以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(高炉内で進行している反応の概略)
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態で着目する高炉について、簡単に説明する。図1は、本発明の実施形態で着目する高炉について説明するための説明図である。
図1に示したように、高炉は、円筒の徳利形状を有する竪型炉の一種であり、炉の頭頂部(炉頂部)から供給される原料と、炉の下方に設けられた羽口から供給される熱風により生成される還元性ガスとが反応する反応装置として機能する。
炉頂部から供給される原料としては、主に、鉄鉱石や焼結鉱等の鉄酸化物、コークス、石灰石等がある。鉄鉱石は、高炉における反応で生成される銑鉄の鉄源となるものであり、コークスは、鉄鉱石の還元剤及び原料を溶解するための熱源として機能するだけでなく、高炉内の通気性を保持する役割を有している。また、石灰石は、鉄鉱石の脈石成分と反応して低溶融点で流動性のよいスラグを生成するために添加される媒溶剤として機能する。
高炉の内部では、図1に示したように、鉄鉱石(及び石灰石)からなる層と、コークスからなる層とが交互に積層されている。これらの原料は、図1に示したような積層状態を維持しつつ、炉の下方へと移動していく。
また、図1に示した羽口からは、熱風及びコークスの補完還元剤として機能する微粉炭が供給される。羽口近傍のレースウェイと呼ばれる領域において、供給された熱風により微粉炭やコークスが燃焼によりガス化して、一酸化炭素や水素等からなる高温の還元性ガスが生成される。この高温の還元性ガスは、炉内を移動する上昇気流となって炉頂部へと吹き昇っていく。この還元性ガスにより炉内の鉄鉱石は還元されていき(間接還元)、更に、還元性ガスが有する熱によって固体から液体へと変化する。液体となった鉄分は、コークス層内を滴下しながらコークスの炭素によって更に還元され(直接還元)、炭素を5%程度含む溶銑となる。
図1に示した融着帯では、半溶融状態にある鉄分の間に固体コークスがスリット状に存在している部分であり、主にこの融着帯において、上述のような鉄分の相変化が生じている。
このように、高炉という反応装置では、固体、液体、気体が共存して反応が進行している。高炉内で進行している反応を促進させるために、上記のように羽口から補完還元剤として微粉炭が供給されているが、安定的な操業を行うためには、羽口の閉塞が生じないこと、及び、羽口の閉塞が生じた場合であっても、閉塞を速やかに除去することが重要である。そのため、羽口の状態の監視機能だけでなく、生じてしまった羽口の閉塞を自動的に除去する機能を実現することが重要となる。
本発明者は、以上のような観点について、詳細な検討を行った結果、以下で詳述するような高炉羽口閉塞除去装置及び高炉羽口閉塞除去方法に想到したのである。
(実施形態)
<高炉羽口閉塞除去装置の全体構成について>
以下では、まず、図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10の全体構成について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置の全体構成の一例を模式的に示した説明図である。
なお、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10が設けられる高炉では、図2に模式的に示したように、羽口に対して、熱風を吹き込むためのブローパイプと、微粉炭を供給するためのPCランスと、が装着されているものとする。
ここで、PCランスに接続されている供給ラインの途中には、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10の制御下にある三方弁が設けられており、微粉炭の供給と、パージガスの供給と、が切り替えられるようになっている。また、ブローパイプには、導圧管が設けられており、ブローパイプから供給される熱風の流量が、導圧管に設けられた流量発信器から、随時、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10に出力されているものとする。
本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10は、高炉に設けられた羽口に閉塞が生じているかを検知するとともに、羽口の閉塞が生じていると検知した場合には、羽口の閉塞を自動的かつ速やかに除去する機能を有している。この高炉羽口閉塞除去装置10は、図2に示したように、撮像装置100と、演算処理装置200と、を備える。
[撮像装置について]
撮像装置100は、羽口の熱放射輝度の分布状況を撮像して、熱放射輝度画像を生成する装置である。撮像装置100は、レンズ等の各種光学素子と、CCD(Charge Coupled Device)、又は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子と、を有している。ここで、本実施形態に係る撮像装置100は、静止画像を生成可能なものであってもよく、動画像を生成可能なものであってもよい。また、本実施形態に係る撮像装置100は、モノクロ画像を撮像可能なものであってもよいし、カラー画像を撮像可能なものであってもよい。なお、カラー画像を撮像可能な撮像装置を利用する場合には、1チャンネルの輝度画像を生成すればよい。すなわち、輝度画像の生成手段としては、RGB成分のうちR,G,Bのいずれかの成分だけを利用しても良いし、RGB色空間からYCbCr色空間への変換を行い、Y成分のみを利用しても良い。
撮像装置100は、後述する演算処理装置200により制御されており、所定のフレームレート毎に、演算処理装置200から撮像のためのトリガ信号が出力される。撮像装置100は、演算処理装置200から出力されたトリガ信号に応じて、羽口からの熱放射を撮像し、生成した熱放射輝度画像を演算処理装置200に出力する。
図3は、本実施形態に係る撮像装置100の設置状態を説明するための説明図であり、図4は、本実施形態に係る熱放射輝度画像の例を示した説明図である。高炉は、耐熱レンガで覆われた鉄皮によって形成されているが、図3に示したように、羽口には、PCランスによって微粉炭が供給されるとともに、1200℃程度の熱風が供給されている。羽口から高炉内部へ約1mの範囲にはレースウェイが形成されており、このレースウェイでは、微粉炭やコークス等の燃焼により、2000℃以上の高温となっている。
本実施形態に係る撮像装置100は、羽口の状態を観察するための観察窓に設置されており、羽口近傍のレースウェイからの熱放射を撮像して熱放射輝度画像を生成する。羽口は、通常、円形状であるが、撮像装置100は、羽口を斜め上から見下ろすように撮像するため、撮像される熱放射輝度画像の羽口形状は、図4左上に示したように、略楕円形状となる。
撮像装置100は、高炉の操業状態が良好と判断されている際に、予め撮像視野やピント等が調整されており、適切な撮像処理が行われるようになっている。高炉羽口の状態が良好である場合には、図4最上段に示したように、羽口に対応する領域(羽口領域)の内部に、視野の中にPCランスの先端部と、PCランスの先端から供給される微粉炭とが、暗部となって写り込む。また、溶鋼中の鉱石からの熱放射が、明部となって写り込む。
羽口が約半分閉塞した状態では、図4上から2番目の画像に示したように、明部の面積が小さくなり、暗部の面積が大きくなる。また、羽口が完全に閉塞した状態では、図4下から2番目の画像に示したように、羽口領域は完全に暗部となってしまう。
また、完全に溶融していない鉱石が落下する現象である「生鉱落ち」が生じている場合には、熱放射輝度画像の時間変化に着目すると、図4最下段に示したように、羽口領域における明部の全面に、溶解中の鉱石の流れが生じる。
以上、図4を参照しながら、本実施形態に係る熱放射輝度画像の例について、具体的に説明した。
[演算処理装置の全体構成について]
再び図2に戻って、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10が備える演算処理装置200の全体構成について説明する。
本実施形態に係る演算処理装置200は、羽口から高炉の内部へと供給される熱風及び微粉炭の供給量を制御する装置である。また、本実施形態に係る演算処理装置200は、撮像装置100により撮像された熱放射輝度画像に対して所定の画像処理を施して、熱放射輝度画像に対する画像処理結果、及び、高炉の内部へと供給される熱風の流量に基づいて、高炉羽口の閉塞が生じているかを判定する。
かかる機能を有する演算処理装置200は、図2に模式的に示したように、制御部201と、画像処理部203と、判定部205と、表示制御部207と、記憶部209と、を主に備える。
制御部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。制御部201は、高炉羽口閉塞除去装置10が備える撮像装置100の撮像制御を行うとともに、高炉へと供給される熱風及び微粉炭の供給量を制御する。
制御部201は、撮像装置100による羽口の撮像制御を実施する。より詳細には、制御部201は、熱放射輝度画像の撮像を開始する場合に、撮像装置100に対して、撮像を開始させるための制御信号を送出する。これにより、羽口近傍を撮像した熱放射輝度画像が、撮像装置100から演算処理装置200の画像処理部203へと、所定の時間間隔で出力される。
また、制御部201は、ブローパイプの途中に設けられている各種の弁(図示せず。)や、PCランスへと微粉炭を供給する供給ラインに設けられている三方弁の開閉を制御することで、高炉の内部へと供給される熱風及び微粉炭の供給量を制御する。制御部201は、後述する判定部205により、羽口が閉塞している旨を示す情報が出力された場合には、三方弁に対して、PCランスに接続されている供給ラインを、微粉炭を供給するラインからN2等の所定のパージガスを供給するラインへと切り替えさせるための制御信号を送出する。
羽口に閉塞が生じていると考えられる状況において、PCランスからの微粉炭の供給を継続してしまうと、羽口の閉塞が更に進行してしまう。この場合においても微粉炭の供給を継続すると、供給される微粉炭の異常燃焼が発生し、羽口の破損といった設備に対する悪影響が発生する可能性が高くなる。また、羽口の閉塞が進行することで、羽口近傍での圧力が高まってしまい、熱風や微粉炭の逆流が生じてしまう可能性もある。
そこで、本実施形態に係る制御部201では、後述する判定部205により、羽口が閉塞している旨を示す情報が出力された場合には、微粉炭の供給を停止し、かつ、閉塞を除去するためのN2等のパージガスの供給を開始するように、三方弁を制御する。これにより、上記のような微粉炭の供給を継続することによる状態の悪化を抑制するとともに、羽口の閉塞を自動的かつ速やかに除去することが可能となる。
ここで、制御部201の制御下のもとでPCランスに供給されるパージガスの圧力等については、特に限定されるものではないが、閉塞を除去するという目的から、通常、微粉炭を供給している圧力よりも高い圧力で、パージガスを供給することが好ましい。例えば、通常時の微粉炭の供給圧力が0.3〜0.6MPaである場合には、「パージ圧力が微粉炭の供給圧力超過となる」という条件のもとで、0.5〜0.7MPaの範囲内の所定の圧力で、パージガスを供給するように制御すればよい。
なお、制御部201は、上記のような各種制御における制御状況を表わす情報を、後述する表示制御部207へと出力してもよい。これにより、高炉羽口閉塞除去装置10の管理者は、現在実施されている制御処理の詳細を、その場で把握することが可能となる。
画像処理部203は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像処理部203は、撮像装置100から取得した熱放射輝度画像の撮像データに対して、以下で説明するような画像処理を行い、後述する明部面積比に関する情報等、各種の特徴量情報を生成する。画像処理部203は、熱放射輝度画像に基づいて各種の特徴量情報を生成すると、生成した特徴量情報を、後述する判定部205に出力する。また、画像処理部203は、生成した各種の特徴量情報を、後述する表示制御部207に出力してもよい。これにより、高炉羽口閉塞除去装置10の管理者は、熱放射輝度画像から生成された各種の特徴量情報の詳細を、その場で把握することが可能となる。
なお、この画像処理部203については、以下で改めて詳細に説明する。
判定部205は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。判定部205は、画像処理部203から出力された明部面積比に関する情報、及び、流量発信器から発信された熱風の流量に少なくとも基づいて、羽口の閉塞が生じているかを判定する。判定部205は、羽口の閉塞が生じていると判定した場合には、その旨を制御部201へと出力する。これにより、制御部201では、微粉炭の供給を停止させるとともに、パージガスの供給を開始させるための制御信号を、供給ライン上に設けられた三方弁に出力する。また、判定部205は、羽口の閉塞に関する判定結果等、後述する判定処理によって得られた各種の結果情報を、後述する表示制御部207に出力してもよい。これにより、高炉羽口閉塞除去装置10の管理者は、羽口の閉塞が生じているか否かの判定結果等、各種の判定結果の詳細を、その場で把握することが可能となる。
なお、この判定部205については、以下で改めて詳細に説明する。
表示制御部207は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現される。表示制御部207は、制御部201、画像処理部203、判定部205等から出力された各種の情報を、演算処理装置200が備えるディスプレイ等の出力装置や、演算処理装置200の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、高炉羽口閉塞除去装置10の管理者は、各種の情報をその場で把握することが可能となる。
記憶部209は、演算処理装置200が備える記憶装置の一例であり、RAMやストレージ装置等により実現される。記憶部209には、本実施形態に係る演算処理装置200が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中結果等、又は、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部209は、制御部201、画像処理部203、判定部205、表示制御部207等が自由にリード/ライト処理を行うことが可能である。
[画像処理部について]
続いて、図5を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200が備える画像処理部203について、詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置が備える演算処理装置の画像処理部の構成の一例を示したブロック図である。
本実施形態に係る画像処理部203は、図5に示したように、画像変換部211と、羽口領域特定部213と、輝度値特定部215と、二値化画像生成部217と、明部面積比算出部219と、を主に備える。
画像変換部211は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像変換部211は、撮像装置100が生成した熱放射輝度画像の輝度値を、所定のビット数の階調に変換する。変換後の階調数は、特に限定するものではなく、演算処理装置200として利用できるコンピュータ等の処理性能や、求められる演算時間・演算処理精度等に応じて、適宜決定すればよい。このような階調数として、例えば、8bitの階調(すなわち、256階調)を挙げることができる。
なお、撮像装置100が生成した熱放射輝度画像が、元来8bitの階調で表現されているものであれば、かかる画像変換処理を実施しなくともよいことは言うまでもない。
画像変換部211は、このようにして生成した、変換後の熱放射輝度画像を、羽口領域特定部213へと出力する。
羽口領域特定部213は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。羽口領域特定部213は、階調数変換後の熱放射輝度画像に写っている羽口の形状にあわせて楕円近似処理を実施することにより、熱放射輝度画像において羽口が写っている領域である羽口領域を特定する処理を実施する。
図4に例示したように、本実施形態に係る熱放射輝度画像に写っている羽口の輪郭形状は、略楕円形状となっている。そこで、羽口領域特定部213は、羽口の輪郭形状を、以下の式101で表されるような楕円で近似し、楕円の中心位置(重心位置)と、長軸及び短軸の長さと、を算出する。ここで、下記式101において、座標(xC,yC)は、楕円の中心座標を表し、パラメータaは、長軸の1/2の長さを表し、パラメータbは、短軸の1/2の長さを表す。
なお、熱放射輝度画像に写っている羽口の楕円形状の輪郭を得るためには、設備の補修等で高炉に送風する熱風を止める、いわゆる休風時の画像を用いればよい。休風時の画像は、視野内には微粉炭は存在せず、PCランスのみが写り込んだものとなっている。そこで、休風時の画像からPCランスを除いた部分の輪郭を考慮し、この輪郭に当てはまるような楕円を、コンピュータで実行される画像処理アプリケーション等を利用して描いた上で、描いた楕円に関するパラメータ(xC,yC,a,b)を画像上で測定すればよい。
以上のような楕円近似処理を実施することで、熱放射輝度画像における羽口領域を特定することが可能であるが、羽口領域特定部213は、得られた楕円形状を更に幾何学変換して、真円に正規化してもよい。この場合には、羽口領域特定部213は、長軸に対応するx軸を(b/a)倍に縮小して、半径b、中心((b/a)×xC,yC)の正規化円とし、正規化画像を生成することができる。ここで、楕円形状を円に正規化する際の幾何学変換は、公知のものを使用することが可能であり、例えば、アフィン変換を利用すればよい。
羽口領域特定部213は、以上のようにして得られた、熱放射輝度画像における羽口領域の位置を表わす情報を、熱放射輝度画像とともに後述する輝度値特定部215及び二値化画像生成部217に出力する。
輝度値特定部215は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。輝度値特定部215は、熱放射輝度画像の少なくとも羽口領域に含まれる画素について、最大輝度値及び最小輝度値を特定する。このようにして特定される最大輝度値及び最小輝度値は、羽口の状態を表わす特徴量として利用可能な情報である。輝度値特定部215は、このようにして特定された最大輝度値及び最小輝度値を、判定部205に出力する。
判定部205は、後述する明部面積比に関する情報以外にも、このような輝度値に関する特徴量を利用することで、羽口の閉塞以外にも様々な羽口の状態を判定することが可能となる。
二値化画像生成部217は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。二値化画像生成部217は、輝度値に関する所定の閾値に基づいて熱放射輝度画像を二値化して、二値化画像を生成する。なお、二値化画像生成部217は、熱放射輝度画像の全体を二値化してもよいし、羽口領域に対応する部分のみを二値化してもよい。
なお、二値化画像生成部217が二値化処理に用いる閾値は、予め設定された静的な閾値であってもよいし、輝度値特定部215によって特定された最大輝度値に応じて設定される動的な閾値であってもよい。
静的な閾値は、過去の操業データ等を利用して予め各種の統計処理等を実施する等といった公知の方法により、決定することができる。また、動的に閾値を決定する場合には、「最大輝度値のn%に対応する輝度値を閾値とする」などのように基準となる閾値の算出方法を、過去の操業データ等を利用して予め決定しておき、輝度値特定部215から出力された最大輝度値に応じて、その都度閾値を決定すればよい。この際、最大輝度値のn%に対応する輝度値を算出した結果、輝度値特定部215により特定された最小輝度値の方が最大輝度値のn%よりも大きかった場合には、二値化画像生成部217は、予め定められている静的な閾値を利用して、熱放射輝度画像を二値化すればよい。
以上のような二値化処理が施されることで、熱放射輝度画像において閾値以上の輝度値を有している画素は、輝度値=1へと変換され、閾値未満の輝度値を有している画素は、輝度値=0へと変換される。二値化画像生成部217は、このようにして生成された二値化画像を、明部面積比算出部219に出力する。
明部面積比算出部219は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。明部面積比算出部219は、二値化画像生成部217により生成された二値化画像において、熱放射輝度画像で所定の閾値以上の輝度値を有していた部分に対応する明部と、熱放射輝度画像において所定の閾値未満の輝度値を有していた部分に対応する暗部と、を特定するとともに、二値化画像における明部の面積比を算出する。
より詳細には、明部面積比算出部219は、二値化画像における明部の面積(すなわち、明部に対応する画素数)を、羽口領域の面積(すなわち、羽口領域に対応する画素数)で除することで、明部の面積比(以下、単に「明部面積比」ともいう。)を算出する。このようにして算出される明部面積比は、羽口の状態を表わす特徴量として利用可能な情報である。明部面積比算出部219は、算出した明部面積比に関する情報を、判定部205に出力する。
以上、図5を参照しながら、本実施形態に係る画像処理部203で熱放射輝度画像に対して実施される画像処理について、詳細に説明した。
[判定部について]
次に、図6を参照しながら、本実施形態に係る演算処理装置200が備える判定部205について、詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置が備える演算処理装置の判定部の構成の一例を示したブロック図である。
本実施形態に係る判定部205は、図6に示したように、流量データ取得部231と、画像処理データ取得部233と、羽口状態判定部235と、判定結果出力部237と、を主に備える。
流量データ取得部231は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。流量データ取得部231は、導圧管に設けられた流量発信器から発信される、羽口に供給されている熱風の流量に関する流量データを取得する。流量データ取得部231は、熱風の流量に関する流量データを取得するたびに、取得した流量データを、後述する羽口状態判定部235に出力する。
画像処理データ取得部233は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。画像処理データ取得部233は、画像処理部203で生成された、最大輝度値や最小輝度値といった輝度値に関する特徴量データや、明部面積比に関する特徴量データ等といった画像処理データを取得する。画像処理データ取得部233は、画像処理部203からこれらの画像処理データを取得するたびに、取得した画像処理データを、後述する羽口状態判定部235に出力する。
羽口状態判定部235は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。羽口状態判定部235は、流量データ取得部231から出力された、熱風の流量に関する流量データと、画像処理データ取得部233から出力された、熱放射輝度画像に関する画像処理データと、に基づいて、羽口の状態を判定する。この羽口状態判定部235は、マスクタイマーの機能を有しており、羽口状態の判定に利用されている。
より詳細には、羽口状態判定部235は、画像処理データのうちの明部面積比が面積比判定用の所定の閾値以下であった場合、又は、熱風の流量が流量判定用の所定の閾値以下となった場合に、羽口の閉塞が生じていると判断する。
図4等に示したように、羽口の半閉塞や完全閉塞が生じている場合など、羽口の閉塞が生じている場合には、明部の面積が小さくなっていく。従って、画像処理データに含まれる特徴量である明部面積比が、面積比判定用の所定の閾値以下であった場合には、明部の面積が小さくなる一方で暗部の面積が大きくなり、羽口の閉塞が生じていると判断することが可能となる。
このような面積比判定用の所定の閾値は、特に限定されるものではなく、羽口におけるPCランスの設置状況等に応じて、適宜設定すればよい。例えば、羽口に設けられたPCランスが1つ(シングルランス)である場合は、明部の面積は正常時で60%程度であり、羽口に設けられたPCランスが2つ(ダブルランス)である場合は、明部の面積は正常時で40%程度である。そのため、羽口状態判定部235は、明部の面積が正常時の1/2(すなわち、シングルランス:30%、ダブルランス:20%)以下となる場合を、軽度の閉塞状態と判断し、明部の面積が正常時の1/4(すなわち、シングルランス:15%、ダブルランス:10%)以下となる場合を、重度の閉塞状態と判断することができる。
また、羽口の閉塞が生じている場合には、閉塞に伴って羽口から高炉の内部へと供給される熱風の流量が少なくなると考えられる。従って、流量データに記載されている熱風の流量が、流量判定用の所定の閾値以下であった場合には、羽口の閉塞が生じていると判断することができる。このような流量判定用の所定の閾値についても、特に限定されるものではなく、操業条件等に応じて適宜設定すればよい。例えば、予め設定されているブローパイプの風量設定値の40%という値を流量判定用の閾値とし、羽口から高炉の内部へと供給される熱風の流量が、風量設定値の40%以下となった場合に、羽口状態判定部235は、閉塞が生じていると判断することができる。
本実施形態における判定条件では、熱風に関する流量データが所定の閾値以下である一方で、明部面積比が所定の閾値超過である場合であっても、羽口が閉塞していると判定される。このような状況は、導圧管に設けられた流量発信器の故障が原因として考えられるが、羽口の閉塞が生じていると判定しておき、制御部201により閉塞除去処理が実施されることで、万が一羽口の閉塞が生じている場合であっても、閉塞状況を回避することができる。
なお、ある1つの時点における判定結果のみに基づいて羽口の閉塞が生じていると判定すると、本来は羽口の閉塞が生じていないにも関わらず、データのノイズに起因して羽口の閉塞が生じていると判断される可能性もある。そこで、本実施形態に係る羽口状態判定部235は、マスクタイマー機能を利用し、明部面積比が面積比判定用の所定の閾値以下となる状態、又は、熱風の流量が流量判定用の所定の閾値以下となる状態が、所定の期間以上継続した場合に、羽口の閉塞が生じていると判定することが好ましい。このような所定の期間については、特に限定されるものではないが、例えば、30秒〜60秒程度とすることができる。
なお、羽口状態判定部235は、明部面積比が面積比判定用の所定の閾値以下となる状態、又は、熱風の流量が流量判定用の所定の閾値以下となる状態が、どの程度継続しているかを判定するための閾値を複数設定し、閉塞の度合を段階的に判定するようにしてもよい。例えば、羽口状態判定部235は、継続期間に関する閾値を2種類設け、第1の閾値<第2の閾値とし、継続期間が第1の閾値以上第2の閾値未満である場合には、閉塞の度合が軽度であると判定することができる。また、継続期間が第2の閾値以上である場合には、閉塞の度合が重度であると判定することができる。
また、羽口状態判定部235は、画像処理データのうち、最大輝度値及び最小輝度値に関する特徴量データを利用して、以下のような判定処理を行うことも可能である。
例えば、羽口状態判定部235は、最大輝度値が最大輝度値判定用の所定の閾値未満となる状況が所定の期間以上継続した場合には、羽口近傍の温度が所望の温度以上になっていないと判断し、最大輝度値の不足による故障が生じていると判定することができる。
また、最大輝度値が最大輝度値判定用の所定の閾値超過であっても、「最大輝度値−最小輝度値」によって得られる明暗差が、明暗差判定用の所定の閾値未満となる状況が所定の閾値以上継続した場合には、羽口近傍の温度が所望の温度以上になっていないと判断し、明暗差の不足による故障が生じていると判定することができる。
また、羽口状態判定部235は、熱風の流量や、画像処理によって得られる各種特徴量が、以上のような状況のいずれにも該当しない場合には、羽口の状態は正常であると判定する。
このように、本実施形態に係る羽口状態判定部235は、図8に示したような様々な状況を、熱風の流量や画像処理によって得られる特徴量に基づいて判定することができる。
羽口状態判定部235は、以上のようにして得られる判定結果に関する情報を、後述する判定結果出力部237に出力する。
判定結果出力部237は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。判定結果出力部237は、羽口状態判定部235によって生成された、羽口の状態の判定結果に関する情報を、制御部201及び表示制御部207へと出力する。これにより、制御部201は、羽口の状態の判定結果に関する情報に基づいて、羽口の閉塞を除去するためのパージガスの供給を開始することが可能となる。
また、判定結果出力部237は、羽口の閉塞が生じていると判定された場合に、高炉羽口の閉塞が生じている旨を表わす警告情報を出力してもよい。かかる警告情報は、例えばディスプレイ等に表示される視覚的なものであってもよいし、警告アラームのような聴覚的なものであってもよい。このような警告情報が出力されることで、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10の管理者は、羽口の閉塞が生じている旨をいち早く認識することが可能となる。
以上、図6及び図7を参照しながら、本実施形態に係る判定部205の構成について、詳細に説明した。
以上、本実施形態に係る演算処理装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
<高炉羽口閉塞除去方法について>
次に、図8を参照しながら、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去方法の流れについて、簡単に説明する。図8は、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去方法の流れの一例を示した流れ図である。
本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去装置10で実施される高炉羽口閉塞除去方法では、導圧管に設けられた流量発信器から熱風の流量データが取得されるとともに(ステップS101)、撮像装置100により羽口を撮像して、熱放射輝度画像が生成される(ステップS103)。
撮像装置100により生成された熱放射輝度画像は、演算処理装置200の画像処理部203へと伝送され、画像変換部211により、階調数の変換に関する画像変換処理が行われる(ステップS105)。その後、階調数が変換された熱放射輝度画像は、羽口領域特定部213へと出力される。
羽口領域特定部213は、階調数が変換された後の熱放射輝度画像について、羽口領域が写っている位置を特定する(ステップS107)。その後、羽口領域特定部213は、羽口領域の位置を表わす情報を、熱放射輝度画像とともに、輝度値特定部215及び二値化画像生成部217に出力する。
輝度値特定部215は、少なくとも羽口領域に該当する画素について、最大輝度値及び最小輝度値を特定し(ステップS109)、得られた結果を、二値化画像生成部217や判定部205に出力する。
また、二値化画像生成部217は、所定の閾値を利用して熱放射輝度画像の二値化処理を実施し(ステップS111)、二値化画像を生成する。この際、二値化画像生成部217は、先だって説明したように、静的な閾値を用いてもよいし、輝度値特定部215から出力された最大輝度値を利用して、動的に閾値を決定してもよい。二値化画像生成部217は、生成した二値化画像を、明部面積比算出部219に出力する。
明部面積比算出部219は、二値化画像生成部217により生成された二値化画像を利用して、明部面積比を算出し(ステップS113)、得られた結果を判定部205に出力する。
判定部205は、流量発信器から発信された熱風の流量と、画像処理部203から出力された明部面積比等の特徴量からなる画像処理データと、に基づいて、羽口の状態を判定し(ステップS115)、得られた結果を制御部201へと出力する。
制御部201は、判定部205から出力された羽口の状態に関する判定結果を参照し、高炉の羽口が閉塞しているか否かを確認する(ステップS117)。高炉の羽口が閉塞していると判定されている場合には、制御部201は、供給ラインに設けられている三方弁に対して、微粉炭供給を停止してパージガスの供給を開始する旨の制御信号を出力して、微粉炭供給からパージガス供給へと切り替えさせる(ステップS119)。これにより、高炉の羽口の閉塞が自動的に除去されることとなる。
一方、ステップS117において、高炉の羽口は閉塞していないと判定されている場合には、制御部201は、その時点では微粉炭の供給を継続し、新たな判定結果が通知されるまで処理を継続する。
以上、図8を参照しながら、本実施形態に係る高炉羽口閉塞除去方法の流れについて、簡単に説明した。
(ハードウェア構成について)
次に、図9を参照しながら、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成について、詳細に説明する。図9は、本発明の実施形態に係る演算処理装置200のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
演算処理装置200は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理装置200は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、又はリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、演算処理装置200内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、演算処理装置200の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。更に、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。高炉羽口閉塞除去装置10のユーザは、この入力装置909を操作することにより、演算処理装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置及びランプなどの表示装置や、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、演算処理装置200が行った各種処理により得られた結果を、テキスト又はイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、演算処理装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、及び外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、演算処理装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、又は、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)又は電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を演算処理装置200に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、演算処理装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線もしくは無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線又は無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、社内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信又は衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る演算処理装置200の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。