JP5005965B2 - 硬化性樹脂組成物及び室温硬化性接着剤組成物 - Google Patents
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Description
ここで、異種材料を貼り合わせるための接着剤には、主に次のような性能が求められる。すなわち、(1)各種被着材に対して良好な接着性を有すること、(2)被着材が多孔質、非多孔質に関わらず良好な硬化性を有すること、(3)互いに熱膨張係数が異なる材料同士の貼り合わせであっても応力を緩和できる強靱且つ柔軟な硬化皮膜であること、等である。このような性能を満足すべく、様々な検討が行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらの要求性能を考えた場合に、従来の接着剤ではそれぞれ以下のような問題点があった。
変成シリコーン/エポキシ系接着剤は、その硬化機構の一部(具体的には変成シリコーン樹脂の硬化機構)が湿気硬化機構であるため、貼り合わせ面積が比較的大きく、中でも非多孔質被着材の場合には、貼り合わせ後湿気が供給されにくい被着材中央部の硬化性(内部硬化性)が悪い、という問題があった。また、貯蔵中に混入した水分により変成シリコーン樹脂が反応して増粘する、等の問題もあった。
二液混合反応型であるウレタン系接着剤では、柔軟な皮膜が得られにくい、混入した湿気とイソシアネート基との反応による発泡によって皮膜強度が低下する、貯蔵中に混入した水分によりイソシアネート化合物が反応して増粘する、等の問題があった。
SGA系接着剤ではそのような問題はないものの、独特の臭気がある、等の問題を抱えていた。そこで、これら従来型の接着剤に替わる新たな硬化機構を有する接着剤が求められていた。
また、分子末端に環状カーボネート基を有する化合物が提案されている(特許文献4)。しかしながら、これらの提案では環状カーボネート化合物をポリウレタンの原料として使用されているにすぎなかった。
分子内に下記一般式(1)で示される数平均分子量1000〜20000のポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物から合成されるウレタンプレポリマーとグリセリンカーボネートとの反応により合成される二つ以上の五員環カーボネート基及びウレタン結合を有する化合物(A)と、分子内に二つ以上のエポキシ基を有する化合物(B)と、分子内に二つ以上の第一級アミノ基を有する化合物(C)とからなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
一般式(1):
すなわち、化合物(A)と化合物(C)とが反応することによって、極性基であるウレタン結合及び水酸基が生成する。これによって、各種プラスチック類等への密着性・接着性が確保されると考えられる。一方で、化合物(B)と化合物(C)との反応は従来知られているエポキシ樹脂の硬化機構と同様であり、これによって得られる硬化皮膜の強靱性が向上する。また、この効果は、化合物(A)として、さらにその分子内にウレタン結合を有するものを用いることによって、接着性がさらに向上する(第1の発明)。
本発明における、環状五員環カーボネート結合を有する化合物(A)は、ジオールとホスゲンとの反応によるもの(参考文献、B.M.Trost and D.M.T.Chan., 48, 3346 (1983)他)、オキシランとβラクトンとの反応(T.Nishikubo, T.Iizuka, M.Iida and N.Isobe, Tetrahedron Lett., 27. 3741
(1986))、オキシランと二酸化炭素による反応(W.J.Peppel, Ind. Eng. Chem., 50,
767 (1958)、Nobuhiro Kihara and Takeshi Endo, Macromolecules.,
25, 4824 (1993))などによって合成できる。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(a1)は、ポリオール化合物(i)とポリイソシアネート化合物(ii)から従来公知の定法により合成することができる。
ポリオール化合物(i)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等の従来公知のポリオール化合物が例示される。これらポリオールは、一種単独を用いてもよく、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
また、化合物(A)の主鎖骨格(すなわち残基X又はY)の分子量が500以上となるようなポリオール化合物(i)を選択することが、これらの効果をさらに明確するのでさらに好ましい。
ポリイソシアネート化合物(ii)としては、分子内に複数のイソシアネート基を有する従来公知のポリイソシアネート化合物、すなわち、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物が代表的なものとして挙げられる。
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート
1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート
1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,3−/1,4−キシリレンジイソシアネート(混成体)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−/1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン(混成体)
m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート
リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8−トリイソシアネートオクタン、1,6,11−トリイソシアネートウンデカン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアネートヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアネートメチルオクタン
1,3,5−トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、3−イソシアネート−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2−(3−イソシアネートプロピル)−2,5−ジ(イソシアネートメチル)−ビシクロ [2,2,1] ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ [2,2,1] ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−3−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ [2,2,1] ヘプタン、5−(2−イソシアネートエチル)−2−イソシアネートメチル−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ [2,2,1] ヘプタン、6−(2−イソシアネートエチル)−2−(3−イソシアネートプロピル)−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン
トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、4,4’−ジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート
本発明における、分子内にエポキシ基を有する化合物(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アミンをエポキシ化したエポキシ樹脂、複素環を有するエポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、また3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の一分子中に一個以上のオキシラン環と一個以上のアルコキシシリル基を含有する化合物、等の従来公知のエポキシ基含有化合物が挙げられる。
化合物(B)の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、1〜200質量部が好ましく、2〜100質量部が特に好ましい。化合物(B)の配合量が、200質量部を超えるとプラスチック等に対する接着性が大きく低下する。
本発明における、第一級アミノ基を分子内に有する化合物(C)としては、従来公知のアミノ基を有する化合物を使用することができる。これらを例示すれば、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、2−ブチルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、アミルアミン、3−ペンチルアミン、イソアミルアミン、2−オクチルアミン等の脂肪族アミン類;3−メトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン等のアルコキシアルキルアミン類;ロジンアミン、N−メチル−3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ペンタエチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,9−ジアミノノナン、ノルボルナンジアミン、イソフォロンジアミン、ATU(3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、CTUグアナミン、ドデカン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、ラウリルアミノプロピルアミン、式 H2N(C2H4NH)nH(n≧5)で表わされる化合物(商品名:ポリエイト、東ソー株式会社製)、サンテクノジャパン株式会社製のジェファーミンD−230、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000(以上、いずれも商品名)等の分子末端に第1級アミノ基を有するポリオキシプロピレン等の分子内に複数のアミノ基を有するポリアミン化合物等が挙げられる。
化合物(C)は、化合物(A)及び化合物(B)と反応し、最終硬化物を与えるものである。化合物(C)は、所望の硬化皮膜物性を得るために適宜選択すればよく、さらにこれらは1種又は2種以上使用してもよい。
化合物(C)の配合量は、化合物(A)100質量部に対して、0.2〜100質量部が好ましく、0.5〜50質量部が特に好ましい。化合物(C)の配合量が、100質量部を超えると化合物(C)がブリードアウトする等の不具合が発生する場合がある。
本発明は、このような従来に類を見ない硬化機構並びに硬化性樹脂組成物(いわば「ウレタン・エポキシ・ハイブリッド」と呼ぶべき硬化機構並びに硬化性樹脂組成物)によるものであると、認識されるべきである。
(合成例1)
数平均分子量5,000のポリエーテルポリオール(商品名;PR5007、旭電化工業株式会社製、オキシプロピレン/オキシエチレン質量比(以下「PO/EO」と表記する)=3/7) 35質量部、平均分子量4,000のポリエーテルポリオール(商品名;P−28、三井化学ポリウレタン株式会社製、PO/EO=100/0) 700質量部、及びイソホロンジイソシアネート(商品名;デスモジュールI、住化バイエルウレタン株式会社製) 83質量部を窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、ポリオール化合物に対して10ppmのスズ触媒の存在下90℃で5時間反応させた。その後グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製) 50質量部を加え同温度でさらに3時間反応させた。反応後IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される吸収(2265cm−1)は観察されなかった。得られた樹脂を以下では「化合物(A1)」と称する。
数平均分子量10,000のポリエーテルポリオール(商品名;PML S4012、旭硝子ウレタン株式会社製、PO/EO=100/0) 500質量部及びイソホロンジイソシアネート(商品名;デスモジュールI、住化バイエルウレタン株式会社製) 22質量部を窒素雰囲気下にて撹拌混合しながら、ポリオール化合物に対して10ppmのスズ触媒の存在下90℃で5時間反応させた。その後グリセリンカーボネート(宇部興産株式会社製) 12質量部を加え同温度でさらに3時間反応させた。反応後IR測定を行ったところイソシアネート基に帰属される吸収(2265cm−1)は観察されなかった。得られた樹脂を以下では「化合物(A2)」と称する。
化合物(A)と比較実験するために、合成例1においてグリセリンカーボネートを加えない以外は同様に実験を行い、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを得た。得られた樹脂を以下では「化合物(U)」と称する。
(実施例1)
合成例1で合成した化合物(A1) 100質量部及びエピコート828(ジャパンエポキシレジン株式会社製/化合物(B)) 30質量部を混合し、これを「主剤1」とした。一方、「硬化剤1」としてノルボルナンジアミン(三井化学株式会社製)を用意した。
合成例1で合成した化合物(A1) 100質量部及びエピコート828(ジャパンエポキシレジン株式会社製/化合物(B)) 50質量部を混合し、これを「主剤2」とした。一方、「硬化剤1」としてノルボルナンジアミン(三井化学株式会社製)を用意した。
化合物(A1)、化合物(A2)、化合物(U)、主剤1〜2について、500mlガラス瓶に、上部空間を窒素置換せずにこれらを充填し、室温で1ヶ月間放置し、製造直後と1ヶ月貯蔵後の粘度変化を調べた。その結果を表1に示す。
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化合物/主剤 A1 A2 U 主剤1 主剤2
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製造直後粘度 60 80 9 43 31
────────────────────────────────────────
貯蔵後粘度 61 82 表面皮張り 45 33
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* 単位 : Pa・s
実施例1で得られた「主剤1」10gと「硬化剤1」1.5gを混合し、アサダ材とステンレス板、アクリル板同士、ABS板同士を各々貼り合わせ、23℃、相対湿度50%で7日間養生した後、JIS K 6850に準拠して、引張りせん断接着強さを測定した。
また、実施例2で得られた「主剤2」10gと「硬化剤1」2.0gを混合し、同様に引張りせん断接着強さを測定した。その結果を表2に示す。
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実施例1 実施例2
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アサダ/ステンレス 1.2 1.7
(接着剤層凝集破壊) (接着剤層凝集破壊)
────────────────────────────────────────
アクリル/アクリル 1.3 1.7
(接着剤層凝集破壊) (接着剤層凝集破壊)
────────────────────────────────────────
ABS/ABS 1.3 1.8
(接着剤層凝集破壊) (接着剤層凝集破壊)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
* 単位 : N/mm2
Claims (4)
- 分子内に下記一般式(1)で示される数平均分子量1000〜20000のポリエーテルポリオールとポリイソシアネート化合物から合成されるウレタンプレポリマーとグリセリンカーボネートとの反応により合成される二つ以上の五員環カーボネート基及びウレタン結合を有する化合物(A)と、分子内に二つ以上のエポキシ基を有する化合物(B)と、分子内に二つ以上の第一級アミノ基を有する化合物(C)とからなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
一般式(1):
- 化合物(A)の残基Yが、オキシエチレン基(−OCH2CH2−)を繰り返し構成単位として含有することを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
- 化合物(B)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂であり、且つ、その分子量が300〜700であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなる室温硬化性接着剤組成物。
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