を制御した。その結果、全精錬期間を通して正確な測温と炭素濃度の分析が可能であった。尚、内管流量は差し込み限界流量の1.5倍で一定とした。また、(5)式のα は内直径が10mmであるから8.5%になる。
【0070】
【表5】
Figure 0005014555
【0071】
[実施例5]
実施例5は前提条件を実施例3と同じにして、内管羽口内直径が10mmの2重管羽口を用いたが、初期の昇温速度が遅く[C]=約2.4%、温度=約1400℃の時点で閉塞した(表6の(1))。そのため、表6の(2)、又は(3)に示す条件で、外管ガス組成と流量を変更して内管羽口先端のマッシュルームサイズを制御した結果、再び開口し、その後は全精錬期間を通して正確な測温と炭素濃度の分析が可能であった。
【0072】
【表6】
Figure 0005014555
【0073】
[比較例2]
比較例2は内管羽口内直径が15mmの2重管羽口を用い、表7に示す条件で、炭素濃度と温度によらず外管窒素流量は一定で操業した。その結果、精錬中期に開口率が低下し観察不能となり、また、精錬末期にはマッシュルームが溶解し観察用羽口を溶損した。
【0074】
【表7】
Figure 0005014555
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、精錬の状況に応じて観察用羽口を常時開口させ、安定した精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成の観察を可能とする方法を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 観察用羽口の開口部直径(K)、羽口先端に生成するマッシュルームの直径(M)、内管羽口内直径(r)の関係を示す図である。
【図2】 内直径5mmの羽口を用いた場合のパラメータα、羽口内直径rと放射測温精度の関係を示す実験結果である。
【図3】 内直径10mmの羽口を用いた場合の開口率と放射測温精度との関係を示す図である。
【図4】 本発明の観察用単管羽口の模式図である。
【図5】 本発明の炉内観察用2重管羽口の模式図である。
【符号の説明】
1 羽口管(単管)
2 羽口2重管内管
3 羽口2重管外管
4 羽口煉瓦
5 マッシュルーム
6 ガス気泡
7 精錬炉鉄皮
8 ガス供給用配管(単管)
9 内管ガス供給用配管
10 外管ガス供給用配管
11 測温用イメージファイバーの先端位置
12 イメージファイバー
13 フレキシブルホース
14 イメージファイバー冷却用ガスの出側配管
15 押さえ治具
A ガス(単管)
B 内管ガス
C 外管ガス
D イメージファイバー冷却用ガス
E 溶鉄
F 精錬炉耐火物

Claims (4)

  1. 溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶融金属から放射される電磁波を検知することにより非接触で観測するための単管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から開口率を測定し、
    測定して得られた羽口の開口率(%)が、羽口内直径 (mm)により(1)式で計算されるα 以下の場合に、不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給し、前記羽口の開口率(%)、α よりも大きい場合には不活性ガスのみを供給することにより、前記羽口の開口率(%)をα 以上の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
    α =765/ 2 …(1)
  2. 溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶鉄から放射される電磁波を検知することにより非接触で観察するための2重管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から内管羽口先端の開口率を測定し、
    測定して得られた前記内管羽口先端の開口率(%)が、内管羽口内直径r (mm)により(5)式で計算されるα (%)よりも小さい場合に、前記2重管羽口の外管から不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給して前記内管羽口先端の開口率(%)を増加させる羽口開口期を設け、
    当該開口期以外は、前記外管から羽口冷却ガス、不活性ガスを単独又は混合して供給し、
    前記羽口開口期及び当該羽口開口期以外の期を通して、内管から常時不活性ガスを供給することにより、
    前記内管羽口先端の開口率(%)を、α 以上の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
    α =850/r ・・・(5)
  3. 溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、
    当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶鉄から放射される電磁波を検知することにより非接触で観察するための2重管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から開口率を測定し、該測定した開口率が、内管羽口内直径r (mm)により(5)式で計算されるα よりも小さい場合に、式(2)及び式(3)に基づいて、内管羽口先端の開口率を推定し、推定して得られた前記内管羽口先端の開口率(%)が、α 以上95%以下となるように、外管から不活性ガスと酸化性ガスの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給して前記内管羽口先端の開口率(%)を増加させる羽口開口期を設け、
    当該開口期以外は、前記外管から羽口冷却ガス、不活性ガスを単独又は混合して供給し、
    前記羽口開口期及び前記羽口開口期以外の期間を通して、内管から常時不活性ガスを供給することにより、
    前記内管羽口先端の開口率(%)を、α 以上95%以下の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
    κ=M ×(T−Ts)×Q =a+b×(υ1+υ2)・・・(2)
    ここで、
    M:マッシュルーム直径(mm)
    ガス顕熱による冷却指数(υ1):ガス比熱の関数
    ガス潜熱による冷却指数(υ2):ガス反応熱の関数
    κ:マッシュルームの溶鉄からの受熱指数
    a,b,n:定数
    Q:全ガス流量(Nm /h/t)
    T:溶銑温度(℃)
    Ts:固相線温度(℃)
    (K/r )=β−0.165×(M/r )・・・(3)
    ここで、
    :羽口内直径(mm)
    K:開口部の円相当直径(mm)
    β:1.0〜1.3
    α =850/r …(5)
  4. 溶鉄精錬炉の炉壁及び/又は炉底から耐火物を貫通する管を通じて、当該精錬炉内溶鉄の温度及び/又は組成を、羽口先端の溶鉄から放射される電磁波を検知することにより非接触で観察するための2重管羽口を用いて、イメージファイバー観察で得られる画像から内管羽口先端の開口率を測定し、
    測定して得られた前記内管羽口先端の開口率が、内管羽口内直径r (mm)により(5)式で計算されるα (%)よりも小さい場合に、前記2重管羽口の内管から不活性ガスと酸化性ガスとの混合ガス、又は、酸化性ガスのみを供給することにより開口率を増加させる羽口開口期を設け、
    当該開口期以外は、前記内管から不活性ガスのみを供給し、
    前記内管羽口先端の開口率(%)を、α 以上の範囲に維持するように制御することを特徴とする溶鉄精錬炉の炉内観察方法。
    α =850/r ・・・(5)
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