JP2004037163A - 溶融金属の測温装置 - Google Patents

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山下 幸介
Tomoaki Tanaka
田中 智昭
Masahito Sugiura
杉浦 雅人
Kiyomi Horikoshi
堀越 清美
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Abstract

【課題】溶鋼温度を常時正確に把握でき、適正な操業及び設備管理を行うことを目的とする。
【解決手段】溶融金属1を収容する容器の壁に貫通して設けられた測温用ノズル3と、該ノズルへの溶融金属の浸入防止用の不活性ガスを圧入する装置と、該ノズルの先端部に面する溶融金属の熱放射光をイメージファイバー4を介して撮像装置に取り込む装置と、撮像装置が出力する画像信号をデジタル画像データに変換する画像入力装置12と、該デジタル画像データに基づいて撮像装置の撮影画面上の溶融金属温度を演算するデータ処理装置からなる溶融金属の測温装置において、撮像画面上の熱放射光による高輝度領域の面積を演算する機能を有し、さらにノズルの内側から溶融金属と面するノズル先端部へ酸素ガス8を吹き込む機能を有することを特徴とする溶融金属の測温装置。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属を収容する容器の壁に該壁を貫通した測温用ノズルを設け、該ノズルの先端に面する溶融金属の熱放射光から溶融金属の温度を測定する装置に関し、特に、連続的に測定可能な測温装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉・AOD等の溶融金属を精錬する炉において、精度良く連続して溶鋼温度が測定され、これが操業情報として得られれば、精錬の能率向上・溶鋼品質の改善及び操業上の溶鋼歩留向上・諸原単位の削減等極めて有用である。そのため、精錬炉の溶湯温度を測定する方法は従来より種々試行され改善を重ねられてきた。当初は精錬炉を傾動して、保護管付消耗型熱電対の計測プローブによりオペレータが手動にて溶鋼温度を測定していたが、炉傾動による操業上の安全性・測定時間延長による生産性阻害等の課題があった。そこで、より作業性・生産性の向上が図れるサブランスが開発導入された。これは、水冷ランスの先端に保護管付消耗型熱電対の計測プローブを自動装着して遠隔自動による温度測定作業を可能とした。
【0003】
しかし、これらの計測プローブ方式では、精度の良い測温は可能であるが間欠的な測温のため、精錬中の溶鋼温度を連続的に測定し、精錬制御をきめ細かく実施することは出来なかった。また、温度測定用の計測プローブは消耗品のため、コストも割高であった。
【0004】
これらに対して溶鋼を連続して測温しようとする試みは従来から行われてきた。溶融金属容器の壁を貫通した測温用ノズルに不活性ガスを圧入してノズル内への溶融金属の侵入を防ぎながら、ノズル先端に面する溶融金属の熱放射光を光ファイバーを介して放射温度計等に案内する装置(例えば、特開昭61−91529号公報、特開昭62−52423号公報、特開平8−15040号公報)が知られている。これらの装置では、溶融金属を連続的に測定できる利点があるが、その反面、光ファイバーの視野中心がノズル中心からずれたり、光軸がノズル中心に対して傾斜したりした場合、或いは測定中にパージガスによりノズル先端付近の溶融金属が凝固することがあり、それが光ファイバー視野の一部を塞いだ場合、光ファイバーが受光する放射エネルギーが減少するため見かけの温度が低く観測される。この時、光ファイバーの出力信号からは視野が塞がれているのか実際に温度が低下しているのかが判断できないため、温度測定値の信頼性に問題がある。
【0005】
こうした問題の解決のため、特開平8−15040号公報では光軸のずれが生じないように、光ファイバーを溶融金属に向けて送りだし、光ファイバーの先端を溶融金属に接触させることが提案されている。しかし、高価な光ファイバーの消耗によりコストが嵩むといった問題があり、本質的な解決には至らなかった。
【0006】
上述の対策として、本出願人は測温用ノズルの先端に面する溶融金属の熱放射光をイメージファイバーを介して撮像装置(例えばCCDカメラ)に取り込み、撮像画面が発生する画像信号を画像処理装置によりデジタル画像データに変換し、前記画像データに基づいて該撮像装置の撮影画面上の溶融金属像位置及び溶融金属温度をデータ処理装置により演算する測温装置を出願(特開平11−142246号)している。本装置により、溶融金属温度の連続測定において、測定精度の向上、測定エラーの低減、測定温度の信頼性向上、測定環境の異常の自動検知を可能ならしめた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平11−142246号公報に開示された技術によって、溶融金属温度の連続測定で、測定精度の向上、測定エラーの低減、測定温度の信頼性向上、測定環境の異常の自動検知を可能としたものの、新たに以下の課題があることが判明した。
【0008】
先ず、溶融金属からの熱放射光が測温用ノズル内面や該ノズルからイメージファイバーまでの接続部の内面に照射されるため、測温装置は溶融金属からの直接光の周辺に内面反射光が存在し、正確な温度を測定できない場合がある。これに対しては、測温用ノズルの中心軸とイメージファイバーの光軸とを極力一致させる、撮影画面上の高輝度領域の中心位置を測温位置と一致させる等の対策を講じても、充分な効果が得られないことが挙げられる。
【0009】
次に、測温用ノズル内に溶融金属の浸入防止として不活性ガスを圧入しているため、該ノズル先端付近の溶融金属が凝固して溶融金属からの熱放射光を遮った場合、イメージファイバーの視野が狭くなる、あるいは塞ぐことが挙げられる。この特開平11−142246号公報では、高輝度領域の中心位置を算出して視野ずれを検出し、常に高輝度領域を測定できるため、視野がかなり塞がった状態でも正確な測温が可能となった。しかし、パージガスに不活性ガス(Ar,N,CO等)を使用している限りは、溶融金属の凝固が徐々に進行し、遂には熱放射光が完全に遮られるに至ることがある。
【0010】
測温用ノズル閉塞時に関しては、不活性ガスを酸素ガスに切り替えて、該ノズル先端部の地金を溶かす方法が提案されている。(特開昭60−231141号公報、CAMP−ISIJ Vol.2(1989)−P.216)しかし、これを実施し過ぎると該ノズルの溶損が著しく大きくなり、また使用するタイミングを逸すると酸素を流しても地金の溶流ができなくなる。これらの提案には明確な実施方法が示されておらず、酸素による地金の溶流が効果的に利用することができない。
【0011】
また、特開昭60−129628号公報では、測温用ノズルから吹き込む不活性ガスに適量の酸素を混合して測温する方法が提案されている。しかし、吹き込みガス中の酸素の混合度によって、吹き込みガスと溶鋼との界面温度が大きく変化してしまい、また、ガスの混合割合の微調整が難しいので、精度の高い溶鋼温度測定を行うことが困難である。
【0012】
特開平11−326061号公報では、測温用ノズル専用としないで、通常は吹錬用ノズルとして窒素を混合した酸素ガスを流しノズルの地金成長を抑止し、温度測定時にはノズルに窒素を流し、測温終了後には吹錬用酸素ガスに戻す。この方法は、温度をあるポイントで測定する所謂バッチ測温であり、溶鋼を連続して測温しようとする所期の目的は達成できない。
【0013】
このように上述した2点の課題は未解決の状態であり、この課題の早急な解決が強く求められている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、これらの課題を解決する方法を見出した。その要旨は以下の通りである。
【0015】
(1) 溶融金属を収容する容器の壁に貫通して設けられた測温用ノズルと、該ノズルへの溶融金属の浸入防止用の不活性ガスを圧入する装置と、該ノズルの先端部に面する溶融金属の熱放射光をイメージファイバーを介して撮像装置に取り込む装置と、撮像装置が出力する画像信号をデジタル画像データに変換する画像入力装置と、該デジタル画像データに基づいて撮像装置の撮影画面上の溶融金属温度を演算するデータ処理装置からなる溶融金属の測温装置において、撮像画面上の熱放射光による高輝度領域の面積を演算する機能を有し、さらにノズルの内側から溶融金属と面するノズル先端部へ酸素ガスを吹き込む機能を有することを特徴とする溶融金属の測温装置。
【0016】
(2) 溶融金属を収容する容器の壁に貫通して設けられた測温用ノズルと、該ノズルへの溶融金属の浸入防止用の不活性ガスを圧入する装置と、該ノズルの先端部に面する溶融金属の熱放射光をイメージファイバーを介して撮像装置に取り込む装置と、撮像装置が出力する画像信号をデジタル画像データに変換する画像入力装置と、該デジタル画像データに基づいて撮像装置の撮影画面上の溶融金属像位置及び溶融金属温度を演算するデータ処理装置からなる溶融金属の測温装置において、撮像画面上の熱放射光による高輝度領域を指定する機能、および指定した領域内の輝度値から溶融金属の温度を推定する機能を有することを特徴とする溶融金属の測温装置。
【0017】
(3) 撮像画面上の熱放射光により指定した高輝度領域の面積の変化に応じて、ノズルの内側から溶融金属と面するノズル先端部へ酸素ガスを吹き込む機能を有することを特徴とする(2)記載の溶融金属の測温装置。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細を図面により説明する。
【0019】
本発明のシステム構成概要図の例を図1に示す。溶鋼1の容器である精錬炉2の側壁下部に、壁を貫通して設置された測温用ノズル3は、その背面にイメージファイバー4が接続されている。該ノズル内にはノズルパージガス配管6を通して不活性ガス(アルゴンガス、窒素ガス、COガス等)が圧入され、溶鋼と接する該ノズル開口先端部から不活性ガスを溶鋼1に吹き出すことで、ノズルへの溶融金属の浸入を防止でき、吹き出した不活性ガスは気泡となって溶鋼中を浮上して行く。したがって、イメージファイバー4の受光端には、該ノズルから溶鋼に吹き出す不活性ガスと溶鋼1との界面の溶鋼が発する熱放射光が当る。
【0020】
イメージファイバー4は、例えば、15000本以上の光ファイバー(素線)を細密に結合して直径4mm程度に束ねたものを用いることができ、その先端(受光端)には、焦点距離が無限大近くの集光レンズが装着されており、イメージファイバー4の受光端に、その前方の像が投影される。イメージファイバー4の出光端には、投射像がそのまま伝達される。
【0021】
撮像装置としては、例えば、CCDカメラ5を用いることができ、このCCDカメラ5はイメージファイバー4の出光端の画像を撮影し、アナログ画像信号(輝度を表すビデオ信号)を出力する。CCDカメラ5のシャッター速度及び読み取り(ビデオ信号出力レベル)はコントローラ11を介して制御される。
【0022】
次に、上記アナログ画像信号(ビデオ信号)は画像入力装置12に与えられる。画像入力装置12は、ビデオ信号を主走査X方向640画素×副走査Y方向480画素×256階調のデジタル画像データ(輝度を表すデータ)に変換してその内部メモリーに書き込み、これを繰り返して最新のデジタル画像データを保持する。画像入力装置12は、保持されたデジタル画像データをパソコン13に転送し、パソコン13はこのデジタル画像データを内部メモリ(以下画像メモリと称す)に書き込む。CCDカメラは1秒間に20画面〜30画面の繰り返し回数でイメージファイバーの光像を撮影し、その1回分のデジタル画像データを1フレーム(1画面)という。
【0023】
パソコン13は、取り込んだデジタル画像データを下記に示す温度計測処理を1秒間に約5回の周期で行い、その結果を外部の出力装置14であるCRTディスプレイに表示する。尚、出力装置14には、この他にプリンター及び外部記憶装置が含まれている。
【0024】
図2にはデジタル画像データで表される画像を示す。理想状態では、図2(a)に示すように、撮像画面16の中央にノズル内面像17があって、この像17の中心に溶鋼像18があるものとなる。溶鋼像18は溶鋼の光像であり、撮像画面内で最も高輝度で、ノズル内面像17は低輝度である。このノズル内面像の外領域は、イメージファイバー4の出光端面の外領域で最も低輝度である。
【0025】
パソコン13による温度計測処理方法を図2(a)の例を使って簡潔に説明する。パソコンに取込まれた各画素データは輝度を示すものであり、溶鋼像を抽出するために、溶鋼像とノズル内面像のそれぞれの輝度を2値化して識別する。具体的には、2値化のための「閾値a」を設定し、この「閾値a」と比較して、輝度が「閾値a」以上の画素データは溶鋼像18(「1」)として認識され、輝度が「閾値a」未満の画素データはノズル内面像17(「0」)として認識される。ここで2値画像メモリ上で、周囲が「0」で囲まれた「1」は「0」に、周囲が「1」で囲まれた「0」は「1」に変換され、「1」の全ての領域は実質上溶鋼像18に、「0」の全ての領域は実質上ノズル内面像17となる。ここで、2値化のための「閾値a」は計測実績から溶鋼像を充分識別可能な値であれば、特に規定するものではなく、適宜設定するものである。
【0026】
この様にして抽出された溶鋼像の輝度から、温度に換算することにより、溶鋼の温度が測定できる。溶鋼像の輝度は、溶鋼像内の画素を平均化することが好ましい。輝度から温度への換算としては、例えば1画素単位で予めオフラインの黒体炉で校正された輝度−温度換算の光電変換特性に基づいて換算できる。
【0027】
次に、2値画像メモリ上「1」のX方向分布ヒストグラム(X各位置でのY方向に分布する「1」の数の積算値)を生成し、同様にY方向分布ヒストグラムを生成する。また、前記X方向分布ヒストグラムのX各位置のY方向に分布する「1」の数の積算値Shを求める。このShは溶鋼像18の面積として定量化される。
【0028】
ここで、温度計測処理された推定温度と実際の温度との誤差データと溶鋼像18の面積Shとの相関関係を整理することにより、精度の良い測温データが得られる溶鋼像18の面積Shの範囲が定量的に推定可能となる。
【0029】
この様な温度推定を行うに際し、溶鋼像18が図2(a)に見られるような状態、すなわち測温ノズル先端外周部に地金が殆ど無い状態であれば、溶鋼の熱放射光が充分に撮像装置に取り込まれ、溶鋼の測温は安定して精度良く実施可能である。
【0030】
しかし、測温中は該ノズルに不活性ガス(アルゴンガス等)を通すため、ノズル先端周辺には地金が生成し、成長する。そのため溶鋼からの熱放射光の入射通路断面が狭くなる。その例を図2(b)、(c)に示す。図2(b)はノズル先端地金はそれ程大きくないため、溶鋼像18はある程度の大きさが確保され、パソコン上での温度計測処理により、比較的精度の良い温度が得られる場合を示す。また、図2(c)はノズル先端の地金が更に成長し、溶鋼像18は極めて小さいものとなったため、温度計測処理をおこなっても充分精度の良い温度は得られない場合を示す。
【0031】
この様に、推定温度の許容精度を下回る場合の、溶鋼像18の面積Shの「閾値b」を予め設定しておき、この「閾値b」を下回った場合、以下の処置を実施する。ここで、上記「閾値b」は推定温度の許容精度に応じて決まる値であり、また推定温度の許容精度は目的に応じて適宜設定するものである。
【0032】
上記「閾値b」を下回った場合の処置として、例えばノズル先端地金を除去するため、前述したようにノズルパージガスの不活性ガスから酸素ガスに切り替える。図1に示すように、通常は不活性ガス制御弁9を開いてノズルパージガス配管6に不活性ガス7を導入している。そこで、酸素制御弁10を開いてノズルパージガス配管6に酸素ガス8を導入すると同時に、不活性ガス制御弁9を閉じて不活性ガスを遮断する。これにより測温ノズルには不活性ガスの代わりに酸素ガスが流れ、該ノズル先端の生成地金を溶流することが出来る。所定の地金溶流時間が経過した後、不活性ガス制御弁9を開き、酸素制御弁10を閉じて該ノズルパージガスとして不活性に切り替え、溶鋼の測温を継続する。ここで、所定の地金溶流時間とは、ノズル先端地金が充分溶流出来、測温可能な溶鋼像が得られ、且つ溶流時間過多により先端地金のみならず、羽口パイプそのものが溶流されることが防止できる時間を意味し、過去の実績等から適宜設定できる。溶鋼像18の面積Shを計測監視しながら、Shがある「閾値b」以下となった時酸素開孔を行い、これを繰り返すことにより継続して溶鋼の測温が可能となる。
【0033】
ここで、ノズル先端の地金を溶流する場合、酸素ガスを使用することを前述したが、別の形態として酸素とAr,N,CO 等の不活性ガスを単独或いは複合して混合して流しても良い。その際、酸素ガス濃度は本発明者の実験等により、50容量%以上であれば短時間で地金溶流可能であるため好ましい。
【0034】
次に、溶鋼面からの熱放射光が測温用ノズル内面や該ノズルからイメージファイバーまでの接続部の内面に照射されるため、測温装置は反射光をも含めて測定することになり、正確な温度を測定できないことがある。この状況は、例えば図3(a)に示す様に、撮影画面16上のノズル内面像17内において溶鋼像の両外側或いは片外側にノズル内面反射光19の像が観察される。
【0035】
これに対しては、測温用ノズルの中心軸とイメージファイバーの光軸とを極力一致させる、撮影画面上の高輝度領域の中心位置を測温位置と一致させる等の対策を講じることで、ある程度の効果は得られるものの、以下のことにより精度を高くできることを見出した。
【0036】
本発明では、図3(b)に示すように、溶融金属の熱放射光をイメージファイバーを介して撮像装置に取込んだ撮像画面に対して、予めノズル内面反射光19を除いた測温エリア指定領域20を画像処理装置12及びパソコン13にて設定することにより、正確な測温を可能とした。
【0037】
ここで、ノズル内面反射光の識別方法としては、溶鋼像とノズル内面反射光の輝度の差を利用する。通常ノズル内面反射光は溶鋼像に対して輝度が低いため、撮像画面上の両者の像を比較すれば識別が可能となる。
【0038】
測温エリア指定領域20の設定方法としては、ノズル内面反射光19を除いた測温エリアを任意に指定すれば、特に方法は規定するものではない。
【0039】
但し、その例として以下の方法を用いても良い。
【0040】
まず前記、2値画像メモリ上「1」のX方向分布ヒストグラム(X各位置でのY方向に分布する「1」の数の積算値)を生成し、その重心位置をWxとする。同様にY方向分布ヒストグラムを生成し、その重心位置をWyとする。次に、位置(Wx,Wy)が、溶鋼像18の中心位置とみなし、すなわち(Wx,Wy)を測温エリア指定領域20の中心と定義し、パソコン13にて測温すべきエリアの中心ポイント及びある選択可能範囲内でエリアの境界ポイント(図3(b)にて円の半径に相当する)を指定し、画像処理装置12に設定する。
【0041】
また、オペレーション上更に簡便な方法として、操作者が溶鋼像の中心に例えば円弧等の領域を指定することにより、測温エリアを定義することも可能である。本法の場合、測温エリア指定の頻度を前述の方法より増加させることが、管理上好ましい。
【0042】
ここで、測温エリア指定領域20の中心ポイント及び測温エリア指定領域の境界ポイントが定数として決められないのは、溶鋼像18がノズル内面像17の中心に常にあるとは限らないためである。前述したように測温ノズルの中心軸とイメージファイバーの光軸がずれたり、ノズル先端地金が偏って生成したため、溶鋼像18がノズル内面像17に近接することがある。よって測温エリア指定領域20の中心ポイント及び測温エリア指定領域の境界ポイントは、撮像画面上の溶鋼像の位置に応じて前述した指定方法によって適宜変更することが好ましい。
【0043】
また上記の様に、測温エリア指定領域を設定する方法を用いて指定した、高輝度領域の面積の変化に応じて、ノズルの内側から溶融金属と面するノズル先端部へ酸素ガスを吹き込むことで、反射光の影響と、ノズル先端に付着する地金の影響の両方を抑制することができ、より高い精度で測温できる。
【0044】
【発明の効果】
第1に、画像データ上の溶鋼像の最高輝度点を含むエリア指定方式により、ノズル内面反射光を溶鋼像から分離することができる。これにより、溶鋼の連続測温が安定して精度良くできるようになり、また測温ノズル先端に地金が成長し、溶鋼の熱放射光の導入面積が減少して画像データ上の溶鋼像が小さくなっても測温精度を高く維持できる。
【0045】
第2に、測温ノズル先端に地金が成長し、溶鋼の熱放射光の導入面積が減少して、測温精度を高く維持できなくなるまで画像データ上の溶鋼像が小さくなる場合において、溶鋼画像の画素数を定量的に管理することにより、酸素を用いて的確に該ノズル先端の地金を溶流して溶鋼の熱放射光の導入面積を確保すること(ノズルの酸素開孔)ができる。すなわち、従来、定量的に管理していないことによる、酸素開孔のタイミング遅れになった場合、該ノズルに酸素を流してもノズル先端のガス流路が小さくなり過ぎ、酸素開孔が出来なくなっていたことが、該ノズルの酸素開孔の実行を定量的に判断できるようになったことにより、該ノズルの酸素開孔を的確に実施することを可能とするものである。また逆に、酸素開孔が出来なくなることを恐れて、充分に測温が可能な測温ノズルの地金付着状況下においても、酸素開孔を頻度多く実施することで該ノズルの溶損速度が大きくなることによる、該ノズルを交換すること、或いは使用が不可能となることが多く見られたことが、該ノズルの酸素開孔の実行を定量的に判断できるようになったことで、酸素開孔の実施頻度を適正に行うことができ、その結果測温ノズルの溶損速度は著しく改善できるものである。
【0046】
これらの効果により、溶鋼温度を常時正確に把握でき、適正な操業及び設備管理を行うことができるため、大幅な製造コストを削減すると同時に高品質な鋼を安定して高い稼働率を維持しつつ溶製可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すシステム構成概要図である。
【図2】図1に示すCCDカメラの撮影画面であり、ノズル先端地金の成長にともない溶鋼面が小さくなることを示すもので、(a)はノズル先端地金が殆ど無い状態を示す図であり、(b)はノズル先端地金が付着しているが、測温が可能な状態を示す図であり、(c)はノズル先端地金が成長し、測温が不可能な状態を示す図である。
【図3】図1に示すCCDカメラの撮影画面であり、ノズル内面に溶鋼面の反射光が現れることを示すもので、(a)はノズル内面に溶鋼面の反射光が現れた状態を示す図であり、(b)は測温のためのエリア指定を行い溶鋼面の反射光を除外して測温を行っている状態を示す図である。
【符号の説明】
1…溶融金属
2…精錬炉
3…測温用ノズル
4…イメージファイバー
5…CCDカメラ
6…ノズルパージガス配管
7…アルゴンガス(又は窒素ガス)
8…酸素ガス
9…アルゴンガス制御弁
10…酸素ガス制御弁
11…コントローラ
12…画像入力装置
13…パソコン
14…出力装置
15…パージガス制御装置
16…撮影画面
17…ノズル内面像
18…溶鋼像
19…ノズル内面反射光
20…測温エリア指定領域

Claims (3)

  1. 溶融金属を収容する容器の壁に貫通して設けられた測温用ノズルと、該ノズルへの溶融金属の浸入防止用の不活性ガスを圧入する装置と、該ノズルの先端部に面する溶融金属の熱放射光をイメージファイバーを介して撮像装置に取り込む装置と、撮像装置が出力する画像信号をデジタル画像データに変換する画像入力装置と、該デジタル画像データに基づいて撮像装置の撮影画面上の溶融金属温度を演算するデータ処理装置からなる溶融金属の測温装置において、撮像画面上の熱放射光による高輝度領域の面積を演算する機能を有し、さらにノズルの内側から溶融金属と面するノズル先端部へ酸素ガスを吹き込む機能を有することを特徴とする溶融金属の測温装置。
  2. 溶融金属を収容する容器の壁に貫通して設けられた測温用ノズルと、該ノズルへの溶融金属の浸入防止用の不活性ガスを圧入する装置と、該ノズルの先端部に面する溶融金属の熱放射光をイメージファイバーを介して撮像装置に取り込む装置と、撮像装置が出力する画像信号をデジタル画像データに変換する画像入力装置と、該デジタル画像データに基づいて撮像装置の撮影画面上の溶融金属像位置及び溶融金属温度を演算するデータ処理装置からなる溶融金属の測温装置において、撮像画面上の熱放射光による高輝度領域を指定する機能、および指定した領域内の輝度値から溶融金属の温度を推定する機能を有することを特徴とする溶融金属の測温装置。
  3. 撮像画面上の熱放射光により指定した高輝度領域の面積の変化に応じて、ノズルの内側から溶融金属と面するノズル先端部へ酸素ガスを吹き込む機能を有することを特徴とする請求項2記載の溶融金属の測温装置。
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