JP5011195B2 - 流体分流供給ユニット - Google Patents

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Description

本発明は、ガスや薬液等の流体を分流して供給する流体分流供給ユニットに関する。
例えば、半導体製造工程で使用するCVD装置や不純物ドーピング装置では、処理室に複数のウエハを並べて配置し、処理室内を真空引きした後、ガスを処理室に導入して、処理室内の各ウエハに薄膜を形成したり、不純物をイオン化して各ウエハに導入することが行われている。各ウエハの品質を安定させるためには、処理室内のガス濃度を均一にする必要がある。
近時、半導体業界では、1枚当たりのウエハから製造されるチップ収容量を多くすることで生産性を高める傾向にある。そのために、ウエハのサイズが200mmから300mmに移行しつつあり、将来的には、450mmに移行すると考えられている。ウエハのサイズが大きくなれば、当然処理室の容積が大きくなる、処理室の容積が大きくなると、1箇所からガスを供給しても、ガスが処理室全体に均一に行き渡らない。そこで、処理室の複数箇所にノズルを配置し、各ノズルにガスを分流するガス分流供給ユニットを処理室の上流側に配置している。
従来のガス分流供給ユニットは、各ノズルから噴出するガス流量を調整するため、各ノズルに対応してマスフローコントローラを備えていた。しかし、1種類ガスのために複数のマスフローコントローラを設けるのは、イニシャルコストやランニングコストがかかって高価になる。そのため、例えば特許文献1に記載される技術では、主流路にマスフローコントローラを配置し、主流路から分岐する第1及び第2副流路に配置した開閉弁を各ノズルに接続して、マスフローコントローラで流量調整したガスを各ノズルから処理室に分流供給することを提案している。
図22は、従来の基板処理装置100の一部断面正面図である。
基板処理装置100は、耐圧筐体101と処理室102の間の図示しないシャッタが開かれ、複数のウエハ103を収容するボート104を、ボート104の下端部に配置したシールキャップ105でシャッタ開口部を塞ぐように、耐圧筐体101から処理室102内へ移動させるようになっている。処理室102には、長さが異なる第1ノズル106aと第2ノズル106bが配置されている。第1及び第2ノズル106a,106bは、処理室102内に位置する先端部にガスを吐出する吐出口が設けられている。
第1及び第2ノズル106a,106bの後端部は、ガス分流供給ユニット110に接続されている。ガス分流供給ユニット110は、ガス供給源111にメイン開閉弁112と可変流量制御弁113が配置されている。そして、可変流量制御弁113には、第1開閉弁114aと第2開閉弁114bが並列に接続している。第1及び第2開閉弁114a,114bは、第1及び第2ノズル106a,106bにそれぞれ接続されている。メイン開閉弁112と、可変流量制御弁113と、第1及び第2開閉弁114a,114bは、ガスコントローラ115に接続され、動作を制御される。
このようなガス分流供給ユニット110は、メイン開閉弁112を開くと共に、可変流量制御弁113によってガスを第1設定流量に制御し、第2開閉弁114bを閉じた状態で第1開閉弁114aを開く。第1開閉弁114aを開いてから一定時間(例えば5sec)経過したら、第1開閉弁114aを閉じる。第1開閉弁114aを閉じてから所定時間が経過したら、第2開閉弁114bを開く。可変流量制御弁113は、第1開閉弁114aが閉じてから第2開閉弁114bが開くまでの間(期間A)内に、ガス流量を第1設定流量から第2設定流量に変更するように弁開度を変更して流量を安定させる。
第2開閉弁114bを開いてから一定時間(例えば5sec)が経過したら、第2開閉弁114bを閉じる。第2開閉弁114bを閉じてから所定時間が経過したら、第1開閉弁114aを開く。可変流量制御弁113は、第2開閉弁114bが閉じてから第1開閉弁114aが開くまでの間(期間B)内に、ガス流量を第2設定流量から第1設定流量に変更するように弁開度を変更して流量を安定させる。
ガス分流供給ユニット110は、上記のように、可変流量制御弁113の弁開度を変えてガス流量を第1,第2設定流量に変更しながら第1及び第2開閉弁114a,114bを交互に開閉する。第1及び第2ノズル106a,106bは、先端部の高さが異なるので、第1及び第2開閉弁114a,114bの開閉動作に合わせて、処理室102の第1エリアと第2エリアにガスを交互に供給する。このとき、ガスは、処理室102内に行き渡りやすい第1エリアに最も多く供給され、処理室102内に行き渡りにくい第2エリアに最も少なく供給される。よって、従来のガス分流供給ユニット110は、ウエハ103群の全長にわたって均一にガスを供給することができ、膜厚や膜質を各ウエハ103で均一にすることができる。
特開2007−27182号公報
しかしながら、従来のガス分流供給ユニット110は、1個の可変流量制御弁113によって、第1及び第2開閉弁114a,114bから出力する流体の流量を制御していた。そのため、ガス分流供給ユニット110は、可変流量制御弁113の流量が安定するまで、第1及び第2開閉弁114a,114bを開くことができず、開閉弁を閉じてから次の開閉弁を開くまでの時間が無駄であった。具体的には、通常、コントローラ115が可変流量制御弁113に設定流量変更指令を与えてから、可変流量制御弁113が指定された設定流量にガス流量を安定させるのに1.5秒以上必要である。図22に示すガス分流供給ユニット110は、第1及び第2開閉弁114a,114bを1回ずつ開閉させる1サイクルのうちに、3.0秒以上も無駄な時間が生じていた。
また、従来の分流供給ユニット110は、第1及び第2開閉弁114a,114bが可変流量制御弁113に直接配管で接続されている。可変流量制御弁113の一次側には、常にガス供給源111の圧力がかかっているが、流量制御を行っているため、可変流量制御弁113と第1及び第2開閉弁114a,114bとの間の圧力はガス供給源111の圧力より低くなっている。一方、第1及び第2開閉弁114a,114bの二次側は真空にされている。よって、第1及び第2開閉弁114a,114bの一次側圧力と二次側圧力との差圧は小さい。第1及び第2開閉弁114a,114bの二次側圧力は、弁の開閉により圧力変動を起こす。この圧力変動が、第1及び第2開閉弁114a,114bを流れる流量に大きく影響し、第1及び第2開閉弁114a,114bが出力する流量を不安定にする。よって、従来の分流供給ユニット110は、流量制御の精度が低かった。
上述したように、基板処理では、回路の集積化などが進むにつれ、ガス供給量がウエハの品質に与える影響が大きくなっている。よって、流量制御の精度を向上させることは、産業界から強く望まれている。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、無駄な待ち時間を減らしつつ、流量制御の精度を向上させることができる流体分流供給ユニットを提供することを目的とする。
本発明に係る流体分流供給ユニットは、次のような構成を有している。
(1)流体供給源に接続する主流路と、前記主流路から分岐した第1及び第2副流路とを有し、前記第1副流路に配置された第1開閉弁と前記第2副流路に配置された第2開閉弁を代わる代わる開閉して流体を分流供給する流体分流供給ユニットにおいて、前記第1及び前記第2開閉弁は、一次側圧力と動作周期とが一定である場合に、出力流量が動作周期に対して弁開するパルスON時間に比例する流量特性をそれぞれ有し、前記第1及び前記第2開閉弁の一次側圧力を一定に調整する圧力調整手段と、前記主流路に配置されて当該ユニットを流れる前記流体のユニット総流量を測定するマスフローメータと、前記第1及び前記第2開閉弁が出力する流量として設定された第1及び第2設定流量を、前記第1及び前記第2開閉弁の前記流量特性にそれぞれ照合して、前記第1及び前記第2開閉弁の前記パルスON時間を決定し、その決定したパルスON時間に従って前記第1及び前記第2開閉弁を開閉して流量制御を行う流量制御手段と、前記マスフローメータが測定した前記ユニット総流量と、前記第1及び前記第2設定流量を合計した指令総流量との偏差をゼロにするように前記パルスON時間を補正する補正手段と、を有する。
(2)(1)に記載の発明において、前記主流路に前記流体を供給して、前記第1及び前記第2開閉弁の前記流量特性を取得する流量特性取得手段を有する。
(3)(2)に記載の発明において、前記流量特性取得手段は、前記圧力調整手段によって前記一次側圧力を変更し、前記第1及び前記第2開閉弁の各々について前記流量特性を2以上取得する。
(4)(3)に記載の発明において、前記第1及び前記第2設定流量を設定変更する流量設定変更手段と、前記第1及び第2開閉弁の一次側圧力を測定する圧力測定手段と、を有し、前記流量制御手段は、前記流量設定変更手段により前記第1及び前記第2設定流量が設定変更された場合に、前記設定変更された前記第1及び前記第2設定流量を前記第1及び前記第2開閉弁の前記2以上の流量特性に照合させて、圧力がパルスON時間に比例する圧力特性を前記第1及び前記第2開閉弁毎に導き出し、前記圧力特性に前記圧力測定手段が測定した圧力を当てはめて、前記第1及び前記第2開閉弁の前記パルスON時間を決定するものである。
(5)(1)乃至(4)の何れか1つに記載の発明において、前記マスフローメータと前記第1及び前記第2開閉弁との間に、前記第1及び前記第2開閉弁の開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する一次側タンクを配置している。
(6)(1)乃至(5)の何れか1つに記載の発明において、前記第1及び前記第2開閉弁の二次側に、前記第1及び前記第2開閉弁の開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する二次側タンクを配置している。
(7)(4)乃至(6)の何れか1つに記載の発明において、前記圧力測定手段が測定した圧力と、前記第1又は前記第2開閉弁のパルスON時間とが、前記第1又は前記第2開閉弁の前記圧力特性上にあるか否かを判断し、前記圧力特性上にないと判断した場合に故障を検出する故障検定手段を有する。
上記構成を有する本発明の流体分流供給ユニットは、流体供給源に接続する主流路にマスフローメータを配置し、主流路から分岐した第1及び第2副流路に第1及び第2開閉弁をそれぞれ配置している。
第1及び第2開閉弁は、一次側圧力と動作周期とが一定である場合に、出力流量が動作周期に対して弁開するパルスON時間に比例する流量特性をそれぞれ有する。流量制御手段は、第1及び第2開閉弁が出力する流量として設定された第1及び第2設定流量を、第1及び第2開閉弁の流量特性にそれぞれ照合して、第1及び第2開閉弁のパルスON時間を決定し、決定したパルスON時間に従って第1及び第2開閉弁を代わる代わる開閉して流量制御を行う。このとき、圧力調整手段が第1及び第2開閉弁の一次側圧力を一定に調整し、マスフローメータが当該ユニットを流れる流体のユニット総流量を測定している。これにより、流体分流供給ユニットは、第1及び第2開閉弁から流体を分流供給する。
補正手段は、マスフローメータが測定したユニット総流量と、第1及び第2設定流量を合計した指令総流量との偏差をゼロにするように、パルスON時間を補正する。ユニット総流量は、第1及び第2開閉弁が実際に出力した流量に等しい。そのため、ユニット総流量と指令総流量との偏差には、第1及び第2開閉弁が第1及び第2設定流量で流体を出力しているか否かを監視するという意義がある。流体分流供給ユニットは、補正されたパルスON時間に従って第1及び第2開閉弁を開弁することにより、第1及び第2開閉弁から出力する流量を第1及び第2設定流量にフィードバック制御する。
このように本発明の流体分流供給ユニットは、ユニット総流量に基づいて第1及び第2開閉弁が出力する流量を監視し、ユニット総流量と指令総流量との偏差をゼロにするようにパルスON時間を補正して第1及び第2開閉弁が出力する流量を第1及び第2設定流量に制御するので、流量制御の精度が向上する。
また、流体分流供給ユニットは、流体供給源の圧力が第1及び第2開閉弁の一次側に直接作用し、第1及び第2開閉弁の一次側圧力と二次側圧力との差圧が大きい。そのため、第1及び第2開閉弁が弁を開閉する際に生じる圧力変動が、第1及び第2開閉弁の流量に影響しにくく、第1及び第2開閉弁は、パルスON時間に従って開閉する際に、流体が流量特性に従った流量を出力する。よって、流体分流供給ユニットは、マスフローコントローラを使用する場合のように流量が安定するのを待って第1及び第2開閉弁を開閉する必要がなく、無駄な待ち時間を減らすことができる。
例えば、流体分流供給ユニットを基板処理装置に使用する場合、ウエハに供給するプロセスガスの流量を正確に制御するので、ウエハの品質を安定させることができる。また、処理室にプロセスガスを分流供給する間の無駄時間が少ないため、プロセス時間の短縮及びプロセスガスの変質を防ぐことが可能になる。近年、ウエハに形成する回路の集積化が進み、プロセスガスの管理がシビアになっていることを鑑みれば、本発明の流体分流供給ユニットは半導体産業に大きく貢献する。
ここで、本発明の流体分流供給ユニットは、主流路に流体を供給して、第1及び第2開閉弁の流量特性を取得する流量特性取得手段を有し、分流供給時と同様の条件で流量特性を取得している。よって、流体分流供給ユニットは、流路長や流路内のCv値、バルブ特性などの第1及び第2開閉弁の個体差を流量特性に反映させ、流量制御をより精度良く行うことができる。
また、本発明の流体分流供給ユニットは、流量特性取得手段が、圧力調整手段によって第1及び第2開閉弁の一次側圧力を変更し、第1及び第2開閉弁の各々について流量特性を2以上取得する。そのため、第1及び第2開閉弁の一次側圧力が、流量特性取得時の圧力に一致していなくても、2以上の流量特性から第1及び第2開閉弁の一次側圧力に適した流量特性を生成してパルスON時間を決定できるので、迅速な流量制御を行うことができる。
また、本発明の流体分流供給ユニットは、流量設定変更手段により第1及び第2設定流量が設定変更された場合に、流体制御手段が、設定変更された第1及び第2設定流量を第1及び第2開閉弁の2以上の流量特性に照合させて、圧力がパルスON時間に比例する圧力特性を第1及び第2開閉弁毎に導き出す。流量制御手段は、その圧力特性に圧力測定手段が測定した圧力を当てはめて、第1及び第2開閉弁のパルスON時間を決定する。このように、本発明の流体分流供給ユニットによれば、第1及び第2開閉弁の一次側圧力に応じてパルスON時間を変更して第1及び第2開閉弁の流量を変更するので、流量変更を瞬時に行うことができる。
また、本発明の流体分流供給ユニットは、マスフローメータと第1及び第2開閉弁との間に配置され、第1及び第2開閉弁の開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する一次側タンクを配置している。そのため、流体分流供給ユニットは、流量の脈動を抑制して流量を安定させるので、第1及び第2開閉弁の開閉動作の影響を受けてマスフローメータの流量測定精度が低下しない。また、流体分流供給ユニットは、第1及び第2開閉弁の一次側圧力の脈動を抑制して一次側圧力を安定させ、圧力調整手段の動作頻度を減らすので、圧力調整手段を長寿命化することができる。
尚、一次側タンクには、中空部を備えるタンクだけでなく、マスフローメータから第1及び第2開閉弁までの流路配管容積によって構成しても良い。また、一次側タンクは、主流路におけるマスフローメータの二次側に単独で配置するものだけでなく、例えば、第1及び第2副流路における第1及び第2開閉弁の一次側に配置したタンク群によって構成されるものや、主流路におけるマスフローメータの二次側に複数設置されるタンク群であっても良い。
また、本発明の流体分流供給ユニットは、第1及び第2開閉弁の二次側に、第1及び第2開閉弁の開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する二次側タンクを配置している。そのため、流体分流供給ユニットは、第1及び第2開閉弁の二次側に発生する流量の脈動を抑制し、例えば第1及び第2開閉弁を基板処理装置の処理室に接続した場合に、連続的に所定量ずつ流体を処理室に供給して流体濃度を均一にさせやすい。また、流体分流供給ユニットは、第1及び第2開閉弁の二次側に発生する圧力の脈動を抑制し、例えば配管内や処理室に残存するパーティクルを巻き上げることを防止して安定したプロセスを行うことができる。
尚、二次側タンクには、中空部を備えるタンクだけでなく、第1及び第2開閉弁から処理室などの流体供給先までの流路配管容積によって構成しても良い。また、二次側タンクは、複数のタンク群で構成しても良い。
また、本発明の流体分流供給ユニットは、故障検定手段が、圧力測定手段が測定した圧力と、第1又は第2開閉弁のパルスON時間とが、第1又は第2開閉弁の圧力特性上にあるか否かを判断し、圧力特性上にないと判断した場合に故障を検出する。よって、本発明の流体供給分流ユニットによれば、故障を生じたまま流量制御を行うことがなく、流量制御の精度をより一層向上させることができる。
次に、本発明に係る流体分流供給ユニットの一実施形態について図面を参照して説明する。
<流体分流供給ユニットの概略説明>
図1は、本発明の第1実施形態に係る流体分流供給ユニット1の回路図である。
流体分流供給ユニット1は、従来技術と同様、図22に示す基板処理装置100に使用される。流体分流供給ユニット1は、主流路16から第1及び第2副流路19A,19Bが分岐している。
主流路16には、手動弁2と、逆止弁3と、フィルタ4と、「圧力調整手段」の一例であるレギュレータ5と、「圧力測定手段」の一例である圧力計6と、入力側エアオペレイトバルブ7と、マスフローメータ8と、出力側エアオペレイトバルブ9と、一次側タンク10とが配置されている。
主流路16は、入力側エアオペレイトバルブ7とマスフローメータ8との間に、共通パージガスライン18から分岐したパージガスライン17が接続している。パージガスライン17には、逆止弁14とパージバルブ15とが配置されている。
一方、第1及び第2副流路19A,19Bには、第1及び第2開閉弁11A,11Bと、第1及び第2フィルタ12A,12Bと、第1及び第2二次側タンク13A,13Bと、が配置されている。
流体分流供給ユニット1は、主流路16の手動弁2に「流体供給」の一例であるガス供給源111が接続される。一方、第1及び第2副流路19A,19Bの第1及び第2二次側タンク13A,13Bには、第1及び第2ノズル106a,106bの後端部がそれぞれ接続される。よって、流体分流供給ユニット1は、図22に示す基板処理装置100の処理室102の直前に配置される。これは、第1及び第2開閉弁11A,11Bと処理室102との間の管路を短くすることによりプロセスガスに対する外乱の影響を抑制し、第1及び第2ノズル106a,106bから処理室102へプロセスガスを供給し始めてから第1及び第2設定流量Qa,Qbで供給するまでの立ち上がり時間を早くするためである。
流体分流供給ユニット1は、各流路16,17,19A,19Bに配置される流体機器を一体化したガス供給集積ユニット20と、当該流体分流供給ユニット1の動作を司る分流コントローラ21とを、製造時に一つのガスボックス(図示せず)に収容している。
このような流体分流供給ユニット1は、ガス供給源111からプロセスガスを供給され、処理室102に接続する真空ポンプによって第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側が真空引きされる。この状態で、流体分流供給ユニット1は、図10のガス供給シーケンスに示すように、例えば、第1及び第2開閉弁11A,11Bに対して動作周期tの2分の1ずつを弁開可能時間t’a,t’bとして割り当てる。そして、その弁開可能時間t’a,t’b内で、第1及び第2開閉弁11A,11Bが出力すべき流量として設定された第1及び第2設定流量Qa,Qbに応じてパルスON時間a’,b’をそれぞれ決定する。このようにして動作周期t内で決定したパルスON時間a’,b’に従って第1及び第2開閉弁11A,11Bを開閉させ、第1及び第2開閉弁11A,11Bから出力する流量を制御する。第1及び第2開閉弁11A,11Bが出力するプロセスガスは、フィルタ4で異物を除去されているが、更に、第1及び第2フィルタ12A,12Bにおいて異物を除去される。第1及び第2二次側タンク13A,13Bは、第1及び第2開閉弁11A,11Bから供給されたプロセスガスを一旦溜めてから、処理室102へ出力する。
第1及び第2開閉弁11A,11Bを開閉して流量制御を行う間、レギュレータ5が第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1を一定に調整し、マスフローメータ8が当該ユニット1を流れるプロセスガスのユニット総流量Qを測定している。分流コントローラ21は、ユニット総流量Qと、第1及び第2開閉弁11A,11Bの第1及び第2設定流量Qa,Qbを合計した指令設定総流量Qnとの偏差QPを算出し、算出した偏差QPをゼロにするようにパルスON時間a’,b’を補正する。
尚、流体分流供給ユニット1は、入力側エアオペレイトバルブ7を閉じ、パージバルブ15、出力側エアオペレイトバルブ9、第1及び第2開閉弁11A,11Bを開くことにより、共通パージライン18からパージガスを導入して適宜パージを行う。
以下、流体分流供給ユニット1の構成を具体的に説明する。
<ガス集積ユニットの構成>
図2は、図1に示すガス供給集積ユニット20を具現化したものの上面図である。図3は、図2に示すガス供給集積ユニット20のAA断面図であって、図中一点鎖線はガス流路を示す。
ガス供給集積ユニット20は、入力配管26、手動弁2、逆止弁3、フィルタ4、レギュレータ5、圧力計6、共通流路ブロック27、マスフローメータ8、出力側エアオペレイトバルブ9、一次側タンク10が、V字流路25aを形成された流路ブロック25にボルト30で各々固定され、直列一体に連結されている。
共通流路ブロック27の上面には、逆止弁14とパージバルブ15と入力側エアオペレイトバルブ7とが上方からボルト30で固定されている。逆止弁14とパージバルブ15と入力側エアオペレイトバルブ7は、V字流路27a,27bを介して連通している。入力側エアオペレイトバルブ7は、V字流路27a,27bの下方に形成されたプロセスガス流路27cを介して、圧力計6に連通する。また、入力側エアオペレイトバルブ7は、共通出力流路27dを介してマスフローメータ8に連通する。入力側エアオペレイトバルブ7は、エアオペレイト式の3ポート開閉弁であって、パージバルブ15には常時連通し、圧力計6には弁開時のみ連通する。
また、ガス供給集積ユニット20は、第1及び第2分岐ブロック28A,28B、第1及び第2開閉弁11A,11B、第1及び第2フィルタ12A,12B、第1及び第2二次側タンク13A,13B、第1及び第2出力配管29A,29Bが流路ブロック25にボルト30で各々固定され、直列一体に連結されている。
第1分岐ブロック28Aは、流路ブロック25を介して一次側タンク10を第1開閉弁11Aに連通させる。また、第1分岐ブロック28Aは、分岐配管32を介して第2分岐ブロック28Bに連通し、一次側タンク10を第2開閉弁11Bに連通させる。よって、ガス供給集積ユニット20は、マスフローメータ8と第1及び第2開閉弁11A,11Bとの間に、一次側タンク10が配置されている。
一次側タンク10は、第1及び前記第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する。
一方、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側に配置される第1及び第2二次側タンク13A,13Bは、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する。
<開閉弁の構成>
ここで、流量調整を行う第1及び第2開閉弁11A,11Bの構成をより詳細に説明する。図4は、図2に示す開閉弁11A(11B)の断面図である。
第1及び第2開閉弁11A,11Bは、同じ構造をなす。よって、ここでは、第1開閉弁11Aの構成を例に挙げて説明し、第2開閉弁11Bの構成の説明を省略する。
第1開閉弁11Aは、可動鉄心35と弁シート36を固定した板ばね37の外周縁をボンネット38とボディ39との間で狭持し、ボンネット38に内設されたソレノイド40に固定鉄心41を固設した電磁弁を使用している。ボディ39は、下面に第1ポート42と第2ポート43が開口し、第1ポート42と第2ポート43との間に弁座44が設けられている。弁座44には、板ばね37のばね力によって弁シート36が当接し、弁シール力が得られるようになっている。このような第1開閉弁11Aは、第1ポート42が流路ブロック25を介して第1分岐ブロック28Aに接続され、第2ポート43が第1フィルタ12Aに接続される。
第1開閉弁11Aは、可動鉄心35の移動量が小さい。そして、第1開閉弁11Aは、可動鉄心35の自重と板ばね37のばね力との合力と、固定鉄心41の吸引力と、のバランスによって、可動鉄心35を上下動させて弁開閉を行う。よって、第1開閉弁11Aは、指示流量を満足できるCV値を有し、高頻度で応答性よく弁開閉動作を行える。
尚、流体分流供給ユニット1の分流制御において、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tは、弁開閉時に生じる脈動が小さく、かつ、デューティ制御に対する応答性を確保できる周期とすることが好ましい。この観点からすれば、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tは、10ms以上500ms以下とすることが望ましい。
<マスフローメータの構成及び流量測定精度>
次に、流量補正で使用されるマスフローメータ8の構成と流量測定精度について具体的に説明する。
マスフローメータ8は、周知の質量流量計であって、流量制御を行わない点がマスフローコントローラと相違している。マスフローメータ8は、プロセスガスをバイパスするバイパス流路と、プロセスガスの流量を測定するためのセンサ流路とを並列に設けている。センサ流路は、金属製の細いパイプで構成され、そのパイプの周りに2つの熱式質量流量センサ素子(例えば自己抵抗体)が巻回されている。2つの熱式質量流量センサ素子は、センサ流路を流れる流体の質量流量に比例した温度変化を捉える。2つの熱式質量流量センサ素子に接続するブリッジ回路は、温度変化を電気信号に変換する。マスフローメータ8は、その変換された電気信号に増幅や補正等の処理を行い、流量出力信号として分流コントローラ21へ出力する。
このようなマスフローメータ8は、プロセスガスの流れが止まっている場合には、2つの熱式質量流量センサ素子に温度差がないため、測定する流量がゼロとなる。これに対して、マスフローメータ8は、プロセスガスが流れる場合には、2つの熱式質量流量センサ素子に温度差が生じるので、温度差に応じた流量を測定する。
第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側に配置されたマスフローメータ8は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴ってプロセスガスに生じる脈動の影響を受け、、第1及び第2開閉弁11A,11Bが共に弁閉しているときに流量を誤検出するおそれがある。よって、従来は、マスフローメータ8の流量測定精度が低いと考えられていた。
<マスフローメータの流量測定精度の検証>
ところが発明者らは、流体分流供給ユニット1を利用して実験装置を作り、マスフローメータ8の流量精度を調べる実験を行ったところ、従来の常識を覆して、マスフローメータ8の流量精度が良いことを発見した。
実験では、流体分流供給ユニット1のうち一次側タンク10にタンク容積60ccのタンクを使用し、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側に流量計をそれぞれ設置して、実験装置を製作した。実験では、実験装置に窒素ガスを供給し、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側を処理室102に接続した場合と同様に真空ポンプで真空状態にした。そして、レギュレータ5により第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1を0.1MPaに固定すると共に、動作周期tを100msに固定した状態で、第1及び第2開閉弁11a,11bのパルスON時間a’,b’を設定し、マスフローメータ8が測定するユニット総流量Qと、流量計が測定する第1及び第2開閉弁11A,11Bの実流量をサンプリングした。そして、ユニット総流量Qを平均したユニット平均総流量Qmと、第1及び第2開閉弁11A,11Bが出力する流量とを合計した実流量とを比較した。
同様の実験を、動作周期tを50ms、150msにした場合についても、パルスON時間a’,b’を変えて行った。
これらの実験結果を図11に示す。
図11に示すように、動作周期tを50ms、100ms、150msの何れにしても、第1及び第2開閉弁11A,11Bの実流量とユニット平均総流量Qmがほぼ一致する。第1及び第2開閉弁11A,11Bの実流量は、マスフローメータ8に実際に流れたガスの流量に一致する。よって、第1及び第2開閉弁11A,11Bを開閉しても、マスフローメータ8は、ユニット平均総流量Qmが、実際のガスの平均流量(総流量)にほぼ一致し、流量を精度良く測定することが可能である。
この理由について発明者は次のように考えた。
第1及び第2開閉弁11A,11Bは、動作周期tが10ms以上500ms以下の高頻度で動作しても、応答性が良く、Duty制御に対するCV値が十分に確保されている。そのため、マスフローメータ8は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴う脈動の影響を受けて誤差を生じても、その誤差が微小であり、マスフローメータ8が測定するユニット総流量Qを平均したユニット平均総流量Qmが実際の平均総流量(総流量)に落ち着くと考えられる。
<分流コントローラの電気ブロック構成>
次に、分流コントローラ21の電気ブロック構成について図5を参照して説明する。
分流コントローラ21は、周知のマイクロコンピュータであって、データの加工演算を行うCPU51に、読み出し専用の不揮発性メモリであるROM52と、読み書き可能な揮発性メモリであるRAM53と、読み書き可能な不揮発性メモリであるNVRAM54と、CPU51と外部装置との間の信号入出力を制御する入出力インターフェース(以下「I/O」と略記する。)55とが接続されている。
I/O55には、ガスコントローラ115と、データ等を入力する入力部60と、操作指示や動作状態などを表示する表示部57と、アラームなどを出力する音声出力部58と、第1及び第2開閉弁11A,11Bと、マスフローメータ8と、圧力計6とが接続している。
入力部60は、流量特性取得指示入力手段61と、流量設定変更手段62と、分流制御開始・終了指示入力手段63と、検定指示入力手段64とを備える。
流量特性取得指示入力手段61は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの各々について図14に示すような流量特性を取得する指示を入力するものである。ここで、流量特性とは、開閉弁の動作周期を一定に固定した場合に、開閉弁の出力流量が、動作周期内で開閉弁を弁開させるパルスON時間(若しくはパルスON時間を動作周期で割ったDuty値)と比例関係にあることをいう。開閉弁の出力流量は、Duty値が20%以上90%以下の範囲でパルスON時間と比例関係になるので、この範囲を利用して流量特性とする。
流量設定変更手段62は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの第1及び第2設定流量Qa,Qbを設定変更するものである。流量設定変更手段62は、第1及び第2設定流量Qa,Qbを直接入力するものでも良いし、流体分流供給ユニット1が処理室102に供給すべきプロセスガスの設定総流量から第1及び第2開閉弁11A,11Bの分流比に応じて第1及び第2設定流量Qa,Qbを算出しても良い。
分流制御開始・終了指示入力手段63は、プロセスガスの分流供給の開始指示と終了指示を入力するものである。
検定指示入力手段64は、流体分流供給ユニット1の故障検定を開始する指示を入力するものである。
上記流量特性取得指示、第1及び第2設定流量Qa,Qbの設定変更、分流制御開始指示、分流制御終了指示、故障検定開始指示は、作業者が分流コントローラの操作ボタン等を操作して入力するものでも良いし、分流コントローラ21が、基板処理装置100の動作制御に連動してガスコントローラ115から受信する制御信号を受信して入力しても良い。
これに対して、NVRAM54には、一次側設定圧力記憶手段71と、流量特性記憶手段72と、パルスON時間記憶手段73と、圧力特性記憶手段77とが設けられている。また、NVRAM54には、流量特性計測プログラム74と、分流制御プログラム75と、故障検定プログラム76が、格納されている。
一次側設定圧力記憶手段71は、一次側設定圧力Pnを記憶するものである。一次側設定圧力Pnとは、流体分流供給ユニット1全体から出力すべき総流量として想定される設定総流量に対し、十分捕らえられる第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側の圧力をいう。プロセスガスは、圧力が不足すると、所望の流量を出すことができない。一方、基板処理装置100では、プロセスガスの供給量が予め決められており、流体分流供給ユニット1では、プロセスガスの特性や流路径、流路長の影響を加味して、処理室102へのプロセスガス供給量から一次側設定圧力Pnを予め想定できる。そこで、一次側設定圧力記憶手段71は、制御の可能性があるプロセスガスについて、一次側設定圧力Pnをそれぞれ記憶している。
流量特性記憶手段72は、第1及び第2開閉弁11A,11B毎に、図14に示すような流量特性を記憶するものである。
パルスON時間記憶手段73は、プロセスガスを分流供給する際に、第1及び第2開閉弁11A,11Bを動作周期t内に弁開させる時間(パルスON時間)a’,b’を記憶するものである。
圧力特性記憶手段77は、開閉弁の一次側圧力がパルスON時間に比例する圧力特性を、第1及び第2開閉弁11A,11B毎に記憶するものである。
流量特性計測プログラム74は、流体分流供給ユニット1に実際のプロセスで使用するガスを流して、第1及び第2開閉弁11A,11Bの各々について流量特性を計測するものである。
分流制御プログラム75は、プロセスガスの分流供給を制御するものである。
故障検定プログラム76は、第1及び第2開閉弁11A,11Bやマスフローメータ8の故障を検出するものである。
<全体動作説明>
次に、上記流体分流供給ユニット1の動作について説明する。
流体分流供給ユニット1は、基板処理装置100(図22)に組み付けられると、先ず第1及び第2開閉弁11A,11Bの流量特性を取得する。その後、流体分流供給ユニット1は、第1及び第2設定流量Qa,Qbに基づいて第1及び第2開閉弁11A,11BのパルスON時間a’,b’を算出する。そして、流体分流供給ユニット1は、基板処理装置200が処理室102にウエハ103を搬送して処理を行う際に、第1及び第2開閉弁11A,11BをパルスON時間a’,b’に従って代わる代わる間欠的に開閉させ、プロセスガスを処理室102へ分流供給する。
<流量特性の取得>
分流コントローラ21は、流量特性取得指示を流量特性取得指示入力手段61に入力すると、図6に示す流量特性計測プログラム74をNVRAM54から読み出してRAM53にコピーし、実行する。
分流コントローラ21は、先ず、流量特性計測済みの開閉弁数nに0をセットして初期化する(ステップ1(以下「S1」と略記する)。そして、分流コントローラ21は、流量特性計測済みの開閉弁数nに1を加算し、1個目の開閉弁について流量特性を計測することを確認する(S2)。そして、S3において、nが1かを確認し、流量特性を計測する対象が1個目の開閉弁か確認する。
この時点では、1個目の開閉弁について流量特性を計測するので(S3:Yes)、第1開閉弁11Aに電圧を印加してからマスフローメータ8が流量を検出するまでの時間と、マスフローメータ8が測定する流量が安定した後に第1開閉弁11Aへの電圧印加を停止してから、マスフローメータ8が流量を検出しなくなるまでの時間を測定することにより、第1開閉弁11Aの弁開時と弁閉時の応答時間を測定する(S4)。そして、測定した応答時間に基づいて、弁開閉時に生じる脈動が小さく、かつ、デューティ制御に対する応答性を確保できる周期を、第1開閉弁11Aの動作周期tに設定する(S5)。
そして、プロセスで使用するプロセスガスに対応する一次側設定圧力Bを一次側設定圧力記憶手段71から読み出す(S6)。ここでは、一次側設定圧力Bを0.2MPaとする。読み出した一次側設定圧力Bは、表示部57に表示し、作業者が確認できるようにする。作業者は、圧力計6を見ながらレギュレータ5を手動で操作し、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1を一次側設定圧力Bに調整する(S7)。
そして、図13に示すように、第1開閉弁11Aを求めた動作周期tに固定した状態で、パルスON時間a’(Duty値)を変化させ、第1開閉弁11Aが出力する流量を測定する。本実施形態では、第1開閉弁11Aの出力流量は、流体分流供給ユニット1をそのまま使用して流量特性を簡単に得られるようにマスフローメータ8で測定するが、流量測定精度を上げるために、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側に膜流量計等の流量計を配置して流量を測定しても良い。そして、図14に示すように、流量とパルスON時間とが比例関係になる範囲(例えばDuty値が20%以上90%以下となる範囲)を流量特性としてRAM53に取得する(S8)。そして、取得した流量特性を一次側設定圧力Bに関連付けて流量特性記憶手段72に記憶する(S9)。
そして、一次側設定圧力Bの前後の圧力A(例えば0.3MPa),C(例えば0.1MPa)について、流量特性を取得したか否かを判断する(S10)。まだ取得していない場合には(S10:No)、レギュレータ5で第1開閉弁11Aの一次側圧力P1を一次側設定圧力Aに変更した後(S11)、S8へ戻る。
S8乃至S11の処理を繰り返し、第1開閉弁11Aについて、一次側設定圧力A,B,C毎に各々流量特性を取得したら(S10:Yes)、流量特性取得済み開閉弁数nがバルブ総数Nであるか確認する(S12)。第1開閉弁11Aの流量特性のみを取得した時点では、n=1,N=2であり、n=Nではない(S12:No)。よって、S2へ戻り、nに1を加算して第2開閉弁11Bについて流量特性を取得することを確認する。この時点では、nは2であって、1でないので、2個目の開閉弁について応答時間の測定と動作周期の設定を行わないと判断し(S3:No)、S6へそのまま進み、第2開閉弁11Bの流量特性の計測を開始する。つまり、分流コントローラ21は、第2開閉弁11Bについて応答時間の測定や動作周期の設定を特に行わずに、第1開閉弁11Aの応答時間と動作周期をそのまま利用して第2開閉弁11Bの流量特性を取得する(S6〜S11参照)。このように、第1及び第2開閉弁11A,11Bの応答時間と動作周期を同じにすることにより、副流路19を増設して開閉弁の数が増えた場合でも、各開閉弁の動作周期を一定にしてパルスON時間のみを変更すれば、流量変更を直ぐに行うことが可能になるからである。
第1及び第2開閉弁11A,11Bについて一次側設定圧力A,B,Cの流量特性を取得すると、n=Nになる(S12:Yes)。そこで、表示部57への表示やガスメータ115へ送信する信号により、流量特性の取得が終了したことを、作業者やガスコントローラ115に通知する(S13)。その後、処理を終了する。
以上により、流量特性記憶手段72には、バルブ特性や流路長、流路径、流路内CV値などの第1及び第2開閉弁11A,11Bの個体差を考慮した流量特性が記憶される。
<分流制御>
流体分流供給ユニット1は、基板処理装置100が動作を開始し、分流制御開始指示を分流制御開始・終了指示入力手段63に入力すると、分流コントローラ21が図7に示す分流制御プログラム75をNVRAM54から読み出してRAM53にコピーし、実行する。
図7に示すように、分流コントローラ21は、基板処理装置100に組み付けた後で第1及び第2設定流量Qa,Qbを設定されて最初に分流供給するとき、又は、分流供給を既に行った後で第1及び第2設定流量Qa,Qbを変更されたときに(S21:Yes)、パルスON時間a’,b’を設定する(S22)。
具体的には、図8に示すように、分流コントローラ21は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの第1及び第2設定流量Qa,Qbを流量設定変更手段62から入力する(S31)。そして、プロセスガスに対応する一次側設定圧力Pnを一次側設定圧力記憶手段71から読み出す。読み出した一次側設定圧力Pnは表示部57に表示して作業者が確認できるようにする。作業者は、レギュレータ5を手動で操作して第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1を一次側設定圧力Pnに調整する(S32)。
分流コントローラ21は、図14に示すように、第1及び第2設定流量Qa,Qbを、流量特性記憶手段72に記憶されている第1及び第2開閉弁11A,11Bの流量特性にそれぞれ照合し、圧力A,B,C、それに対応するパルスON時間(Duty値)を抽出する。そして、図15に示すように、抽出した圧力とパルスON時間(Duty値)とから、圧力がパルスON時間に比例する圧力特性を求め、圧力特性記憶手段77に記憶する(S33)。
そして、分流コントローラ21は、圧力計6が測定した圧力値を取得する(S34)。そして、取得した圧力値を、圧力特性記憶手段77に記憶した図15の圧力特性に照合し、第1及び第2開閉弁11A,11Bの各々についてパルスON時間a’,b’を決定する(S35)。ここで決定されるパルスON時間a’,b’は、流量とパルスON時間とが比例関係となる範囲(例えばDuty値20%以上90%以下の範囲)であって、且つ、一つの開閉弁が開いている際に必ず他の開閉弁は閉じている状態でなければならない。なぜならば、流量とパルスON時間とが比例関係にない場合や、第1及び第2開閉弁11A,11Bの両方が開いている場合では、流量誤差が大きくなるからである。そして、決定した第1及び第2開閉弁11A,11BのパルスON時間a’,b’をパルスON時間記憶手段73に記憶する(S36)。
その後、図7に示すように、分流コントローラ21は、パルスON時間記憶手段73に記憶されているパルスON時間a’,b’に従って、第1及び第2開閉弁11A,11Bを動作させる(S23)。
これにより、流体分流供給ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bが代わる代わる間欠的にプロセスガスを出力する。第1及び第2開閉弁11A,11Bから出力されたプロセスガスは、フィルタ12A,12Bで異物を除去された後に第1及び第2二次側タンク13A,13Bに溜められ、その後、第1及び第2ノズル106a,106bから処理室102へ出力される。
プロセスガスは、第1及び第2二次側タンク13A,13B内で第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴う流量や圧力の脈動を緩衝される。しかも、第1及び第2開閉弁11A,11Bは、動作周期tが10ms以上500ms以下の高頻度で開閉する。よって、流体分流供給ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bが間欠的に開閉しても、弁開時に出力されたプロセスガスが弁閉時に管路や第1及び第2二次側タンク13A,13B内で流量と圧力が均されて、第1及び第2ノズル106a,106bを介して処理室102へ第1及び第2設定流量Qa,Qbずつ連続して供給する。
分流コントローラ21は、マスフローメータ8が計測するユニット総流量Qを取得する(S24)。流体機器ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉時に生じる脈動の影響を受けてマスフローメータ8の出力流量に脈動が生じる可能性も考えられる。そこで、取得したユニット総流量Qを平均して、ユニット平均総流量Qmを算出する(S25)。そして、ユニット平均総流量Qmから、上記ある所定時間内に開閉した第1及び第2開閉弁11A,11Bの第1及び第2設定流量Qa,Qbを合計した指令総流量Qnを減算し、偏差QPを算出する(S26)。そして、偏差QPよりPID制御して、第1及び第2開閉弁11A,11BのパルスON時間a’,b’を補正する(S27)。
例えば、動作周期tを100ms、第1設定流量Qaを0.60SLM、第2設定流量Qbを0.40SLM、マスフローメータ8から流量を取得するある所定時間を100msとする。この場合、マスフローメータ8が100ms間流量を測定する間に、第1及び第2開閉弁11A,11Bは1回ずつ開閉し、指令総流量が1.00SLMとなる。マスフローメータ8が100ms内に測定したユニット総流量Qを平均したユニット平均総流量Qmが1.05SLMである場合、偏差が0.05SLMとなる。そこで、この偏差0.05SLMがゼロになるように、第1及び第2開閉弁11A,11BのパルスON時間a’,b’を短くするように補正する。
尚、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴い、プロセスガスの流量や圧力に脈動が生じる。しかし、マスフローメータ8のユニット平均総流量Qmは、図11に示すように、ユニットを流れるプロセスガスの流量とほぼ一致する。また、一次側タンク10が、第1及び第2開閉弁11A,11Bで生じた流量と圧力の脈動をタンク内で緩衝させ、マスフローメータ8に伝達しにくい。よって、流体分流供給ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bが開閉時に脈動を生じても、マスフローメータ8でユニットを流れるプロセスガスの流量、すなわち第1および第2開閉弁11A,11Bが実際に出力する流量を監視して適宜パルスON時間a’,b’を補正し、第1及び第2開閉弁11A,11Bの出力流量をフィードバック制御することが可能である。
分流コントローラ21は、分流制御終了指示を分流制御開始・終了指示入力手段63に入力するまで(S28:No)、S23〜S28の処理を繰り返し、プロセスガスを処理室102へ分流供給する。分流コントローラ21は、分流制御終了指示を入力すると(S28:Yes)、処理を終了する。
<故障検定処理>
流体分流供給ユニット1は、上記分流供給を繰り返し行うと、マスフローメータ8に異物が析出したり、熱式質量流量センサ素子が破損したり、第1及び第2開閉弁11A,11Bに異物がかみ込むなどの故障を生じることがある。基板処理装置100を停止させて故障点検を行うと、機器や配管の組立や点検終了後のパージなどに時間を要し、生産性が低下する。そのため、流体分流供給ユニット1は、基板処理装置100に組み付けたまま故障点検できるようにしている。
分流コントローラ21は、故障検定指示を検定指示入力手段64に入力すると、図9に示す故障検定プログラム76をNVRAM54から読み出してRAM53にコピーし、実行する。
図9に示すように、分流コントローラ21は、検定済み開閉弁数mに0をセットして初期化する(S41)。そして、検定済み開閉弁数mに1を加算し、第1開閉弁11Aの故障検定を行うことを認識する(S42)。
分流コントローラ21は、パルスON時間記憶手段73に設定されている第1開閉弁11Aの現在のパルスON時間a’を取得し、それに従って第1開閉弁11Aを駆動する(S43)。そして、圧力計6が測定した現在の圧力値Pと、第1開閉弁11Aの現在のパルスON時間a’を取得してRAM53に記憶する(S44)。そして、マスフローメータ8が測定するユニット総流量Qを取得する(S45)。
そして、取得したユニット総流量Qを流量特性記憶手段72に記憶されている第1開閉弁11Aの流量特性(図14参照)と照合し、圧力A,B,Cに対応するパルスON時間(Duty値)を取得する。その取得した圧力とパルスON時間とから、圧力がパルスON時間に対して比例する圧力特性(図15参照)を作成する(S46)。これにより、第1開閉弁11Aが検定時に出力している流量に応じた圧力特性が生成される。
そして、現在の圧力値Pと、現在の第1開閉弁11AのパルスON時間a’が、作成した圧力特性上にあるか確認する(S47)。この圧力特性は、現在の圧力値P1とは無関係に作成した検定時のユニット総流量Qを基準に作成されたものである。一方、現在の圧力値Pと現在のパルスON時間a’は、流体分流供給ユニット1が正常に動作するとき(基板処理装置100への組み付け時や第1及び第2設定流量Qa,Qbの設定変更時)を基準に取得されたものである。よって、現在の圧力値Pと現在のパルスON時間a’を検定時に作成した圧力特性と比較することにより、第1開閉弁11Aが正常時と同様に動作しているか確認できる。しかも、検定時の圧力特性に対して現在の圧力値Pを1点照合するだけで、第1開閉弁11Aの異常を確認できる。
現在の圧力値P1が作成した圧力特性上にある場合には(S47:Yes)、第1開閉弁11Aに故障がないので、S49へ進む。
一方、現在の圧力値P1が作成した圧力特性上にない場合には(S47:No)、第1開閉弁11Aに故障がある可能性が高いので、音声出力部58からアラームを鳴らす等して、作業者に異常を報知する(S48)。その後、S49へ進む。
S49において、分流コントローラ21は、検定済み開閉弁数mが、開閉弁の総数M(本実施形態では2個)か否かを判断することにより、全ての開閉弁について故障検定したかを確認する。この時点では、第2開閉弁11Bの故障検定を終えておらず、mはMより少ないので(S49:No)、S42〜S49の処理を繰り返して、第2開閉弁11Bの故障検定を行う。
第2開閉弁11Bの故障検定が終了し、検定済み開閉弁数mが開閉弁の総数Mと等しくなったら(S49:Yes)、第1及び第2開閉弁11A,11Bの故障を検出したか否かを判断する(S50)。故障を検出しなかった場合には(S50:No)、故障なしと判断する。
これに対して、故障を検出した場合には(S50:Yes)、第1及び第2開閉弁11A,11Bの全部について故障を検出したか否かを判断する(S51)。第1及び第2開閉弁11A,11Bの何れか一方について故障を検出した場合には(S51:No)、故障を検出した開閉弁のみが故障していると判断する。
一方、第1及び第2開閉弁11A,11Bの全部について故障を検出した場合には(S51:Yes)、マスフローメータ8が故障したと判断する。第1及び第2開閉弁11A,11Bが同時に故障するのは稀だからである。
<流量精度の確認>
発明者らは、流体分流供給ユニット1の流量制御の精度を確認する実験を行った。
実験では、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側に流量計を設置し、一次側タンク10と第1及び第2二次側タンク13A,13Bにタンク容積60ccのタンクを使用した。実験は、手動弁2にテストガスを供給し、第1及び第2二次側タンク13A,13Bを真空ポンプに接続して第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側を真空にした。そして、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1をレギュレータ5で0.1MPaに調整し、動作周期tを100msに固定して第1及び第2開閉弁11A,11BをパルスON時間a’,b’で開閉させて、第1及び第2開閉弁11A,11Bの出力流量を流量計で計測した。この第1及び第2開閉弁11A,11Bの出力流量を第1及び第2設定流量Qa,Qbと比較して誤差を求め、第1及び第2開閉弁11A,11Bの誤差を積算してユニット全体の流量誤差を調べた。
また、実験では、一次側圧力P1を0.2MPaと0.3MPaにした場合の流量誤差を、一次側圧力P1を0.1MPaとした場合と同様にして求めた。
この実験結果を図12に示す。
図12に示すように、流体分流供給ユニット1は、流量誤差が最大約±1%生じる。
また、発明者は、マスフローメータ8をマスフローコントローラに変更した実験装置を製作した。そして、マスフローコントローラで流量調整し、動作周期100msを分流比に応じて時分割することにより第1及び第2開閉弁11A,11BのパルスON時間を設定し、第1及び第2開閉弁11A,11Bを交互に開閉した場合の流量誤差を、上記と同様にして調べた。その結果、流量誤差は、最大5%であった。
よって、流体分流供給ユニット1のように、第1及び第2開閉弁11A,11BをパルスON時間a’,b’に従って開閉させて代わる代わる流量調整を行い、マスフローメータ8が測定する流量に基づいてパルスON時間a’,b’を適宜補正すると、マスフローコントローラで流量調整する場合より、流量誤差が約5分の1に減少させることが可能である。
これは、第1及び第2開閉弁11A,11Bで流量を制御する場合、二次側が処理室102に接続して真空にされる一方、一次側がプロセスガスを供給されて一次側設定圧力Pnにされているため、一次側圧力P1と二次側圧力P2との差圧が大きい。そのため、プロセスガスに流量や圧力の脈動が生じても、第1及び第2開閉弁11A,11Bは、応答性よく、プロセスガスの供給と遮断を行うことが可能である。そして、このような第1及び第2開閉弁11A,11BをパルスON時間a’,b’によって一定間隔で開閉して流量制御を行うので、弁開時の流量が安定する。よって、流体分流供給ユニット1は、流量誤差が小さいと考えられる。
一方、マスフローコントローラで流量を制御する場合、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1と二次側圧力P2との差圧が小さい。そのため、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴ってプロセスガスの流量と圧力に脈動が生じると、その脈動がマスフローコントローラの流量調整部分に影響して流量誤差を生じさせる。また、プロセスガスは、マスフローコントローラから第1及び第2開閉弁までの流路長や、流路内のCV値が異なる。そのため、マスフローコントローラで流量調整されたプロセスガスは、第1及び第2開閉弁11A,11Bに到達するまでに流量をばらつかせ、第1及び第2開閉弁から設定流量で正確に出力されないと考えられる。
<一次側タンクの機能について>
発明者らは、一次側タンク10の機能について調べる実験を行った。
実験では、一次側タンク10のタンク容積を0cc、60cc、120ccとする実験装置を製作した。そして、テストガスを手動弁2に供給し、第1及び第2二次側タンク13A,13Bを真空ポンプに接続して第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側を真空にした。そして、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tを200msに固定し、第1及び第2開閉弁11A,11BのパルスON時間a’,b’を20msにした場合のマスフローメータ8の出力流量を測定した。また、パルスON時間a’,b’を40ms、60ms、80ms、90ms、100msとした場合についても、同様にマスフローメータ8の出力流量を測定した。
この実験結果を図16、図17、図18に示す。
図16に示すように、一次側タンク10がタンク容積0ccである場合には、マスフローメータ8の出力流量が脈動する。特に、脈動は、パルスON時間a’,b’を40ms又は60msにした場合に大きくなる。この理由は次のように考えられる。例えばパルスON時間a’,b’を90msにした場合には、第1及び第2開閉弁11A,11Bが共に閉じる時間が瞬間的であるため、弁開時に流れるガスが、第1及び第2開閉弁11A,11Bが閉じている間に管路内で流量と圧力が均されると考えられる。逆に、例えばパルスON時間a’,b’を20msにした場合には、第1及び第2開閉弁11A,11Bが共に開く時間が瞬間的であるため、弁開時に流れるガスが第1及び第2開閉弁11A,11Bが閉じている間に管路内で流量と圧力が均されると考えられる。これに対して、例えばパルスON時間a’,b’を40ms又は60msにして、弁開時間と弁閉時間とをほぼ均等にした場合には、弁開時に流れたガスが管路内で流量と圧力が均される前に次のガスが供給され、脈動が解消されないためと考えられる。
この点、図17に示すように、一次側タンク10がタンク容積60ccである場合には、パルスON時間a’,b’を40ms、60msに設定したときに、マスフローメータ8の出力流量に生じる脈動が抑制される。
更に、図18に示すように、一次側タンク10がタンク容積120ccである場合には、パルスON時間a’,b’によらず、マスフローメータ8の出力流量が殆ど脈動しない。
よって、流体分流供給ユニット1は、マスフローメータ8と第1及び第2開閉弁11A,11Bとの間に一次側タンク10を配置することにより、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴ってマスフローメータ8が測定する流量に脈動が生じることを抑制できる。これは、脈動するガスが一次側タンク10に溜められて互いに緩衝し、脈動を低減させるためと考えられる。脈動を抑制する効果は、タンク容積が大きい程、顕著である。尤も、タンク容積が大きいと、流体分流供給ユニット1の設置面積が大きくなり、例えば、近年の半導体製造装置のコンパクト化の流れに反する。よって、第1及び第2開閉弁11A,11Bの第1及び第2設定流量Qa,Qbに適したタンク容積をもつ一次側タンク10を使用することが好ましい。
更に、発明者らは、一次側タンク10のタンク容積を60ccとし、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tとマスフローメータ8の出力流量との関係を調べた。実験では、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tを300ms、100msにそれぞれ固定し、パルスON時間a’,b’を変更してマスフローメータ8の出力流量を上記と同様に調べた。
この実験結果を図19及び図20に示す。
図19に示すように、動作周期tを300msに固定すると、パルスON時間a’,b’が20msと短くても、マスフローメータ8の出力流量に脈動が生じる。特にこの場合、脈動の周期が長くなる。
これに対して、図20に示すように、動作周期tを100msに固定すると、パルスON時間a’,b’が第1及び第2開閉弁11A,11Bの弁開時間と弁閉時間をほぼ均等にする15ms、20msecであっても、マスフローメータ8の出力流量に生じる脈動が小さい。
よって、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tが早いほど、マスフローメータ8の出力流量に脈動が生じにくい。これは、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tが早いと、弁閉時の脈動がマスフローメータ8に到達する前に、次の開閉弁が弁開し、プロセスガスが二次側へ一気に流れるためと考えられる。
尚、この一次側タンク10の機能と同様のことが、第1及び第2二次側タンク13A,13Bにも言えることは、言うまでもない。
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態の流体分流供給ユニット1は、マスフローメータ8が測定したユニット総流量Qに基づいて第1及び第2開閉弁11A,11Bが出力する流量を監視し、ユニット総流量Qを平均したユニット平均総流量Qmと、第1及び第2設定流量Qa,Qbを合計した指令総流量Qnとの偏差QPを求め、偏差QPがゼロになるようにパルスON時間a’,b’を補正して第1及び第2開閉弁11A,11Bが出力する流量を第1及び第2設定流量Qa,Qbにフィードバック制御するので、流量制御の精度が向上する。尚、上記実施形態では、マスフローメータ8の出力流量に脈動が生じることもあるため、ユニット平均総流量Qmを算出してそれを指令総流量Qnと比較して偏差QPを求めたが、ユニット平均総流量Qmは、実際の平均総流量とほぼ一致するため(図11参照)、ユニット平均総流量Qmをユニット総流量Qに置き換えても同様のことが言える。そのため、特許請求の範囲のユニット総流量にはユニット平均総流量も含まれる。
また、流体分流供給ユニット1は、ガス供給源111の圧力が第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側に直接作用し、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1と二次側圧力P2との差圧が大きい。そのため、第1及び第2開閉弁11A,11Bが弁を開閉する際に生じる圧力変動が、第1及び第2開閉弁11A,11Bの流量に影響しにくく、第1及び第2開閉弁11A,11Bは、パルスON時間a’,b’に従って開閉する際に、プロセスガスが流量特性に従った流量を出力する。よって、流体分流供給ユニット1は、マスフローコントローラを使用する場合のように流量が安定するのを待って第1及び第2開閉弁11A,11Bを開閉する必要がなく、無駄な待ち時間を減らすことができる。
例えば、流体分流供給ユニット1を基板処理装置100に使用する場合、ウエハ103に供給するプロセスガスの流量を正確に制御するので、ウエハ103の品質を安定させることができる。また、処理室102にプロセスガスを分流供給する間の無駄時間が少ないため、プロセス時間の短縮及びプロセスガスの変質を防ぐことが可能になる。近年、ウエハに形成する回路の集積化が進み、プロセスガスの管理がシビアになっていることを鑑みれば、本実施形態の流体分流供給ユニット1は半導体産業に大きく貢献する。
ここで、本実施形態の流体分流供給ユニット1は、主流路16に流体を供給して、第1及び第2開閉弁11A,11Bの流量特性を取得する分流コントローラ21を有し、分流供給時と同様の条件で流量特性を取得している。よって、流体分流供給ユニット1は、流路長や流路内のCv値、バルブ特性などの第1及び第2開閉弁11A,11Bの個体差を流量特性に反映させ、流量制御をより精度良く行うことができる。
また、本実施形態の流体分流供給ユニット1は、分流コントローラ21が、レギュレータ5によって第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1を変更し、第1及び第2開閉弁11A,11Bの各々について流量特性を2以上取得する。そのため、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1が、流量特性取得時の圧力に一致していなくても、2以上の流量特性から第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1に適した流量特性を生成してパルスON時間a’,b’を決定できるので、迅速な流量制御を行うことができる。
また、本実施形態の流体分流供給ユニット1は、第1及び第2設定流量Qa,Qbが設定変更された場合に、分流コントローラ21が、設定変更された第1及び第2設定流量Qa,Qbを第1及び第2開閉弁11A,11Bの2以上の流量特性に照合させて、圧力がパルスON時間a’,b’に比例する圧力特性を第1及び第2開閉弁11A,11B毎に導き出す。分流コントローラ21は、その圧力特性に圧力計6が測定した圧力を当てはめて、第1及び第2開閉弁のパルスON時間a’,b’を決定する。このように、本実施形態の流体分流供給ユニット1によれば、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1に応じてパルスON時間a’,b’を変更して第1及び第2開閉弁11A,11Bの流量を変更するので、流量変更を瞬時に行うことができる。
また、本実施形態の流体分流供給ユニット1は、マスフローメータ8と第1及び第2開閉弁11A,11Bとの間に配置され、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する一次側タンク10を配置している。そのため、流体分流供給ユニット1は、流量の脈動を抑制して流量を安定させるので、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉動作の影響を受けてマスフローメータ8の流量測定精度が低下しない。また、流体分流供給ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1の脈動を抑制して一次側圧力P1を安定させ、レギュレータ5が脈動を抑制するように分流供給時に動作し続けることがなくなり、レギュレータ5を長寿命化することができる。
また、本実施形態の流体分流供給ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側に、第1及び第2開閉弁11A,11Bの開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する二次側タンク13A,13Bを配置している。そのため、流体分流供給ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側に発生する流量の脈動を抑制し、連続的に所定量ずつプロセスガスを処理室102に供給して処理室102内の流体濃度を均一にさせやすい。また、流体分流供給ユニット1は、第1及び第2開閉弁11A,11Bの二次側に発生する圧力の脈動を抑制し、配管及び処理室102に残存するパーティクルを巻き上げることを防止して安定したプロセスを行うことができる。
また、本実施形態の流体分流供給ユニット1は、分流コントローラ21が、圧力計6が測定した圧力と、第1又は第2開閉弁11A,11BのパルスON時間a’,b’とが、第1又は第2開閉弁11A,11Bの圧力特性上にあるか否かを判断し、圧力特性上にないと判断した場合に故障を検出する。よって、本実施形態の流体供給分流ユニット1によれば、故障を生じたまま流量制御を行うことがなく、流量制御の精度をより一層向上させることができる。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)例えば、上記実施形態では、主流路16から分岐する副流路19を2連にしたが、図21に示すように3連以上としても良い。この場合、開閉弁11の数が増えるが、上記実施形態と同様に各開閉弁11のパルスON時間を決定して開閉弁11を開閉させ、流量制御を行う。このとき、マスフローメータ8の流量によって開閉弁11の出力流量を監視し、パルスON時間を適宜補正して開閉弁11の流量をフィードバック制御する。よって、副流路19を3連以上設けても、流量制御を精度良く行える。また、このように副流路19を3連以上設けた場合、各副流路の開閉弁11を動作させる順序は任意で良い。
(2)上記実施形態では、図10に示すガス供給シーケンスにおいて、第1及び第2開閉弁11A,11Bの弁開可能時間t’a,t’bを動作周期tの2分の1(t/2)とした。しかし、弁開可能時間t’a,t’bは、バルブ数に応じて均等に割り振る必要はなく、パルスON時間が確保でき、且つ、動作周期が変化しなければ、任意の時間でもかまわない。例えば、動作周期tに対して、第1開閉弁11Aの弁開可能時間t’aをパルスON時間a’より長い2t/3に設定し、第2開閉弁11Bの弁開可能時間t’bをパルスON時間b’より長いt/3としても良い。
(3)例えば、上記実施形態では、流体分流供給ユニット1を基板処理装置100に適用した。これに対して、流体を分流供給するものであれば、流体分流供給ユニット1は他の装置にも適用できる。また、流体は半導体製造用のプロセスガスに限定されず、各種ガスや液体とすることが可能である。
(4)例えば、上記実施形態では、手動式のレギュレータ5を圧力調整手段の一例とした。これに対して、電気式のレギュレータを圧力調整手段の一例とし、第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側圧力P1を自動調整しても良い。
(5)例えば、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期tが短く、第1及び第2開閉弁11A,11Bを開閉する際の脈動が小さい場合には、一次側タンク10又は二次側タンク13A,13Bを省略して、ユニット1のコンパクト化を図っても良い。
(6)例えば、一次側タンク10には、中空部を備えるタンクだけでなく、マスフローメータ8から第1及び第2開閉弁11A,11Bまでの流路配管容積によって構成しても良い。また、一次側タンク10は、主流路16におけるマスフローメータ8の二次側に単独で配置するものだけでなく、例えば、第1及び第2副流路19A,19Bにおける第1及び第2開閉弁11A,11Bの一次側に配置したタンク群によって構成されるものや、主流路16におけるマスフローメータ8の二次側に複数設置されるタンク群であっても良い。
(7)例えば、二次側タンク13A,13Bには、中空部を備えるタンクだけでなく、第1及び第2開閉弁から処理室などの流体供給先までの流路配管容積によって構成しても良い。また、二次側タンク13A,13Bは、複数のタンク群で構成しても良い。
(8)例えば、開閉弁11A,11Bは、高頻度で開閉可能なものであれば、エアオペレイトバルブなど種類を限定しない。
(9)上記実施形態では、故障検定時に異常をアラームで報知したが、表示部57に故障を告知するメッセージを表示したり、警告灯を点灯させるなどして、作業者に異常を報知するようにしても良い。
(10)上記実施形態では、脈動の影響を排除するために、ユニット平均総流量Qmを算出して指令総流量Qnとの偏差QPを求めたが、第1及び第2開閉弁11A,11Bの動作周期が短く脈動が小さい場合には、ユニット総流量Qをそのまま指令総流量Qnと比較して偏差QPを求めても良い。
本発明の第1実施形態に係る流体分流供給ユニットの回路図である。 図1に示すガス集積ユニットを具現化したものの上面図である。 図2に示すガス集積ユニットのAA断面図であって、図中一点鎖線はガス流路を示す。 図2に示す開閉弁の断面図である。 図1に示す分流コントローラの電気ブロック図である。 図5に示す流量特性計測プログラムのフローチャートである。 図5に示す分流制御プログラムのフローチャートである。 図7に示すパルスON時間設定プログラムのフローチャートである。 図5に示す故障検定プログラムのフローチャートである。 図1に示す流体分流供給ユニットのガス供給シーケンスフローを示すタイムチャートである。 図1に示すマスフローメータが計測する流量と、第1及び第2開閉弁が実際に出力する実流量との関係を示す図である。縦軸が流量(SLM)を示し、横軸がパルスON時間(ms)を示す。 図1に示す流体分流供給ユニットの流量精度を示す図である。縦軸が流量誤差(%F・S)を示し、横軸がDuty(%)を示す。 図6に示す流量特性計測プログラムの実行時に開閉弁に与えるバルブ駆動信号を示す図である。 図6に示す流量特性計測プログラムの実行により取得した流量特性の一例を示す図である。 図7に示す分流制御プログラムの実行時に取得した圧力特性の一例を示す図である。 図1に示す一次側タンクのタンク容積を0ccとした場合のマスフローメータの出力を示す図である。各グラフは、第1及び第2開閉弁の動作周期tを200msに固定し、パルスON時間を変えて計測したマスフローメータの出力を示す。縦軸が流量(SLM)を示し、横軸が時間(s)を示す。 図1に示す一次側タンクのタンク容積を60ccとした場合のマスフローメータの出力を示す図である。各グラフは、第1及び第2開閉弁の動作周期tを200msに固定し、パルスON時間を変えて計測したマスフローメータの出力を示す。縦軸が流量(SLM)を示し、横軸が時間(s)を示す。 図1に示す一次側タンクのタンク容積を120ccとした場合のマスフローメータの出力を示す図である。各グラフは、第1及び第2開閉弁の動作周期tを200msに固定し、パルスON時間を変えて計測したマスフローメータの出力を示す。縦軸が流量(SLM)を示し、横軸が時間(s)を示す。 図1に示す一次側タンクのタンク容積を60ccとし、第1及び第2開閉弁の動作周期tを300msにした場合のマスフローメータの出力を、パルスON時間別に示す図である。縦軸が流量(SLM)を示し、横軸が時間(s)を示す。 図1に示す一次側タンクのタンク容積を60ccとし、第1及び第2開閉弁の動作周期tを100msにした場合のマスフローメータの出力を、パルスON時間別に示す図である。縦軸が流量(SLM)を示し、横軸が時間(s)を示す。 図1に示す流体分流供給ユニットの変形例を示す。 従来の基板処理装置の一部断面正面図である。
符号の説明
1 流体分流供給ユニット
5 レギュレータ(圧力調整手段)
6 圧力計
8 マスフローメータ
11A,11B 第1,際2開閉弁
10 一次側タンク
13A,13B 二次側タンク
16 主流路
19A,19B 副流路
21 分流コントローラ(流量制御手段、補正手段、検定手段)
Q ユニット総流量
Qm ユニット平均総流量
Qa,Qb 設定流量
Qa+Qb 指令総流量
P1 一次側圧力

Claims (7)

  1. 流体供給源に接続する主流路と、前記主流路から分岐した第1及び第2副流路とを有し、前記第1副流路に配置された第1開閉弁と前記第2副流路に配置された第2開閉弁を代わる代わる開閉して流体を分流供給する流体分流供給ユニットにおいて、
    前記第1及び前記第2開閉弁は、一次側圧力と動作周期とが一定である場合に、出力流量が動作周期に対して弁開するパルスON時間に比例する流量特性をそれぞれ有し、
    前記第1及び前記第2開閉弁の一次側圧力を一定に調整する圧力調整手段と、
    前記主流路に配置されて当該ユニットを流れる前記流体のユニット総流量を測定するマスフローメータと、
    前記第1及び前記第2開閉弁が出力する流量として設定された第1及び第2設定流量を、前記第1及び前記第2開閉弁の前記流量特性にそれぞれ照合して、前記第1及び前記第2開閉弁の前記パルスON時間を決定し、その決定したパルスON時間に従って前記第1及び前記第2開閉弁を開閉して流量制御を行う流量制御手段と、
    前記マスフローメータが測定した前記ユニット総流量と、前記第1及び前記第2設定流量を合計した指令総流量との偏差をゼロにするように前記パルスON時間を補正する補正手段と、
    を有することを特徴とする流体分流供給ユニット。
  2. 請求項1に記載する流体分流供給ユニットにおいて、
    前記主流路に前記流体を供給して、前記第1及び前記第2開閉弁の前記流量特性を取得する流量特性取得手段を有することを特徴とする流体分流供給ユニット。
  3. 請求項2に記載する流体分流供給ユニットにおいて、
    前記流量特性取得手段は、前記圧力調整手段によって前記一次側圧力を変更し、前記第1及び前記第2開閉弁の各々について前記流量特性を2以上取得することを特徴とする流体分流供給ユニット。
  4. 請求項3に記載する流体分流供給ユニットにおいて、
    前記第1及び前記第2設定流量を設定変更する流量設定変更手段と、
    前記第1及び第2開閉弁の一次側圧力を測定する圧力測定手段と、を有し、
    前記流量制御手段は、前記流量設定変更手段により前記第1及び前記第2設定流量が設定変更された場合に、前記設定変更された前記第1及び前記第2設定流量を前記第1及び前記第2開閉弁の前記2以上の流量特性に照合させて、圧力がパルスON時間に比例する圧力特性を前記第1及び前記第2開閉弁毎に導き出し、前記圧力特性に前記圧力測定手段が測定した圧力を当てはめて、前記第1及び前記第2開閉弁の前記パルスON時間を決定するものであることを特徴とする流体分流供給ユニット。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載する流体分流供給ユニットにおいて、
    前記マスフローメータと前記第1及び前記第2開閉弁との間に、前記第1及び前記第2開閉弁の開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する一次側タンクを配置していることを特徴とする流体分流供給ユニット。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載する流体分流供給ユニットにおいて、
    前記第1及び前記第2開閉弁の二次側に、前記第1及び前記第2開閉弁の開閉に伴う脈動を緩衝させることが可能な容積を有する二次側タンクを配置していることを特徴とする流体分流供給ユニット。
  7. 請求項4乃至請求項6の何れか1つに記載する流体分流供給ユニットにおいて、
    前記圧力測定手段が測定した圧力と、前記第1又は前記第2開閉弁のパルスON時間とが、前記第1又は前記第2開閉弁の前記圧力特性上にあるか否かを判断し、前記圧力特性上にないと判断した場合に故障を検出する故障検定手段を有することを特徴とする流体分流供給ユニット。
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