図1は本発明に係る床用化粧材を構成する基材の一例を示す斜視図である。この床用化粧材をはじめ、一般の床材は通常細長い形状であるが、紙面の都合から図1では長手方向を相対的に短く表示してある。この基材2は木質板からなるもので、化粧シートが貼着されて床用化粧材(後述)を構成する。
本発明で使用する木質板からなる基材としては、床用化粧材の基材として適したものであれば特にその種類に限定はない。例えば、杉、檜、松、ラワン、チーク等の樹木からなる単板、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。また、これらの2つ以上を組み合わせた複合材を使用することもでき、例えば、合板の表面にMDFの薄膜を積層した複合材を挙げることができる。
図1に示す基材2は、4つの側面にそれぞれサネ加工が施されている。すなわち、この基材2は天面2aが長方形で、その天面に繋がる状態で4つの側面2b,2c,2d,2eを備えており、長辺側の一方の側面2bには厚さ方向の中央領域に雄サネ4bが形成され、その側面2bとは反対側の側面2dには厚さ方向の中央領域に雌サネ5dが形成されており、短辺側の一方の側面2eには厚さ方向の中央領域に雄サネ4eが形成され、その側面2eとは反対側の側面には厚さ方向の中央領域に雌サネ5cが形成されている。したがって、隣接する床用化粧材において雄サネと雌サネとを嵌合させることにより、複数の床用化粧材を互いに連結することができる。なお、図1では、雄サネ及び雌サネの断面形状は角柱状であるが、半円形状、三角柱状等であってもよい。
また、図1に示す基材2は、床用化粧材同士の当接部分にV字形の溝を形成するように、天面2aにおける長辺及び短辺のすべての端部に傾斜部分2a’を設けている。この傾斜部分2a’は基材2における端部を斜めに切除することにより形成する。この切削加工はギャングソー、テノーナ等の切削具を使用して行う。
なお、図1に示す基材2では、天面2aを構成する4辺のすべてに直線状の傾斜部分2a’を設けたが、長辺側の2辺にのみ傾斜部分を設けてもよい。また、直線状に面取りして傾斜部分を設けるのに代えて、天面を構成する4辺の一部又は全部を丸く面取りしたものでもよい。すなわち、辺を構成する直角形状を湾曲形状(角をなくす)としたものでもよい。この場合には、床用化粧材は柔らか味のある意匠性を具備する。なお、本発明で使用する基材は、このような面取りを施したものに限定されないことは言うまでもない。
基材に貼着する化粧シートとしては、床用化粧材の分野で用いられているものが幅広く使用できる。例えば、1)基材シート上に絵柄層(ベタインキ層、柄インキ層等)を積層した化粧シート、2)前記1)の化粧シートの裏面にバッカー層(厚さ100μm以上の合成樹脂層)を積層した化粧シート、等が挙げられる。この化粧シートについては後述する。
化粧シートは公知の接着剤を使用して基材に積層する。例えば、水性エマルジョン系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤、反応性ホットメルト系接着剤等の中から好適なものを選択して使用することができる。
図2は本発明に係る床用化粧材の参考例を示すもので、図2(a)は図1の基材に化粧シートを貼着してなる床用化粧材のコーナー部を拡大して示す説明図、図2(b)は図2(a)に対応した化粧シートの展開図である。
図2(a)の床用化粧材A1 は、基材2の天面からはみ出すサイズの化粧シート10を使用している。すなわち、図2(b)の化粧シート10は、点線a,bで挟まれる細長い部分が基材2の傾斜部分2a’に対応しており、点線bより外側の部分が天面からはみ出した側面貼付片である。そして、化粧シート10には基材2の天面の各コーナーに対応する個所からそれぞれ外向きの切込(切込線11)が形成されている。この例では長辺側と短辺側に同じ幅の側面貼付片12,13が設けられ、その側面貼付片12,13のコーナー部分には、基材2のコーナーに対応する個所から45度方向に1本の切込線11が形成されている。
化粧シート10に切込線11を形成するには、基材2の天面に化粧シート10を接着剤で貼り合わせた後、抜き金型を用いて切込線11を打ち抜く。そして、化粧シート10の側面貼付片12,13をラッピング加工により別々に折り込み、基材2の側面に貼着する。或いは、事前に切込線11を打ち抜いた化粧シート10を準備しておき、この化粧シート10を基材2の天面に貼り合わせた後、化粧シート10の側面貼付片12,13をラッピング加工により別々に折り込み、基材2の側面に貼着するようにしてもよい。ラッピング加工は、弾性ロールを使用して、まず長尺の2方向を同時に巻き込み、続いて短尺の2方向を巻き込む2工程の手順で行う。この時、傾斜部分2a’には化粧シート10をそのまま貼り付ける。側面貼付片12,13の接着は、側面貼付片12,13に新たに接着剤をコートしてもよいし、対応する基材2の側面に接着剤をコートしてもよいし、両者を併用しても構わない。また、側面貼付片12,13に適当な加熱を行うことにより、事前に化粧シート全体にコートされた接着剤を再活性させて貼着するようにしてもよい。
図2(a)の床用化粧材A1 では、化粧シート10における側面貼付片12,13がコーナーで重なり合うので、見切り(天面に垂直な辺)に隙間が生じず、この見切り部分の防水性が良好である。ただし、化粧シート10が重なり合って厚みが増し、床用化粧材同士の継ぎ目部分においてその重なり分が隙間となり、いわゆる「目隙(メスキ)」不良となる可能性があるので、この点を勘案してなるべく薄い化粧シートを使用することが望ましい。
図3は本発明に係る床用化粧材の別の参考例を示すもので、図3(a)は図1の基材に化粧シートを貼着してなる床用化粧材のコーナー部を拡大して示す説明図、図3(b)は図3(a)に対応した化粧シートの展開図である。
図3(a)の床用化粧材A2 は、基材2の天面からはみ出すサイズの化粧シート20を使用している。すなわち、図3(b)の化粧シート20は、点線a,bで挟まれる細長い部分が基材2の傾斜部分2a’に対応しており、点線bより外側の部分が天面からはみ出した側面貼付片である。そして、化粧シート20には基材2の天面の各コーナーに対応する個所からそれぞれ外向きの切込(切欠部21)が形成されている。この例では長辺側と短辺側に同じ幅の側面貼付片22,23が設けられ、その側面貼付片22,23のコーナー部分には、基材2のコーナーに対応する個所から短辺及び長辺に平行に延びる切取線22a,23aで区画された切欠部21が形成されている。
化粧シート20に切欠部21を形成するには、基材2の天面に化粧シート20を接着剤で貼り合わせた後、抜き金型を用いて切欠部21を打ち抜く。そして、化粧シート20の側面貼付片22,23をラッピング加工により別々に折り込み、基材2の側面に貼着する。或いは、事前に切欠部21を打ち抜いた化粧シート20を準備しておき、この化粧シート20を基材2の天面に貼り合わせた後、化粧シート20の側面貼付片22,23をラッピング加工より別々に折り込み、基材2の側面に貼着するようにしてもよい。ラッピング加工は、弾性ロールを使用して、まず長尺の2方向を同時に巻き込み、続いて短尺の2方向を巻き込む2工程の手順で行う。この時、傾斜部分2a’には化粧シート20をそのまま貼り付ける。また、側面貼付片22,23の接着は前記したのと同じようにして行えばよい。
図3(a)の床用化粧材A2 では、化粧シート20における側面貼付片22,23が見切りで突き合った状態になる。したがって、化粧シート20の重なりが生じるようなことはない。ただ、この見切りに隙間が生じる可能性がある場合は、予め基材2の見切り部分に防水処理を施しておくことが望ましい。
図4は本発明に係る床用化粧材のさらに別の参考例を示すもので、図4(a)は図1の基材に化粧シートを貼着してなる床用化粧材のコーナー部を拡大して示す説明図、図4(b)は図4(a)に対応した化粧シートの展開図である。
図4(a)の床用化粧材A3 は、基材2の天面からはみ出すサイズの化粧シート30を使用している。すなわち、図4(b)の化粧シート30は、点線a,bで挟まれる細長い部分が基材2の傾斜部分2a’に対応しており、点線bより外側の部分が天面からはみ出した側面貼付片である。そして、化粧シート30には基材2の天面の各コーナーに対応する個所からそれぞれ外向きの切込(切欠部31)が形成されている。この例では長辺側と短辺側に同じ幅の側面貼付片32,33が設けられ、その側面貼付片32,33のコーナー部分には、基材2のコーナーに対応する個所から短辺側に向けて90度の角度で広がる2本の切取線32a,33aにより区画された二等辺三角形状の切欠部31が形成されている。したがって、切取線32a,33aは同じ長さである。
化粧シート30に切欠部31を形成するには、基材2の天面に化粧シート30を接着剤で貼り合わせた後、抜き金型を用いて切欠部31を打ち抜く。そして、化粧シート30の側面貼付片32,33をラッピング加工により別々に折り込み、基材2の側面に貼着する。或いは、事前に切欠部31を打ち抜いた化粧シート30を準備しておき、この化粧シート30を基材2の天面に貼り合わせた後、化粧シート30の側面貼付片32,33をラッピング加工より別々に折り込み、基材2の側面に貼着するようにしてもよい。ラッピング加工は、弾性ロールを使用して、まず長尺の2方向を同時に巻き込み、続いて短尺の2方向を巻き込む2工程の手順で行う。この時、傾斜部分2a’には化粧シート30をそのまま貼り付ける。また、側面貼付片32,33の接着は前記したのと同じようにして行えばよい。
図4(a)の床用化粧材A3 では、化粧シート30における側面貼付片32,33が重ならず、しかも基材2における短辺側の側面で突き合った状態になる。このように、化粧シート30の側面貼付片32,33が基材2における見切り位置を跨いだ状態になるので、運搬時や施工時などの取扱い時にコーナー部分が何かに当たっても化粧シート30の端が引っ掛かって捲れるというような事態を防止できる。
図5は本発明に係る床用化粧材のさらに別の参考例を示すもので、図5(a)は図1の基材に化粧シートを貼着してなる床用化粧材のコーナー部を拡大して示す説明図、図5(b)は図5(a)に対応した化粧シートの展開図である。
図5(a)の床用化粧材A4 は、基材2の天面からはみ出すサイズの化粧シート40を使用している。すなわち、図5(b)の化粧シート40は、点線a,bで挟まれる細長い部分が基材2の傾斜部分2a’に対応しており、点線bより外側の部分が天面からはみ出した側面貼付片である。そして、化粧シート40には基材2の天面の各コーナーに対応する個所からそれぞれ外向きの切込(切欠部41)が形成されている。この例では長辺側と短辺側に同じ幅の側面貼付片42,43が設けられ、その側面貼付片42,43のコーナー部分には、基材2のコーナーに対応する個所から短辺側に向けて90度の角度で広がり、中程で「く」の字状に折れ曲がる2本の切取線42a,43aにより区画された切欠部41が形成されている。これらの切取線42a,43aは同じ長さで同じ形状であり、一方の切取線43aの先端は短辺と直角になっている。
化粧シート40に切欠部41を形成するには、基材2の天面に化粧シート40を接着剤で貼り合わせた後、抜き金型を用いて切欠部41を打ち抜く。そして、化粧シート40の側面貼付片42,43をラッピング加工により別々に折り込み、基材2の側面に貼着する。或いは、事前に切欠部41を打ち抜いた化粧シート40を準備しておき、この化粧シート40を基材2の天面に貼り合わせた後、化粧シート40の側面貼付片42,43をラッピング加工より別々に折り込み、基材2の側面に貼着するようにしてもよい。ラッピング加工は、弾性ロールを使用して、まず長尺の2方向を同時に巻き込み、続いて短尺の2方向を巻き込む2工程の手順で行う。この時、傾斜部分2a’には化粧シート40をそのまま貼り付ける。また、側面貼付片42,43の接着は前記したのと同じようにして行えばよい。
図5(a)の床用化粧材A4 では、化粧シート40における側面貼付片42,43が重ならず、基材2における短辺側の側面で突き合った状態になる。しかも、突き合った部分の先端側は化粧シート40の端縁に直角になっている。このように、化粧シート40の側面貼付片42,43が基材2における見切り位置を跨いだ状態になり、しかも側面貼付片42,43の突き合わせ箇所の先端が直角になっているので、運搬時や施工時などの取扱い時にコーナー部分や側面が何かに当たっても化粧シート40の端が引っ掛かって捲れるというような事態を防止できる。
図6は図4(b)の化粧シートの変形例である。この化粧シート50は、基材2の天面の各コーナーに対応する個所からそれぞれ外向きの切込(切欠部51)を形成したものである。すなわち、長辺側と短辺側に同じ幅の側面貼付片52,53が設けられ、その側面貼付片52,53のコーナー部分には、基材2のコーナーに対応する個所から短辺側に向けて90度の角度で広がる2本の湾曲した切取線52a,53aにより区画された切欠部51が形成されている。この場合、切取線52a,53aは同じ形状で同じ長さである。この化粧シート50を基材2に貼着した床用化粧材は図4(a)の床用化粧材A3 と同様の効果を発揮する。
図7は図5(b)の化粧シートの変形例である。この化粧シート60は、基材2の天面の各コーナーに対応する個所からそれぞれ外向きの切込(切欠部61)を形成したものである。すなわち、長辺側と短辺側に同じ幅の側面貼付片62,63が設けられ、その側面貼付片62,63のコーナー部分には、基材2のコーナーに対応する個所から短辺側に向けて90度の角度で湾曲した形状に広がり、中程で「く」の字状に折れ曲がる2本の切取線62a,63aにより区画された切欠部61が形成されている。これらの切取線62a,63aは同じ長さで同じ形状であり、一方の切取線63aの先端は短辺と直角になっている。この化粧シート60を基材2に貼着した床用化粧材は図5(a)の床用化粧材A4 と同様の効果を発揮する。
本発明の床用化粧材は、図1に示すような側面にサネ加工が施された基材2に対して化粧シートを貼着する。化粧シートは、天面とそれに続く側面の上部付近だけでなく、雄サネ2及び雌サネ3にかかるように、サネ加工された一組の対向する辺の側面にも折り込むように貼着してもよい。例えば、雄サネ2の付け根に至るまで化粧シートを折り込んで貼着してもよいし、雄サネ2の天面を覆うように化粧シートを折り込んで貼着してもよいし、雄サネ2全体を覆うように、化粧シートを折り込んで貼着してもよい。また、雌サネ3の入口まで化粧シートを折り込んで積層してもよいし、雌サネ3の内部まで覆うように貼着してもよい。
このように、サネ加工された側面にも化粧シートを折り込むように貼着することにより、床用化粧材の耐吸湿性を向上させることができる。すなわち、床面施工後に床用化粧材どうしの連結部分の隙間から侵入する水分が低減されるので、吸湿に基づく床用化粧材の変形、変質等を抑制することができる。
図8〜図10により、側面にサネ加工が施された基材に化粧シートを貼着してなる床用化粧材の具体例を説明する。
図8は側面にサネ加工が施された基材に化粧シートを貼着してなる床用化粧材を示すもので、(a)はその概略平面図と4側面図、(b),(c)はそれぞれ(a)のA−A矢視図、B−B矢視図である。図9は基材に積層する化粧シートの平面図、図10(a),(b),(c),(d)はそれぞれ化粧シートのコーナー部に形成した切欠部の形状を例示した平面図である。
この床用化粧材1に用いている化粧シート3は、基材2に貼り付ける前の平面状の状態において、図9に示すように、基材2の天面に貼り付けるための天面貼付部3aと、その天面貼付部3aに連設され基材2の4側面に貼り付けるための4個の側面貼付片3b,3c,3d,3eとを備えている。互いに隣接する側面貼付部は、両者の間に位置する天面のコーナーを頂点とするように化粧シート3に形成された切欠部6a,6b,6c,6dによって切り離されており、各側面貼付片3b,3c,3d,3eは互いに干渉することなく、対応する基材側面2b,2c,2d,2eに貼り付け可能となっている。さらに、各切欠部を挟んで位置する隣接した側面貼付片の端縁形状は、その側面貼付片を対応する側面に貼り付けた時に互いに重なることなく端縁同士がほぼ接する位置となるように定められている。例えば図10(c)に示すように、雄サネ4b,4eを備えた側面2b,2eに貼り付けるための側面貼付片3b,3eの互いに隣接した端縁形状は、雄サネ4b,4eに貼り付ける領域に台形状に突出した部分3ba,3eaを有する形状となっており、この台形状の領域を雄サネ4b,4eに貼り付けることで、両雄サネ4b,4eの交差する領域にまで、側面貼付片3b,3eの端縁同士を重ね合わせることなく、互いに突き合わせたような状態に貼り付けることができる。図8において、側面2b,2eの交差する角部の符号7で示す実線は、側面貼付片3b,3eの端縁同士の突き合わせ位置を示すものである。
また、図10(c)において、側面貼付片3b,3eの端縁の先端領域(裏面に貼り付ける領域)には面取りを施して傾斜3bb,3ebを設けている。この傾斜3bb,3ebを設けたことで、側面貼付片3b,3eの先端領域を裏面に貼り付けた際に端縁同士を重ね合わせることなく、互いに突き合わせたような状態に貼り付けることができる。なお、側面貼付片3b,3eの先端領域を裏面に貼り付ける場合、基材の裏面側ではシートの重なりがあってもさほど問題とはならないので、傾斜3bb,3ebの形成を省略し、端縁と側縁とが直交するようにしてもよい。また、図10(b)において、雄サネ5c,5dを備えた側面2c,2dに貼り付けるための側面貼付片3c,3dの互いに隣接した端縁形状は、雄サネ5c,5dの内面に貼り付ける領域に台形状の凹部3ca,3daを有する形状となっており、この領域を雄サネ5c,5dの交差する領域の内面に貼り付けることで、側面貼付片3c,3dの端縁同士を重ね合わせることなく、互いに突き合わせたような状態に貼り合わせることができる。また、側面貼付片3c,3dの端縁の先端領域に傾斜3cb,3dbを設けており、この傾斜3cb,3dbを設けたことで、側面貼付片3c,3dの先端領域を裏面に貼り付けた際に端縁同士を重ね合わせることなく、互いに突き合わせたような状態に貼り付けることができる。なお、この傾斜3cb,3dbの形成を省略してもよい。
図10(a)において、側面貼付片3d,3eの互いに隣接した端縁形状は、これらの側面貼付片3d,3eを対応する側面に貼り付けた時、側面2d,2eの角を挟んで端縁同士が隣接した状態となるように定められている。なお、この側面貼付片3d,3eの端縁の先端領域(裏面に貼り付ける領域)にも傾斜3dc,3ecを設け、この領域を基材裏面に貼り付けた際に端縁同士を重ね合わせることなく、互いに突き合わせたような状態に貼り付けることができる構成としているが、この傾斜の形成を省略してもよい。また、図10(d)において、側面貼付片3b,3cの互いに隣接した端縁形状は、これらの側面貼付片3b,3cを対応する側面に貼り付けた時、側面2b,2cの角を挟んで端縁同士が隣接した状態となるように定められている。なお、この側面貼付片3b,3cの端縁の先端領域(裏面に貼り付ける領域)にも傾斜3bc,3ccを設け、この領域を裏面に貼り付けた際に端縁同士を重ね合わせることなく、互いに突き合わせたような状態に貼り付けることができる構成としているが、この傾斜の形成を省略してもよい。
この形状の化粧シート3は、図8に示すように、4つの側面貼付片3b,3c,3d,3eを天面の各辺に沿って折り曲げ、対応する側面2b,2c,2d,2eの全域及び裏面の周縁領域に貼り付けることで、基材2をラッピングしている。この構成の床用化粧材1は、基材2の天面2aのみならず、4側面及び裏面の周縁部分を1枚の化粧シート3で覆っているので、きわめて見栄えがよく、しかも側面からの吸水も抑えられるため、高品質、高性能の製品となっている。さらに、裏面に貼り付けている化粧シートの側面貼付片の端縁は互いに近接してはいるが、重なっていないので段差は生じていない。このため、この床用化粧材1を並べて床面を形成する際、側面同士を良好に密着させて取り付けることができ、きわめて見栄えのよい床面を形成でき、しかも、雄サネ、雌サネを備えているので、これらを嵌合させて取り付けることができ、容易に見栄えよく施工できるといった利点を有している。
なお、上記した例では、4個の側面貼付片3b〜3eの端縁形状として図10に示すものを用いているが、端縁形状はこれに限るものではなく、隣接した側面貼付片を対応する側面に貼り付けた時に互いに重なることなく端縁同士がほぼ接する位置となるように、貼り付けることの可能な形状であれば、他の形状としてもよい。
また、上記した床用化粧材は、側面貼付片3b,3c,3d,3eを、対応する側面の雄サネの表面、雌サネの内面を含む全域及び基材裏面の周縁領域に貼り付けているが、側面貼付片の貼り付け領域はこれに限るものではなく、図11に示すように適宜変更することが可能である。
雌サネ5dを有する側面2dに対する側面貼付片3dの貼り付け領域は、図11(a)に示すように、雌サネの内面を含む側面全域(ただし、裏面には貼り付けない)としてもよいし、図11(b)に示すように、側面2dの、天面から雌サネに到る領域及び雌サネ内面全域としてもよいし、図11(c)に示すように、側面2dの、天面から雌サネに到る領域及び雌サネの上側の内面及び側面領域としてもよいし、図11(d),(e)に示すように、側面2dの、天面から雌サネに到る領域及び雌サネの上側の内面領域としてもよいし、図11(f)に示すように、側面2dの、天面から雌サネに到る領域のみとしてもよい。雄サネ4bを有する側面2bに対する側面貼付片3bの貼り付け領域は、図11(a)に示すように、雄サネの表面を含む側面全域(ただし、裏面には貼り付けない)としてもよいし、図11(b)に示すように、側面2bの、天面から雄サネに到る領域及び雄サネの表面全域としてもよいし、図11(c)に示すように、側面2bの、天面から雄サネに到る領域及び雄サネの上側の表面及び側面領域としてもよいし、図11(d)に示すように、側面2bの、天面から雄サネに到る領域及び雄サネの表面領域としてもよいし、図11(e),(f)に示すように、側面2bの、天面から雄サネに到る領域のみとしてもよい。また、短辺側の側面2c,2eについても、側面貼付片3c,3eの貼り付け領域は、図11に示す長辺側の側面2b,2dに対する側面貼付片の貼り付け領域と同様に、種々変更可能である。さらに、4側面2b,2c,2d,2eに対する側面貼付片の貼り付け領域は、全側面について同一としてもよいし、側面によって異なるようにしてもよい。例えば、長辺側の側面については、側面貼付片を側面全域及び裏面周縁領域まで貼り付けるが、短辺側の側面については、裏面には貼り付けず、側面全域のみに貼り付ける構成としてもよい。いずれにしても、床用化粧材1を床面に貼り付けて使用する際のみばえ良好とする上から、側面貼付片は少なくとも側面において天面に隣接する領域に貼り付けておけばよい。
図8〜図11に示す床用化粧材1は、基材2の雄サネを有する側面の断面形状、雌サネを有する側面の断面形状を、天面2aに直角な側面の中央領域に雄サネ或いは雌サネを形成した単純な形状としているが、基材2に形成する雄サネ、雌サネの形状はこれに限るものではない。
図12は側面に異なる形状のサネ加工が施された床用化粧材を示すもので、(a)はその概略平面図と4側面図、(b),(c)はそれぞれ(a)のC−C矢視図、D−D矢視図である。
図12に示す床用化粧材1Aも、基材2Aと、その基材2Aの天面、4側面及び裏面の周縁領域に貼り付けられた1枚の化粧シート3とで構成されている。ここで用いている基材2Aも、長辺側の側面2bと短辺側の側面2eに雄サネ4b,4eを備え、他の側面2c,2dに雌サネ5c,5dを備えているが、雄サネ4b,4eを有する側面2b,2eの断面形状を、雄サネに関して天面側の側面よりも反対側の側面が引っ込んだ形状としており、且つ、雄サネを有する面とは反対側の、雌サネ5c,5dを有する側面2c,2dの断面形状を、雌サネに関して天面側の側面よりも反対側の側面が突出した形状としたものである。このような断面形状の側面2b,2eと側面2c,2dを用いた場合でも、雄サネを有する側面と雌サネを有する側面を嵌合させて床面に取り付けることができる。このような組合せにするのは、雌サネの下部を長くすることで、床用化粧材をくぎ打ちして固定する際に、くぎを打ちやすくするためである。
この床用化粧材1Aに用いている化粧シート3も、基材2Aに貼り付ける前の平面状の状態において、基材2Aの天面に貼り付けるための天面貼付部3aと、その天面貼付部3aに連設され基材2Aの4側面に貼り付けるための4個の側面貼付片3b,3c,3d,3eとを備えており、互いに隣接する側面貼付部は、両者の間に位置する天面のコーナーを頂点とするように化粧シート3に形成された切欠部によって切り離されており、各側面貼付片3b,3c,3d,3eは互いに干渉することなく、対応する基材側面2b,2c,2d,2eに貼り付け可能となっている。さらに、各切欠部を挟んで位置する隣接した側面貼付片の端縁形状は、その側面貼付片を対応する側面に貼り付けた時に互いに重なることなく端縁同士がほぼ接する位置となるように定められている。これにより、化粧シート3で基材2Aの天面及び4側面の全域をシートの重なりによる段差を生じることなく覆うことができ、この床用化粧材1Aも、図8〜図11に示す床用化粧材1と同様な利点を有している。
なお、図12に示す床用化粧材1Aにおいても、側面貼付片の貼り付け領域は図示したものに限定されるものではなく、例えば図13(a)〜(f)に示すように適宜変更することが可能である。
本発明の床用化粧材は、基材の裏面に裏打ちシートを積層してあってもよい。裏打ちシートは、例えば、床面施工する下地の凸凹が大きい場合に、その影響を緩和する作用、床用化粧材の遮音性を高める作用、防水性を高める作用等を発揮するものが好ましい。裏打ちシートの材質は、要求性能に応じて適宜選択できるが、通常は木材、樹脂等が用いられる。裏打ちシートの厚さも、下地の性状、要求性能に応じて適宜設定すればよい。裏打ちシートを床用化粧材の裏面に積層するに際しては、接着剤を使用してラミネートすればよい。
本発明で使用する化粧シート(バッカー層なしが前提)としては、例えば、基材シート上に絵柄層(ベタインキ層、柄インキ層等)を有し、さらには透明樹脂層及び表面保護層を順に有するものが好ましい。
基材シートとしては、1)薄葉紙、上質紙、クラフト紙、和紙、チタン紙、樹脂含浸紙、紙間強化紙等の紙、2)木質繊維、ガラス繊維、石綿、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維等からなる織布又は不織布、3)ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン等の合成樹脂製シートの1種又は2種以上の積層体が挙げられる。
基材シートの厚さは20〜300μm程度が好ましい。また、基材シートは、着色されていてもよいし非着色でもよい。また、表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよい。
絵柄層は、ベタインキ層と柄インキ層の少なくとも一方から構成される。絵柄層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷法により形成される。ベタインキ層は、着色インキのベタ印刷により得られる。柄インキ層の模様は、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様等が挙げられる。
絵柄層の形成に用いるインキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものが使用できる。この中でも、環境問題、被印刷面との密着性等の観点より、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上の混合物が好ましい。
透明樹脂層は、透明性のある樹脂層であれば特に限定されず、例えば、透明性のある熱可塑性樹脂により好適に形成できる。具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
透明樹脂層は着色されていてもよい。着色する場合は、熱可塑性樹脂に着色剤を添加すればよい。着色剤としては、絵柄層で用いる顔料又は染料が使用できる。また、透明樹脂層に、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えば、ゴム)等の各種の添加剤を加えてもよい。
表面保護層は、化粧シートに要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられる。この表面保護層を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂が好ましい。特に、電離放射線硬化型樹脂は高い表面硬度、生産性等の観点から好ましい。
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
この熱硬化型樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミノ等がエポキシ樹脂に添加でき、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば、熱硬化型樹脂の溶液をロールコート法、グラビアコート法等の塗布法で塗布し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。溶液の塗布量としては、固形分で概ね5〜30μm、好ましくは15〜25μm程度である。
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー又はモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂、シロキサン等の珪素樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
電離放射線としては、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも紫外線、電子線が好ましい。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ等の光源が挙げられ、使用する紫外線の波長は190〜380nm程度である。電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100〜1000keV程度が好ましく、100〜300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2〜15Mrad程度が好ましい。
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイド、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N、N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
光開始重合剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度である。
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂の溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の塗布法で塗布すればよい。溶液の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μm、好ましくは15〜25μm程度である。
電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、耐擦傷性、耐摩耗性をさらに付与する場合には、無機充填材を配合すればよい。無機充填材としては、例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイアモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。この無機充填材の添加量は、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して1〜80重量部程度である。
各層の積層は、例えば、基材シートの一方の面に印刷により絵柄層(ベタインキ層、柄インキ層)を順に印刷により形成した後、絵柄層上に2液硬化型ウレタン樹脂等の公知のドライラミネーション用接着剤を介して透明樹脂層をドライラミネーション法、Tダイ押出し法等で積層し、さらに表面保護層を形成する方法により行える。
表面保護層側からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成してもよい。凹凸模様は、加熱プレス、ヘアライン加工等により形成できる。凹凸模様としては、導管溝、石版表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等が挙げられる。
化粧シートは、裏面にバッカー層(厚さ100μm以上の合成樹脂層)を積層してあってもよい。このバッカー層は、厚さ100μm以上であればよいが、250μm以上であることが好ましい。上限は800μm(好ましくは500μm)程度である。バッカー層を有する場合には、床用化粧材の表面に均一な平滑感、良好な耐擦傷性が加わる。また、床用化粧材に良好な意匠性(無垢感及び立体感)も付与できる。
化粧シートの裏面に積層するバッカー層は単層でも複層でもよい。そして、バッカー層の物理的特性としては、降伏点荷重が9kgf以上、引張弾性率が50kgf/mm2 以上、降伏伸び率が3〜8%程度であることが好ましい。使用する合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(好ましくは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート)、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート(例えば、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノール等で置換したポリエチレンテレフタレート;イーストマンケミカルカンパニー製「PET−G」)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアレート等のポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単一でも混合物でもよい。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明による床用化粧材は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。