JP5008356B2 - ヒスタミン遊離抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ヒスタミン遊離抑制作用を有する抗アレルギー物質を有効成分として含有する抗アレルギー剤、ならびに該抗アレルギー物質を含有する飲食品および化粧料に関する。
花粉症やアレルギー性鼻炎といったアレルギー反応は近年大きな社会問題になっている。これは抗原の侵入により産生されたIgE抗体が肥満細胞上のFcレセプターに結合し、再び侵入した抗原がIgE抗体と結合し、肥満細胞や好塩基球内顆粒中のヒスタミンなどの化学物質が遊離され、炎症反応を引き起こすものである。従って、上記経路のいずれかを切断することによってアレルギー反応を防ぐことが可能となる。
天然物由来物質の抗アレルギー効果については幾つかの報告がなされている。例えば、ポリフェノール類を主体とする茶葉抽出物(特許文献1参照)、シソ種子またはエゴマ種子のアルコール抽出物(特許文献2参照)、リンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、大麦、グァバ、ホップ、小豆または松樹皮由来のポリフェノール(特許文献3参照)などの抗アレルギー効果が報告されている。
特開2002−12545号公報 特開2000−86510号公報 特開2005−82497号公報
本発明の目的は、ヒスタミン遊離抑制作用の強い新規な抗アレルギー物質を含有する抗アレルギー剤、ならびに該抗アレルギー物質を含有する飲食品および化粧料を提供することである。
本発明者らは、新規な抗アレルギー物質を探索するべく研究を重ねる中で、アレルギー症状の治療に有効な指標をヒスタミン遊離抑制活性として探索したところ、カカロールがヒスタミン遊離抑制活性を有すること、および抗アレルギー物質として有用であることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、「カカロールまたはその誘導体を有効成分とし、該誘導体は、メタノール若しくはエタノールとの縮合反応によって生じるカカロールのエーテル又はギ酸若しくは酢酸とのエステル化反応で生じるカカロールのエステルである、ヒスタミン遊離抑制剤」を提供することにより、上記目的を達成したものである。
本発明によれば、ヒスタミン遊離を有効に抑制することができ且つ安全性の高い抗アレルギー物質を含有する抗アレルギー剤、飲食品および化粧料が提供される。
まず、本発明の抗アレルギー剤について説明する。
本発明の抗アレルギー剤の有効成分であるカカロールは、下記の構造式で表される化合物である。
Figure 0005008356
カカロールはI型アレルギー反応におけるヒスタミン遊離を抑制する作用を有する。したがってカカロールを有効成分とする本発明の抗アレルギー剤は、I型アレルギー反応に起因するアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症またはアレルギー性喘息などの予防、治療に特に有用である。
上記カカロールは、抗アレルギー物質としての活性を有する限り、その構造の一部が改変あるいは修飾されている誘導体であってもよい。斯かるカカロールの誘導体としては、例えば、エーテルやエステル等が挙げられる。
上記のカカロールのエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、メタノールやエタノールなどのアルコールとの縮合反応によって生じるものなどが挙げられる。
上記のカカロールのエステルは、ギ酸、酢酸などのカルボン酸とのエステル化反応で生じるエステルであれば特に限定されない。
本発明の抗アレルギー剤の有効成分である上記のカカロールおよびその誘導体は、その製造法や由来に特に制限されるものではなく、カカロールを含有する生物から精製する方法や化学合成法など、各種の方法により製造されたものを用いることができる。
カカロールは、植物、例えば山菜類、野菜類、具体的にはしどけ(もみじがさ)より抽出することができる。しどけからカカロールを抽出する際は、しどけの葉からエタノール、メタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、水およびこれらの混合物からなる群から選択されたものを抽出溶媒として加えて10〜80℃の温度下で0.5〜48時間程度抽出を行うとよい。得られた抽出物を高速液体クロマトグラフィーに供し、分画した各画分のヒスタミン遊離抑制活性を確認して活性の特に高かった画分を採取し、当該画分に含まれる化合物を精製することによってカカロールを得ることができる。なお、本発明の有効成分である抗アレルギー物質のカカロールおよびその誘導体は、精製物に限るものではなく、カカロールまたはその誘導体を含む抽出物もしくは粗精製物であってもよい。
本発明の抗アレルギー剤は、上記のカカロールまたはその誘導体を、単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
本発明の抗アレルギー剤は、種々のアレルギー疾患の予防剤または治療剤、抗炎症剤、ヒスタミン遊離抑制剤として有用である。
本発明の抗アレルギー剤は、上記のカカロールまたはその誘導体をそのまま抗アレルギー剤としてもよく、また必要に応じて薬学的に許容される種々の担体、賦形剤、その他の添加剤、その他の成分を配合して製剤化することによって、抗アレルギー剤とすることができる。この抗アレルギー剤の剤型は、特に限定されるものではなく、錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤などの経口剤、軟膏、ローション、ゲル、点眼剤、点鼻剤などの非経口剤などが挙げられ、常法により製剤化することができる。また、他の成分として、その他の抗アレルギー作用を有する成分、抗炎症薬、各種ビタミン類、生薬、ミネラル類を適宜配合することができる。
本発明の抗アレルギー剤中の上記のカカロールまたはその誘導体の含有量は、ヒスタミン遊離を抑制しうる量であればいかなる量であってもよく、使用形態、抗アレルギー剤の剤型、投与または摂取する者の症状や年齢性別などによって適宜変えることができる。本発明の抗アレルギー剤を経口投与させる場合には、1人1日当たりのカカロールまたはその誘導体の投与量が0. 1〜2500mgとなるように含有させることが好ましい。非経口投与させる場合には、カカロールまたはその誘導体を0. 01〜250mg/cm2 の範囲内で皮膚または粘膜に滴下、塗布または噴霧されるように含有させることが好ましい。
次に、本発明の飲食品および化粧料について説明する。
本発明の飲食品および化粧料は、上記のカカロールまたはその誘導体を含有するものであり、抗アレルギー性を有する。
飲食品の種類としては、清涼飲料、ジュース、栄養ドリンクなどの飲料、パン類、麺類、タブレット、キャンディーなどの菓子類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、化粧料の種類としては、クリーム、ローション、エッセンス、入浴剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の化粧料には、通常、化粧品に用いられる成分(例えば、各種の生薬エキス、油性成分、保湿成分、増粘剤、乳化剤、角層剥離剤、防腐剤、キレート剤など)を配合することができる。例えば、油性成分としては、炭化水素類、各種の合成エステル類、ロウ類、油脂類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン類などが挙げられる。
カカロールまたはその誘導体の飲食品または化粧料への添加時機は、特に制限されるものではなく、飲食品または化粧料の製造工程中に添加してもよく、製造された飲食品または化粧料に添加してもよい。
本発明の飲食品および化粧料中の上記のカカロールまたはその誘導体の含有量は、特に制限されるものでなく、飲食品や化粧料の種類などによって適宜変化させることができるが、飲食品の場合は、1人1日当たりのカカロールまたはその誘導体の摂取量が0. 1〜2500mgとなるように含有させることが好ましく、化粧料の場合は、カカロールまたはその誘導体を0. 01〜250mg/cm2 の範囲内で皮膚または粘膜に滴下、塗布または噴霧されるように含有させることが好ましい。
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
もみじがさ(別名しどけ)1 kgを細断後、凍結乾燥した。これをミキサーで粉末化した後、抽出溶媒1Lを加え、室温で3時間撹拌抽出した。これをろ過後、減圧濃縮した後、シリカゲルカラム (Merck, silicagel 60,直径50mm×長さ300mm)の上部にチャージし、展開溶媒で展開した。その結果、純粋な活性物質を得た。次にEI−MS,NMR解析により同定を行った。 1H−NMRスペクトルを図1に、13C−NMRスペクトルを図2に、EI−MSを図3に、それぞれ示した。以上により、得られた活性物質がカカロールであることを確認した。また、各段階で得られた画分のヒスタミン遊離抑制活性の測定は、実施例2に記載の方法により行なった。
なお、上記の抽出溶媒としては、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、水およびこれらの混合物からなる群から選択されたものが用いられ、また上記の展開溶媒としては、へキサン、ジクロロメタン、クロロホルムおよびこれらの混合物からなる群から選択されたものが用いられる。
〔実施例2〕(ヒスタミン遊離抑制活性試験)
実施例1で得られたカカロールについて下記の試験方法により、ラット由来好塩基球白血病細胞(RBL−2H3)を用いた抗アレルギー試験を行った。
試験方法
(1) 脱顆粒
RBL−2H3細胞を、10%ウシ胎児血清(JRH バイオサイエンス社製)含有ダルベッコ改変イーグル培地(シグマ社製)にてCO2 濃度5%、37℃の条件で前培養を行う。前培養後、常法に従い、EDTA・トリプシン溶液を用いて細胞を剥がし、遠心分離により細胞を集める。24ウェルの培養プレートに収集したRBL−2H3細胞を2.0×105cell /wellになるように各ウェルに播種し、37℃で12時間培養する。培養後、培地を除去し、50ng/mlの抗DNP−IgE抗体を1ウェル当たり1ml添加し、37℃で2時間、細胞を感作させる。ウェルを修正タイロード液(以下、MTと称する)で2回洗浄した後、これに表1に示す濃度で被検試料を溶解させたMTを1ml加えて37℃で10分間培養する。対照として、被検試料を含まないMTを1ml加えて37℃で10分間培養する。これらにDNP−HAS抗原(シグマ社製)を50ng/mlになるように加え、さらに37℃で30分間培養後、培養上清を回収する(以下、培養上清を上清液と称する)。また、ウェル中の細胞に、TritonX−100を0. 1%含有するMTを100μl加え、細胞を溶解させる(以下、この溶解液を細胞液と称する)。
(2) ヒスタミン量の測定
上清液と細胞液それぞれ100μlに0. 1M塩酸を100μlずつ加え、15, 000rpm、室温で10分間遠心分離する。
得られた遠沈上清液をHPLCにより分離し、得られたヒスタミンのピーク面積を測定する(ヒスタミンのピークの位置は、ヒスタミン標品を流して確認する)。
HPLCの条件は以下の通りである。
カラム: shodex Asahipak ODP50 4E (4.6×250mm 昭和電工社製) にガードカラム
shodex Asahipak ODP50G 4A (昭和電工社製) を連結
移動相:アセトニトリル(180ml), 50mMホウ化ナトリウム(820ml),
o−フタルアルデヒド(134mg), N-アセチルシステイン(215mg)
流速:0. 5ml/分
カラム温度:40℃
検出:励起波長330nm,測定波長430nm
測定したヒスタミンのピーク面積により、ヒスタミン放出率(%)を下式により算出する。
〔上清液ピーク面積/(細胞液ピーク面積+上清液ピーク面積)〕×100
得られたヒスタミン放出率により、ヒスタミン放出抑制率(%)を下式により算出する。
〔(対照放出率−試験品放出率)/対照放出率〕×100
このようにして得られたヒスタミン放出抑制率(%)を表1に示す。
Figure 0005008356
カカロールのヒスタミン放出抑制率を、抗アレルギー剤として公知であるフマル酸ケトチフェンと比較したところ、表1に示すように、カカロールのIC50(50%放出抑制率)が10.4μg/mlであるのに対してフマル酸ケトチフェンのIC50は25.3μg/mlであった。よってカカロールが抗アレルギー剤またはヒスタミン遊離抑制剤として有用であることが示された。
次に、本発明の抗アレルギー剤、飲食品および化粧料の製造例を示す。
〔実施例3〕(錠剤)
実施例1で得られたカカロール 5 g
トウモロコシデンプン 10 g
乳糖 40 g
カルボキシメチルセルロースカルシウム 8 g
微結晶セルロース 27 g
ポリビニルピロリドン 7 g
ステアリン酸マグネシウム 3 g
合計 100 g
実施例1で得られたカカロールをエタノールに溶解し、次いでこれを微結晶セルロースに吸着させた後、乾燥する。これにトウモロコシデンプン、乳糖、カルボキシメチルセルロースカルシウムを混合し、次いでポリビニルピロリドンの水溶液を結合剤として加えて常法により顆粒化する。これに滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを加えて混合した後、1錠100mgの錠剤に打錠する。
〔実施例4〕(硬カプセル剤)
実施例1で得られたカカロール 10 g
微結晶セルロース 55 g
トウモロコシデンプン 25 g
乳糖 30 g
ポリビニルピロリドン 4 g
ステアリン酸マグネシウム 1 g
合計 125 g
上記成分を常法により顆粒化した後、ゼラチン硬カプセルに充填する。
〔実施例5〕(散剤)
実施例1で得られたカカロール 50 g
微結晶セルロース 600 g
トウモロコシデンプン 300 g
ポリビニルピロリドン 50 g
合計 1000 g
実施例1で得られたカカロールをエタノールに溶解し、次いでこれを微結晶セルロースに吸着させた後乾燥し、破砕する。これをトウモロコシデンプンおよびポリビニルピロリドンと混合し、常法により散剤とする。
〔実施例6〕(顆粒剤)
実施例1で得られたカカロール 10 g
乳糖 130 g
トウモロコシデンプン 87 g
ポリビニルピロリドン 8 g
L−メントール 15 g
軽質無水ケイ酸 5 g
合計 255 g
上記の処方で、実施例1で得られたカカロール、乳糖、トウモロコシデンプンおよびポリビニルピロリドン水溶液を混合し、造粒機にて攪拌下加熱造粒する。冷却後、粒度500μm以下に篩分けし、L−メントールを加えた後、無水ケイ酸を加え、混合し分包(1. 0g)して顆粒剤とする。
〔実施例7〕(キャンディー)
砂糖 50 g
水飴 33 g
クエン酸 2 g
香料 0. 2g
実施例1で得られたカカロール 1. 5g
水 13.3g
合計 100. 0g
砂糖、水飴および水を鍋に入れて煮沸して溶解させ、煮沸温度が125℃に達した後、火から下ろし、香料、実施例1で得られたカカロールを添加する。撹拌しながら冷却板に流し込み、80℃まで冷却した後に、棒状にして適当な長さに切断して、一粒当たり3.33gのキャンディーを製造する。
〔実施例8〕(ロールパン)
小麦粉(強力粉)150gとドライイースト2gを混ぜる。別に、実施例1で得られたカカロール2g、砂糖20g、食塩3g、脱脂粉乳6gを温湯70gに溶かし、鶏卵1個を添加してよく混ぜる。これを小麦粉とドライイーストとの混合物に加え、手でよくこねた後、バター40gを加えてさらに手でよくこね、8個のロールパン生地を作る。次いで、発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で約15分焼成し、ロールパンを製造する。このロールパンは、1個当たり実施例1で得られたカカロールを約250mg含有する。
〔実施例9〕(うどん)
水150gに実施例1で得られたカカロール10gおよび食塩15gを分散させたものを、小麦粉(中力粉)300gに良く混ぜた後、こねて寝かす。この後、生地を圧延し、幅約5mmで切断してうどんを製造する。これを沸騰したお湯で約10分茹でたところ、外観、味、食感ともに良好であった。このうどんは、1食分当たり実施例1で得られたカカロールを約1.2g含有する。
〔実施例10〕(果汁ゼリー)
オレンジ果汁200mlに対して、ゼラチン4. 5g、砂糖45g、水15gをとり、火にかけ、ゼラチンを完全に溶かす。ゼラチンが溶けたことを確認後、実施例1で得られたカカロール3gをよく混ぜて溶解させる。この後、これを4個分のカップに流し込み、冷蔵庫で2時間以上冷やして固め、オレンジ果汁ゼリーを得る。
〔実施例11〕(青汁)
実施例1で得られたカカロール15gとオーガニック青汁(日清ファルマ社製)585gを良く混ぜ、この後、1食分当たり約3gのスティック包装の青汁を得る。
〔実施例14〕(クリーム)
A スクワラン 20 g
オリーブ油 8 g
精製蜜蝋 5 g
グリセリンモノステアレート 3 g
セトステアリルアルコール 2 g
B ポリオキシエチレン硬化ひまし油 3 g
実施例1で得られたカカロール 2 g
グリセリン 10 g
精製水 適量
A液とB液を80℃に加温する。撹拌しながらA液にB液を加え、均一になるまで乳化させ、クリームとする。
〔実施例12〕(入浴剤)
グリセリンモノステアレート 10 g
グリセリン 50 g
米糠エキス 10 g
実施例1で得られたカカロール 10 g
香料 0. 1g
色素 0. 1g
精製水 20 g
合計 100. 2g
全成分を混合し、ホモミキサーで乳化して入浴剤を調製する。
実施例1で得られたカカロールの 1H−NMRスペクトルである。 実施例1で得られたカカロールの13C−NMRスペクトルである。 実施例1で得られたカカロールのEI−MSである。

Claims (1)

  1. カカロールまたはその誘導体を有効成分とし、該誘導体は、メタノール若しくはエタノールとの縮合反応によって生じるカカロールのエーテルまたはギ酸若しくは酢酸とのエステル化反応で生じるカカロールのエステルである、ヒスタミン遊離抑制剤。
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