JP5010706B2 - タンタルの回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンタルの回収方法に関し、特に、タンタルコンデンサを含むプリント配線板などから得られるタンタル含有廃棄物、或いはタンタルコンデンサから取り出したタンタル焼結体からタンタルを効率的に回収する技術に関する。
タンタルコンデンサは、大容量で安定性が高く、ノート型パソコンや通信機器や大型パソコン、音響系機器などに多く使用されている。そして、日本国内では年間約38億個ものタンタルコンデンサが製造されていると言われている。このようなタンタルコンデンサは、プリント配線板などの各種電子・電気基材に実装されて市場に流通するが、その後の使用済みとなったタンタルコンデンサについては、経済的、技術的な理由から積極的な回収やリサイクルが行われず、単なる産業廃棄物として処理されているのが現状である。
近年、資源不足の問題から、廃棄される電子・電気機器などからレアメタルを回収して、再利用する取り組みが国家プロジェクトとして推進されている。そして、このレアメタルの一つであるタンタルを、プリント配線板などの廃棄基材や、使用済みタンタルコンデンサから高効率で回収することが期待されている。
従来、使用済みのタンタルコンデンサからタンタルを回収する技術としては、例えば、使用済みタンタルコンデンサの被覆材、二酸化マンガン固体電解質を、酸浸出、炭素還元−酸浸出、塩素化−蒸留またはアルゴン−水素プラズマ法により除去した後、塩素化法、アルコキサイド化法、電子ビーム溶解法またはこれらの組み合わせにより精製するスクラップタンタルからタンタルを回収する方法が知られている(特許文献1参照)。
また、タンタルコンデンサが実装された廃棄基材を、酸化雰囲気下550℃以上に加熱処理し、得られた加熱処理物を長軸長さにより選別してタンタルを回収する方法が知られている(特許文献2)。
これら先行技術により、廃棄基材や使用済みタンタルコンデンサから、ある程度の品位の金属タンタルや酸化タンタルを回収することは可能である。しかしながら、これらの先行技術より得られたタンタルの回収物には、ケイ素(Si)、アンチモン(Sb)、リン(P)、マンガン(Mn)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の不純物が多く含有されているため、そのままでの再利用を行うことが困難といわれている。例えば、プリント配線板などの廃棄基材からのリサイクルを考えた場合、タンタル以外に銅線などの不純物が不可避的に多量に混入するため、特許文献1のような先行技術では対応が困難であった。
特開昭64−75632号公報 特開2009−221514号公報
以上のような事情の背景の下に、本発明は、タンタルを含有する廃棄物から効率的にタンタルを回収する技術を提供するものであり、特に、タンタル含有廃棄物や、使用済みタンタルコンデンサから取り出されるタンタル焼結体から、再利用の際に不都合となるアンチモン(Sb)、リン(P)、マンガン(Mn)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などの各種不純物を低減し、高い回収率でタンタルを回収できる技術を提供する。
上記課題を解決するため、本発明は、タンタル含有廃棄物からタンタルを回収するタンタル回収方法において、タンタル含有廃棄物を酸処理し、その後アルカリ処理をして、タンタルを回収することを特徴とする。
本発明におけるタンタル含有廃棄物とは、タンタルを含む廃棄物であれば特に制限されないが、例えば、タンタルコンデンサを実装したプリント配線板などの廃棄基材や、この廃棄基材を粉砕して得られたチップ状廃棄物、コンデンサ製造における工程不良品などが回収対象として好ましい。そして、本発明のタンタル含有廃棄物は、本発明の酸処理やアルカリ処理が効率的に行われるよう、廃棄基材そのままの状態よりも、粉砕して得られたチップ状廃棄物であることが好ましい。さらに、本発明のタンタル含有廃棄物には、タンタルコンデンサから取り出されるタンタル焼結体も含まれる。
本発明のタンタル回収方法では、タンタル含有廃棄物に対し、酸処理とアルカリ処理との二段階湿式処理を行うことにより、不純物の低減を行うと共に、高回収率でタンタルを回収するものである。また、本発明のタンタル回収方法では、タンタル含有廃棄物から酸化物或いは金属としてタンタル回収することができる。
本発明における酸処理は、塩酸、硫酸、硝酸などの酸により行うことができる。この酸処理により、不純物となるアンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などをタンタル含有廃棄物から除去することができる。そして、本発明の酸処理では、塩酸を含む酸により行うことが特に好ましい。塩酸を用いると、タンタル含有廃棄物に含まれる、アンチモン、マンガン、錫、鉛、鉄、ニッケル、銅を容易に溶解して除去することができる。具体的な酸処理としては、塩酸や王水(塩酸と硝酸との混酸)を含む溶液に、タンタル焼結体を接触させることにより行うことができる。
銀(Ag)がタンタル含有廃棄物に含まれている場合には、酸処理後にろ過した際のろ液から塩化銀として銀を回収することが可能である。酸処理に塩酸を用いた場合、タンタル含有廃棄物に銀が含有されていると、銀(Ag)は塩化銀(AgCl)に変化している。これは、タンタル含有廃棄物に含まれる二酸化マンガン(MnO)が塩酸に溶解する際に発生する塩素ガスとの反応によるものであり、生成した塩化銀の一部は塩酸に溶解した状態となる。塩酸に溶解した銀については、酸処理後にろ過を行い、そのろ液を希釈すると、塩化銀として沈殿するため、再度、ろ過することで銀を回収することができる。
そして、本発明のタンタル回収方法では、上記酸処理後に、アルカリ処理を行うことにより、更なる不純物の除去を行い、高品位のタンタルを回収するものである。本発明におけるアルカリ処理は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムにより行うことが好ましい。このアルカリ処理は、不純物となるリン(P)を効率的に除去でき、酸処理後にも残存している錫(Sn)、鉛(Pb)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などをさらに除去することができる。前記した酸処理によっても、リンはある程度除去できるものの、タンタル含有廃棄物内に取り込まれているリンは酸処理だけでは除去が難しい。また、錫、鉛、鉄、ニッケルについても酸処理でその多くは除去できるものの、少量は残存している場合がある。本発明おいて、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムによるアルカリ処理を行うことによって、タンタル含有廃棄物内に取り込まれているリンを効率的に除去し、あわせて錫、鉛、鉄、ニッケルなどの不純物をさらに低減することができる。このアルカリ処理としては、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含む溶液に、酸処理後のタンタル含有廃棄物を接触させることにより行うことができる。また、酸洗処理後に水洗処理を行ってアルカリ処理することが好ましい。水洗処理を行うことにより直前の酸の影響を低減して、アルカリ処理を効率的に行うことができるためである。
本発明におけるタンタル含有廃棄物は、タンタルコンデンサから取り出したタンタル焼結体であることが好ましい。タンタルコンデンサから取り出したタンタル焼結体であると、より高品位のタンタルを容易に回収することができるからである。尚、タンタル焼結体には、樹脂などのタンタルコンデンサの構成成分が不可避的に含まれるものである。
本発明のタンタル回収方法において、タンタルコンデンサから取り出したタンタル焼結体に適用する場合、この対象となるタンタルコンデンサは、使用済みのタンタルコンデンサのみならず、未使用のタンタルコンデンサも含まれる。未使用のタンタルコンデンサとは、例えば、コンデンサ製造において不良品として使用されないタンタルコンデンサがあげられる。また、タンタルコンデンサの種類には特に制限はなく、例えば、CuやZnなど金属により外装を覆った金属ケース型のタンタルコンデンサ、エポキシ樹脂などの有機樹脂にディッピングすることにより外装を覆った樹脂ディップ型のタンタルコンデンサ、また、エポキシ樹脂を用いて外装をモールドにより形成した樹脂モールド型のタンタルコンデンサやチップ型のタンタルコンデンサなど種々のものを対象とすることができる。
本発明におけるタンタル回収方法では、タンタルコンデンサからのタンタル焼結体を取り出す方法に特に制限はない。タンタルコンデンサは、各種類に応じて、その外装や電極などに様々な金属や樹脂などを構成材料としているが、すべての種類のタンタルコンデンサにおいてタンタル焼結体をその必須構成材料としている。そのため、本発明を適用する場合、タンタルコンデンサからタンタル焼結体以外の構成材料を、すなわち、不純物となる物質を予め除去して、タンタル焼結体がある程度濃縮された状態で取り出すことが望ましい。
本発明において、回収対象となるタンタル含有廃棄物を準備する手法或いは、タンタルコンデンサからタンタル焼結体を取り出す手法としては、破砕処理、粉砕処理、磁力選別処理、比重選別処理、篩選別処理、焙焼処理、渦電流選別処理、静電選別処理、色彩選別処理などの公知の処理法を採用することができ、これらの処理を適宜組み合わせて適用することができる。これらの前処理により、タンタルコンデンサを実装したプリント配線板などの廃棄基材から、不純物となる物質をできるだけ除去し、タンタルが濃縮されたタンタル含有廃棄物を準備することが好ましい。また、タンタルコンデンサからタンタル焼結体を取り出す場合にも、これらの前処理により、不純物をできるだけ除去しておくことが好ましい。本発明のタンタル回収方法を適用するタンタルコンデンサを実装したプリント配線板などの廃棄基材には、銅や亜鉛、アルミニウム、樹脂などの有機材料などの不純物となる物質が非常に多いので、本発明に係るタンタル回収方法を適用する前に、これらの不純物を予め十分に除去しておくことが望ましい。同様に、タンタルコンデンサから取り出されるタンタル焼結体についても、銅や亜鉛、樹脂などの有機材料を予め十分に除去しておくことが望ましい。また、本発明に係るタンタル回収方法において、タンタル焼結体を回収対象とする場合にはタンタル焼結体のタンタル含有率が50wt%以上であることが好ましい。タンタル含有率が50wt%以上であると、より高品位のタンタルを容易に回収することができる。さらに、本発明に係るタンタル回収方法は、タンタル含有廃棄物に、マンガン、アンチモン、リンのいずれかを含む場合に特に有効なものである。
本発明において、不純物となる物質を効率的に除去するために、例えば、前処理として、破砕処理して廃棄基材やタンタルコンデンサをまず分解する。この破砕処理によりタンタルコンデンサを破砕する場合、タンタルを含む微粉が発生することがある。そこで、破砕処理後、篩選別処理をして微粉を回収し、その微粉からもタンタルを回収することが好ましい。
また、タンタルコンデンサの外装が有機樹脂で構成されている場合には、焙焼処理をして樹脂を粉化させて、タンタル焼結体と粉化樹脂とを篩選別処理をして分離する手法も好ましい。焙焼条件は400〜500℃、1〜5時間とすることが好ましい。この焙焼条件より加熱が弱い場合、例えば、低温度であると樹脂の粉化が不十分になり、高温度であると、樹脂のみならずタンタル焼結体までもが粉化される傾向となり、その後の篩選別処理でタンタル焼結体と粉化樹脂とを分離することが難しくなる。特に好ましいのは400℃〜450℃で、3〜5時間、450℃超〜500℃で1〜5時間である。
そして、廃棄基材から得られたタンタル含有廃棄物やタンタル焼結体には、外装や電極などに鉄などの磁着物が不純物として含まれるので、このような磁着物の不純物は磁力選別処理により除去することが好ましい。
また、本発明において、タンタル含有廃棄物としてタンタル焼結体を回収対象とする場合、タンタル焼結体と他の不純物とに、その大きさや比重の相違がある場合には、篩選別処理や比重選別処理を行うことにより、タンタル焼結体以外の不純物を除去することが好ましい。
本発明において、タンタル含有廃棄物としてタンタル焼結体を回収対象とする場合、タンタルコンデンサからタンタル焼結体を取り出す好ましい手法は、例えば、破砕処理を行って、タンタル焼結体から外装の構成材料を剥離し、破砕処理により発生した微粉を篩処理により分離し、磁力選別処理によりFeなどの構成材料を除去し、その後比重選別処理をしてタンタル焼結体を取り出すことができる。篩処理により分離された微粉については、湿式比重選別等の物理処理を行って、本発明に係るタンタル回収方法を適用してタンタルを回収することができる。
本発明のタンタル回収方法によって回収されたタンタルは、溶媒抽出法などにより、さらに高純度のタンタルに濃縮し、再利用に供することができる。本発明のタンタル回収方法によれば、溶媒抽出処理に悪影響を及ぼすMn、P、Sbなどの不純物が除去されているため、高純度のタンタルを効率的に濃縮して得ることができる。
本発明によれば、再利用の際に不都合となる不純物を低減し、高品位のタンタルをタンタル含有廃棄物から効率的に回収することができる。
本実施形態におけるタンタル回収方法に関する工程フロー図。
本発明の実施形態について説明する。以下に示す第一実施形態〜第五実施形態においては、回収対象として使用済みタンタルコンデンサを用いた場合について説明し、第六実施形態では、回収対象としてタンタルコンデンサ等が実装された廃棄基材(プリント配線板)上の実装部品類を用いた場合を説明する。
まず、第一実施形態〜第六実施形態における、回収対象として使用済みタンタルコンデンサ或いはタンタル含有廃棄物を用いた場合のタンタル回収方法について、図1に示す工程フローを概説する。尚、以下に説明する破砕処理、篩処理、磁力選別処理はあくまで一例であり、回収対象によっては必須ではない場合があり、これらの処理の適用、手順などは回収対象にあわせて適宜変更することができる。
破砕処理:まず初めに、タンタルの回収対象となるタンタルコンデンサの破砕処理を行った。この破砕処理は市販の破砕機を使用することができるが、せん断破砕型のカッターミルタイプの破砕機を用いることが好ましい。このカッターミルタイプの破砕機は、コンデンサの外装部分を破砕して分離しやすいためである。本実施形態では、市販のプラスチック破砕機(吉田製作所社製、型式1005)を用いて行った。この破砕機により、2〜30mmのタンタルコンデンサを0.001〜2mmの大きさに破砕した。
篩処理:破砕処理後には、電磁式ふるい振とう器((株)レッチェ社製、AS200)による篩処理を行う。この篩処理は、破砕処理によって発生した微粉と、比較的大きな塊片を区別することが目的である。本実施形態では、網目開口径150μmの篩を用いた。
磁力選別処理:篩処理により、篩上に残った塊片に対し、磁力による選別処理を行う。この磁力選別処理は、コンデンサの外装、電極やリード線などに用いられた鉄などの磁着物を除去する目的で行うものである。この磁力選別処理は、市販の磁選機を用いることができる。本実施形態では、ドラム式のフェライト磁石を利用したドラム磁選機(マグネットプラン社製、MDS−250 BDD−HH)を用いて行った。この磁選機により、磁束密度(ドラム表面)約3000G、ドラム回転数38rpmの条件で磁力選別処理をした。
比重選別処理:磁力選別処理により、非磁着物として選別されたものに対して、比重選別処理を行い、タンタル焼結体を取り出した。この比重選別処理は、市販の比重選別機を用いることができる。本実施形態では、風力と振動により、タンタル焼結体となる重量物と、樹脂などの軽量物とに選別する、比重選別機((株)原島電機鉱業社製、HH−310)を用いて行った。比重選別条件は、振動数10Hz、風速1.6m/s、傾斜7°、投入速度0.7kg/minとした。この比重選別処理より選別された重量物側の回収物を、処理対象のタンタル焼結体とした。
酸処理:得られたタンタル焼結体に対して、塩酸による酸処理を行った。
アルカリ処理:酸処理後、水洗処理を行って、水酸化ナトリウム溶液によるアルカリ処理を行った。
アルカリ処理後、水洗を行い、その残渣を大気雰囲気中900℃、4時間の焙焼をして、酸化タンタル(TaO)を回収した。尚、この焙焼処理は、必須の工程ではなく、単に乾燥処理を行うことでも、酸化タンタルを回収することができる。
第一実施形態:この第一実施形態では、図1の工程フローにおける酸処理工程の条件を検討した結果について説明する。検討した酸の種類は、塩酸、王水、硫酸で行った。
ここでは酸処理条件を検討するため、使用済みタンタルコンデンサとして、樹脂ディップ型のものを使用した。この樹脂ディップ型のタンタルコンデンサは、エポキシ樹脂の有機樹脂にディッピングして形成された外装を備え、電極のリード線にFeやNiが使用されたものである。また、有機樹脂には、Si、Sb、Brが含まれていることが多い。この樹脂ディップ型タンタルコンデンサの構成成分について、分析した結果を表1に示す。
Figure 0005010706
表1に示す成分分析結果は、分析対象のタンタルコンデンサを、大気中900℃、4時間で焙焼し、その焙焼後粉砕したものを、誘導結合プラズマ発光分光分析法または原子吸光分析法により、その構成成分を測定したものである。表1に示すように、樹脂ディップ型では、Mn、Sn、Pb、Feなどの金属が多く含まれ、Si、Sbもかなり含有されていた。この樹脂ディップ型の使用済みコンデンサを約4.0kg準備し、これを回収対象として図1で示した工程フローに従い、比重選別処理まで行い、タンタル焼結体1.4kgを取り出した。このタンタル焼結体の成分は、Ta 79.3wt%、Sb 40ppm、Mn 11wt%であった。
サンプルとしてのタンタル焼結体(5g)を、表2に示す各条件(濃度、浸漬時間、液温、液量を変化)により酸処理を行い、その酸処理後の成分分析を行った。また、王水(塩酸:硝酸=3:1)による酸処理は、王水を希釈して使用した。尚、表2のNo.14の王水2倍希釈では、塩素濃度が4.5mol/Lであり、No.15の王水4倍希釈では、塩素濃度が2.3mol/Lである。
Figure 0005010706
表2に示す残存量とは、酸処理後水洗処理をし、ろ過して得られた残渣を900℃、4時間の焙焼をしたものを蛍光X線分析法により半定量を行ったものである。また、Sbに関しては、酸処理することにより除去されたSb量を、誘導結合プラズマ発光分光分析法により定量し、残存量に換算したものである。判定基準は、Sb残存量からSbの除去効果が認められたものを○とし、特に、Sb残存量がSb≦25ppmになっているものを◎とした。
表2に示すように、塩酸を含む酸で処理を行うと、Sb、Mnを除去することができることが判明した。そして、塩酸濃度が1mol/LではSbの除去効果が低かった。また、液温は30℃のように低い温度よりも、高温の方が除去効率が高い傾向となった。浸漬時間としては、1時間以上あれば十分な効果があった。表2の結果より、塩酸濃度は3mol/L以上が好ましい。3mol/L未満であると、反応速度が遅くなりすぎる傾向となり、一方、12mol/Lを超えると処理コストが増加して実用的でなくなり、取り扱いが悪くなる傾向となるので、実用的な上限は12mol/Lと考えられる。液温は、40℃以上が好ましく、特に60℃〜100℃が好ましい範囲であった。40℃未満であると、反応速度が遅くなりすぎる傾向となり、100℃を超えると、酸処理の溶液の揮発が過剰に進行する傾向になる。浸漬時間は、0.5時間以上が好ましい。0.5時間未満であると、反応が十分に進行しない傾向となり、50時間より長時間であると生産性が低くなるため、実用的な上限は50時間と考えられる。
尚、表2に示すNo.10の試料について、酸処理に使用した塩酸を3倍希釈して、ろ過したところ、白色の沈殿物が得られた。この白色の沈殿物をXRDにより調べたところ、塩化銀であった。
また、表2に示すように、王水による酸処理によっても、SbやMnを十分に除去できることが判明した。
さらに、3.5mol/Lの硫酸により酸処理を行った(表2No.13)ところ、硫酸によっても、ある程度の効果は認められたものの、塩酸の方が好適であることが分かった。
第二実施形態:この第二実施形態では、図1の工程フローにおけるアルカリ処理工程の条件を検討した結果について説明する。検討したアルカリの種類は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムである。
アルカリ処理条件を検討するため、上記第一実施形態で説明した樹脂ディップ型の使用済みコンデンサを準備し、これを回収対象として図1で示した工程フローに従い、比重選別処理まで行い、タンタル焼結体を取り出した。そして、このタンタル焼結体を、塩酸濃度6mol/L(浸漬時間1時間、液温90℃、液量2mL/g(尚、このmL/gはタンタル焼結体1gあたりの液量である)の酸処理を行い、これをアルカリ処理のサンプルとした。この酸処理後のサンプルの成分は、Ta 99.5wt%、P 220ppmであった。
サンプルとしてのタンタル焼結体(5g)を、表3に示す各条件(アルカリ種類、濃度、浸漬時間、液温、液量を変化)によりアルカリ処理を行い、その処理後の成分分析を行った。
Figure 0005010706
表3に示す判定基準は、Pが60ppm以下を◎、61〜150ppmを○、151〜219ppmを△とした。
表3に示すように、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを用いたアルカリ処理により、Pを除去できることが分かった。特に、水酸化ナトリウムを用い、好適なアルカリ処理条件を採用すると、Pを60ppm以下まで低減できることが判明した。
表3に示す結果より、水酸化ナトリウムを用いたアルカリ処理条件としては、水酸化ナトリウム濃度を5wt%〜15wt%にすることが好ましく、特に10〜15wt%であることが好ましい。また浸漬時間は、0.5時間以上、特に0.5時間〜1時間が好ましい。液温は、60℃以上が好ましく、特に90〜100℃であることが好ましいことが判明した。この条件をはずれると、Pが残留する傾向となる。また、アルカリ処理の処理時間が長すぎると、回収したタンタルにNaが多く混入する傾向となる。
上記した図1の工程フローに従い、各種の使用済みタンタルコンデンサから酸化タンタルを回収した結果について、第三〜五実施形態で説明する。
第三実施形態:この第三実施形態では、使用済みタンタルコンデンサとして、上記第一実施形態と同じ樹脂ディップ型のものを使用した。この樹脂ディップ型のタンタルコンデンサの構成成分については、表1に示している。
この樹脂ディップ型の使用済みコンデンサを約4.0kg準備し、これを回収対象として図1で示した工程フローに従い、比重選別処理まで行い、タンタル焼結体1.4kgを取り出した。
得られたタンタル焼結体を、6mol/L(モル/リットル)の塩酸溶液(液温100℃)に一時間浸漬し、酸処理を行った。その後、塩酸溶液から取り出し、水洗処理を行った。その水洗処理したタンタル焼結体を、10wt%水酸化ナトリウム溶液(液温90℃)に、1時間浸漬し、アルカリ処理を行った。そして、アルカリ処理後、残留物を水洗、ろ過して、その残渣を大気中900℃、4時間の焙焼をして、酸化タンタル(TaO)として回収した。上記した樹脂ディップ型の使用済みタンタルコンデンサから酸化タンタル(TaO)を回収した手順に関し、比重選別処理、酸処理、アルカリ処理(焙焼後の回収物)の各工程終了後における構成成分の分析結果を表4に示す。
Figure 0005010706
表4に示す成分分析において、酸化タンタル(Ta)以外の成分は、蛍光X線分析法と、誘導結合プラズマ発光分光分析法または原子吸光分析法により行った。具体的には、成分のSb、Pに関しては、フッ酸(HF)を用いて分析対象物を溶解後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置または原子吸光分析装置にて定量した。尚、表4における比重選別後のTa、Sb、Mnの成分分析値が、上記第一実施形態の成分分析値(段落0039)と異なるのは、この第三実施形態では、第一実施形態のものとは別に樹脂ディップ型タンタルコンデンサを準備して使用したためである。
また、表4において、酸処理、アルカリ処理工程終了後の酸化タンタルの分析値の結果は、不純物元素として検出された表1に示すSi、Sb、P、Mn、Sn、Pb、Zn、Fe、Ni、Cu、Ti、Naに加え、Mo、W、Ca、K、Bのそれぞれの定量分析を行い、その定量分析値の総合計を100wt%から引くことによって算出している。この算出の際には、Si、Sb、Mn、Sn、Pb、Fe、Cuの分析値を、それぞれSiO、SbO、MnO、SnO、PbO、Fe、CuOの酸化物として換算した。また、比重選別処理工程終了後の酸化タンタルの分析値は、誘導結合プラズマ発光分光分析法により測定したものである。そして、タンタル回収率(%)については、各処理後のタンタル焼結体のタンタル重量と、各処理前のタンタル焼結体のタンタル重量を調べ、各処理後タンタル重量/各処理前タンタル重量×100により算出した。この分析値に関しては、以下の第四及び第五実施形態に関しても同様である。
表4に示すように、比重選別までの処理で得られたタンタル焼結体には、Siはほぼ除去されているものの、Mn、Fe、Sb、Pが含有されていた。そして、酸処理によって、Mn、Sbが多く除去された。また、アルカリ処理によりPが多く除去された。その結果、樹脂ディップ型の使用済みタンタルコンデンサから、酸化タンタル(TaO)が98wt%以上の品位で回収でき、不純物として特に問題となるSbを10ppm以下、Pを60ppm以下にすることができた。
第四実施形態:この第四実施形態では、使用済みタンタルコンデンサとして、樹脂モールド型のものを使用した。この樹脂モールド型のタンタルコンデンサは、エポキシ樹脂により外装をモールド形成されており、電極端子にFeやNi、Cuが使用されたものである。この樹脂モールド型タンタルコンデンサの構成成分について、分析した結果を表5に示す。
Figure 0005010706
表5に示すように、樹脂モールド型でも、Mn、Sn、Pb、Feなどの金属が多く含まれ、Si、Sbもかなり含有されていた。この樹脂モールド型の使用済みタンタルコンデンサを約3.3kg準備し、これを回収対象として図1で示した工程フローに従い、比重選別処理まで行い、タンタル焼結体0.7kgを取り出した。
上記第三実施形態と同様に、得られたタンタル焼結体を、6mol/Lの塩酸溶液(液温100℃)に1時間浸漬し、酸処理を行った。その後、塩酸溶液から取り出し、水洗処理を行った。その水洗処理したタンタル焼結体を、10wt%水酸化ナトリウム溶液(液温90℃)に、1時間浸漬し、アルカリ処理を行った。そして、アルカリ処理後、残留物を水洗、ろ過して、その残渣を大気中900℃、4時間の焙焼をして、酸化タンタル(TaO)として回収した。上記した樹脂モールド型の使用済みタンタルコンデンサから酸化タンタル(TaO)を回収した手順に関し、比重選別処理、酸処理、アルカリ処理(焙焼後の回収物)の各工程終了後における構成成分の分析結果を表6に示す。
Figure 0005010706
表6に示すように、比重選別までの処理で得られたタンタル焼結体には、Siはかなり多く除去されているものの、Mn、Fe、Sb、Pが含有されていた。そして、酸処理によって、Mn、Sbが多く除去された。また、アルカリ処理によりPが多く除去された。その結果、樹脂ディップ型の使用済みタンタルコンデンサから、酸化タンタル(TaO)が97wt%以上の品位で回収でき、不純物として問題となるSbを10ppm以下、Pを60ppm以下にすることができた。
第五実施形態:この第五実施形態では、使用済みタンタルコンデンサとして、金属ケース型のものを使用した。この金属ケース型のタンタルコンデンサは、CuやZnなど金属により外装を覆った金属ケースを備え、
電極のリード線にFeやNi、Sn、Pbが使用されたものである。この金属ケース型タンタルコンデンサの構成成分について、分析した結果を表7に示す。
Figure 0005010706
表7に示すように、金属ケース型では、有機樹脂がほとんど使用されていないためSi、Sbはほとんど含まれていないものの、Mn、Sn、Pb、Feに加え、Cu、Znがかなり含有されていた。この金属ケース型の使用済みタンタルコンデンサを約6.2kg準備し、これを回収対象として図1で示した工程フローに従い、比重選別処理まで行い、タンタル焼結体0.4kgを取り出した。
第三実施形態と同様に、得られたタンタル焼結体を、6mol/Lの塩酸溶液(液温100℃)に一時間浸漬し、酸処理を行った。その後、塩酸溶液から取り出し、水洗処理を行った。その水洗処理したタンタル焼結体を、10wt%水酸化ナトリウム溶液(液温90℃)に、1時間浸漬し、アルカリ処理を行った。そして、アルカリ処理後、残留物を水洗、ろ過して、その残渣を大気中900℃、4時間の焙焼をして、酸化タンタル(TaO)として回収した。上記した金属ケース型の使用済みタンタルコンデンサから酸化タンタル(TaO)を回収した手順に関し、比重選別処理、酸処理、アルカリ処理(焙焼後の回収物)の各工程終了後における構成成分の分析結果を表8に示す。
Figure 0005010706
表8に示すように、比重選別までの処理で得られたタンタル焼結体には、Mn、Fe、Pが含有されていた。そして、酸処理によって、Mnが除去された。また、アルカリ処理によりPが多く除去された。その結果、金属ケース型の使用済みタンタルコンデンサから、酸化タンタル(TaO)が99wt%以上の品位で回収でき、不純物として特に問題となるSbを10ppm以下、Pを60ppm以下にすることができた。
以上の第三〜第五実施形態で示した結果より、本発明のタンタル回収方法は、Mn、Fe、P、Sbの少なくともいずれかを含有するタンタルコンデンサを回収対象とすることが好適であることが判明した。具体的には、回収対象に含まれるMnやFeの場合で15wt%以下の含有量であり、PやSbの場合で1wt%以下の含有量である。
第六実施形態:この第六実施形態では、回収対象としてタンタルコンデンサなどを実装したプリント配線板(廃棄基材)上の実装部品類を使用した。この実装部品類は、タンタルコンデンサを実装したプリント配線板に破砕処理などの各種物理選別処理を施し、タンタルコンデンサ含有量を約40%に濃縮したものである。この実装部品類には、タンタルコンデンサ以外に、銅線、ICチップ、コネクタ、各種金属片などが含まれていた。なお、この実装部品類の構成成分を分析した結果を表9に示す。
Figure 0005010706
表9に示すように、実装部品類には、Si、Cu、Mn、Sbが多く含まれていた。また、タンタル品位が上記した第一〜第五実施例で示した場合よりも低いものであった。
廃棄基材から得られた実装部品類0.6kgを図1で説明した工程フローに従い、比重選別処理まで実施し、タンタル焼結体0.15kgを得た。このタンタル焼結体を、6mol/L(モル/リットル)の塩酸溶液(液温100℃)に一時間浸漬し、酸処理を行った。その後、塩酸溶液から取り出し、水洗処理を行った。その水洗処理したタンタル焼結体を、10wt%水酸化ナトリウム溶液(液温90℃)に、1時間浸漬し、アルカリ処理を行った。そして、アルカリ処理後、残留物を水洗、ろ過して、その残渣を大気中900℃、4時間の焙焼をして、酸化タンタル(TaO)として回収した。上記したタンタル焼結体から酸化タンタル(TaO)を回収した手順に関し、比重選別処理、酸処理、アルカリ処理(焙焼後の回収物)の各工程終了後における構成成分としてのTa、Cu、Clを分析した結果を示す。
Figure 0005010706
表10に示すように、低いタンタル品位の廃棄基材上の実装部品類を回収対象とした場合において、酸化タンタルが90wt%以上の高品位で回収することができた。また、廃棄基材上の実装部品類回収対象とする場合は、Cuなどの配線材料の混入は不可避であるが、Cuは塩酸を含む酸処理により、塩化銅となり、不純物としては無視できない含有量になるものの、その後のアルカリ処理により不純物なるCuの含有量を半減できることが判明した。
本発明によれば、タンタル含有廃棄物から高回収率でタンタルを回収することが可能となり、特にタンタルコンデンサの再利用の際に特に問題となりやすい、ケイ素(Si)、アンチモン(Sb)、リン(P)、マンガン(Mn)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)などの不純物を除去できるので、資源のリサイクル活動の促進に大きく貢献するものである。また、本発明により回収されたタンタルは、より高純度のタンタルを得るための溶媒抽出等の精製処理に用いることができる。

Claims (6)

  1. タンタル含有廃棄物からタンタルを回収するタンタル回収方法において、
    タンタル含有廃棄物は、マンガンおよび/またはアンチモンを含むとともにリンを含有し、タンタルコンデンサから取り出したタンタル焼結体を含むものであり、
    当該タンタル含有廃棄物を、塩酸を含む酸により酸処理し、
    その後、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムによりアルカリ処理をして、タンタルを回収することを特徴とするタンタル回収方法。
  2. タンタル焼結体は、タンタル含有率が50wt%以上である請求項に記載のタンタルの回収方法。
  3. 酸処理は、塩酸濃度3mol/L〜12mol/L、液温40℃〜100℃、処理時間0.5時間〜50時間である請求項1または請求項2に記載のタンタルの回収方法。
  4. アルカリ処理は、水酸化ナトリウム濃度5wt%〜15wt%、液温60℃〜100℃、処理時間0.5時間〜1時間である請求項1〜請求項3いずれかに記載のタンタルの回収方法。
  5. タンタル含有廃棄物から回収されるタンタルは酸化物或いは金属である請求項1〜請求項4いずれかに記載のタンタルの回収方法。
  6. タンタル含有廃棄物の前処理として、焙焼温度400〜500℃、焙焼時間1〜5時間の焙焼処理を行う請求項1〜請求項5いずれかに記載のタンタルの回収方法。
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