以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同じものには同じ符号を付け、その説明を省略する場合がある。
図1は、本発明の第1の実施形態の信号抽出装置の構成を示したブロック図である。図1において、信号抽出装置は、空中線1、受信器2、周波数分析回路3、周波数スペクトラム微分回路4、信号抽出回路5、出力器6および制御器7を含む。ここで、受信器2、周波数分析回路3、周波数スペクトラム微分回路4、信号抽出回路5および出力器6は、信号処理回路8を構成する。
空中線1は、広帯域の電波信号を受信し、その電波信号を電気信号である受信信号に変換する。この受信信号には、雑音と元の信号とが含まれている。以下、元の信号を変調信号と称する。
受信器2は、空中線1にて変換された受信信号を受信し、その受信信号を、後段の回路が最適に動作するような形式に変換する。例えば、受信器2は、受信信号を、中間周波数帯信号への周波数ダウンコンバートを行い、その中間周波帯信号を増幅してする。
周波数分析回路3は、分析手段の一例である。周波数分析回路3は、受信器2にて形式が変換された受信信号のパワーを周波数ごとに求め、その受信信号のパワーを周波数ごとに示した周波数スペクトラムP(f)を生成する。なお、以下では、受信信号のパワーを周波数ごとに求める処理を周波数分析と称することもある。また、周波数スペクトラムP(f)は、周波数fの関数である。
ここで、周波数分析回路3は、周波数分析を所定の離散時間ごとに行う。
また、周波数分析回路3は、一回の周波数分析の結果を周波数スペクトラムP(f)として生成してもよいが、周波数スペクトラムP(f)を平滑化するために、複数回の周波数分析の結果を平均することが望ましい。つまり、周波数分析回路3は、予め定められた平均回数だけ受信信号のパワーを周波数ごとに求め、その回数分の受信信号のパワーを周波数ごとに平均し、その受信信号の平均値を周波数ごとに示した周波数スペクトラムを生成することが望ましい。
また、周波数分析回路3は、周波数スペクトラムP(f)を平滑化させるために、生成した周波数スペクトラムP(f)をデジタルフィルタで平滑化してもよい。このとき、周波数分析回路3は、複数回の周波数分析のそれぞれの結果を周波数ごとに平均し、その平均結果を周波数スペクトラムP(f)として生成し、さらに、その周波数スペクトラムP(f)をデジタルフィルタで平滑化してもよい。
以下では、周波数分析回路3は、平均回数Nだけ周波数分析を行い、その周波数分析の結果を平均したことにする。
周波数スペクトラム微分回路4は、微分手段の一例である。周波数スペクトラム微分回路4は、周波数分析回路3にて生成された周波数スペクトラムP(f)の周波数に対する微分値dP(f)/dfを計算する。
ここで、周波数スペクトラムP(f)の周波数fは、離散値であり、各周波数fの間隔は、信号抽出装置に応じて予め定められている。以下、この各周波数fの間隔を所定周波数間隔と称する。
従って、周波数スペクトラム微分回路4は、周波数スペクトラムP(f)に対する所定周波数間隔ごとの差分商を周波数スペクトラムP(f)の微分値dP(f)/dfとして計算する。
また、周波数スペクトラム微分回路4は、受信信号のパワーを、単位をワット[W]からデシベル[dBm]に変換して計算する。つまり、周波数スペクトラム微分回路4は、周波数スペクトラムP(f)の周波数ごとのパワーP[ワット]をパワー10logP[デシベル]に変換してから、周波数スペクトラムP(f)の周波数に対する微分値dP(f)/dfを計算する。
図2は、周波数スペクトラムP(f)と、周波数スペクトラムP(f)の微分値dP(f)/dfの一例を示した説明図である。図2において、周波数スペクトラムP(f)には、受信信号に含まれる信号AないしDのそれぞれが存在する周波数区間が示されている。なお、信号AないしDは、変調信号の一例である。
信号抽出回路5は、周波数スペクトラム微分回路4にて計算された微分値dP(f)/dfと、上限しきい値および下限しきい値とを用いて変調信号を抽出する。上限しきい値は、正のしきい値の一例であり、正の値を有する。下限しきい値は、負のしきい値の一例であり、負の値を有する。ここで、信号の抽出とは、信号が存在する周波数区間を決定することである。なお、信号の抽出やしきい値の決定についての詳細な説明は、後述する。
出力器6は、信号抽出回路5の抽出結果を出力する。例えば、出力器6は、その抽出結果を表示する。なお、抽出結果は、変調信号が存在する周波数区間を示す。
制御器7は、空中線1および信号処理回路8の各部を制御する。
次に変調信号の抽出について説明する。
図3は、信号抽出装置が行なう変調信号の抽出の原理を説明するための説明図である。図3では、変調信号が存在する周波数区間付近の周波数スペクトラムP(f)と、その周波数スペクトラムP(f)の微分値dP(f)/dfとが示されている。
微分値dP(f)/dfには、正のピークと負のピークが存在する。また、正のピークの周波数と負のピークの周波数の間には、微分値dP(f)/dfが正から負に変化する周波数が存在する。なお、このような特徴は、変調信号の変調方式に依存しない。
また、ノイズフロアにおいても、微分値dP(f)/dfには、正のピーク、負のピーク、および、値が正から負に変化する周波数が多くある。しかしながら、ノイズフロアにおけるこれらの値は、通常小さいため、上限しきい値および下限しきい値を用いることで、ノイズフロアにおけるこれらの値を除外することができる。また、上限しきい値および下限しきい値は、ノイズフロアの統計的な性質から自動的に決定することができる。これらについては後述する。
信号抽出回路5は、これら特徴を利用して、例えば、以下のように、信号の抽出を実施する。
先ず、信号抽出回路5は、微分値dP(f)/dfの値を周波数が低い方から高い方へ順に確認し、上限のしきい値以上の正のピークの周波数を検出する。続いて、信号抽出回路5は、その検出した周波数の後に現れる、微分値dP(f)/dfが正の値から負の値に変化する周波数を検出する。
そして、信号抽出回路5は、微分値dP(f)/dfが正の値から負の値に変化する周波数の後に現れる、下限のしきい値以下の負のピークの周波数を検出する。
これにより、図3で示した、正のピークの周波数、微分値dP(f)/dfが正の値から負の値に変化する周波数、および、負のピークの周波数の三点が特定される。以下、正のピークおよび負のピークに挟まれる、微分値dP(f)/dfが正の値から負の値に変化する周波数を中心周波数と称する。なお、中心周波数という呼び名は、便宜上のものであり、受信信号の真の中心周波数ではない。
さらに、信号抽出回路5は、微分値dP(f)/dfの値を、正のピークの周波数から低い周波数に順に確認して、正のピークの周波数より低い周波数で微分値dP(f)/dfが正の値から負の値に変化し、かつ、正のピークの周波数に最も近い周波数を特定する。以下、この周波数を下限周波数flと称する。
また、信号抽出回路5は、微分値dP(f)/dfの値を、負のピークの周波数から高い周波数の方に順に確認して、負のピークの周波数より高い周波数で微分値dP(f)/dfが負の値から正の値に変化し、かつ、負のピークの周波数に最も近い周波数を特定する。以下、この周波数を上限周波数fuと称する。
そして、信号抽出回路5は、その特定した周波数に挟まれる周波数区間を、変調信号が存在する周波数区間として決定する。
これにより、信号抽出回路5は、受信信号から変調信号を抽出することが可能になる。
次に、動作を説明する。
先ず、図4を用いて信号抽出装置の全体の動作について説明する。図4は、この動作例を説明するためのフローチャートである。
ステップ401では、電波信号は、空中線1で受信信号に変換され、その受信信号は、受信器2に入力される。受信器2は、受信信号を受信すると、その受信信号を所望の形式に変換し、その形式を変換した受信信号を周波数分析回路3に出力する。周波数分析回路3は、受信信号を受信すると、ステップ402を実行する。
ステップ402では、周波数分析回路3は、受信信号の周波数分析を所定の離散時間ごとに平均回数だけ行い、その周波数分析のそれぞれの分析結果を周波数ごとに平均する。周波数分析回路3は、その平均結果を周波数スペクトラムP(f)として生成する。
周波数分析回路3は、その周波数スペクトラムP(f)を周波数スペクトラム微分回路4に出力する。周波数スペクトラム微分回路4は、周波数スペクトラムP(f)を受信すると、ステップ403を実行する。
ステップ403では、周波数スペクトラム微分回路4は、周波数スペクトラムP(f)を周波数で微分して、微分値dP(f)/dfを計算する。なお、周波数スペクトラム微分回路4は、周波数の低い方から順に微分値dP(f)/dfを計算するものとする。
周波数スペクトラム微分回路4は、その微分値dP(f)/dfを信号抽出回路5に出力する。信号抽出回路5は、微分値dP(f)/dfを受信すると、ステップ404を実行する。
ステップ404では、信号抽出回路5は、微分値dP(f)/dfから、上限しきい値および下限しきい値を用いて変調信号を抽出し、その抽出結果を出力器6に出力する。抽出結果は、変調信号が存在する周波数区間を示す。なお、信号抽出回路5の動作の詳細な説明は、後述する。
出力器6は、抽出結果を受信すると、ステップ405を実行する。
ステップ405では、出力器6は、抽出結果を信号処理回路8の外部に出力して、動作を終了する。
次に、図5ないし図8を用いて信号抽出回路5の動作を詳細に説明する。図5は、信号抽出回路5の動作例を説明するためのフローチャートである。また、図6ないし図8は、周波数スペクトラムP(f)と、周波数スペクトラムP(f)の微分値dP(f)/dfとの一例を示した説明図である。以下、図6で示された微分値dP(f)/dfから変調信号を抽出する動作を説明する。
ステップ501では、信号抽出回路5は、周波数スペクトラムP(f)の微分値dP(f)/dfの最も低い周波数の値をチェックし、その後、ステップ502を実行する。
ステップ502では、信号抽出回路5は、チェックした値が上限しきい値以上であるか否かを判定する。信号抽出回路5は、その値が上限しきい値以上であると、ステップ504を実行し、その値が上限しきい値未満であると、ステップ503を実行する。
ステップ503では、信号抽出回路5は、次に高い周波数の微分値dP(f)/dfの値をチェックする。その後、ステップ502が実行される。
なお、次に高い周波数とは、直前にチェックした周波数から所定周波数間隔だけ高い周波数のことである。
ステップ504では、信号抽出回路5は、チェックした微分値dP(f)/dfの値を直前値として記憶し、チェックした微分値dP(f)/dfの周波数を直前周波数として記憶する。なお、信号抽出回路5は、既に直前値および直前周波数が記憶されている場合、直前値および直前周波数を上書きする。
そして、信号抽出回路5は、次に高い周波数の微分値dP(f)/dfの値をチェックする。その後、ステップ505が実行される。
ステップ505では、信号抽出回路5は、チェックした値を自回路に記憶されている直前値と比較して、そのチェックした値が直前値より小さいか否かを判定する。信号抽出回路5は、そのチェックした値が直前値より小さいと、ステップ506を実行し、そのチェックした値が直前値以上であると、ステップ504を実行する。
なお、直前値は一回前にチェックされた微分値dP(f)/dfの値なので、チェックされた微分値dP(f)/dfの値が直前値より小さい場合、その直前値が、微分値dP(f)/dfの正のピーク値となる。
ステップ506では、信号抽出回路5は、記憶している直前値を、正のピーク値として記憶し、かつ、記憶している直前周波数を、正のピークの周波数として記憶する。その後、ステップ507が実行される。
なお、ステップ504からステップ506までは、上限しきい値以上の正のピーク値となる微分値dP(f)/dfの周波数を検出する動作を説明している。
上限しきい値以上の正のピークは、図6では、一つだけだが、実際には、図7で示した微分値dP(f)/dfのように、複数存在する可能性がある。このように上限しきい値以上の正のピークが複数ある場合、信号抽出回路5は、その複数のピークの中で最も大きい値のピークを、真の正のピークとする。
ここでは、正のピークの候補が一つであるとして説明する。
ステップ507では、信号抽出回路5は、次に高い周波数の微分値dP(f)/dfの値をチェックし、その後、ステップ508を実行する。
ステップ508では、信号抽出回路5は、チェックした微分値dP(f)/dfの値が負か否かを判定する。信号抽出回路5は、微分値dP(f)/dfの値が負でないと、ステップ507を実行し、微分値dP(f)/dfの値が負であると、ステップ509を実行する。
ステップ509では、信号抽出回路5は、値をチェックした微分値dP(f)/dfの周波数と、一回前に値をチェックした周波数との中間の周波数を、微分値dP(f)/dfが正から負に変化する中心周波数として求める。例えば、信号抽出回路5は、値をチェックした微分値dP(f)/dfの周波数から、所定周波数間隔の半分を差し引いた値を、中心周波数として求める。
信号抽出回路5は、求めた中心周波数を記憶し、その後、ステップ510を実行する。
なお、ステップ507からステップ509までは、中心周波数を検出する動作を説明している。上限しきい値および下限しきい値の間の中心周波数は、図6では、一つだけだが、実際には、図8で示した微分値dP(f)/dfのように、複数存在する可能性がある。このように上限しきい値および下限しきい値の間の中心周波数が複数ある場合、信号抽出回路5は、その複数の中心周波数の中で、最も周波数が低い中心周波数(A点)と、最も周波数が高い中心周波数(B点)と中間を真の中心周波数とする。
ここでは、中心周波数の候補が一つであるとして説明する。
ステップ510では、信号抽出回路5は、次に高い周波数の微分値dP(f)/dfの値をチェックし、その後、ステップ511を実行する。
ステップ511では、信号抽出回路5は、チェックした値が下限しきい値以下か否かを判定する。信号抽出回路5は、その値が下限しきい値以下であると、ステップ512を実行し、その値が下限しきい値より大きいと、ステップ510を実行する。
ステップ512では、信号抽出回路5は、チェックした微分値dP(f)/dfの値を直前値として記憶し、そのチェックした微分値dP(f)/dfの周波数を直前周波数として記憶する。
そして、信号抽出回路5は、次に高い周波数の微分値dP(f)/dfの値をチェックし、その後、ステップ513を実行する。
ステップ513では、信号抽出回路5は、チェックした値を自回路に記憶されている直前値と比較して、そのチェックした値が直前値より大きいか否かを判定する。信号抽出回路5は、その値が直前値より大きいと、ステップ514を実行し、その値が直前値以下であると、ステップ512を実行する。
なお、直前値は一回前にチェックされた微分値dP(f)/dfの値なので、チェックされた微分値dP(f)/dfの値が直前値より大きい場合、その直前値が、微分値dP(f)/dfの負のピークとなる。
ステップ514では、信号抽出回路5は、記憶している直前値を、負のピーク値として記憶し、かつ、記憶している直前周波数を、負のピークの周波数として記憶する。その後、ステップ515が実行される。
なお、ステップ512からステップ514までは、下限しきい値以下の負のピーク値となる微分値dP(f)/dfの周波数を検出する動作を説明している。下限しきい値以下の負のピークは、図6では、一つだけだが、実際には、図7で示した微分値dP(f)/dfのように、複数存在する可能性がある。このように下限しきい値以下の負のピークが複数ある場合、信号抽出回路5は、その複数のピークの中で最も小さい値のピークを、真の負のピークとし、その真の負のピークの周波数を、真の負のピークの周波数とする。
ここでは、正のピークと同様に、負のピークの候補が一つであるとして説明する。
ステップ514が終了した時点で、信号抽出回路5は、正のピークの周波数、中心周波数、および、負のピークの周波数の三つの周波数を記憶した。
ステップ515では、信号抽出回路5は、その記憶した正のピークの周波数、中心周波数および負のピークの周波数に基づいて、変調信号が存在する周波数区間を決定する。その後、ステップ502が実行される。
次に、図9を用いて、ステップ515で信号抽出回路5が変調信号が存在する周波数区間を決定する際の動作を詳細に説明する。図9は、この動作を説明するためのフローチャートである。
先ず、ステップ901では、信号抽出回路5は、正のピークの周波数の次に低い周波数の微分値P(f)/dfの値をチェックする。その後、ステップ902が実行される。
ステップ902では、信号抽出回路5は、チェックした値が負か否かを判定する。信号抽出回路5は、チェックした値が負であると、ステップ904を実行し、チェックした値が負でないと、ステップ903を実行する。
ステップ903では、信号抽出回路5は、次に低い周波数の微分値P(f)/dfの値をチェックする。その後、ステップ902が実行される。なお、ここで、次に低い周波数とは、直前にチェックした周波数から所定周波数間隔だけ低い周波数のことである。
ステップ904では、信号抽出回路5は、値をチェックした微分値dP(f)/dfの周波数と、一回前に値をチェックした周波数との中間の周波数を、下限周波数flとして記憶する。例えば、信号抽出回路5は、値をチェックした微分値dP(f)/dfの周波数に、所定周波数間隔の半分を加えた値を、中間の周波数として求める。その後、ステップ905が実行される。
ステップ905では、信号抽出回路5は、負のピークの周波数の次に高い周波数の、微分値P(f)/dfの値をチェックする。その後、ステップ906が実行される。
ステップ906では、信号抽出回路5は、チェックした値が正か否かを判定する。信号抽出回路5は、チェックした値が正であると、ステップ908を実行し、チェックした値が正でないと、ステップ907を実行する。
ステップ907では、信号抽出回路5は、次に高い周波数の微分値P(f)/dfの値をチェックし、その後、ステップ906を実行する。
ステップ908では、信号抽出回路5は、値をチェックした微分値dP(f)/dfの周波数と、一回前に値をチェックした周波数との中間の周波数を、上限周波数fuとして記憶する。例えば、信号抽出回路5は、値をチェックした微分値dP(f)/dfの周波数から、所定周波数の半分を差し引いた値を、中間の周波数として求める。
そして、信号抽出回路5は、下限周波数flおよび上限周波数fuで挟まれた周波数区間を変調信号が存在する周波数区間として決定する。
次に、制御器7が上限しきい値および下限しきい値を決定する処理について説明する。
図6で示したように、ノイズフロアにおいても、微分値dP(f)/dfが正から負に変化する周波数が多くある。このようなノイズフロアの周波数ごとに雑音は、通常、ガウス雑音である。
ここで、周波数ごとのガウス雑音のパワーは、ワイブル分布に従うことが知られている。また、ある分布に従う確率変数の平均値の分布は、中心極限定理により、平均値を求めるためのサンプル数が大きくなるに従い、正規分布に近づくことが知られている。
周波数分析回路3は、平均回数分の周波数分析のそれぞれの結果を周波数ごとに平均し、その平均結果を周波数スペクトラムP(f)として生成している。この平均回数が十分大きければ、ノイズフロアにおける周波数ごとの受信信号のパワーのそれぞれは、正規分布に従うと近似することが可能になる。
したがって、実用上、全ての確率変数が平均の両側の標準偏差の3倍以内にあると考えれば、周波数スペクトラムP(f)のノイズフロアにおける周波数ごとのパワーの最大値と最小値を推定することができる。さらに、その最大値と最小値の差は、周波数スペクトラムP(f)のノイズフロアにおけるパワーに依存しない。このことから、周波数分析回路3は、上限しきい値および下限しきい値を自動的に決定することができる。以下、上限しきい値および下限しきい値の決定について、具体的に数式を用いて説明する。
一般に確率変数XおよびYのそれぞれが正規分布に従う場合、数1で定義される確率変数Rは、数2で表される確率密度関数F(R)を有するワイブル分布に従う。
なお、αは尺度母数、mは尺度パラメータである。このワイブル分布の平均μと分散σ2は、数3および数4で表される。なお、Γは、ガンマ関数である。
ここで、周波数スペクトラムP(f)のノイズフロアにおける周波数ごとのパワー、つまり、雑音のパワーについて考える。ある周波数fcの雑音V(t)は、数5で表される。なお、tは、時間である。
ここで、雑音V(t)は、ガウス雑音であるので、雑音V(t)の係数x(t)およびy(t)は、正規ガウス分布に従っている。なお、cは、受信信号の速度である。このとき、雑音のパワーV2(t)は、数6で表される。
数6で表された雑音のパワーV2(t)は、数1において尺度パラメータmが1の場合に相当するので、ワイブル分布に従う。従って、雑音のパワーV2(t)の平均μおよび分散σ2は、数3および数4のそれぞれの尺度パラメータmに1を代入することで得られる。数3および数4のそれぞれに、m=1を代入すると、数7および数8が得られる。
また、標準偏差は、分散の平方根であるので、雑音のパワーV2(t)の標準偏差は、尺度母数αとなる。よって、周波数スペクトラムP(f)のノイズフロアにおける周波数ごとの雑音のパワーV2(t)は、平均および標準偏差が共に尺度母数αである確率分布に従う
ここで、雑音のパワーV2(t)に中心極限定理を適用する。中心極限定理によれば、確率変数Xが平均μおよび標準偏差σの確率分布に従う場合、確率変数のN個のサンプルX1,X2,・・・XNの平均値は、Nが十分大きければ、平均μおよび標準偏差σ/√Nの正規分布に従う。
したがって、雑音のパワーV2(t)に中心極限定理が適用されると、雑音のパワーV2(t)が平均αおよび標準偏差αのワイブル分布に従うので、雑音のパワーV2(t)の平均値は、Nが十分大きければ、平均αおよび標準偏差α/√Nの正規分布に従う。
以下では、雑音のパワーV2(t)の平均値は、正規分布に従うとみなす。図10は、雑音のパワーV2(t)の平均値が従う正規分布を示したグラフである。
本実施形態では、上述したように、周波数分析回路3が平均回数Nの周波数分析の結果を周波数スペクトラムP(f)として生成しているので、周波数スペクトラムP(f)のノイズフロアにおけるパワーは、雑音のパワーV2(t)の平均値を示している。
また、上述したように、周波数スペクトラムP(f)の周波数fは、離散値であり、周波数スペクトラム微分回路4は、周波数スペクトラムP(f)に対する所定周波数間隔ごとの差分商{P(fi)−P(fi-1)}/{fi−fi-1}を周波数スペクトラムP(f)の微分値dP(f)/dfとして計算している。ここで、fiは、離散値である周波数のそれぞれを示している。また、fi−fi-1は、所定周波数間隔を示し、以下では、Δfと書くことにする。
ここで、この差分商{P(fi)−P(fi-1)}/{fi−fi-1}として計算された微分値dP(f)/dfの最大値および最小値について考える。
上述したように、周波数スペクトラムP(f)のノイズフロアにおける周波数ごとの雑音のパワーの平均値は、平均αおよび標準偏差α/√Nの正規分布に従う。この場合、ノイズフロアにおける周波数ごとの雑音のパワーV2(t)の平均値は、実用上、平均αの両側の標準偏差α/√Nの3倍以内になると考えられる。つまり、この雑音のパワーV2(t)の平均値は、単位をワットとすると、(α―3α/√N)から(α+3α/√N)の間にあり、単位をデシベルとすると、10log(α―3α/√N)から10log(α+3α/√N)の間にある。
したがって、周波数スペクトラム微分回路4は、受信信号のパワーの単位をワットからデシベルに変換して微分値P(f)/dfを計算するので、微分値dP(f)/df={P(fi)−P(fi-1)}/Δfが最大になるのは、P(fi)が10log(α+3α/√N)であり、かつ、P(fi-1)が10log(α―3α/√N)となるときである。
ここで、微分値dP(f)/df={P(fi)−P(fi-1)}/Δfを計算すると、数9で表される。
したがって、微分値dP(f)/dfのノイズフロアにおける最大値は、平均回数Nと所定周波数間隔Δfだけで決まる。
同様にして微分値dP(f)/dfのノイズフロアにおける最小値は、数10で表され、平均回数Nと所定周波数間隔Δfだけで決まる。
したがって、微分値dP(f)/dfのノイズフロアにおける任意の周波数でのパワーは、数9で表される最大値よりも大きく、数10で表される最小値よりも小さくなることがないので、上限しきい値を数11以上とし、下限しきい値を数12以下にすれば、雑音を誤って信号として抽出されることがない。
平均回数Nと所定周波数間隔Δfは、信号抽出装置に応じて予め定められているので、制御器7は、平均回数Nと所定周波数間隔Δfに基づいて、微分値dP(f)/dfのノイズフロアにおける最大値および最小値を評価することができる。
つまり、制御器7は、予め定められた平均回数Nと所定周波数間隔Δfを数11および数12に代入して、微分値dP(f)/dfのノイズフロアにおける最大値および最小値を評価する。そして、制御器7は、その評価結果に基づいて、上限しきい値と下限しきい値を決定する。例えば、制御器7は、その評価した最大値を上限しきい値とし、その評価した最小値を下限しきい値とする。
これにより、上限しきい値と下限しきい値を自動的に決定することが可能になる。
なお、本実施形態では、Nが1000回以上であれば、雑音のパワーV2(t)の平均値が正規分布に従うとみなしても、実用上問題のないしきい値を計算することができる。また、Nは、信号抽出装置に求める信号抽出の精度に応じて、適宜変更することが可能である。
また、ノイズフロアにおける周波数ごとの雑音のパワーV2(t)の平均値は、実用上、平均αの両側の標準偏差α/√Nの3倍以内になると考えられるとしたが、この3倍という数値は、一例であり、信号抽出装置に求める信号抽出の精度に応じて、適宜変更することが可能である。
次に効果を説明する。
本実施形態では、周波数分析回路3は、受信信号のパワーを周波数ごとに求め、その信号のパワーを周波数ごとに示した周波数スペクトラムP(f)を生成する。周波数スペクトラム微分回路4は、周波数分析回路3が生成した周波数スペクトラムP(f)の周波数に対する微分値を計算する。信号抽出回路5は、周波数スペクトラム微分回路4が計算した微分値P(f)/dfと、上限しきい値および下限しきい値とを用いて、受信信号に含まれる変調信号が存在する周波数区間を決定する。制御器7は、微分値dP(f)/dfのノイズフロアにおける最大値および最小値を評価し、その評価結果に基づいて、上限しきい値と下限しきい値を決定する。
この場合、微分値P(f)/dfのノイズフロアにおける最大値および最小値が評価される。また、上限しきい値および下限しきい値がその評価結果に基づいて決定される。そして、受信信号に含まれる変調信号が存在する周波数区間が、その上限しきい値および下限しきい値を用いて決定される。
このため、しきい値が自動的に決定されるため、人間がしきい値を設定しなくても良くなる。
また、本実施形態では、周波数分析回路3は、予め定められた平均回数、受信信号のパワーを周波数ごとに求め、その平均回数分の信号のパワーを周波数ごとに平均する。また、周波数分析回路3は、その受信信号のパワーの平均値を周波数ごと示した周波数スペクトラムP(f)を生成する。また、周波数スペクトラム微分回路4は、周波数分析回路3が生成した周波数スペクトラムP(f)に対する所定周波数間隔ごとの差分商を微分値P(f)/dfとして計算する。制御器7は、その所定周波数間隔および平均回数に基づいて、微分値P(f)/dfのノイズフロアにおける最大値および最小値を評価する。
この場合、微分値P(f)/dfのノイズフロアにおける最大値および最小値が所定周波数間隔および平均回数に基づいて評価される。このため、微分値P(f)/dfのノイズフロアにおける値などを計測しなくても、しきい値を自動的に決定することが可能になる。したがって、容易にしきい値を自動的に決定することが可能になる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態の信号抽出装置の構成を示したブロック図である。図11において、信号抽出装置は、空中線1、受信器2、信号抽出回路5aおよびディスプレイ9を含む。
本実施形態では、図1で示した信号処理回路8の機能をディジタル回路である信号抽出回路5aにより実現している。具体的には、信号抽出回路5aは、ADC(アナログ・ディジタル・コンバータ)10、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)11およびCPU12を含む。
ADC10は、受信器2にて変換されたアナログ信号の受信信号を、ディジタル信号の受信信号に変換する。
DSP11は、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体からプログラムを読み取り、その読み取ったプログラムを実行して、図2で示した周波数分析回路3の機能を実現する。例えば、DSP11は、受信信号の周波数分析を高速フーリエ変換(FFT:First Fourie Transform)処理により高速に行う。
CPU12は、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体からプログラムを読み取り、その読み取ったプログラムを実行して、図2の周波数スペクトラム微分回路4、信号抽出回路5および制御器7のそれぞれの機能を実現する。
ディスプレイ9は、図2の出力器6の機能を有する。
また、周波数分析を行う分析回路は、DSP11の代りに、狭帯域アナログフィルタを必要帯域幅だけ並列に並べた回路にて実現することもできる。さらに、この分析回路は、一つの狭帯域アナログフィルタと高速切替え可能な信号発生器とを組み合わせて、対象信号帯域を周波数掃引することで実現することもできる。
このような狭帯域アナログフィルタを有する分析回路を用いた信号抽出装置では、分析回路は、受信器2の後段に配置され、ADC10は、その分析回路の後段に配置される。
また、装置の用途に合うのであれば、DSP11の代わりに、CPUやFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いてもよい。なお、DSP、CPUおよびFPGAは、1個に限らず、複数でもよい。また、DSPは、高速フーリエ変換専用のDSPとしてもよい。
本実施形態では、信号処理回路8aを、ADC10、DSP11およびCPU12で構成するようにしたので、回路構成を簡素化することが可能になる。
次に第3の実施形態について説明する。
図12は、第3の実施形態の信号抽出装置の構成を示したブロック図である。図12において、信号抽出装置は、空中線1、受信器2、周波数分析回路3、周波数スペクトラム微分回路4、信号抽出回路5、出力器6および制御器7を含む。また、空中線1、受信器2、周波数分析回路3および周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれは、複数ある。
ここで、受信器2のそれぞれは、空中線1のいずれか一つと互いに一対一で対応する。また、周波数分析回路3のそれぞれは、受信器2のいずれか一つと互いに一対一で対応する。さらに、周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれは、周波数分析回路3のいずれか一つと互いに一対一で対応する。
この互いに対応付けられた空中線1、受信器2、周波数分析回路3および周波数スペクトラム微分回路4は、一つの系を構成する。各系が互いに周波数帯の異なる信号を処理することで、信号処理装置が抽出可能な信号の帯域を広くすることが可能になる。
具体的には、空中線1のそれぞれは、互いに周波数帯の異なる複数の電波信号のいずれか一つを受信し、その電波信号を互いに周波数帯の異なる複数の電気信号に変換する。
受信器2のそれぞれは、対応した空中線1が変換した電子信号を受信し、その電気信号を受信信号に変換する。
周波数分析回路3のそれぞれは、対応した受信器2にて変換された受信信号の周波数分析を所定の離散時間ごとに行い、その分析結果を周波数スペクトラムP(f)として生成する。
周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれは、対応した周波数分析回路3にて生成された周波数スペクトラムP(f)の周波数に対する微分値dP(f)/dfを計算する。
信号抽出回路5は、周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれが計算した微分値dP(f)/dfのそれぞれから、変調信号を抽出する。例えば、信号抽出回路5は、周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれが計算した微分値dP(f)/dfのそれぞれを一つに微分値dP(f)/dfに結合し、その結合した微分値dP(f)/dfから変調信号を抽出する。
制御器7は、各系の空中線1、受信器2、周波数分析回路3および周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれが同期して動作するように制御する。これにより各系の空中線1、受信器2、周波数分析回路3および周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれが互いに同期して動作する。
次に効果を説明する。
本実施例によれば、周波数分析回路3のそれぞれは、対応する受信器2にて変換された受信信号の周波数分析を行い、その分析結果を周波数スペクトラムP(f)として生成する。周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれは、対応する周波数分析回路3にて生成された周波数スペクトラムP(f)の周波数に対する微分値dP(f)/dfを計算する。信号抽出回路5は、周波数スペクトラム微分回路4のそれぞれが計算した微分値dP(f)/dfのそれぞれから、変調信号を抽出する。
この場合、広い周波数帯の信号を処理することが可能になる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図13は、第4の実施形態の信号抽出装置の構成を示したブロック図である。図13にいて、信号抽出回路は、図11で示した構成に加え、複数の変調識別回路13と、複数の復調回路14と、記録部15とを含む。
変調信号を復調する場合、その変調信号の変調方式を識別する必要がある。ここで、変調方式の識別とは、変調諸元(変調方式およびシンボルレートなど)を特定することである。
変調方式を識別するためには、信号が存在する周波数区間が分からなければならない。
変調識別回路13のそれぞれは、CPU12が決定した変調信号が存在する周波数区間を用いて、変調信号の変調諸元を推定する。なお、CPU12が複数の周波数区間を決定した場合、変調識別回路13のそれぞれは、CPU12が決定した複数の周波数区間のいずれか一つの周波数区間を用いて、その周波数区間に存在する変調信号の変調諸元を推定する。
復調回路14のそれぞれは、変調識別回路13のいずれか一つと一対一で対応付けられている。復調回路14のそれぞれは、対応する変調識別回路13が推定した変調諸元に基づいて、変調信号を復調する。
記録部15は、復調回路14のそれぞれが復調した受信信号を記録する。
次に動作を説明する。
先ず、CPU12は、求めた変調信号の上限周波数および下限周波数を、変調識別回路13にセットする。このとき、CPU12は、複数の周波数区間を決定していると、その複数の周波数区間のそれぞれを定める上限周波数および下限周波数を、互いに異なる変調識別回路にセットする。
また、ADC10は、受信信号を変調識別回路13にさらに出力する。
変調識別回路13は、受信信号を受信すると、セットされた上限周波数から下限周波数までの範囲を変調信号が存在する周波数区間と判断し、その周波数区間に存在する変調信号の変調諸元を推定する。
変調識別回路13は、変調信号および変調諸元を自回路に対応する復調回路14に出力する。
復調回路14は、変調信号および変調諸元を受信すると、その変調諸元に応じて回路構成を変更し、変更した回路構成を用いて変調信号を復調して復調データを生成する。復調回路14は、その復調データを記録部15に出力する。記録部15は、復調データを受信すると、その復調データを記録する。
次に効果を説明する。
本実施形態によれば、変調識別回路13は、CPU12が決定した変調信号が存在する周波数区間を用いて、変調信号の変調諸元を推定する。復調回路14のそれぞれは、変調識別回路13は、変調識別回路13が推定した変調諸元に基づいて、変調信号を復調する。
この場合、変調信号が存在する周波数区間が自動的に決定されるので、変調諸元を自動的に推定することが可能になる。したがって、未知の変調信号を自動的に復調することが可能になる。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図14は、第5の実施形態の信号抽出装置の構成を示したブロック図である。図14において、信号抽出回路は、図1で示した構成に加え、帯域幅フィルタリング回路16を含む。
帯域幅フィルタリング回路16は、信号抽出回路5が決定した周波数区間から、予め定められた周波数範囲に含まれる周波数区間を取り出す。
出力器6は、帯域幅フィルタリング回路16が取り出した周波数区間を出力する。
効果を説明する。
信号抽出装置には、予め監視対象となる信号の監視周波数が定められていることが多い。周波数資源の有効活用の観点から、比帯域が極端に小さい信号は、存在する可能性は低い。また技術的な観点から、比帯域が極端に大きな信号も存在する可能性は低い。ここで比帯域とは、信号の存在する周波数区間をその信号の中心周波数で割った値である。例えば、監視周波数が60GHz程度の場合に、数キロHzオーダーの信号が存在することは、周波数資源の有効活用の点から存在する可能性が低い少ない。このため、もし、信号抽出回路5にてその監視周波数において極端に小さい、または極端に大きい比帯域を持つ信号が抽出されたとしても、その信号は、誤って抽出された信号などの不要な信号である可能性が高い。また、監視周波数に応じて、信号の存在する周波数区間(すなわち、帯域幅)が予め定まっている場合もある。この様な場合、予想しない周波数区間の信号が抽出された場合、その信号は、誤って抽出された信号などの不要な信号である可能性が高い。このような信号が出力されると、煩わしいという問題がある。
本実施形態では、予め定められた周波数範囲に含まれる周波数区間が取り出されるので、不要な信号が抽出されるのを抑止することが可能になる。
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
図15は、第6の実施形態の信号抽出装置の構成を示したブロック図である。図15において、信号抽出回路は、図1で示した構成に加え、ノイズフロア抽出回路17、C/N計算回路18を含む。
ノイズフロア抽出回路17は、信号抽出回路5にて決定された変調信号が存在する周波数区間を用いて、ノイズフロアを決定する。具体的には、ノイズフロア抽出回路17は、変調信号が存在する周波数区間と異なる周波数区間をノイズフロアとして決定する。
C/N計算回路18は、信号抽出回路5にて決定された変調信号が存在する周波数区間と、ノイズフロア抽出回路17にて決定されたノイズフロアとに基づいて、受信器2が変換した受信信号のC/N(Carrier/Noise)比を計算する。
具体的には、C/N計算回路18は、受信信号のパワーを変調信号が存在する周波数区間における周波数ごとに求め、それらの周波数ごとの受信信号のパワーの平均値を変調信号のパワーCとして求める。また、C/N計算回路18は、受信信号のパワーをノイズフロアにおける周波数ごとに求め、それらの周波数ごとの受信信号のパワーの平均値を雑音のパワーNとして求める。そして、C/N計算回路18は、変調信号のパワーCを雑音のパワーNで除算して、C/N比を計算する
なお、C/N計算回路18は、受信信号に含まれる変調信号ごとに、C/N比を求めてもよい。
次に効果を説明する。
本実施形態によれば、ノイズフロア抽出回路17は、信号抽出回路5にて決定された変調信号が存在する周波数区間を用いて、ノイズフロアを決定する。C/N計算回路18は、信号抽出回路5にて決定された変調信号が存在する周波数区間と、ノイズフロア抽出回路17にて決定されたノイズフロアとに基づいて、受信器2が変換した受信信号のC/N(Carrier/Noise)比を計算する。
この場合、変調信号が存在する周波数区間とノイズフロアとを自動的に決定することが可能になるので、C/N比を自動的に計算することが可能になる。
次に本発明の第7の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、本発明による信号抽出装置の最も簡単な構成を示す。
図16は、本発明の第2の実施形態の信号抽出装置の構成を示したブロック図である。図16において、信号抽出装置は、受信器2、周波数分析回路3、周波数スペクトラム微分回路4、信号抽出回路5および制御器7を含む。
受信器2は、受信信号を受信する。
周波数分析回路3は、受信器2が受信した受信信号の周波数分析を行い、その分析結果を周波数スペクトラムP(f)として生成する。
周波数スペクトラム微分回路4は、周波数スペクトラム微分回路4は、周波数分析回路3にて生成された周波数スペクトラムP(f)の周波数に対する微分値dP(f)/dfを計算する。
信号抽出回路5は、周波数スペクトラム微分回路4にて計算された微分値dP(f)/dfから、上限しきい値および下限しきい値を用いて変調信号を抽出する。
制御器7は、微分値dP(f)/dfのノイズフロアにおける最大値および最小値を評価し、その評価した最大値および最小値に基づいて、上限しきい値と下限しきい値を決定する。
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。