JP2004000128A - 造血器腫瘍細胞検出方法および造血器腫瘍細胞検出キット - Google Patents

造血器腫瘍細胞検出方法および造血器腫瘍細胞検出キット Download PDF

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JP2004000128A
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【課題】分子生物学的知見を利用して、造血器腫瘍細胞の高感度かつ高特異的に検出する造血器腫瘍細胞検出方法および検出キットを提供する。
【解決手段】造血器細胞を含む検体試料中に含まれる、造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質を定量するとともに、上記検体試料から得られるSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認する。これによって、一つの遺伝情報により造血器腫瘍細胞の有無を2段階で確認するため、非常に高い特異性で造血器腫瘍細胞を検出することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、造血器腫瘍細胞検出方法および該検出方法に好適に用いられる造血器腫瘍細胞検出キットに関するものであり、特に、例えば、悪性リンパ腫や白血病等に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子産物の発現減少あるいは消失またはこれをコードするSHP1遺伝子のメチル化を検出することによって、造血器腫瘍細胞を高感度かつ高特異的に検出できる検出方法および検出キットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒト(Homo sapiens)における悪性リンパ腫や白血病等の造血器腫瘍(血液系の腫瘍)には、難治性で極めて予後の悪いものから比較的予後のよいものまで様々な種類が知られている。この造血器腫瘍の治療には、各種化学療法や放射線療法、あるいは免疫療法といった種々の療法がすでに実用化されているが、このような治療の結果、ほぼ腫瘍細胞が退縮したとしても、わずかに腫瘍細胞が生存していれば造血器腫瘍の再発は免れない。
【0003】
上記造血器腫瘍の診断は、従来では、複数の診断手法を併用することにより総合的に実施されている。具体的には、末梢血や各種生検材料を用いて、組織染色や免疫染色等による形態学的な観察や組織学的な観察が実施されたり、さらには、種々の分子生物学的解析や染色体解析等も実施されたりしている。また、上記造血器腫瘍の診断では、判定までにかなりの時間を要する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の各診断手法は、それ単独では造血器腫瘍細胞を高感度、高特異的、かつ迅速に検出できるものではない。それゆえ、これら従来の診断手法では、複数を併用して総合的に判断しなければ造血器腫瘍を診断することができない。
【0005】
つまり、従来の診断手法を使用する限り、複数の診断手法を併用しなければならないため、診断の煩雑化を招くだけでなく時間がかかり、造血器腫瘍細胞検出感度も特異性も高くないことから、医師の専門的な判断が診断に大きな比重を占めることになる。そのため、従来では、造血器腫瘍の診断技術は、実質的に医療現場での利用に限られており、各々の疾患者には対応できるが、集団検診による造血器腫瘍の早期発見・早期治療を目的としては利用されていない。
【0006】
造血器腫瘍細胞をより高感度かつ高特異的に実施するには、造血器腫瘍細胞に特異的であり、かつ広い範囲の造血器腫瘍に見られる感度の高いマーカーを用いることが考えられる。このようなマーカーを用いれば、造血器腫瘍の早期発見・診断を容易かつ迅速に実施することができ、医療上、悪性リンパ腫や白血病等の早期治療や再発予防に応用することが可能となるだけでなく、臨床検査産業や医薬品産業等にも利用可能な診断技術とすることができ、産業の発展に寄与することが可能となる。しかしながら、このようなマーカーは現在までのところ知られていない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、分子生物学的知見を利用して、迅速且つ簡便に造血器腫瘍細胞を高感度かつ高特異的に微量の患者検体から検出し造血器腫瘍の早期発見・診断および早期治療を容易にし、集団検診にも適用可能な造血器腫瘍細胞検出方法および検出キットを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、広い範囲の悪性の造血器腫瘍では、プロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質の発現抑制が極めて高頻度で見られ、しかも悪性度の高い造血器腫瘍において、上記SHP1蛋白質の発現抑制の傾向が強くなることを見出し、SHP1遺伝子産物およびこれをコードするSHP1遺伝子の双方をマーカーとして用いることで、造血器腫瘍細胞の高感度、高特異的、かつ短時間に検出でき、かつ産業上利用できる造血器腫瘍細胞検出技術を実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法は、上記の課題を解決するために、(1)造血器細胞を含む検体試料中に含まれる、造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質およびSHP1mRNAの少なくとも一方の発現量を定量するSHP1遺伝子産物定量工程、(2)上記検体試料から得られる、SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認するSHP1遺伝子メチル化確認工程、および(3)上記検体試料に含まれるSHP1遺伝子の異型接合性喪失(LOH)の有無を確認するSHP1遺伝子LOH確認工程、の少なくとも一方を含むことを特徴としている。
【0010】
上記SHP1遺伝子産物の発現抑制は、悪性の造血器腫瘍細胞に極めて高頻度で見られるのに対し、正常な血液細胞にはこの現象が見られない。また、上記SHP1蛋白質の発現抑制は、SHP1遺伝子のメチル化によるものである。さらに、DNAメチル化によるSHP1遺伝子の転写抑制の前後には、SHP1遺伝子の一つの対立遺伝子が喪失している。
【0011】
上記方法によれば、上記知見を利用して、検体試料から得られるSHP1遺伝子のメチル化を確認し、造血器腫瘍細胞の存在を検出することで、悪性の造血器腫瘍細胞の存在の有無をスクリーニングし、一方検体試料中のSHP1遺伝子産物、具体的にはSHP1蛋白質、またはSHP1mRNA、あるいはその両方の発現を定量する。
【0012】
すなわち、上記方法では、SHP1遺伝子の不活性化を、遺伝子DNAの修飾とmRNAと蛋白質と対立遺伝子の喪失という最大で四重のマーカーを用いて判定できることになる。すなわち、SHP1遺伝子の発現低下という一つの造血器腫瘍細胞特異的な現象を4段階で確認することができるため、非常に高い特異性で造血器腫瘍細胞を検出することができる。
【0013】
本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法の好ましい一例としては、上記SHP1遺伝子メチル化確認工程に、上記検体試料から得られた遺伝子試料を、シトシンを含む塩基配列を認識するメチル化感受性制限酵素で処理する遺伝子切断試行段階と、上記メチル化感受性制限酵素で処理された遺伝子に対して、上記SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれ、上記メチル化感受性制限酵素に認識切断される塩基配列を含む領域を増幅するプライマーを用いてPCR法を実施する遺伝子増幅試行段階と、増幅された特定のサイズの遺伝子の量を確認する遺伝子増幅量確認段階とが含まれる検出方法を挙げることができる。
【0014】
上記方法によれば、メチル化感受性制限酵素を用いて検体試料から得られた遺伝子試料に含まれるSHP1遺伝子の切断を試みることでメチル化の有無を区別し、さらにPCRを用いて増幅してから、得られる特定サイズのPCR産物の量を確認する。それゆえ、検体試料から微量のSHP1遺伝子さえ得られれば、SHP1遺伝子のメチル化を検出することができる。そのため、検体試料中に造血器腫瘍細胞がごく微量しか存在していなくても高い検出感度で、しかも高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0015】
上記検出方法においては、上記プライマーが、さらに、配列番号1または2に示す塩基配列に含まれる部分塩基配列、またはこの部分塩基配列と相補性を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。
【0016】
また、上記検出方法においては、上記遺伝子増幅量確認段階では、電気泳動法を用いて特定サイズの遺伝子の量を確認することが好ましい。
【0017】
さらに、上記検出方法においては、上記遺伝子切断試行段階では、メチル化感受性制限酵素として、同一の塩基配列を認識するメチル化非感受性制限酵素が知られている制限酵素を用いることが好ましい。
【0018】
本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法の好ましい他の一例としては、上記SHP1遺伝子メチル化確認工程に、上記検体試料から得られる遺伝子試料を、重亜硫酸塩で処理する遺伝子修飾段階と、重亜硫酸塩で処理された遺伝子試料に含まれる、SHP1遺伝子の塩基配列中のメチル化シトシンの有無を判定するメチル化シトシン含有判定段階とが含まれる検出方法を挙げることができる。
【0019】
上記方法によれば、重亜硫酸塩を用いて検体試料から得られた遺伝子試料を処理すると、塩基配列中のシトシンはウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシンは変換されない。そのため、遺伝子修飾段階後のSHP1遺伝子の塩基配列中にシトシンが含まれるか否かを判定するのみで、SHP1遺伝子のメチル化を検出することができる。そのため、簡素なメカニズムで高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0020】
上記検出方法においては、上記メチル化シトシン含有判定段階では、PCRによりメチル化シトシンを検出する方法、遺伝子の塩基配列の決定によりメチル化シトシンを検出する方法、またはメチル化シトシンを含む塩基配列を識別する方法による遺伝子の処理のうち、少なくとも何れかが用いられても好ましい。
【0021】
上記方法によれば、少なくともPCRを用いることで、検体試料から微量のSHP1遺伝子さえ得られれば、SHP1遺伝子のメチル化を検出することができる。そのため、検体試料中に造血器腫瘍細胞がごく微量しか存在していなくても高い検出感度で高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0022】
上記検出方法においては、上記遺伝子修飾段階では、重亜硫酸塩として、重亜硫酸ナトリウムが用いられることが好ましい。また、上記遺伝子修飾段階では、重亜硫酸塩とともに尿素が併用されてもよい。
【0023】
本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法においては、上記何れの例の検出方法であっても、上記SHP1遺伝子産物定量工程では、SHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体を用いてSHP1蛋白質を定量すると好ましい。具体的には、上記SHP1遺伝子産物定量工程では、酵素抗体法(免疫組織化学法、免疫細胞化学法、ELISA(enzyme−linked immunosorbent assay)法)またはウエスタンブロッティング法によりSHP1蛋白質が定量されると好ましい。
【0024】
上記方法によれば、抗原抗体反応を利用してSHP1蛋白質を定量することになるので、簡素なメカニズムで高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0025】
あるいは、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法においては、上記何れの例の検出方法であっても、上記SHP1遺伝子産物定量工程では、配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部を検出するポリヌクレオチドを用いてSHP1遺伝子のmRNAの発現を検出することにより、SHP1mRNAを定量しても好ましい。具体的には、上記SHP1遺伝子産物定量工程では、ノーザンブロッティング法、逆転写PCR法、リアルタイム逆転写PCR法、またはRNA in situハイブリダイゼーション法によりSHP1遺伝子のmRNAの発現が検出されると好ましい。
【0026】
上記方法によれば、SHP1遺伝子産物としてSHP1遺伝子のmRNAによりSHP1遺伝子産物を定量することになるので、SHP1遺伝子のcDNAと相同性を有するオリゴペプタイドをプローブやプライマーとして利用することで、簡素なメカニズムで高特異的かつ高感度に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0027】
本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法の好ましいさらに他の一例としては、異型接合性喪失の有無の確認は、上記SHP1遺伝子を挟み込む2つのマイクロサテライト・マーカーの少なくとも一方、または、上記SHP1遺伝子中か、その近辺に存在する単一塩基多型のような遺伝子多型を、PCRを用いたフラグメント解析することにより実施される方法を挙げることができる。このとき用いられる検体試料は、造血器細胞を含む検体試料であればよい。また、対照としては、血液学的完全寛解後に得られる検体を用いてもよいし、他の正常組織細胞を用いてもよい。
【0028】
上記の方法によれば、マイクロサテライト・マーカーまたは単一塩基多型(SNP)等の遺伝子多型の異型接合性喪失をPCRにより確認することによって、SHP1遺伝子の異型接合性喪失を確認しているので、簡素なメカニズムでより確実に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0029】
本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出キットの好ましい一例としては、造血器細胞を含む検体試料から造血器腫瘍細胞を検出するために用いられ、(1)造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体、および、(2)シトシンを含む塩基配列を認識するメチル化感受性制限酵素と、SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれ、上記メチル化感受性制限酵素に認識切断される塩基配列を含む領域を増幅するPCR用のプライマーと、上記SHP1遺伝子のメチル化陽性及びメチル化陰性対照DNAとのうち、少なくとも一方を含む構成を挙げることができる。
【0030】
あるいは、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出キットの好ましい他の一例としては、造血器細胞を含む検体試料から造血器腫瘍細胞を検出するために用いられ、(1)上記SHP1抗体、および(2)遺伝子処理レベルまで精製された重亜硫酸塩と、該重亜硫酸塩で処理された遺伝子試料に含まれるSHP1遺伝子の塩基配列中のシトシンの有無の判定用プライマー、および、(3)配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部と相同性を持つPCR用のプライマーのうち、少なくとも何れか一つを含む構成を挙げることができる。
【0031】
さらには、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出キットの好ましいさらに他の一例としては、造血器細胞を含む検体試料から造血器腫瘍細胞を検出するために用いられ、造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子を挟み込む2つのマイクロサテライト・マーカーの少なくとも一方の全長またはその一部を検出するPCR用のプライマーを含む構成を挙げることができる。
【0032】
上記造血器腫瘍細胞検出キットにおいては、さらに、PCR用試薬、および、制限酵素反応用試薬の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0033】
上記何れの構成であっても、前述した造血器腫瘍細胞検出方法を実施するために好ましい薬剤や標本等が含まれている。そのため、上記検出キットを用いることで、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法を容易かつ迅速に実施することができ、本発明を臨床検査産業や医薬品産業等の産業レベルで利用することが可能となる。
【0034】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明における実施の一形態について図1ないし図24に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
本発明は、造血器細胞を含む検体試料中に含まれる、造血器細胞に特異的なプロモーターからのプロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子産物すなわちSHP1蛋白質とmRNAとを定量するとともに、上記検体試料から得られる、SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認することで、上記検体試料中から造血器腫瘍細胞を検出する技術である。
【0036】
本発明で、造血器腫瘍細胞を検出するためのマーカーとして用いられるSHP1遺伝子は、染色体12p13に存在し、図1〜図10および配列番号1に示す塩基配列をゲノムDNA(ワイルドタイプ)のセンス鎖とし、図11〜図20および配列番号2に示す塩基配列をアンチセンス鎖とする16のエキソン(図および配列表中大文字で示す領域)を有する遺伝子である。そのcDNAは、図21および配列番号3に示す塩基配列を有する約1.8kbのサイズを有している。なお、SHP1遺伝子はSH−PTP1,PTP1C、HCP、HCPH、PTPN6、HPTP1C、SHP−1Lと同一の遺伝子である。
【0037】
上記SHP1遺伝子にコードされているSHP1蛋白質は、分子量68kDで、各種造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼ(PTPase)であり、図22に示すように、N末端側にタンデム構造となる2つのSH2(Src homology domain 2)領域(270アミノ酸残基)と、246アミノ酸残基のPTPaseドメインと、93アミノ酸残基のC末端側領域とを有する構造となっている。また、図23および配列番号4に示すアミノ酸配列を有している。
【0038】
ヒトの造血器腫瘍、例えば悪性リンパ腫や白血病では、多くの種類で90%以上の高い頻度でSHP1蛋白質の強い発現抑制が見られる(例えば、American Journal of Pathology, Vol.159, No.4, October 2001:1495−1505等参照)。このように悪性の造血器腫瘍細胞では、上記SHP1蛋白質の発現抑制が極めて高頻度で見られるのに対し、正常な血液細胞にはこの現象が見られない。
【0039】
本発明者らは、上記SHP1蛋白質の発現抑制が、上記SHP1遺伝子がメチル化されることによる転写異常を原因とすることを独自に見出した。
【0040】
例えば、図24に示すように、図1〜図10および配列番号1に示すゲノムDNA(ワイルドタイプ)のセンス鎖(181塩基〜2160塩基まで例示)において、1001塩基〜1163塩基のエキソン(図中大文字)の前にプロモーター領域が存在するが、この近傍にシトシン(C)とグアニン(G)とが並ぶCG配列が多く存在しCpG島(CpG island)を形成している(図24中ではCG配列を太字の網掛けで示す)。正常な造血器細胞では、このCpG島のシトシンはメチル化されていないが、例えば悪性のリンパ腫細胞では、上記CG配列のシトシンの多くがメチル化されている。勿論、このCG配列におけるシトシンのメチル化はセンス鎖のみならずアンチセンス鎖にも同じように生じる。
【0041】
上記CpG島におけるCG配列の高度なメチル化は、SHP1遺伝子のDNAからmRNAの転写を阻害し、その結果、SHP1蛋白質の生産が抑制される。この現象は、上述したように造血器腫瘍細胞では極めて高頻度に見られる。しかも、各種造血器腫瘍患者の完全寛解期には、SHP1遺伝子におけるDNAのメチル化が完全に消失し、分子生物学上の知見と臨床上の知見との間に非常に高い相関関係が見られる。それゆえ、メチル化によるSHP1遺伝子の発現抑制が、造血器腫瘍細胞の発症機構の中で重要な役割を果たしていることが推測される。そこで本発明では、上記SHP1遺伝子の発現抑制という現象を、造血器腫瘍細胞のマーカーとして利用する。
【0042】
さらに、本発明者らは、悪性リンパ腫や白血病等の疾患が発症する際に、上述した、DNAメチル化によってSHP1遺伝子の転写抑制が生じる前後に、SHP1遺伝子の一つの対立遺伝子が喪失することも独自に見出した。そこで、SHP1遺伝子の異型接合性喪失を確認することによって、SHP1遺伝子の対立遺伝子の喪失を確認することが可能となる。それゆえ、SHP1遺伝子の異型接合性喪失も造血器腫瘍細胞のマーカーとして利用することができる。
【0043】
悪性リンパ腫や白血病において、SHP1遺伝子には、高頻度のDNAメチル化、高頻度の異型接合性喪失、SHP1遺伝子の発現の低下または消失が検出され、さらには、外来SHP1遺伝子導入が血球系の細胞の増殖を抑制する傾向にある。これにより、SHP1遺伝子が癌抑制遺伝子の一つであることが強く示唆される。
【0044】
そこで、本発明では、SHP1遺伝子メチル化確認工程で、上記検体試料から得られるSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認し、SHP1遺伝子産物定量工程にて、造血器細胞を含む検体試料中に含まれるSHP1蛋白質およびmRNAの少なくとも一方を定量し、さらに、SHP1遺伝子LOH確認工程で、SHP1遺伝子の異型接合性喪失を確認するという三つの工程を利用する。これら工程は単独で用いられても良いし、双方ともに用いられても良い。さらに、SHP1遺伝子産物定量工程では、SHP1蛋白質のみ定量されても良いし、SHP1mRNAのみ検出されても良いし、双方ともに検出されてもよい。
【0045】
これによって、例えば、まず、検体試料中のSHP1遺伝子のメチル化を検出することでスクリーニングし、その後、検体試料のSHP1遺伝子産物の発現をSHP1mRNAおよびSHP1蛋白質の少なくとも一方で定量することで、悪性の造血器腫瘍細胞の有無を確認することで造血器腫瘍細胞の存在を確定するという検出プロセスを実施することができる。
【0046】
したがって、本発明では、SHP1遺伝子の発現を、遺伝子DNAの修飾とmRNAと蛋白質と対立遺伝子の喪失という最大で四重のマーカーを用いて判定できることになる。すなわち、SHP1遺伝子の発現低下という一つの造血器腫瘍細胞特異的な現象を3段階で確認することができるため、非常に高い特異性で造血器腫瘍細胞を検出することができる。
【0047】
また、上述したように、本発明におけるSHP1遺伝子を導入することで、血球系の細胞の増殖を抑制する傾向にあることも確認されている。それゆえ、SHP1遺伝子は、遺伝子治療に用いることも可能であり、例えば、腫瘍細胞にSHP1遺伝子の発現ベクターをトランスフェクトすることにより、腫瘍細胞の増殖を抑制することが期待できる。
【0048】
本発明で用いられる検体試料は、末梢血あるいは骨髄液等の造血器細胞を含む検体試料であればどのような検体試料であっても特に限定されるものではない。本発明における造血器細胞とは、各種血液細胞を含むが、特に好ましくは各種白血球が挙げられる。より具体的には、リンパ球(T細胞・B細胞)、顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球並びにマクロファージ、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞等を挙げることができる。あるいは造血幹細胞やリンパ球幹細胞であってもよい。
【0049】
したがって、本発明で用いられる検体試料には、上記造血器細胞が含まれている血液や骨髄液あるいは体液等をヒトから採取し、これをそのまま検体試料として用いてもよいし、採取した血液や体液に対して従来公知の処理を施すことによって、分子生物学的な分析を実施し易い分析用検体試料としてもよい。
【0050】
本発明が適用可能な造血器腫瘍としては、具体的には、例えば、慢性骨髄性白血病、フィラデルフィア染色体ポジティブ(+(9;22)(qq34;q11),BCR/ABL)慢性骨髄性白血病、慢性好中球白血病、慢性好酸球白血病/高好酸球症候群、慢性突発性骨髄繊維症、真性多血症、本態性血小板増加症、その他分類できない骨髄増殖性疾患等の各種骨髄増殖性疾患;
慢性骨髄性単球白血病、非定型慢性骨髄性白血病、幼年性骨髄性単球白血病等の骨髄異型性/骨髄増殖性疾患;
環状鉄芽球を伴う難治性貧血、環状鉄芽球を伴わない難治性貧血、多系列異形成を伴う難治性血球減少症(骨髄異型性症候群)、過剰芽球5q−症候群を伴う難治性貧血(骨髄異型性症候群)、その他分類できない骨髄異型性症候群等の骨髄異型性症候群;
再発性細胞遺伝学的転座を伴う急性骨髄性白血病(AML)(例えば、+(8;21)(q22;q22)を伴うAML、AML1(CBF−α)/ETO、急性前骨髄性白血病(+(15;17)(q22;q11−12)を伴うAMLおよびその変形、PML/RAR−α))、異常な骨髄好酸球(inv(16)(p13q22)あるいは+(16;16)(p13;q11)、CBFβ/MYH11X)を伴うAML、11q23(MLL)異常を伴うAML、前骨髄異型性症候群を伴いかつ多系列異形成を伴うAML、前骨髄異型性症候群を伴いかつ多系列異形成を伴わないAML、治療に関係するAMLおよび骨髄異型性症候群(アルキル化剤に関係する治療、エピポドフィロトキシンに関係する治療、あるいはその他のタイプの治療)、他に部門に属さないAML(低分化型、成熟を伴わないもの、成熟を伴うもの、急性骨髄性単球白血病、急性単球白血病、急性赤芽球白血病、急性巨核球白血病、急性好塩基球白血病、骨髄繊維症を伴う急性汎骨髄過剰増殖症)、急性二形質性白血病等の急性骨髄性白血病(AML);
前駆体B細胞性腫瘍(前駆体B−リンパ芽球性白血病/リンパ腫(前駆体B細胞急性リンパ芽球性白血病)、成熟(末梢)B細胞性腫瘍(B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾辺縁領域B細胞リンパ腫(+/−絨毛リンパ球)、毛状細胞白血病、形質細胞性骨髄腫(形質細胞腫)、MALT型節外辺縁型B細胞リンパ腫、節性辺縁型B細胞リンパ腫(+/− 単球型B細胞)、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大型B細胞リンパ腫(縦隔大細胞B細胞リンパ腫、原発性滲出リンパ腫)、Burkitt リンパ腫/Burkitt細胞白血病)等のB細胞性腫瘍;
前駆体T細胞性腫瘍(前駆体T−リンパ芽球性白血病/リンパ腫(前駆体T細胞急性リンパ芽球性白血病)、成熟(末梢)T細胞性腫瘍(T細胞前リンパ球性白血病、T細胞顆粒リンパ球白血病、侵攻型NK細胞白血病、成人T細胞リンパ腫・白血病(HTLV1+)、鼻型節外性NK/T細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾型γ−δT細胞リンパ腫、皮下蜂窩織炎様T細胞リンパ腫、菌状息肉腫/Sezary症候群、退形成性大型細胞リンパ腫(T/ヌル細胞、原発性皮膚未分化型)、他に部門に属さない末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球T細胞リンパ腫)等のT細胞およびNK細胞性腫瘍;
節性リンパ球優勢ホジキンリンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫(結節硬化ホジキンリンパ腫(等級1および2)、リンパ球リッチ古典的ホジキンリンパ腫、混合細胞型ホジキンリンパ腫、リンパ球枯渇ホジキンリンパ腫)等のホジキンリンパ腫(ホジキン病);
等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0051】
本発明におけるSHP1遺伝子産物定量工程は、検体試料中のSHP1蛋白質およびSHP1mRNAの少なくとも一方を定量できる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、SHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体を用いてSHP1蛋白質を定量する方法(蛋白質定量法)か、SHP1遺伝子のmRNAの発現を検出することにより、SHP1mRNAを定量する方法(mRNA定量法)を好適に用いることができる。
【0052】
まず、上記蛋白質定量法のより具体的な手法としては、SHP1抗体を用いたウエスタンブロッティング法または酵素抗体法(Immunochemistry)(免疫組織化学法、免疫細胞化学法、ELISA(enzyme−linked immunosorbent assay)法)を挙げることができる。
【0053】
上記蛋白質定量法で用いられるSHP1抗体は、図22、図23および配列番号4に示す構造を有するSHP1蛋白質の少なくとも一部の構造を抗原決定基として認識し、SHP1蛋白質を免疫学的に確実に検出できる抗体であれば特に限定されるものではなく、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。
【0054】
上記SHP1抗体は、従来公知の方法で製造してもよいし、市販のSHP1抗体を用いてもよい。SHP1抗体の製造方法としては、例えば、モノクローナル抗体であれば、SHP1蛋白質で免疫したマウス脾臓リンパ球とマウスの骨髄細胞とを融合させてなるハイブリドーマにより産生する手法が挙げられる。また、上記SHP1抗体がポリクローナル抗体であれば、SHP1蛋白質で免疫したウサギの免疫血清から精製する手法が挙げられる。また、市販のSHP1抗体としては、#SH−PTP1(D−11):sc7289および#SH−PTP1(C−19):sc287(Santa Cruz Biotechnology Inc.製)、#anti SHPTP(06117)および#anti mouse SHPTP(05281) )
(Upstate Biotechnology Inc.製)等が挙げられる。
【0055】
上記SHP1抗体を用いた酵素抗体法(免疫組織化学法、免疫細胞化学法、ELISA法)は、従来公知の方法(例えば、『酵素抗体法』渡辺慶一・中根一穂編集、学際企画出版(昭和61年)や、Brown R.W. et al: Modern Pathol. 199;8(5)515−20(1995)等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。
【0056】
同様に、上記SHP1抗体を用いたウエスタンブロッティング法も、従来公知の方法(例えば、『実験操作ブロッティング法』日野嘉幸他編、ソフトサイエンス社(昭和62年)や、Towbin H. et al: Proc.Natl.Acad.Sci.USA76,4350,(1979) 等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。
【0057】
上記蛋白質定量法を用いることで、抗原抗体反応を利用してSHP1蛋白質を定量することになる。そのため、簡素なメカニズムで高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0058】
次に、上記mRNA定量法のより具体的な手法としては、配列番号3(図21参照)に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部と相同性を有するポリヌクレオチドを用いてSHP1遺伝子のmRNAの発現を検出する方法が挙げられ、より具体的には、ノーザンブロッティング法、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(real time RT−PCR)、またはRNA in situハイブリダイゼーションを挙げることができる。
【0059】
上記ノーザンブロッティング法、RT−PCR、real time RT−PCR、およびRNA in situハイブリダイゼーションの何れの方法も従来公知の方法(例えば、”Molecular cloning” a laboratory manual, Sambrook J., Russell DW.,Cold Spring Harbor Lab Press.(2001)や、”Current protocols in molecular biology” edited by Ausubel FM et al., John Wiley & Sons Inc.(2001) 等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。
【0060】
上記ノーザンブロッティング法やRNA in situ ハイブリダイゼーションでは、原理的には、配列番号3に示すSHP1遺伝子のcDNAの全長あるいはその一部をプローブとして用いることができる。また、RT−PCRやreal time RT−PCRでも、原理的には、配列番号3に示すSHP1遺伝子のcDNAの一部と相同性を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いることができる。具体的には、例えば、後述する実施例3や実施例4に示すプライマーペアを用いることができる。
【0061】
それゆえ、mRNA定量法では、配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部と相同性を有するポリヌクレオチドを用いてSHP1遺伝子のmRNAの発現を検出すればよい。
【0062】
上記mRNA定量法を用いることで、SHP1遺伝子の転写産物であるSHP1mRNAを定量することになるので、SHP1遺伝子のcDNAと相同性を有するポリヌクレオチドをプローブやプライマーとして利用することで、簡素なメカニズムで迅速、高特異的かつ高感度に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0063】
本発明におけるSHP1遺伝子メチル化確認工程は、検体試料から得られるSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認できる方法であれば特に限定されるものではないが、本実施の形態では、例えば、遺伝子切断試行段階と、遺伝子増幅試行段階と、遺伝子増幅量確認段階とを含むメチル化感受性制限酵素を利用した方法(以下、説明の便宜上、制限酵素確認法と称する)を好適に用いることができる。
【0064】
本実施の形態で用いられるメチル化感受性制限酵素とは、二本鎖DNAにおいて認識対象となる塩基配列にシトシンを含んでおり、かつ、この塩基配列中のシトシンがメチル化された場合には、該塩基配列の二本鎖DNAを切断できない制限酵素であれば特に限定されるものではない。
【0065】
上記メチル化感受性制限酵素としては、具体的には、例えば、HpaII、EagIまたはNaeI等を挙げることができる。中でも、HpaIIをより好ましく用いることができる。HpaIIは、CCGGの塩基配列を認識して二本鎖DNA切断するエンドヌクレアーゼであるが、同じ塩基配列を認識して二本鎖DNAを切断する制限酵素として、MspIが知られている。
【0066】
上述したように、HpaIIはメチル化されたCCGGの塩基配列の二本鎖DNAを切断できないが、MspIはメチル化の有無に関わらずCCGGの塩基配列を認識して二本鎖DNAを切断することが可能である。すなわち、MspIはメチル化非感受性制限酵素である。それゆえ、HspIIとMspIとを併用することで、後述するように、検体試料中のSHP1遺伝子の切断を確実に確認するためのコントロールとして利用することが可能になり、本実施の形態における制限酵素確認法の信頼性をより一層向上させることができる。
【0067】
このように、本実施の形態における制限酵素確認法では、使用するメチル化感受性制限酵素と同じ塩基配列を認識するメチル化非感受性制限酵素をコントロールとして使用することが好ましい。勿論、メチル化感受性およびメチル化非感受性制限酵素の組み合わせは上記HspII・MspIに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0068】
次に、本実施の形態におけるSHP1遺伝子メチル化確認工程、すなわち制限酵素確認法によるSHP1遺伝子のメチル化の確認について具体的に説明する。
【0069】
まず、遺伝子切断試行段階として、造血器細胞を含む前記検体試料から得られた遺伝子試料を、シトシンを含む塩基配列を認識する上記メチル化感受性制限酵素で処理する。この段階では、メチル化感受性制限酵素の処理により遺伝子試料中に含まれるSHP1遺伝子の切断を試みる。すなわち、前記検体試料中に含まれる造血器細胞が正常な細胞のみであれば、SHP1遺伝子は切断されるが、造血器腫瘍細胞が含まれていれば、SHP1遺伝子はCG配列がメチル化されているため切断されない。
【0070】
前記検体試料から遺伝子試料を調製する方法は従来公知の方法を用いることができ特に限定されるものではない。また、調製された遺伝子試料は、SHP1遺伝子を含んでいればよく、制限酵素処理やPCR等を阻害しない限り他の成分が含まれていても良い。それゆえ、前記検体試料中に含まれる造血器細胞やその他の細胞から抽出される各種DNAやRNAの混合物であればよい。また、メチル化感受性制限酵素による処理についても特に限定されるものではなく、該メチル化感受性制限酵素の種類や調製された遺伝子試料の状態等に応じて、適宜条件等を設定すればよい。
【0071】
次に、遺伝子増幅試行段階として、上記メチル化感受性制限酵素で処理された遺伝子試料に対して、上記SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれ、上記メチル化感受性制限酵素に認識切断される塩基配列を含む領域を増幅するプライマーを用いて、PCRを実施する。この段階では、メチル化感受性制限酵素で処理した制限酵素処理物を、上記プライマーを用いてPCR処理することにより、SHP1遺伝子のみの増幅を試みる。正常なSHP1遺伝子のみであれば、プライマーペアに挟まれる領域が切断されているためSHP1遺伝子は増幅できないが、メチル化されているSHP1遺伝子が含まれていれば、上記プライマーペアに挟まれる領域は切断されていないためSHP1遺伝子が増幅される。
【0072】
上記遺伝子増幅試行段階で用いられる上記プライマーとしては、メチル化感受性制限酵素に認識される塩基配列を含む領域を増幅するポリヌクレオチドであればよい。それゆえプライマーの設計条件等についても特に限定されるものではない。基本的には、本実施の形態で用いられるプライマーペアは、メチル化感受性制限酵素に認識される上記塩基配列を含む領域の少なくとも外側に位置し、配列番号1または2(図1〜図10および図11〜図20参照)に示すSHP1遺伝子の塩基配列に含まれる部分塩基配列、またはこの部分塩基配列と相補性を有するポリヌクレオチドであればよく、その場所やサイズ等については特に限定されるものではない。
【0073】
次に、遺伝子増幅量確認段階として、増幅された遺伝子の量を確認する。この段階では、SHP1遺伝子が増幅されたか否かを確認する。SHP1遺伝子が増幅されれば、元の検体試料中に造血器腫瘍細胞が含まれていることになる。
【0074】
上記遺伝子増幅量確認段階で用いられるSHP1遺伝子の有無の確認方法としては特に限定されるものではないが、電気泳動法を用いてマーカーと比較することにより遺伝子の増幅量を確認する手法が最も一般的で確立された手法であるため好ましく用いることができる。また、電気泳動後に得られたDNAバンドをメンブレンにブロッティングして検出してもよい。
【0075】
上記遺伝子増幅量確認段階で用いられるSHP1遺伝子の有無の確認方法としては特に限定されるものではないが、検体試料と同時にメチル化陽性およびメチル化陰性対照DNAを用いて反応を行った後電気泳動法を用いて遺伝子の増幅量を確認する手法が最も一般的で確立された手法であるため好ましく用いることができる。また、電気泳動後に得られたDNAバンドをメンブレンにブロッティングして検出してもよい。
【0076】
上記SHP1遺伝子のメチル化陽性およびメチル化陰性対照DNAは、SHP1遺伝子を用いたものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、メチル化感受性制限酵素またはメチル化非感受性制限酵素により処理することで得られる、増幅量を比較できる程度の濃度を有するDNA溶液を挙げることができる。
【0077】
さらに、制限酵素確認法によるSHP1遺伝子メチル化確認工程では、コントロールとして、メチル化感受性制限酵素による処理と並行して、同一の検体試料をメチル化非感受性制限酵素で処理して、それを遺伝子増幅量確認段階で確認すると好ましい。すなわち、上記遺伝子切断試行段階では、メチル化感受性制限酵素として、同一の塩基配列を認識するメチル化非感受制限酵素が知られている制限酵素を用いることが非常に好ましい。これによって、制限酵素確認法によるSHP1遺伝子のメチル化の確実性を高めることができる。
【0078】
本発明におけるSHP1サテライトLOH確認工程は、造血器細胞を含む検体試料において、この検体試料に含まれるSHP1遺伝子の異型接合性喪失(Lossof heterozygosity,LOHと略す)の有無を確認することができる方法であれば特に限定されるものではないが、具体的には、SHP1遺伝子を挟み込むマイクロサテライト・マーカー、または、上記SHP遺伝子中か、その近辺に存在する単一塩基多型(single nucleotide polymorphism,SNP)のような遺伝子多型(polymorphism)について、PCRを用いたフラグメント解析によってLOHを確認する方法を好適に用いることができる。
【0079】
上記SHP1遺伝子の両側に存在するマイクロサテライト・マーカーや、SHP1遺伝子中またはその近辺に存在する遺伝子多型については、特に限定されるものではなく、どのようなマーカーを用いてもよいが、具体的には、例えば、D12S336マーカーおよびD12S356マーカーを挙げることができる。これらマーカーの塩基配列は、インターネット・ゲノム・データベース(URL:http://gdbwww.gdb.org./)から得られる。これらマーカーのうち、D12S356マーカーはテロメア側に存在し、SHP1遺伝子から約4.4cMの距離にある。一方、D12S356マーカーはセントロメア側に存在し、SHP1遺伝子から約2.4cMの距離にある。
【0080】
検体試料におけるSHP1遺伝子のLOH(異型接合性喪失)の確認に際しては、SHP1サテライトLOH確認工程で用いられる検体試料は、造血器細胞を含む検体試料となっていればよい。また、LOHの具体的な方法は特に限定されるものではないが、後述する実施例6に示すように、PCR反応によって上記各マーカーの少なくとも一方の全長またはその一部を検出するマイクロサテライト解析を行えばよい。このときのPCR反応他の条件も特に限定されるものではなく、PCR用のプライマーとしては、例えば、D12S336マーカーまたはD12S356マーカーの少なくとも一部を検出できるようなプライマーであればよく、その他の条件についても適切な条件を適宜設定すればよい。
【0081】
本発明におけるSHP1サテライトLOH確認工程で用いられる検体試料は、造血器細胞を含む検体試料であれば特に限定されるものではない。また、対照として用いる検体試料も特に限定されるものではなく、血液学的完全寛解後に得られる検体を用いてもよいし、他の正常組織細胞を用いてもよい。
【0082】
このように、マイクロサテライト・マーカーやSNP等の遺伝子多型を利用してSHP1遺伝子のLOHを確認することで、簡素なメカニズムでより確実に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態では、SHP1遺伝子のLOHを、マイクロサテライト・マーカーや遺伝子多型を利用して確認した例を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではなく、SHP1遺伝子のLOHが確認できる方法であればどのような方法でもよいことは言うまでもない。
【0084】
次に、本実施の形態にかかる検出方法の好ましい一例について、より具体的に説明する。
【0085】
まず、SHP1遺伝子産物定量工程により、前述した手法を用いて検体試料中に含まれるSHP1蛋白質およびSHP1mRNAの少なくとも一方を定量する。このプロセスで定量されたSHP1蛋白質が、標準よりも大幅に減少していたり、ほとんどSHP1遺伝子産物が発現していなかったりした場合には、検体試料中に造血器腫瘍細胞が含まれている可能性が高くなる。
【0086】
次に、SHP1遺伝子メチル化確認工程で、前記制限酵素確認法により、検体試料から調製した遺伝子試料中のSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認する。以下の説明では、メチル化感受性制限酵素として前記HpaIIを用いた例を挙げる。HpaIIは、前述したようにCCGGの塩基配列を認識するが、同じ塩基配列を、メチル化非感受性制限酵素MspIも認識するため、好ましく用いられる。
【0087】
そこで、遺伝子切断試行段階では、上記検体試料から得られた遺伝子試料を、HpaIIで処理する。同時に、同一の遺伝子試料をMspIで処理すると好ましい。これによって、CCGG塩基配列が切断されるというポジティブコントロールを得ることができる。
【0088】
次に、遺伝子増幅試行段階に移行するが、このステップでは、先に、SHP1遺伝子の塩基配列(配列番号1および2、図1〜図10および図11〜図20参照)から、HpaII/MspIの認識部位(CCGG)を挟んでPCR用のプライマーを設定する。具体的には、例えば、後述する実施例1や実施例2に示すプライマーペアを用いる。
【0089】
上記のようなプライマーを用いて、HpaIIで処理された遺伝子試料に対してPCRを実施し、遺伝子増幅量確認段階で、例えば電気泳動によりPCR産物の増幅量を確認する。遺伝子試料中に、メチル化されたSHP1遺伝子があれば、HpaIIは切断できないので、PCRにより目的のサイズのPCR産物が検出できる。一方、メチル化されたSHP1遺伝子が無ければ、HpaIIによりDNAが切断されPCR産物は検出できない。
【0090】
このように、上記制限酵素確認法を用いれば、メチル化感受性制限酵素を用いて検体試料から得られた遺伝子試料に含まれるSHP1遺伝子の切断を試み、さらにPCRを用いて増幅してから、得られるPCR産物の増幅量を確認することができる。それゆえ、検体試料から微量のSHP1遺伝子さえ得られれば、SHP1遺伝子のメチル化を検出することが可能である。そのため、検体試料中に造血器腫瘍細胞がごく微量しか存在していなくても迅速に高い検出感度で、しかも高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0091】
なお、本実施の形態で説明した上記検出方法には、他の工程(プロセス)や他の段階(ステップ)が含まれていてもよいことは言うまでも無い。例えば、SHP1遺伝子メチル化確認工程において、制限酵素反応やPCR反応を円滑に進めるために、得られた遺伝子試料等を精製する精製段階が含まれていてもよい。
【0092】
本発明には、上述した造血器腫瘍細胞検出方法だけでなく、該検出方法を実施するための検出キットが含まれる。具体的には、前記SHP1抗体、前記メチル化感受性制限酵素、前記各プライマー、前記SHP1遺伝子陽性およびメチル化陰性対照DNA等を含む構成を挙げることができる。特に、(1)上記SHP1抗体、および(2)メチル化感受性制限酵素と、PCR用プライマーと、前記SHP1遺伝子陽性およびメチル化陰性対照DNAとの組み合わせに分けた場合には、(1)および(2)の少なくとも一方が含まれていると好ましい。また、SHP1遺伝子産物定量工程とSHP1遺伝子メチル化確認工程の順番はどちらが先であっても良い。
【0093】
さらに、上記検出キットには、必要に応じて、他の各種試薬類が含まれていてもよい。例えば、ヌクレオチドモノマー、ポリメラーゼ、バッファー等のPCR反応用試薬、および、バッファー等の制限酵素反応用試薬の少なくとも一方が含まれていてもよい。
【0094】
より具体的に、各工程または段階ごとに用いられる試薬等について説明する。まず、遺伝子産物定量工程では、蛋白質定量法の場合、酵素抗体法およびウエスタンブロッティング法の何れであっても、SHP1抗体およびその検出試薬が少なくとも用いられる。また、mRNA定量法の場合、RT−PCR法やreal time RT−PCR法を用いる場合、SHP1cDNA検出用プライマーおよびTaq DNAポリメラーゼ反応試薬が少なくとも用いられる。
【0095】
次に、本実施の形態におけるSHP1遺伝子メチル化確認工程では、メチル化感受性制限酵素によりメチル化を確認するため、まず、遺伝子切断試行段階にて、メチル化感受性制限酵素、メチル化非感受性制限酵素、およびこれらの反応試薬が少なくとも用いられる。次に、遺伝子増幅試行段階では、プライマー、Taq DNAポリメラーゼ反応試薬、システム検討用SHP1遺伝子メチル化陽性DNAが少なくとも用いられる。次に、遺伝子増幅量確認段階では、SHP1遺伝子メチル化陽性およびメチル化陰性対照DNAを用いた反応産物を電気泳動のコントロールとして少なくとも使用することができる。
【0096】
このように、本発明にかかる検出キットでは、前述した造血器腫瘍細胞検出方法を実施するために好ましい薬剤や標本等が含まれている。そのため、上記検出キットを用いることで、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法を容易かつ簡素に実施することができ、本発明を臨床検査産業や医薬品産業等の産業レベルで利用することが可能となる。
【0097】
〔実施の形態2〕
本発明における実施の他の形態について図25ないし図47に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。また、説明の便宜上、実施の形態1と重複する説明は適宜省略する。
【0098】
前記実施の形態1では、SHP1遺伝子メチル化確認工程に、メチル化感受性制限酵素を用いる制限酵素確認法を用いたが、本発明は、これに限定されるものではなく、本実施の形態では、例えば、遺伝子修飾段階とメチル化シトシン含有判定段階とを含む、重亜硫酸塩を用いてDNAを修飾する方法(以下、説明の便宜上、DNA修飾法と称する)を好適に用いることができる。
【0099】
DNAを重亜硫酸塩(Bisulfite)で処理すると、シトシンはウラシルに変換される。具体的には、図25に示すように、シトシンが重亜硫酸塩によりスルホン化(Sulphonation)され、さらに加水分解により脱アミノ化(Hydrolytic deamination)され、さらに、アルカリ存在下での脱スルホン化(Alkali desulphonation)により、ウラシルに変換される。このウラシルはPCR後、チミンに置き変わる。これに対して、メチル化されたシトシン(5’−メチルシトシン)は重亜硫酸塩によって変換されない。そこで、本実施の形態では、この重亜硫酸塩処理後の塩基配列の違いを利用して、後述するように、SHP1遺伝子のメチル化の有無を検出する。
【0100】
次に、本実施の形態におけるSHP1遺伝子メチル化確認工程、すなわちDNA修飾法によるSHP1遺伝子のメチル化の確認について具体的に説明する。
【0101】
まず、遺伝子修飾段階として、造血器細胞を含む前記検体試料から得られた遺伝子試料を重亜硫酸塩で処理する。この段階では、上述したように、メチル化されていないシトシンのみがウラシルに変換されるので、例えば、それゆえ、DNAを重亜硫酸塩処理すると、図26に示すように、メチル化された(図中円で囲んだMで示す)シトシンはシトシンのままで残存するが、メチル化されていないシトシンはウラシル(U)に変換される。
【0102】
上記遺伝子修飾段階で用いられる重亜硫酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、重亜硫酸ナトリウム(Na、メタ重亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸ナトリウムともいう)を好適に用いることができる。さらに、重亜硫酸化合物とともに尿素が併用されてもよい。
【0103】
次に、メチル化シトシン含有判定段階として、重亜硫酸塩で処理された遺伝子試料に含まれる、SHP1遺伝子の塩基配列中のシトシンの有無を判定する。重亜硫酸塩処理物中のSHP1遺伝子にシトシンが含まれているということは、処理前のSHP1遺伝子には、メチル化されたシトシンが含まれていることになる。それゆえ、シトシンが存在すれば、元の検体試料中に造血器腫瘍細胞が含まれていることになる。
【0104】
上記メチル化シトシン含有判定段階で実施される、SHP1遺伝子の塩基配列中のシトシンの有無を判定する方法としては特に限定されるものではないが、具体的には、1)メチル化シトシンをPCRにより検出する方法、2)メチル化シトシンを遺伝子の塩基配列の決定により検出する方法、または、3)メチル化シトシンを含む塩基配列を識別する方法のうち、少なくとも何れかの手法を好ましく用いることができる。
【0105】
より具体的には、まず、1)メチル化シトシンをPCRにより検出する方法としては、メチル化特異的PCR(Methylation Specific PCR)を挙げることができる。
【0106】
上記メチル化特異的PCR法は、メチル化されたDNAに特異的でかつCG配列を含む塩基配列をプライマーとして設定する。メチル化されたシトシンが存在していればPCRにより増幅が可能となり、それゆえメチル化されたSHP1遺伝子を検出することができる。
【0107】
上記メチル化特異的PCR法は、従来公知の方法(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 9821−9826, (1996) 等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。なお、DNAの精製過程ではエタノール沈澱法やGlassbeads法を用いた方法等を用いることができ、また、蛍光ラベルしたプライマーを用いれば、PCRの検出を容易にすることができる。
【0108】
次に、2)遺伝子の塩基配列の決定によりメチル化シトシンを検出する方法、すなわちSHP1遺伝子のシークエンシングでは、CG配列を含まない領域にプライマーを設定しPCRを実施する。得られるPCR産物の中には、メチル化をされているもの(CG配列のままで存在)とメチル化されていないもの(TG配列に変換されている)が含まれている可能性がある。これをシークエンシングすることにより、CG配列すなわちメチル化の存在を検討する。
【0109】
上記SHP1遺伝子のシークエンシングも、従来公知の方法(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 1827−1831 (1992) 等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。なお、上記プライマーとしては、メチル化されたDNAに特異的な配列(CG配列を含む)を有するプライマーを用いることも可能である。
【0110】
この方法もPCRを用いているので、検体試料から微量のSHP1遺伝子さえ得られれば、SHP1遺伝子のメチル化を検出することが可能である。そのため、検体試料中に造血器腫瘍細胞がごく微量しか存在していなくても高い検出感度で高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。また、シークエンシングを利用することにより具体的な配列を決定するので、メチル化の程度をより明確化することも可能となる。
【0111】
次に、3)シトシンを含む塩基配列を識別する方法としては、Ms−SnuPE法、重亜硫酸塩SSCP法、メチルライト法、蛍光溶解曲線分析法、COBRA法等を挙げることができる。
【0112】
上記Ms−SnuPE(Methylation−sensitive Single Nucleotide Primer Extension)法は、メチル化されたDNAに特異的なプライマーを用いてPCRを実施する方法である。ただし、プライマーに挟まれた領域でのメチル化の有無が判らないので、検出したいCG配列に隣接するポリヌクレオチドを作成しPCR産物とアニールさせる。放射性同位元素の存在下でDNAを合成した時に、32P−dCTPを取り込めば、そこはCG配列であるためメチル化されているシトシンが存在することになる。一方、DNAを合成した時に、32P−dTTPを取り込めば、そこはTG配列であるためメチル化はされていなかったことになる。
【0113】
上記Ms−SnuPE法は、従来公知の方法(例えば、Nucleic Acids Research25, 2529−2531, (1997) 等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。
【0114】
上記重亜硫酸塩SSCP(Bisulfite−SSCP)法も、メチル化されたDNAに特異的なプライマーを用いてPCRを実施する方法であるが、プライマーに挟まれた領域でのメチル化の有無が判らない。そこで、PCR産物を1本鎖DNAに変性後、SSCP(Single Strand Conformational Polymorphism )法を用いて電気泳動し、1本鎖DNAの移動度の違いから、SHP1遺伝子のメチル化の程度を判定する。
【0115】
上記重亜硫酸塩SSCP法も、従来公知の方法(例えば、Electrophoresis 21, 904−908, (2000) 等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。
【0116】
他に、メチルライト(Methyl−light)法や、蛍光溶解曲線分析(FluorescenceMelting Curve Analysis)法等も挙げられる。これら方法も、何れもメチル化されたDNAに特異的なプライマーを用いてPCRを実施する方法であるが、プライマーに挟まれた領域でのメチル化の有無が判らない。そこで、内側の調べたい領域について、メチル化特異的なポリヌクレオチドを作成し、このメチル化特異的ポリヌクレオチドが1本鎖にしたPCR産物とどの程度アニール(2本鎖重合)反応するかを検討することにより、上記PCR産物中のメチル化の量を判定する。
【0117】
上記メチルライト法は、具体的には、例えば、Nucleic Acids Research 28(8), E32, (2000) 等の文献に開示されている方法を、上記蛍光溶解曲線分析は、具体的には、例えば、Clinical Chemistry 47, 1183−1189, (2001) 等の文献に開示されている方法を好適に用いることができる。
【0118】
上述した各方法は、PCRを用いているので、検体試料から微量のSHP1遺伝子さえ得られれば、SHP1遺伝子のメチル化を検出することが可能である。そのため、検体試料中に造血器腫瘍細胞がごく微量しか存在していなくても高い検出感度で高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0119】
上記COBRA法(Combined Bisulfite Restriction Analysis、あるいは、Bisulfite PCR followed by restriction analysis等とも称される)では、例えば、CGCG配列がメチル化を受けていると、重亜硫酸処理後もCGCG配列のままで残存するが、メチル化されていないとTGTG配列に変換される。そこで、上記CGCG配列のみを切断する制限酵素等を利用することで、電気泳動ゲル上のバンドパターンを解析して、SHP1遺伝子のメチル化の有無を判定および定量化することができる。
【0120】
上記COBRA法も、従来公知の方法(例えば、Nucleic Acids Research 25,2532−2534, (1997) 等の文献に開示されている方法)を好適に用いることができ、その具体的な工程や試薬類、条件等は特に限定されるものではない。勿論、この方法でもPCRが用いられるので、上述したPCRによる利点が得られるだけでなく、制限酵素処理と電気泳動とを用いるので、バンドパターンの解析さえ明確化しておれば、容易にSHP1遺伝子のメチル化を確認することができるという利点もある。
【0121】
このように、本実施の形態におけるDNA修飾法では、メチル化シトシン含有判定段階でPCRを用いているが、このPCRで用いるプライマーの設計方法について以下に説明する。
【0122】
上述したように、DNAを重亜硫酸塩処理するとシトシンはウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシンは変換されずに保存される。ここで、細胞内でメチル化を受ける可能性のあるシトシンは、5’配列側からCGと並ぶCG配列(5’−CG−3’)のシトシン(C)のみである。そのため、重亜硫酸塩処理により、上記CG配列以外のシトシンは全てチミン(T)に変換されてしまう。そこで、全てのCG配列がメチル化を受けたものとしてSHP1遺伝子の塩基配列を変換し、プライマーを設定する。なお、DNA中のウラシルはチミンとして認識され、PCRによりチミンに置換されることになる。
【0123】
まず、プライマーを計画するDNA鎖に関する条件を設定する。SHP1遺伝子の塩基配列において、センス鎖またはアンチセンス鎖の何れも、上記CG配列のみがメチル化を受けたとして、その他の塩基配列におけるシトシンが全てチミンに変換された配列を想定する。
【0124】
具体的には、図27〜図36および配列番号5に示す塩基配列が、図1〜図10および配列番号1に示すSHP1遺伝子のゲノムDNA(ワイルドタイプ)のセンス鎖に対応する、重亜硫酸塩処理後の塩基配列(以下、説明の便宜上、センス鎖変換配列とする)であり、図37〜図46および配列番号6に示す塩基配列が、図11〜図20および配列番号2に示すSHP1遺伝子のゲノムDNA(ワイルドタイプ)のアンチセンス鎖とするに対応する、重亜硫酸塩処理後の塩基配列(以下、説明の便宜上、アンチセンス鎖変換配列とする)である。これらセンス鎖変換配列とアンチセンス鎖変換配列とは、重亜硫酸塩処理により相補的ではなくなる。
【0125】
なお、図27〜図36および配列番号5、並びに、図37〜図46および配列番号6の塩基配列は、CG配列が100%メチル化されていると想定した場合に、重亜硫酸塩処理を受けたものとしての塩基配列であり、実際には細胞中で100%のメチル化が生じるとは考えられないため、本発明において検出し得る可能性としての塩基配列として例示する。
【0126】
そして、(I)上記センス鎖変換配列に対して、フォワードプライマー(FWプライマー)およびリバースプライマー(RVプライマー)を作成するか、あるいは、(II)上記アンチセンス鎖変換配列に対して、FWプライマーおよびRVプライマーを作成する。この場合、同じ場所でもプライマー配列はそれぞれ異なる。
【0127】
次に、プライマーを計画する領域に関する条件を設定する。(i)メチル化されたDNAのみを直接PCRで増幅するために、CG配列を含む塩基配列に対してプライマーを作成するか、(ii)メチル化されたもの、されていないものを区別なくPCRで増幅するために、CG領域を含まない配列に対してプライマーを作成する。なお、(ii)の場合は、後でシークエンシングかその他の方法を実施し、メチル化を判定する。
【0128】
したがって、DNA修飾法で用いられるプライマーの設計には、上記DNA鎖に関する条件(I)および条件(II)と、領域に関する条件(i)および条件(ii)とを掛け合わせた4通りの設計方法がある。
【0129】
ここで、(i)の場合、プライマーの場所が都合良くメチル化を受けていれば検出されるが、その場所ではなく近隣領域のみメチル化を受けているような場合には、メチル化が存在するのにも関わらず検出不可能となる。そこで、(ii)のように、メチル化の有無に関わらずPCRで増幅後、各プライマーに囲まれた領域内のメチル化、すなわちCG配列の有無を検定することで、確実にSHP1遺伝子のメチル化を検出することができる。そのため、本実施の形態におけるSHP1遺伝子のメチル化の判定には、検出用のプライマーの場所のみならず、遺伝子配列の情報そのものが重要となる。
【0130】
また、CG配列がメチル化されていないと、重亜硫酸塩処理によりTG配列に変換されるが、このTG配列を含む塩基配列に対して作成されるプライマー(Unmethylated primer)は、メチル化を受けていないDNAの存在を証明するコントロールとして用いることができる。また、重亜硫酸塩処理が不十分な場合には、シトシンがウラシルに変換されていないワイルドタイプのSHP1遺伝子が混入することになる。そこで、重亜硫酸塩処理が十分完全になされたか否かのコントロールとして、ワイルドタイプの塩基配列を有するプライマー(Wild type primer)を用いることができる。
【0131】
なお、上述したメチル化シトシン含有判定段階では、PCRにより増幅された遺伝子の確認に、前記実施の形態1における遺伝子増幅量確認段階と同様の方法、例えば、電気泳動法を用いてマーカーと比較することにより遺伝子の増幅量を確認したり、さらに電気泳動後に得られたDNAバンドをメンブレンにブロッティングしたりする手法が挙げられる。勿論、これら手法に限定されるものではなく、また、上記電気泳動法やブロッティングの方法についても従来公知の手法を好適に用いることができ、特に限定されるものではない。
【0132】
換言すれば、本実施の形態におけるDNA修飾法によるSHP1遺伝子メチル化確認工程でも、前記実施の形態1における制限酵素確認法による場合と同様、遺伝子増幅量確認段階が含まれていても良い。
【0133】
次に、本実施の形態にかかる検出方法の好ましい一例について、より具体的に説明する。
【0134】
まず、SHP1遺伝子産物定量工程により、前述した手法を用いて検体試料中に含まれるSHP1蛋白質およびSHP1mRNAの少なくとも一方を定量する。このプロセスで定量されたSHP1蛋白質が、標準よりも大幅に減少していたり、ほとんどSHP1遺伝子産物が発現していなかったりした場合には、検体試料中に造血器腫瘍細胞が含まれている可能性が高くなる。
【0135】
次に、SHP1遺伝子メチル化確認工程で、前記DNA修飾法により、検体試料から調製した遺伝子試料中のSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認する。具体的には、遺伝子修飾段階にて、例えば重亜硫酸ナトリウムを用いて、上記検体試料から得られた遺伝子試料をで処理する。
【0136】
次に、遺伝子増幅試行段階に移行するが、このステップでは、前述したプライマーの設計方法に基づいて、PCR用のプライマーを設定する。
【0137】
具体的には、メチル化特異的PCRでは、図47(a)に示すように、例えば、23塩基対のワイルドタイプDNA(図中上がセンス鎖で下がアンチセンス鎖)を想定し、ワイルドタイプDNAのCG配列に100%メチル化があるとする。この場合、重亜硫酸塩処理すると、図47(b)に示すように、センス鎖とアンチセンス鎖は相補的ではなくなる。そこで、図47(c)または(d)に示すように、センス鎖またはアンチセンス鎖に対してFWプライマーおよびRVプライマーを作成する。
【0138】
なお、上記メチル化特定PCRにおいては、PCR用プライマーとして、具体的には、例えば、後述する実施例4や実施例5に示すプライマーペアを用いる。上記のようなプライマーを用いて、重亜硫酸ナトリウムで処理された遺伝子試料に対してメチル化特異的PCRを実施し、例えば電気泳動によりPCR産物の増幅量を確認する。
【0139】
このように、上記DNA修飾法を用いれば、重亜硫酸塩を用いて検体試料から得られた遺伝子試料を処理すると、塩基配列中のシトシンはウラシルに変換されるが、メチル化されたシトシンは変換されない。そのため、遺伝子修飾段階後のSHP1遺伝子の塩基配列中にシトシンが含まれるか否かを判定するのみで、SHP1遺伝子のメチル化を検出することができる。そのため、単純なメカニズムで迅速かつ高特異的に造血器腫瘍細胞を検出することが可能となる。
【0140】
次に、SHP1遺伝子産物定量工程により、前述した手法を用いて検体試料中に含まれるSHP1蛋白質およびSHP1mRNAの少なくとも一方を定量する。このプロセスで定量されたSHP1遺伝子産物が、標準よりも大幅に減少していたり、ほとんど発現していなかったりした場合には、検体試料中に造血器腫瘍細胞が含まれている可能性が高くなる。
【0141】
なお、本実施の形態で説明した上記検出方法には、前記実施の形態1の検出方法と同様に、他の工程(プロセス)や他の段階(ステップ)が含まれていてもよいことは言うまでも無い。
【0142】
本発明には、上述した造血器腫瘍細胞検出方法だけでなく、該検出方法を実施するための検出キットが含まれる。具体的には、遺伝子処理レベルまで精製された重亜硫酸塩と前記プライマー、および前記SHP1抗体を含む構成を挙げることができる。つまり、本発明にかかる検出キットでは、上記重亜硫酸塩、プライマー、およびSHP1抗体を、(1)上記SHP1抗体、(2)重亜硫酸塩と、該重亜硫酸塩で処理された遺伝子試料に含まれるSHP1遺伝子の塩基配列中のシトシンの有無の判定用プライマー、および(3)配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部を検出するPCR用のプライマーに分けた場合、(1)、(2)および(3)のうち、少なくとも何れか一つを含むことが好ましい。
【0143】
さらに、上記検出キットには、配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部と相同性を持つノーザンブロッティング用プローブ、または、シトシンを含む塩基配列を認識する制限酵素およびSHP1遺伝子のメチル化陽性及びメチル化陰性対照DNAを用いた電気泳動用マーカーが含まれていてもよく、さらには、ヌクレオチドモノマー、ポリメラーゼ、バッファー等のPCR反応用試薬、および、バッファー等の制限酵素反応用試薬の少なくとも一方が含まれていてもよい。
【0144】
より具体的に、各工程または段階ごとに用いられる試薬等について説明する。まず、遺伝子産物定量工程では、前記実施の形態1で例に挙げたものと同様であるのでその説明は省略する。
【0145】
次に、本実施の形態におけるSHP1遺伝子メチル化確認工程では、重亜硫酸塩処理によりメチル化を確認するため、まず、遺伝子修飾段階にて、各種重亜硫酸塩等の試薬が少なくとも用いられる。次に、メチル化シトシン含有判定段階では、メチル化シトシンをPCRにより検出する方法を用いる場合には、メチル化配列特異的プライマー、およびTaq DNAポリメラーゼ反応試薬が少なくとも用いられる。また、遺伝子の塩基配列の決定によりメチル化シトシンを検出する方法、あるいはシトシンを含む塩基配列を認識する方法では、各具体的な方法に応じて公知の試薬類を用いる。
【0146】
このように、本実施の形態にかかる検出キットでも、前記実施の形態1の検出キットと同様、前述した造血器腫瘍細胞検出方法を実施するために好ましい薬剤や標本等が含まれている。そのため、上記検出キットを用いることで、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法を容易かつ簡素に実施することができ、本発明を臨床検査産業や医薬品産業等の産業レベルで利用することが可能となる。
【0147】
なお、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれることはいうまでもない。
【0148】
【実施例】
以下、図48ないし図52に基づいて、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0149】
〔実施例1〕
ナチュラルキラー細胞リンパ腫を含む検体試料を用い、Towbin H. et al: Proc.Natl.Acad.Sci.USA76,4350,(1979)に開示されている方法にしたがってウエスタンブロッティングを実施した。なお、SHP1抗体として#SH−PTP1(D−11):sc7289(Santa Cruz Biotechnology Inc.製)を用いた(SHP1遺伝子産物定量工程・蛋白質定量法)。
【0150】
その後、SHP1遺伝子メチル化確認工程に移行した。まず、メチル化感受性制限酵素としてHpaIIを用いて、上記検体試料から調製した遺伝子試料を37℃4時間で処理した(遺伝子切断試行段階)。
【0151】
次に、HpaIIで処理した遺伝子試料をPCRで増幅した(遺伝子増幅試行段階)。このとき用いたプラーマ−ペアは、配列番号7および図48(a)に示す19塩基のプライマーREP−S1と、配列番号8および図48(b)に示す20塩基のプライマーREP−AS1との組み合わせとした。このプライマーペアを用いた場合、配列番号9および図48(c)に示すように、SHP1遺伝子のセンス鎖の配列(配列番号1および図1〜図10参照)における、7441塩基から7566塩基までの126塩基の塩基配列が検出される。
【0152】
なお、図48(c)におけるカッコ内の「#(番号)」は、上記SHP1遺伝子のセンス鎖における塩基の位置を示しており、下線部はプライマーREP−S1およびREP−AS1の対応位置、並びにHpaIIの認識切断部位の位置を示している。また、プライマーREP−AS1は、上記REP−AS1の下線部の領域におけるアンチセンス鎖の配列に対してデザインされたものである。
【0153】
その後、アガロースゲルで電気泳動してから、得られたDNAバンドをナイロンメンブレンにブロッティングしてSHP1遺伝子の増幅を確認した(遺伝子増幅量確認工程)。
【0154】
次に、Towbin H. et al: Proc.Natl.Acad.Sci.USA76,4350,(1979)に開示されている方法にしたがってウエスタンブロッティングを実施した。なお、SHP1抗体として#SH−PTP1(D−11):sc7289(Santa Cruz Biotechnology Inc.製)を用いた(SHP1遺伝子産物定量工程・蛋白質定量法)。
【0155】
上記SHP1遺伝子メチル化確認工程とSHP1遺伝子産物定量工程との結果から検体試料中の造血器腫瘍細胞を検出した。
【0156】
〔実施例2〕
遺伝子増幅試行段階で、プライマーペアとして、配列番号10および図49(a)に示す21塩基のプライマーREP−S2と、配列番号11および図49(b)に示す21塩基のプライマーREP−AS2との組み合わせを用いた以外は、前記実施例1と同様にして検体試料中の造血器腫瘍細胞の有無を検出した。
【0157】
上記プライマーペアを用いた場合、配列番号12および図49(c)に示すように、SHP1遺伝子のセンス鎖の配列(配列番号1および図1〜図10参照)における、6858塩基から7084塩基までの227塩基の塩基配列を検出することができる。
【0158】
なお、図49(c)におけるカッコ内の「#(番号)」も、上記SHP1遺伝子のセンス鎖における塩基の位置を示しており、下線部はプライマーREP−S2およびREP−AS2の対応位置、並びにHpaIIの認識切断部位の位置を示している。また、プライマーREP−AS2は、上記REP−AS2の下線部の領域におけるアンチセンス鎖の配列に対してデザインされたものである。
【0159】
〔実施例3〕
RT−PCRによるmRNA定量法を用いてSHP1遺伝子産物定量工程を実施した以外は、前記実施例1と同様にして検体試料中の造血器腫瘍細胞の有無を検討した。
【0160】
すなわち、前記検体試料から全細胞内のRNAを調製してから逆転写酵素により逆転写した。その後、SHP1特異的プライマーペアを用いてPCRにより増幅した。上記SHP1特異的プライマーペアとしては、配列番号13および図50(a)に示す23塩基のプライマーSHP−PF1と、配列番号14および図50(b)に示す25塩基のプライマーSHP−PR1との組み合わせを用いた。
【0161】
〔実施例4〕
real time RT−PCRによるmRNA定量法を用いてSHP1遺伝子産物定量工程を実施した以外は、前記実施例3(すなわち前記実施例1)と同様にして検体試料中の造血器腫瘍細胞の有無を検討した。上記SHP1特異的プライマーペアとしては、配列番号15および図51(a)に示す20塩基のプライマーSHP−LF1と、配列番号16および図51(b)に示す20塩基のプライマーSHP−LR1を用いた。
【0162】
〔実施例5〕
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 9821−9826, (1996) に開示されている方法にしたがってメチル化特異的PCRを用いてSHP1遺伝子メチル化確認工程を実施した以外は、前記実施例1と同様にして検体試料中の造血器腫瘍細胞の有無を検討した。なお、重亜硫酸塩としては、重亜硫酸ナトリウムを用いた。
【0163】
また、上記メチル化特異的PCRにおけるプライマーペアとしては、配列番号17および図52(a)に示す24塩基のプライマーMF2と、配列番号18および図52(b)に示す21塩基のプライマーMR2との組み合わせを用いることができる。このプライマーペアを用いた場合、配列番号19および図52(c)に示すように、SHP1遺伝子のセンス鎖の配列(配列番号1および図1〜図10参照)における、7037塩基から7195塩基までの159塩基の塩基配列を検出することができる。
【0164】
なお、図52(c)におけるカッコ内の「#(番号)」は、上記SHP1遺伝子のセンス鎖における塩基の位置を示しており、下線部はプライマーMF2およびMR2の対応位置を示している。ただし、上記各プライマーはメチル化されているDNAのみを検出できるように設計されているので、その塩基配列は、上記下線部の塩基配列とは少し異なっている。また、プライマーMR2は、上記MR2の下線部の領域におけるアンチセンス鎖の配列に対してデザインされたものである。
【0165】
〔実施例6〕
検体試料として、診断用の骨髄(BM)検体と、ALL(急性リンパ芽球性白血病)患者の末梢血(PB)検体とを用いた。ALL患者から得られたBM検体は少なくとも70%の比で芽細胞を含んでいた。また、これら検体試料に対する対照試料は、化学療法によって達成された血液学的完全寛解の後に得られた。
【0166】
上記検体試料を用いてマイクロサテライト解析を行った。このときのPCR反応では、5’側のプライマーを、5’−iodoacatamidefluoresceinでラベルし、反応系は、10pmolのそれぞれのプライマー、40ngのゲノムDNA、1×PCRバッファー、200μMのそれぞれのdNTPと、0.5unitのTaq DNA polymeraseを含む20μlの系とした。得られたPCR産物は、ABI Prism 3100 DNA sequencer(Applied Biosystems, Foster City, CA)にかけ、Genescan Analysis software ver 3.7(Applied Biosystems)で解析を行った。
【0167】
その結果、図53(a)・(b)に示すように、D12S336マーカーおよびD12S356マーカーによってSHP1遺伝子のLOHの有無を確認できることがわかった。本実施例の結果では、これらマーカーのうちテロメア側のD12S356マーカーでは、有意な結果が得られた19症例中15例(79%)にLOHが認められた。また、セントロメア側のD12S336マーカーでは、16症例中6例(38%)にLOHが認められた。
【0168】
上記何れの実施例の結果も、検体試料から十分に造血器腫瘍細胞を検出することができた。それゆえ、本発明は、複数の診断手法を併用しなくても造血器腫瘍細胞を容易かつ迅速に検出することができることがわかった。
【0169】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法は、造血器細胞を含む検体試料中に含まれる、造血器細胞に特異的なSHP1蛋白質およびそのmRNAの少なくとも一方を定量するSHP1遺伝子産物定量工程と、上記検体試料から得られる、上記SHP1蛋白質をコードするSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認するSHP1遺伝子メチル化確認工程と、上記検体試料に含まれるSHP1遺伝子の異型接合性喪失(LOH)の有無を確認するSHP1遺伝子LOH確認工程とを含む方法である。
【0170】
また、本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出キットの好ましい一例としては、(1)造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体、および(2)シトシンを含む塩基配列を認識するメチル化感受性制限酵素と、SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれ、上記メチル化感受性制限酵素に認識される塩基配列を含む領域を増幅するPCR用のプライマーと、上記SHP1遺伝子のメチル化陽性及びメチル化陰性対照DNAとのうち、少なくとも一方を含む構成か、あるいは、(1)造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体、(2)遺伝子処理レベルまで精製された重亜硫酸塩と、該重亜硫酸塩で処理された遺伝子試料に含まれるSHP1遺伝子の塩基配列中のシトシンの有無の判定用プライマー、および(3)配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部を検出するPCR用のプライマーのうち、少なくとも何れか一つを含む構成か、または、造血器細胞を含む検体試料から造血器腫瘍細胞を検出するために用いられ、造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子を挟み込む2つのマイクロサテライト・マーカーの少なくとも一方の全長またはその一部を検出するPCR用のプライマーを含む構成を挙げることができる。
【0171】
本発明の方法または構成によれば、SHP1遺伝子の発現を、遺伝子DNAの修飾とmRNAと蛋白質と対立遺伝子の喪失という最大で四重のマーカーを用いて判定できることになる。すなわち、SHP1遺伝子の発現低下という一つの造血器腫瘍細胞特異的な現象を4段階で確認することができるため、非常に高い特異性で造血器腫瘍細胞を検出することができる。よって、本発明を用いることで、造血器細胞を含む微量の検体試料から造血器腫瘍細胞を容易かつ迅速に検出することができる。
【0172】
それゆえ、本発明における悪性リンパ腫・白血病の高感度検出法を用いると、一般集団検診による造血器腫瘍の早期発見、診断および治療後のモニタリングや再発の早期発見が可能になり、これら疾患を発症した家族等血縁者における発症危険度の予測等に本発明を利用することも可能となる。その結果、本発明を臨床検査産業や医薬品産業等の産業レベルで利用することが可能となるという効果を奏する。
【0173】
【配列表】
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<400> 19
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられるSHP1遺伝子ゲノムDNAのセンス鎖の塩基配列を示す塩基配列図である。
【図2】図1に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図3】図1・図2に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図4】図1〜図3に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図5】図1〜図4に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図6】図1〜図5に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図7】図1〜図6に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図8】図1〜図7に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図9】図1〜図8に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図10】図1〜図9に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図11】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられるSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列を示す塩基配列図である。
【図12】図11に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図13】図11・図12に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図14】図11〜図13に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図15】図11〜図14に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図16】図11〜図15に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図17】図11〜図16に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図18】図11〜図17に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図19】図11〜図18に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図20】図11〜図19に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図21】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられるSHP1遺伝子のcDNAの塩基配列を示す塩基配列図である。
【図22】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられるSHP1蛋白質の概略構造を示す模式図である。
【図23】図22に示すSHP1蛋白質のアミノ酸配列を示すアミノ酸配列図である。
【図24】図1に示すSHP1遺伝子のゲノムDNA(センス鎖)において、CpG島でメチル化されるCG配列の部位を示す塩基配列図である。
【図25】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられる重亜硫酸処理にて、シトシンがウラシルに変換される過程を示す化学反応説明図である。
【図26】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられる重亜硫酸処理により、シトシンがウラシルへ変換され、メチル化されたシトシンが変換されない状態を示す模式図である。
【図27】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられるSHP1遺伝子ゲノムDNAのセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列を示す塩基配列図である。
【図28】図27に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図29】図27・28に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図30】図27〜図29に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図31】図27〜図30に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図32】図27〜図31に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図33】図27〜図32に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図34】図27〜図33に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図35】図27〜図34に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図36】図27〜図35に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図37】本発明にかかる造血器腫瘍細胞検出方法で用いられるSHP1遺伝子ゲノムDNAのアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列を示す塩基配列図である。
【図38】図37に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図39】図37・図38に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図40】図37〜図39に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図41】図37〜図40に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図42】図37〜図41に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図43】図37〜図42に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図44】図37〜図43に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図45】図37〜図44に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図46】図37〜図45に示すSHP1遺伝子のゲノムDNAにおけるアンチセンス鎖に対して、重亜硫酸塩処理した後の塩基配列の続きを示す配列図である。
【図47】(a)〜(d)は、それぞれ本発明で用いられるメチル化特異的PCRのステップを示す模式図である。
【図48】(a)・(b)は、本発明の実施の一例である実施例1において用いられるPCR用プライマーを示す塩基配列図であり、(c)は、(a)・(b)で用いられるPCR用プライマーが認識するSHP1遺伝子(ゲノムDNA・センス鎖)の塩基配列を示す塩基配列図である。
【図49】(a)・(b)は、本発明の実施の一例である実施例2において用いられるPCR用プライマーを示す塩基配列図であり、(c)は、(a)・(b)で用いられるPCR用プライマーが認識するSHP1遺伝子(ゲノムDNA・センス鎖)の塩基配列を示す塩基配列図である。
【図50】(a)・(b)は、本発明の実施の一例である実施例3において用いられるRT−PCR用プライマーを示す塩基配列図である。
【図51】(a)・(b)は、本発明の実施の一例である実施例4において用いられるreal time RT−PCR用プライマーを示す塩基配列図である。
【図52】(a)・(b)は、本発明の実施の一例である実施例5において用いられるメチル化特異的PCR用プライマーを示す塩基配列図であり、(c)は、(a)・(b)で用いられるメチル化特異的PCR用プライマーが認識するSHP1遺伝子(ゲノムDNA・センス鎖)の塩基配列を示す塩基配列図である。
【図53】(a)は、蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)を示す図であり、(b)は、ALL患者におけるSHP1遺伝子の異型接合性喪失の解析結果の一つの典型的なデータを示す図である。

Claims (17)

  1. (1)造血器細胞を含む検体試料中に含まれる、造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子の塩基配列中に含まれるCpG島のメチル化を確認するSHP1遺伝子メチル化確認工程、
    (2)上記検体試料から得られるSHP1蛋白質およびSHP1mRNAの少なくとも一方の発現量を定量するSHP1遺伝子産物定量工程、および、
    (3)上記検体試料に含まれるSHP1遺伝子の異型接合性喪失(LOH)の有無を確認するSHP1遺伝子LOH確認工程、
    の少なくとも何れかを含むことを特徴とする造血器腫瘍細胞検出方法。
  2. 上記SHP1遺伝子メチル化確認工程には、
    上記検体試料から得られた遺伝子試料を、シトシンを含む塩基配列を認識するメチル化感受性制限酵素で処理する遺伝子切断試行段階と、
    上記メチル化感受性制限酵素で処理された遺伝子に対して、上記SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれ、上記メチル化感受性制限酵素に認識切断される塩基配列を含む領域を増幅するプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を実施する遺伝子増幅試行段階と、
    増幅された特定のサイズの遺伝子の量を確認する遺伝子増幅量確認段階とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  3. 上記プライマーが、さらに、配列番号1または2に示す塩基配列に含まれる部分塩基配列、またはこの部分塩基配列と相補性を有するポリヌクレオチドであることを特徴とする請求項2に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  4. 上記遺伝子増幅量確認段階では、電気泳動法を用いて特定サイズの遺伝子の量を確認することを特徴とする請求項2または3に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  5. 上記遺伝子切断試行段階では、制限酵素として、メチル化感受性制限酵素を用いることを特徴とする請求項2、3または4に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  6. 上記SHP1遺伝子メチル化確認工程には、
    上記検体試料から得られる遺伝子試料を、重亜硫酸塩で処理する遺伝子修飾段階と、
    重亜硫酸塩で処理された遺伝子試料に含まれる、SHP1遺伝子の塩基配列中のメチル化シトシンの有無を判定するメチル化シトシン含有判定段階とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  7. 上記メチル化シトシン含有判定段階では、PCRによりメチル化シトシンを検出する方法、遺伝子の塩基配列の決定によりメチル化シトシンを検出する方法、またはメチル化シトシンを含む塩基配列を識別する方法のうち、少なくとも何れかが用いられることを特徴とする請求項6に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  8. 上記遺伝子修飾段階では、重亜硫酸塩として、重亜硫酸ナトリウムが用いられることを特徴とする請求項6または7に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  9. 上記SHP1遺伝子産物定量工程では、SHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体を用いてSHP1蛋白質を定量することを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  10. 上記SHP1遺伝子産物定量工程では、酵素抗体法またはウエスタンブロッティング法によりSHP1蛋白質が定量されることを特徴とする請求項9に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  11. 上記SHP1遺伝子産物定量工程では、配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部を検出するポリヌクレオチドを用いてSHP1遺伝子のmRNAの発現を検出することにより、SHP1mRNAを定量することを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  12. 上記SHP1遺伝子産物定量工程では、ノーザンブロッティング法、逆転写PCR法、リアルタイムPCR法、またはRNA in situハイブリダイゼーション法によりSHP1遺伝子のmRNAの発現が検出されることを特徴とする請求項11に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  13. 異型接合性喪失の有無の確認は、上記SHP1遺伝子を挟み込む2つのマイクロサテライト・マーカーの少なくとも一方、または、上記SHP遺伝子中か、その近辺に存在する単一塩基多型のような遺伝子多型を、PCRを用いたフラグメント解析により実施されることを特徴とする請求項1ないし12の何れか1項に記載の造血器腫瘍細胞検出方法。
  14. 造血器細胞を含む検体試料から造血器腫瘍細胞を検出するために用いられ、
    (1)造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体、および
    (2)シトシンを含む塩基配列を認識するメチル化感受性制限酵素と、
    SHP1遺伝子の塩基配列中に含まれ、上記メチル化感受性制限酵素に認識される塩基配列を含む領域を増幅するPCR用のプライマーと、上記SHP1遺伝子のメチル化陽性及びメチル化陰性対照DNAとのうち、少なくとも一方を含むことを特徴とする造血器腫瘍細胞検出キット。
  15. 造血器細胞を含む検体試料から造血器腫瘍細胞を検出するために用いられ、
    (1)造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1蛋白質を抗原とするSHP1抗体、
    (2)遺伝子処理レベルまで精製された重亜硫酸塩と、該重亜硫酸塩で処理された遺伝子試料に含まれるSHP1遺伝子の塩基配列中のシトシンの有無の判定用プライマー、および
    (3)配列番号3に示すSHP1遺伝子cDNAの塩基配列の全長またはその一部を検出するPCR用のプライマーのうち、少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする造血器腫瘍細胞検出キット。
  16. 造血器細胞を含む検体試料から造血器腫瘍細胞を検出するために用いられ、
    造血器細胞に特異的なプロテインチロシンホスファターゼSHP1遺伝子を挟み込む2つのマイクロサテライト・マーカーの少なくとも一方の全長またはその一部を検出するPCR用のプライマーを含むことを特徴とする造血器腫瘍細胞検出キット。
  17. さらに、PCR用試薬、および、制限酵素反応用試薬の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項14、15または16に記載の造血器腫瘍細胞検出キット。
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