広帯域移動通信において、利用できる周波数帯域が制限されていること、マルチメディア通信の需要があることなどにより、高品質かつ固定通信並みの高い周波数利用効率の達成が求められるようになっている。これに対処する技術として注目を集めているものがMIMO通信技術である。
〔MIMO通信システムの構成〕
図1は、MIMO通信システムの構成例を示す図である。MIMO通信システムは、符号化ユニットまたは直並列変換(S/P)ユニット1、複数の送信ユニット2、複数の送信アンテナ3、複数の受信アンテナ4、複数の受信ユニット5及び復号ユニット6を備え、複数の送信アンテナ3と複数の受信アンテナ4を用いてMIMO伝搬路が構成されている。送信側は、複数の異なるデータ信号(図1では、元来1系統のデータを符号化ユニットまたはS/Pユニット1を介して複数の異なる信号としているが、全く異なる複数のデータ信号を個々の符号化ユニットを介して送信する場合を想定してもよい。)を、同一の周波数上または周波数帯が重なる状態の電波により、複数の伝搬路を経て送信する。受信側は、受信した複数系統の信号から、復号ユニット6内において等化器、干渉除去器、軟判定器のいずれか、これらの全ての機器、またはこれらの機器のうちの少なくとも2つの機器の組合せ(図示せず)により、各伝搬路を分離する操作を行う。これにより、受信側は、送信側から送信された複数のデータ信号を復調し、大容量化またはダイバーシティ効果によるロバスト化を図る。
〔復調の原理〕
このMIMO通信におけるデータ信号の復調は、以下の原理により実現される。まず、N系統の送信ユニット2から送信アンテナ3を介して送信される信号をベクトルX(=(x1,x2,・・・,xN)T,ただし、( )Tは転置を表す)、M式の受信アンテナ4を介して受信ユニット5で受信される信号をベクトルY(=(y1,y2,・・・,yM)T)、MIMO伝搬路行列をH(送信アンテナjから受信アンテナiに至る伝搬路の伝達関数h_ijを成分とする行列、i=1,2,・・・,M、j=1,2,・・・,N)、雑音をベクトルw(=(w1,w2,・・・,wM)T)とした場合、次式の関係がある。
Y=HX+w (1)
ここで、雑音wが無視できる程度に小さい場合、MIMO伝搬路行列Hに逆行列H−1が存在すれば、H−1とYとの行列積により送信信号Xを復調できるのは自明である。
ただし、逆行列H−1が存在するためには、Hは正則行列である必要がある。その1つの条件として、M=Nが必要となる。一方、非特許文献1に記載されているように、逆行列による復調では、ダイバーシティオーダーがM−N+1となるため、MIMO通信においてダイバーシティ効果によるロバスト化を図るためには、MはNより大きい必要がある。つまり、M>Nである必要がある。
〔復調方式1/擬似逆行列を用いた解法〕
そこで、この矛盾を解決するために、擬似逆行列を用いた解法が用いられる。例えば、Hの随伴行列HH(Hの複素共役を成分とする行列の転置したもの)を用いてR_H=HHHを計算し、このR_Hの逆行列R_H −1を求め、このR_H −1を用いてXを計算する。つまり、(1)式を(2)式のように置き換えて、擬似逆行列を求め、(3)式のようにXを計算する。
HHY=HHHX=R_HX (2)
X=R_H −1HHY (3)
ここで、(1)式のwは0M(次元がMの全成分を0とするベクトル)とする。なお、R_H −1HHが擬似逆行列である。
〔復調方式2/ガウス消去法〕
さらに、複素数であるHの逆行列または擬似逆行列を算出する演算は、処理負荷が大きいため、実際の信号処理では、別のアルゴリズムを用いることが多い。例えば、ガウスの消去法が用いられる。wが十分に小さい(0
Mとする)場合、Y=HXから上三角行列を用いた式X’=UXに変換すれば、一番下の行から順に各行へ代入することによりXを算出することができる。このためには、次のアルゴリズムを実行すればよい。すなわち、伝搬路行列Hが正方行列の場合、HのLU分解を行い、Hを一旦次式のように、下三角行列Lと上三角行列Uの積に分解する。
したがって、(1)式からXは次式のように変換される。
X’=UX=L−1Y
X=U−1X’=U−1L−1Y (5)
この場合、L−1及びU−1を計算する必要はない。例えば、X’を求める際には、1行目がy1=l11x’1であることからx’1が既に得られている。そして、2行目からこの成分を減算するとx’2を得ることができる。同様にX’の各成分は、それ以前に求められる成分を順に減算することにより計算することができる。そして、Xを求める際には、N行目のxNが既に得られているので、X’の場合と逆の行順にXの各成分を計算することができる。
〔復調方式3/QR分解法〕
同様な計算は、QR分解などによっても実現できる。QR分解は、伝搬路行列Hが正方でない場合にも利用できる。送信アンテナ数Nが受信アンテナ数Mより小さい(N<M)場合、Hは次式のように変換され、先のLU分解の際のXの導出と同様に、Xが計算される。
ここで、QはM×Mの直交行列であり、RはN×Nの上三角行列、0
M−N,Nは(M−N)×Nの零行列(全成分が0の行列)である。
直交行列Qは、その逆行列がQの随伴行列QHに等しいので、この性質を利用して、次式のように、(1)式を変換してXを導出する。尚、w=0Mとする。
X’=RX=Q−1Y=QHY
X=R−1X’=R−1QHY (7)
この場合も、Rの特性により、U行列の場合と同様に計算できるので、R−1を計算する必要はない。
これまでは理想的な環境を想定してw=0Mとしたが、実際にはwは有限な値を有する。したがって、(1)式の両辺にH−1を乗算したときの右辺第2項である雑音成分H−1wが、実際の計算においてXを算出する際の誤差を拡大する。
〔復調方式4/MMSE規範に基づく解法〕
この雑音による誤差を最小にして信号を復調するためのアルゴリズムには、最小自乗誤差(MMSE:minimum mean square error)規範に基づくものがある。この解法は、重み係数行列Aを用いて受信信号Yに積算してXを算出するものである。具体的には、予め既知の値で送信された参照信号p(例えば、トレーニング期間に送信されるトレーニング信号や伝搬路推定のために送信されるパイロット信号)と比較して誤差が最小となるようにAを修正し、このAを用いてデータ信号Xを復調する。つまり、e=p−AHYpが最小となるAを求め、受信した信号YからX=AHYにより、送信された信号Xを復調する。この最適な重み係数Aを求めるために利用されるアルゴリズムには、最急降下法(LMS:least mean square)、サンプル値を用いた直接解法(SMI:sample matrix inversion)、再帰的最小二乗法(RLS:recursive least square)などがある。ただし、MMSE規範に基づく復調方式も、ダイバーシティオーダーはM−N+1であり、逆行列H−1に基づく干渉除去アルゴリズムに変わりない。
以上の復調方式1〜4を総称して、干渉除去(ICD:interference canceling detection)という。
〔復調方式5/最大事後確率推定、最大尤度推定〕
一方、最大事後確率推定(MAP:maximum a posteriori probability detection)または最大尤度推定(最尤推定、MLD:maximum likelihood detection)による復調方式がある。この復調方式は、Xが送信される条件の下、Yが受信される条件付確率P(Y|X)が最大となるXを選び、このXを復調信号とする技術である。つまり、送信信号Xの全レプリカをSとするとき、e=Y−HSのノルムを最小とするSの成分を復調信号Xとする。この方式では、非特許文献2に掲載されているように、受信に寄与する受信アンテナ数Mのダイバーシティオーダーを期待でき、送信された信号Xを最大の品質で復調することができる。
〔MIMO通信システムの復調処理〕
次に、図1に示したMIMO通信システムの復調方式について具体的に説明する。以下、MIMO−OFDM(直交周波数分割多重(orthogonal frequency division multiplexing))方式を用いた通信システムにおける受信装置の例について説明する。
図2は、MIMO−OFDM通信に用いる従来の受信装置の構成例を示す図である。この受信装置は、複数の受信アンテナ4、複数の受信ユニット5及び復号ユニット6を備えている。受信ユニット5は、周波数変換回路50、AGC(Automatic Gain Control)回路51、A/D回路52、GI(guard interval)除去回路53及びFFT(Fast Fourier Transform)回路54を備え、復号ユニット6は復調ユニット60を備えている。この受信装置において、M式の受信アンテナ4は、N式の送信アンテナを経て空間に伝送されたN系統のデータの無線信号を受信する。この受信された無線信号は、M系統の受信ユニット5に送られる。各系統の受信ユニット5において、この無線信号は必要に応じて前置増幅される(図示せず)。そして、周波数変換回路50は、中間周波数帯に周波数変換し、AGC回路51は、A/D回路52において効率的に受信信号(無線信号)をA/D変換(analog−to−digital conversion)してデジタル化するための自動利得制御(AGC)を施し、A/D回路52は、アナログの受信信号をデジタル化する。
そして、GI除去回路53は、デジタル信号に変換された受信信号から、マルチパスによる符号間干渉を除去あるいは緩和する目的で挿入されたガードインターバル(GI)を取り除く。FFT回路54は、高速フーリエ変換(FFT)を実行し、時間領域の信号を周波数領域の信号yに変換する。尚、受信装置には、図示しないシンボル同期及びフレーム同期を再生する回路が搭載されており、各シンボルにおいて正確な時間位置で受信信号がサンプリングされ、FFT出力が得られているものとする。
そして、復号ユニット6の復調ユニット60は、周波数領域の信号yを入力し、このM式の受信信号yからN系統の送信データを分離復調し、キャリアからのデマッピング(バイナリ化)や誤り訂正などの復号処理を実行し、送信データxに復元する。この復号ユニット6は、前述した様々な復調方式1〜5を実際に具現する部分である。この従来技術は、例えば特許文献1に記載されている。このようにして、N式の送信アンテナ3からM式の受信アンテナ4へN系統のOFDM信号を送信するMIMO伝搬による伝送が実現される。
〔復調方式の問題〕
ところで、前述の復調方式の説明は、雑音wのM個の成分w1,w2,・・・,wMの平均値及び分散値がほぼ等しいことを前提としている。しかしながら、実際の受信装置の場合は、個々の受信ユニット5の温度状態、搭載する増幅器などの雑音指数(NF:Noise Figure)や利得のばらつきにより、雑音wの各成分の値にもばらつきがある。そのため、受信ユニット5が等しい電力で信号を受信しても、その受信ユニット5毎の平均の信号電力対雑音電力比(SNR:Signal−to−Noise Ratio)または搬送波電力対雑音電力比(CNR:Carrier−to−Noise Ratio)も同様にばらつくため、理想の場合と異なる。この場合、受信装置の性能は、最も大きな雑音電力により決定される。
また、各受信ユニット5の雑音電力の平均値が理想的に均一だったとしても、送信装置及び受信装置の位置の違いに伴う距離減衰、遮蔽またはマルチパス環境により、個々の受信ユニット5が受信する信号電力も変動する。そのため、複数の受信ユニット5が受信する信号のCNRは、結果として大きくばらつくことになる。
さらに、受信装置、特に、デジタル信号処理を行う受信装置は、図2に示したように、A/D回路52を備えている。一般に、例えば10ビットなどの有限な量子化ビット数を有するA/D回路52がアナログ信号をデジタル信号に効率的に変換するために、その前段に設けられたAGC回路51において、A/D回路52への入力レベルを調節している。したがって、その平均的な信号振幅が大きい受信ユニット5においては、信号が減衰し、その平均的な信号振幅が小さい受信ユニット5においては、信号が増幅されるため、結果として、CNRが良好な信号の雑音レベルは低くなり、逆にCNRが良好でない信号の雑音レベルは強調されて高くなる。
つまり、複数の受信ユニット5において、CNRが大きくばらつく状態で信号が受信される場合、AGC回路51を有する受信ユニット5を備えた受信装置においては、最も信号の入力レベルの小さい受信ユニット5の雑音電力が相対的に大きく取り扱われるため、結果として、最も低いCNRを有する受信ユニット5からの信号にその性能が支配されてしまう現象が生じる。
〔干渉除去時及び最尤推定時におけるAGC回路による影響〕
図3及び図4に、MIMO通信の信号の伝送特性が劣化する様子を計算機シミュレーションにより確認した結果を示す。図3は、干渉除去に基づくMIMO−OFDM方式の復調ユニット60を用いた場合、図4は、最尤推定に基づくMIMO−OFDM方式の復調ユニット60を用いた場合において、各々送信アンテナ数2及び受信アンテナ数4の条件で信号伝送を行ったときの平均の受信CNR(横軸)に対する平均のビット誤り率(BER:Bit Error Rate)(縦軸)の特性の関係を示す結果例である。この伝送特性の劣化は、AGC回路51の動作を原因とするものである。
図3及び図4には、以下の3通りの結果が示されている。
個々の受信ユニット5の雑音電力の平均値がお互いに等しい条件、かつ、A/D回路52が無限の量子化ビット数でアナログ信号をデジタル信号に変換する場合において、
(1)AGC回路51がなく、全ての受信ユニット5が等しい平均値で信号を受信した場合(w/o AGCの場合)
(2)AGC回路51がなく、ある受信ユニット5のみが他の受信ユニット5よりも20dB小さな電力で信号を受信した場合(w/o AGC(R2−20dB)の場合)
(3)AGC回路51が機能し、ある受信ユニット5のみが他の受信ユニット5よりも20dB小さな電力で信号を受信した場合(AGC(R2−20dB)の場合)
尚、これらの結果は、データが16QAMにマッピングされたシンボル長約16マイクロ秒のOFDM信号2系統が、最大ドップラー周波数400Hzのレイリーフェージング環境で伝送され、4系統の受信ユニット5により受信された場合を想定して計算したものである。
図3及び図4を比較すると、干渉除去の復調方式及び最尤推定の復調方式について、送信2系統及び受信4系統に対する理論的なダイバーシティオーダーが3及び4であるのに対し、(1)w/o AGCの場合、CNRに対するBERの変化の傾きは、干渉除去及び最尤推定の比が既ね3対4になっている。これは、計算機シミュレーションによる結果において、理論値どおりの動作を示す計算が行われたことを示している。
これを基準にして、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合、1台の受信ユニット5の受信電力が20dB小さい値になることにより、ダイバーシティオーダーが劣化し、図4(最尤推定)の(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果が図3(干渉除去)の(1)w/o AGCの結果にほぼ等しくなっており、図3(干渉除去)の(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果は、ダイバーシティオーダーをさらにもう1つ減らした特性となっている。これらの結果は、受信電力が相対的に小さいため、あたかも受信ユニット5が1台欠落し、ダイバーシティ受信に寄与するブランチ数が減少したと考えれば、当然な結果である。
しかしながら、(3)AGC(R2−20dB)の結果は、(1)w/o AGCの結果を大きく上回る劣化を示している。例えばBERが10−2のラインを所定のBER値として比較すると、図3(干渉除去)及び図4(最尤推定)において、(3)AGC(R2−20dB)の結果は両者とも(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果に対しさえ10dBを上回る差が、所定のBER値となるのに要求されるCNRの値に見られる。この所要BER値を得るために要求される所要CNR値の差をペナルティとする。
AGC回路51がない場合のペナルティは、受信電力が小さくなりCNRが劣化した受信ユニット5について、それが欠落したものと等価になって機能していることによると考えられた。これに対し、AGC回路51が存在する場合のペナルティは、受信信号の振幅を基準レベルに合わせて動作するため、CNRが劣化した受信ユニット5の雑音が、他の受信ユニット5の雑音に比べて拡大され、全受信ユニット5に渡る平均雑音電力も増加することによるものである。
例えば、最尤推定に基づく復調の場合は、送信信号の候補S及び伝搬路行列Hの積HSと受信信号Yとの誤差eのノルムの大きさが小さくなるように候補Sを選択するが、この誤差eのノルムにおいて、最もCNRの低い受信ユニット5に関して計算された当該誤差の成分が大きく寄与し、高いCNRで受信した他の成分による誤差を埋もれさせてしまうことが考えられる。
尚、この計算機シミュレーションにおいて、干渉除去に基づく復調の場合に用いる逆行列演算回路は、伝搬路行列Hが4行2列(4×2)の次元となっていることに対応して、擬似逆行列を計算している。また、逆行列演算回路と干渉除去演算回路との組合せの部分を、QR分解を用いてHの逆行列演算相当の計算を行う干渉除去演算回路とした場合にもほぼ一致する結果となり、AGC回路51の動作により復調信号のBER特性が劣化する。
伝搬路応答特性演算回路及び逆行列演算回路をMMSE重み係数演算回路に置き換えて処理を行う、いわゆるMMSE規範に基づく干渉除去による分離復調の場合は、AGC回路51の動作する環境において、所要CNRが大きくなる割合はやや小さくなり、ペナルティも小さくなるが、それでも劣化が見られることに変わりはない。
〔従来の他の受信装置例〕
一系統のOFDM方式の無線伝送のダイバーシティ受信装置において、上述のようにAGC回路によって受信ユニット(ブランチ)毎の雑音電力が強調されたり、弱められたりすることに伴い、正しく機能しなくなる最大比合成ダイバーシティや選択ダイバーシティの動作を修正するための技術が、本発明の出願人による特許文献2に記載されている。具体的には、各ブランチの受信ユニットに備えたAGC回路の増幅率や雑音指数などの値を、FFT処理後のベースバンド信号から推定し、各ブランチの雑音電力が異なる場合であっても、最適な比率でダイバーシティの信号合成を可能とするものである。以下、詳細に説明する。
図5は、n系統のブランチを有するOFDM信号を扱うダイバーシティ受信装置の系統を示す構成図である。この受信装置は、ブランチ毎のOFDM復調部58、合成係数生成回路61、ブランチ毎の乗算回路62、及び合成回路63を備えている。また、OFDM復調部58は、ブランチ毎に、FFT回路54、パイロット信号抽出回路55、帯域外雑音電力測定回路56及び伝送路特性推定回路57を備えている。
FFT回路54は、受信アンテナからの受信信号であるブランチ信号を入力し、FFTの信号処理によりOFDM信号を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換する。この変換された復調信号は、パイロット信号抽出回路55、帯域外雑音電力測定回路56及び乗算回路62に出力される。
パイロット信号抽出回路55は、データと共に多重されている受信信号からパイロット信号を分離して抽出する。この分離して抽出されるパイロット信号は、伝送路特性を求めるために予めOFDM信号に挿入されている振幅と位相が既知の信号である。このパイロット信号は、伝送路特性推定回路57に出力され、伝送路特性推定回路57は、当該パイロット信号に基づいてブランチの伝送路特性を表す伝送路特性を計算する。
一方、帯域外雑音電力測定回路56は、FFT回路54からの復調信号のうち、図6に示すOFDM信号の有効キャリア範囲外のデータを一定帯域幅に渡って積算することにより雑音電力を測定する。図6は、FFT回路54の出力信号である復調信号を示している。雑音電力の測定は、有効キャリア範囲外のデータを少なくとも1ポイントだけ測定するか、または、雑音電力を正確に測定するために一定の範囲で積算または平均化して行う。一定の範囲で積算を行う場合、その範囲には、図6に示す雑音電力測定積分範囲1または雑音電力測定積分範囲2があり、これらのいずれか一方を用いる場合と両方を用いる場合とがある。雑音電力測定積分範囲1と雑音電力測定積分範囲2の両方を用いることにより、より一層正確に雑音電力を求めることが望ましい。ここで、ブランチにおける帯域外雑音電力の測定結果を雑音電力とする。他のブランチのOFDM復調部58の動作も、前述した動作と同様である。
また、各ブランチの復調信号は、乗算回路62に出力される。乗算回路62は、復調信号に対して合成係数を掛け合わせて重み付けをする。重み付けがなされた復調出力は、合成回路63に出力される。合成回路63は、それぞれのブランチの重み付けされた復調出力信号を入力し、これらを足し合わせて出力信号を求める。
合成係数生成回路61は、この復調出力信号の足し合わせの際に必要な合成係数を生成する。最大比合成を行うための合成係数は、i番目のブランチの合成係数をWi(l,k)、lをOFDM信号の第l番のシンボル番号、kを第k番のキャリア番号とすると、次式により決定される。
ここで、Ciは第iブランチの補正係数、Hi(l,k)は第iブランチの伝送路特性(伝送路特性推定回路57が求めた結果)、Hi
*(l,k)はHi(l,k)の複素共役である。尚、Ciは帯域外雑音電力測定回路56において計算される雑音電力に基づいて決定されるものとする。また、各Ciには次式の制約条件がある。
選択ダイバーシティに適用する場合には、最大比合成の場合と同様に(8)式により各ブランチの合成係数Wi(l,k)を求め、最大値となるWi(l,k)の補正係数Ciの値を1で置き換えると共に、その他の補正係数Ciを0とすることにより、一番大きなCNRを有するブランチの信号のみが通過し、最適なブランチを選択することと等価となる。
上記従来技術では、補正係数Ciを計算するために、帯域外雑音電力を測定しているが、AGC回路の前段で基準信号を帯域外に付加して行う同様な技術が、特許文献3に記載されている。具体的には、付加した基準信号の電力をAGC回路の後段で抽出して測定し、そのレベルの変化量を測定することにより、AGC回路の利得を推定する。この利得の推定値に基づいて補正係数Ciを求め、各ブランチに乗算する合成係数Wi(l,k)を算出し、最大比合成を行うものである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施の形態は、MIMO通信を行う無線通信の受信装置について、図7に示す受信装置の実施例1、図12に示す受信装置の実施例2である。また、本発明の実施の形態は、干渉除去に基づく復号ユニットについて、図14に示す復号ユニットの実施例1、図16に示す復号ユニットの実施例2であり、最尤推定に基づく復号ユニットについて、図18に示す復号ユニットの実施例1、図20に示す復号ユニットの実施例2である。さらに、本発明の実施の形態は、干渉除去に基づく復調結果によりレプリカ計算の候補を削減した場合の、最尤推定に基づく復号ユニットについて、図22に示す復号ユニットの実施例1、図25に示す復号ユニットの実施例2である。
〔受信装置/実施例1〕
図7は、本発明によるMIMO通信を行う無線通信の受信装置における第1構成例を示す。この受信装置は、図2に示したMIMO−OFDM方式のMIMO通信で用いる受信装置に基づいて構成されている。この受信装置と図2に示した受信装置とを比較すると、N系統の送信信号がN式の送信アンテナ3から送信され、M式の受信アンテナ4を介して受信ユニット5で受信する点で同一であるが、図7の受信装置は、M系統の受信ユニット5と復調ユニット604との間に、雑音電力演算回路(手段)601、利得修正値演算回路(手段)602、及び利得補正回路(手段)603が付加された復号ユニット600を備え、復調機能が本発明の主旨に従って改善されている点で相違する。
まず、図7に示す受信装置において、M式の受信アンテナ4は、N系統のデータをN式の送信アンテナ3を経て空間に伝送された無線信号を受信する。この無線信号は、引き続きM系統の受信ユニット5に送られる。各系統の受信ユニット5は、無線信号を必要に応じて前置増幅し、周波数変換回路50により中間周波数帯へ周波数変換する。
そして、次段の、例えば10ビットなどの有限の量子化ビット数しか有しないA/D回路52においても、効率的に受信信号をデジタル信号に変換するためのAGC回路51が配置されている。AGC回路51は、M系統の受信信号の入力時の電力の大きさに基づいて、最適な利得を割り当て、一定の時間の範囲での平均的な信号振幅がほぼ均一な値を取るように調節する。このとき、各受信ユニット5の雑音電力は、割り当てられた利得に応じて増幅され、また、減衰される。つまり、M系統の受信ユニット5が復号ユニット600に出力する各受信信号yの有する雑音電力は、受信ユニット5毎に異なる大きさの値を取ることになる。
この場合、従来技術では、受信ユニット5毎に異なる雑音電力の信号は、復調ユニット604で処理されることになり、図3及び図4に示したように、M系統の受信ユニット5が送り出す受信信号のうち最も大きな値を有する雑音電力が含まれる受信信号により、復調時の性能が大きく劣化する。本実施例1は、この点を改善するものである。
そして、A/D回路52は、AGC回路51によりその振幅の大きさが調整された受信信号について、アナログの受信信号からデジタルの受信信号に変換する。GI除去回路53は、デジタルに変換された受信信号に対して、マルチパスによる符号間干渉を除去あるいは緩和する目的で挿入されるガードインターバルを取り除く。そして、FFT回路54は、高速フーリエ変換を実行し、時間領域の信号から周波数領域の信号に変換する。
尚、シンボル同期及びフレーム同期を再生する回路が受信ユニット5に搭載されており(図示せず)、各シンボルにおいて正確な時間位置で受信信号をサンプリングし、FFT出力を得ているものとする。
そして、復号ユニット600は、FFT回路54により高速フーリエ変換された周波数領域の信号yを入力し、復調処理を行う。この場合、復号ユニット600は、雑音電力演算回路601、利得修正値演算回路602及び利得補正回路603により、復調時の性能劣化を改善する。以下、雑音電力演算回路601、利得修正値演算回路602及び利得補正回路603について詳細に説明する。
雑音電力演算回路601は、M系統の回路が配置され、M系統のFFT回路54により変換されたM系統の周波数領域の信号yをそれぞれ入力し、その入力した受信信号に対応する雑音電力を演算する。そして、演算したM系統の雑音電力を、後段の利得修正値演算回路602に出力する。ここで、雑音電力の演算には、図5に示した帯域外雑音電力測定回路56(特許文献2を参照)による演算をそのまま用いてもよい。すなわち、雑音電力演算回路601は、FFT回路54からの周波数領域の信号である復調出力yのうち、図6に示したOFDM信号の有効キャリア範囲外のデータを一定帯域幅に渡って積算することにより、雑音電力を演算する。
具体的には、図6に示した復調出力の有効キャリア範囲外のデータを少なくとも1ポイントだけ測定し、雑音電力を得る。ただし、雑音電力を正確に測定するためには、一定の範囲を計算する必要がある。つまり、図6に示した雑音電力測定積分範囲1、雑音電力測定積分範囲2、または、雑音電力測定積分範囲1及び雑音電力測定積分範囲2の両方を使用して計算する必要がある。さらに、この計算を一定の有効なシンボル数に渡って積算または平均化して、より正確な値を求める。
ところで、受信ユニット5の出力yがフィルタにより帯域制限を受けている場合、図8に示すように、フィルタによる帯域制限を受けたOFDM信号は、その通過周波数帯域が制約を受けるため、雑音電力のスペクトルを観測できる範囲は狭められてしまう。図8において、雑音電力を測定するための積算範囲を雑音電力測定積分範囲3及び雑音電力測定積分範囲4とした場合、この領域を超える範囲、すなわちフィルタの通過周波数帯域幅を超える範囲は、正確な雑音電力を測定することができないので利用しない。
さらに、受信ユニット5の出力yがフィルタにより帯域制限を受けている場合、受信信号として処理されるOFDM信号が、FFT回路54に到着するまでの間、特に送信装置の増幅器や周波数変換回路において、マルチキャリア信号であるが故の歪を有する場合、有効キャリアに隣接する部分に歪が現れることから、これを避けて雑音電力を検出しようとすると、雑音電力測定積分範囲3または雑音電力測定積分範囲4を十分に確保することが困難な場合が存在する。
その場合には、OFDM信号の有効キャリア範囲内の情報を用いる。具体的には、振幅や位相が既知として送信されるパイロット信号(OFDM信号の場合には、パイロットキャリアである)を用いる。背景技術において、受信信号が(1)式で得られることを述べた。これをパイロットキャリアの受信信号yPに適用すると、既知の信号Pを用いて、次式が得られる。
w=yP−HP (10)
つまり、雑音電力wは、パイロットキャリアの受信信号yPと推定された伝搬路特性H及びパイロットキャリアの送信時点の情報Pに基づいて算出されるパイロットキャリアの受信信号のレプリカとの差を算出することにより求めることができる。この差を全パイロットキャリアまたは一定範囲のパイロットキャリアについて積算することにより、雑音電力演算回路601の出力である雑音電力とする。さらに、この計算を一定の有限なシンボル数に渡って積算または平均化して、より正確な値を求めることが考えられる。
なお、このパイロットキャリアによる雑音電力の検出のためには、伝搬路特性Hを必要とするため、この雑音電力演算回路601の動作に関しては、後述の実施例の説明の際に詳細を記述する。
その他、雑音電力測定積分範囲3または雑音電力測定積分範囲4を確保できない場合の雑音電力演算手法としては、雑音電力演算回路601をGI除去回路53の前段に配置して、シンボル同期に用いるのと同様に、ガードインターバルとそのコピー元である有効シンボルの一部との間で差分を演算し、雑音電力を求めることも考えられる。この場合には、ガードインターバルが、マルチパスによる符号間干渉を避けるための区間であることから、その時々の伝搬環境を考慮して、ガードインターバルの全区間ではなく、一部を切り出して使用する工夫が必要である。
利得修正値演算回路602は、雑音電力演算回路601からの雑音電力を入力し、当該雑音電力に基づいて、M系統の受信信号の振幅を修正するための修正情報、例えば信号振幅の補正係数などを演算する。そして、この修正情報に基づいて、後段の利得補正回路603を制御する。この補正係数には、例えば雑音電力の比の値がある。以下、利得修正値演算回路602による修正情報を演算するためのアルゴリズムについて説明する。
図9は、利得補正係数の計算アルゴリズム例1を示すフローチャート図である。この計算アルゴリズムは、最も基本的な手順により信号振幅の修正値を求めるものである。利得修正値演算回路602は、M系統の雑音電力演算回路601から雑音電力の計算値Pi(i=1,2,・・・,M)を入力し(ステップS1001)、その中から、最小値の雑音電力Pmin(=min(Pi))を検索する(ステップS1002)。そして、そのPminを各雑音電力Piで割り、Ci(=Pmin/Pi,i=1,2,・・・M)を求める(ステップS1003)。この計算値Ciを補正係数として、後段のM系統の利得補正回路603のうちの対応する回路に出力する。そして、利得補正回路603が補正係数Ciを受信信号yの振幅に乗算し(ステップS1004)、復調ユニット604が復調処理を開始する(ステップS1005)。
図10は、利得補正係数の計算アルゴリズム例2を示すフローチャート図である。この計算アルゴリズムは、M系統の受信ユニット5のうちの、極めて受信電力の低い低CNRの受信信号が含まれている場合に、その影響を予め排除し復調処理に寄与させないようにしたものである。利得修正値演算回路602は、M系統の雑音電力演算回路601から雑音電力の計算値Pi(i=1,2,・・・,M)を入力し(ステップS1101)、その中から規定の基準値P2よりも大きな値があるか否かを調べる。基準値P2よりも大きな雑音電力Piが見つかった場合は、その雑音電力Piに該当する受信信号に割り当てる補正係数Ciの値を0とする(ステップS1102)。基準値P2よりも大きな値の雑音電力Piが見つかった場合は、その後、残るM’系統の雑音電力Piの中から最小の値を持つ雑音電力Pminを検索する。一方、基準値P2よりも大きな値の雑音電力Piが見つからなかった場合は、そのままM系統の雑音電力Piの中から最小の値を持つ雑音電力Pminを検索する(ステップS1103)。そして、そのPminを各雑音電力Piで割り、その値をCi(i=1,2,・・・,M)とする(ステップS1104)。この計算値Ciを補正係数として、後段のM系統の利得補正回路603のうちの対応する回路に出力する。そして、利得補正回路603が補正係数Ciを受信信号yの振幅に乗算し(ステップS1105)、復調ユニット604が復調処理を開始する(ステップS1106)。
図11は、利得補正係数の計算アルゴリズム例3を示すフローチャート図である。この計算アルゴリズムは、M系統の受信ユニット5のうちの、極めて受信電力の低い低CNRの受信信号が含まれている場合に、その影響を予め排除して復調処理に寄与させないようにし、逆に、受信電力が極めて高く、受信ユニット5の前置増幅までに生じた雑音よりも、例えばA/D回路52のデジタル信号への変換の過程などで生じた雑音の方が大きい場合に、各受信ユニット5に生じた雑音の大きさをより正しく修正するものである。利得修正値演算回路602は、M系統の雑音電力演算回路601から雑音電力の計算値Pi(i=1,2,・・・,M)を入力し(ステップS1201)、その中から、規定の基準値P0よりも小さな値があるか否かを調べる(ステップS1202)。基準値P0よりも小さな値の雑音電力Piが見つかった場合は、その雑音電力Piに該当する受信信号に割り当てる補正係数Ciの値を1とする(ステップS1205)。基準値P0よりも小さな値の雑音電力Piが見つかった場合は、その後、規定の基準値P1を残るM’系統の雑音電力Piで割り、その値をCi(i=1,2,・・・,M)とする(ステップS1206)。一方、基準値P0よりも小さな値の雑音電力Piが見つからなかった場合は、そのままM系統の雑音電力Piの中から最小の値を持つ雑音電力Pminを検索し(ステップS1203)、そのPminを各雑音電力Piで割り、その値をCi(i=1,2,・・・,M)とする(ステップS1204)。さらに、得られた計算値Ciのうち、規定の基準値C0よりも小さい値があるか否かを調べ(ステップS1207)、基準値C0よりも小さい値の計算値Ciが見つかった場合は、Ciを改めて0と置き換える(ステップS1208)。このようにして得られたCiを補正係数として、後段のM系統の利得補正回路603のうちの対応する回路に出力する。そして、利得補正回路603が補正係数Ciを受信信号yの振幅に乗算し(ステップS1209)、復調ユニット604が復調処理を開始する(ステップS1210)。
尚、計算アルゴリズム例3において、基準値C0を用いて、雑音電力の極めて大きな受信ユニット5からの受信信号yを排除しているが、計算アルゴリズム例2のように、予め基準値P2よりも大きな雑音電力を有する信号を排除するようにしてもよい。また、逆に、計算アルゴリズム例2において、基準値P2よりも大きな雑音電力を検索したが、計算アルゴリズム例3のように、基準値C0よりも小さなCiを0とすることで、同様な処理を行うようにしてもよい。
以上の計算アルゴリズムにおいて、雑音電力の計算値Piをそのまま比較することとしたが、受信信号として処理されるOFDM信号に、特に送信装置における歪が観測される場合などには、Piから歪などの影響を除去するため、Piから一定の基準値Pdを予め減算した値P’iをPiの代わりに用いて行うようにしてもよい。
利得補正回路603は、利得修正値演算回路602のM系統の出力である補正情報Ciのうち、対応するCiをそれぞれ入力し、その補正係数Ciを、入力した受信信号yの振幅に乗算することによって、受信信号yの振幅を修正する。この修正された受信信号は、M系統の各受信信号について、雑音電力のレベルが均一にされた状態の信号となる。
復調ユニット604は、利得補正回路603により振幅が修正された受信信号を入力し、この受信信号からN系統の送信データを分離復調する。また、図示しない手段は、キャリアからのデマッピング(バイナリ化)や誤り訂正などの復号処理を実行し、N系統の送信データ、または多重化された1系統の送信データに復元する。
尚、利得補正回路603は、受信信号yの振幅を修正するにあたり、特に、固定小数点で処理を行う場合は、デジタル信号を処理する際の情報ビット数をA/D回路52の量子化ビット数よりも大きくしておくものとする。例えば、10ビットの量子化によるサンプリングを経てデジタル信号となった受信信号yを処理する場合は、信号処理に際して記述するビットの桁数を12ビットまたは16ビットに大きくしておく。
また、図7において、図示しない直交検波回路が、A/D回路52の前段または後段に備えられており、この直交検波回路は、受信信号を複素数として処理するため、ベースバンド信号を同相成分と直交成分の2軸で検波する。このため、ベースバンド信号となった受信信号は、さらに、2倍のビット数で処理される。ただし、直交検波回路をA/D回路52の前段に備える場合には、各系統に対し、2式のA/D回路が備えられているものとする。
〔受信装置/実施例2〕
図12は、本発明によるMIMO通信を行う無線通信の受信装置における第2構成例を示す図である。この受信装置は、M式の受信アンテナ4、M系統の受信ユニット500及び復号ユニット610を備えている。受信ユニット500は、図7に示した実施例1の受信装置の受信ユニット5の構成に加えて加算器(信号多重手段)502及び基準信号出力回路(手段)501を備えている。また、復号ユニット610は、基準信号検出回路(手段)611、利得修正値演算回路602、利得補正回路603及び復調ユニット604を備えている。つまり、この受信装置は、図7に示した実施例1の受信装置の雑音電力演算回路601の代わりに、基準信号出力回路501、加算器502及び基準信号検出回路611を備えている。尚、図12において、図7と同一部分には同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。
受信ユニット500の基準信号出力回路501は、AGC回路51で割り当てられる利得を推定するための基準信号を出力する。この信号は、例えば正弦波である。図13は、受信ユニット500における基準信号の多重例を示す図である。基準信号出力回路501は、後段のA/D回路52において検出可能な範囲、かつ、使用するフィルタの通過帯域の範囲に周波数分割多重可能なように周波数を選択し、その周波数を有する正弦波などの基準信号を出力する。ただし、その基準信号の電力は、加算器502による受信信号との多重時に、通常の動作を保証する範囲の受信信号の電力に比べて十分に小さな値に設定しておく。これは、AGC回路51の誤作動を防止するために必要だからである。尚、受信ユニット500が、設定した基準信号の電力レベルに比して小さな受信信号を入力する場合は、その受信信号の品質は十分満たされていないものとし、AGC回路51は十分に動作しなくてもやむを得ないものとする。また、基準信号の多重時の電力レベルは、全受信ユニット500において等しくすることを基本とするが、各受信ユニット500の前置増幅器(図示せず)などによるNFのばらつきや温度変化特性に応じて、その影響を相殺するレベルに設定または制御する。これにより、後述の基準信号検出回路611及び利得修正値演算回路602は、当該NFなどによる雑音の影響を緩和または除去することができる。
加算器502は、受信信号と基準信号を多重化する。AGC回路51は、A/D回路52が受信信号を効率的にデジタル信号に変換できるように、M系統の受信信号の入力時の電力の大きさに基づいて、最適な利得を割り当て、一定の時間の範囲での平均的な信号振幅がほぼ均一な値となるように調節する。このとき、各受信ユニット500の雑音電力は、割り当てられた利得に応じて増幅または減衰されるが、同様に、基準信号も同じ利得で増幅または減衰される。したがって、この基準信号の電力を検出することにより、AGC回路51の利得を推定できる。
つまり、AGC回路51の動作により、受信ユニット500により復調ユニット604に出力される各受信信号の有する雑音電力の大きさが、受信ユニット500毎に異なる値であっても、本発明の主旨に従った復調処理が可能となる。
そして、受信信号は、A/D回路52、GI除去回路53及びFFT回路54を介して、時間領域の信号から周波数領域の信号へと変換される。その後、復号ユニット610の基準信号検出回路611、利得修正値演算回路602及び利得補正回路603は、AGC回路51の影響を修正する。
復号ユニット610の基準信号検出回路611はM系統に配置され、同様にM系統に配置されたFFT回路54により周波数領域の信号に各々変換されたM系統の受信信号から、AGC回路51の前段の加算器502により各々の受信信号に付加された基準信号の受信電力を検出する。そして、基準信号検出回路611は、検出したM系統の基準信号の受信電力の結果を、後段の利得修正値演算回路602に出力する。
尚、基準信号検出回路611は、検出した基準信号の受信電力の結果として、毎シンボルにおいて取得した値をそのまま出力してもよいが、動作を安定させるため、一定のシンボル数の範囲で積算または平均化した値を出力するようにしてもよい。
利得修正値演算回路602は、基準信号検出回路611が出力する基準信号の受信電力の値を入力し、当該値に基づいて、M系統の受信信号の振幅を修正するための信号振幅の補正係数などの修正情報を計算する。そして、その修正情報に基づいて、後段の利得補正回路603を制御する。この補正係数は、例えば基準信号の受信電力の比の値である。この計算アルゴリズムは、図9から図11に示した計算アルゴリズム例において、「雑音電力」を「基準信号の受信電力」に置き換えることにより、そのまま適用することができる。
そして、利得補正回路603は、図7の実施例1に示したように、受信信号yの振幅を修正し、M系統の各信号の雑音電力レベルを均一にする。復調ユニット604は、図7の実施例1に示したように、M系統の受信信号からN系統の送信データに分離復調し、N系統の送信データ、または多重化された1系統の送信データに復元する。
尚、利得補正回路603は、受信信号yの振幅を修正するにあたり、特に、固定小数点で処理を行う場合は、デジタル信号を処理する際の情報ビット数をA/D回路52の量子化ビット数よりも大きくしておくものとするのは、図7に示した実施例1と同様である。また、A/D回路52の前段または後段には、図示しない直交検波回路が備えられている点も、図7に示した実施例1と同様である。
本実施例2の受信装置は、回路規模が図7に示した実施例1の受信装置よりも大きくなるが、より少ない処理シンボル数で、AGC回路51による性能劣化の影響を改善することができる。
また、本実施例2の受信装置は、A/D回路52によりデジタル信号に変換された受信信号から基準信号を検出する処理をFFT回路54の後段で行うようにしたが、アナログ信号段において、AGC回路51で割り当てた利得を検出するために、AGC回路の後段にバンドパスフィルタなどのフィルタにより所定の基準信号を抜き出して検出するようにしてもよい。
以下、本発明による受信装置に備えた復号ユニットについて、その構成及び性能評価を詳細に説明する。
〔干渉除去に基づく復号ユニット/実施例1〕
図14は、干渉除去に基づく本発明による復号ユニットの第1構成例を示す図である。この復号ユニットは、干渉除去に基づくMIMO−OFDM方式の復号ユニットであり、M系統の雑音電力演算回路(手段)601、利得修正値演算回路(手段)602、M系統の利得補正回路(手段)603、M系統のデータ/パイロット分離回路(手段)605、伝搬路応答特性演算回路(手段)606、逆行列演算回路(手段)607、干渉除去演算回路(手段)608を備えている。
雑音電力演算回路601は、図7に示したように、各々の受信信号yに対応する雑音電力を演算する。ここで、雑音電力演算回路601は、FFT回路54からの復調出力のうち、図8に示したOFDM信号の有効キャリア範囲外のデータを、雑音電力測定積分範囲3及び雑音電力測定積分範囲4の範囲に渡って積算することにより雑音電力を演算する。これらは、受信ユニット内などでフィルタにより帯域制限を受けており、その通過周波数帯域の範囲内にあり、雑音の電力スペクトルが観測できる範囲内にある。雑音電力測定積分範囲3または雑音電力測定積分範囲4の中にあるサンプル数、つまり、キャリア数は、1024サンプルのFFTを行うシステムの場合で、せいぜい4〜5サンプル程度である。そこで、一層正確な雑音電力を求めるために、これらのデータを一定の有限なシンボル数、例えば32シンボルに渡って積算する。
利得修正値演算回路602は、図7に示したように、信号振幅の補正係数などの修正情報を演算する。この計算アルゴリズムは、図9から図11に示したアルゴリズムが適用される。また、利得補正回路603は、図7に示したように、受信信号yの振幅を修正し、M系統の各信号の雑音電力レベルを均一にした状態の信号を、M系統のデータ/パイロット分離回路605にそれぞれ出力する。
データ/パイロット分離回路605は、パイロットキャリア及びデータキャリアを各々分離し、パイロットキャリアを伝搬路応答特性演算回路606に出力し、データキャリアを干渉除去演算回路608に出力する。パイロットキャリアは、全キャリア位置(K本)における全送信アンテナ3と全受信アンテナ4とを結ぶ各伝搬路における周波数応答の推定値を算出するために利用される。
伝搬路応答特性演算回路606は、各キャリア位置k(k=1,2,・・・,K)における各伝搬路の伝達関数h_ij[k](複素数,i:受信アンテナの番号(i=1,2,・・・,M),j:送信アンテナの番号(j=1,2,・・・,N),k:キャリア番号)の推定値を算出し、これらを成分とするM×N行列H(k)を逆行列演算回路607に出力する。
逆行列演算回路607は、各キャリア位置kにおける伝搬路行列H(k)から、その逆行列または擬似逆行列を計算し、その計算結果を干渉除去演算回路608に出力する。
一方、干渉除去演算回路608は、データ/パイロット分離回路605から各キャリア位置kにおけるM次元のデータベクトルD(k)のデータキャリアを、逆行列演算回路607から伝搬路行列H(k)の逆行列または擬似逆行列をそれぞれ入力する。尚、この時点では、データベクトルD(k)は、全送信アンテナ3から送信された信号が各伝搬路における応答を受けて混信した状態の信号になっている。また、利得補正回路603は、混信した状態の受信信号の雑音電力の平均値を、M次元の各成分においてほぼ同じ値を取るように調整し、最善の復調を可能とする状態にしている。
干渉除去演算回路608は、データベクトルD(k)から干渉を除いて元のN系統の送信信号を再現するために、伝搬路行列H(k)の逆行列または擬似逆行列H(k)−1をデータベクトルD(k)に乗算し、複素行列積H(k)−1D(k)を演算する。
そして、干渉除去演算回路608は、キャリアk毎にN系統の復調データXを出力する。その後、図示しないN系統のデマッピング回路や誤り訂正復号回路などは、キャリアからのデマッピング(バイナリ化)や誤り訂正などの復号処理を実行し、N系統の送信データ、または多重化された1系統の送信データに復元する。
尚、逆行列演算回路607の出力が逆行列であるかまたは擬似逆行列であるかは、伝搬路行列Hの次元、つまり、M×N行列Hの行数Mと列数Nが等しいか否かによるものとする。ただし、Mの値は、Nの値と等しいか、それ以上の値である。
図15は、図14に示した復号ユニットの実施例1による効果を示すグラフである。このグラフは、送信2系統の信号を2式の送信アンテナで送信し、4式の受信アンテナで受信した場合の復調性能を示す計算機シミュレーション結果である。このシミュレーションの送信条件、伝搬条件及び受信条件は、図3に示した条件と同じである。つまり、データが16QAMにマッピングされたシンボル長約16マイクロ秒のOFDM信号2系統が、最大ドップラー周波数400Hzのレイリーフェージング環境で伝送され、4系統の受信ユニットにより受信された場合である。
図15は、平均の受信CNR(横軸)に対する平均のBER(縦軸)特性の関係を示しており、図3に示した関係と同様に、(1)w/o AGCの場合、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合、及び、(3)図14の復号ユニットを用いたAGC & Level Control(R2−20dB)の場合における結果をそれぞれ示している。尚、雑音電力演算回路601において、雑音電力を計算するにあたり、帯域外データを5サンプルずつ計10サンプルのデータを32シンボル分積算した場合で示している。
図15によれば、干渉除去の送信2系統及び受信4系統に対する理論的なダイバーシティオーダーが3であるのに対し、(1)w/o AGCの場合のCNRに対するBERの変化の傾きが概ねこれを表す結果になっている。この結果は図3と同様である。そして、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合も、1台の受信ユニットの受信電力が20dB小さい値になることにより、ダイバーシティオーダーが劣化したことを考えると、ダイバーシティオーダーが1つ減ったものと、つまり、受信電力が相対的に小さいため、あたかも受信ユニットが1台欠落し、ダイバーシティ受信に寄与するブランチ数が減少したものと考えればよい。これも図3と同様である。
また、(3)AGC & Level Control(R2−20dB)の結果が、(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果と一致していることがわかる。これは、この受信状態において最善の性能を示すものと判断することができる。
その上で、図15及び図3を比較して本実施例1の効果を確認すると、例えば、内符号に畳み込み符号を、外符号にリード・ソロモン符号をそれぞれ適用して誤り訂正を行うシステムにおいて、誤り訂正後にエラーフリー伝送が可能となる、BERが10−2のラインで比較すると、その要求されるCNRが、図3に示した従来技術では27.5dB程度必要だったものが、本実施例1を用いることにより16dB程度で実現できるようになり、格段に性能が改善され得ることが実証されている。
尚、本実施例1は、逆行列演算回路607及び干渉除去演算回路608を用いて、MIMO通信の復調を行う例で説明したが、この干渉除去の演算をガウスの消去法、LU分解法またはQR分解法を適用して行った場合も、同様な結果を実現できる。
また、本実施例1において、伝搬路応答特性演算回路606及び逆行列演算回路607の代わりにMMSE重み係数演算回路を備えた場合には、MMSE規範による干渉除去に基づいた復調処理を行うことにより、同様な結果を実現できる。具体的には、MMSE重み係数演算回路は、データ/パイロット分離回路605からパイロットキャリアを入力し、MMSE規範に従ってMMSE重み係数を演算する。干渉除去演算回路608は、データ/パイロット分離回路605からデータキャリアを、MMSE重み係数演算回路からMMSE重み係数をそれぞれ入力し、データキャリアとMMSE重み係数とに基づいて、送信データを復調し、干渉を除去する。
また、本実施例1は、雑音電力演算回路601を用いた例であるが、図12に示した基準信号出力回路501、加算器502及び基準信号検出回路611を用いてもよい。
〔干渉除去に基づく復号ユニット/実施例2〕
図16は、干渉除去に基づく本発明による復号ユニットの第2構成例を示す図である。この復号ユニットは、干渉除去に基づくMIMO−OFDM方式の復号ユニットであり、M系統の雑音電力演算回路(手段)601、利得修正値演算回路(手段)602、M系統のデータ/パイロット分離回路(手段)605、伝搬路応答特性演算回路(手段)606、伝搬路応答行列補正回路(手段)622、逆行列演算回路(手段)607、データベクトル補正回路(手段)621、干渉除去演算回路(手段)608を備えている。
雑音電力演算回路601は、図14の実施例1に示したように、各々の受信信号yに対応する雑音電力を計算する。利得修正値演算回路602は、図14の実施例1に示したように、信号振幅の補正係数などの修正情報を計算する。また、その修正情報に基づいて、後段の伝搬路応答行列補正回路622及びデータベクトル補正回路621を制御する。この計算アルゴリズムは、図9から図11に示したアルゴリズムが適用される。
データ/パイロット分離回路605は、図14の実施例1に示したように、パイロットキャリア及びデータキャリアを各々分離して出力する。伝搬路応答特性演算回路606は、図14の実施例1に示したように、伝達関数h_ij[k]の推定値を算出し、これらを成分とするM×N行列H(k)を伝搬路応答行列補正回路622に出力する。
ただし、この時点では、AGC回路の動作により受信ユニット毎に雑音電力の大きさにばらつきがあり、雑音電力の影響は除去されていない。本実施例2では、各受信信号yは高いビット分解能を維持したまま伝搬路応答特性の推定演算を行うことができるので、より高い精度で伝搬路行列H(k)を求めたい場合に適用される。
また、類似の実施例に、図16の雑音電力演算回路601を伝搬路応答特性演算回路606の後段に接続する実施例がある。この類似の実施例は、図7の雑音電力演算回路601の雑音電力の演算手法の別の事例として示した、(10)式に基づくパイロットキャリアの受信信号yPとその伝搬路行列H(k)に基づくレプリカとの差の積算結果を雑音電力とする場合に適用することができる。
具体的には、雑音電力演算回路601は、伝搬路応答特性演算回路606において、伝搬路特性行列H(k)を演算する過程で演算される各キャリア位置kにおける各伝搬路の伝達関数h_ij[k]とパイロットキャリアP(k)の積h_ij[k]P(k)を入力し、パイロットキャリアの受信信号レプリカHPを演算する。そして、パイロットキャリアの受信信号yPを入力し、レプリカHPとの間で減算を行い、得られた差(yP−HP)の値の電力値を演算し、全パイロットキャリアについて積算する。さらに、この積算された電力値を所定のシンボル、例えば32シンボルに渡って積算し、利得修正値演算回路602に出力する。
伝搬路応答行列補正回路622は、利得修正値演算回路602からM系統の出力値である補正係数Ciを、伝搬路応答特性演算回路606から伝搬路行列H(k)をそれぞれ入力し、当該補正係数Ciの各々を伝搬路行列H(k)の該当する行成分に乗算することにより、伝搬路行列H(k)の値を修正し、当該修正した伝搬路行列H’(k)を逆行列演算回路607に出力する。
逆行列演算回路607は、各キャリア位置kにおける伝搬路行列H’(k)から、その逆行列または擬似逆行列を計算し、その結果を干渉除去演算回路608に出力する。
一方、データベクトル補正回路621は、データ/パイロット分離回路605から各キャリア位置kにおけるM次元のデータベクトルD(k)のデータキャリアを、利得修正値演算回路602からM系統の出力値である補正係数Ciをそれぞれ入力する。尚、この時点では、データベクトルD(k)は、全送信アンテナ3から送信された信号が、各伝搬路における応答を受けて混信した状態の信号になっている。また、この時点では、伝搬路応答特性演算回路606の出力と同様に、AGC回路51の動作により受信ユニット毎にばらつきがある雑音電力の影響は除去されていない。
データベクトル補正回路621は、M系統のデータベクトルD(k)に、該当する補正係数Ciを乗算することによって、データベクトルD(k)の値をD’(k)に修正し、当該データベクトルD’(k)を干渉除去演算回路608に出力する。
この結果、伝搬路応答行列補正回路622及びデータベクトル補正回路621は、それぞれ伝搬路行列H’(k)及びデータベクトルD’(k)を、その中に含まれる雑音電力の平均値が各成分においてほぼ同じ値を取るように調整し、最善の復調を可能とする状態にしている。
干渉除去演算回路608は、受信したデータベクトルD’(k)から干渉を除去して元のN系統の送信信号を再現するために、逆行列演算回路607により演算された伝搬路行列H’(k)の逆行列または擬似逆行列H’(k)−1をデータベクトルD’(k)に乗算し、複素行列積H’(k)−1D’(k)を演算する。
そして、干渉除去演算回路608は、キャリアk毎にN系統の復調データXを出力する。その後、図14と同様に、図示しないN系統のデマッピング回路や誤り訂正の復号回路などは、キャリアからのデマッピング(バイナリ化)や誤り訂正などの復号処理を実行し、N系統の送信データ、または多重化された1系統の送信データに復元する。
図17は、図16に示した復号ユニットの実施例2による効果を示すグラフである。このグラフは、送信2系統の信号を2式の送信アンテナで送信し、4式の受信アンテナで受信した場合の復調性能を示す計算機シミュレーション結果である。このシミュレーションの送信条件などは、図3に示した条件と同じである。
図17は、平均の受信CNR(横軸)に対する平均のBER(縦軸)特性の関係を示しており、図3に示した関係と同様に、(1)w/o AGCの場合、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合、及び、(3)図16の復号ユニットを用いたAGC & Control after CE(R2−20dB)の場合における結果をそれぞれ示している。尚、雑音電力演算回路601において、雑音電力を計算するにあたり、帯域外データを5サンプルずつ計10サンプルのデータを32シンボル分積算した場合で示している。
図17によれば、干渉除去の送信2系統及び受信4系統に対する理論的なダイバーシティオーダーが3であるのに対し、(1)w/o AGCの場合のCNRに対するBERの変化の傾きが概ねこれを表す結果になっている。この結果は図3と同様である。そして、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合も、1台の受信ユニットの受信電力が20dB小さい値になることにより、ダイバーシティオーダーが劣化したことを考えると、ダイバーシティオーダーが1つ減ったものと、つまり、受信電力が相対的に小さいため、あたかも受信ユニットが1台欠落し、ダイバーシティ受信に寄与するブランチ数が減少したものと考えればよい。これも図3と同様である。
また、(3)AGC & Control after CE(R2−20dB)の結果が、(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果にほぼ一致していることがわかる。これは、この受信状態において最善の性能を示すものと判断することができる。
その上で、図17及び図3を比較して本実施例2の効果を確認すると、図15に示した効果と同様に、格段に性能が改善され得ることが実証されている。
さらに、図17及び図15を比較すると、両者に方式の違いは現れず、ほぼ同等の結果となっていることがわかる。これは、伝搬路の特性がこのシステムにとって比較的問題の少ない条件だったためであり、条件が厳しくなって現れるBERのフロアを比較すると、図16の実施例2によるものの方が良い結果となる。
尚、本実施例2は、実施例1と同様に、干渉除去の演算をガウスの消去法、LU分解法またはQR分解法を適用して行った場合にも、同様な結果が実現できる。また、復号ユニットが、伝搬路応答特性演算回路606、逆行列演算回路607及び伝搬路応答行列補正回路622の代わりに算出される重み係数を利得修正値演算回路602から出力されるM系統の出力値である補正係数Ciを入力して補正するMMSE重み係数演算回路を備えた、MMSE規範による干渉除去に基づいた復調処理を行う場合も、同様な結果を実現できる。
また、本実施例2は、雑音電力演算回路601を用いた例であるが、図12に示した基準信号出力回路501、加算器502及び基準信号検出回路611を用いてもよい。
〔最尤推定に基づく復号ユニット/実施例1〕
図18は、最尤推定に基づく本発明による復号ユニットの第1構成例を示す図である。この復号ユニットは、最尤推定に基づくMIMO−OFDM方式の復号ユニットであり、M系統の雑音電力演算回路(手段)601、利得修正値演算回路(手段)602、M系統の利得補正回路(手段)603、M系統のデータ/パイロット分離回路(手段)605、伝搬路応答特性演算回路(手段)606、レプリカ演算回路(手段)631、最尤推定判定回路(手段)632、及び、送信データ組合せパターンメモリ(記憶手段)633を備えている。
図18に示す復号ユニットと図14に示した干渉除去に基づく復号ユニットの実施例1とを比較すると、図18に示す復号ユニットは、受信アンテナ数Mの値が必ずしも送信アンテナ数N以上である必要がない点、逆行列演算回路607の代わりに送信データ組合せパターンメモリ633及びレプリカ演算回路631を、干渉除去演算回路608の代わりに最尤推定判定回路632をそれぞれ備えている点で相違する。
雑音電力演算回路601、利得修正値演算回路602、利得補正回路603、データ/パイロット分離回路605及び伝搬路応答特性演算回路606の動作は、図14に示した干渉除去に基づく復号ユニットの実施例1の動作と同様である。
レプリカ演算回路631は、伝搬路応答特性演算回路606から、各伝搬路の伝達関数h_ij[k]の推定値を成分とするM×Nの伝搬路行列H(k)を入力する。多値数Lのデータキャリアの場合、LのN乗の送信データキャリアの組合せパターンを記憶する送信データ組合せパターンメモリ633から、当該シンボルの間に送信され得るG組(最大LNの整数)の送信データキャリアの組合せ(N系統分の送信データ)候補S={s1,s2,・・・,sG}を読み出し、前記伝搬路行列H(k)と、G組の全パターンのデータキャリア組合せ候補Sとの間で複素行列積を計算し、その候補数G分のレプリカ計算値Dx(k)=H(k)S={H(k)s1,H(k)s2,・・・,H(k)sG}を示すM系統の受信予定データを最尤推定判定回路632に出力する。
一方、最尤推定判定回路632は、データ/パイロット分離回路605から、各キャリア位置kにおけるM次元のデータベクトルD(k)のデータキャリアを、レプリカ演算回路631から前記受信予定データをそれぞれ入力する。尚、この時点では、データベクトルD(k)は、全送信アンテナから送信された信号が各伝搬路における応答を受けて混信した状態の信号になっている。また、利得補正回路603は、混信した状態の受信信号の雑音電力の平均値を、M次元の各成分においてほぼ同じ値を取るように調整し、最善の復調を可能とする状態にしている。
最尤推定判定回路632は、全パターンの受信予定のデータベクトルDx(k)と実際のデータベクトルD(k)とを比較し、その差(D(k)−Dx(k))のノルムが最も小さくなる、つまり、最も近い結果となる送信データsg(gは1からGの範囲の整数)を、送信されたデータと判定し、送信データ候補sgの送信データ組合せパターンメモリ633上でのアドレスまたはインデックス(レプリカDx(k)は送信データsgのアドレスまたはインデックスの順番を保持して処理されている)を、送信データ組合せパターンメモリ633に出力する。
この場合、利得補正回路603により、受信信号の雑音電力の平均値がM次元の各成分においてほぼ同じ値になるように調整されておらず、受信ユニット毎に異なる雑音環境になっているときには、最尤推定の判定結果は雑音電力の大きい受信ユニットの影響を受け、正確な復調が行われないことになる。
送信データ組合せパターンメモリ633は、最尤推定判定回路632からのアドレスまたはインデックスに従い、該当するN系統の送信データキャリアの組合せをN系統の復調データとして、図示しないN系統のデマッピング回路に出力する。
そして、図示しないN系統のデマッピング回路や誤り訂正の復号回路などは、キャリアからのデマッピング(バイナリ化)や誤り訂正などの復号処理を実行し、N系統の送信データ、または多重化された1系統の送信データに復元する。
図19は、図18に示した復号ユニットの実施例1による効果を示すグラフである。このグラフは、送信2系統の信号を2式の送信アンテナで送信し、4式の受信アンテナで受信した場合の復調性能を示す計算機シミュレーション結果である。このシミュレーションの送信条件などは図4に示した条件と同じである。つまり、データが16QAMにマッピングされたシンボル長約16マイクロ秒のOFDM信号2系統が、最大ドップラー周波数400Hzのレイリーフェージング環境で伝送され、4系統の受信ユニットにより受信された場合である。
図19は、平均の受信CNR(横軸)に対する平均のBER(縦軸)特性の関係を示しており、図4に示した関係と同様に、(1)w/o AGCの場合、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合、及び、(3)図18の復号ユニットを用いたAGC & Level Control(R2−20dB)の場合における結果をそれぞれ示している。尚、雑音電力演算回路601において、雑音電力を計算するにあたり、帯域外データ5サンプルずつ計10サンプルを32シンボル分積算した場合で示している。
図19によれば、最尤推定の送信2系統及び受信4系統に対する理論的なダイバーシティオーダーが4であるのに対し、(1)w/o AGCの場合のCNRに対するBERの変化の傾きは概ねこれを表す結果になっている。この結果は図4と同様である。そして、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合も、1台の受信ユニットの受信電力が20dB小さい値になることにより、ダイバーシティオーダーが劣化したことを考えると、ダイバーシティオーダーが1つ減ったものと、つまり、受信電力が相対的に小さいため、あたかも受信ユニットが1台欠落し、ダイバーシティ受信に寄与するブランチ数が減少したものと考えればよい。これも図4と同様である。
また、(3)AGC & Level Control(R2−20dB)の結果が、(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果にほぼ一致していることがわかる。これは、この受信状態において最善の性能を示すものと判断することができる。
その上で、図19及び図4を比較して本実施例1の効果を確認すると、例えば、内符号に畳み込み符号を、外符号にリード・ソロモン符号を適用して誤り訂正を行うシステムにおいて、誤り訂正後にエラーフリー伝送が可能となるBERが10−2のラインで比較すると、その要求されるCNRが、従来の技術では27dB程度必要だったものが、本実施例1を用いることにより14dB程度で実現できるようになり、格段に性能が改善され得ることが実証されている。
尚、本実施例1は、雑音電力演算回路601を用いた例であるが、図12に示した基準信号出力回路501、加算器502及び基準信号検出回路611を用いてもよい。
〔最尤推定に基づく復号ユニット/実施例2〕
図20は、最尤推定に基づく本発明による復号ユニットの第2構成例を示す図である。この復号ユニットは、最尤推定に基づくMIMO−OFDM方式の復号ユニットであり、M系統の雑音電力演算回路(手段)601、利得修正値演算回路(手段)602、M系統のデータ/パイロット分離回路(手段)605、伝搬路応答特性演算回路(手段)606、レプリカ演算回路(手段)631、誤差補正機能付最尤推定判定回路(手段)641、及び送信データ組合せパターンメモリ(記憶手段)633を備えている。
雑音電力演算回路601は、図18の実施例1に示したように、各々の受信信号yに対応する雑音電力を計算する。利得修正値演算回路602は、図18の実施例1に示したように、信号振幅の補正係数などの修正情報を計算する。また、その修正情報に基づいて、後段の誤差補正機能付最尤推定判定回路641において誤差のノルムを計算する際に、各受信ユニット5,500に対応する受信信号とレプリカとの間の誤差の各成分を重み付けする。この補正係数としては、ここでは雑音電力の比の値を用いればよい。この計算アルゴリズムは、図9から図11に示したアルゴリズムが適用される。
データ/パイロット分離回路605は、図18の実施例1に示したように、パイロットキャリア及びデータキャリアを各々分離し、パイロットキャリアを伝搬路応答特性演算回路606に、データキャリアを誤差補正機能付最尤推定判定回路641にそれぞれ出力する。パイロットキャリアは、全キャリア位置(K本)における全送信アンテナ3と全受信アンテナ4とを結ぶ各伝搬路の周波数応答の推定値の算出に利用される。
伝搬路応答特性演算回路606は、各キャリア位置k(k=1,2,・・・,K)における各伝搬路の伝達関数h_ij[k](複素数,i=受信アンテナの番号(i=1,2、・・・,M),j:送信アンテナの番号(j=1,2,…,N),k:キャリア番号)の推定値を算出し、これらを成分とするM×N行列H(k)をレプリカ演算回路631に出力する。
ただし、この時点では、AGC回路の動作により受信ユニット毎に雑音電力の大きさにばらつきがあり、雑音電力の影響は除去されていない。本実施例2では、各受信信号yは高いビット分解能を維持したまま伝搬路応答特性の推定演算を行うことができるので、より高い精度で伝搬路行列H(k)を求めたい場合に適用される。
また、類似の実施例に、図20の雑音電力演算回路601を伝搬路応答特性演算回路606の後段に接続する実施例がある。この類似の実施例は、図7の雑音電力演算回路601の雑音電力の演算手法の別の事例として示した、(10)式に基づくパイロットキャリアの受信信号yPとその伝搬路行列H(k)に基づくレプリカとの差の積算結果を雑音電力とする場合に適用することができる。
具体的には、雑音電力演算回路601は、伝搬路応答特性演算回路606において、伝搬路特性行列H(k)を演算する過程で演算される各キャリア位置kにおける各伝搬路の伝達関数h_ij[k]とパイロットキャリアP(k)の積h_ij[k]P(k)を入力し、パイロットキャリアの受信信号レプリカHPを演算する。そして、パイロットキャリアの受信信号yPを入力し、レプリカHPとの間で減算を行い、得られた差(yP−HP)の値の電力値を演算し、全パイロットキャリアについて積算する。さらに、この積算された電力値を所定のシンボル、例えば32シンボルに渡って積算し、利得修正値演算回路602に出力する。
レプリカ演算回路631は、多値数Lのデータキャリアの場合、LのN乗の送信データキャリアの組合せパターンを記憶する送信データ組合せパターンメモリ633から当該シンボルの間に送信され得るG組(最大LNの整数)の送信データキャリアの組合せ(N系統分の送信データ)候補S={s1,s2,・・・,sG}を読み出し、伝搬路応答特性演算回路606からの伝搬路行列H(k)と、読み出したG組全パターンのデータキャリア組合せ候補との間で複素行列積を計算し、その候補数G分のレプリカ計算値Dx(k)=H(k)S={H(k)s1,H(k)s2・・・,H(k)sG}を示すM系統の受信予定データを誤差補正機能付最尤推定判定回路641に出力する。
一方、誤差補正機能付最尤推定判定回路641は、データ/パイロット分離回路605から、各キャリア位置kにおけるM次元のデータベクトルD(k)のデータキャリアを、利得修正値演算回路602から修正情報を、レプリカ演算回路631から、候補数G分のレプリカ計算値Dx(k)を示すM系統の受信予定データをそれぞれ入力する。尚、この時点では、データベクトルD(k)は、全送信アンテナ3から送信された信号が各伝搬路における応答を受けて混信した状態の信号になっている。また、この時点では、伝搬路応答特性演算回路606の出力と同様に、AGC回路の動作により受信ユニット毎にばらつきがある雑音電力の影響は除去されていない。
誤差補正機能付最尤推定判定回路641は、伝搬路応答を反映してレプリカ演算回路631から出力された全パターンの受信予定のデータベクトルDx(k)と実際に受信したデータベクトルD(k)とを比較し、その差e(k)=(D(k)−Dx(k))を算出する。この誤差のノルムを計算し、その値が最も小さくなる受信予定データを復調結果として送信データ組合せパターンメモリ633を制御する。しかし、このままその動作を継続すると、この最尤推定の判定結果が雑音電力の大きい受信ユニットに影響を受け、正確な復調ができなくなる場合がある。
そこで、誤差補正機能付最尤推定判定回路641は、利得修正値演算回路602から入力したM系統の出力値である補正係数Ciを用いて正確な復調を実現する。誤差補正機能付最尤推定判定回路641は、M系統の各々のデータに該当する誤差e(k)に補正係数Ciを乗算することによって、e(k)の値をe’(k)に修正し、そのノルムを計算する。この結果、誤差補正機能付最尤推定判定回路641は、e’(k)の中に含まれる雑音電力の平均値が各成分においてほぼ同じ値を取るように調整するので、最善の復調が可能となる。
したがって、値を修正された誤差e’(k)のノルムが最も小さくなる、つまり、最も近い結果となる送信データsg(gは1からGの範囲の整数)を送信されたデータと判定し、送信データ候補sgの送信データ組合せパターンメモリ633上でのアドレスまたはインデックス(レプリカDx(k)は送信データsgのアドレスまたはインデックスの順番を保持して処理されている)を送信データ組合せパターンメモリ633に出力する。
送信データ組合せパターンメモリ633は、誤差補正機能付最尤推定判定回路641からのアドレスまたはインデックスに従い、該当するN系統の送信データキャリアの組合せをN系統の復調データとして、図示しないN系統のデマッピング回路に出力する。
そして、図示しないN系統のデマッピング回路や誤り訂正の復号回路などは、キャリアからのデマッピング(バイナリ化)や誤り訂正などの復号処理を実行し、N系統の送信データ、または多重化された1系統の送信データに復元する。
図21は、図20に示した復号ユニットの実施例2による効果を示すグラフである。このグラフは、送信2系統の信号を2式の送信アンテナで送信し、4式の受信アンテナで受信した場合の復調性能を示す計算機シミュレーション結果である。このシミュレーションの送信条件などは図4に示した条件と同じである。
図21は、平均の受信CNR(横軸)に対する平均のBER(縦軸)特性の関係を示しており、図4と同様に(1)w/o AGCの場合、(2)w/o AGC(R2-20dB)の場合、及び、(3)図20の復号ユニットを用いたAGC & Error Weight Control(R2−20dB)の場合における結果をそれぞれ示している。尚、雑音電力演算回路601において、雑音電力を計算するにあたり、帯域外データ5サンプルずつ計10サンプルを32シンボル分積算した場合で示している。
図21によれば、最尤推定の送信2系統及び受信4系統に対する理論的なダイバーシティオーダーが4であるのに対し、(1)w/o AGCの場合のCNRに対するBERの変化の傾きは概ねこれを表す結果になっている。この結果は図4と同様である。そして、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合も、1台の受信ユニットの受信電力が20dB小さい値になることにより、ダイバーシティオーダーが劣化したことを考えると、ダイバーシティオーダーが1つ減ったものと、つまり、受信電力が相対的に小さいため、あたかも受信ユニットが1台欠落し、ダイバーシティ受信に寄与するブランチ数が減少したものと考えればよい。これも図4と同様である。
また、(3)AGC & Error Weight Control(R2−20dB)の結果は、(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果にほぼ一致していることがわかる。これは、この受信状態において最善の性能を示すものと判断することができる。
その上で、図21及び図4を比較して本実施例2の効果を確認すると、図19で示した効果と同様に、格段に性能が改善され得ることが実証されている。
さらに、図21及び図19を比較すると、両者に方式の違いは現れず、ほぼ同等の結果となる。これは、伝搬路の特性がこのシステムにとって比較的問題の少ない条件だったためで、条件が厳しくなって現れるBERのフロアを比較すると、図21に示した実施例2によるものの方が良い結果となる。
尚、本実施例2は、雑音電力演算回路601を用いた例であるが、図12に示した基準信号出力回路501、加算器502及び基準信号検出回路611を用いてもよい。
〔干渉除去に基づく復調結果によりレプリカ計算の候補を削減した場合の、最尤推定に基づく復号ユニット/実施例1〕
最尤推定に基づくMIMO通信の復号ユニットは、MIMO通信の復号ユニットとしては最大の性能を発揮する。しかしながら、その計算量や回路負荷が大きいため、回路の実現性に乏しい。そこで、レプリカ計算量を削減するための様々な手段が駆使され、最尤推定が導入されるに至っている。以下、干渉除去の復調結果に基づいて候補を削減した場合の復号ユニットの例を示す。ただし、レプリカ計算に寄与する送信信号の組合せ候補の削減技術は、ここに示す手法以外も存在するが、最尤推定における判定では、雑音の寄与する影響には変わりがないため、ここに示す手法以外の場合にも同様の効果を奏する。
図22は、干渉除去に基づく復調結果によりレプリカ計算候補を削減した場合における、最尤推定に基づく本発明による復号ユニットの第1構成例を示す図である。この復号ユニットは、MIMO−OFDM方式の復号ユニットであり、M系統の雑音電力演算回路(手段)601、利得修正値演算回路(手段)602、M系統の利得補正回路(手段)603、M系統のデータ/パイロット分離回路(手段)605、伝搬路応答特性演算回路(手段)606、逆行列演算回路(手段)607、干渉除去演算回路(手段)608、組合せパターン選択回路(手段)651、レプリカ演算回路(手段)631、最尤推定判定回路(手段)632、及び送信データ組合せパターンメモリ(記憶手段)633を備えている。
この復号ユニットは、図14に示した干渉除去に基づく復号ユニットの実施例1の構成、及び図18に示した最尤推定に基づく復号ユニットの実施例1の構成に加えて、さらに、組合せパターン選択回路651を備えている。雑音電力演算回路601、利得修正値演算回路602、M系統の利得補正回路603、データ/パイロット分離回路605、及び伝搬路応答特性演算回路606の動作は、図14及び図18に示したものと同様であり、逆行列演算回路607、及び干渉除去演算回路608の動作は、図14に示したものと同様であり、また、レプリカ演算回路631、最尤推定判定回路632、及び送信データ組合せパターンメモリ633の動作は、図18に示したものと同様である。以下、データ/パイロット分離回路605の後段の動作について詳細に説明する。
データ/パイロット分離回路605は、各キャリア位置kにおけるM次元のデータベクトルD(k)のデータキャリアを干渉除去演算回路608及び最尤推定判定回路632に、パイロットキャリアを伝搬路応答特性演算回路606にそれぞれ出力する。尚、この時点では、データベクトルD(k)は、全送信アンテナから送信された信号が各伝搬路における応答を受けて混信した状態の信号になっている。また、利得補正回路603は、混信した状態の受信信号の雑音電力の平均値を、M次元の各成分においてほぼ同じ値を取るように調整し、最善の復調を可能とする状態にしている。
伝搬路応答特性演算回路606は、データ/パイロット分離回路605からパイロットキャリアを入力し、各キャリア位置k(k=1,2,・・・,K)における各伝搬路の伝達関数h_ij[k](複素数,i:受信アンテナの番号(i=1,2,・・・M),j:送信アンテナの番号(j=1,2,・・・N),k:キャリア番号)の推定値を算出し、これらを成分とするM×N行列H(k)を逆行列演算回路607及びレプリカ演算回路631に出力する。
逆行列演算回路607は、伝搬路応答特性演算回路606から各キャリア位置kにおける伝搬路行列H(k)を入力し、当該伝搬路行列H(k)からその逆行列または擬似逆行列H(k)−1を計算し、その結果を干渉除去演算回路608に出力する。
干渉除去演算回路608は、データ/パイロット分離回路605からデータベクトルD(k)を、逆行列演算回路607から伝搬路行列H(k)の逆行列または擬似逆行列H(k)−1をそれぞれ入力し、データベクトルD(k)から干渉を除いて元のN系統の送信信号を再現するために、伝搬路行列H(k)の逆行列または擬似逆行列H(k)−1をデータベクトルD(k)に乗算し、複素行列積H(k)−1D(k)を演算する。
尚、逆行列演算回路607の出力が逆行列であるか擬似逆行列であるかは、伝搬路行列Hの次元、つまり、M×N行列H(k)の行数Mと列数Nの数値が等しいか否かに従うものとする。ただし、Mの値は、Nの値と等しいか、それ以上の値である。
そして、干渉除去演算回路608は、キャリアk毎にN系統の仮の復調データX’を組合せパターン選択回路651に出力する。
この場合、利得補正回路603が、受信信号の雑音電力の平均値を、M次元の各成分においてほぼ同じ値を取るように調整しておらず、受信ユニット毎に異なる雑音環境になっているときには、この干渉除去演算回路608の出力は、雑音電力の大きい受信ユニットの影響を受け、正確な復調ができなくなることがある。これが次段の組合せパターン選択回路651における候補選択を誤らせる要因となるため、復調性能が劣化する。本実施例1では、受信信号の振幅値を修正することにより、最善の性能が発揮できるようになる。
組合せパターン選択回路651は、後述する送信データ組合せパターンメモリ633が記憶するデータキャリア組合せ候補の全パターン(例えば、多値数Lのデータキャリアの場合、LのN乗の送信データキャリアの組合せパターンがあり、この組合せパターンが当該シンボルの間に送信され得る全組合せパターンである。つまり、G1組(G1は最大LNの整数)の送信データキャリア組合せ(N系統分の送信データ)候補S={s1,s2,・・・,sG1})と、干渉除去演算回路608の出力である復調データX’とを比較し、最も可能性のある候補(例えば、G組(Gは最大値であるLN(=G1)よりも十分に小さな整数)の送信データキャリアの組合せ候補S’={s1,s2,・・・,sG})を選択し、この組合せ候補をレプリカ演算回路631に出力する。
図23は、干渉除去に基づく復調結果によりレプリカ計算の候補を削減する方法を説明するための図である。図23は、16QAMの信号コンスタレーションを示しており、a〜iの9つのエリアに区分されている。送信組合せパターンの候補は、干渉除去演算回路608の復調出力であるX’の各成分x’1,x’2,・・・,x’Nが、このコンスタレーション上のどのエリアにあるかを調べることにより選択される。つまり、各成分を、a〜iの9つのエリアのうちの1つのエリア毎にそれぞれ当てはめ、エリアを選ぶ。そして、選んだエリアが含む4点を、その成分に該当する送信データの候補として選択する。組合せパターン選択回路651は、各成分における4つのデータキャリアの候補の組合せパターンを、その送信データ組合せパターンメモリ633上のインデックスまたはアドレスと共にレプリカ演算回路631に出力する。
尚、組合せパターン選択回路651が組合せパターンの候補を削減することにより、16Nの送信データの組合せパターンの計算を4Nの組合せパターンのみの計算に置き換えることができるので、レプリカ計算における計算量を4N分の1にすることができる。
レプリカ演算回路631は、伝搬路応答特性演算回路606から伝搬路行列H(k)を、組合せパターン選択回路651から候補数が削減された送信データのG組分の組合せパターンS’をそれぞれ入力し、当該伝搬路行列H(k)と送信データのG組分の組合せパターンS’との間で複素行列積を計算し、その候補数G分のレプリカ計算値Dx(k)=H(k)S’={H(k)s1,H(k)s2,・・・,H(k)sG}を示すM系統の受信予定データを最尤推定判定回路632に出力する。
最尤推定判定回路632は、レプリカ演算回路631から伝搬路応答を反映した全パターンの受信予定データベクトルDx(k)を、データ/パイロット分離回路605からデータベクトルD(k)をそれぞれ入力し、当該全パターンの受信予定データベクトルDx(k)と実際に受信したデータベクトルD(k)とを比較して、その差(D(k)−Dx(k))のノルムが最も小さくなる、つまり、最も近い結果となる送信データsg(gは1からGの範囲の整数)を、送信されたデータと判定し、送信データ候補sgの送信データ組合せパターンメモリ上でのアドレスまたはインデックス(レプリカである受信予定データベクトルDx(k)は、送信データ候補sgのアドレスまたはインデックスの順番を保持して処理されている。)を送信データ組合せパターンメモリ633に出力する。
この場合も、利得補正回路603により、受信信号の雑音電力の平均値がM次元の各成分においてほぼ同じ値になるように調整されておらず、受信ユニット毎に異なる雑音環境になっているときには、この最尤推定判定回路632による判定結果は雑音電力の大きい受信ユニットの影響を受け、正確な復調が行われないことになる。本実施例1では、受信信号の振幅値を修正することにより、最善の性能が発揮できるようになる。
送信データ組合せパターンメモリ633は、最尤推定判定回路632からのアドレスまたはインデックスに従い、該当するN系統の送信データキャリアの組合せをN系統の復調データとして、図示しないN系統のデマッピング回路に出力する。
そして、図示しないN系統のデマッピング回路や誤り訂正の復号回路などは、キャリアからのデマッピング(バイナリ化)や誤り訂正などの復号処理を実行し、N系統の送信データ、または多重化された1系統の送信データに復元する。
尚、本実施例1では、最尤推定判定回路632から出力されるアドレスまたはインデックスに従い、N系統の復調データを送信データ組合せパターンメモリ633から読み出すようにしているが、メモリ633に格納された送信データ組合せパターンが多く、読み出し時間が大きくなるような場合には、組合せパターン選択回路651自らが選択した送信データ組合せパターンを記憶し、その送信データ組合せパターンを復調データの読み出しに用いるようにしてもよい。
図24は、図22に示した復号ユニットの実施例1による効果を示すグラフである。このグラフは、送信2系統の信号を2式の送信アンテナで送信し、4式の受信アンテナで受信した場合の復調性能を示す計算機シミュレーション結果である。このシミュレーションの送信条件などは、図3及び図4に示した条件と同じである。つまり、データが16QAMにマッピングされたシンボル長約16マイクロ秒のOFDM信号2系統が、最大ドップラー周波数400Hzのレイリーフェージング環境で伝送され、4系統の受信ユニットにより受信された場合である。
図24は、平均の受信CNR(横軸)に対する平均のBER(縦軸)特性の関係を示しており、図3及び図4に示した関係と同様に、(1)w/o AGCの場合、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合、(3)AGC回路が機能し、ある受信ユニットのみが他の受信ユニットよりも20dB小さな電力で信号を受信した場合(AGC(R2−20dB)の場合)、及び、(4)図22に示した復号ユニットを用いて、AGC回路が機能し、ある受信ユニットのみが他の受信ユニットよりも20dB小さな電力で信号を受信した場合(AGC & Level Control(R2−20dB)の場合)における結果をそれぞれ示している。尚、雑音電力演算回路601において、雑音電力を計算するにあたり、帯域外データ5サンプルずつ計10サンプルのデータを32シンボル分積算した場合で示している。
図24によれば、干渉除去及び最尤推定各々の送信2系統及び受信4系統に対する理論的なダイバーシティオーダーが3及び4であるのに対し、(1)w/o AGCの場合のCNRに対するBERの変化の傾きが概ねこの3と4の間、特に4に近い結果になっている。これにより、全候補を用いた最尤推定による方法でなくとも、候補数を減らして計算量を削減した最尤推定による方法によっても、本来の性能に近い能力を発揮したシステムを実現できることがわかる。
そして、(2)w/o AGC(R2−20dB)の場合も、1台の受信ユニットの受信電力が20dB小さい値になることにより、ダイバーシティオーダーが劣化したことを考えると、ダイバーシティオーダーが1つ減ったものと、つまり、受信電力が相対的に小さいため、あたかも受信ユニットが1台欠落し、ダイバーシティ受信に寄与するブランチ数が減少したものと考えればよい。これは図3及び図4と同様である。
これに対し、(3)AGC(R2−20dB)の場合は、図3及び図4に示したように、本実施例1を用いることなく復号ユニットを構成しているから、個々の受信ユニットが有する異なる雑音のうち、AGC回路により最も拡大された雑音を有する受信ユニットが受信信号のCNRを支配するため、復調信号のBER特性ではCNRで10dBを上回るペナルティが観測されることがわかる。
そして、(4)図22の復号ユニットを用いたAGC & Level Control(R2−20dB)の結果が、(2)w/o AGC(R2−20dB)の結果にほぼ一致していることがわかる。これは、この受信状態において最善の性能を示すものと判断することができる。
その上で、(4)図22の復号ユニットを用いたAGC & Level Control(R2−20dB)の結果と、(3)AGC(R2−20dB)の結果とを比較して本実施例1の効果を確認すると、例えば、内符号に畳み込み符号を、外符号にリード・ソロモン符号を適用して誤り訂正を行うシステムにおいて、誤り訂正後にエラーフリー伝送が可能となるBERが10−2のラインで比較すると、その要求されるCNRが、(3)AGC(R2−20dB)の結果では27dB程度必要だったものが、本実施例1を用いることにより14dB程度で実現できるようになり、格段に性能が改善され得ることが実証されている。
尚、本実施例1の復号ユニットは、図14に示した干渉除去に基づく復号ユニットの実施例1の構成、及び図18に示した最尤推定に基づく復号ユニットの実施例1の構成に加えて、さらに、組合せパターン選択回路651を備える構成で説明した。干渉除去に基づく復号ユニットの部分を、図14の復号ユニットの代わりに、図16の復号ユニットを用いて干渉除去による復調データを求めて、次段の最尤推定に用いるレプリカ計算の候補を削減する構成としてもよい。
〔干渉除去に基づく復調結果によりレプリカ計算の候補を削減した場合の、最尤推定に基づく復号ユニット/実施例2〕
図25は、干渉除去に基づく復調結果によりレプリカ計算候補を削減した場合における、最尤推定に基づく本発明による復号ユニットの第2構成例を示す図である。この復号ユニットは、M系統の利得補正回路(手段)603の代わりに、伝搬路応答行列補正回路(手段)622、及びデータベクトル補正回路(手段)621を備えている。よって、データ/パイロット分離回路605の出力時点では、AGC回路51の動作により受信ユニット毎にばらつきがある雑音電力の影響は除去されていない。
図22の復号ユニットと構成が異なる部分以降の動作を説明する。伝搬路応答行列補正回路622は、利得修正値演算回路602からのM系統の出力値である補正係数Ciを、伝搬路応答特性演算回路606から伝搬路行列H(k)をそれぞれ入力し、当該補正係数Ciの各々を伝搬路行列H(k)の該当する行成分に乗算することにより、伝搬路行列H(k)の値を修正し、当該修正した伝搬路行列H’(k)を逆行列演算回路607に出力する。逆行列演算回路607は、各キャリア位置kにおける伝搬路行列H’(k)から、その逆行列または擬似逆行列を計算し、その結果を干渉除去演算回路608に出力する。
一方、データベクトル補正回路621は、データ/パイロット分離回路605から各キャリア位置kにおけるM次元のデータベクトルD(k)のデータキャリアを、利得修正値演算回路602からM系統の出力値である補正係数Ciをそれぞれ入力する。尚、この時点では、データベクトルD(k)は、全送信アンテナ3から送信された信号が、各伝搬路における応答を受けて混信した状態の信号になっている。
データベクトル補正回路621は、M系統のデータベクトルD(k)に、該当する補正係数Ciを乗算することによって、データベクトルD(k)の値をD’(k)に修正し、当該データベクトルD’(k)を干渉除去演算回路608に出力する。
この結果、伝搬路応答行列補正回路622及びデータベクトル補正回路621は、それぞれ伝搬路行列H’(k)及びデータベクトルD’(k)を、その中に含まれる雑音電力の平均値が各成分においてほぼ同じ値を取るように調整し、最善の復調を可能とする状態にしている。
干渉除去演算回路608は、受信したデータベクトルD’(k)から干渉を除去して元のN系統の送信信号を再現するために、逆行列演算回路607により演算された伝搬路行列H’(k)の逆行列または擬似逆行列H’(k)−1をデータベクトルD’(k)に乗算し、複素行列積H’(k)−1D’(k)を演算する。
そして、干渉除去演算回路608は、キャリアk毎にN系統の仮の復調データX’を組合せパターン選択回路651に出力する。
この場合、伝搬路応答行列補正回路622及びデータベクトル補正回路621が、受信信号の雑音電力の平均値を、M次元の各成分においてほぼ同じ値を取るように調整しておらず、受信ユニット毎に異なる雑音環境になっているときには、この干渉除去演算回路608の出力は、雑音電力の大きい受信ユニットの影響を受け、正確な復調ができなくなることがある。これが次段の組合せパターン選択回路651における候補選択を誤らせる要因となるため、復調性能が劣化する。本実施例2では、受信信号の振幅値を修正することにより、最善の性能が発揮できるようになる。
組合せパターン選択回路651は、後述の送信データ組合せパターンメモリ633が記憶するデータキャリア組合せ候補の全パターンと、干渉除去演算回路608の出力である復調データX’とを比較し、最も可能性のある候補(例えば、G組(Gは最大値であるLN(=Gl)よりも十分に小さな整数)の送信データキャリアの組合せ候補S’={s1,s2,…,sG}を選択し、この組合せ候補をレプリカ演算回路631に出力する。
組合せパターン選択回路651が組合せパターンの候補を削減する手順及び動作は、図22の復号ユニットにおいて、組合せパターン選択回路651が行うものと同じである。
レプリカ演算回路631は、伝搬路応答行列補正回路622から伝搬路行列H’(k)を、組合せパターン選択回路651から候補数を削減された送信データのG組分の組合せパターンS’をそれぞれ入力し、当該伝搬路行列H’(k)と送信データのG組分の組合せパターンS’との間で複素行列積を計算し、その候補数G分のレプリカ計算値Dx’(k)=H’(k)S’={H’(k)s1,H’(k)s2,…,H’(k)sG,}を示すM系統の受信予定データを最尤推定判定回路632に出力する。
最尤推定判定回路632は、レプリカ演算回路631から伝搬路応答を反映した全パターンの受信予定データベクトルDx’(k)を、データベクトル補正回路621からデータベクトルD’(k)をそれぞれ入力し、当該全パターンの受信予定データベクトルDx’(k)と実際に受信したデータベクトルD’(k)とを比較して、その差(D’(k)−Dx’(k))のノルムが最も小さくなる、つまり、最も近い結果となる送信データsg(gは1からGの範囲の整数)を、送信されたデータと判定し、送信データ候補sgの送信データ組合せパターンメモリ上でのアドレスまたはインデックス(レプリカである受信予定データベクトルDx’(k)は、送信データ候補sgのアドレスまたはインデックスの順番を保持して処理されている)を送信データ組合せパターンメモリ633に出力する。
その他の動作は、図22に示した復号ユニットを用いた実施例1と同様である。なお、本実施例2においては、図16に示した干渉除去に基づく復号ユニットの別の形態で示している。すなわち、図7の雑音電力演算回路601の雑音電力の演算手法の別の事例として示した、(10)式に基づくパイロットキャリアの受信信号yPとその伝搬路行列H(k)に基づくレプリカとの差の積算結果を雑音電力とする場合を適用し、雑音電力演算回路601は、伝搬路応答特性演算回路606の後段に置かれ、伝搬路応答特性演算回路606において、伝搬路特性行列H(k)を演算する過程で演算される各キャリア位置kにおける各伝搬路の伝達関数h_ij[k]とパイロットキャリアP(k)の積h_ij[k]P(k)、及び、パイロットキャリアの受信信号yPを入力し、電力値(yP−HP)2の全パイロットキャリア分の積算値を演算する。さらに、この積算された電力値を所定のシンボルに渡って積算し、利得修正値演算回路602に出力する。
以上の本実施例1及び2の説明においては、逆行列演算回路607及び干渉除去演算回路608を用いて、送信データパターンの組合せ候補を選択するようにしたが、この演算を、ガウスの消去法、LU分解法またはQR分解法を適用して行った場合にも、同様な結果を実現できる。
また、本実施例1及び2において、伝搬路応答特性演算回路606及び逆行列演算回路607の代わりにMMSE重み係数演算回路を備えた場合には、MMSE規範による干渉除去に基づく復調処理を行うことにより、同様な結果を実現できる。
また、本実施例1及び2は、雑音電力演算回路601を用いた例であるが、図12に示した基準信号出力回路501、加算器502及び基準信号検出回路611を用いてもよい。
以上の説明により、本発明によるMIMO通信を行う無線通信の受信装置の例において、各受信ユニットが使用する前置増幅器などのNFや利得が異なるために、当該受信ユニットが各々有する雑音の電力が等しくない場合や、各受信ユニットにおいてAGC回路が使用され、途中の伝搬路の影響を受けて各受信ユニットが受信する信号の電力がばらついて、AGC回路の動作の結果、当該ユニットが各々有する雑音の電力が等しくない場合にも、最善の性能で、全ての送信信号を復調することができる。
尚、以上の例では、個々のハードウェアの構成によりその機能などを説明したが、前記受信装置は、CPU、RAMなどの揮発性の記憶媒体、ROMなどの不揮発性の記憶媒体などを備えたコンピュータ装置やデジタルシグナルプロセッサによって構成されるようにしてもよい。この場合、A/D回路以降の各機能は、コンピュータ装置やデジタルシグナルプロセッサによるソフトウェア構成やFPGAなどのプログラマブルロジックとして実現される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピィーディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することもできる。