JP5005511B2 - 非特異反応を減少させた免疫診断薬 - Google Patents

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Description

この発明は、測定検体試料を、抗原又は抗体固相化磁性体含有微粒子を免疫測定試薬として使用して免疫測定する場合に、非磁性微粒子を共存させることにより、非特異的に磁性体含有微粒子表面に結合する物質の結合を低減させ、その結果として非特異反応を低減させることのできる、免疫測定試薬並びにその測定法に関する。
磁性微粒子を利用した免疫学的に抗原または抗体を測定する測定方法は、サンプル中の目的物質と特異的に反応する抗体または抗原を固相化した固相化磁性微粒子を用意し、該固相化微粒子を検体中の目的物質と抗原抗体反応させた後、B/F分離、洗浄を経た後に、該目的物質と特異的に反応する標識された抗原・抗体などを反応させ、適宜、当該標識を利用した発光等を検出して、目的物質を測定する方法である。磁性微粒子を利用した免疫学的測定は、全自動化に適しており、ごく最近では、大量の検体を扱えるように、これらの操作が自動化された測定機器を利用してなされている。
免疫学的測定法における偽陽性シグナルの存在は古くから知られ、その原因として、標識物質と特異的に反応する、検体中の非目的物質の固相表面への非特異的な結合が知られている。従来は、固相表面を蛋白質やポリマーなどのオーバーコート物質で覆うなどの方策が採られていたが、十分とは言えなかった。
血液、血清、血漿などのヒト検体中の抗原特異的に反応するヒト免疫グロブリンを測定することは、抗原であるウイルス、感染性細菌・原虫あるいは寄生性生物などによる感染の有無を判定する意味から非常に重要となっている。こうした抗原特異的に反応するヒト免疫グロブリンの測定において、陰性と判定されるべき検体が、誤って陽性と判定される(以下、「偽陽性」)ことは、大きな問題となる。例えば、HIV抗体の検査では、このような偽陽性の結果は人道上の問題とも直結することにもなりかねない。また、輸血用血液などのスクリーニングなどでは、誤って貴重な血液を廃棄することとなり重大な損失といった問題となる。
梅毒は、病原性スピロヘーターの一種であるTreponema pallidum (TP)の感染によって引き起こされる全身性の性感染症である。梅毒感染を疑う場合には、通常、血清学的検査法として、TP菌体成分を抗原に用いたTP抗体測定法などを行うのが一般的で、抗原としてもリコンビナントタンパク質を使用することが行われる〔特許文献1:米国特許第6,479,248号明細書〕。
TP抗体測定法としては、Treponema pallidum hemagglutination (TPHA), Treponema pallidum particle agglutination(TPPA), Chemiluminescent enzyme immunoassay (CLEIA), Fluorescent treponemal antibody absorpton (FTA-ABS)などが知られている。そして、全自動化化学発光免疫測定装置を利用した試薬並びに方法もなされている〔非特許文献1:Prog. Med., 25: pp.1424-1427 (2005)、非特許文献2:医学と薬学(別刷)、53(5), pp.649-654 (2005)〕
PIVKA-II〔Protein Induced by Vitamin K Absence (ビタミンK欠乏により生じる異常プロトロンビン)〕は肝細胞癌との関連が高い血中蛋白質であり、肝細胞癌の診断補助として用いられている血中癌マーカーである。PIVKA-IIのプロトロンビンとの相違点が、N末端部位に認められるいくつかのグルタミン酸に付加したカルボキシル基の違いのみに存在し、またその相違部分が小さいことから、固相表面、標識に用いられる両抗体をともにPIKVA-II特異的なものにすることは難しく、固相表面にはPIVKA-IIに特異的な抗体を利用するが、標識抗体としては、PIVKA-II特異的ではないプロトロンビンに結合する抗体が用いられている。この測定系においては、標識抗プロトロンビン抗体がサンプル中のトロンビンまたはプロトロンビンとも反応してしまうことから、血液凝固の過程で発生した、トロンビン、またはその前駆体であるプロトロンビンの磁性固相微粒子表面への非特異的反応が、標識抗体との特異反応により極めて高い偽陽性シグナルを生じさせていた〔特許文献2:特許第2,702,616号明細書〕。
米国特許第5,856,182号明細書(特許文献3)では、Kuus-Reichel らは、マクロタイタープレート中におけるPSA〔Prostate specific antigen (前立腺特異抗原)〕-ACT(α1-アンチキモトリプシン)を検出する免疫測定で、微粒子を添加することにより非特異結合を減少させる方法を示している〔特許文献3:米国特許第5,856,182号明細書〕。当該特許文献3(米国特許第5,856,182号明細書)によれば、Kuus-Reichelらの方法に使用される固相体は、一つのビーズ、シリンダー、試験管の内側表面、ひとつの棒の外側表面、テストシートまたはテスト片といったものでありいずれも、微粒子に比較し非常に大きいものである。すなわち、微粒子を、一旦、反応中に添加した後に、微粒子を特異的固相表面から分離するのは、もっぱら、大きさの違いによってなされるのであり、それにより、結果として、微粒子中に結合した非特異物質を除去するといった方法である。
米国特許第6,479,248号明細書 特許第2,702,616号明細書 米国特許第5,856,182号明細書 Prog. Med., 25: pp.1424-1427 (2005) 医学と薬学(別刷)、53(5), pp.649-654 (2005)
上記したような免疫診断薬において、固相化磁性微粒子に対する非特異的な反応に起因して陰性と判定されるべき検体が、誤って陽性と判定される(以下、「偽陽性」)ことが知られており、この偽陽性を減少させるために、界面活性剤を反応中に添加したり、磁性微粒子に抗原固相化後タンパク質やポリマーをオーバーコートするなどの様々な手法が用いられてきたが、磁性微粒子表面への非特異的な結合に起因する偽陽性を減少させることには限界があった。これら偽陽性を減少させることは、測定が大量の検体を迅速処理する目的で自動化免疫測定装置を利用してなされるにつれ、ますます問題と成ってきており、これを解決すること、すなわち、少なくとも磁性微粒子表面に対する非特異的反応を減少させることが強く求められている。
前述したとおり免疫学的にPIVKA-II を測定する場合、プロトロンビンに対する抗体が、標識抗体として用いられるのだが、この標識抗体はプロトロンビンまたはトロンビンに特異的に結合してしまうため、血液サンプル中に多量に存在するプロトロンビン・トロンビンの一部が磁性微粒子表面に非特異的に結合してしまうことにより、偽陽性シグナルを生じさせていた。特に血清サンプル中に存在するトロンビンの非特異的な結合は深刻であり、この問題を回避するために、抗プロトロンビン抗体からトロンビンに反応する抗体を精製し除いた後に測定に使用される方法が使用されているが〔特許文献1:特許第2,702,616号明細書〕、極めて煩雑であるため、決して有効な方法とは言えなかった。
上記Kuus-Reichel の方法は、大きな固相物質にのみにしか適応することができないため、固相物質に微粒子を用いる方法は全自動化を考慮すると極めて有効な方法であるにも拘わらず、Kuus-Reichel の方法を微粒子を固相に用いた全自動測定に使用することはできなかった。
上記問題に鑑み、本発明者は、鋭意研究を進め、様々な検討を加えた結果、検体と抗原または抗体が固相化されており且つ磁性体を含む微粒子(例えば、ポリマー微粒子)とを抗原抗体反応させる場合に、該磁性体を含む微粒子の素材と同じ素材を有し(例えば、ポリマー微粒子と同じポリマーを用いて製造されており)または該微粒子の素材と類似の素材を有し(例えば、該ポリマー微粒子のポリマーと類似のポリマーを用いて製造されており)且つ磁性体を含まない微粒子(例えば、ポリマー粒子)を共存させると、非特異的に磁性微粒子表面に結合する物質に起因する免疫診断薬の偽陽性を低減させることができることを見出すことに成功した。かくして、本発明者は、同じ微粒子でありながらも、抗原や抗体を固相化する微粒子には磁性微粒子を用い、非特異物質を取り除くための粒子には非磁性微粒子を用いるという2つの異なる性質を有する微粒子を用いることによって非特異物質を除去する方法を完成させた。そして、当該方法は、Kuus−Reichelの方法とは異なることのみならず全自動測定装置に極めて適した優れた方法であることを認め、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する。
〔1〕測定検体試料を、抗原又は抗体が固相化されており且つ磁性体を含む微粒子と、該磁性微粒子の表面素材と同じかまたは類似の素材表面を持ち且つ磁性体を含まない微粒子(以下、非磁性微粒子)の共存下、接触せしめる工程、
磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、
磁性微粒子固相に結合している測定する物質-抗原又は抗体の結合物と標識化された抗体とを接触せしめる工程、
磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、並びに
標識を指標に測定する物質を定量する工程、
を含むことを特徴とする免疫測定方法。
〔2〕前記測定検体試料を前記磁性微粒子と接触させる工程において、前記磁性微粒子に対して、表面積換算で過剰量の前記非磁性微粒子を共存させることを特徴とする上記〔1〕に記載の免疫測定方法。
〔3〕前記磁性微粒子が、ポリマーを用いて製造され且つ抗原が固相化されているものであり、免疫測定方法が抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の免疫測定方法。
〕抗原が、HIV、HTLV-1、HCV、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスI、水痘ヘルペス、麻疹、カンジダ、トキソプラズマ、マイコプラズマ、風疹、及び梅毒からなる群から選択されたものであることを特徴とする上記〔〕に記載の免疫測定方法。
〕抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法が、抗原固定化磁性微粒子と標識化抗ヒト免疫グロブリン抗体とを用いるサンドイッチ法であることを特徴とする上記〔〕又は〔〕に記載の免疫測定方法。
〕検体が血清、又は血漿などの血液検体である上記〔〕〜〔〕のいずれか一に記載の免疫測定方法。
〕ヒト免疫グロブリンがヒトIgG及び/又はヒトIgMである上記〔〕〜〔〕のいずれか一に記載の免疫測定方法。
〕測定する物質が、血液凝固因子関連物質またはその分解物であることを特徴とする上記〔1〕又は〔〕に記載の免疫測定方法。
〕測定する物質が、PIVKA-IIであることを特徴とする上記〔〕に記載の免疫測定方法。
10〕微粒子表面がポリマー素材であることを特徴とする上記〔1〕、〔2〕、〔8〕及び〔9〕のいずれか一に記載の免疫測定方法。
本発明の技術で、抗体又は抗原固相化磁性微粒子を使用する免疫診断薬及び免疫測定法における、磁性微粒子(例えば、磁性ポリマー微粒子)に対する偽陽性の問題を減少せしめることができて、より信頼性の高い測定結果を得ることができ、より優れた免疫診断薬並びに測定法を提供できる。これらの免疫測定法は、全自動スクリーニングシステムの利用により、低コストで血液スクリーニングのような多数検体の検査にも応用可能である。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
本発明は、試料中の目的物質(抗原特異的に反応するヒト免疫グロブリンを包含する)をより精度良く(磁性ポリマー微粒子に対する偽陽性を減少せしめて)検出若しくは測定する方法並びにそのための試薬を提供するものである。本発明の技術では、血液、例えば、献血血液について、それを測定検体試料として、全自動血液スクリーニングシステムを利用可能とし、大量且つ迅速に測定して、特定の抗原や抗体の量(臨床上や医学上などで問題となる癌マーカー等の血中物質などの量)を調べるのに適し、より正確に検出若しくは測定結果を与えるものである。また、本発明は、特定の抗原特異的ヒト免疫グロブリンの有無(臨床上や医学上などで問題となるウイルスなどの抗原による汚染の有無)を調べるのにも適し、より正確に検出若しくは測定結果を与えるものである。
免疫診断薬では、磁性体を含む微粒子(本明細書中、「磁性微粒子」)(例えば、ポリマー微粒子)に目的物質と特異的に反応する抗原または抗体を固相化し(本明細書中、これを「固相化磁性微粒子」と称する)、それに目的物質を含む検体試料を抗原抗体反応させた後に固相化磁性微粒子を洗浄し、それに発光試薬(アクリニジウムなど)を標識したマウスモノクローナル抗体(以下、「標識抗体」)を反応させ、目的物質を検出するという技術が汎用されている。
例えば、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを測定する免疫血清診断薬では、磁性粒子に抗原を固相化し、この抗原固相化磁性粒子にヒト免疫グロブリンを抗原抗体反応させた後に抗原固相化磁性粒子を洗浄し、それに標識抗体を反応させ、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを検出する。
このような技術の場合、磁性微粒子表面に対する非特異物質の吸着反応が起こった場合に、それに対し標識抗体が反応し、検出されることが多かった。また、磁性微粒子表面に対するヒト免疫グロブリンの吸着反応あるいは抗原抗体反応が起こった場合に、それに対し標識抗体が反応し、検出されることも多かった。
特に、PIVKA-IIを測定する免疫測定試薬においては、血清中に存在する血液凝固因子IIの活性化体であるトロンビンの磁性粒子表面への非特異結合により、それに対し標識抗体が反応し、血清で偽高値を示すことがあった。あるカットオフ値を設けて陰性/陽性を判定する免疫診断薬の場合、この磁性微粒子表面のポリマーに対する非特異物質(例えば、ヒト免疫グロブリン、トロンビンなど)の吸着反応が甚だしく起こった場合には、特異的に反応する目的物質が極めて少なく、陰性と判定されるべき検体が、誤って陽性と判定される(以下、「偽陽性」)場合があった。この偽陽性を減少させるために、界面活性剤、磁性微粒子に抗原または抗体を固相化後タンパク質をオーバーコートするなどの様々な手法が用いられてきたが、磁性微粒子(例えば、磁性ポリマー微粒子)に対する偽陽性を減少させることには限界があった。
本発明では、磁性体を含む微粒子の表面素材と同じかまたは類似の素材表面を持つといった、磁性体を含まない微粒子(以下、「非磁性微粒子」)を、固相化磁性微粒子と共存させる。それにより、磁性微粒子表面に対する非特異物質の非特異的吸着反応を低減させ、特異的に反応する目的物質(測定する物質)を測定する免疫診断薬の偽陽性を低減させることに成功した。
典型的な態様では、磁性微粒子を構成するポリマーと同じまたは類似のポリマーを用いた、磁性体を含まないポリマー微粒子を、抗体又は抗原固相化磁性粒子と共存させる。かくして、磁性微粒子表面に対するヒト免疫グロブリンの非特異的吸着反応を低減させ、抗原特異的に反応するヒト免疫グロブリンを測定する免疫血清診断薬の偽陽性を低減させることもできる。
要約すると、汎用される免疫診断薬の検出の流れは以下のようであるが、この(2)の工程で非磁性微粒子を共存させることにより、免疫診断薬の偽陽性を低減させることに成功した。
(1)検体(血清または血漿)を採取し、これを反応ウェルに入れる。
(2)このウェルに固相化磁性微粒子を含む液および検体希釈液を入れ、ある定めた温度である定めた時間反応させる(この反応を「一次反応」と称す)。この間に、検体中の抗原特異的に反応する目的物質の固相化磁性微粒子に対する特異的な抗原抗体反応が起こる。
(3)一次反応後に、磁性微粒子を磁石で引きつけ、検体、検体希釈液、その他の反応液を吸引して除く。さらに、洗浄液を入れて洗浄後、磁性微粒子を磁石で引きつけ、洗浄液を吸引して除き、磁性微粒子に付着していた反応液を除く。
(4)洗浄後の磁性微粒子に標識抗体を加え、ある定めた温度である定めた時間反応させる(この反応を「二次反応」と称す)。
(5)二次反応後に、磁性微粒子を磁石で引きつけ、それ以外の反応液を除く。さらに、洗浄液を入れて洗浄後、磁性微粒子を磁石で引きつけ、洗浄液を吸引して除き、磁性微粒子に付着していた反応液を除く。
(6)発光試薬を発光させ、そのシグナルの強さにより、検体中に存在する目的物質を測定する。
上記一次反応中に、非磁性微粒子を加える。具体的には、非磁性微粒子は固相化磁性微粒子を含む液と検体希釈液のどちらに添加しても良い。非磁性微粒子は、磁性微粒子表面に結合するはずであった検体中の非特異物質と反応した後、非磁性という特徴により、(3)の工程で反応液とともに吸引除去される。
具体的な態様の一つでは、本発明は、ヒト検体中の特定の抗原特異的ヒト免疫グロブリンの測定検出法において、測定検体試料を、抗原特異的ヒト免疫グロブリン検出試薬で処理し、測定結果を得るに際し、抗原が固相化されており且つ磁性体を含むポリマー粒子と該磁性体を含むポリマー粒子と同じポリマーまたは類似のポリマーを用いて製造されており且つ磁性体を含まないポリマー粒子とを共存させることを特徴とする。より具体的な態様では、本発明は、血液検体などの測定検体試料のヒトTP抗体などの抗原特異的ヒト免疫グロブリンの測定検出法において、測定検体試料を、磁性粒子に固相化された抗原(特定の抗原)と、該磁性粒子の構成ポリマーと同じポリマーまたは類似のポリマーを含み且つ磁性体を含まないポリマー粒子の共存下、接触せしめる工程、磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、磁性粒子固相に結合している抗原-抗原特異的ヒト免疫グロブリン複合体(コンプレックス)と標識化された抗ヒト免疫グロブリン抗体とを接触せしめる工程、磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、標識を指標に抗原特異的ヒト免疫グロブリンを定量する工程、を含んでいる抗原特異的ヒト免疫グロブリン免疫学的測定方法を行うものである。
別の具体的な態様の一つでは、本発明は、ヒト検体中の特定の目的物質の測定検出法において、測定検体試料を、免疫測定し、測定結果を得るに際し、抗原または抗体が固相化されており且つ磁性体を含むポリマー微粒子と該磁性体を含むポリマー粒子と同じポリマーまたは類似のポリマーを用いて製造されており且つ磁性体を含まないポリマー微粒子とを共存させることを特徴とする。より具体的な態様では、本発明は、血液検体などの測定検体試料のPIVKA-IIなどの測定検出法において、測定検体試料を、磁性微粒子に固相化された抗体(特定の抗体)と、該磁性微粒子の構成ポリマーと同じポリマーまたは類似のポリマーを含み且つ磁性体を含まないポリマー微粒子の共存下、接触せしめる工程、磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、磁性微粒子固相に結合している抗原-抗原特異的複合体(コンプレックス)と標識化された特異的抗体とを接触せしめる工程、磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、標識を指標に目的物質を定量する工程、を含んでいる免疫学的測定方法を行うものである。
当該方法において使用する免疫測定方法は、競合法、サンドイッチ法等の公知のいずれの方法であってもよいが、特にサンドイッチ法が好ましい。化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay: CLIA)が好適に使用できる。
該免疫学的抗原特異的ヒト免疫グロブリン(IgG、IgMを包含してよい)測定は、検体を固相化抗原で処理して、固相に抗原特異的ヒト免疫グロブリン(抗TP IgG、抗TP IgMを含む)を捕捉した後、標識された抗ヒト免疫グロブリン抗体を反応せしめ、標識を測定することにより、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを測定(定量測定を含む)するものであってよい。この場合、例えば、免疫学的に抗原特異的ヒト免疫グロブリンを測定する方法は、検体を固相化抗原、すなわち、固相化組換え抗原で処理して、固相に抗原特異的ヒト免疫グロブリンを捕捉した後、標識された抗ヒト免疫グロブリン抗体、例えば、ペルオキシダーゼ標識あるいはアクリジニウム誘導体標識マウスモノクローナル抗ヒト免疫グロブリン抗体を反応せしめ、標識を測定することにより、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを測定(定量測定を含む)できる。
本発明で使用できる抗原としては、抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定の対象として当業者に知られたものであれば特には限定されるものではないが、例えば、ウイルス、感染性細菌・原虫あるいは寄生性生物など(以下、「ウイルス等」と記す)による感染の有無を判定する目的で行われるものが含まれる。ウイルス等としては、HIV、HTLV-1、HCV、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスI、水痘ヘルペス、麻疹、カンジダ、トキソプラズマ、マイコプラズマ、風疹、梅毒などが挙げられる。該抗原としては、培養したウイルス等から精製したタンパク質や、組換えタンパク質として産生されたものが挙げられ、後者の例として、大腸菌発現系、酵母発現系、バキュロウイルス発現系などを使用して得られたものが挙げられる。組換えTP抗原としては、TpN15、TpN17及びTpN47、それらのN末端側あるいはC末端側ペプチド、それらの任意の混合物などが挙げられる。また、米国特許第6,479,248号明細書に開示のものなどが挙げられる。
本測定方法において用いる固相化抗体・標識抗体用の抗体(標識抗体用の抗ヒト免疫グロブリン抗体を包含する)は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれであってもよいが、通常、モノクローナル抗体が好適に使用される。また、これら抗体はFab’、F(ab’)2等の抗体フラグメントであってもよい。また遺伝子組み替えによって作成された抗体または抗体フラグメントであってもよい。
本免疫測定法において使用する固相、特にはサンドイッチ法で用いる固相としては、磁性微粒子が挙げられ、特に好ましくは磁性マイクロ粒子(マイクロパーティクル)が挙げられる。本免疫測定法において使用する磁性微粒子、または非磁性微粒子としては、ポリマー微粒子が最も好適ではあるが、全自動測定に適した微粒子であれば、例えば、シリカ微粒子などであってもよい。全自動免疫測定に有効な微粒子サイズとしては、10 nm から 100μm の範囲の微粒子が好適である。また、直径100μm を越える粒子については本発明で述べる微粒子には相当しない。
標識物質としては、蛍光物質、発光物質、酵素、放射性同位元素等が挙げられ、特に好ましくはアクリジニウム誘導体、例えば、10-(3-スルホプロピル)-N-(p-トルエンスルホニル)-N-(カルボキシエチル)-9-アクリジニウムカルボキサミドなどが挙げられる。アクリジニウム誘導体は、米国特許明細書第5,468,646号、同第5,543,524号などに記載のものなどが挙げられる。固相又は標識物への抗体や抗原を結合させる方法としては、周知の物理的吸着方法、化学的な反応による結合方法などが挙げられる。
代表的なサンドイッチ法として、例えば、2ステップサンドイッチ法が挙げられる。該
2ステップサンドイッチ法では、抗原(例えば、TP抗原、HIV抗原、HCV抗原、それらのリコンビナント抗原など)を磁性微粒子(磁性マイクロパーティクル; μ-P)に結合してある固相化抗原(抗原固相化磁性微粒子)、あるいは、抗体(例えば、抗PIVKA-II抗体)を磁性微粒子に結合してある固相化抗体(固相化磁性微粒子)を、検体と接触せしめるが、その時、該磁性体を含むポリマー微粒子と同じポリマーまたは類似のポリマーを用いて製造されており且つ磁性体を含まないポリマー微粒子を共存させ、インキュベーション処理後、磁石の影響下、B/F分離及び洗浄を行い(この操作で該磁性体を含まないポリマー微粒子は除かれる)、次に該固相化磁性微粒子をアクリジニウム誘導体で標識されている特異抗体コンジュゲートと接触せしめ、インキュベーション処理し、その後、磁石の影響下、B/F分離及び洗浄を行い、標識を測定することにより、目的物質(抗原特異的ヒト免疫グロブリンなどを含めた、測定する物質)を測定(定量測定を含む)する。
標識の測定は、例えば、プレトリガー液やトリガー液を使用して標識アクリジニウムを化学発光を起こす分子種に変換するなどして達成される。プレトリガー液としては、例えば、過酸化水素を含む酸性溶液などが挙げられ、アクリジニウム標識抗体を磁性マイクロパーティクル上から切り離し、アクリジニウムを溶液中に均一に溶出させる。トリガー液としては、例えば、Triton X-100を含む水酸化ナトリウム溶液などが挙げられ、発光反応を発生させる。
本免疫測定は、免疫検査に必要な機能を備えた全自動免疫測定装置、例えば、全自動化学発光免疫装置で行うのに適したものであることができる。該全自動化学発光免疫装置は、普通、検体の受け入れと測定部位への移送を行うサンプラートラック機構、化学発光測定を行うプロセッシング機構、消耗品である洗浄液、反応試薬などの補給と廃棄物の処理を行うサプライ機構、システム全体の操作並びに制御を行うシステムコントロール機構を備えているようなものが好ましい。該サンプラートラック機構のうちには、各種のサンプルカップや試験管に対応し、さらに様々な大きさのものに対応している形態のものとされ、少量検体についても、バーコード読み取り機構を利用して検体の同定管理が可能とされており、さらに、ランダムアクセスや継続的なアクセスによるサンプリングが可能とされ、緊急的な検体測定も可能とされているなどの機構が挙げられる。検体の追加、取り外しがいつでも、当該装置全面から行うことが可能とされ、さらに検体IDユニットを備えバーコード情報が読み取り可能とされていることが好ましく、例えば、検体ラックをセットすると直ちにバーコード情報が読み取られ、測定を開始できるようにされている装置であってよい。また、検体ラックトランスポータは、検体ラックをセットすると直ちに動作可能とされ、3次元での検体ラック搬送を実現できるような機構を備えたものが好ましく、処理効率に応じた最適検体ラックポジションへの移送、サンプリングのための検体ラックの各モジュールへの分配、優先処理の最適化を図ることが可能な機構を備えているものとすることも可能である。
該プロセッシング機構としては、多数の試薬ボトルを同時搭載可能とされ、1モジュールで莫大な数のテストが可能とされているものが好適であり、例えば、25個の試薬ボトルを同時搭載し、500テスト用の試薬ボトルが使用可能になっていて、1モジュール最大12,500テストが可能となっている能力を備えるものとされていることもできる。該プロセッシング機構には、冷却機能付き試薬カセロールにより、試薬を搭載したまま長時間安定に保持できる機能、試薬につき、項目名、ロットナンバー、テストサイズ、使用期限、マスターキャリブレーション情報などをバーコード自動読み取りにより管理可能とされる機能、検体量不足、気泡、血餅などの異常を感知できるプレシャーモニタリング機能、キャリーオーバーを低減するサンプルピペッタなどが含まれていることができる。キャリーオーバーの低減は、サンプルプローブの洗浄を強化せしめたり、また、自動位置調整機能を備えることにより達成されるものであることができる。該プレシャーモニタリング機能では、例えば、サンプリング・分注時の液圧の常時モニタリングにより、プローブの詰まりや気泡を検知可能とされ、誤った報告を防止できるようにされることが挙げられる。該サプライ機構には、化学発光に適した試薬、例えば、多くの数のテストに対応する数のトリガー試薬(希釈緩衝液)、プレトリガー試薬(希釈緩衝液)を保管可能とする機能、固型廃棄物用の廃物コンテナを備えるとともに、廃液については検査室の廃液口に自動廃液可能とする機能などが含まれていることができる。該システムコントロール機構としては、モニター画面上のスクリーンにタッチすることで操作可能となっている機能、各モジュールの状況が一目で判別可能とされているスナップショット画面形成機能、多数のテストの測定結果並びに多数のテストのQC結果を保存する機能などが含まれているものであってよい。全自動化学発光免疫装置の例としては、免疫測定装置アーキテクトTMアナライザーシリーズ(アボットジャパン(株))、例えば、アボット アーキテクトTMi2000 (Abbott ARCHITECTTMi2000)などが挙げられる。
本発明の技術は、ARCHITECT TP Abに好適に適用できる。ARCHITECT TP Abは、アクリジニウム標識抗ヒトIgGおよびIgMモノクローナル抗体と磁性微粒子(マイクロパーティクル)上に固相化されたリコビナントTP抗原(TpN15, TpN17, TpN47)を使用した化学発光免疫測定法による2ステップサンドイッチ法を原理としている。初めに検体、およびリコビナントTP抗原が固相化されたマイクロパーティクルを混合する。検体中にTP抗体が存在する場合には、TP抗原固相化マイクロパーティクルに結合し、洗浄後、TP抗体+TP抗原固相化マイクロパーティクルの結合物が形成される。次にアクリジニウム標識抗ヒトIgGおよびIgMモノクローナル抗体が添加され、抗ヒトIgGあるいはIgMモノクローナル抗体+TP抗体+TP抗原固相化マイクロパーティクルのサンドイッチ複合体が形成される。再び洗浄の後、プレトリガー、トリガーを反応セルに添加し、その結果生じる化学発光反応を発光強度(RLU)として測定する。この検体のRLUが、あらかじめ測定しておいたキャリブレーションのカットオフ値以上を示した場合を陽性、カットオフ値未満の場合を陰性と判定する。
また、本発明の技術は、上述した ARCHITECT システムを用いた PIVKA-II 測定に好適に適用できる。初めに検体、および抗PIVKA-IIモノクローナル抗体が固相化された磁性微粒子を混合する。検体中にPIVKA-IIが存在する場合には、該固相化微粒子に結合する。このとき表面積換算で過剰量の非磁性微粒子を共存させることにより、主要な非特異物質であるトロンビンのほとんどが非磁性微粒子に結合する。磁石を利用したB/F分離・洗浄の後、PIVKA-II+PIVKA-II抗体固相化磁性微粒子の結合物が形成される。このときトロンビンを始めとする非特異物質と結合した非磁性微粒子は、磁石により捕捉されないため、反応液等とともに洗浄中にあって除去される。次にアクリジニウム標識抗ヒトプロトロンビン抗体が添加され、標識抗ヒトプロトンビン抗体+PIVKA-II+抗PIVKA-II抗体固相化磁性微粒子のサンドイッチ複合体が形成される。抗ヒトプロトロンビン抗体は、プロトロンビンの一部に含まれるトロンビンとも反応性を有するが、ほとんどのトロンビンは非磁性微粒子により取り除かれているため、トロンビン由来の偽陽性シグナルは生じない。再び洗浄の後、プレトリガー、トリガーを反応セルに添加し、その結果生じる化学発光反応を発光強度(RLU)として測定する。この検体のRLUが、あらかじめ測定しておいたキャリブレーションのカットオフ値以上を示した場合を陽性、カットオフ値未満の場合を陰性と判定する。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
ABBOTT ARCHITECT TM システム
アボットジャパン(株)のARCHITECTTMアナライザーi2000を用いて実施した実施例を示す。本免疫測定装置は、システムコントロールセンター(System Control Center, SCC)、プロセッシングモジュール(Processing Module, PM)、そしてサンプルハンドラー(Sample Handler, SH)から構成され、さらにプロセッシングモジュールの主要部分はプロセッシングセンターと呼ばれ、25項目の試薬を同時搭載できる試薬カローセルを備え、その周りにプロセスパスがあって、該プロセスパス内を反応セルが移動し、周りにサンプルピペッター、試薬ピペッター、内部攪拌装置、ウオッシュゾーンなどが配置されている。反応セルは、プロセスパス内を1ステップずつ移動しながら、それぞれのポジションへ移送される。プロセッシングセンター内には1200個の反応セルを収容できる。また、ダブルトレーも利用可能とされている。本装置は、輸血用血液の安全性を向上させ、効率的な血液供給を行うに適して全自動血液スクリーニングシステムである。独自の化学発光免疫測定法による優れた感度と特異性に加え、大量検体の処理を実現する。
本システムでは、高発光量の得られるアクリジニウム誘導体を標識に使用しているので、試薬の高い安定性(検量線の安定化、日差再現性の向上)、高い発光収率(感度の向上、測定範囲の拡張)が達成できる。また、磁性マイクロパーティクルを利用しているので、固相を磁石で押さえた状態で短時間のB/F分離、洗浄が可能となっており、内部攪拌装置で簡単に磁性マイクロパーティクルを分散させるので、均一な免疫反応が得られ、さらにプラスチック性消耗品の損耗が大幅に低減し、大量のテストを連続的に行うことができ、短時間で大量の検体の測定が可能である。
本法の原理は、検体をサンプルピペッターが反応セルに分注した後、試薬ピペッターが試薬カローセルから磁性マイクロパーティクル液をその反応セルに分注する。次に内部攪拌装置で反応セル内の混合液を攪拌した後に、適温、例えば、37℃に維持されたプロセスパス内を移動しながら所要時間インキュベーションされる。かくして、検体、検体希釈液、及び抗原あるいは抗体を固相化した磁性マイクロパーティクル懸濁液をインキュベーションして、検体中の抗体あるいは抗原を特異的にマイクロパーティクル上の抗原あるいは抗体に反応させる(一次反応)。次に反応セルはウオッシュゾーンを通過し、永久磁石などを使用しての磁場の影響下にB/F分離及び磁性マイクロパーティクルの洗浄が希釈緩衝液を使用して行われる。次にアクリジニウム誘導体で標識された特異抗体の入ったコンジュゲート溶液を反応セルに分注し、内部攪拌装置で攪拌した後に、プロセスパス内を移動しながら所要時間インキュベーションされる。標識抗体は、磁性マイクロパーティクル上の測定目的物と結合する。すなわち、反応生成物は、アクリジニウム標識コンジュゲートにより検出される(二次反応)。このコンジュゲートは、アクチベータ溶液の存在下で化学発光を引き起こし、それを光電子増倍管で検出するものである。典型的には当該アクチベータ溶液としては、プレトリガー液とトリガー液とから構成されていてよく、該プレトリガー液は、アクリジニウム標識抗体を磁性マイクロパーティクル上から切り離して、アクリジニウムを反応溶液中に均一な状態で存在するように溶出せしめる働きのものであり、該トリガー液は、アクリジニウムを活性化して、例えば、アクリジニウムを酸化して、発光反応を生ぜしめる働きを持つものが挙げられる。
〔自動化抗TP抗体の測定〕
ABBOTT ARCHITECTTM システムに適した測定系を構築する。
1)一次反応 反応セルで、以下に示す容量の検体、検体希釈液、及びTP抗原を固相化したマイクロパーティクル懸濁液を混合する。
検体(血清、または血漿) 30μL
検体希釈液 90μL
TP抗原固相化マイクロパーティクル懸濁液

非磁性マイクロパーティクル懸濁液 50μL
2)第一回インキュベーション 攪拌装置で攪拌した後、37℃、18分間インキュベーションし、検体中の抗体を特異的にマイクロパーティクル上の抗原に反応させる。
3)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応物及び非磁性マイクロパーティクルを除去(B/F分離)し、洗浄液で、反応セル内を洗浄する。
4)二次反応 アクリジニウム標識コンジュゲート(アクリジニウム化抗ヒト免疫グロブリン抗体、あるいはアクリジニウム化抗ヒトIgM抗体及び/又はアクリジニウム化抗ヒトIgG抗体)溶液 50μLを反応セルに分注する。
5)インキュベーション 攪拌装置で攪拌した後、37℃、4分間インキュベーションし、反応生成物とアクリジニウム標識コンジュゲートの反応を進行させ、検体中にヒト抗TP抗体が存在した場合、TP抗原固相化マイクロパーティクル−ヒト抗TP抗体−標識抗ヒト抗体コンジュゲート複合体を形成させる。
6)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応標識コンジュゲートを除去(B/F分離)し、洗浄液で、未反応のコンジュゲートを洗い流し、複合体を浄化する。
7)アクリジニウムの活性化 プレトリガー液を100μL、次いでトリガー液300μLを加え、複合体上のアクリジニウムを活性化する。
8)検出 アクリジニウムの活性化により引き起こされた化学発光を光電子増倍管で検出する(化学発光度は、RLU(相対的化学発光単位)値として数値化される)。
アーキテクト Syphilis TP試薬の検体希釈液に、英国ポリマーラボラトリーズ社の非磁性粒子を粒子重量濃度として0%(図1の表示では、0.001%のところにプロットされている)、0.0025%、0.005%、0.010%、0.025%、0.05%、0.1%および0.2%添加し、陽性キャリブレーター液(Calibrator)、陰性コントロール液(Neg control)、陽性コントロール液(Pos control)、市販セロコンバージョンパネル(Bleed 3 1/3)および従来試薬では偽陽性を示す傾向があった検体(以下、「偽陽性検体」)8種(310053, 309463, 309187, 310428, 309057, 310944, 342473, 308941)を測定した。測定値はシグナルの強さ(RLU)として示した。
結果を図1に示した。陽性キャリブレーターの結果は示されていないが、そのシグナルの1/5である、Cut-off(陽性/陰性の判定基準となるシグナル)が示されている。非磁性粒子を加えて行くにつれて、陰性コントロール液(図1の表示ではNeg control。以下同じ)、陽性コントロール液(Pos control)、市販セロコンバージョンパネル(Bleed 3 1/3)およびCut-offのシグナルには、変化がなかったが、偽陽性検体8種(310053, 309463, 309187, 310428, 309057, 310944, 342473, 308941)のシグナルはいずれも大きく減少した。これにより、非磁性粒子を添加することによるヒト免疫グロブリンの非特異的反応の減少効果を示すことが認められた。
アーキテクト Syphilis TP試薬の抗原固相化磁性粒子を含む液に、英国ポリマーラボラトリーズ社の非磁性粒子に以下の処理(*)をして、粒子重量濃度として0%および0.36%添加した。
*:非磁性粒子を含む液にカゼイン4%を含む液を等量加えて室温で1時間攪拌後、遠心して溶液を除き、さらに緩衝液で洗浄した。こうして得られたものを抗原固相化磁性粒子を含む液に分散させた。
この2種類の試薬、すなわち、アーキテクト Syphilis TP試薬の抗原固相化磁性粒子を含む液(以下、「通常試薬」と称する)および該アーキテクト Syphilis TP試薬の抗原固相化磁性粒子を含む液にカゼイン処理した非磁性粒子を分散させた液(以下、「非磁性粒子含有試薬」と称する)について、陽性検体に対する感度、陰性であることが確認された検体に対する特異性、およびかつて偽陽性を示した検体に対する特異性を測定した。
市販セロコンバージョンパネルを使った比較では、2種類の試薬の感度には違いが見られなかった(図2:通常試薬はCurrent(A)およびCurrent (B))。また陽性検体のシグナル強度は、差がなかった(図3)。陰性であることが確認された検体の特異性は、通常試薬(Current assay)が99.72% (5335/5350)であったのに対し、非磁性粒子含有試薬(Improved assay)は99.91% (5345/5350)と大きな改善が認められた。(表1)
さらに、かつて偽陽性を示した検体に対する偽陽性率は、通常試薬(Current assay)が89.0% (105/118)であったのに対し、非磁性粒子含有試薬(Verif Lot 1A)は32.2% (38/118)と大きな改善が認められた(表2)。
また偽陽性検体のシグナル強度にも改善が認められた(図4、NegativeはFTA-ABS法で陰性と判定された検体、FTA-ABS Indeterm.は同法で判定保留と判定された検体、Improved productは非磁性粒子含有試薬、Current productは通常試薬を示す)。
また、この非特異抑制効果の安定性について検討を行った。本来の保管温度5℃に対し、37℃ストレス条件下で1ヶ月保管した後に、かつて偽陽性を示した18例の検体を測定した。通常試薬2ロット(Ref 1およびRef 2)で17例が偽陽性を示したのに対し、非磁性粒子含有試薬3ロット(Ver 1、Ver 2 およびVer 5)では偽陽性は1〜2例のみであり、抑制効果が安定であることが示された(図5)。
〔トロンビン非特異反応の検出測定〕
特許第2,702,616号明細書(特許文献2)で示されるように、PIVKA-II測定においてトロンビンに由来する非特異シグナルは深刻な問題である。ここでは、PIVKA-IIとは関係ないモノクローナル抗体を磁性微粒子に結合させ、また、標識抗体として抗トロンビン抗体を用いることにより、非特異的に磁性微粒子に結合するトロンビンを検出した。そして非磁性微粒子の添加による、非特異的トロンビンシグナルの減少を観察した。また測定にはABBOTT ARCHITECTTM システムを用いた。
1)一次反応 反応セルで、以下に示す容量の検体、検体希釈液(アッセイ緩衝液)、及びマウスモノクローナル抗体を固相化した磁性微粒子懸濁液を混合する。非磁性粒子は、アッセイ緩衝液または、固相化磁性微粒子懸濁液中に添加した。非特異結合を十分に減らせるように、固相化微粒子には牛血清アルブミンがオーバーコートされまた、アッセイ緩衝液および磁性微粒子縣濁液中には界面活性剤が添加されている。磁性微粒子には英国ポリマーラボ社製カルボキシル基修飾磁性微粒子を、非磁性微粒子には、米国セラディン社製、カルボキシル基修飾ラテックス微粒子を用いた。粒子直径はそれぞれ、約5μm(磁性微粒子), 約0.5μm(非磁性粒子)である。非特異物質の反応は微粒子表面で生じるため、非磁性粒子の粒子径を小さいものにし、添加量当たりの表面積を増やした方が有効であることは言うまでも無い。この検討では、固相化磁性微粒子は0.025%、非磁性粒子は1.25%添加されているため、各微粒子が真球であるとした場合の表面積は非磁性微粒子が磁性微粒子の500倍になっている。またこの検討にはトロンビンの非特異シグナルが観察される血清検体をサンプルとして用いた。
血清検体 50μL
アッセイ緩衝液 50μL
マウスモノクローナル抗体固相化磁性微粒子縣濁液 50μL
2)第一回インキュベーション 攪拌装置で攪拌した後、37℃、18分間インキュベーションし、検体中の抗体を特異的にマイクロパーティクル上の抗原に反応させる。
3)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応物及び非磁性マイクロパーティクルを除去(B/F分離)し、洗浄液で、反応セル内を洗浄する。
4)二次反応 アクリジニウム標識コンジュゲート(アクリジニウム化抗ヒトトロンビン)溶液 50μLを反応セルに分注する。
5)インキュベーション 攪拌装置で攪拌した後、37℃、4分間インキュベーションし、反応生成物とアクリジニウム標識コンジュゲートの反応を進行させ、磁性微粒子上にトロンビンが非特異的に結合した場合に、磁性微粒子上のトロンビン−標識抗ヒトトロンビン抗体コンジュゲート複合体を形成させる。
6)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応標識コンジュゲートを除去(B/F分離)し、洗浄液で、未反応のコンジュゲートを洗い流し、複合体を浄化する。
7)アクリジニウムの活性化 プレトリガー液を100μL、次いでトリガー液300μLを加え、複合体上のアクリジニウムを活性化する。
8)検出 アクリジニウムの活性化により引き起こされた化学発光を光電子増倍管で検出する(化学発光度は、RLU(相対的化学発光単位)値として数値化される)。
測定結果を図6に示した。非磁性微粒子未添加時に比べ、非磁性微粒子を固相化磁性微粒子縣濁液中に添加したとき、アッセイ緩衝液中に添加したときにおいて、非特異的トロンビン由来のシグナルを極めて顕著に減少させる効果が認められた。
実施例3と同様に、73検体の血清検体を用いて、非特異トロンビンシグナルを観察した。非磁性微粒子未添加時と非磁性微粒子をアッセイ緩衝液に添加したときの比較を行った。
測定結果を図7(非磁性微粒子、未添加時)、図8(非磁性微粒子、添加時)に示した。非磁性微粒子添加時に極めて顕著に、非特異的トロンビンシグナルを減少させる効果が認められた。
本発明の技術は、免疫測定で問題となっていた固相化磁性微粒子に対する非特異的な反応などに起因して発生する偽陽性を簡単な手法で効率的に且つ効果的に減少せしめるので、より信頼性の高い測定結果を得ることができて、臨床検査、血液検査の分野で有用である。また、本技術は、全自動測定システムの利用による低コストで多数検体の検査にも応用可能である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
アーキテクト Syphilis TP試薬を使用した抗TP抗体測定において、非磁性粒子を測定系に添加した場合の、偽陽性の減少効果を調べた結果を示す。 アーキテクト Syphilis TP試薬の通常試薬とそれにカゼイン処理した非磁性粒子を添加した非磁性粒子含有試薬間でのセロコンバージョンパネルを使った免疫測定感度の比較を示す。 アーキテクト Syphilis TP試薬の通常試薬とそれにカゼイン処理した非磁性粒子を添加した非磁性粒子含有試薬間での陽性検体のシグナル強度に実質的に差が無いとの結果を示すグラフである。 アーキテクト Syphilis TP試薬の通常試薬とそれにカゼイン処理した非磁性粒子を添加した非磁性粒子含有試薬間で偽陽性検体のシグナル強度に改善があることを示す。 アーキテクト Syphilis TP試薬の通常試薬とそれにカゼイン処理した非磁性粒子を添加した非磁性粒子含有試薬間での保存性についての加速試験の結果を示す。 アーキテクトを利用した固相化磁性微粒子上に非特異的に結合したトロンビンを検出する測定において、非磁性微粒子を固相化微粒子縣濁液またはアッセイ緩衝液中に添加した場合の非特異的トロンビンシグナルの減少効果を調べた結果を示す。 アーキテクトを利用した固相化磁性微粒子上に非特異的に結合したトロンビンを検出する測定において、73血清検体を測定したときの、非特異的トロンビンシグナルのシグナル強度(RLU)分布を示す。 アーキテクトを利用した固相化磁性微粒子上に非特異的に結合したトロンビンを検出する測定において、73血清検体を測定したときに、非性微粒子を添加したときの、非特異的トロンビンシグナルの減少効果を調べた結果を示す。

Claims (10)

  1. 測定検体試料を、抗原又は抗体が固相化されており且つ磁性体を含む微粒子と、該磁性微粒子の表面素材と同じかまたは類似の素材表面を持ち且つ磁性体を含まない微粒子(以下、非磁性微粒子)の共存下、接触せしめる工程、
    磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、
    磁性微粒子固相に結合している測定する物質抗原又は抗体の結合物と標識化された抗体とを接触せしめる工程、
    磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、並びに
    標識を指標に測定する物質を定量する工程、
    を含むことを特徴とする免疫測定方法。
  2. 前記測定検体試料を前記磁性微粒子と接触させる工程において、前記磁性微粒子に対して、表面積換算で過剰量の前記非磁性微粒子を共存させることを特徴とする請求項1に記載の免疫測定方法。
  3. 前記磁性微粒子が、ポリマーを用いて製造され且つ抗原が固相化されているものであり、免疫測定方法が抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法であることを特徴とする請求項1又は2に記載の免疫測定方法。
  4. 抗原が、HIV、HTLV-1、HCV、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスI、水痘ヘルペス、麻疹、カンジダ、トキソプラズマ、マイコプラズマ、風疹、及び梅毒からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項3に記載の免疫測定方法。
  5. 抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法が、抗原固定化磁性微粒子と標識化抗ヒト免疫グロブリン抗体とを用いるサンドイッチ法であることを特徴とする請求項3又は4に記載の免疫測定方法。
  6. 検体が血清、又は血漿などの血液検体である請求項3〜5のいずれか一に記載の免疫測定方法。
  7. ヒト免疫グロブリンがヒトIgG及び/又はヒトIgMである請求項3〜6のいずれか一に記載の免疫測定方法。
  8. 測定する物質が、血液凝固因子関連物質またはその分解物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の免疫測定方法。
  9. 測定する物質が、PIVKA-IIであることを特徴とする請求項8に記載の免疫測定方法。
  10. 微粒子表面がポリマー素材であることを特徴とする請求項1、2、8及び9のいずれか一に記載の免疫測定方法。
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