JP5008649B2 - オイル供給システム及び内燃機関のピストン - Google Patents

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本発明は、例えばオイルジェットからピストンの内側に噴射されたオイルをピストンスカート部のスラスト側と反スラスト側などに効率良く供給するオイル供給システム及び内燃機関のピストンに関する。
内燃機関のピストンにオイルを強制的に供給してピストンの冷却や潤滑を行うオイル供給装置としては、従来から種々提供されており、その一つとして以下の特許文献1に記載されたものがある。
概略を説明すれば、ピストンの冠部の上面と反対側の下面(天井面)の径方向における一端側にオイルジェットからオイルが吹き付けられ、前記天井面には、前記一端側から径方向における他端側に延びるリブが形成されている。
このリブは、前記一端側から他端側に向かうにしたがってピストン軸線方向における突出方向高さが徐々に高く形成されており、これによってピストンの軸線方向における突出高さが同じ場合に比較して、前記リブの下端縁部の位置が前記一端側から他端側に向かうにしたがってその高さが低くなるようになっている。
このため、オイルジェットから一端側に噴射されたオイルは、オイル溜部で落下が抑制されつつ前記リブを通って他端側へ良好に流動する。
特開2004−270489号公報
しかしながら、前記従来のオイル供給装置にあっては、前記一端側に噴射されたオイルはリブを介して他端側のみに供給されるだけとなる。したがって、ピストンの特に潤滑や冷却が必要な箇所へのオイルの供給不足になる虞がある。
請求項1に記載の発明は、オイル供給システムに関し、とりわけ、前記ピストンの上死点側と下死点側の移動位置でオイルがスラスト側に多量に供給され、ピストンの上死点側と下死点側との間の中間移動位置では反スラスト側に多量に供給されるように形成したことを特徴としている。
請求項2に記載の発明は、内燃機関のピストンであって、前記冠部の裏面側に、前記内燃機関のサイクル行程中のピストンの移動位置に応じてスラスト側と反スラスト側にオイルを誘導案内する凸部を設けると共に、前記凸部を、オイルがピストンの上死点側と下死点側の移動位置でスラスト側へ多く流れ、ピストンの上死点側と下死点側との間の中間移動位置では反スラスト側へ多く流れるように配置形成したことを特徴としている。
本発明によれば、ピストンが例えば上死点側あるいは下死点側に移動した時点では、例えばオイルジェットから噴射されたオイルは、冠部内の前記凸部の頂部を中心としたピストンスラスト側の傾斜状のガイド面か反スラスト側の傾斜状のガイド面に向かって噴射され、そのままいずれかの壁面上を伝って、連通路を介してオイルリング溝内に流入する。このため、ピストンスカート部の特に負荷の大きなスラスト側あるいは反スラスト側のオイルリングとシリンダ内壁面との摺動摩擦抵抗が小さくなると共に、スラスト側と反スラスト側の冷却効果が向上する。
以下、本発明に係るオイル供給システムをいわゆる4サイクル内燃機関のピストンに適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。
〔第1実施の形態〕
すなわち、内燃機関1は、図8に示すように、シリンダブロック2のクランクケース3で隔成されたクランク室4の内部にクランクシャフト5が図外の軸受けによって回転自在に支持されている。また、クランクケース3の上部に形成された円筒状のシリンダ壁6の内部には、前記クランクシャフト5とコンロッド7を介して連結されたピストン8が摺動自在に設けられている。
前記シリンダ壁6の壁内には、冷却水が循環するウォータジャケット9が形成されていると共に、前記クランクケース3とシリンダ壁6との間の隔壁10の内部には、図外のオイルポンプから吐出されたオイル(潤滑油)を各機関の各摺動部などに供給するメインオイルギャラリー11が形成されている。
そして、前記隔壁10の下部には、前記シリンダ壁6の内周面とピストン8との間などに冷却用及び潤滑用のオイルを供給するオイルジェット12がブラケット16を介してボルト13によって取り付けられている。
このオイルジェット12は、金属材によって形成されたボディ14と、基端部が前記ボディ14の周壁下端部に固定されて、先端部が上方へ折曲形成されたノズル15と、を備えている。そして、前記ボディ14の内部に前記メインオイルギャラリー11から供給されたオイルがボディ14内を摺動する図外のプランジャを介して前記ノズル15からピストン8の内部にオイルを噴射するようになっている。
前記ピストン8は、図1〜図6に示すように、アルミニウム合金材によってほぼ円筒状に一体に形成され、燃焼室17内の燃焼圧力を受ける比較的に肉厚の円盤状の冠部20と、該冠部20の下部に一体に形成され、前記シリンダ壁6の内周面6aに摺接する一対の第1、第2スカート部21、22と、同じく冠部20の下部に一体に形成され、前記各スカート部21、22の円周方向のほぼ90°位置に形成されたエプロン部23,24と、該エプロン部23,24のほぼ中央に形成されて、ピストンピン25の両端部を回転自在に支持する一対のピン孔26a、27aが穿設されたピンボス26、27と、を備えている。
前記冠部20は、外周面に上からトップリング溝27、セカンドリング溝28及びオイルリング溝29が各ランド部を介して形成されている。
前記トップリング溝27及びセカンドリング溝28は、図外のトップリング及びセカンドリングを保持し、これらは、燃焼室17で発生した燃焼ガスをシリンダ壁6の内周面との間を含めてシールして、ガスの吹き抜けによる出力低下を防止するようになっている。
一方、前記オイルリング溝29は、図外のオイルリングを保持し、前記シリンダ壁6の内周面に付着したオイルの燃焼室17への流入を阻止して、シリンダ壁6の下方から燃焼室17にオイルが上昇して燃焼するのを防止するようになっている。
前記両スカート部21、22は、比較的薄肉な円弧状に形成されて、ピストン8が上下に往復運動する際に、シリンダ壁6の内周面6aに摺接してピストン8のスムーズな移動を確保するもので、一方側の第1スカート部21が燃焼圧力によってシリンダ壁6の内周面に圧接して大きな負荷が作用するスラスト側となり、他方側の第2スカート部22がピストン8の上昇移動(上死点側)時にシリンダ壁6の内周面に圧接する反スラスト側となっている。
前記両ピンボス部26,27は、冠部20で受けた燃焼圧力を各ピン孔26a、27aを介してピストンピン25に伝達し、さらにここからコンロッド7に伝達するようになっている。
また、前記オイルリング溝29の前記各スカート部21,22が位置する部位には、図3及び図4に示すように、前記オイルリング溝29内とピストン8の内部とを連通する連通路である左右一対の連通孔30,30、31,31がそれぞれ径方向に沿って貫通形成されている。この各連通孔30,30、31、31は、前記各スカート部21,22の円周方向の範囲内に配置され、それぞれが互いに円周方向へ離間した位置に形成されている。
さらに、前記各連通孔30,30、31,31の間には、図3及び図4に示すように、第1、第2スリット32、33が形成されて、該各スリット32,33のそれぞれの両端部は各連通孔30,30、31,31に接続されている。
そして、前記冠部20の上面20aと反対側の裏面(天井面)20c側には、ピストン8の往復移動位置に応じて前記オイルジェット12のノズル15から噴射されたオイルを第1スカート部21側と第2スカート部22側に案内するガイド手段が設けられている。
このガイド手段は、図1、図5及び図6に示すように、第1スカート部21側に突設された凸部34と、該凸部34の頂部34aから第1スリット32方向へ下り傾斜状に形成された第1ガイド面である第1ガイド溝35と、前記頂部から第2スリット33方向へ下り傾斜状に形成された第2ガイド面である第2ガイド溝36とから主として構成されている。
前記凸部34は、図1に示すように、第1スカート部21寄りに近接配置されて、第1スカート部21の円周方向両端部、つまり前記2つのエプロン部23,24の対向端部側へ円弧状に延出形成されていると共に、横断面が比較的なだらかな曲線のほぼ円弧状に形成されている。
前記第1ガイド溝35は、凸部34の円弧状外周縁34aからさらに凹状に切欠形成されて、凸部34と同じく前記第1スリット32に沿った円弧状に形成されていると共に、ほぼ底部付近で前記第1スリット32に連通している。
一方、前記第2ガイド溝36は、図1、図5及び図6に示すように、両ピンボス25,26の間の前記凸部34の内端縁34bから第2スカート部22方向へ延出した肉盛り部37の幅方向のほぼ中央位置に形成されて、横断面がなだらかなほぼV字形の凹状(樋状)に形成されている。また、この第2ガイド溝36は、前記凸部34の内端縁34aの長手方向のほぼ中央位置から第2スカート部22方向へ延設されて、その最下位置となる終端縁36aが前記裏面20cになだらかに接続されて前記第2スリット33方向に指向している。つまり、この第2ガイド溝36の終端縁36aは、両ピンボス25,26間の裏面20cに滑らかに接続されてオイルを裏面20c上に広く供給すると共に、第2スリット33を介して第2スカート部22側のオイルリング溝29内に案内するように形成されている。
また、前記凸部34は、その形成位置が前記ピストン8の上死点側と下死点側で前記オイルジェット12のノズル15の噴射方向(延長方向)が第1ガイド溝35側の凸側面方向になるように設定され、前記ピストン8の上死点側と下死点側との間の中間移動位置では、第1ガイド溝36側の凸側面方向になるように設定されている。
したがって、この実施形態によれば、内燃機関の始動後の4サイクル行程(吸入−圧縮−燃焼−排気)時において、ピストン8が上死点側と下死点側、つまり上死点付近と上死点までの間及び下死点付近と下死点までの間では、前記オイルジェット12から噴射されたオイルは、図7Aの矢印に示すように、前記凸部34の第1ガイド溝35側の凸側面に衝突して第1ガイド溝35内に集中的に流入して捕集される。したがって、かかる第1スカート部21の周囲が効果的に冷却される。
その後、オイルは、第1ガイド溝35の底面に案内されながら第1スリット32を通ってオイルリング溝29内に供給される。このため、第1スカート部21側のオイルリングとシリンダ壁6の内周面との間にオイルが強制的に供されることから、かかるシリンダ壁6の内周面6aとの摺動部位の潤滑性能が向上する。
この第1スカート部21は、燃焼行程時に冠部上面20aに作用する大きな燃焼圧力を受けて、外周面がシリンダ壁6の内周面に強く圧接して負荷が大きくなることから、前記潤滑性能の向上によってピストン8をスムーズに摺動させることが可能になる。
しかも、前記凸部34と第1ガイド溝35とは第1スカート部21の近傍に形成されて、オイルジェット12からのオイルを即座に第1スカート部21側に供給するため、負荷が大きくかかる第1スカート部21の冷却と潤滑を一層速やかにかつ効果的に行うことができる。
また、前記凸部34及び第1ガイド溝35は、第1スリット32の円周方向に沿って円弧状に形成されていることから、凸部34に噴射されたオイルは、それぞれの円弧形状に沿って拡がりながら第1スリット32全体からオイルリング溝29内に集中的に供給される。よって、オイルリングの円周方向、つまり第1スカート部21の円周方向へ多くのオイルを供給することが可能になるので、摺動部位の冷却と潤滑性がさらに向上する。
一方、ピストン8の上死点付近から下死点付近までの中間移動位置では、前記オイルジェット12から噴射されたオイルは、図7Bの矢印に示すように、前記凸部34の第2ガイド溝36側の凸側面に衝突して第2ガイド溝36から第2スカート部22の周囲を効果的に冷却する。
その後、オイルは、第2ガイド溝35の底面に沿って案内されながら第2スリット33を通ってオイルリング溝29内に供給される。このため、第2スカート部22側のオイルリングとシリンダ壁6の内周面との間に強制的に供給されることから、負荷が大きく掛かる第2スカート部22側の摺動部位の潤滑性能が向上する。
また、前記第2ガイド溝35に案内されて流動したオイルは、冠部20の裏面20cのほぼ全体に流れて冠部20全体を冷却することから、かかる冷却効果が大きくなる。
しかも、凸部34から第2ガイド溝36を介して裏面20cに案内されたオイルは、ピストンピン25の上面にも滴下して該ピストンピン25に両端部と各ピン孔26a、27aの内周面との間にも積極的に供給されることから、ピストンピン25が各ピン孔26a、27aに回転自在に支持される構造のものにあっては、該両者間の潤滑性も向上する。
また、前記凸部34と肉盛り部37の存在によって冠部20の剛性が高くなり燃焼圧力などに対する耐久性が向上する。
以上のように、ピストン8の往復移動位置に応じて、オイルジェット12から噴射されたオイルによって、負荷の大きな第1スカート部21側の効果的な冷却と潤滑が行えると共に、冠部20全体の冷却と潤滑を効率良く行うことができる。
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、ピストン8を鉄系金属で成形した場合や、2サイクルの内燃機関にも適用することが可能である。
また、凸部34の高さはピストンの大きさや仕様に応じて自由に設定することができる。さらにオイルジェット以外の供給機構を設けることも可能である。
本発明にかかる内燃機関のピストンを示す縦断面図である。 本実施形態のピストンの正面図である。 本実施形態のピストンの右側面図である。 本実施形態のピストンの左側面図である。 本実施形態のピストンの底面図である。 図2のA−A線断面図である。 A、Bは本実施形態のオイルジェットの噴射方向を示す説明図である。 本実施形態のピストンが適用される内燃機関の概略図である。
符号の説明
1…内燃機関
4…クランク室
8…ピストン
12…オイルジェット
20…冠部
20a…上面
20c…裏面
21…第1スカート部
22…第2スカート部
23・24…エプロン部
25…ピストンピン
26・27…ピンボス部
26a・27a…ピン孔
29…オイルリング溝
30・31…連通孔(連通路)
32,33…第1,第2スリット
34…凸部
35…第1ガイド溝
36…第2ガイド溝
37…肉盛り部

Claims (11)

  1. 冠部の外周に有するオイルリング溝と、該オイルリング溝のスラスト側と反スラスト側に前記冠部の内側とオイルリング溝とを連通する連通路と、を備えた内燃機関のピストンにオイルを供給するオイル供給システムであって、
    前記ピストンの上死点側と下死点側の移動位置でオイルがスラスト側に多量に供給され、ピストンの上死点側と下死点側との間の中間移動位置では反スラスト側に多量に供給されるように形成したことを特徴とするオイル供給システム。
  2. 冠部の外周に有するオイルリング溝と、該オイルリング溝のスラスト側と反スラスト側に前記冠部の内側とオイルリング溝とを連通する連通路と、を備えた内燃機関のピストンであって、
    前記冠部の裏面側に、前記内燃機関のサイクル行程中のピストンの移動位置に応じてスラスト側と反スラスト側にオイルを誘導案内する凸部を設けると共に
    前記凸部を、オイルがピストンの上死点側と下死点側の移動位置ではスラスト側へ多く流れ、ピストンの上死点側と下死点側との間の中間移動位置では反スラスト側へと多く流れるように配置形成したことを特徴とする内燃機関のピストン。
  3. 請求項2に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記連通路を、ピストンの円周方向に離間して少なくとも一対ずつ設けたことを特徴とする内燃機関のピストン。
  4. 請求項3に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記各一対の連通路を、前記ピストンのスカート部の前記スラスト側と反スラスト側に、該スカート部の周方向の範囲内に設けたことを特徴とする内燃機関のピストン。
  5. 請求項4に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記各一対の連通路のそれぞれの間に、スリットが前記オイルリング溝に沿ってそれぞれ形成されていることを特徴とする内燃機関のピストン。
  6. 冠部の外周に有するオイルリング溝と、該オイルリング溝のスラスト側と反スラスト側に前記冠部の内側とオイルリング溝とを連通する連通路と、を備えた内燃機関のピストンであって、
    前記冠部の上面と反対側の裏面側に、クランクシャフト方向へ突出した凸部が形成され、
    該凸部は、オイルジェットからのオイル供給方向の位置に形成されていると共に、頂部から前記連通路に向かって下り傾斜状の第1ガイド面と、頂部からピストンの中心に向かって下り傾斜状の第2ガイド面とを有し、前記オイルジェットからのオイルがピストンの上死点側と下死点側の移動位置では前記第1ガイド面へ多く流れ、ピストンの上死点側と下死点側との間の中間移動位置では前記第2ガイド面へと多く流れるように配置されていることを特徴とする内燃機関のピストン。
  7. 請求項2〜のいずれか一項に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記凸部を、冠部裏面上にピストンの円周方向に沿って円弧状に形成したことを特徴とする内燃機関のピストン。
  8. 請求項2〜7のいずれか一項に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記凸部を横断面円弧状に形成したことを特徴とする内燃機関のピストン。
  9. 請求項〜8のいずれか一項に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    ピストンピンの両端部を支持する一対のピンボス部を有すると共に、前記冠部裏面の前記両ピンボス部の間に凹部を形成したことを特徴とする内燃機関のピストン。
  10. 請求項に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記凸部は、ピストンの上死点側と下死点側の移動位置でオイルジェットからのオイル供給方向の延長線が前記第1ガイド面に指向した位置となり、ピストンの上死点側と下死点側との間の中間移動位置では前記オイル供給方向の延長線が第2ガイド面に指向した位置となるように構成されていることを特徴とする内燃機関のピストン。
  11. 請求項10に記載の内燃機関のピストンにおいて、
    前記凸部はスラスト側に設けられていることを特徴とする内燃機関のピストン。
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