JP5010911B2 - 押出ダイスの製造方法およびこれに用いる放電加工用電極 - Google Patents
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Description
上記雌型の成形孔に含まれるベアリング面は、鋼製の型素材の中心部に対し、目的とする押出形材の外形に倣ってワイヤーカット放電加工を行うことにより、容易に製作することができる。
一方、雄型のうち、複数のメタル通過孔は、鋼製の型素材に対し、予め、マシニングセンター、あるいは汎用フライスなどによる複数の機械切削加工によって形成できるが、雄型のベアリング面を含むマンドレル部には、機械切削加工の難しい部分があるため、これまで係る部分ごとに専用の放電加工用電極を用意して放電加工を行っていた。
しかしながら、上記特許文献1のマンドレル部を加工する方法では、加工部位ごとに複数個の加工電極を順次用いるため、交換のための段替えが必要となり、工数を要し且つコスト高を招いていた。しかも、複数の放電加工を経る間に、マンドレルの基準加工面がずれ易いため、所要の形状に精度良く加工することが困難でバラツキを生じるおそれがあった。この結果、成形される中空部を有する押出形材の形状や寸法が安定し難い、という問題があった。
また、鋼製の型素材は、強度を向上させるため、熱処理を施す場合がある。係る熱処理された型素材は、強度が向上するため、その後に行う機械切削加工が難しくなる。このため、型素材の機械切削加工は、熱処理の前に行っていた。しかし、係る熱処理は、高温(例えば、1020℃)で施されるため、当該熱処理された後の型素材に変形が生じてしまう。その結果、熱処理の後において、形状や寸法精度が重要な部分に対しては、再度の機械切削加工が必要となる、という問題もあった。
即ち、本発明の押出ダイスの製造方法(請求項1)は、中空部を有する押出形材を成形するためのマンドレル部およびブリッジを有する押出ダイスの雄型の製造方法であって、鋼製の型素材に対し、マンドレルおよびブリッジを目的とする形状に近似する形状に荒加工する工程と、荒加工された型素材のマンドレル部およびブリッジの少なくとも一方に形成される複数の連続する部位に対し、係る複数の連続する部位を放電加工する複数の加工部を含む単一の放電加工電極を、押出方向と直交する方向に移動させて接触直前とし、少なくともベアリング部およびアンダーカットを形成する放電加工を上記押出方向と直交する方向で且つ異なる方向に複数回行う工程と、を含む、ことを特徴とする。
更に、従来機械切削加工していた部分も他の部分と一緒に放電加工するため、放電加工自体の所要時間が従来よりも延びるが、係る放電加工する部分の機械切削加工が不要となるので、トータル(全工程)での加工時間を短縮できる。
しかも、従来では、連続する部位を個々に切削加工するため、連続する部位間の境目に角が生じ易く、メタル流動が阻害される。このため、係る角部分をアール取りで除去する面倒な後工程が必要であった。本発明によれば、連続する部位を単一の放電加工で形成できるため、連続する部位の境目に相当する電極部分に予めアール形状を付しておくことで、上記後工程を不要にできる。
更に、前記複数の連続する部位とは、例えば、ベアリング部(予定面)とベアリング部の逃げ部、ベアリング部とその上流側(ビレット側)に位置するメタル溜まり部のアンダーカット部、アンダーカット部とその上流側に位置し且つアンダーカット部へメタルを送給するバルクヘッド、あるいは、中空押出形材のウェブ(仕切り壁)にメタルを送給するためのトンネルと流れ込み部と流し込み部などである。上記トンネルは、複数の中空部を区画するウェブを成形するため、最接近する一対のベアリング面の間にメタルを供給するための空間(メタル溜まり)である。
加えて、前記放電加工の対象となるブリッジは、複数のメタル通過孔を区画する複数のブリッジの中央部側を含むと共に、マンドレル部の上流側に隣接し且つ前記複数のブリッジが収束する中央部分も含まれる。
これによれば、少なくともベアリング部およびアンダーカットを含むマンドレル部やこれに隣接するブリッジを、一回の放電加工で形成できる前記放電加工を確実に行うことができる。しかも、一度に複数の部位を同時に放電加工できるため、ベアリング部およびアンダーカットを含むマンドレル部などの形状および寸法を、ダイス設計者が意図した形状などに精度良く再現することが可能となる。更に、従来のように部分ごとの放電加工用の電極型を多数用意する場合に比べて、放電加工電極型の数が著しく低減できるため、工程管理も容易となる。
2次元の図面では、立体的な部分は表現が難しいので、係る部分は図面を読み取る作業者の解釈に任されるが、これでは、ダイス設計者の意図が正確に反映されない場合が生じる。本発明では、最初の設計段階で3次元データ化(モデリング)しておくことで、図面を読み取る作業者の解釈が加えられる余地がなくなるので、意図した通りの形状に再現できる。
また、前記複数の加工部は、例えば、型素材におけるビレット側が前記アンダーカットとこれに隣接するバルクヘッド、トンネルと流れ込み部と流し込み部となるように反対の形状を備えている。例えば、入り隅のアンダーカットに対しは、相似形で且つ出隅形状が加工部となり、複数の中空部を区画するウェブとなる最接近する一対のベアリング面の間にメタルを供給するトンネル(貫通孔)に対しは、その軸方向に沿った凸部が加工部となる。
図1は、本発明の対象である押出ダイスの雄型の予め荒加工後における型素材D1を示す斜視図、図2は、図1中のX−X線の矢視に沿った断面図である。
雄型の型素材D1は、例えば、SKD61などの工具鋼(鋼材)からなり、予め円柱形の鋼素材に対し、ドリルなどによる孔明け、切削、および研削加工などによる荒加工を施されたもので、円筒形の外周部1と、その内側から求心状に中心部に延びる4つのブリッジBとを備えている。係るブリッジBの交叉部である中央に支持されたマンドレル部M1は、目的とする中空部形状に近似した形状に加工されている。尚、機械加工により荒加工された型素材D1は、機械的強度を高めるため、所要の熱処理が施される。
荒加工されたマンドレル部M1は、押出方向の下流側に突出した全体がほぼ直方体を呈し、後端面4、これを囲む段部5、一対の長い側面6,7、および、一対の短い端面8を備えており、これらの上流側は、ブリッジBに連続して支えられている。また、長方形を呈する後端面4の中央には、係る長方形を2分割する一定深さのスリットsが、段部5に達する深さで形成されている。尚、係るマンドレル部M1は、上流部3と連続している。
係る放電加工用電極10の素材は、通常放電加工に用いられる黒鉛または銅合金などであるが、加工性を考慮すると黒鉛が望ましい。
放電加工用電極10は、図3に示すように、放電加工部となる本体11の内側面12には、左右両端から水平(押出方向に直交する方向)に延びた一対の凸部13、それらの上流側から斜め下向きに延びる傾斜部14、内側面12の中央部から水平(同上)に延びた3種類の凸部T、V、15、および凸部15の上流側から斜め下向きに延びる傾斜部16が形成されている。
一対の凸部13は、前記マンドレル部M1の端面8,8を放電加工する加工部であり、それらの内側の下隅には、メタルの流動を滑らかにするためのアールrが対称に付されている。また、各傾斜部14は、メタルを端面8,8付近に斜めに通す流路を形成するための加工部である。係る凸部13と傾斜部14とは、互いに連続している。
内側面12には、後述する逃げ部を成形する平面17、ベアリング部を成形する凹溝18、アンダーカット部を成形する平面Q、および、バルクヘッド部を成形する傾斜面19(何れも加工部)が、連続して形成されている。
以上のような凸部T,V,13,15、傾斜部14,16、平面17,Q、凹溝18、および傾斜面19(何れも加工部)を内側面12に有する放電加工用電極10は、黒鉛または銅合金からなる所定形状の素材塊に対し、予め上記各部ごとの所要の形状および寸法を、3次元データ化(モデリング)し、これらをコンピュータなどに記憶させておき、係る数値に基づき数値制御されたマシニングセンターやNCマシーンなどによって、切削、研削、研磨などを設定された順序に従って、各部ごとの加工を施すことにより製作される。
尚、上記放電加工用電極10は、前記マンドレル部M1を加工の対象としているが、係るマンドレル部M1に隣接する各ブリッジBの下流側を加工の対象とする形態としても良い。また、メタル流路を成形する傾斜部14,16、トンネルを成形する凸部15、およびアンダーカット部を成形する平面Qなどの加工部は、熱処理後の放電加工により形成される。
予め、前記荒加工された型素材D1を、図示しない放電加工装置の絶縁性の油槽中に浸漬し且つ電極と導通させた状態とする。
次に、図4中の実線の矢印で示すように、型素材D1のマンドレル部M1における側面6とこれに隣接する端面8,8の半分とに対し、前記と反対向きにした前記放電加工用電極10を下降させ、且つ水平移動(前進)させて、内側面12の凸部T,V,13,15などを接触直前とする。
係る状態で、型素材D1と放電加工用電極10との間に所要の電圧を断続的に印加すると、当該電極10の内側面12に位置する凸部T,V,13,15、傾斜部14,16、平面17,Q、凹溝18、および傾斜面19と、マンドレル部M1における側面6およびこれに隣接する端面8,8との微細な隙間で放電が断続的に生じる。
更に、図5に示すように、放電加工用電極10の凸部13,13間の平面17,Q、凹溝18、および傾斜面19がマンドレル部M1の側面6に接触しつつ、対向する側面6の該当部分を、これらに倣った形状に放電加工する。
上記側面6およびこれに隣接する端面8,8に対する放電加工が終わると、放電加工用電極10を後退および上昇させて、前記油槽から一旦引き上げる。
次いで、図4中の破線の矢印で示すように、型素材D1のマンドレル部M1における側面7とこれに隣接する端面8,8の半分とに対し、前記放電加工用電極10を下降させ、且つ水平移動(前進)させて、内側面12の凸部T,V,13,15などを接触直前とし、前記同様の電圧を電極10とマンドレル部M1との間に印加する。すると、当該電極10の内側面12に位置する凸部T,V,13,15、傾斜部14,16、平面17,Q、凹溝18、および傾斜面19と、マンドレル部M1における側面7およびこれに隣接する端面8,8との微細な隙間で放電が断続的に生じる。
更に、図6に示すように、放電加工用電極10の凸部13,15,13間の平面17、凹溝18、および傾斜面19がマンドレル部M1の側面6に接触しつつ、対向する当該側面6の部分をこれらに倣った形状に放電加工する。
上記側面7およびこれに隣接する端面8,8に対する放電加工が終わると、放電加工用電極10を後退および上昇させて、前記油槽から引き上げる。
尚、前記スリットsとトンネル25との間は、凸部Vにより形成された幅狭のメタル流路24によって連通されており、係るトンネル25内に流入したメタルをメタル流路24を介して下流側のスリットsに流動させることで、押出形材における複数の中空部を仕切るウェブを成形することが可能となる。
図10に示すように、雌型D3の成形孔30内に、雄型D2のマンドレルM2を挿入することによって、ポートホールダイス(中空押出ダイス)D4が形成される。
尚、図10において、雌型D3の押出方向における下流側には、図示しないバックダイやボルスターなどが同軸心で配置され、雄型D2の上流側には、アルミニウム合金のビレットを収容する図示しないコンテナが配置される。
この間において、マンドレル部M2には、ベアリング面28寄りに傾斜した前記バルクヘッド21や流れ込み部26などによって、上記メタルは、ベアリング面28側に徐々に集束される共に、当該ベアリング面28の全周にわたって均一なメタル量となるように調整される。その結果、係るメタルは、マンドレル部M2におけるベアリング面28の全周と雌型D4の成形孔30におけるベアリング面との隙間から、押し出される。
その結果、図10中の実線の矢印で示すように、左右一対の中空部Sとこれらの間をウェブwで区画された断面がほぼ日字形の中空押出形材Aを、ポートホールダイスD4から精度良く押出成形することができる。
この結果、前記押出ダイスの製造方法によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)型素材D1におけるマンドレル部M1の側面6,7や端面8,8を、一回ごとの放電加工による少ない工数および時間により、所要の形状および寸法に精度良く確実に加工することができる。
(2)押し出される中空押出形材Aの形状および寸法に精度が高くなるため、試し押し(テスト押し)のための回数を低減できる。
(1)マンドレル部M1の側面6,7を、一回ごとの放電加工で形成できる前記放電加工を確実に行うことができる。
(2)一度に側面6,7における複数の部位を同時に放電加工できるため、マンドレル部M2の形状および寸法を精度良く再現することが可能となる。
例えば、前記雄型D1のマンドレル部M1に対し、側面6,7および端面8,8ごとに専用の放電加工電極を用いて、個別に放電加工しても良い。
また、マンドレル部M1の軸方向(押出方向)に沿って、側面6,7および端面8,8を2回以上に分けて、それぞれ同時に複数の部位を放電加工することも可能である。
更に、図11に示すように、押出方向に沿った断面が円形のマンドレル部M1の場合、複数の加工部を併有するほぼ半円形の加工面42を黒鉛などの本体41に有する放電加工電極40を、2回に分けて放電加工する形態としても良い。あるいは、押出方向に沿って更に2回に分けて放電加工する形態としても良い。
また、前記スリットsやメタル流路24の数や位置を変更して、断面ほぼ目字形や断面ほぼ田字形の中空押出形材を成形したり、スリットsとメタル流路24とを省略して、単一の中空部Sを有する押出形材を成形することも可能である。
S……………中空部
D1…………型素材
D2…………雄型
D4…………中空押出ダイス(押出ダイス)
M1,M2…マンドレル部
B……………ブリッジ
10,40…放電加工電極
13,15…凸部(加工部)
T……………凸部(加工部)
V……………凸部(加工部)
14,16…傾斜部(加工部)
17,Q……平面(加工部)
18…………凹溝(加工部)
21…………傾斜面(部位)
22,29…平坦面(部位)
23…………アンダーカット(部位)
25…………トンネル(部位)
26…………流れ込み部(部位)
27…………逃げ部(部位)
28…………ベアリング面(部位)
Claims (2)
- 中空部を有する押出形材を成形するためのマンドレル部およびブリッジを有する押出ダイスの雄型の製造方法であって、
鋼製の型素材に対し、マンドレルおよびブリッジを目的とする形状に近似する形状に荒加工する工程と、
荒加工された型素材のマンドレル部およびブリッジの少なくとも一方に形成される複数の連続する部位に対し、係る複数の連続する部位を放電加工する複数の加工部を含む単一の放電加工電極を、押出方向と直交する方向に移動させて接触直前とし、少なくともベアリング部およびアンダーカットを形成する放電加工を上記押出方向と直交する方向で且つ異なる方向に複数回行う工程と、を含む、
ことを特徴とする押出ダイスの製造方法。 - 中空部を有する押出形材を成形するためのマンドレル部およびブリッジを有する押出ダイスの雄型の製造するために用いる放電加工用電極であって、
鋼製の型素材のマンドレル部およびブリッジの少なくとも一方に形成される複数の連続する部位に対し、係る複数の連続する部位を、押出方向と直交する方向に沿って移動しつつ放電加工するための複数の加工部を有し、係る複数の加工部は、少なくともベアリング部およびアンダーカットを形成するための加工部を含む、
ことを特徴とする放電加工用電極。
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