近年、情報化の進展によって、光情報記録媒体に対して高密度・大容量・高速アクセス等が求められている。大容量光情報記録媒体として、CD(Compact Disc)やMO(Magneto−Optical disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等が普及しており、さらに大容量を実現可能な光気記録媒体として、青色レーザを用いたBlu−ray Disc(以下、BDと省略する。)やHD DVD(High Definition Digital Versatile Disc)が開発されている。
上記CDにおいては、情報記録層としてプリピットを用いた再生専用型のCD−ROM、情報記録層として色素膜を用いた1回のみ追記可能型のCD−R、及び情報記録層として、相変化膜を用いた書き換え型のCD−RWの3種類が存在する。DVDやBDについても、上記CDと同様に、再生専用型、追記可能型、及び書き換え型の光ディスクが存在する。
ここで、上記CD、DVD、BDの構成と再生機構について図面を用いて説明する。
図16は、CDに対して情報の記録再生を行う際の要部構成を説明する断面図である。CD(1層650MB)の場合、記録再生を行う半導体などのレーザ光125の波長が780nm、対物レンズ124の開口数NAが0.45であり、約1.2mmの厚みの透明基板121が用いられている。透明基板121の表面には、情報記録層122が形成され、情報記録層122を介して、さらに保護層123が設けられている。レーザ光125は、透明基板121側から情報記録層122へと対物レンズ124により集光照射され、情報の記録再生が行われる。
次に、図17は、DVDに対して情報の記録再生を行う際の要部構成を説明する断面図である。DVD(1層4.7GB)の場合、記録再生を行う半導体などのレーザ光137の波長が650nm、対物レンズ136のNAが0.6、透明基板131の厚さが0.6mmである。上記厚さの基板2枚を貼り合わせることによって、DVDのトータル厚みはCDと同様の1.2mmとなっている。
図17に示す片面2層タイプのDVDでは、厚さ0.6mmの2枚の透明基板131及び基板135それぞれが第1情報記録層132及び第2情報記録層134を有している。上記情報記録層が互いに向き合うように、中間層133を介して接着されており、一方の透明基板131側からレーザ光137が対物レンズ136により集光照射され、第1情報記録層132又は第2情報記録層134の記録再生が行われる。
一般に、光と集光スポット径の関係は、レーザ光の波長λと対物レンズの開口数NAを用いて(集光スポット径)∝λ/NAで示される。従って、集光スポット径をより小さくするためには、波長λをより短く、開口数NAをより大きくすることが必要である。
一方、レーザ光が通過する透明基板の厚さをtとすると、透明基板の傾きが発生した際、(t/λ)×NA3に比例するコマ収差が発生することになる。波長λを短くし、開口数NAを大きくすると、コマ収差が大きくなり、透明基板の傾きに対して、真円状の集光スポットを維持することができなくなる。従って、コマ収差を抑制し、記録密度を大きくするためには、透明基板の厚さtを小さくする必要があることになる。
このような事情から、短波長化・高NA化により高密度化を実現したDVDの透明基板131の厚さは、CDの透明基板121(図16参照)の厚さの半分の厚さとなっている。
次に、図18は、BDに対して記録再生を行う際の要部構成を説明する断面図である。BDは、1.1mm厚のディスク基板144上に情報記録層143が設けられ、該情報記録層143を覆うように、0.1mm厚の透明カバー層141が透明接着剤142により貼り付けられた構成となっている。BDに対する情報の記録再生は、波長405nmのレーザ光146を、開口数NAが0.85の対物レンズ145により、透明カバー層141側から情報記録層143へと集光照射することにより行われる。なお、上記波長については、実際には規格上許容範囲が±数nmあるため、正確に405nmでない場合もあるが、上記波長数nmのずれは光情報記録媒体記録再生にとっては本質的な問題ではない。従って、以降に光情報記録媒体の再生光波長を数値として示す際には、上記誤差範囲も含むものとする。
BDにおいても、短波長レーザ光・高NA対物レンズを使用することによるコマ収差の増大を、レーザ光が通過する透明カバー層141の厚さを0.1mmと薄くすることにより抑制し、記録密度の増大を実現している。
また、波長405nmのレーザ光をDVDに適用した、HD DVDと呼ばれる光ディスクの開発も進められている。上記HD DVDでは、開口数NAが0.65の対物レンズが使用され、DVDと同じく0.6mm厚の透明基板が採用されている。
以上のように、CD,DVD,BD,HD DVDのような、それぞれ異なる形状を有する光情報記録媒体が存在している。これらの光情報記録媒体において、BDとDVDとの互換性を確保することが可能な光情報記録媒体の構成が、非特許文献1(BD−DVDコンビネーションROMディスク)に開示されている。
図19に、上記非特許文献1に記載されている光情報記録媒体の断面図を示す。当該光情報記録媒体260をDVD−ROMの構成を基準として説明する。従来の2層DVD−ROMは再生光が入射する面の反対側から、プリピットを表面に備えた第2基板250(文献上は約0.6mm基板、以下同様)に第2DVD層243(赤色を反射させる反射膜)、中間層242(約0.05mmスペーサー)、第1DVD層241(赤色を半透過させる半透明反射膜)、第1DVD層241側表面にプリピットを備えた第1基板230(約0.5mm基板)をこの順で備えている。非特許文献1では、従来の2層DVD−ROMの光入射側に位置する0.6mm厚の第1基板の代わりに、上記第1基板230は光入射側に、BD層の記録情報に対応する凹凸形状を表面に有している。さらにその光入射側にはBD層220(青色光を反射し赤色光を透過させる高機能反射層:BD層)、加えてBD規格に準拠して透光層210(約0.1mmカバー層)が設けられている。なお、非特許文献1におけるタイトルレーベル層は、一般的に基板若しくは情報記録層の保護又は媒体識別のために用いられるものであり、媒体の再生動作に直接影響しないのでここでは図示していない。
ここで、DVD層240(第1DVD層241及び第2DVD層243)の記録再生は、波長650nmのレーザ光を、開口数NAが0.60の対物レンズを用いて、透光層210側から、DVD層240(第1DVD層241及び第2DVD層243)へと集光照射することにより行われる。また、BD層220の再生は、波長405nmのレーザ光を、開口数NAが0.85の対物レンズを用いて、透光層210側から、BD層220へと集光照射することにより行われる。
このような構成であれば、BD再生装置でもDVD再生装置でも再生可能な1枚の光情報記録媒体が実現できる。このような異なる規格間において、少なくとも再生互換性を有する光情報記録媒体を、1枚で2通りの再生が可能という意味で、以降ハイブリッド光情報記録媒体と称することにする。この場合はBD−DVDハイブリッド光情報記録媒体とする。
BD−DVDハイブリッド光情報記録媒体にはBD層とDVD層に共通の内容物、例えば映像、画像、音楽、プログラムなどの各種データ(以降コンテンツと表記する)を記録するか、記憶容量の差を鑑みてBD層に高画質高音質の映像、DVD層に低画質低音質の同コンテンツを記録しておくことができる。また、まったく別の内容を記録しておくことも可能である。
また、非特許文献1には(青色光を反射し赤色光を透過させる高機能反射層:BD層)の材料については開示されていないが、特許文献1には同様の目的を持つ機能膜としてSiやAPCからなる反射膜が開示されている。
さて、近年、特に日本国内では信号フォーマットが1920×1080画素のデジタルハイビジョン放送が2000年以降各種開始され、これらのハイビジョン映像を2時間以上記録できるメディアとして、上記のBD及びHD DVDが脚光を浴びている。
世界各国の電機メーカーなどが中心となり、アメリカの映画配給会社も加わり、上記2陣営に分かれて規格争いが熾烈である。両陣営はそれぞれ規格の長所を広報しているものの、いずれが市場で受け入れられるかは決定的ではなく、不透明な状況である。従って、消費者及び市場はいずれの規格に対応した再生装置を購入すればよいのか判断が難しく、それだけでなく、ハイビジョン映像で映画や映像などのソフトを販売しようとするメーカー側としても、いずれの規格に対応した光情報記録媒体で発売すればいいのか各社検討課題となっている。これらの状況が両規格の装置の買い控えにつながり、記録再生装置の普及も後れている状況である。
上記の非特許文献1の技術と上記事情とを鑑みれば、非特許文献1のBD−DVDのコンビネーションROMディスクにおいて、DVDの代わりに基板厚さがDVDと同様に0.6mmであるHD DVDの規格を採用すれば、BD再生装置においても、またHD DVD再生装置においても再生可能な、1枚の光情報記録媒体(以降BD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体と称する)の構成が容易に類推できる。その構成例を図20、図21に示す。なおこの場合、上記BD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体は、図20に示すBD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体280のように、第1HD DVD層271、中間層272及び第2HD DVD層273からなるHD DVD層270を有しており、HD DVD層を非特許文献1のDVD層と同様2層にすることも構成上可能である。また、図21に示すBD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体290のように、1層のHD DVD層270とすることも構成上可能である。そうすれば、BDフォーマットとHD DVDフォーマットの両方の情報記録層を併せ持つBD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体280、290が構成上作製可能となる。
以上に、光情報記録媒体の分野における大容量化についての規格化の経緯と、1枚の光情報記録媒体において、複数の異なる規格に対応した情報記録面を有するハイブリッド光情報記録媒体について説明してきた。
これまでの光情報記録媒体の大容量化は、すでに説明してきたように、主に短波長化・高NA化による情報記録の高密度化によって達成されたものであるが、光情報記録媒体の分野においては、短波長化・高NA化以外にも高密度化技術が存在する。ひとつは情報記録層を多層化し、それぞれの情報記録層に対して、記録/再生することが可能な多層光情報記録媒体を構成することである。もうひとつは、再生時における情報処理向上技術の1つである超解像技術である。超解像技術とは、再生装置が有する光学的解像限界(上述の集光スポット径∝λ/NAにより決まる)以下のマーク長の信号を再生する技術であり、これによってより小さなマーク長を使用した記録が可能となるので、実質的な記録密度が増加する。このことは、情報記録を高密度化する際に問題となるのが再生技術であり、記録技術ではないことに起因する。
まず、多層光情報記録媒体について説明する。
多層光情報記録媒体とは、すでに非特許文献1で例に挙げた、BD−DVDコンビネーションROMディスクにおけるDVD層のように、情報記録層が2層あるいはそれ以上設けられているものを指す。ただし情報記録層が隣接していてはクロストークが問題になるため、主に樹脂からなる中間層(約0.05mmスペーサー)により、各情報記録層を分離した構造となっている。
再生光入射面より最も遠い情報記録相以外は、再生光が透過するような半透明層になっており、再生光入射面から入射した再生光が、各情報記録層にそれぞれフォーカスできる。従って多層光情報記録媒体は、情報記録層の数が増えるに従って情報記録密度を増加させることが可能な光情報記録媒体と言える。図19、図20、図21で示したハイブリッド光情報記録媒体260、280、290は、異なる規格の情報記録層を含む多層光情報記録媒体と表現できるが、1枚で異なる複数の規格に準拠できるのも上記の多層化によって実現できた技術とも言える。
次に超解像技術について説明する。
従来、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生するため、多くの光情報記録媒体(以降、超解像媒体と呼ぶ)が提案されてきた。このような技術として、例えば、書き換え可能な光情報記録媒体のみならず、再生専用媒体にも適応することができる、温度によって光学特性(透過率)が変化するサーモクロミック色素層をマスク層として、反射膜の再生光入射面上に設ける技術が知られている(特許文献2)。なお、マスク層とは、上述の集光スポットを擬似的に限縮したりするなどの超解像現象を引き起こす層のことである。これらの光情報記録媒体では、その再生面に照射された再生レーザによって生じる集光スポット(再生レーザスポットとも言う)には光強度分布があり、そのために生じる温度分布を利用している。より具体的には、特許文献2に開示されているような光情報記録媒体では、反射層より再生光入射面に近い再生層上の再生レーザスポット内に、温度又は光強度分布が生じ、それにより上記レーザスポット内に光学特性の分布が生じる。例えば、温度が高くなる場合に透過率が高くなる材料を再生層に用いている場合、温度の高い部分の透過率のみが高くなるので、反射層面上に生じるレーザスポットが擬似的に縮小される。これにより、結果的に光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生することができる。
本発明の実施形態について図1ないし図15に基づいて説明すると以下の通りである。なお、以下に説明する各実施形態は、本発明の実施形態の一例に過ぎず、本発明の範囲は、以下の実施形態の範囲に限られるものではない。
〔実施の形態1〕
図1は本実施の形態に係る光情報記録媒体60の断面構造を示している。上記光情報記録媒体60は透光層10と、第1情報記録層20と、第1基板30と、第2情報記録層40と、第2基板50とを備え、光入射面からこの順に積層されている。
透光層10は、ポリカーボネートフィルム11及び透明粘着樹脂層12を含んでいる。第1基板30には、図2(a)の拡大斜視図に示すように、情報が記録されているプリピット31が形成されている。プリピット31は実用化時にはBD−ROM規格に準拠した信号が凹凸形状として記録される。また、第2基板50には、図2(b)の拡大斜視図に示すように、プリピット51が形成されている。プリピット51は、実用化時には、HD DVD−ROM規格の再生光学系解像限界以下の長さを持つマークを含んだ信号が、凹凸形状として記録されており、上記光学系によって超解像再生される。以後、本願では便宜上、上記信号のことを「高密度HD DVD−ROM規格に準拠した信号」と表現する。同様に第2情報記録層40を、便宜上「高密度HD DVD層」と表現することとする。
第1情報記録層20及び第2情報記録層40は、プリピット31、プリピット51上に成膜されることにより、プリピット31、プリピット51による凹凸が反映された状態となり、情報を記録した状態となる。このような構造により、いわゆる再生専用光情報記録媒体が構成される。
具体的にBDとHD DVD規格を例に、本実施の形態に係る光情報記録媒体60の構成を説明すると以下の通りである。
すでに図21に示したBD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体290が、本情報記録媒体60と同様再生専用光情報記録媒体である場合には、BD層220(第1情報記録層220)はBD−ROM規格に準拠しており、HD DVD層270(第2情報記録層270)はHD DVD−ROM規格に準拠してる。この場合、第1情報記録層220及び第2情報記録層270の準拠する両規格はトータル容量が異なる。両規格向けのコンテンツが共通で、かつ両規格の記録/再生装置でも記録/再生できるBD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体290を作製する場合、HD DVD規格に準拠する第2情報記録層270には片面15GBまでしか作製できず、ハイビジョン映像では2時間記録するために、ビットレートおよび/またはフレームレートを下げて記録しておく必要があった。しかし、本実施形態に係る光情報記録媒体60であれば、第2情報記録層40の超解像再生を可能にすることによって、単層で第1情報記録媒体20のBD容量との差を小さくすることができ、同画質同音質で共通の内容のコンテンツを記録しておく場合には、記憶容量の上限をより大きくすることができる。あるいは、各情報記録層の容量に応じて画質や音質を調整することで、同様の内容コンテンツを同画質同音質により近づけて、1枚の光情報記録媒体に記録しておくことができる。
さらに、光情報記録媒体60であれば、高密度HD DVD規格に準拠する第2情報記録層40を単層で実現できるので、BD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体280のようにHD DVD規格に準拠するHD DVD層を多層化する必要がないため、従来プロセスにて簡単に作製が可能でありコストも低い。光情報記録媒体のさらなる多層化によって光の利用効率を落とすことがないので高い信号品質を得られる。また、光学系の大きな変更なく容量を大きくすることができるので、規格の大きな変更を伴わずに従来同様の記録/再生装置による記録/再生が可能となる。
第1情報記録層20は、反射率の高い金属材料や半導体材料から構成される。上記材料として例えばAg、Au、Cu、Al、Si、Geのうちいずれかひとつの元素からなる薄膜、あるいは上記のうちいずれかの元素(1種あるいは複数種でもよい)からなる化合物若しくは混合物、合金、あるいは上記のうちいずれかの元素(1種あるいは複数種でもよい)に他の元素を混合させたものが適用可能である。上記光情報記録媒体60を光入射側から見ると、第2情報記録層40が第1情報記録層20よりも奥の位置に備えられている。第2情報記録層40はHD DVD光学系で再生する必要があるため、第1情報記録層20は、上記HD DVD光学系の波長である405nmの青色光をある程度透過し、BD規格の再生光(同じく波長405nm)である青色光をある程度反射する必要があるので、この405nm波長の光に対して半透明膜である必要がある。
このため、第1情報記録層20と第2情報記録層40がそれぞれ準拠する規格の再生光波長が405±5nmであることが好ましい。その理由は、実際の光記録、特に民生品に用いられるレーザは量産品が主であり、波長が事実上ほぼ特定の値をとる。たとえば短波長で高密度化に有利な青紫レーザでは405nm付近が用いられている。従って民生用の高密度機器に用いる場合に有利である。
第2情報記録層40は、酸化亜鉛、酸化亜鉛を主成分とする化合物若しくは混合物、又は亜鉛酸化物を主成分とする化合物若しくは混合物、のうちいずれかからなる再生膜41及び吸光膜42を含んでいる。吸光膜42は、再生光を吸収することにより、再生膜41を加熱することが可能な熱に変換する。再生膜41は吸光膜42で生じる熱によって加熱されると、再生膜41の光学定数が変化し、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能にする。
上記第1情報記録膜20、再生膜41、吸光膜42は、真空装置においてスパッタリングによって形成される。また、吸光膜42は、例えばSi、Ge、又は上記いずれかの元素を主に含む化合物若しくは混合物、あるいは合金からなる。
再生膜41は、熱によるバンドギャップ変化により光学特性が変化するという特性を有する、金属酸化物からなることが好ましい。これにより、通常の組成変化や相変化によって光学特性が変化する、色素や相変化材料を用いた従来の記録媒体における再生膜と比較して、再生膜41の再生耐久性を向上させることができる。また、吸光膜42と再生膜41とが分離して形成されているので、再生膜41自体に多くの負担をかけることなく超解像再生が可能となり、再生耐久性の向上が可能になる。
以上のように、光情報記録媒体60は第2情報記録層40において、再生光を吸収して発熱する吸光膜42によって、加熱部分の光学定数を変化させる再生膜41を備え、それにより再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能にする。
再生光学系解像限界よりも短いマーク長の信号を含むいわゆる超解像媒体は、情報記録の高密度化、大容量化、光情報記録媒体の高画質高音質化、長時間化を可能にする。また、情報記録層を多層化することなく、容量を大きくすることができるため、さらなる情報記録層の多層化の必要がなく、従来プロセスにて簡単に作製が可能であり、コストも低い。また、情報記録層の多層化により、光の利用効率を落とすことがないので高い信号品質を得られ、信頼性も高くなる。さらに、光学系の大きな変更なく、容量を大きくすることができるので、規格の大きな変更を伴わずに、光情報記録媒体を従来同様の記録/再生装置によって再生することが可能となる。
超解像媒体を用いることにより、本実施の形態の光情報記録媒体60は、二つの異なる規格に準拠した情報記録層20、40を各1層ずつ有し、光情報記録媒体60全体としては2層構造であり、さらに第2情報記録層40は実質的な記録密度(再生可能な記録密度の意)を、再生装置の再生光学系解像限界により規制された記録密度よりも高めた構成にすることが可能となる。
それゆえ、特許文献2の超解像媒体よりも、情報記録層の層数が多いだけ全体の記憶容量を向上させることができる。しかも、二つの異なる規格に準拠しているため、共通のコンテンツを各規格に対応した内容で記録しておくことにより、いずれの規格に準拠する再生装置でも再生することが可能である。すなわち、複数の記録/再生装置に対して、一つの光情報記録媒体にて記録/再生することができる互換性を有する光情報記録媒体が実現できる。さらに第2情報記録層40が超解像媒体であることによりHD DVD規格では記録できなかったデジタルハイビジョン放送と同等の映像をBD規格同様2時間以上記録することができ、映像品質差のないコンテンツを保存できるハイブリッド光情報記録媒体とすることができる。
また、両規格で再生光学系に用いるレーザ波長を共通にしておくことで、光情報記録媒体の各層や各膜の光学特性や温度特性を該波長に最適化することができ調整や設計が容易となる。
また、両面を用いて別規格の情報記録層を読み出す光情報記録媒体に比べ、本光情報記録媒体は片面読み出し媒体であり、レーザ読み出しが常に同じ片面側からに限られるので、レーザが入射されない面側には光情報記録媒体の保護と媒体識別、読み出し面認識のためのタイトルレーベル層が形成できる。これによりユーザーは媒体の識別や、読み出し面認識を容易にでき、取り扱いが容易になる。
また、再生膜41と吸光膜42とを分離形成しているので、再生膜41自体が光吸収して分子構造を変化させるなどにより、光学特性を変化させることがない。それゆえ、再生膜41に多くの負担をかけることなく超解像再生が可能となり、再生耐久性の向上が可能になる。
次に、光情報記録媒体60が、BD−高密度HD DVDハイブリッド光情報記録媒体であるために満たさなければならない各層の厚さ条件について説明する。
まずBD規格に準拠する第1情報記録層20を再生するために、透光層10の厚さtBは約0.1mmである。ただし、再生装置の設定によっては0.05mm〜0.15mmの厚さ範囲を持っていても再生できる場合がある。次に高密度HD DVD規格に準拠する第2情報記録層40を再生するために、透光層10及び第1情報記録層20及び第1基板30の合計の厚さtHは約0.6mmである。ただし、再生装置の設定によっては0.55mm〜0.65mmの厚さ範囲を持っていても再生できる場合がある。また、上記いずれの規格にも準拠する光情報記録媒体として、タイトルレーベル層も含んだ光情報記録媒体60全体の厚さtTは約1.2mmである。ただし、再生装置の設定によっては1.1mm〜1.5mmの厚さ範囲を持っていても再生できる場合がある。以上の厚さ設定により、上記光情報記録媒体60は1枚でBD−高密度HD DVDハイブリッド光情報記録媒体として、上記いずれかの規格に準拠した光情報処理装置にて、対応する情報記録層を再生することが可能になる。
〔実施の形態1における実施例〕
〔実施例1〕
図1に示す本実施例に係る光情報記録媒体60は、透光層10としてのポリカーボネートフィルム11(膜厚:80μm)及び透明粘着樹脂層12(膜厚:20μm)と、第1情報記録層20としての半透明反射膜21(Ag,膜厚:5nm)と、第1基板30(厚さ:0.5mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板と、図示はしていないが透明紫外線硬化樹脂(膜厚:25μm)と、第2情報記録層40としての再生膜41(酸化亜鉛,膜厚:155nm)及び吸光膜42(Si,膜厚:50nm)と、第2基板50(厚さ:0.6mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板とを備え、光入射面よりこの順に積層された構造となっている。
これに対し、すでに説明した図21のBD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体290の構成を本実施例の光情報記録媒体60に対する比較例とする。なお、比較を容易にするため、図21の光情報記録媒体における構成要素と、本実施例の光情報記録媒体60における構成要素とが、同等の機能を有するものについては、本実施例の光情報記録媒体60と同じ符号を付記し、改めて図3に図示している。
図3に示すように、比較例のBD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体である光情報記録媒体70は、透光層10としてのポリカーボネートフィルム11(膜厚:80μm)及び透明粘着樹脂層12(膜厚:20μm)と、第1情報記録層20としての半透明反射膜21(Ag,膜厚:5nm)と、第1基板30(厚さ:0.5mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板と、図示はしていないが透明紫外線硬化樹脂(膜厚:25μm)と、第2情報記録層45としての反射膜46(Al,膜厚:30nm)と、第2基板50(厚さ0.6mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板とを備え、光入射面よりこの順に積層された構造となっている。
また、本実施例の光情報記録媒体60の第1基板30及び第2基板50には、図2(a)及び図2(b)に示すように、情報が記録されているプリピット31及びプリピット51が設けられている。これにより、この光情報記録媒体60において、第1情報記録層20及び第2情報記録層40は、プリピット31、プリピット51上面にそれぞれ成膜されることにより、プリピット31、プリピット51の凹凸形状、すなわち情報が第1情報記録層20及び第2情報記録層40にそれぞれ転写された状態となる。また、光情報記録媒体70についても同様である。従って、光情報記録媒体60及び光情報記録媒体70は、各情報記録層が情報を記録された状態となる、いわゆる再生専用光情報記録媒体として形成される。
上記ではプリピット31は第1基板30、プリピット51は第2基板50の表面に形成されていると説明した。例えば図20で示したHD DVD2層のハイブリッド光情報記録媒体の第2HD DVD層273と第2基板250が、実施例1の第2情報記録層40と第2基板50の関係に相当し、この場合プリピット51は第2基板50の表面に形成されている構成である。この実施例1の構成における作製方法としては、第1基板30から透光層10までを作製し、別に第2基板50から第2情報記録層40までを作製した後、第1基板30と第2情報記録層40の間に透明紫外線硬化樹脂を接着剤として使用することで、貼り合わせ光情報記録媒体60が形成される。つまり図示していない第1基板30と第2情報記録層40の間の透明紫外線硬化樹脂は、第2情報記録層40を再生する際に再生光が通るため透明である必要がある。
上記ではプリピット31は第1基板30、プリピット51は第2基板50の表面に形成されていると説明したが、プリピットの位置はこの限りではない。具体的にはプリピット51の代わりに、図2(a)に示すように、プリピット32が第1基板30の第2基板50側に形成されていて、上記プリピット32に第2情報記録層が成膜されても構わない。この場合は図20で示したHD DVD2層のハイブリッド光情報記録媒体において、第1HD DVD層271と第1基板230が、図1の光情報記録媒体60における第2情報記録層40と第1基板30の関係に相当する。この構成の場合の作製方法としては、透光層10から第2情報記録層40までを作製し、第1基板30に成膜された第2情報記録層40と第2基板50との間に、紫外線硬化樹脂を接着剤として使用することで、貼り合わせ光情報記録媒体60が形成される。この場合、第2基板50にはプリピット51を形成する必要がないため、第2基板50の作製が容易になる。また、第2基板50にプリピットが設けられていないので、第2情報記録層との貼り合わせの際に、プリピットパターンの偏芯あわせをする必要がなく、貼り合わせ工程が容易になるという長所がある。
しかしながら、上記の一例のように第1基板30の光入射面にプリピット31、及びその裏面側にプリピット32を形成する場合、透明基板にプリピットを両面成形する必要があり作製が困難になる。仮に両面に記録信号パターンとして形状が記録されたとしても、それらは重要な記録信号であるため、成形や成膜、紫外線硬化樹脂塗布時に、いずれの面にも傷が付かないよう細心の注意を要する。だが片面を処理する際に、どうしてもその裏面を接触保持することは基板安定保持のために必須であり、これらの矛盾する課題を解決するために、作製装置などのコストアップの可能性があり不利である。
これを解決する手段としては以下の手法が考えられる。例えば、プリピット31は第1基板30に最初から形成されてなくともよい。プリピット31が形成されておらず、プリピット32のみが形成されている第1基板30に第2情報記録層40を成膜し、第2基板50までを作製し2層BDの製造などで用いられている2P法などを用い、第1基板30上に透明な紫外線硬化樹脂を硬化させてプリピット31を形成し、その後第1情報記録層20及び透光層10を作製することも可能である。この方法をとれば、上述した第1基板30の両面にあらかじめプリピット31、プリピット32を形成しておく必要はなくなり、第1基板30を従来通り容易に作製できる。
以上のように、第2情報記録層40が図20の第1HD DVD層271に相当するか、第2HD DVD層273に相当するかにより、製造方法及び順序が変わり、第2情報記録層40に転写されるプリピットについても、第1基板30に形成する(プリピット32)か、第2基板50に形成する(プリピット51)が変わる。それにより、第2情報記録層40と、第1基板30又は第2基板50のどちらの基板を紫外線硬化樹脂で貼り合わせるかも変わってくる。また、図示はしていないが、紫外線硬化樹脂を用い、第2情報記録層40とどちらの基板を貼り合わせるかによっても、使用する紫外線硬化樹脂の種類が異なってくる。すでに説明したように上記紫外線硬化樹脂が第2情報記録層40よりも光入射側に位置する場合は、第2情報記録層40を再生する必要があるため、上記紫外線硬化樹脂は透明でなければならないが、逆に第2情報記録層40が上記紫外線硬化樹脂よりも光入射側に位置する場合は、上記紫外線硬化樹脂は必ずしも光を透過する必要はない。
以上に、光情報記録媒体60の種々の作製手法について説明したが、本願の技術思想は所期の目的を達成するためのものであって、上記作製手法のいずれを用いて作製しても構わないし、上記紫外線硬化樹脂がいずれに位置しても構わない。
続いて、本実施例の光情報記録媒体60(以降、本実施例において「第1実施例媒体」と称する)と比較例の光情報記録媒体(以降、本実施例において「比較例媒体」と称する)との各種特性の比較について説明する。
図4は、波長404nm半導体レーザと、N.A.(開口数)0.65の光学系(すなわちHD DVD規格の光学系)を有するディスク測定器にて、上記第1実施例媒体及び比較例媒体のそれぞれにおける、第2情報記録層40及び80のOTFを測定した結果である。なお、OTFとは超解像性能を表す指標として一般に用いられており、C/N(信号品質を表す評価基準:搬送波対雑音比)の記録マーク長(再生専用光情報記録媒体の場合はピット長と同意)依存性を表す。
図4より明らかなように、第1実施例媒体では、比較例媒体で第2情報記録層45の信号が確認されない再生光学系の解像限界以下のマーク長である0.14μmにおいても、第2情報記録層40のC/Nが40dBを超えている。これは、解像限界以下のマーク長の信号が再生可能であることを示している。
また、図4は、再生装置の理論的な光学解像限界に比較して、ほぼ半分の長さである0.08μmが第1実施例媒体の第2情報記録層40の解像限界となっていることも示している。これは、0.16μm近辺で解像限界を迎える従来例媒体の半分の長さとなっている。すなわち、第1実施例媒体では、解像限界が比較例媒体の約1/2となり、約半分の長さのマーク長の信号を記録した場合、当然ながら約2倍の信号を記録することができる。このように、第1実施例媒体の第2情報記録層40は比較例媒体の第2情報記録層45の約倍の情報記録密度(線密度)を有する。
また、図5は、第1実施例媒体の第2情報記録層40の0.14μm記録マーク長(ピット長)において2万回の超解像連続再生を行い、初期C/Nとの比較を行った結果である。これによると、第1実施例媒体の第2情報記録層40では、2万回の超解像連続再生後もC/Nが劣化せず、優れた再生耐久性があることが分かる。
なお、第1実施例媒体と比較例媒体の第1情報記録層20に関しては、膜構成が通常の2層BDディスクの第1情報記録層と同様であり、波長404nm半導体レーザと、N.A.(開口数)0.85の光学系(すなわちBD規格の光学系)を有するディスク測定器にて評価したところ、OTFは0.12μm近辺で解像限界を迎えるといった、通常2層BD第1情報記録層と同様かつ充分の結果であった。また、耐久性の検証として解像限界(0.12μm)以上の0.15μm記録マーク長(ピット長)において2万回の通常再生を行い、なんら劣化、信号強度の低下は見られなかった。従って第1情報記録層20の各種特性については、第1実施例媒体も比較例媒体となんら差がなく、必要かつ充分な特性であったので、結果については特に図示しない。
このように、第1実施例媒体の第2情報記録層40は、通常の超解像光情報記録媒体では得られない再生耐久性を有し、かつ第1情報記録層20を透過してきた光を使用しても超解像再生が安定に可能であった。すなわち、BD−HD DVDハイブリッド光情報記録媒体において、光のロスが大きく製造コストも高くなる2層のHD DVD層(第1情報記録層20であるBD層を加えるとディスク全体で3層)を設ける必要なく第2情報記録層40として高密度HD DVD層単層でデジタルハイビジョンクラスのハイビジョン映像を2時間記録でき、かつ、405nm付近の共通の青色レーザ波長にてBDの光学系(N.A.=0.85)ではBD規格準拠の第1情報記録層20を、HD DVDの光学系(N.A.=0.65)では第2情報記録層40を超解像再生できるハイブリッド光情報記録媒体として使用できることが示された。
なお、酸化亜鉛等の金属酸化物による再生膜41は吸光膜42で生じる熱によって加熱されると、再生膜41の光学定数が変化することによって、再生装置の有する光学系解像限界より短いマーク長の信号を再生可能にすると考えられるが、現時点では明確ではない。
〔実施例2〕
また、本実施の形態の光情報記録媒体60は、上記第1実施例媒体の構造に限るものではない。
例えば、本実施例の光情報記録媒体60(以降、本実施例において「第2実施例媒体」と称する)において、透光層10は再生光を充分に透過すればよく、再生面にハードコートが設けられていてもよいし、紫外線硬化樹脂などの他の材料で形成されていてもよい。例えば上記材料であれば、図1の透光層10としてのポリカーボネートフィルム11と透明粘着樹脂層12の代わりに、図6に示すように紫外線硬化樹脂13のみをスピンコートで塗布し、紫外線照射により硬化させて透光層10としてもよい。
第1基板30や第2基板50も、ポリカーボネート樹脂や、圧縮成形可能な他の樹脂であってもよいし、ガラスや、金属等でもよい。
再生膜41の材料としては、色素等の有機材料や、相変化材料や、他の金属酸化物(例えばTiO2、CeO2)からなる材料や、主に金属酸化物からなる材料、あるいは金属酸化物を含む材料等でもよい。例えば、色素等の有機材料や、相変化材料の場合は、第1実施例媒体には耐久性が及ばないが、少なくとも吸光膜42が分離して存在しているため、再生膜材料自体で再生光を吸収する構成である、従来の超解像膜構造と比較すると再生耐久性が高いことが容易に予想できる。
また、他の金属酸化物(例えばTiO2、CeO2)からなる材料や、主に金属酸化物からなる材料、あるいは金属酸化物を含む材料の場合、第1実施例媒体と同等の再生耐久性を有するが、現時点では第1実施例媒体で用いた酸化亜鉛以上の超解像特性は得られていない。なお、金属酸化膜は一般に透明なものが多く、吸光膜への透過性がよく、吸光膜がより効率的に作用するという利点もある。
再生膜41の膜厚については、どのような材料を用いて形成したとしても、第2情報記録層40に再生光をフォーカスして再生した場合に、超解像特性が生じる膜厚であればよい。また、膜厚については図7を基に説明する。図7には、再生膜41が酸化亜鉛からなる場合、再生膜41の膜厚が155nmの第1実施例媒体と、再生膜41の膜厚が50nmである第2実施例媒体とを、再生感度で比較した実験結果を示す。なお、吸光膜42は実施例1に示した膜厚で行った。各実施例の第2情報記録層40における再生光学系、すなわちHD DVD光学系解像限界以下のピット長である0.14μmでのC/Nを測定した結果を、再生パワー依存性として示す。
図7より分かるように、第1実施例媒体、第2実施例媒体ともに30dBのC/Nを達成しており、十分な信号品質を得ていることが分かる。実用化に必要な信号品質は30dB程度と考えられるので、上記第1実施例媒体、第2実施例媒体ともに実用化が可能であると考えられる。さらに考察すれば、図7より分かるように、再生膜41の膜厚が50nmの第2実施例媒体の方は、若干超解像特性が低下(解像度限界以下のピット長での到達C/Nが低下)している。これは、前述した吸光膜42からの熱による光学特性の変化による効果が、膜厚が薄くなることによって減少したためとも考えられる。また、高い再生パワーによって吸光膜42が昇温された時に、再生膜41が薄いことにより保護の役割を果たせず膜の劣化が起こったとも考えられる。いずれにしろ、再生膜41の膜厚が厚いほど再生耐久性は向上する上、厚いほど最高到達C/N値も高いため、再生膜41の膜厚は厚い方が有利であると言える。
また、第2実施例媒体における吸光膜42の材料としては、色素等の有機材料や、相変化材料や、他の無機物などでもよい。吸光膜材料として、色素等の有機材料や相変化材料を採用した場合は、吸光膜材料自体が組成変化や相変化するので、膜自体の負担が大きく、第1実施例媒体には耐久性が及ばないことは容易に予想できる。また、他の無機物を吸光膜材料として用いた場合、第1実施例媒体と同様の再生耐久性があることは容易に予想できる。ただし、現時点では、Ge以外の材料ではSiと同様の再生感度を有する材料は確認できていない。
また、吸光膜42の膜厚については、どのような材料であっても、第2情報記録層40に再生光をフォーカスして再生した場合に、充分な再生耐久性を有し、再生感度を確保でき、充分に超解像特性を生じればよい。かつ、第2情報記録層40とBD層を含めると、2層構造であるがゆえ、光利用効率を上げるため充分に再生光を反射する膜厚であればよい。例えば、第2実施例媒体における第2情報記録層40が、現在得られている中で最も超解像特性のよい第1実施例媒体における第2情報記録層40と同じ材料(再生膜41ZnO/吸光膜42Si)であった場合において、望ましい膜厚範囲について検討した。すでに図7で示したように、吸光膜42Siの膜厚が50nmと一定の場合は、再生膜41膜厚が厚い方が有利であった。一方、再生膜41を155nmと一定にし、吸光膜42の膜厚を変化させる場合は、吸光膜42が光を吸収して熱源となる膜であるため、超解像再生の感度や耐久性に与える影響が大きくなることが予想できる。
そこで、再生膜41を155nmと一定にし、吸光膜42の膜厚を10nmから300nmまでの範囲内でそれぞれ光情報記録媒体(第2実施例媒体)を作製し、それぞれについて第2情報記録層40のC/N評価を行なった。図8には吸光膜42の膜厚別に、第2情報記録層40における再生光学系、すなわちHD DVD光学系解像限界以下のピット長である0.14μmでのC/Nを測定した結果を、再生パワー依存性として示す。
図8に示した結果は、第2実施例媒体の第2情報記録層40について評価した結果であり、評価時の再生光は第1情報記録層20を透過して第2情報記録層40で反射し、再び第1情報記録層20を透過した光で信号を検出した評価結果である。図8から分かるように、使用した装置の仕様である再生パワー約7mWの範囲内においては、いずれの光情報記録媒体でも高パワーほどC/N値が上昇するという傾向が見られる。また、吸光膜42のSiの膜厚を比較すると、15nmから50nmの範囲においては、同じ再生パワーでは膜厚が厚いほど高いC/N値を示している。別の言い方をすれば、より低い再生パワーで信号品質を得ることができる。すなわち再生感度(再生パワー感度)が高いといえる。また、図示はしていないが、吸光膜42のSi厚さが10nmの光情報記録媒体では同じ再生パワーでは15nmよりも低いC/Nを示し、Si厚さが300nmの光情報記録媒体では50nm、150nmの評価結果とほぼ一致する結果であった。
次に、図9には吸光膜42の膜厚に対する第2情報記録層40の再生光波長における透過率を示す。図9においては、ガラス基板に第2情報記録層40のみを形成し、第2情報記録層40単独での透過率を分光器で測定した。光情報記録媒体の第2情報記録層40を実際に再生する場合には、第1情報記録層20を透過した再生光が入射するが、図9の結果は第1情報記録層20を透過した光を100%とした場合の波長405nmにおける透過率である。この結果、吸光膜42であるSi膜厚の増加に対して第2情報記録層40の透過率が減少し、150nmでは4%程度になることが分かる。また、図には示していないが、Si膜厚が300nmの時の透過率は1%程度であった。すなわち、Si膜厚20nm以上では透過率が26%程度以下、Si膜厚50nm以上では透過率は5%程度以下となる。
さらに、図10には実施例2の各光情報記録媒体の第2情報記録層40における、最高到達C/Nの再生光波長における透過率依存性を示す。いずれの実施例2の各光情報記録媒体も約7mWで最高到達C/Nを示すが、その最高到達C/Nについて、第2情報記録層40の再生光波長における透過率に対する依存性を示した図である。図10から、透過率が26%程度以下で最高到達C/Nが30dBを超えることが分かる。
以上の結果からは以下のように説明される。吸光膜42の厚さが薄いと、図9で示すように第2情報記録層40の透過率が高くなる。第2情報記録層40の透過率が高いと、吸光膜42が充分に光を吸収することができず、その結果として同じ再生パワーだと再生膜41の温度を充分に上昇させることができなくなり、C/Nが低くなると考えられる。より高い再生パワーを投入すると同様のC/Nを得ることができるが、あまり高い再生パワーにも限界がある。以上の結果、図10に示すように最高到達C/Nも低くなる。
また、第2情報記録層40の透過率が高くなると、その分反射率が小さくなって充分な信号光量が返らず光利用効率及び信号品質が低減することが考えられる。
上記2つの理由からSi厚さが厚く、第2情報記録層40の透過率は低い方が望ましい。具体的には、Si厚さが20nm以上、すなわち第2情報記録層40の再生光波長における透過率が26%程度以下であれば、30dB以上のC/Nが得られることが分かる。実用化に必要な信号品質は30dB程度と考えられるので、吸光膜42のSiの膜厚は20nm以上、すなわち第2情報記録層40の再生光波長における透過率が26%程度以下であれば望ましい。
また、Siの膜厚が50nm以上になるとC/Nの再生パワー依存性に差が見られない。
この理由は第2情報記録層40の透過率がすべて数%程度であり差が小さいので、吸光膜42の吸収する光エネルギーがほぼ同じであることによると考えられる。また、この結果から吸光膜42に照射された光エネルギーは吸光膜42の深さ50nm程度まででほとんどが吸収されて熱に変換され、その熱量の1部が再生膜41に伝導し超解像再生効果を起こしていると考えることができる。言い換えると50nm以上の吸光膜42のSi膜厚は今回の評価に対しては大きな影響を与えないと考えられる。ただし、300nmを超えてあまり厚くなりすぎると、堆積により膜表面が基板に設けられたプリピット51凹凸形状に比べて鈍ってしまうためC/Nが低くなる恐れがある。さらに長時間成膜や大電力成膜が必要となる上、材料がその分多く必要となり、プロセス的、コスト的にも不利になる。上記観点から、吸光膜42のSi膜厚は、300nm以下であることが好ましい。第2情報記録層40の透過率の観点では、透過率は低ければ低いほど吸光、昇温に望ましい。
以上の結果から判断すると、吸光膜42にSiを用いた場合、Si厚さが20nm以上300nm以下であれば、30dB以上のC/Nが得られることが分かる。実用化に必要な信号品質は30dB程度と考えられるので、吸光膜42のSiの膜厚は20nmより厚く300nmより薄い必要がある。また、第2情報記録層40の波長405nmにおける透過率については0%以上26%以下であれば望ましい。
この条件において、再生耐久性を確認したところ、すべての光情報記録媒体において、図5に示した結果と同様に2万回の連続再生によって劣化せず充分な再生耐久性を示した。これにより、第2情報記録層40における超解像特性及び再生耐久性を得ることができた。なお、Geを用いた場合も同様なことが言える。
また、第2実施例媒体の構造で、第1情報記録層20、第2情報記録層40に他の膜等を追加した場合でも、上記に示したような特性が大きく失われることはない。
なお、第1実施例媒体及び第2実施例媒体は再生専用光情報記録媒体であったが、本発明の光情報記録媒体は、これに限られるものではなく、記録/再生型光情報記録媒体や、追記型光情報記録媒体も含まれる。これらの場合は、各情報記録層に少なくとも記録膜が追加される。
なお、大容量光情報記録媒体としてはすでに説明したCD、MO、DVD、BD、HD DVD規格として、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、BD−RE、BD−ROM、BD−R、HD DVD−ROM、HD DVD−R、HD DVD−RWなどが提案あるいは規格化されている。これらの光学読み取り式のディスク、光磁気ディスク、相変化型ディスクなど、種々の光ディスクを、適応する光情報記録媒体の形式として挙げることができる。なお、本発明は、記録方式や大きさを問うものではない。
以上に述べたことから明らかなように、本実施例の光情報記録媒体60を用いて、情報の再生を行うことにより、より高密度に記録された光情報記録媒体からの安定した情報再生が可能となることが分かる。
〔実施の形態2〕
図11は本実施の形態に係る光情報記録媒体110の断面構造を示しており、図12は本実施の形態に係る他の光情報記録媒体120の断面構造を示している。光情報記録媒体110は、超解像媒体が第1情報記録層20のみに用いられる構成であり、光情報記録媒体120は、超解像媒体が第1及び第2情報記録層20、40両方に用いられる構成である。
光情報記録媒体110において、第1情報記録層20が超解像媒体である場合、第1情報記録層20は再生膜22(酸化亜鉛,膜厚:170nm)及び吸光膜23(Si,膜厚:7.5nm)から構成され、第2情報記録層には反射膜43(Al)を設けられる。つまり、図11に示す光情報記録媒体110は、透光層10としてのポリカーボネートフィルム11(膜厚:80μm)及び透明粘着樹脂層12(膜厚:20μm)と、第1情報記録層20としての再生膜22(酸化亜鉛,膜厚:170nm)及び吸光膜23(Si,膜厚:7.5nm)と、第1基板30(厚さ:0.5mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板と、図示はしていないが透明紫外線硬化樹脂(膜厚:25μm)と、第2情報記録層40としての反射膜43(Al,膜厚:50nm)と、第2基板50(厚さ:0.6mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板とを備え、光入射面よりこの順に積層された構造となっている。
また、図12に示す光情報記録媒体120において、第1情報記録層20は再生膜22(酸化亜鉛,膜厚:170nm)及び吸光膜23(Si,膜厚:7.5nm)から構成され、第2情報記録層40は再生膜41(酸化亜鉛,膜厚:155nm)及び吸光膜42(Si,膜厚:50nm)から構成される。つまり、図13に示すように、光情報記録媒体120は、透明層10としてのポリカーボネートフィルム11(膜厚:80μm)および透明粘着樹脂層12(膜圧:20μm)と、第1情報記録層20としての再生膜22(酸化亜鉛,膜厚:170nm)及び吸光膜23(Si,膜厚:7.5nm)と、第1基板30(厚さ:0.5mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板と、図示はしていないが透明紫外線硬化樹脂(膜厚:25μm)と、第2情報記録層40としての再生膜41(酸化亜鉛,膜厚:155nm)及び吸光膜42(Si,膜厚:50nm)と、第2基板50(厚さ:0.6mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板とを備え、光入射面よりこの順に積層された構造となっている。また、光情報記録媒体120における第2情報記録層40の再生膜41及び吸光膜42は、第1実施形態の光情報記録媒体60の膜厚と同じである。
上記のような構成の光情報記録媒体110及び120は、再生光を半透過させるため、第1情報記録層20の吸光膜23の膜厚が、光情報記録媒体60の第2情報記録層40の吸光膜42に比べ薄くなる必要がある。また、光情報記録媒体110及び120の第1情報記録層20の再生膜22と、光情報記録媒体60における第2情報記録層40の再生膜41の膜厚は光干渉状態をそれぞれに最適化するために異なっている。
上記のような構成の光情報記録媒体であっても、複数の規格に準拠したハイブリッド光情報記録媒体でありながら、多層化をせずとも再生光学系解像限界以下のマーク長の信号を再生することが可能であると考えられる。その結果、記憶容量が異なる複数の規格に準拠した光情報記録媒体において、超解像媒体を用いることにより、記録密度の低い媒体の記録容量が増え、同品質の内容を記録することが可能となる。
〔実施の形態3〕
図13は本実施の形態に係る光情報記録媒体90の断面構造を示している。
図13に示すように、光情報記録媒体90は透光層10と、第1情報記録層25と、第1基板30と第2情報記録層40と、第2基板50と、第3情報記録層80とを備え、光入射面からこの順に積層されている。なお、図19と同様タイトルレーベル層は一般的に基板若しくは情報記録層の保護又は媒体識別のために用いられるものであり、媒体の再生動作に直接影響しないのでここでは図示していない。また、実施の形態1の光情報記録媒体60における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
本実施の形態において、実施の形態1に加えて新たに設けられた第3情報記録層80は、例えばCD規格に準拠した情報記録層となっており、780nmの赤外光の再生光がN.A.0.45の対物レンズによって、第3情報記録層80上に集光されて再生される。
実施の形態1で示したプリピットと同様に、第2基板50には第3情報記録層80側にプリピット52(図2b)があらかじめ設けられている。第3情報記録層80は、このプリピット52上に成膜されることにより、プリピット52による凹凸が反映された状態となり、情報を記録した状態となる。このプリピット52の信号情報はCD規格又はCD−ROM規格に準拠している。このような構造により、いわゆる再生専用光情報記録媒体が構成される。
第3情報記録層80は、実施の形態1の実施例1及び実施例2における、第1情報記録層20と同様に、反射率の高い金属材料や半導体材料から構成される。上記材料として例えばAg、Au、Cu、Al、Si、Geのうちいずれかひとつの元素からなる薄膜、あるいは上記のうちいずれかの元素(1種あるいは複数種でもよい)からなる化合物若しくは混合物、合金、あるいは上記のうちいずれかの元素(1種あるいは複数種でもよい)に他の元素を混合させたものが適用可能である。
光入射側から見ると、光情報記録媒体90において、第3情報記録層80は、第1情報記録層25及び第2情報記録層40よりも奥に位置し、CD光学系により再生する必要があるため、第1情報記録層25及び第2情報記録層40はCD光学系の波長である780nmの赤外光をある程度透過し、BD規格及びHD DVDの再生光(波長405nm)である青色光をある程度反射する必要がある。すなわちこの780nm波長の光に対して半透明膜又は透明膜である必要がある。
これにより、本実施の形態の光情報記録媒体90は、三つの異なる規格に準拠した情報記録層を各一層ずつ有し、光情報記録媒体全体としては三層構造であり、さらに第2情報記録層40は実質的な記録密度(再生可能な記録密度の意)を、再生装置の光学系の解像限界により規制された記録密度よりも高めている。
それゆえ、実施の形態1における光情報記録媒体60の場合に加えて、光情報記録媒体90ではCD規格に準拠して記録されたデータをも保持することができ、CD規格に準拠した再生光学系で再生することが可能になる。従って光情報記録媒体90で想定される用途として、例えばBD規格に準拠した第1情報記録層25や、HD DVD規格に準拠した第2情報記録層40に記録されている映像に対応する音楽情報や関連する音楽情報を、CD規格に準拠した第3情報記録層80に記録しておくなどの用途が考えられる。
次に、光情報記録媒体90が、BD−高密度HD DVD−CDハイブリッド光情報記録媒体であるために満たさなければならない各層の厚さ条件について説明する。
まずBD規格に準拠する第1情報記録層20を再生するために、透光層10の厚さtBは約0.1mmである。ただし、再生装置の設定によっては0.05mm〜0.15mmの厚さ範囲を持っていても再生できる場合がある。次にHD DVDの高密度規格に準拠する第2情報記録層40を再生するために、透光層10、第1情報記録層20及び第1基板30の合計の厚さtHは約0.6mmである。ただし、再生装置の設定によっては0.55mm〜0.65mmの厚さ範囲を持っていても再生できる場合がある。さらに、CD規格に準拠する第3情報記録層80を再生するために、透光層10、第1情報記録層20、第1基板30、第2情報記録層40、第2基板50の合計の厚さtCは約1.2mmである。ただし、再生装置の設定によっては1.1mm〜1.3mmの厚さ範囲を持っていても再生できる場合がある。また、上記いずれの規格にも準拠する光情報記録媒体として、タイトルレーベル層も含んだ、光情報記録媒体90全体の厚さtTは約1.2mmである。ただし、再生装置の設定によっては1.1mm〜1.5mmの厚さ範囲を持っていても再生できる場合がある。以上の厚さ設定により、上記光情報記録媒体90は1枚でBD−高密度HD DVD−CDハイブリッド光情報記録媒体として、上記いずれかの規格に準拠した光情報処理装置にて、対応する情報記録層を再生することが可能になる。
〔実施の形態3における実施例〕
図13に示す本実施例に係る光情報記録媒体90は、透光層10としてのポリカーボネートフィルム11(膜厚:80μm)及び透明粘着樹脂層12(膜厚:20μm)と、第1情報記録層25としての波長選択性半透明反射膜26(Si、膜厚:15nm)と、第1基板30(厚さ:0.5mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板と、図示はしていないが透明紫外線硬化樹脂(膜厚:25μm)と、第2情報記録層40としての再生膜41(酸化亜鉛、膜厚:155nm)及び吸光膜42(Si、膜厚:30nm)と、第2基板50(厚さ:0.6mm)としてのポリオレフィン系樹脂基板と、第3情報記録層80としての反射膜81(Al、膜厚:50nm)とを備え、光入射面よりこの順に積層された構造となっている。なお、第3情報記録層80を保護したり再生面を識別したりするために設けられるタイトルレーベル層は、光情報記録媒体90の機能的には本質的に関係しないので省略する。
また、本実施例における、光情報記録媒体90の第1基板30及び第2基板50には、すでに実施例1で説明したプリピット31及びプリピット32に加えて、プリピット52が設けられている。これにより、この光情報記録媒体90は、第1情報記録層25、第2情報記録層40、第3情報記録層80がそれぞれプリピット31、第1基板30におけるプリピット32、第2基板50におけるプリピット52上に成膜されることにより、プリピット31、プリピット32及び52の凹凸形状、すなわち情報が第1情報記録層25、第2情報記録層40、第3情報記録層80にそれぞれ転写された状態となる。プリピット31は、実施の形態1における実施例1で説明したように、あらかじめ第1基板30作製時(成形時)に設けられるか、又は2P法などによって第1基板30の光入射面側に設けられ、BD規格に準拠した情報信号が記録されている。BD再生時には、約0.1mmの透光層10を経た再生光が、第1情報記録層25に集光され、BD規格に準拠した信号が再生される。プリピット32はあらかじめ第1基板30作製時(成形時)に第2基板50側に設けられ、高密度HD DVD層の情報信号が記録されている。高密度HD DVD層再生時には、約0.6mmの透光層10、第1情報記録層25、第1基板30を経た再生光が、第2情報記録層40に集光され、高密度HD DVD層の信号が再生される。裏面プリピットは、あらかじめ第2基板50作製時(成形時)に第3情報記録層80側に設けられ、CD規格に準拠した情報信号が記録されている。CD再生時には、約1.2mmの透光層10、第1情報記録層25、第1基板30、第2情報記録層40、第2基板50を経た再生光が、第3情報記録層80に集光され、CD規格に準拠した信号が再生される。従って、光情報記録媒体90は、各情報記録層が情報を記録された状態である、いわゆる再生専用光情報記録媒体として形成される。
作製方法については、実施の形態1に示したように種々の方法があり、作製の順番に応じて各プリピットはいずれかの基板に設ける必要がある。各作製方法に応じて各ピプリットを設ける基板は異なってくる。光情報記録媒体90においては、種々の作製手法があるが、本発明の技術思想は所期の目的を達成するためのものであって、上記作製手法のいずれを用いて作製しても構わないし、上記紫外線硬化樹脂がいずれに位置しても構わない。
続いて、本実施例の光情報記録媒体90(以降、本実施例において「第3実施例媒体」と称する)と比較例の光情報記録媒体60(以降、本実施例において「第1実施例媒体」と称する)との各種特性の比較について説明する。
第3実施例媒体が第1実施例媒体と材料的に異なるところは、1つ目は第1情報記録層25が、膜厚5nmのAgから膜厚15nmのSiになっていること、2つ目は第2情報記録層40において、吸光膜42のSiの膜厚が、50nmから30nmになっていること、3つ目は第3情報記録層80(Al:膜厚50nm)が存在することの3点である。以下にこれらの機能について説明する。
1つ目の相違点である第1情報記録層25は、実施の形態1における実施例1で説明したような405nmの青色光を半透過し、半反射する半透明膜である機能に加えて、780nmの赤外光を充分に透過する必要がある。なぜならCD規格は再生光波長が780nmであり、かつ再生には高い反射率が必要であり、CD規格に準拠した第3情報記録層80は、光入射面より最も離れて位置しているためである。つまり、第3情報記録層80への途中へ位置する第1情報記録層25は上記の特性を満たす必要がある。このような例はすでに示した非特許文献1の「青色を反射し、赤色を透過させる高機能反射膜」や特許文献1で開示されている。
上記第1情報記録層25に膜厚15nmのSiを用いると、405nmにおいて反射率21%、透過率32%、780nmにおいて透過率82%を示した。すなわち405nmの青色光に対しては半透明反射膜、780nmの赤外光に対しては透明膜と見なすことができる。
2つ目の相違点である第2情報記録層40は、実施の形態1における実施例2でも示したように、Siの膜厚が30nmであっても充分なC/N特性を得られた構成である。本実施の形態3の目的である、第3情報記録層80への赤外光透過率を上げるために、実施例1の膜厚50nmに比べて、Siの膜厚を薄くした構成になっている。この第2情報記録層40のみの光学特性は、405nmにおいて反射率35%、780nmにおいて透過率81%を示した。すなわち405nmの青色光に対しては反射膜、780nmの赤外光に対しては第1情報記録層25と同様透明膜と見なすことができる。
以上のように波長405nmの青色光に対しては、実施の形態1における実施例1、実施例2と同様の光学特性を示し、同様の効果を得られる。その一方で、波長780nmの赤外光に対しては第1情報記録層25、第2情報記録層40ともに透過率80%を満足するため、再生光が往復とも充分に透過し、あたかも第1情報記録層25も第2情報記録層40も存在しないように見なすことができる。従って3つ目の相違点である第3情報記録層80のように、充分に反射率の高い膜厚50nmのAlを設けておけば、第3情報記録層80に焦点を結ぶことで充分な反射光が得られ、通常のCDとして認識、再生が可能となる。
実際に光情報記録媒体90として作製した実施の形態3について、各規格(BD、高密度HD DVD、CD)に準拠した光学系において、それぞれの情報記録層について再生を行ったところ、いずれも30dB以上のC/N値を示し、良好な信号品質を得ることができた。
〔参考例〕
本発明の参考例について図14及び図15に基づいて説明すると、以下の通りである。
本参考例では、実施の形態1で説明した光情報記録媒体60、実施の形態2で説明した光情報記録媒体120、実施の形態3で説明した光情報記録媒体90のいずれかにおいて、第2情報記録層40を再生するための光情報処理装置について説明する。第2情報記録層40は、すでに説明したようにHD DVD規格に準拠した光学系によって、超解像再生される高密度情報記録層である。装置の説明については便宜上、媒体を光情報記録媒体60に代表させるが、光情報記録媒体120、90についても同様の再生が可能である。
また、実施の形態2で説明した光情報記録媒体110、120は、第1情報記録層20が、BD規格に準拠した光学系によって、超解像再生される高密度情報記録層で構成されている。第1情報記録層20を再生するための光情報処理装置は、第2情報記録層40の再生を行う本参考例において、情報記録層、光学系、規格が異なるものの、下記で説明する超解像媒体の再生や他の共通点については本参考例と同様である。
図14は、その光情報処理装置100の概略構成を示す図である。
図14に示すように、本参考例に係る光情報処理装置100は、光情報記録媒体60の第2情報記録層40に対して光ビームを照射し、その反射光を検出することにより、第2情報記録層40すなわち高密度HD DVD層に記録された情報を再生するための装置である。光情報処理装置100は、光情報記録媒体60をスピンドルモータ101にて回転駆動し、光ピックアップ装置102にて、光情報記録媒体60の第2情報記録層40からの情報の読み出しを行う。また、光ピックアップ装置102及びスピンドルモータ101の制御は制御部103で行われる。制御部103は、信号処理部103a、駆動制御部103b等を含む。
スピンドルモータ101は、光情報記録媒体60を回転することにより、光スポットを光情報記録媒体60の第2情報記録層40上で走査させる。
信号処理部103aは、光情報記録媒体60における、第2情報記録層40上の記録マークからの反射光より、光ピックアップ装置102からの電気信号が得られ、その電気信号に基づいて記録情報を検出することにより、記録マークにより第2情報記録層40上に記録された情報を読み取る。また、信号処理部103aは、上記と同様に、光ピックアップ装置102からの電気信号に基づいて、後述のフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成する。
駆動制御部103bは、光ピックアップ装置102から読み出され、信号処理部103aで生成された電気信号や外部からの指示に基づいて、スピンドルモータ101及び光ピックアップ装置102の駆動を制御するめにサーボ回路を有している。特に、駆動制御部103bは、信号処理部103aからのフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて、対物レンズ102eの位置を補正し、レーザ光のオートフォーカス及びトラッキングを行うためのサーボ回路を、上記のサーボ回路として含んでいる。
図15は、記録再生装置100に搭載される光ピックアップ装置102の構成を示す図である。
図15に示すように、光ピックアップ装置102は、半導体レーザ102a、コリメートレンズ102b、ビーム整形プリズム(ビームを円形にするプリズム)102c、ビームスプリッタ102d、対物レンズ102e、レンズアクチュエータ102f、及び検出光学系102gを備えている。
また、光ピックアップ装置102は、光源である半導体レーザ102aから照射されたレーザ光を、ビーム状に整形して、光情報記録媒体60の第2情報記録層40上に集光する装置である。この光ピックアップ装置102では、レーザ光源として半導体レーザ102a(例えばHD DVDの光学系であれば波長405nm)を用いている。ただし、これに限らず、他の光源を用いてもよい。また、半導体レーザ102aのレーザパワーは、超解像特性を発現させるために、従来再生レーザパワーより高く設定可能であり、従来の再生レーザパワーとの切り替えも可能である。これにより、第2情報記録層40の超解像再生が可能となるため、HD DVDの光学系によって再生できる2層通常媒体相当の記憶容量を単層に記録させておくことが可能である。従って、同じ記憶容量である2層通常媒体を再生する場合に比較して、単層であるから他の層へのフォーカスを考慮する必要がない。それゆえ、フォーカスに要する時間が短縮されるので、再生命令に対する反応が向上する。また、単層であるゆえ、多層の場合に比べて光利用効率が向上し、より低い再生パワーにて超解像再生が可能となる。
半導体レーザ102aからのレーザ光は、コリメートレンズ102bによってほぼ平行光に変換され、ビーム整形プリズム102cによって光強度の分布がほぼ円形となるように整形される。このほぼ円形の平行光は、ビームスプリッタ102dを透過した後、対物レンズ102eによって光ビーム(入射光)として光情報記録媒体60の第2情報記録層40に集光される。なお、対物レンズ102eの開口数(NA)はHD HVD光学系と同じく0.65に設定されている。
また、光情報記録媒体60における、第2情報記録層40からの反射光は、ビームスプリッタ102dで分岐され、検出光学系102gに導かれる。検出光学系102gでは、光情報記録媒体60における第2情報記録層40からの反射光の偏光方向の変化や、反射光強度の変化(反射光レベルの高低)等から記録情報、焦点ずれ情報及びトラック位置ずれ情報が識別され、これらの情報が電気信号に変換される。なお、変換された電気信号は、信号処理部103aに送られる。
上記反射光には、光情報記録媒体60の第2情報記録層40上に設けられた、プリピット51の一部によって構成される、アドレス情報マークからの反射光も含まれている。検出光学系102gは、その反射光から得られた電気信号、すなわちアドレス情報マークを再生することにより得られた電気信号から、光情報記録媒体60の第2情報記録層40における光ビーム照射面に形成される光スポット(光ビームの集光部)の光情報記録媒体60の第2情報記録層40に対するフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とを検出する。
レンズアクチュエータ102fは、上記のフォーカスエラー信号がフィードバックされることにより、光スポットの光軸方向の位置ずれを補正する。これにより、光ピックアップ装置102は、光情報記録媒体60における所望の第2情報記録層40に光スポットを形成できる。また、レンズアクチュエータ102fは、トラッキングエラー信号がフィードバックされることにより、光スポットのトラック幅方向の位置ずれを補正する。これにより、光ピックアップ装置102は、光情報記録媒体60の第2情報記録層40における目標のトラックに光スポットを追従させることができる。
従来の多層光情報処理装置では、多くの情報記録層に再生光をフォーカスして情報を再生するために、コストアップの伴うピックアップの性能を向上させる必要がある。これに対し、本参考例に係る光情報処理装置100においては、実施の形態1における光情報記録媒体60の第2情報記録層40を用いて再生を行うので、フォーカスさせる情報記録層数が超解像媒体を用いない従来装置に比べて減少することから、ピックアップ装置102のコストアップを抑制することができる。すなわち、より低コストの再生装置が実現できる。また、光情報処理装置100は、高密度に情報が記録された光情報記録媒体60の第2情報記録層40を用いることにより、安定した情報再生を行うことができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、本発明を以下のように構成してもよい。
すなわち、本発明の光情報記録媒体は、再生光入射面側から、透光層と、第1情報記録層と、第1基板と、第2情報記録層と、第2基板とが、少なくともこの順に積層されている片面読み出し用の多層光情報記録媒体であって、第1情報記録層と第2情報記録層はおのおの異なる光情報記録媒体規格に準拠しており、少なくとも上記いずれかの情報記録層は、当該情報記録層の準拠する規格の再生光学系解像限界よりも短いマーク長の信号が記録されていることを特徴としている。
上記構成によれば、ハイブリッド光情報記録媒体が有する、異なる規格準拠の各情報記録層に、同じ内容のコンテンツ、あるいは画質音質などの異なる、同様の内容を記録しておくことにより、異なる装置、異なる再生光学系にて、共通のあるいは同様の内容を再生できる。その際、第1情報記録層か第2情報記録層のいずれか記憶容量の小さい方の容量範囲内で同質(同画質同音質など)の共通の内容のコンテンツを記録しておくか、各情報記録層の容量に応じて画質音質を調整することで同様の内容コンテンツを記録できる。すなわち、複数の記録/再生装置に対して、ひとつの光情報記録媒体にて記録/再生することができる互換性を有する光情報記録媒体が実現できる。また、両面を用いて別規格の情報記録層を読み出す光情報記録媒体に比べ、本光情報記録媒体は片面読み出し媒体であり、レーザ読み出しが常に同じ片面側からに限られるので、レーザが入射されない面側には光情報記録媒体の保護と媒体識別、読み出し面認識のためのタイトルレーベル層が形成できる。これによりユーザーは媒体の識別や、読み出し面認識を容易にでき、取り扱いが容易になる。
上記光情報記録媒体は、上記透光層が、透明基板であることが好ましい。上記構成によれば、スピンコートなどで均一な膜厚を形成する必要がなく、単に貼り合わせるだけで良いので、より容易に光情報記録媒体を製造することができる。
上記吸光膜を含む光情報記録媒体は、上記吸光膜が、無機物からなることが好ましい。上記構成によれば、色素等の有機材料からなる吸光膜と比較して、光吸収時における吸光膜自体の耐久性を向上させることができる。それゆえ、光情報記録媒体の再生耐久性を向上させることが可能になる。
上記光情報記録媒体は、上記第2情報記録層には、上記第2情報記録層の準拠する規格の再生光学系解像限界より短いマーク長の信号が記録されており、上記第2情報記録層の再生光波長における透過率が0%以上26%以下であることが好ましい。上記構成によれば、第1情報記録層において超解像特性を得ることができる。それゆえ、光情報記録媒体の記憶容量を向上させることが可能になる。
上記吸光膜が無機物である光情報記録媒体は、上記吸光膜が上記第2情報記録層に含まれ、当該吸光膜の厚さが20nm〜300nmの範囲内であることが好ましい。上記構成によれば、第2情報記録層の吸光膜が超解像再生に必要な膜厚を有しているため、第2情報記録層において超解像特性を得ることができ、光情報記録媒体の記憶容量を向上させることが可能になる。
上記光情報記録媒体は、第1情報記録層が、BD規格に準拠した光学系によって少なくとも再生される情報記録層であり、第2情報記録層は、HD DVD規格に準拠した光学系によって少なくとも再生される情報記録層であることが好ましい。上記構成によれば、第1情報記録層又は第2情報記録層のいずれか小さい記憶容量の範囲内で、同画質同音質で共通の内容のコンテンツを記録しておくか、各情報記録層の容量に応じて画質や音質を調整することで同様の内容コンテンツを1枚の光情報記録媒体に保存できる。これにより再生装置の規格を問わない再生互換性を有する光情報記録媒体が実現できる。
上記光情報記録媒体は、第2情報記録層が、当該情報記録層の準拠する規格の再生光学系解像限界よりも短いマーク長の信号が記録されていることが好ましい。光入射面から目的の情報記録層までの厚さ(単層情報記録層の場合は一般的に基板厚さ、カバー厚さと呼ばれる)はコマ収差発生の原因となっており、一般的にN.A.が大きく再生光波長が短いほど、マージン確保のために上記厚さを薄く設定する必要があった。すなわち、上記厚さが厚いほど、集光ビームスポットが大きく記録密度は低かった。第1情報記録層と第2情報記録層の準拠する規格が異なる場合は、第2情報記録層を再生する光学系の方がN.A.が小さく、再生光波長が長く、第2情報記録層の記録密度が第1情報記録層より低い傾向があった。従って、再生装置の規格を問わない再生互換性を有する、両規格に対して量的質的に同内容の光情報記録媒体を作製する場合、使用可能な光情報記録媒体容量の上限は、事実上第2情報記録層の最大記憶容量に限定されていた。そこで、上記の構成によれば、記録密度の低い第2情報記録層に超解像媒体を採用することで記憶容量を大きくすることで、上記第1情報記録層と第2情報記録層の最大記憶容量の差を減らすことが可能になる。これにより、両規格に対して量的質的に同内容の光情報記録媒体を作製する場合、使用可能な光情報記録媒体容量の上限を飛躍的に大きくすることができる。
上記光情報記録媒体は、第1情報記録層と第2情報記録層がそれぞれ準拠する規格の再生光波長が実質的に等しいことが好ましい。上記構成によれば、光情報記録媒体の各層及び各膜の材料の光学特性や温度特性の設計を当該波長に最適化することができ、光情報記録媒体の開発や設計が容易となる。
上記光情報記録媒体は、第1情報記録層と第2情報記録層がそれぞれ準拠する規格の再生光波長が405±5nmであることが好ましい。上記構成によれば、実際の光記録、特に民生品に用いられるレーザは量産品が主であり、波長が事実上ほぼ特定の値をとる。たとえば短波長で高密度化に有利な青紫レーザでは405nm付近が用いられている。従って民生用の高密度機器に用いる場合に有利である。
上記光情報処理装置は、上記のいずれかの光情報記録媒体を再生可能であるレーザパワーのレーザ光を、上記第1情報記録層又は上記第2情報記録層に照射し、上記光情報記録媒体からの反射光を読み取る光学読み取り手段を備えていることを特徴としている。上記光情報処理装置は、光学読取手段によって、光情報記録媒体に対し、再生可能なレーザパワーのレーザ光を照射することによって、光情報記録媒体からの反射光を読み取るため、より高密度に情報が記録された光情報記録媒体からの安定した情報再生が可能となる。このような光情報記録媒体を再生可能とするには、レーザパワーが従来のレーザパワーより高い値に設定される。このようにして、光情報記録媒体の再生が可能となれば、超解像媒体での再生が可能となる。
例えば、超解像技術を用いずに多層化によって情報記録密度を高めた光情報記録媒体を再生するよりも、フォーカスしなければならない上記情報記録層の数が減少するので、各層へのフォーカス回数が減少する。その結果、光学読取装置(光ピックアップ)のフォーカス制御が簡素になるので、光学読取装置のコスト上昇が抑制されると共に、フォーカスに要する時間が短縮されるので、再生命令に対する反応性が向上する。したがって、より低コストで高性能な再生装置を提供することができる。
上記のような光情報記録媒体や光情報処理装置が実用化されれば、再生装置がいずれの規格に準拠しているかを問う必要がなく、両装置の普及が促進される。また、上記光情報記録媒体もいずれの再生装置でも再生可能という付加価値を有し、産業の発展に寄与すると考えられる。
具体的には、1枚の光情報記録媒体(ハイブリッド光情報記録媒体)のBD層と高密度HD DVD層で共通のコンテンツをハイビジョン映像で記録しておくことで、BD再生装置と高密度対応HD DVD再生装置のいずれの再生装置でも再生することが可能になる。