JP3709979B2 - タンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法 - Google Patents

タンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本件出願に係る発明は、フェロタンタル、フェロニオブ、フェロニオブタンタル等の当初から異種金属を含有した原料から、タンタル、ニオブ等の採取精製に用いる溶液を得る際の原料溶解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、タンタル、ニオブ若しくはこれらの化合物である酸化タンタル、酸化ニオブ(以上及び以下において、単に「タンタル、ニオブ等」と称する。)等の需要は急速に伸びている。タンタル、ニオブ等は、特殊鋼の合金元素としての用途、電子機器用の部品材料として、その使用範囲が拡大しているためである。従って、タンタル、ニオブ等を採取するために用いる原料を、タンタライト、コロンバイト等の鉱石及び精鉱に限らず、フェロタンタル、フェロニオブ、その他スクラップ等に拡大して、製品としてのタンタル、ニオブ等の量的な安定供給を考える必要性が生じている。
【0003】
原料源が多岐に渡ると言うことは、そこに含まれる不純物元素の量も原料毎に異なることを意味している。中でも、不純物元素としてのアンチモンは、その除去が最も困難であり、タンタル、ニオブ等の製品中における含有量を0.01wt%以下とすることが市場要求として求められるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現状において、フェロタンタル、フェロニオブ、その他スクラップ等を原料として用いる場合、これら原料をアルカリ溶液を用いてアルカリ疎解処理し疎解液と不純物成分を水酸化化合物として含む疎解残渣とを得て、この中に鉱酸を添加することで水酸化化合物である不純物のみを疎解液中に溶出させ、その後疎解残渣を疎解液から濾別採取する。従来から用いられてきたアルカリ疎解法であれば、この段階において、鉄、亜鉛、アルミニウム等のアンチモンを除く不純物元素は殆ど完全に除去されていることになる。
【0005】
そして、その疎解残渣を、フッ素処理工程において、フッ酸若しくはフッ酸を必須成分とする混酸を用いて溶解させることで、タンタル、ニオブが溶解したフッ素抽出液を得るのである(以下、この段階の溶液を「フッ素抽出液」と称する。)。
最終的には、フィルタープレスなどを使用して溶解しなかった抽出残渣(以下、「フッ素抽出残渣」と称する。)を分離除去するのである。ところが、この段階におけるフッ素抽出液には不純物としてのアンチモンが溶解した状態となっているのである。このままフッ素抽出液中のアンチモンを放置すれば、結果として製品中に混入することとなるのである。
【0006】
従って、このアンチモンを除去するためには、特開平10−68029号に開示されているように、このフッ素抽出液に卑金属成分である鉄、亜鉛、アルミニウム等を金属状態で事後的に添加し、これらの表面に溶解しているアンチモンを置換析出させ、これらの添加金属を分離除去するアンチモンの除去工程を設けなければならなかった。このようにしてアンチモン除去の行われたフッ素抽出液を、メチルイソブチルケトン(MIBK)法等の採取精製プロセスを経て、低アンチモン含有のタンタル、ニオブ等が製造されてきたのである。
【0007】
即ち、当初の原料段階で不純物元素としてのアンチモンが含まれている場合には、アルカリ疎解処理工程、フッ素処理工程を経てもアンチモン除去を行うことは出来ず、最終的には、フッ素抽出液中に高濃度に含まれることとなり、結果として精製採取したタンタル、ニオブ等に不純物として高濃度に含有されるものとなるのである。そして、低アンチモン含有のタンタル、ニオブ等の製品を得るためにはアンチモンの除去工程が必要不可欠となり、結果として、タンタル、ニオブ等の製品を得るための工程が長く複雑化することになり、生産性の向上、工程管理の単純化の面ではデメリットとなり、トータル生産コストの上昇は製品価格の上昇にも繋がることになるのである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、タンタル又はニオブ若しくはこの双方と、標準酸化還元電位が−2V〜0Vであり、且つ、アルカリ溶液と反応し水酸化化合物を形成できる異種金属とが共存し、アンチモンを不純物として含む複合原料を用いることで、特にアンチモン除去工程を別途設けることなく、フッ素処理工程でタンタル、ニオブをフッ素抽出液中に溶解抽出すると同時に、アンチモン除去が行える事に想到したのである。
【0009】
本件発明は、タンタル又はニオブ若しくはこの双方と、標準酸化還元電位が−2V〜0Vであり、且つ、アルカリ溶液と反応し水酸化化合物を形成できる異種金属とが共存し、アンチモンを不純物として含む複合原料を用い、アルカリ疎解処理工程で、当該複合原料をアルカリ溶液で処理して疎解液と前記異種金属を金属状態及び水酸化化合物状態で共存含有する疎解残渣とを得て、ここで鉱酸を用いて、所定のpHに調整することで疎解残渣中に残留している化合物状態の異種金属を溶解除去し、濾別分離することで金属状態の異種金属を含有した調整疎解残渣を採取するものであり、フッ素処理工程で、当該調整疎解残渣をフッ化水素酸系溶液を用いて処理しニオブ、タンタル等の溶出したフッ素抽出液とフッ素処理残渣とを得ると同時に、フッ素抽出液中に溶出しているアンチモンをフッ素処理残渣中に金属状態で残留している前記異種金属上に置換析出させ、アンチモンの置換析出した当該異種金属を残渣として分離除去することでアンチモンの除去処理を行って得られるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法としている。
【0010】
この本件発明では、タンタル又はニオブ若しくはこの双方と、標準酸化還元電位が−2V〜0Vであり、且つ、アルカリ溶液と反応し水酸化化合物を形成できる異種金属とが共存し、アンチモンを不純物として含む複合原料を用いることが条件の一つとなる。ここで、「タンタル又はニオブ若しくはこの双方」としているのは、原料ソースによっては、タンタル又はニオブのそれぞれを単独で含有する場合、タンタル及びニオブを共に含有する場合があり得るからである。そして、「アンチモンを不純物として含む」と不純物元素であるアンチモンのみを明記したのは、本件発明に係る製造方法がアンチモン除去を主目的においたものであることを明確にするためであり、アンチモン以外の不純物元素を含まないことを意図しているものではない。従って、マンガン等の不可避不純物が存在することは前提として考えている。
【0011】
ここで用いる「複合原料」の最も大きな特徴は、「標準酸化還元電位が−2V〜0Vであり、且つ、アルカリ溶液と反応し水酸化化合物を形成できる異種金属とが共存」している点である。ここで、「共存」としているのは、タンタル、ニオブと合金化して存在する場合でも、別個に分離して存在する場合でも良いことを意味する用語として用いたのである。ここで、「標準酸化還元電位が−2V〜0Vであり」としているのは、いわゆる水素電極を用いて測定した標準酸化還元電位であって、アンチモンよりも卑な金属でなければ、後に述べる置換析出が不可能だからである。そして、「アルカリ溶液と反応し水酸化化合物を形成できる」とは、上述したアルカリ疎解工程を備えた製造方法に適合させるために必要となる条件なのである。
【0012】
そして、上述した複合原料を用いて、アルカリ疎解処理を行うのである。アルカリ疎解処理は、異種金属が多量に含有されたままであると、後のフッ素処理残渣の残渣処理費用が増大することとなるため、製品品質に影響を与えず、後述するフッ素処理工程で行うアンチモン除去処理に十分な適正量に調節するための重要な工程となるのである。例えば、標準酸化還元電位が−2V〜0Vである鉄を多量(30数wt%)に含有したフェロタンタル等のフェロ合金を複合原料の例にとって以下説明する。
【0013】
通常のアルカリ疎解処理工程では、まず当該フェロタンタルを苛性ソーダ等に代表されるアルカリ溶液の過剰量と接触させ処理するのである。過剰のアルカリ溶液と接触させることでフェロタンタル中の異種金属である鉄の全てを水酸化化合物状態で共存含有する疎解残渣と疎解液を得て、ここに鉱酸を添加し、所定のpHに調整することで疎解残渣中に残留している水酸化化合物状態の異種金属を疎解液中に全溶解させ、濾別分離することで疎解残渣として採取し、これを後のフッ素処理工程で用いるのである。
【0014】
ところが、本件発明では、まず当該フェロタンタルを苛性ソーダ等に代表されるアルカリ溶液と接触させ処理するのであるが、アルカリ溶液と接触させることで複合金属中の異種金属の一部を水酸化化合物状態とし、その他の部分を金属状態のまま残留させた疎解残渣とを得て、ここに鉱酸を添加し、所定のpHに調整することで疎解残渣中に残留している水酸化化合物のみを溶解除去し、金属状態の異種金属(鉄)の一定量を疎解残渣中に残留させ濾別分離することで金属状態の異種金属を含有した疎解残渣(以上及び以下において、この段階の疎解残渣を「調整疎解残渣」と称する。)を採取し、これを後のフッ素処理工程で用いるのである。ここで、用いる鉱酸に関しても、疎解処理後の溶液をあまりにも強い酸性領域にすると、金属状態で残留させた異種金属までもが溶解することとなるので、金属水酸化化合物のみを溶解させることの出来るpH2を限界とした酸性領域が達成できれば、より強い酸性状態とする必要はないのである。従って、アルカリ疎解工程で用いるアルカリ溶液の量は、異種金属の全てを完全に水酸化化合物に変えないよう、従来に用いていた量に比べ、過小量のアルカリ溶液量としなければならない。このことについては以下で詳細に説明する。
【0015】
このようにフッ素処理工程で用いる調整疎解残渣中に、標準酸化還元電位が−2V〜0Vである異種金属としての金属状態の鉄等が含有していれば、当該調整疎解残渣をフッ化水素酸系溶液を用いて処理しニオブ、タンタル等の溶出したフッ素抽出液とフッ素処理残渣とを得ると同時に、不純物であるアンチモンも一旦フッ素抽出液中に溶出するが、金属状態で残留した異種金属成分は急速に溶解することはなく、溶出したアンチモンがフッ素処理残渣中に金属状態で残留している前記異種金属上に置換析出すると共に溶解反応が進行することとなり、アンチモンの置換析出した当該異種金属をフッ素抽出残渣と同時に分離除去すれば、アンチモン除去が可能となるのである。即ち、本件発明者等は、フッ素処理した後の溶液中から事後的にアンチモンを除去するのではなく、フッ素処理工程でタンタル、ニオブを溶解させると同時に、アンチモン除去を可能としたのである。そして、このようにしてアンチモン除去を行ったフッ素抽出液から、MIBK法等を用いてタンタル、ニオブの採取を行えば低アンチモン含有のタンタル、ニオブ等を採取することが可能となるのである。
【0016】
上述した製造方法におけるポイントの一つは、調整疎解残渣の段階で、どの程度の量の異種金属を金属状態で残留させるかである。一般にフッ素抽出液中に含まれることとなる不純物としてのアンチモンは、溶解しているニオブ、タンタルをNb、Taに換算した各々の合計重量に対して、高くとも500ppm程度である。このことから考えるに、アンチモンが異種金属の表面に置換析出する量を残留させればよいと言うことになる。ところが、金属状態の異種金属の存在の仕方、例えば、接触反応界面面積を決めることとなる粒径、合金として存在しているのか、独立した粒として存在しているのか等によって考え方が異なるのが通常である。従って、用いる複合原料の種類、形状等に応じての工程条件の調整が必要となるのである。しかも、アルカリ疎解処理では過小量のアルカリ溶液において十分な反応性を持たせることを考えなければ、処理時間が長くなり生産性の阻害要因となるため、複合原料の段階において、一定の反応性を確保するための複合原料の形状を考慮することも重要となる。これらのことから考えるに、粒径等の形状は、複合原料の種類、工程内装置の性格、生産歩留り等を考慮して、任意のものを選択的に使用することが可能と言えるのである。
【0017】
このようなことを考慮した上で、本件発明では、複合原料は、その比表面積が0.5m/g〜10m/gである粒体原料であるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法としている。即ち、研究の結果、粉体状の複合原料を用いる場合の比表面積が0.5m/gよりも小さな粗粒となると、過小量のアルカリ溶液を用いてのアルカリ疎解処理における不純物元素の溶解速度が極端に遅くなり、工業的用途における使用が困難となるのである。また、比表面積が10m/gを越える細粒となるとアルカリ溶液に対する反応性が急激に上昇し、アルカリ成分と異種金属とが反応して発生する水素ガスにより安全性が低下することが判明したのである。
【0018】
そして、本件発明では、アルカリ疎解工程で用いるアルカリ溶液は、異種金属(Me)の全てを水酸化化合物であるMe(OH)とするために必要なアルカリ成分の理論的必要量の1/3倍当量〜1倍当量となるように用いるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法としている。
【0019】
例えば、上述したように異種金属が鉄であると想定すれば、アルカリ疎解工程において苛性ソーダを用いた場合を考えると、鉄は中間生成物として鉄酸塩(NaFe(OH))を形成することも考えられるが、最終的に水酸化鉄(Fe(OH))を形成するものと考えられる。従って、1molの鉄を水酸化鉄に変えるためには、2mol相当の水酸化物イオンが必要となり、この供給源となる苛性ソーダ(NaOH)も最低2mol必要な換算となる。そして、上述した鉄酸塩の如き中間生成物を形成するとすれば、一旦中間生成物を形成するための水酸化物イオンの供給が可能な苛性ソーダの量が必要最低限のものとなる。
【0020】
これらの化学量論的な換算により導き出せる苛性ソーダの必要量は、あくまでも机上の計算であり、用いた苛性ソーダの全てが鉄との水酸化化合物形成の反応に関わったとした場合である。本件発明において、「理論的必要量」とは、Meと表示した異種金属が、水酸化金属であるMe(OH)となるための理論量であり、本件発明者等の研究によれば、中間生成物の組成を問題にすることなく、最終的な水酸化金属であるMe(OH)の形成に必要な水酸化物イオンの供給の可能な化学量論的なアルカリ成分の量を基準として考えればよいことが明らかとなってきた。
【0021】
即ち、現実には、上述した如き中間生成物は、一般的に不安定であり、一旦鉄酸塩が形成されても、直ぐに安定な水酸化鉄へ変化すると考えられ、鉄酸塩が水酸化鉄へ変化する際には、余分な水酸イオンが溶液中に戻ることになり、必ずしも鉄の全量が水酸化鉄として一定期間維持される性質のものではないと考えられ、最終的に水酸化鉄に変える鉄の全量を鉄酸塩に変えるための水酸イオン量は必ずしも必要ではないと考えられるのである。また、溶液の温度、攪拌の状態等の要因が水酸化鉄の形成に与える影響は大きく、用いた苛性ソーダの全てが当該反応に関わるものではない。従って、反応効率という観点から考えた場合に、反応効率が100%でないとすれば、目的とした量の鉄を水酸化鉄に変えるために必要な水酸イオンよりも過剰の量を添加せざるを得なくなるとも考えられるのである。従ってアルカリ成分の適正量は、理論的に導き出せる性格のものではなく、極めて実験的に導き出した条件に沿って決定されるべきものと考えられるのである。
【0022】
これらのことから、調整疎解残渣の1〜10wt%に相当する金属状態の異種金属を残留させようとすると、異種金属(Me)の全てを水酸化化合物であるMe(OH)とするために必要なアルカリ成分の理論的必要量の1/3倍当量〜1倍当量のアルカリ成分を用いなければならないのである。これは、特に一般的にアルカリ疎解工程で採用される液温80℃〜100℃の溶液で反応させる条件を想定したものである。このとき、本件発明で、「異種金属(Me)の全てを水酸化化合物であるMe(OH)とするために必要なアルカリ成分の理論的必要量の1/3倍当量〜1倍当量となるように用いる」としたのは、苛性ソーダ等のアルカリ成分は、通常水溶液の形で用いるため、そこに含まれている異種金属の量に対し、アルカリ溶液の量ではなく、そこに含まれた実質的なアルカリ成分の量としての関係であることを明確にするためである。
【0023】
ここで、異種金属(Me)の全てを水酸化化合物であるMe(OH)とするために必要なアルカリ成分の理論的必要量の1/3倍当量に満たないアルカリ成分を用いると、アルカリ溶液との反応速度自体が低下して、処理効率が極端に低下する。そして、複合原料中の異種金属の量が30wt%を越えると、疎解残渣中に残留する異種金属量が多くなり、最終的なフッ素抽出残渣量が増え、残渣処理コストが増大し、意図せぬ結晶析出を起こすなどして設備維持コストが増大するのである。一方、異種金属(Me)の全てを水酸化化合物であるMe(OH)とするために必要なアルカリ成分の理論的必要量の1倍当量を越えて、アルカリ溶液を添加すると、異種金属成分とアルカリ成分との反応速度が極めて高くなり、異種金属成分の一部を金属状態で残留させることが非常に困難となるのである。
【0024】
本件発明では、調整疎解残渣は、その乾燥基準重量に対して、金属状態の異種金属成分が1wt%〜10wt%含まれるものであるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法としている。即ち、調整疎解残渣に含ませた金属状態の異種金属は、フッ素処理工程において、アンチモンの除去のために用いるものであり、調整疎解残渣中に残留させる金属状態の異種金属の適正量を明確にしているのである。
【0025】
ここで現在の段階で一般的に考えられる調整疎解残渣中のアンチモンの含有量は、0.01〜0.05wt%の範囲に入るものとなる。このことを考えれば、本件発明でいう下限値である1wt%未満の金属状態の異種金属量では、アンチモン除去効率の低下が著しくなると共に、アンチモン除去の際の除去効率のバラツキが大きくなり、工程信頼性が確保できなくなるのである。一方、10wt%を越えてもアンチモンの除去に対しては、何ら問題はない。ところが、10wt%を残しておけば、フッ素抽出液の温度を適正に管理すれば、除去効率をほぼ安定して100%とすることが可能となり、10wt%を越えた異種金属を残留させる意味合いが無くなるのである。
【0026】
本件発明では、フッ素処理工程で調整疎解残渣をフッ化水素酸系溶液を用いて処理する際の溶液温度は、0℃〜60℃であるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法としている。そして、本件発明では、フッ素処理工程で調整疎解残渣を処理する際に用いるフッ化水素酸系溶液は、フッ化水素酸と鉱酸とを含み、鉱酸濃度を0.001mol/l〜10mol/l含んだものであるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法としている。この2つの発明は、非常に密接な関係にあるものである。即ち、溶液温度と溶液の濃度との関係が交絡して、フッ素処理工程における反応速度を決定付けるものとなると考えられるからである。
【0027】
まず、本件発明における溶液温度について説明する。溶液温度として0℃〜60℃の範囲を採用しているが、溶液温度が低くなる程、タンタル、ニオブの溶解速度も遅くなり、アンチモンの置換析出も遅くなることは、反応速度論的な見地より明らかである。しかしながら、アンチモンの含有量が低レベルの複合原料を使用した場合には、置換反応速度が遅くとも、目的レベルにまでアンチモンを除去することは容易である。しかも、残留させた金属状態の異種金属の完全溶解が起こることを回避する意味合いでは溶液温度が低い方が好ましいのである。下限値である0℃を下回る溶液温度の場合には、凍結等の設備上の問題が生じることもあり、溶媒に工夫が必要となり、工程を煩雑化させるだけとなるのである。そして、溶液温度が60℃を越えると、反応が激しすぎて、残留させた金属状態の異種金属の完全溶解が起こり、アンチモンの除去が出来なくなるのである。特に、溶液温度が40℃以下となると、調整疎解残渣からフッ素抽出液中へのアンチモンの溶解自体が抑制され、アンチモンの置換析出を簡単に終わらせることが可能となるのである。
【0028】
次に、本件発明におけるフッ化水素酸系溶液の組成について説明する。そもそも、フッ素処理工程で用いる調整疎解残渣は、直前に鉱酸による処理が行われているため、調整疎解残渣を水洗しない限りにおいては、そこに鉱酸の一部が残留しているのが通常である。そこで、本件発明者等は、この残留した鉱酸を有効に活用することを考えたのである。従って、ここで言う「フッ化水素酸系溶液」とは、フッ化水素酸と鉱酸とからなる溶液を意図しており、タンタル、ニオブを抽出する為に必要な量のフッ化水素酸と、鉱酸を鉱酸濃度が0.001mol/l〜10mol/lとしたものを言うのである。このときの鉱酸濃度は、調整疎解残渣から持ち込まれる鉱酸が存在する場合には、その持ち込まれる鉱酸量を計算して、用いるフッ化水素酸系溶液中に含ませる鉱酸量の調整を行うことが必要となるものである。
【0029】
この鉱酸は、フッ化水素酸に比べて、酸解離定数が大きいため金属材との反応性が大きく、異種金属の溶解を促進し、アンチモンとの置換反応を助長する役割を果たし、アンチモンの除去効率を向上させることが可能となるのである。ところが、この溶液中の鉱酸濃度が0.001mol/l未満の場合には、上述した鉱酸の役割は果たさず、鉱酸濃度が10mol/lを越えると異種金属の溶解速度が速くなりすぎて、金属状態で残留させることが困難となるのである。
【0030】
ここで溶液温度と溶液組成との関係を反応速度論的に考えてみると、フッ化水素酸系溶液の鉱酸濃度が薄いけれども溶液温度が高い場合と、フッ化水素酸系溶液の鉱酸濃度が高く溶液温度が低い場合との単位時間当たりのアンチモン除去効率が同様のレベルになることが考えられる。従って、溶液温度と溶液中の鉱酸濃度との組み合わせは、上記溶液温度と上記フッ化水素酸系溶液組成との要素を組み合わせて、最も工程にあった条件を選択使用することが好ましいものと考えるのである。
【0031】
上述した鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸から選ばれる1種又は2種以上を混合したものを用いることが好ましい。
【0032】
ここで言う鉱酸とは、有機酸に対する概念として一般に鉱物酸と称されるものを言うのであって、これらを用いることが出来るのである。これら鉱酸は、フッ化水素酸の酸解離定数と比較して、いずれも大きな酸解離定数を持つものであり、卑金属上にアンチモンを置換析出させるために必要となる水素イオンを供給する能力において優れているのである。この中でも、硫酸を用いるのが非常に好ましい。後の工程であるメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いての溶媒抽出による精製工程に何ら悪影響を与えないためである。また、これらの鉱酸の複数種を併用することも可能である。従って、「・・・1種以上を含有したもの・・・」としているのである。
【0033】
本件発明では、複合原料を構成する異種金属は、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛のいずれか1種又は2種以上であるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法としている。即ち、本件発明では、電気化学的な見地より、アンチモンとの置換反応が可能な範囲の標準電極電位を持つ金属成分であって、アルカリ溶液との反応が可能な卑金属成分を明らかとし、元素名を明らかにすることで、異種金属成分の特定を行っているのである。この中でも、鉄を用いることが、工業的見地より最も好ましいのである。即ち、鉄は磁性材であり、アンチモンを置換析出させた後も、残留した鉄分を磁石を用いて回収することができるのである。このようにすることにより、確実にアンチモンの置換析出した鉄分の回収が可能となるのである。
【0034】
そして、以上に述べた原料溶液の製造に用いる複合原料は、異種金属としての鉄を含有したフェロタンタル、フェロニオブ、フェロタンタルニオブのいずれか1種又は2種以上を混合したものを用いることができその複合原料は、異種金属としての鉄、亜鉛、鉛、錫、アルミニウムを少なくとも一種含有し、且つ、タンタル又はニオブ若しくはこれらの双方を含有する電子材料部品スクラップを用いることができる。
【0035】
本願では、本件発明に係る原料溶液の製造で用いる複合材料として、現段階において最も適当と判断できる材料を記載し、明らかにしている。フェロタンタル、フェロニオブ、フェロタンタルニオブは、本来の組成自体を明確に把握することが可能であり、しかも粒径制御の可能なものであり、本件発明で行うアルカリ疎解処理及びフッ素処理工程で行うアンチモン除去の工程管理を容易にする点において大きな利点が認められるのである。そして、新たなタンタル、ニオブの原料として注目されるのが、電子材料スクラップである。タンタル、ニオブが電子材料部品として多用されているからである。例えば、タンタルコンデンサ、ニオブコンデンサ等である。希少金属であるが為に、リサイクリングを活発化させる必要もあり、電子材料には、半田の錫及び鉛、亜鉛、鉄等のアンチモン除去に用いることの出来る異種金属が同時に併存しているため、これらを積極的にアンチモン除去に利用できるものとなるのである。
【0036】
以下、データを示しつつ、本件発明に係るタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法おけるアンチモン除去の効果を初めとする種々の効果について説明する。
【0037】
まず、最初に複合原料として、鉄の含有率32wt%で比表面積5m/gのフェロタンタルニオブを用いて、アルカリ疎解処理として、種々の濃度の苛性ソーダ溶液であって、液温90℃で24時間のアルカリ処理をして疎解液と、水酸化鉄及び金属鉄が共存した疎解残渣とを得て、ここに酸溶液として硫酸を添加して疎解液のpH2となるように調整し、疎解残渣から水酸化鉄の部分のみを溶解除去することで調整疎解残渣を得た。この調整疎解残渣中の金属鉄の残留量は、1wt%〜10wt%の範囲となることを目標としたものである。そして、この調整疎解残渣中の金属鉄の残留量(wt%)を調べた結果を表1に記載している。なお、当初の複合原料の段階における鉄の含有量は32wt%であるから、このときのアルカリ成分(NaOH)の理論的必要量を換算した。また、表1の苛性ソーダ濃度は、前記アルカリ成分の理論的必要量を1当量としたときの、相対値として示している。
【0038】
【表1】
Figure 0003709979
【0039】
表1に示した結果から分かるように、苛性ソーダ濃度が1/3当量〜1当量となる範囲において、金属鉄の残留量が1wt%〜10wt%という条件を満たすものとなっている。従って、以下において更に説明を加えるが、この苛性ソーダ濃度の範囲を用いて、アルカリ疎解処理を行えば、適正な金属鉄を調整疎解残渣中に残留させることが可能であり、通常考えられるレベルのアンチモン除去処理が可能となるのである。
【0040】
次に、粒状の複合原料の比表面積とアルカリ溶液との反応性の関係を調べた結果について説明することとする。ここで用いたアルカリ溶液は、表1における苛性ソーダ濃度の適正範囲である1/2当量の条件に固定して、複合原料としてのフェロタンタルニオブの平均粒径を変化させることで、比表面積を変動させ、液温90℃で24時間のアルカリ処理をして疎解液と、水酸化鉄及び金属鉄が共存した疎解残渣とを得て、ここに酸溶液として硫酸を添加して疎解液のpH2となるように調整し、疎解残渣から水酸化鉄の部分のみを溶解除去することで調整疎解残渣を得るものとした。このとき調整疎解残渣中の金属鉄の残留量が、1wt%〜10wt%の範囲となるか否かにより判断を行った。この結果を表2に示している。
【0041】
【表2】
Figure 0003709979
【0042】
この表2から分かるように、本件発明の目的とするところである調整疎解残渣中の金属鉄の残留量を1wt%〜10wt%の範囲とするためには、粒状の複合原料の比表面積を、0.5m/g以上の範囲とすることが望ましいことが裏付けられるのである。
【0043】
更に、本件発明者等は、調整疎解残渣中の金属鉄の残留量は、厳密に考えれば、水酸化ナトリウム添加量、原料の比表面積、及びアルカリ処理時間の各要因が相互に交絡して作用すると考えるのが妥当と考えられる。即ち、従って、本件発明者等は、表3に示したように、上述した要因を変動させた際の、調整疎解残渣中の金属鉄の残留量を調べた。
【0044】
【表3】
Figure 0003709979
【0045】
この表3に示した結果から分かるように、疎解時間を短縮化したい場合には、水酸化ナトリウム量を増量すればよいし、原料の比表面積が小さい場合でも、水酸化ナトリウム量を増量し、処理時間を長くすれば、調整疎解残渣中の金属鉄量を10wt%以下にすることは可能である。しかしながら、処理効率及び工程安全性を考えれば、上述した原料の比表面積及び水酸化ナトリウム添加量の範囲を採用することが望ましいのである。
【0046】
次に、フッ素処理工程における除去効率と調整疎解残渣中に残留させた金属鉄量との関係について説明する。このフッ素処理工程では、液温50℃の公称55wt%のフッ化水素酸溶液を用いて、種々の金属鉄量を含有した調整疎解残渣を24時間溶解処理し、このときのアンチモンの除去効率を求めたのである。この結果を、表4に示している。アンチモンの除去効率の算出方法は次の通りである。調整疎解残渣中に当初含まれている不純物であるアンチモン含有量を測定し、このアンチモンが完全にフッ素抽出液中に溶解したとしたときのアンチモン濃度(mg/l)を算出し(この濃度を「初期アンチモン濃度」と称する。)、アンチモン除去処理の終了したフッ素抽出液中のアンチモン濃度(mg/l)とを測定し(この濃度を「処理後アンチモン濃度」と称する。)、[アンチモン除去効率(%)]=[(初期アンチモン濃度)−(処理後アンチモン濃度)]/[初期アンチモン濃度]× 100 の式により導き出したものである。ただし、厳密に言えば、このフッ素抽出液中には、アルカリ疎解処理でpH調整用に用いた鉱酸である硫酸が、0.007mol/l濃度となる程度の持ち込み分が存在している。
【0047】
【表4】
Figure 0003709979
【0048】
この表4に示した結果から分かるように、調整疎解残渣中の金属鉄量が10wt%を越えると、除去効率が100%となり、10wt%を越える異種金属を添加する必要性が無くなることが明らかとなる。そして、当該金属鉄量が1wt%を下回ると、除去効率が急激に低下することが見て取れるのである。このことから、調整疎解残渣中の異種金属の量は、調整疎解残渣の乾燥基準重量に対して、1wt%〜10wt%の範囲とすることが好ましいと判断できるのである。
【0049】
そして、表5には、フッ素抽出液に鉱酸である硫酸を添加して、硫酸濃度を1.0mol/lとして、鉱酸濃度の調整を行うことでアンチモンの除去効率に与える影響を調べた結果である。基本的な試験条件に関しては、表4の場合と同じである。異なるのは、フッ素処理工程でフッ化水素酸と硫酸とを混合し、硫酸濃度を種々に変化させた溶液を用いた点のみである。従って、重複した試験手順についての記載は省略する。
【0050】
【表5】
Figure 0003709979
【0051】
この表5と表4とを対比することで、鉱酸濃度の調整を行った結果、全体的なアンチモンの除去効率が向上することが分かるのである。従って、鉱酸濃度の調整を適正に行えば、フッ素処理工程において、非常に良好なアンチモン除去処理を行うことが可能となると考えられるのである。そこで、この適正な鉱酸濃度の範囲がどの領域であるかを明らかとするため、フッ素処理工程では、液温50℃の公称55wt%のフッ化水素酸溶液に種々の濃度となるよう硫酸を添加した溶液を用いて、10wt%の金属鉄を含有した調整疎解残渣を24時間溶解処理し、このときのアンチモンの除去効率を求めた結果を表6に記載した。
【0052】
【表6】
Figure 0003709979
【0053】
この表6に示した結果から分かるように、鉱酸濃度を0.001mol/l〜10.0mol/lの範囲において、非常に安定した90%を越えるアンチモンの除去効率を示すことが分かってきたのである。即ち、鉱酸濃度が上昇し、溶液の酸性度が大きくなるほどアンチモンの置換析出速度が早くなる傾向にあることが分かるのである。なお、表5及び表6で、反応後のSb濃度として、「<1」としているのはプラズマ発光分光分析による検出限界以下であることを意味している。
【0054】
以上の表1〜表6でデータを示しつつ説明した傾向は、その他の条件である、鉱酸の種類、添加する卑金属の種類等を、本件発明として開示した内容の範囲で変動させても同様である。上述した数値データから得られた結果を持って、本願に記載した発明の種々の数値データを定めたのである。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について工程の順を追って説明する。
【0056】
第1実施形態: 本実施形態では、複合原料として鉄を32wt%、アンチモンを0.02wt%、タンタル及びニオブは、TaとNbに換算した合計量で75wt%含有し、比表面積が3m/gの粒状のフェロタンタルニオブ2kgを用いた。最初に行うアルカリ疎解工程について説明する。前記フェロタンタルニオブを、アルカリ疎解槽に入れ、当該槽内において、濃度48wt%の苛性ソーダ溶液0.85リットルを用いて90℃×24時間アルカリ処理し、疎解液と、水酸化鉄及び金属鉄が共存した疎解残渣とを得た。そして、このアルカリ槽内に硫酸溶液を添加して疎解液の酸性度がpH2となるように調整し、2時間処理し疎解残渣から水酸化鉄の部分のみを溶解除去し、金属鉄が調整疎解残渣の乾燥基準重量に対して3wt%残留した調整疎解残渣(乾燥重量で2.2kg)を得た。ここで用いた苛性ソーダ量は、フェロタンタルニオブを構成する鉄の全てを水酸化鉄とできる理論的必要量の2/3当量を加えたものである。
【0057】
以上のようにして得られた調整疎解残渣を、濾別採取し、次のフッ素処理工程で用いた。フッ素処理工程では、当該調整疎解残渣を、液温を35℃に維持した55wt%濃度のフッ化水素酸溶液4.5リットルをフッ素抽出液として用いて、攪拌しつつ、24時間のフッ素処理を行った。その結果、タンタル、ニオブ及び不純物であるアンチモンの一部が当該溶液中に溶出することになるが、フッ素抽出液の液温を40℃以下に保っているため、アンチモンの全部は溶出しないのである。このようにして、フッ素抽出液とフッ素抽出残渣とが得られる。調整疎解残渣中に金属状態で残留していた鉄は、フッ素抽出残渣中に金属状態のまま残留することになる。そして、この金属状態の鉄の表面には、一旦溶出した一部のアンチモンが置換析出することとなり、アンチモン除去を同時に行った。そして、このフッ素抽出液とフッ素抽出残渣とをフィルタープレスを用いて分離した。
【0058】
このフッ素抽出液中のタンタル及びニオブの濃度については、プラズマ発光分光分析装置(ICP)を用いて、タンタルとニオブのそれぞれの含有量を測定し、Ta及びNbに換算し、その合計量を求めると350g/lであった。また、アンチモンについても、プラズマ発光分光分析装置(ICP)を用いて測定を行ったが、1mg/l以下であり、見かけ上100%の除去効率であった。
【0059】
以上のようにして得られたフッ素抽出液を用いて、メチルイソブチルケトン(MIBK)法を用いてタンタル及びニオブを採取精製した。この結果、酸化タンタル及び酸化ニオブの製品中のアンチモン含有率は、2ppm未満であった。
【0060】
第2実施形態: 本実施形態では、フッ素処理工程において、第1実施形態の場合と比べて、調整疎解残渣中のアンチモンが溶液中に、多く溶出したとしても、その溶出したアンチモンを効率よく除去できる方法を示している。そこで、フッ素処理工程において、調整疎解残渣中にあるアンチモンの相当量が、一旦、フッ素抽出液中に溶出するであろう条件として、フッ素抽出液の液温を50℃とした。そして、ここでのフッ素抽出液には、55wt%濃度のフッ化水素酸溶液4.5リットルと濃度98wt%の硫酸溶液とを用い、鉱酸濃度が2mol/lとなるよう調整した溶液を用いた。硫酸溶液を用いることで、一旦溶液中に溶出したアンチモンの置換析出を促進するためである。以上の点が、第1実施形態の場合と異なるのみである。従って、重複する記載を避けるため、ここでの工程に関する詳細な説明は省略する。
【0061】
本実施形態におけるフッ素抽出液中のタンタル及びニオブの濃度については、プラズマ発光分光分析装置(ICP)を用いて、タンタルとニオブのそれぞれの含有量を測定し、Ta及びNbに換算し、その合計量を求めると350g/lであった。また、アンチモンについても、プラズマ発光分光分析装置(ICP)を用いて測定を行ったが、1mg/l以下であり、第1実施形態の場合と同様に見かけ上100%の除去効率であった。
【0062】
以上のようにして得られたフッ素抽出液を用いて、メチルイソブチルケトン(MIBK)法を用いてタンタル及びニオブを採取精製した。この結果、酸化タンタル及び酸化ニオブ製品中のアンチモン含有率は、2ppm未満であった。
【0063】
更に、本件発明者等は、上述した本実施形態の効果を確認するため、比較用に従来からフェロタンタルニオブに適用される、単なるアルカリ疎解処理であって、アルカリ疎解工程でフェロタンタルニオブの含有鉄を全て除去した調整疎解残渣を用いて、これをフッ素処理することで得られるフッ素抽出液中のアンチモン濃度の測定を行ってみたが、110mg/lの値が得られていた。
【0064】
【発明の効果】
本件発明に係るタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法によれば、アンチモンを置換析出させることの出来る卑金属成分である鉄、亜鉛、アルミニウム等を含有した複合原料を用いることで、フッ素処理工程において、タンタル、ニオブの溶出作業と同時に、そこに含まれた不純物成分であるアンチモンを除去することが可能となる。この結果、フッ素処理工程以降に、アンチモン除去工程を別個独立に設ける必要はなく、工程を短縮化、簡略化することが可能となり、タンタル、ニオブ等の生産性を向上させ、結果として、トータル製造コストの低減に資するのである。

Claims (9)

  1. タンタル又はニオブ若しくはこの双方と、標準酸化還元電位が−2V〜0Vであり、且つ、アルカリ溶液と反応し水酸化化合物を形成できる異種金属とが共存し、アンチモンを不純物として含む複合原料を用い、
    アルカリ疎解処理工程で、当該複合原料をアルカリ溶液で処理して疎解液と前記異種金属を金属状態及び水酸化化合物状態で共存含有する疎解残渣とを得て、ここで鉱酸を用いて、所定のpHに調整することで疎解残渣中に残留している化合物状態の異種金属を溶解除去し、濾別分離することで金属状態の異種金属を含有した調整疎解残渣を採取するものであり、
    フッ素処理工程で、フッ化水素酸と鉱酸とを含み、鉱酸濃度を0.001mol/l〜10mol/l含んだフッ化水素酸系溶液を用いて、当該調整疎解残渣を処理しニオブ、タンタル等の溶出したフッ素抽出液とフッ素処理残渣とを得ると同時に、フッ素抽出液中に溶出しているアンチモンをフッ素処理残渣中に金属状態で残留している前記異種金属上に置換析出させ、アンチモンの置換析出した当該異種金属を残渣として分離除去することでアンチモンの除去処理を行って得られるタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  2. 複合原料は、その比表面積が0.5m/g〜10m/gである粒体原料である請求項1に記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  3. アルカリ疎解工程で用いるアルカリ溶液は、異種金属(Me)の全てを水酸化化合物であるMe(OH)nとするために必要なアルカリ成分の理論的必要量の1/3倍当量〜1倍当量となるように用いるものである請求項1又は請求項2に記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  4. 調整疎解残渣は、その乾燥基準重量に対して、金属状態の異種金属成分が1wt%〜10wt%含まれるものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  5. フッ素処理工程で調整疎解残渣をフッ化水素酸系溶液を用いて処理する際の溶液温度は、0℃〜60℃である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  6. 鉱酸は塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸から選ばれる1種又は2種以上を混合したものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  7. 複合原料を構成する異種金属は、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫、鉛のいずれか1種又は2種以上である請求項1〜請求項6のいずれかに記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  8. 複合原料は、異種金属としての鉄を含有したフェロタンタル、フェロニオブ、フェロタンタルニオブのいずれか1種又は2種以上を混合したものである請求項1〜請求項7のいずれかに記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
  9. 複合原料は、異種金属としての鉄、亜鉛、鉛、錫、アルミニウムを少なくとも一種含有し、且つ、タンタル又はニオブ若しくはこれらの双方を含有する電子材料部品スクラップである請求項1〜請求項7のいずれかに記載のタンタル、ニオブ等の採取精製に用いる原料溶液の製造方法。
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