JP5009289B2 - Maltリンパ腫の検査方法及びキット - Google Patents

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Description

本発明は、MALTリンパ腫の検査方法およびキットに関し、詳しくは、検体中の少なくとも2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子の発現レベルを調べることにより、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいは発症を予見するためのデータを提供する、MALTリンパ腫の検査方法およびキットに関する。
各種癌の遺伝子診断技術の開発研究が近年、急速に進展している(非特許文献1参照)。これは、悪性腫瘍およびこれに関係する遺伝子に関する医学的理解が深化するとともに、ゲノム研究ならびに遺伝子取り扱い技術の発展と相俟って、両者を結合する形で研究が進められていることによるものである。遺伝子診断の対象と内容も多岐にわたるが、(i)遺伝子異常を指標とした癌細胞の有無、(ii)癌の悪性度または薬剤、放射線への感受性の癌細胞の性質、(iii)癌発症前の診断および発症リスク推定などに大別される。
遺伝子診断技術において、遺伝子変異に基づく機能(発現、調節)の変化を追跡することが多い。一方DNAのメチル化に基づく異常が注目されている。造血器腫瘍を対象とする遺伝子診断のために、遺伝子発現を制御するプロモーター領域に存在するCpG島(CpGisland)のメチル化を検出して造血細胞の増殖異常を識別する試みにおいて、造血細胞増殖の異常に関わると想定される遺伝子、約80種についてメチル化の探索が行なわれた(特許文献1参照)。
本発明者らは、一つの遺伝情報により造血器腫瘍細胞の有無を最大4段階で確認するという特異性の高い方式をこれまでに提案してきた(特許文献2参照)。すなわち、造血器細胞を含む検体中に含まれる、造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1タンパク質またはmRNAを定量するとともに、検体から得られるSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のDNAメチル化を同定し、さらに対立遺伝子の喪失を検出する方法である。
さらに本発明者は、検体中の細胞から核酸を抽出する工程を省き、かつポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させる工程を含めることにより、微量の細胞検体からメチル化されたDNAを検出することができる方法を開発した(特許文献3参照)。
一方、わが国における悪性リンパ腫の発生は、漸増傾向にあり、その大半を占める非ホジキンリンパ腫は、全身のあらゆる場所に発生する。粘膜付随リンパ組織(Mucosa-associatedlymphoid tissue: MALT)から発生する低悪性度リンパ腫は、リンパ組織がもともと存在しない胃にも発生する。Helicobacterpyloriの慢性感染が、萎縮性胃炎などの胃病変発症に深く関与し、胃癌および胃MALTリンパ腫発症との関連が強く示唆されている。その菌と胃癌および胃MALTリンパ腫発症との関係の実体は、解明の途上にあるが、除菌による癌予防医学からも意義深い。
MALTリンパ腫の遺伝子診断では、対象とするMALTリンパ腫に関わる遺伝子の発現変化と同定された病態とを統計的なデータの裏づけのもとに結び付ける指標の提示が臨床現場サイドからは期待される。さらにMALTリンパ腫進行のモニタリング、MALTリンパ腫の前臨床期の状態にある可能性、あるいは発症する可能性、再発可能性を予測評価するためのデータも望まれる。しかしながらそうしたデータを提供する検査方法の開発は、未だMALTリンパ腫については見当たらない。
特表2004-528837号公報 特開2004−128号公報 特開2005−58217号公報 Harris NL, et al.,Hematology . 2001;1:194-220.,Staudt LM, Dave S. Adv Immunol. 2005;87:163-208
本発明者は上記状況に鑑み、MALTリンパ腫についてもこれまでに開発したDNAメチル化検出方法を利用する遺伝子診断を確立するために臨床検体を用いてさらに研究を進めた。その結果、MALTリンパ腫を発症する際に特定の遺伝子がメチル化により発現が抑制されることを発見した。この特定の遺伝子のDNAメチル化を高感度、高精度に検出する技術の開発に成功し、MALTリンパ腫の検査方法およびキットに関する本発明を完成した。
本発明は、MALTリンパ腫、特に胃MALTリンパ腫の診断および病型の同定、病態の進展、発症の予測に利用できる遺伝子診断データを提供するMALTリンパ腫の検査方法ならびにその方法を実施するためのキットを提供することを目的とする。そのため調査の対象とする遺伝子とその組み合わせ、遺伝子発現の検出の方法を提供することを課題とする。
本発明のMALTリンパ腫の検査方法は、検体中の2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を選択して、その選択した遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定することにより、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、MALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の発症を予見するためのデータを提供することを特徴としている。
検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、DAPK遺伝子、MGMT遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群から、少なくとも2種以上の遺伝子を選択し、その選択した遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定することにより、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、MALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の発症を予見するためのデータを提供することを特徴とするMALTリンパ腫の検査方法であることが望ましい。
好ましくは前記の選択された遺伝子の一つがKIP2遺伝子である。
前記メチル化頻度の検出にメチル化感受性制限酵素を用いることを特徴としている。
前記メチル化頻度の検出を、検体を溶解して得た細胞溶解液を重亜硫酸塩で処理した後に行なうことを特徴としている。
前記MALTリンパ腫の検査方法は、好ましくはHelicobacter pyroli菌キャリアである被験者について実施される。
検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、DAPK遺伝子、MGMT遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群から2種以上の遺伝子を選択し、その選択した遺伝子の発現レベルを調べることにより、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、MALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の発症を予見するためのデータを提供することを特徴とするMALTリンパ腫の検査方法も本発明の方法である。
上記方法において選択した遺伝子の発現レベルをmRNAレベルで検出することが望ましい。あるいは選択した遺伝子の発現レベルを、その遺伝子がコードするタンパク質レベルで検出する方法であってもよい。
好ましい前記検体は、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器および末梢血よりなる群から選択された器官、組織から採取された細胞含有検体である。
前記の検査方法を実施するためのキットであり、検体を溶解するための溶解液、重亜硫酸塩含有試薬、メチル化検出増幅試薬を少なくとも含み、2種以上の選択された癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化プロファイルを作製することを特徴とするキットも本発明に含まれる。
前記キットにおいて前記検体が、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器および末梢血よりなる群から選択された器官、組織から採取された細胞含有検体であり、これを前記溶解液によって溶解して得られた細胞溶解液を、それよりDNAを抽出することなく直接に重亜硫酸塩の処置をすることが望ましい。
本発明のMALTリンパ腫の検査方法は、発癌および癌の進展に関わるか、またはそれに密接な関係を有する複数の遺伝子群の発現レベルでの変化を検出することにより、MALTリンパ腫の早期診断(すなわちMALTリンパ腫の検出と同定)、MALTリンパ腫の進展についての予後評価、発症可能性に関するリスク評価と予見などに使用されるデータを提供する検査方法である。したがって本発明の検査方法は、多段階発癌過程をとるMALTリンパ腫の遺伝子診断用のデータを提供する検査方法として有用である。
上記検査方法は、本発明のキットを使用することにより効率よく実施され、得られるデータとして、好ましくは2種以上の選択された癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化プロファイルが作製され、診断に好適な形態に解析、指標化されて提供される。
提供されるデータに基づいて、特にHelicobacter pylori菌キャリアがMALTリンパ腫、特に胃MALTリンパ腫の前臨床期状態に進行している可能性を推測することができる。あるいは提供されるデータに基づいて、MALTリンパ腫の発症を早期に高精度・高感度に検出することができ、さらに次の病型に進展する可能性、寛解と再発の可能性についても推測することができる。
図1−1は、健常者(Normal)PBMC(末梢血単核球)、悪性所見のない患者(NEM: Non evidence of malignancy;慢性胃炎等)、完全寛解(CompleteRemission)の患者、コントロール、MALTリンパ腫のHelicobacter pyroli菌非感染患者(MALT Lymphoma H.p(-))、MALTリンパ腫のHelicobacterpyroli菌キャリア(MALT Lymphoma H.p(+))、大細胞成分を含むMALTリンパ腫(MALT with large cellcomponent)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse Large B-Cell Lymphoma)患者について、MSPを行ない、そのPCR増幅産物の電気泳動による解析結果を、KIP2遺伝子のメチル化状況を示す。U,メチル化されていないDNA(unmethylated DNA); M, メチル化DNA( methylated DNA); M,Uの上の数字は検体番号を示す。 図1−2は、11個の遺伝子についてのそれぞれのメチル化状況を表す泳動図を示す。健常者、患者、コントロールについてのMSPの結果を示す。U, メチル化されていないDNA(unmethylatedDNA); M, メチル化DNA( methylated DNA) 図2-1は、低悪性度MALTリンパ腫(Low grade MALTリンパ腫)患者における各遺伝子についてメチル化の有無を調べた結果を示す。メチル化が認められた遺伝子を網掛けで表す。Hpは、Helicobacterpyroli菌の感染について、陰性(-)および陽性(+)を表す。メチル化が陽性であれば+、陰性であれば−で表示し、+/−は判別困難を示す。“number ofmethylated genes”は、メチル化遺伝子数を意味する。 図2-2は、高悪性度のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および大細胞成分を含むMALTリンパ腫(高悪性度(High grade)MALTリンパ腫)における各遺伝子についてメチル化の有無を調べた結果を示す。メチル化が認められた遺伝子を網掛けで表す。“H-MALT”、“DLBCL”は、大細胞成分を含むMALTリンパ腫(Highgrade MALTリンパ腫)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を表す。他は図2−1と同様である。 図2-3は、健常者、完全寛解の患者における各遺伝子についてメチル化の有無を調べた結果を示す。フィッシャーの直接確率検定(両側)を用いて有意差が認められた遺伝子を網掛けで表す。“CR”、は完全寛解、“NEM”( Non evidence of malignancy)は悪性所見のない患者(慢性胃炎等)を表す。他は図2−1と同様である。 図3は、MALTリンパ腫の各段階におけるメチル化遺伝子数の分布の違いを表わす。正常対照群、低悪性度MALTリンパ腫、高悪性度MALTリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と悪性度が高くなるに伴いメチル化遺伝子数の増加がみられる。 図4は、胃原発悪性リンパ腫群と非腫瘍群における平均メチル化遺伝子数の分布を表わす。明らかに悪性リンパ腫群に於いてメチル化される遺伝子数の増加がみられる。 図5は、平均メチル化遺伝子数の低悪性度または高悪性度MALTリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫および対照群における分布を示す。4個以上の遺伝子がメチル化をされているのは全て悪性リンパ腫群によってしめられ、明らかに平均メチル化遺伝子数の分布が3,4を境に違いが見られる。そこで4個以上の遺伝子群がメチル化される検体については、多くの遺伝子が次々にメチル化される形質としてCIMP(CpG島メチル化形質:CpGIsland Methylator Phenotype)(+)と定義した。 図6は、低悪性度MALTリンパ腫におけるH.pylori菌に感染、非感染別のメチル化遺伝子数の分布の違いを表わす。明らかにH.pylori菌が感染した群は多くの遺伝子にメチル化が誘導されている。 図7は、被験者群の間で各遺伝子のメチル化頻度の差異を示す。フィッシャーの直接確率検定(両側)を用いて有意差が認められるものを網掛けで表示する。 図8は、同時にメチル化される遺伝子間の相関関係を示す。基準とする遺伝子に対し、フィッシャーの直接確率検定(両側)を用いて同時メチル化に有意の相関が認められるものを網掛けで表示する。 図9は、悪性リンパ腫群、非悪性リンパ腫(対照)群でのCIMP(+)の頻度を示す。悪性リンパ腫群は対照群と比べ統計学的に有意にCIMP(+)の頻度が高い。 図10は、CIMPの有意差検定の結果を表す。フィッシャーの直接確率検定(両側)を用いて有意差が認められるものを網掛けで表示する。 図11は、胃原発悪性リンパ腫における平均メチル化遺伝子数の分布を表わす。 図12は、CIMPとH.pylori感染との相関を示す。H.pylori感染群では有意にCIMP(+)の頻度が高い。このことはH.pylori感染がDNAメチル化及びCIMPを誘導していることを示唆している。 図13は、H.pylori感染、MALTリンパ腫の進展、H.pylori除菌後の寛解においてメチル化様相の変化に関して有意な差(P<0.05)がみられた遺伝子群を示す(H.pylori感染低悪性度MALTリンパ腫の場合)。 図14は、MALTリンパ腫の進展、H.pylori感染においてメチル化様相の変化に関して有意な差(P<0.05)がみられた遺伝子群を示す(H.pylori非感染低悪性度MALTリンパ腫の場合)。
発明の具体的な説明
本明細書において「癌」とは、悪性腫瘍を指し、単に「腫瘍」ということもある。また「遺伝子(gene)」とは、何らかの機能を発現する遺伝情報を担うゲノムDNAをいうが、単に化学的実体であるDNAの形でいうこともある。「癌抑制遺伝子」とは、癌の発症を抑制する遺伝子を意味し、「癌関連遺伝子」は、癌の発症に関与する遺伝子を意味する。なお本明細書において「発症」とは、疾患特異的臨床症状、検査データなどをもとに総合的判断により特定疾患と診断された時点をもって発症とよぶ。DNAのメチル化とは、DNA塩基配列におけるCpG島での5−メチルシトシンを指す。
以下、本発明を検査方法、その方法を実施するためのキットの順で説明する。

遺伝子メチル化の検出による検査方法
本発明のMALTリンパ腫の検査方法は、
検体中の2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を選択して、その選択した遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定することにより、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいは発症を予見するためのデータを提供することを特徴としている。
本検査方法は、検体中に含まれる癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を2種以上選択し、それらの遺伝子発現を調節の面から調べることである。調節の面から調べるとは、その選択した遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定することであり、その結果、癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化プロファイルを含むデータが得られ、そのデータはMALTリンパ腫の診断、進展の評価、発症予見などに供される。

・MALTリンパ腫
「MALTリンパ腫」は、MALT(粘膜付随リンパ組織;mucosa-associated lymphoid tissue)から発生するリンパ腫で、節外リンパ腫の一亜型である。部位的に消化管、気管支、唾液腺などに発生する中悪性度リンパ腫(大半がB細胞リンパ腫)である。本発明の検査方法において、対象となるMALTリンパ腫は特に限定されない。
胃原発悪性リンパ腫は多くの場合、低悪性度な腫瘍であるとされるが、Diffuse large B-cell lymphomaへと高悪性度化していくタイプが存在することが知られる。現在、胃原発悪性リンパ腫におけるgeneticな変化については、詳細な解析がなされつつあるが、他方epigeneticな変化については十分に解析が進んでいるとは言えない。本発明者らは11種類の腫瘍関連遺伝子に着目し、胃原発悪性リンパ腫の各段階におけるDNAメチル化状態を比較、検討することで、epigeneticな変化が腫瘍の発症、進展に影響を与えている可能性を検討するとともに、腫瘍発生の一因であるとされるHelicobacterpyloriの感染とDNAメチル化との相関についても調べた結果、本発明の礎となる多数の有用である新規知見を得た。
胃に発生するMALTリンパ腫が、高率でHelicobacter pyroli感染と関係していることは、ヒトT細胞白血病I型ウイルスまたはEBウイルスに感染している場合にも悪性リンパ腫の発症がある例に鑑み、特殊なことではない。現在日本で、約100万人のHelicobacterpyroliキャリアがいるが、そのキャリアはMALTリンパ腫を発症するか、あるいは発症の高リスク群を形成している。したがって特に胃、十二指腸におけるMALTリンパ腫ではこの細菌の感染と切り離すことはできない。他方MALTリンパ腫患者の約1割が、非Helicobacterpyroli感染の患者である。これらの患者では、Helicobacter pyroliの関与とは異なる機序でMALTリンパ腫を発症しているものと考えられている。本発明の検査方法の対象となるMALTリンパ腫の中でも、低悪性度リンパ腫である胃MALTリンパ腫は好適であり、Helicobacterpyroli感染の有無が関係する病型を検出し、診断するためのデータを提供することが可能である。

本発明が適用可能な悪性リンパ腫として、具体的には、
前駆体B細胞性腫瘍(前駆体B−リンパ芽球性白血病/リンパ腫(前駆体B細胞急性リンパ芽球性白血病)、成熟(末梢)B細胞性腫瘍(B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾辺縁領域B細胞リンパ腫(+/−絨毛リンパ球)、毛状細胞白血病、形質細胞性骨髄腫(形質細胞腫)、MALT型節外辺縁型B細胞リンパ腫、節性辺縁型B細胞リンパ腫(+/− 単球型B細胞)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大型B細胞リンパ腫(縦隔大細胞B細胞リンパ腫、原発性滲出リンパ腫)、Burkitt リンパ腫/Burkitt細胞白血病)等のB細胞性腫瘍;前駆体T細胞性腫瘍(前駆体T−リンパ芽球性白血病/リンパ腫(前駆体T細胞急性リンパ芽球性白血病)、成熟(末梢)T細胞性腫瘍(T細胞前リンパ球性白血病、T細胞顆粒リンパ球白血病、侵攻型NK細胞白血病、成人T細胞リンパ腫・白血病(HTLV1+)、鼻型節外性NK/T細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾型γ−δT細胞リンパ腫、皮下蜂窩織炎様T細胞リンパ腫、菌状息肉腫/Sezary症候群、退形成性大型細胞リンパ腫(T/ヌル細胞、原発性皮膚未分化型)、他に部門に属さない末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球T細胞リンパ腫)等のT細胞およびNK細胞性腫瘍などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。

「MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ」とは、発症の証拠またはその兆しを高感度、高精度に検出し、MALTリンパ腫の診断に供されるデータをいう。発症の兆しには、MALTリンパ腫の前臨床期の状態にある可能性も含まれる。「前臨床期」とは、疾患特異的な臨床症状がでてくる前の発症前状態であって、既に微量の悪性腫瘍細胞が存在している早期の状態を指す。すなわち超微量のMALTリンパ腫細胞は既に存在しているが、明確な自覚症状として表れていないか、それに近い状態であって、遺伝子レベルを含む代謝的、生理的な変化が潜在的に生じているか、それが進行しており、いずれMALTリンパ腫細胞が増殖し発症に至る可能性を確率的に見積もることが可能であることである。
「MALTリンパ腫の検出」とは、MALTリンパ腫を見出して臨床的に確認することである。本発明の方法によると、特に各種の高感度撮像技術(X線、MRI、超音波、PETなどであり、CTも含む)を適用しても、その存在を確認することが困難な微細な「前臨床期」のリンパ腫を精度よく捉えることができる。抗体を含む各種腫瘍マーカーによる検出に似ているが、遺伝子レベルにおける変化を追跡する本発明方法は、遺伝子診断技術に関係している。あるいは組織生検、穿刺細胞診といった、顕微鏡下で腫瘍細胞を同定する診断よりも、効率的である。
「診断」とは、医師の行なう医療行為のうち、患者の症状、各種の検査結果に基づいて、疾患を発症しているか判断し、さらに治療のために患者の病態、病型、病期を決定することである。これにはHelicobacterpyroli依存性MALTリンパ腫、Helicobacter pyroli非依存性MALTリンパ腫の同定も含まれる。
発症リスクが高いHelicobacter pyroli菌キャリアの早期診断に有用である。
「MALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ」とは、ピロリ菌の除菌療法を受けたHelicobacter pyroli依存性MALTリンパ腫患者、化学療法などを受けているHelicobacterpyroli非依存性MALTリンパ腫患者の治療経過をモニタリングするためのデータをいう。また、胃MALTリンパ腫患者の1割程度が、Helicobacterpyroli感染陰性であるか、または除菌治療への反応不良などが認められる。そうした患者についても治療効果の確認のために利用されるデータである。
「MALTリンパ腫の進展を評価」は、MALTリンパ腫が、大細胞型リンパ腫(“with large cell”)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL;diffuseLarge B-cell lymphoma)などに進行しているかどうかを判断することである。
「MALTリンパ腫の発症を予見するためのデータ」とは、MALTリンパ腫の発症リスクが高いピロリ菌キャリアに対し、将来の発症可能性について評価するためのデータを示すか、予後管理の一環として再発予見に使用されるデータをいう。発症可能性は予防医学上また治療後に完全寛解の状態にある患者のモニタリング・再発防止にも極めて意義がある。例えば、悪性リンパ腫の発症予防がこれに相当する。
このようなデータを提供する検査方法の詳細については、後記する。
「癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子」は、細胞の癌化に関わり、癌発症に関係する遺伝子である。とりわけ癌抑制遺伝子の発現異常は、発癌と癌の進展(progression)に直結していると考えられる。そうした癌抑制遺伝子は、特に限定されないが、例えば、プロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子、p16Ink4a遺伝子、p15Ink4b遺伝子、CDH1遺伝子、HCAD遺伝子、p14ARF,DAPK、p73,APC,GSTP1、アントロゲン受容体、エストロゲン受容体、TGF−β1、TGF−β2、p130、BRCA、NF1、NF2、TSG101、MDG1、GST−pi、カルシトニン、HIC−1、エンドセリンB受容体、VHL、TIMP−2、TIMP−3、O6−MGMT、hMLH、MSH2およびGFAPなどの遺伝子が挙げられる。
「遺伝子の発現」とは、その遺伝子が担う遺伝情報が、通常、細胞の転写機構によりmRNAに転写され、さらにそのmRNAがポリペプチドのアミノ酸配列の形に翻訳され、最終的にタンパク質の機能として発揮されることをいう。その発現には、転写から翻訳に至るまでの過程の制御を含むものである。遺伝子の発現ではこのように遺伝情報がタンパク質のアミノ酸配列をコードされることのみならず、遺伝子のコード領域より上流側にあるプロモーター、エンハンサーなどの領域で行なわれている。したがって、遺伝子の発現レベルを検出することには、これらの調節領域における変化を調べることも含まれる。
2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を選択するのは、次に理由による。癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子についてもそのメチル化が、加齢に伴い一般に進展・拡大する傾向にある。さらにMALTリンパ腫に分類される各腫瘍において発現レベルは、示差的様相で変化するが、なかには同時的に変化している複数の遺伝子もあり、かつ、その個別の腫瘍の種類により主導的に関わっている遺伝子もまた異なっていると想定される。検体の測定により複数の遺伝子の同時性メチル化を検出し、得られたデータから遺伝子診断をするための際の精度を向上させることができる。
また「検体」は、患者などから分離された、MALTリンパ腫を検出できるいかなる器官、組織、細胞または細胞抽出物であり得る。そのようなサンプルは、MALTリンパ腫の前臨床期の状態にあるか発症したヒトもしくは哺乳類動物から分離されるか、あるいはMALTリンパ腫または腫瘍を有しないヒトもしくは哺乳類動物から分離されるサンプルである。サンプルとしては限定されないが、例えば患者(ヒトまたは哺乳類動物)、被検患者または実験動物から得られた組織、具体的には骨髄組織(例えば生検または剖検から)、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器、末梢血液、全血、細胞溶解物、哺乳類細胞培養物、または他の任意の細胞検体、それからの抽出物などが挙げられる。好ましくは検体が、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器および末梢血よりなる群から選択された器官、組織から採取された細胞含有検体である。

・11種の遺伝子
本発明のMALTリンパ腫の検査方法として、好ましい検査方法は、
検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、DAPK遺伝子、MGMT遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群から2種以上の遺伝子を選択し、その選択した遺伝子の発現レベルを検出することにより、MALTリンパ腫の診断のためのデータ、または該腫瘍の前臨床期の状態にある可能性、あるいは発症する可能性を評価するためのデータを提供する検査方法である。
これらの11種の遺伝子は、それぞれDNA修復(repair DNA)、アポトーシス(apoptosis)、細胞接着(cell adherence)、癌抑制(tumorsuppression)、情報伝達制御(signal transduction regulation)といった生物機能のいずれかを細胞内で発揮しているが、MALTリンパ腫の前臨床期の状態、発症に対する関与が遺伝子発現の制御を通じて相互に相関しており、しかもMALTリンパ腫、更に高悪性度の悪性リンパ腫への病型の進展に対して特異性が高いことを本発明者は見出した。その関与の程度、様式は様々であるが、MALTリンパ腫の診断のためのデータ、該腫瘍の前臨床期の状態にある可能性、あるいは発症する可能性を評価するための包括的なデータを得るためには、極めて有用な遺伝子群である。すなわち遺伝子スクリーニングにより選び出された、特異的な遺伝子セットともいうべき組み合わせである。これら11種の遺伝子群から2種以上の遺伝子を選択し、その選択した遺伝子の発現レベルを検出することが望ましい。あるいは、上記11種の遺伝子群を「コア標的遺伝子」として、これらから2種以上の遺伝子を選択し、さらにコア遺伝子群以外の別に選択された遺伝子をも含めてそれらの選択した遺伝子の発現レベルを検出する態様であってもよい。その場合、コア標的遺伝子群以外の候補遺伝子の選択は、コア標的遺伝子についての測定に、補強的または補充的なデータを与える遺伝子が望ましい。
なお、遺伝子のメチル化と細胞の悪性腫瘍化(癌化)を調べる遺伝子診断では、生物機能を考慮しない遺伝子セットよりも、対象とする悪性腫瘍に緊密に、かつ、特異的に関わり、さらにメチル化多発傾向にあり、メチル化同時性も期待できる組み合わせが、探索効率上からは望ましい。これらの意味からもMALTリンパ腫では上記11種の遺伝子が有用であり、これらの遺伝子群が遺伝子発現プロファイルを作製するための遺伝子セットとして特に好適であると本発明者は認めた。上記11種の遺伝子それぞれの細胞内活動は次のように知られている。
KIP2遺伝子については、DNAマイクロアレイ解析からMALTリンパ腫の中で大きく発現が低下する遺伝子に含まれていた。そのほかの遺伝子についてもMALTリンパ腫において発現が低下している遺伝子群からメチル化が予想されるものである。
以上より、MALTリンパ腫の診断のためのデータ、または該腫瘍の前臨床期の状態にある可能性、あるいは発症する可能性を評価するためのデータを提供する検査方法において、選択された遺伝子の一つにKIP2遺伝子が含まれることが望ましい。このKIP2遺伝子は、細胞周期を負に制御する分子であるサイクリン依存性キナーゼ阻害分子(cyclindependent kinase inhibitor)である。
p15、p16はcyclin dependent kinase inhibitor、p73は、tumor suppressorに関係する癌抑制遺伝子として知られている。
hMLH,MGMTは、DNA修復酵素関連遺伝子である。特にhMLHは、DNAミスマッチ修復遺伝子である。
HCADは、細胞接着(カドヘリン)関連遺伝子である。カドヘリンは、分子量120kDaの細胞間接着に関連した糖タンパク質であり、胎性期の組織構築、器官形成に重要な役割を演じている。癌細胞においてもEカドヘリン(上皮由来)(CDH1)が癌細胞間の接着を司っていることが知られており、脈管内に浸潤した癌細胞が解離し標的臓器に漂着する癌転移の過程に関与していると考えられている。Eカドヘリンは、急性骨髄性白血病あるいはHodgkinリンパ腫の腫瘍細胞において発現が消失することが知られており発症との関連が示唆されている。またHCAD(またはCDH13、あるいはHカドヘリンともよばれる)遺伝子については、細胞内ドメインを欠き、細胞間接着のみならず細胞内シグナリングにも関連していることが知られている。また異常なDNAメチル化あるいは遺伝子欠失により、卵巣癌、乳癌、肺癌、大腸癌など様々な癌においてHカドヘリンの発現が消失していることが報告されている。最近、本発明者らのグループの研究を始めとするいくつかの研究により、早期慢性骨髄性白血病あるいはインターフェロン治療低応答性慢性骨髄性白血病においてHCAD・プロモーターの強いメチル化が観察されること、又びまん性大細胞型B細胞リンパ腫においてHCAD遺伝子DNAの異常メチル化および対立遺伝子欠失により、遺伝子発現の低下・消失が観られることが知られている。
DAPK(Death-associated protein kinase)は、アポトーシス関連遺伝子であり、種々の病態に伴う生体内アポトーシスとの関連が想定されている。
MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子は、悪性腫瘍において強くメチル化が誘導されるMINT(Methylated in Tumor)ファミリー遺伝子群に属し、MCA−RDA(MethylatedCpG island Amplification-Representation difference Analysis)法により得られたDNA配列である(Toyota M, Ho C, Ahuja N, et al. Identification of differentially methylatedsequences in colorectal cancer by methylated CpG island amplification. CancerRes 1999;59:2307-2312.)。
・CpG島のメチル化(methylation)
遺伝子のプロモーター領域にCpG配列に富む領域、すなわちCpG島が存在する場合、そのCpG島におけるシトシンのメチル化は、その遺伝子の転写制御に関連する。したがって、遺伝子のプロモーター領域におけるシトシンのメチル化を検出することにより、当該遺伝子の発現異常(例えば、転写が活性化されているのか抑制されているのか)を検出することができる。さらに上記遺伝子が癌抑制遺伝子である場合、癌抑制遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のシトシンのメチル化を検出することにより、上記細胞検体に含まれる細胞が癌細胞の可能性があるか否かを検出することができる。
遺伝子の転写制御に関連する遺伝子プロモーター領域におけるCpG島におけるシトシンのメチル化の実態として、例えばメチル化頻度を測定すればよい。それには、細胞検体中の細胞から核酸を抽出する工程を省き、容易にかつ微量の細胞検体からメチル化されたDNAを検出することができる方法(特許文献3)が可能である。すなわち、
細胞検体を溶解液により溶解させて細胞検体溶解液を調製する工程、
この工程により得られる細胞検体溶解液を、直接、重亜硫酸塩含有試薬で処理し、当該細胞検体溶解液に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換する工程、
得られたCpG含有DNAを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーおよび非メチルメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により増幅させる工程、
次いで上記CpG含有DNAが増幅されたか否かを検出する工程、
とを含む方法(特許文献3)に基づくならば、簡便かつ迅速にDNAのメチル化を検出することができる。これらの処理では、検体DNA内の非メチル化シトシンがウラシルを経由してチミンに変換され、一方、5−メチル化シトシンは最終的にシトシンであることによりメチル化、非メチル化シトシンの判別を行なうことができる。
「検体中の2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を選択」は、既に述べたとおりであり、メチル化を測定する標的遺伝子とするものである。2種以上の標的遺伝子についてそれらのメチル化状態を測定すれば、相互に比較することによりメチル化の多寡、メチル化の遅速、同時性メチル化などの知見が得られ、さらに病型、病期、病態などと関連づけることによって多くの有益な情報が得られる。
本発明による検査方法の好ましい態様の一つは、検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、DAPK遺伝子、MGMT遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群から、少なくとも2種以上の遺伝子を選択し、その選択した遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定することにより、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、MALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の発症を予見するためのデータを提供することを特徴とする検査方法である。
これらの遺伝子群の意義、特異性などについては既に述べたとおりである。後述するように本発明者の研究結果から、P値統計解析により特にCpG islandmethylator phenotype(CIMP:いろいろな特異的標的遺伝子群のプロモーター領域のCpG島が高頻度にメチル化され、それにより、それらの標的遺伝子群の発現が次々に消失する表現型)と関連している標的遺伝子は、KIP2、p15、p16、p73、DAPK、MGMT、MINT1、MINT2、MINT31およびHCADであることが判明した。これらの遺伝子は、CIMPの面から着目されるべきであることが結論された。またMALTリンパ腫の診断(検出と同定)のためのデータ、または該腫瘍の前臨床期の状態にある可能性、あるいは発症する可能性を評価するためのデータを提供する本発明検査方法において、選択された遺伝子の一つに少なくともKIP2遺伝子が含まれることが望ましい。
したがって、KIP2、p15、p16、p73、DAPK、MGMT、MINT1、MINT2、MINT31およびHCADの遺伝子において、これら11個の遺伝子メチル化パターンのプロファイルを作成してもよいし、あるいは少なくともKIP2遺伝子を含む上記遺伝子の一部のグループを選択してもよい。遺伝子の選択に当たり、MALTリンパ腫の病態との関連、癌の進展との関連は、後記する実施例に示されている。癌化に伴いゲノムのメチル化に異常が起き、それは癌抑制遺伝子の不活化などにも関わっているが、本発明者は上記の特異的標的遺伝子群のプロモーター領域のCpG島が高頻度にメチル化されていくことが、MALTリンパ腫の腫瘍形成と発症、進展とパラレルであることを確立した。

・メチル化頻度の測定
本発明の検査方法は、選択された遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定する方法であり、前記メチル化頻度の検出を、検体を溶解して得た細胞溶解液を重亜硫酸塩で処理した後に行なうことを特徴としている。
具体的には、上記方法は次の工程を含む。
(1)検体(細胞を含む)を溶解液により溶解させて細胞検体溶解液を調製する細胞溶解工程と、
(2)上記細胞溶解工程により得られる細胞検体溶解液を、直接重亜硫酸塩含有試薬で処理し、当該細胞検体溶解液に含まれるCpG含有DNAの塩基配列中の非メチル化シトシンをウラシルへと変換するDNA変換工程と、
(3)上記DNA変換工程により得られるCpG含有DNAを、所定のメチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーおよび非メチル化特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させるDNA増幅工程と、
(4) 上記DNA増幅工程によって、上記CpG含有DNAが増幅されたか否かを検出するメチル化検出工程と
を含む方法である。
その詳細は特許文献3に記載されているが、DNAを重亜硫酸塩(Bisulfite)で処理すると、シトシンはウラシルに変換される。具体的には、シトシンが重亜硫酸塩によりスルホン化(Sulphonation)され、さらに加水分解により脱アミノ化(Hydrolyticdeamination)され、さらに、アルカリ存在下での脱スルホン化(Alkali desulphonation)により、ウラシルに変換される。これに対して、メチル化されたシトシンは、重亜硫酸塩処理してもウラシルに変換されない。メチル化されていない遺伝子DNAでは、上述のように重亜硫酸塩処理によりすべてのシトシンがウラシルに変換される。これに対して、メチル化されていた遺伝子DNAでは、重亜硫酸塩処理により、もともとメチル化されていたシトシンはウラシルに変換されず、それ以外のメチル化されていないシトシンのみがウラシルに変換される。すなわち、同一の塩基配列を有する遺伝子DNAであっても、メチル化されているか否かで重亜硫酸塩処理後の塩基配列に違いがみられる。この塩基配列の違いを検出することにより、CpG含有DNAのメチル化の有無を検出することができる。
「CpG含有DNA」は、上記細胞検体中に含まれるDNAであって、CpG配列を含む塩基配列を有するDNA検体であれば、特に限定されるものではない。ここでいうDNA検体は、ゲノムDNAのことである。さらに、この遺伝子が、癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子であることがより好ましい。この「CpG含有DNA」は、遺伝子のプロモーター領域に存在することが好ましい。プロモーター領域のメチル化を特異的に検出するには、当該遺伝子のプロモーター領域のCpG配列を含む塩基配列について設計されたプライマーを用いることによる。
DNA増幅方法としては、PCR増幅法またはその変法が使用されるが、最近開発されたICAN(Isothermal chimera primerinitiated nucleic acid amplification)などの増幅法であってもよい。
さらに上記のメチル化頻度の検出方法は、検体を溶解して得た細胞溶解液を直接に重亜硫酸塩で処理し、検体から遺伝子を抽出せずに行なうことを特徴としている。細胞溶解液からDNAを抽出し、分離してメチル化を検出してもよい。しかしながら本発明者は、検体から遺伝子DNAを抽出することなく、直接に細胞溶解液に直接重亜硫酸塩による処理が行えることを既に提案した(特許文献3)。検体からDNAを抽出する操作は煩雑であり、微量の遺伝子しか含まれない検体は検査できないという事態から本発明の検査方法では免れることができる。
「検体」は、患者から分離された、MALTリンパ腫を検出できるいかなる器官、組織、細胞または細胞抽出物であり得る。そのような検体は、限定されないが、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器および末梢血よりなる群から選択された器官、組織から採取された細胞含有検体であることが望ましい。
上記「溶解液」としては、上記細胞検体を溶解し、膜を開裂させることができるものであれば、特に限定されないが、タンパク質の変性を引き起こす試薬が好ましい。具体的な溶解液としては、例えば、グアニジンチオシアネート、ヨウ化ナトリウム、尿素、SDS等の従来公知のタンパク質変性剤を含む溶液が挙げられる。さらに、これらにβ−メルカプトエタノール等の従来公知の架橋開裂剤が含まれていてもよい。
上記「重亜硫酸塩含有試薬」としては、従来公知の重亜硫酸塩を含有する試薬であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重亜硫酸ナトリウム(Na225、メタ重亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸ナトリウムともいう)を好適に用いることができる。さらに、重亜硫酸化合物と尿素とを併用してもよい。
本発明の検査方法は、検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、MGMT遺伝子、DAPK遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群から、少なくとも2種以上の遺伝子を選択し、その選択した遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定することにより、MALTリンパ腫の診断(検出、同定)のためのデータ、またはMALTリンパ腫の前臨床期状態にある可能性、進行する可能性、あるいは発症する可能性を評価するためのデータを得る方法である。そのMALTリンパ腫として、特に胃MALTリンパ腫である場合に好適に用いられる。上記11種の遺伝子群は、特に胃MALTリンパ腫においては、コア標的遺伝子としてもよい。すなわちこのようなMALTリンパ腫の病型を検出し、診断するためのデータを提供する目的には、特異的な遺伝子セットとして有用であるためである。とりわけまだMALTリンパ腫を発症していないが、発症の高リスク群とされる、Helicobacterpyroli菌キャリアである被験者について実施されることが望ましい。
なお、前記メチル化頻度の検出にメチル化感受性制限酵素を用いることを特徴とする、MALTリンパ腫の検査方法であってもよい。その基となる方法として、遺伝子切断段階と、遺伝子増幅段階と、遺伝子増幅確認段階とを含むメチル化感受性制限酵素を利用した方法が、特許文献2に記載されている。メチル化感受性制限酵素とは、二本鎖DNAにおいて認識対象となる塩基配列にシトシンを含んでおり、かつ、この塩基配列中のシトシンがメチル化された場合には、該塩基配列の二本鎖DNAを切断できない制限酵素であれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、HpaII、EagIまたはNaeI等を挙げることができる。
・好ましいデータの利用態様
本発明の検査方法の一態様として、望ましくはHelicobacter pyroli感染の有無とMALTリンパ腫との関係を念頭において実施される。
胃MALTリンパ腫患者にはHelicobacter pyroliキャリアである患者が多い。Helicobacter pyroli感染が、MALTリンパ腫の発症に何らかの形に関わると推測されている。したがって、本発明の検査方法が提供するデータを基に解析すれば、発症していないHelicobacterpyroliキャリアにあっても、前臨床期の検出、微小MALTリンパ腫の検出と同定も可能となる。これにより発症が懸念される高リスク群であるHelicobacterpyroliキャリアについて、MALTリンパ腫の早期発見、早期治療の途が開かれる。
胃MALTリンパ腫患者の1割程度が、Helicobacter pyroli感染陰性であるか、または除菌治療への反応不良などが認められる。本発明の検査方法により提供されるデータは、ピロリ菌の除菌療法を受けたHelicobacterpyroli依存性MALTリンパ腫患者の経過をモニタリングする場合に有用な情報を提供する。あるいは除菌治療に反応不良の患者またはHelicobacterpyroli非依存性MALTリンパ腫患者についてなされる化学療法などによる治療効果を確認する場合にも有用である。さらに低悪性度MALTリンパ腫が、大細胞成分を含むMALTリンパ腫(高悪性度(Highgrade)MALTリンパ腫)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL;diffuse Large B-cell lymphoma)などに進展もしくは急性転化するかどうかを判断する病態のモニタリングにも活用される。予後の悪い病態に進展する前に適切な早期治療を開始し、薬剤耐性が獲得される前に腫瘍細胞の増殖を抑えるなど効果的な治療を行う上で、あるいは急性転化を防ぐための予防的治療法を開発するためにも極めて重要である。
本発明の検査方法は、発症リスクが高いHelicobacter pyroli菌キャリア(Hp(+))に対し、将来の発症可能性を評価するためのデータを示すか、予後管理として再発予見に使用されるデータを提供することができる。このような発症可能性の予見は、予防医学上においても、また治療後に寛解状態にある患者の再発防止にも極めて意義がある。それに基づき、患者に病型に関する必要な情報を提供し、経過観察の際に適切に指導して自己管理に役立てることとなる。
・データの形態
検体中の2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を選択してその発現レベルを測定し、得られた結果は、適切に統計解析を行なって、MALTリンパ腫の診断のためのデータ、または該腫瘍の前臨床期の状態にある可能性、あるいは発症する可能性を評価するためのデータとすることが望ましい。統計解析は、当業界で利用されている各種の統計手法、検定法の中から適する方法を選択しておこなうことができる。
上記の方法によって得られたデータを基に、エピジェネテイクス関連疾患のモニタリング、診断の他に、発症可能性の予測・推定、もしくは臨床症状は出現していないものの微量の腫瘍細胞が既に存在し該腫瘍の前臨床期の状態にある可能性、あるいは発症している可能性を発症以前に高感度・高精度に評価するためのデータを提供する。その場合に用いられるデータは、上記のいずれか1つの方法を用いて得たデータであってもよいし、何通りかの方法を併用して得られたデータであってもよい。また、選択された2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子の示差的発現プロファイルの形態であってもよい。例えば、遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化プロファイルが該当する。そうしたプロファイルからMALTリンパ腫に関与する遺伝子群のパターン、その関わりの程度が判る。実際、上記11個の遺伝子で、明らかにMALTリンパ腫の病態間でメチル化の様相が異なることが明らかとなった(後記の実施例を参照)。このことから11個の遺伝子のメチル化状況を調べることで、MALTリンパ腫の発病および病態を確定することが可能であり、リンパ腫病態の進展と関係があることが示唆された。
さらにデータの提示方法として、遺伝子の発現変化と同定された病態とを統計的なデータの裏づけのもとに結び付ける指標を示す方式であってもよい。一つの例として、CIMP(CpG Island Methylator Phenotype)が挙げられ、ある遺伝子群のプロモーター領域のCpG島がメチル化されることにより、その遺伝子群の発現が消失する現象(表現型)に関連する指標である。これはDNAが高頻度にメチル化され(hypermethylation)、“genesilencing”が起きていることを示すパラメーターである。そのカットオフレベルを高くすることにより、健常者、Helicobacter pyroli菌キャリアまたはMALTリンパ腫の前臨床期の状態にあるかの推定、および進行した病型間における判別の精度が高くなる。
発症リスクの推定および特異的臨床症状がでる以前の前臨床期の状態にある可能性の推定、あるいは発症の早期検出・診断は、実際には医師により本発明の検査方法により提供されたデータに加えて、他の臨床データ、被験者個々の事情(年齢、性別、既往歴、生活習慣など)を総合的に勘案してなされる。そうした判断に基づく予測は、一層信頼度を増すこととなる。
臨床診断的には、遺伝子メチル化状況を調べることにより治療を要するMALTリンパ腫の診断は当然のこと、MALTリンパ腫を発症していないため治療を当面必要とされないHelicobacterpyroli菌キャリア(Hp(+))に対する発症リスクの評価、あるいは前臨床状態が検出された場合の予後の予測もまた、経過観察および予防の見地からは特に意義がある。

癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子の発現変化を調べる検査方法
本発明の検査方法は、
検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、DAPK遺伝子、MGMT遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群から2種以上の遺伝子を選択し、その選択した遺伝子の発現レベルを調べることにより、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいは発症を予見するためのデータを提供することを特徴としている。
検体中の2種以上の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を選択してその発現レベルを調べることにより、MALTリンパ腫の診断のためのデータ、または該腫瘍に前臨床期の状態にある可能性を発症以前に高感度・高精度に評価するためのデータを提供する、MALTリンパ腫の検査方法である。
「遺伝子の発現レベルを検出する」とは、その遺伝子が担う遺伝情報が、通常、細胞の転写機構によりmRNAに転写されるが、その転写産物である細胞中のmRNA量を測定するか、あるいはさらにそのmRNAがポリペプチドのアミノ酸配列の形に翻訳された、そのポリペプチドまたはタンパク質のレベルを測定することをいう。遺伝子の発現ではこのように遺伝情報がタンパク質のアミノ酸配列をコードされることのみならず、転写から翻訳に至るまでの過程の制御を含むものである。特に遺伝子発現の調節は、遺伝子のコード領域より上流側にあるプロモーター、エンハンサーなどの領域で行なわれている。したがって、遺伝子の発現レベルを検出することには、これらの調節領域における変化を調べることも含まれる。
したがって、本発明であるMALTリンパ腫検査方法の好ましい態様の一つとして、選択した遺伝子の発現レベルを、その遺伝子産物を定量することによって検査する方法がある。さらにその定量結果に基づいて当該遺伝子群の示差的な発現プロファイルを作成することが望ましい。遺伝子産物の測定は、検体中の選択された遺伝子の転写産物、mRNAおよびその翻訳産物のタンパク質の少なくとも一方を定量する方法であれば特に限定されるものではない。
一つの方法として、遺伝子発現レベルをmRNAレベルで検出することを特徴とする検査方法がある。mRNAの抽出、定量方法などについては従来技術を利用して行なうことができる。具体的には当該遺伝子のcDNAの塩基配列、全長またはその一部と相同性を有するポリヌクレオチドを用いて、ノーザンブロッティング法、RT−PCR法、リアルタイムRT−PCR、cDNAマイクロアレイまたはRNAin situ ハイブリダイゼーションなどが例示される。
他方、別のアプローチとして、選択した遺伝子の発現レベルを、その遺伝子がコードするタンパク質レベルで検出することを特徴とするMALTリンパ腫の検査方法であってもよい。その翻訳産物であるタンパク質の定量も各種の従来技術を利用することができる。具体的手法として、抗体を利用する方法が好適である。
上記の遺伝子産物の測定方法については知られており、公知の文献、例えば特許文献2にも詳しい記載がある。

キット
本発明のキットは、上記検査方法を実施するためのキットである。具体的には、検体を溶解するための溶解液、重亜硫酸塩含有試薬、メチル化検出増幅試薬を少なくとも含み、2種以上の選択された癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化プロファイルを作製するためのキットである。
前記検体は、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器および末梢血よりなる群から選択された器官、組織から採取された細胞含有検体であり、これを前記溶解液によって溶解して得られた細胞溶解液を、それよりDNAを抽出することなく直接に重亜硫酸塩の処置をすることが望ましい。
本発明に係るキットは、本発明の検査方法を実施するために必要とされる各種器材または資材、試薬および/または遺伝子増幅を実施するためのプライマー類、試薬を含むものである。これらの試薬の中には、各種酵素類、緩衝液、洗浄液、溶解液なども含まれる。具体的には検体を溶解するための溶解液、重亜硫酸塩含有試薬、メチル化検出増幅試薬を少なくとも含み、さらに癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子のプロモーター領域変異型を検出するための、PCR用プライマーを含む。キット要素として、さらに多数検体の同時処理ができるマイクロタイタープレート、DNA増幅用具などの必要な器材一式などを含んでもよい。
本発明による検査方法のハイスループットな態様は、上記キットの中に、マイクロリアクタ形態のもの、具体的にはチップ形状の器材を含んでもよい。このような構成では、チップから得られる信号についての数値化されたものを取り込み、ファイルを作成し、コンピュータ上の所定のディレクトリに保存する形態を採用するシステムが好ましい。数値データを統計的に処理し、2以上、好ましくは11種すべての癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子の発現調節能力を調べ、MALTリンパ腫の発病、発症可能性を推定することができる。データ処理は、必要な補正、正規化を経て、統計的解析を可能とする好適なソフトウェアを使用して行われる。このようなデータ処理のためのシステム構築は、当業者であれば既存の技術、方式、手順を利用して行うことができる。
以下の実施例中で用いる装置名、使用材料の濃度、使用量、処理時間、処理温度などの数値的条件、処理方法などはこの発明の範囲内の好適例にすぎない。また、以下の説明をいくつかの図を参照して行なうが、これらの図はこの発明を理解できる程度に概略的に示してあることもある。

MALTリンパ腫の検出/同定
MALTリンパ腫疾患において、11種の遺伝子群から選択された2種以上の遺伝子プロモーター領域におけるメチル化の有無、メチル化頻度をメチル化特異的PCR法(MSP)を用いて確認し、その臨床的意義を調べた。
・対象および検体
総数64人の被験者から測定のための臨床検体を採取した。内訳は、健常者ボランティアの10名、MALTリンパ腫患者21名(そのうちHelicobacterpyroli菌感染患者が9名、非感染患者が12名)、大細胞型成分を含むMALTリンパ腫患者(MALT lymphoma with large cellcomponent(高悪性度(High grade)MALTリンパ腫))が5名(同じく全員がHelicobacter pyroli感染)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者15名(全員がHelicobacterpyroli感染)、完全寛解状態の患者8名(全員がHelicobacter pyroli非感染)、悪性所見のない(NEM; No evidence ofmalignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)5名(1名のみHelicobacter pyroli感染)であった。
健常者末梢血単核細胞(PBMC)および上記被験者から患者生検材料を採取し常法によりDNA抽出をおこなった。以上の各群の分類、呼称および例数を次にまとめる。
非腫瘍群
1. 胃原発 MALTリンパ腫除菌後寛解症例(Complete Remission of gastric MALT lymphoma aftertherapy)[CR] n=8
2. 非腫瘍性胃病変(No Evidence of Malignancy in stomach)[NEM] [No Malignancy] n=5
3. 健常人末梢血単核球(Healthy PBMC) [PBMC] n=10

胃原発悪性リンパ腫群
1. MALTリンパ腫(MALT lymphoma) [L-MALT] n=21;
H.p(+)L-MALT n=12, H.p(-)L-MALT n=9
2. 高悪性度細胞を含むMALTリンパ腫(MALT lymphoma with large cell component /High-grade MALTlymphoma) [H-MALT] n=5
3. びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(Diffuse large B-cell lymphoma) [DLBCL] n=15

・検索した遺伝子(MALTリンパ腫用遺伝子セット)
MALTリンパ腫用遺伝子セットとして次の11種類の癌抑制遺伝子または癌関連遺伝子を対象とし、そのプロモーター領域のメチル化を調べた:
KIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、MGMT遺伝子、DAPK遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子。
・メチル化の検出
続いて検体からゲノムDNAを得るために、検体と細胞溶解液とを混合した後、一定時間、混合溶液を加熱した。この処理により検体中の細胞を溶解液によって破壊し、その細胞中のゲノムDNAを抽出した。なお、細胞溶解工程での溶解液の組成、濃度、反応温度、および反応時間等の反応条件は、特許文献3に記載された条件によった。
臨床検体から抽出したDNAに既報のごとく、重亜硫酸塩(亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩)による処理を行なった。
上記DNA変換工程後の修飾DNA溶液を用いて、遺伝子群(KIP2、p16,p15,p73,hMLH,MGMH,DAPK,MINT1、MINT2、MINT31、HCAD)のプロモーター領域に存在するCpG島のメチル化の有無、メチル化の程度について、MSP(methylationspecific PCR)法を用いるCpG島アッセイ(メチル化アッセイ)を実施した。この方法によれば、メチル化特異的プライマーおよび非メチル化特異的プライマーを用いて、DNA変換工程後におけるCpG含有DNAをPCR増幅するために、より高精度でメチル化されたDNAを検出することができる。
アッセイに使用したメチル化特異的プライマーMSP、非メチル化特異的プライマーUMSPは、検索した上記11種遺伝子それぞれのプロモーター領域のCpG配列を含む塩基配列に対して設計されたプライマーである。プライマーの作製およびMSPの詳細については特許文献3に記載されている。
なお、MSPにおいて擬陽性、偽陰性による測定ミスを排除するために、検体とともにポジティブコントロール(positive control)およびネガティブコントロール(negativecontrol)を同時に処理を行った。ポジティブコントロールには、CpGenome Universal Methylated DNA (ChemiconInternational Inc.,)を用いた。またネガティブコントロールは、健常者の末梢血単核球DNA試料を用いてMSPを行なった。
下記アッセイ条件を用い、各DNA検体について反応を実施した。
反応溶液:(10pmolプライマー:2μl重亜硫酸塩修飾DNA:10×PCR緩衝液:2mMdNTP:25mM塩化マグネシウム:AmpliTaqGold DNAポリメラーゼ0.25単位;最終反応容量20μl中)
反応条件:(95℃で10分間):[(94℃で15秒間):(AT(アニーリング温度)で1分間):(72℃で1分間)]35から40サイクル:(72℃で7分間)
増幅後のPCR産物の検出を3%アガロースゲルで電気泳動してメチル化の有無を検出した。またPCR産物の分子量に相当するバンドの有無およびその産物サイズ(productsize)をマーカー(50塩基対ladder)で検出した。
・結果
得られた検出結果を図1−1,2および2−1,2,3に示した。KIP2遺伝子についての電気泳動結果を図1−1に、上記11個の遺伝子についての電気泳動結果を図1−2に示す。健常者PBMC(末梢血単核球)はもちろん、悪性所見のない(NEM;No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)、完全寛解の患者では、KIP2遺伝子を始めとする11個の遺伝子のプロモーター領域に存在するCpG島のメチル化は認められなかった。これに対して、MALTリンパ腫の各病態では、これらの11個の遺伝子についてメチル化が起きていることが観察された。
図2-1、図2-2および図2-3には、調べた11種類の全ての遺伝子について、被験者ごとに遺伝子メチル化の状況が示されている。KIP2,p15、MINT31の遺伝子について、健常者PBMC(末梢血単核球;PBMC)、悪性所見のない(NEM;No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)、完全寛解(CR)の患者では、メチル化が認められなかった。それら以外の遺伝子でも、メチル化の頻度は低いことがわかる。すなわち健常者DNAではp16、hMLH1、p73とMINT1に、完全寛解の患者では、p16、DAPK、MGMT、MINT2およびHCADに、悪性所見のない(NEM;No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)では、HCADにおいて、それぞれ遺伝子メチル化が少数確認された。
これに対し、Helicobacter pyroli菌非感染患者(MALT Lymphoma H.p(-))、MALTリンパ腫のHelicobacterpyroli菌キャリア(MALT Lymphoma Hp(+))、大細胞成分を含むMALTリンパ腫(MALT lymphoma with large cellcomponent)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse Large B-Cell lymphoma)患者については、いずれの遺伝子も程度の差こそあれ、メチル化が起きている。特にリンパ腫が進行した大細胞成分を含むMALTリンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、メチル化の程度が進む傾向にあった。遺伝子メチル化におけるこれらの変化を、図3にまとめる。メチル化遺伝子数が増加している症例はすべて腫瘍群である。完全寛解(CR)であっても、健常者とはメチル化遺伝子数の分布パターンが重ならないことも注目される。
この傾向は、表1に示される「MSP陽性遺伝子数」の平均値、すなわち「MSP陽性平均遺伝子数」からも示されている。「MSP陽性平均遺伝子数」とは、ポジティブ、(+)の結果を与えた、すなわちMSPでメチル化が認められた平均遺伝子数である。これを比較のために各群ごとに示したものが図4である。上記11種の遺伝子群における平均メチル化数が、健常者DNAおよび悪性所見のない(NEM;No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等):0.4個、完全寛解患者:1.4個、低悪性度MALTリンパ腫患者:4.4個、大細胞成分を含むMALTリンパ腫患者:7.8個、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者:6.4個と、悪性リンパ腫の進展に伴って増加傾向にある(図4、5参照)。
上記11種の遺伝子群における平均メチル化数をHelicobacter pyroli菌非感染者とHelicobacter pyroli菌感染者との間でみると、Helicobacterpyroli菌非感染者(MALTリンパ腫患者でもあった)では3.5個であるのに対し、Helicobacter pyroli菌感染悪性リンパ腫患者では6.4個、Helicobacterpyroli菌キャリアのMALT患者でも、5.55個であり、感染により増加する傾向が窺われる(表1)。平均メチル化遺伝子数をHelicobacterpyroli菌に感染している場合と非感染の場合について見た結果が、図6に表わされている。特に低悪性度MALTリンパ腫患者ではHelicobacterpyroli菌感染と非感染との間に差が認められる。
このように11種の遺伝子の細胞内機能およびメチル化状況を基準とした関連性でみると、MALTリンパ腫において癌抑制遺伝子、アポトーシス、DNA修復酵素、細胞接着、情報伝達調節因子などの細胞活動局面で機能する遺伝子が同時的にメチル化されて発現が抑制されていることはMALTリンパ腫の発症と進展に関係していることを示す。また同一の生理的意義に括られる遺伝子群であっても、メチル化されにくいものもあり、遺伝子の示差的発現に対応するものである。
よって、今回評価を行なった11種の遺伝子群のメチル化個数も、MALTリンパ腫発病の予見、病型の進展の判断指標となり得ることが、これらの結果から判る。
Figure 0005009289
統計解析
(各遺伝子のメチル化頻度)
図2-1、2-2、2-3に示した結果をもとに、病型の進展とメチル化が確認される遺伝子との相関性を統計解析により評価した。評価は、判別をする二つの疾患、病態の群を、さらにそれぞれ対象である遺伝子のプロモーター領域がメチル化されている遺伝子数の平均値の有意差を評価する統計解析をFisherの直接確率検定(両側確率)(SPSS,14.0J, SPSS Inc.,)により行なった。p=0.05を有意水準とした。表2と図7に、検索した11個の遺伝子のメチル化頻度を調べた被験者グループ間で比較した結果が示されている。有意差が認められた場合を網掛けで表示している。
Figure 0005009289
健常者PBMC、MALTリンパ腫、進展した病態(“DLBCL”および“MALT lymphoma with large cell component”)間の判別には、KIP2,p16,DAPK,MGMT,HCAD,MINT1、MINT2、MINT31のメチル化が有用な指標となり得る。特にMALTリンパ腫とDLBCL、“MALTlymphoma with large cell”との判別には、標的遺伝子としてMINT1、MINT2、MINT31が有用である。これらの遺伝子が高いメチル化頻度を示した場合は、進展した病態である可能性が高い。さらにこれらの遺伝子のメチル化は、Helicobacterpyroli菌の感染の有無も良好に反映している。またHelicobacter pyroli菌非感染者(Hp(-))とHelicobacter pyroli菌感染者(Hp(+))との間において、MGMT、MINT1、MINT2、MINT31のメチル化に差異があり、それらの判別に利用できる。特にMGMTが好ましい。また表3に示すようにHelicobacterpyroli菌感染の有無により低悪性度MALTリンパ腫とそのほかの正常対照群および悪性リンパ腫群との間にメチル化頻度に有意差がある遺伝子群が異なっていることが解る。このことはHelicobacterpyroli菌感染によってメチル化が誘導される遺伝子群と悪性リンパ腫の進展に伴ってメチル化が起こる遺伝子群が異なることを示唆している(図13,14)。これらの遺伝子群は、Helicobacterpyroli菌感染有無の低悪性度MALTリンパ腫からさらに高悪性度リンパ腫への進展予測とモニタリング、Helicobacter pyroli菌感染キャリアのHelicobacterpyroli菌感染(+)型MALTリンパ腫の発症予測・早期発見・モニタリング、さらに健常者及び慢性胃炎など非腫瘍性病変の罹患患者のMALTリンパ腫への進展の発症予測、早期発見など発症リスクの推定および特異的臨床症状がでる以前の前臨床期の状態にある可能性の推定、あるいは発症の早期検出・診断に役立つことが期待される。
Figure 0005009289
MALTリンパ腫の病型の進展と各遺伝子のメチル化頻度との相関性を調べた。「平均MSP(+)遺伝子数」について健常者、MALTリンパ腫、進行した病型の間における有意差があるかを調べた結果を表4に示す。「MSP陽性平均遺伝子数」についての有意性の検定結果として、有意差があるものを、表中で*により表示する。大細胞成分を含むMALTリンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫への病型の進展と11種の遺伝子(SHP1、p16,p15,p73,hMLH,MGMH,DAPK,HCAD)のメチル化との間の有意な相関性を解析し、得られた結果を示した。さらに、健常者からMALTリンパ腫の発症、再発についても同様の解析を行ない、その結果を同表中に示した。
Figure 0005009289
これらの結果から以下のことが導き出せる。健常者、悪性所見のない(NEM; No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)または完全寛解(CR)の平均MSP(+)遺伝子数とMALTリンパ腫との間、MALTリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および大細胞成分を含むMALTリンパ腫の各病型の平均MSP(+)遺伝子数との間に有意な差が認められた。これにより「平均MSP(+)遺伝子数」は健常者または悪性所見のない(NEM;No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)からMALTリンパ腫を判別するマーカー、MALTリンパ腫から大細胞成分を含むMALTリンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の各病型を判別するマーカーとしては有用である。さらに「平均MSP(+)遺伝子数」は、Helicobacterpyroli菌非感染者とHelicobacter pyroli菌感染者との間(Hp(+)/Hp(-))においても有意な差が認められ、両者を判別するマーカーとして有用である。

(遺伝子メチル化の同時性)
MALTリンパ腫用遺伝子セットである11種の遺伝子間において、MALTリンパ腫発病で同時にメチル化される遺伝子間の相関関係を表5および図8にまとめた。
Figure 0005009289
同時にメチル化される遺伝子間の相関性は、χ2検定(Fisherの直接確率検定(両側))により調べた。有意の相関性が示されたものを、網掛けで表示している。hMLH1遺伝子及びDAPK遺伝子を除く他の遺伝子間において、相互に同時メチル化の関連性が示された。なお検体によっては同時にメチル化されているようなものもあったとしても、例えばDAPKについては、MGMT、HCADなどとは統計的には有意な同時メチル化の相関を示さなかった。
同時メチル化を基準としたこれら相関関係と11種の遺伝子の細胞内機能とは、関連性があると考えられる。MALTリンパ腫と癌抑制遺伝子、アポトーシス、DNA修復酵素、細胞接着、情報伝達調節因子などの細胞活動局面で機能する遺伝子が同時的にメチル化されて発現が抑制されていることは、その発症と進展に関係していることを示す。また同一の生理的意義に括られる遺伝子群であっても、メチル化されにくいものもあり、遺伝子の示差的発現に対応するものである。

(指標CIMP(+)に基づく解析)
ここでは、MALTリンパ腫、進行した病態とメチル化を対応させる指標として、CIMPをもとに統計解析を行なった。一般的に、CIMP(CpG Island Methylator Phenotype)とは、いろいろな特異的標的遺伝子群のプロモーター領域のCpG島が高頻度にメチル化され、それにより、それらの標的遺伝子群の発現が次々に消失する表現型のことを指す。ここでは11種の遺伝子群(KIP2、p16,p15,p73,hMLH,MGMH,DAPK,MINT1,MINT2,MINT31,HCAD)のうち、4つ以上の遺伝子がCIMPにある場合をCIMP(+):Positiveと表すこととした(図5)。
図2-1,2,3のデータをもとに、病型の進展とCIMPとの相関性をフィッシャーの直接確率検定(両側)で評価し、結果を表6および図10に示した。なおp=0.05を有意水準とした。
Figure 0005009289
図10に示したように、健常者または悪性所見のない(NEM; No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)と、MALTリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および大細胞成分を含むMALTリンパ腫など悪性リンパ腫との判別、Helicobacterpyroli菌非感染リンパ腫患者とHelicobacter pyroli菌感染患者との間(Hp(+)/Hp(-))との判別において、CIMPが統計的に有意の差異を示すことが認められ、CIMPを指標とする分析が有効であることが示された。またMALTリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および大細胞成分を含むMALTリンパ腫など悪性リンパ腫と、完全緩解(CR)との判別において、CIMPが統計的に有意の差異を示すことが認められ、CIMPを指標として悪性リンパ腫が治癒したかどうかの判断に有効であることが示された。腫瘍群は非腫瘍群と比較すると、CIMPが際立って有意に発現しており、特にMALTリンパ腫からさらに進行したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および大細胞成分を含むMALTリンパ腫への進展を高精度、かつ定量的に判別可能な優れた指標となり得ることが判った(図9)。
またCIMPと各遺伝子との関係であるが、CIMPと各遺伝子のメチル化との相関関係を調べた結果を表7に示す。hMLH以外の遺伝子において、CIMPの有無と関連性が認められた。
Figure 0005009289
CIMPとHelicobacter pyroli菌感染との関係についても、図12に示すように、相関性が認められる。
Helicobacter pyroli菌非感染MALT患者とHelicobacter pyroli菌感染MALT患者との間(Hp(+)/Hp(-))で標的遺伝子のメチル化が起こっている遺伝子数が有意に異なっている。すなわちH.pyroli菌感染患者ではCIMP(+)の症例が有意に多い(図12)。さらに病型の進展にともなってその数が増加し、CIMP(+)の症例が増加することから、病型の進展についてもCIMPをモニタリング・マーカーとして採用することが可能である。ゆえに、治療可能な段階にあるときに進行型への進展の兆候を早期にかつ高感度に検出できるCIMPを用いた本発明の方法は、治療後の予後管理に非常に有利である。
Helicobacter pyroli菌非感染(−)の健常者または悪性所見のない(NEM; No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)からHelicobacterpyroli菌感染(+)MALTリンパ腫を発症する際に有意に(p<0.05)メチル化の誘導が見られた遺伝子群、及びHelicobacter pyroli菌感染(+)MALTから更に悪性度の高いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および大細胞成分を含むMALTリンパ腫など悪性リンパ腫に進展するとき有意に(p<0.05)メチル化の誘導が見られた遺伝子群、Helicobacterpyroli菌感染(+)MALTから除菌により寛解するときにおいて有意に(p<0.05)メチル化の低下が見られた遺伝子群を図13に示す。さらにHelicobacterpyroli菌非感染(−)の健常者または悪性所見のない(NEM; No evidence of malignancy)患者(たとえば慢性胃炎等)からHelicobacterpyroli菌非感染(−)MALTリンパ腫を発症する際に有意に(p<0.05)メチル化の誘導が見られた遺伝子群、及びHelicobacter pyroli菌非感染(−)MALTから更に悪性度の高いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫および大細胞成分を含むMALTリンパ腫など悪性リンパ腫に進展するとき有意に(p<0.05)メチル化の誘導が見られた遺伝子群を図14に示す。これらの遺伝子群はHelicobacterpyroli菌感染、胃原発悪性リンパ腫の発病、そのリンパ腫群のある病型から別の病型に移行する病態の進展または寛解に関わることが予想される遺伝子群である。図13、14に示されることと得られた上記の知見とを重ねると、胃原発悪性リンパ腫において腫瘍悪性度の進展に伴い、メチル化遺伝子数は明確な増加傾向を示し、反対に寛解例ではメチル化遺伝子数は激減していたことから、特定遺伝子のepigeneticな変化が腫瘍の発生および進展に深く関わっていることは明らかである。また今回解析を行なった症例において、遺伝子異常のt(11;18)転座を認めたのは一例のみであり、多くのMALTリンパ腫の発生、悪性化にはメチル化遺伝子の蓄積によるgenesilencingが関与していることが示唆される。さらに胃原発MALT リンパ腫においてH.pylori感染例では非感染例に比べ有意にメチル化遺伝子数は増加していた。おそらくH.pylori菌の感染がDNAメチル化制御失調へ誘導する引き金となることで胃原発悪性腫瘍発生の一因となっている可能性が示唆された。

本発明の検査方法に関連して、実際はMALTリンパ腫の検出と、治療後の観察、その病型の進展のモニタリングを、次のように行なうことができる。まず、一次スクリーニングとして、MALTリンパ腫の発症高リスク群である、Helicobacterpyroli菌キャリアを対象として、上記の実施例1に示したように11種遺伝子のセットのうち、どの遺伝子がメチル化され、メチル化されていないかという視点からデータを分析して、MALTリンパ腫の発症可能性について調べる。前臨床状態にあって発症していると判定された患者については、Helicobacterpyroli菌の除菌療法を含む早期治療を行う中で、CIMP指標および11種遺伝子セットのうち各病型の進展段階に応じた鋭敏な遺伝子のメチル化に基づき経過観察を続ける。CIMPがポジティブであり、かつ11種の遺伝子群のうちメチル化された遺伝子の個数および各病型の進展段階に応じた鋭敏な遺伝子のメチル化指標が増加傾向を示した場合には、病型の進展を疑い、精密な検査をさらに行なう。
遺伝子群のメチル化の有無や、それらのデータの統計解析に基づくCIMP指標を用いて、MALTリンパ腫疾患の病型判別を可能とし、ならびに病型の進展のわずかな兆候を捉えることを可能とし、さらには検出した徴候から病型の進展を予見可能とした本発明は、患者に対し個別に適切な治療・投薬計画を立てる上で極めて有用な技術である。
これらの結果より、今回評価を行なったMALTリンパ腫およびその進行病態において、メチル化される遺伝子の種類と頻度に特徴的な傾向があることが判明した。これらの特徴的な傾向を捉えることによって、上記のように発病の同定、病態の判別、治療計画と管理、予後予測を行なうことが可能である。
なお評価対象とする遺伝子群の種類・個数は、本実施例記載の条件に限定されない。
MALTリンパ腫の診断、治療および予防などに利用される検査方法、キットに関する本発明は、医学、医療分野において利用される。

Claims (8)

  1. 非腫瘍群とMALTリンパ腫群との区別、ならびにMALTリンパ腫群間の判別を可能とする検査方法であって、検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、DAPK遺伝子、MGMT遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群の遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定することによりメチル化プロファイルを作成し、得られた遺伝子メチル化パターンから、指標としてCIMPおよびMSP陽性平均遺伝子数を求め、CIMPの値が4以上であるか、あるいはMSP陽性平均遺伝子数が1.4を超える場合に悪性リンパ腫群として非腫瘍群から区別すること、さらにこれらの指標の変化ならびにKIP2遺伝子についてのメチル化状況の変化を基に悪性リンパ腫群間の病型を判別することを含み、MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、MALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の発症を予見するためのデータを提供することを特徴とするMALTリンパ腫の検査方法。
  2. Helicobacter pyroli菌キャリアである被験者からの検体について実施される、請求項1に記載のMALTリンパ腫の検査方法。
  3. MALTリンパ腫の検出および/または診断のためのデータ、MALTリンパ腫の進展を評価するためのデータ、あるいはMALTリンパ腫の発症を予見するためのデータは、MALTリンパ腫発症の証拠または前臨床期状態の検出、MALTリンパ腫の病型の判別、高悪性度MALTリンパ腫もしくはDLBCLへの進展の評価、あるいはMALTリンパ腫の発症可能性の評価を可能とするデータである、請求項1または2に記載のMALTリンパ腫の検査方法。
  4. 前記メチル化頻度の検出にメチル化感受性制限酵素を用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のMALTリンパ腫の検査方法。
  5. 前記メチル化頻度の検出を、検体を溶解して得た細胞溶解液を直接に重亜硫酸塩で処理し、検体から遺伝子DNAを抽出せずに行なうことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のMALTリンパ腫の検査方法。
  6. 前記検体が、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器および末梢血よりなる群から選択された器官、組織から採取された細胞含有検体である、請求項1〜5のいずれかに記載のMALTリンパ腫の検査方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の検査方法を実施するためのキットであり、検体を溶解するための溶解液、重亜硫酸塩含有試薬、メチル化検出増幅試薬を少なくとも含み、検体中のKIP2遺伝子、p15遺伝子、p16遺伝子、p73遺伝子、hMLH遺伝子、DAPK遺伝子、MGMT遺伝子、MINT1遺伝子、MINT2遺伝子、MINT31遺伝子およびHCAD遺伝子よりなる遺伝子群の遺伝子プロモーター領域におけるCpG島のメチル化頻度を測定してそれらのメチル化パターンのプロファイルを作製することを特徴とするキット。
  8. 前記検体が、扁桃、骨髄、リンパ節、消化器、呼吸器、脾臓、肝臓、感覚器、中枢神経系、運動器、皮膚、泌尿生殖器、乳腺を含む外分泌器、甲状腺を含む内分泌器および末梢血よりなる群から選択された器官、組織から採取された細胞含有検体であり、これを前記溶解液によって溶解して得られた細胞溶解液を、それよりDNAを抽出することなく直接に重亜硫酸塩の処置をすることを特徴とする請求項7に記載のキット。
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