JP5005511B2 - 非特異反応を減少させた免疫診断薬 - Google Patents
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Description
血液、血清、血漿などのヒト検体中の抗原特異的に反応するヒト免疫グロブリンを測定することは、抗原であるウイルス、感染性細菌・原虫あるいは寄生性生物などによる感染の有無を判定する意味から非常に重要となっている。こうした抗原特異的に反応するヒト免疫グロブリンの測定において、陰性と判定されるべき検体が、誤って陽性と判定される(以下、「偽陽性」)ことは、大きな問題となる。例えば、HIV抗体の検査では、このような偽陽性の結果は人道上の問題とも直結することにもなりかねない。また、輸血用血液などのスクリーニングなどでは、誤って貴重な血液を廃棄することとなり重大な損失といった問題となる。
TP抗体測定法としては、Treponema pallidum hemagglutination (TPHA), Treponema pallidum particle agglutination(TPPA), Chemiluminescent enzyme immunoassay (CLEIA), Fluorescent treponemal antibody absorpton (FTA-ABS)などが知られている。そして、全自動化化学発光免疫測定装置を利用した試薬並びに方法もなされている〔非特許文献1:Prog. Med., 25: pp.1424-1427 (2005)、非特許文献2:医学と薬学(別刷)、53(5), pp.649-654 (2005)〕
米国特許第5,856,182号明細書(特許文献3)では、Kuus-Reichel らは、マクロタイタープレート中におけるPSA〔Prostate specific antigen (前立腺特異抗原)〕-ACT(α1-アンチキモトリプシン)を検出する免疫測定で、微粒子を添加することにより非特異結合を減少させる方法を示している〔特許文献3:米国特許第5,856,182号明細書〕。当該特許文献3(米国特許第5,856,182号明細書)によれば、Kuus-Reichelらの方法に使用される固相体は、一つのビーズ、シリンダー、試験管の内側表面、ひとつの棒の外側表面、テストシートまたはテスト片といったものでありいずれも、微粒子に比較し非常に大きいものである。すなわち、微粒子を、一旦、反応中に添加した後に、微粒子を特異的固相表面から分離するのは、もっぱら、大きさの違いによってなされるのであり、それにより、結果として、微粒子中に結合した非特異物質を除去するといった方法である。
前述したとおり免疫学的にPIVKA-II を測定する場合、プロトロンビンに対する抗体が、標識抗体として用いられるのだが、この標識抗体はプロトロンビンまたはトロンビンに特異的に結合してしまうため、血液サンプル中に多量に存在するプロトロンビン・トロンビンの一部が磁性微粒子表面に非特異的に結合してしまうことにより、偽陽性シグナルを生じさせていた。特に血清サンプル中に存在するトロンビンの非特異的な結合は深刻であり、この問題を回避するために、抗プロトロンビン抗体からトロンビンに反応する抗体を精製し除いた後に測定に使用される方法が使用されているが〔特許文献1:特許第2,702,616号明細書〕、極めて煩雑であるため、決して有効な方法とは言えなかった。
上記Kuus-Reichel の方法は、大きな固相物質にのみにしか適応することができないため、固相物質に微粒子を用いる方法は全自動化を考慮すると極めて有効な方法であるにも拘わらず、Kuus-Reichel の方法を微粒子を固相に用いた全自動測定に使用することはできなかった。
〔1〕測定検体試料を、抗原又は抗体が固相化されており且つ磁性体を含む微粒子と、該磁性微粒子の表面素材と同じかまたは類似の素材表面を持ち且つ磁性体を含まない微粒子(以下、非磁性微粒子)の共存下、接触せしめる工程、
磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、
磁性微粒子固相に結合している測定する物質-抗原又は抗体の結合物と標識化された抗体とを接触せしめる工程、
磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、並びに
標識を指標に測定する物質を定量する工程、
を含むことを特徴とする免疫測定方法。
〔2〕前記測定検体試料を前記磁性微粒子と接触させる工程において、前記磁性微粒子に対して、表面積換算で過剰量の前記非磁性微粒子を共存させることを特徴とする上記〔1〕に記載の免疫測定方法。
〔3〕前記磁性微粒子が、ポリマーを用いて製造され且つ抗原が固相化されているものであり、免疫測定方法が抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の免疫測定方法。
〔4〕抗原が、HIV、HTLV-1、HCV、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスI、水痘ヘルペス、麻疹、カンジダ、トキソプラズマ、マイコプラズマ、風疹、及び梅毒からなる群から選択されたものであることを特徴とする上記〔3〕に記載の免疫測定方法。
〔5〕抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法が、抗原固定化磁性微粒子と標識化抗ヒト免疫グロブリン抗体とを用いるサンドイッチ法であることを特徴とする上記〔3〕又は〔4〕に記載の免疫測定方法。
〔6〕検体が血清、又は血漿などの血液検体である上記〔3〕〜〔5〕のいずれか一に記載の免疫測定方法。
〔7〕ヒト免疫グロブリンがヒトIgG及び/又はヒトIgMである上記〔3〕〜〔6〕のいずれか一に記載の免疫測定方法。
〔8〕測定する物質が、血液凝固因子関連物質またはその分解物であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の免疫測定方法。
〔9〕測定する物質が、PIVKA-IIであることを特徴とする上記〔8〕に記載の免疫測定方法。
〔10〕微粒子表面がポリマー素材であることを特徴とする上記〔1〕、〔2〕、〔8〕及び〔9〕のいずれか一に記載の免疫測定方法。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
免疫診断薬では、磁性体を含む微粒子(本明細書中、「磁性微粒子」)(例えば、ポリマー微粒子)に目的物質と特異的に反応する抗原または抗体を固相化し(本明細書中、これを「固相化磁性微粒子」と称する)、それに目的物質を含む検体試料を抗原抗体反応させた後に固相化磁性微粒子を洗浄し、それに発光試薬(アクリニジウムなど)を標識したマウスモノクローナル抗体(以下、「標識抗体」)を反応させ、目的物質を検出するという技術が汎用されている。
例えば、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを測定する免疫血清診断薬では、磁性粒子に抗原を固相化し、この抗原固相化磁性粒子にヒト免疫グロブリンを抗原抗体反応させた後に抗原固相化磁性粒子を洗浄し、それに標識抗体を反応させ、抗原特異的ヒト免疫グロブリンを検出する。
特に、PIVKA-IIを測定する免疫測定試薬においては、血清中に存在する血液凝固因子IIの活性化体であるトロンビンの磁性粒子表面への非特異結合により、それに対し標識抗体が反応し、血清で偽高値を示すことがあった。あるカットオフ値を設けて陰性/陽性を判定する免疫診断薬の場合、この磁性微粒子表面のポリマーに対する非特異物質(例えば、ヒト免疫グロブリン、トロンビンなど)の吸着反応が甚だしく起こった場合には、特異的に反応する目的物質が極めて少なく、陰性と判定されるべき検体が、誤って陽性と判定される(以下、「偽陽性」)場合があった。この偽陽性を減少させるために、界面活性剤、磁性微粒子に抗原または抗体を固相化後タンパク質をオーバーコートするなどの様々な手法が用いられてきたが、磁性微粒子(例えば、磁性ポリマー微粒子)に対する偽陽性を減少させることには限界があった。
典型的な態様では、磁性微粒子を構成するポリマーと同じまたは類似のポリマーを用いた、磁性体を含まないポリマー微粒子を、抗体又は抗原固相化磁性粒子と共存させる。かくして、磁性微粒子表面に対するヒト免疫グロブリンの非特異的吸着反応を低減させ、抗原特異的に反応するヒト免疫グロブリンを測定する免疫血清診断薬の偽陽性を低減させることもできる。
(1)検体(血清または血漿)を採取し、これを反応ウェルに入れる。
(2)このウェルに固相化磁性微粒子を含む液および検体希釈液を入れ、ある定めた温度である定めた時間反応させる(この反応を「一次反応」と称す)。この間に、検体中の抗原特異的に反応する目的物質の固相化磁性微粒子に対する特異的な抗原抗体反応が起こる。
(3)一次反応後に、磁性微粒子を磁石で引きつけ、検体、検体希釈液、その他の反応液を吸引して除く。さらに、洗浄液を入れて洗浄後、磁性微粒子を磁石で引きつけ、洗浄液を吸引して除き、磁性微粒子に付着していた反応液を除く。
(4)洗浄後の磁性微粒子に標識抗体を加え、ある定めた温度である定めた時間反応させる(この反応を「二次反応」と称す)。
(5)二次反応後に、磁性微粒子を磁石で引きつけ、それ以外の反応液を除く。さらに、洗浄液を入れて洗浄後、磁性微粒子を磁石で引きつけ、洗浄液を吸引して除き、磁性微粒子に付着していた反応液を除く。
(6)発光試薬を発光させ、そのシグナルの強さにより、検体中に存在する目的物質を測定する。
上記一次反応中に、非磁性微粒子を加える。具体的には、非磁性微粒子は固相化磁性微粒子を含む液と検体希釈液のどちらに添加しても良い。非磁性微粒子は、磁性微粒子表面に結合するはずであった検体中の非特異物質と反応した後、非磁性という特徴により、(3)の工程で反応液とともに吸引除去される。
当該方法において使用する免疫測定方法は、競合法、サンドイッチ法等の公知のいずれの方法であってもよいが、特にサンドイッチ法が好ましい。化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay: CLIA)が好適に使用できる。
本発明で使用できる抗原としては、抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定の対象として当業者に知られたものであれば特には限定されるものではないが、例えば、ウイルス、感染性細菌・原虫あるいは寄生性生物など(以下、「ウイルス等」と記す)による感染の有無を判定する目的で行われるものが含まれる。ウイルス等としては、HIV、HTLV-1、HCV、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスI、水痘ヘルペス、麻疹、カンジダ、トキソプラズマ、マイコプラズマ、風疹、梅毒などが挙げられる。該抗原としては、培養したウイルス等から精製したタンパク質や、組換えタンパク質として産生されたものが挙げられ、後者の例として、大腸菌発現系、酵母発現系、バキュロウイルス発現系などを使用して得られたものが挙げられる。組換えTP抗原としては、TpN15、TpN17及びTpN47、それらのN末端側あるいはC末端側ペプチド、それらの任意の混合物などが挙げられる。また、米国特許第6,479,248号明細書に開示のものなどが挙げられる。
本免疫測定法において使用する固相、特にはサンドイッチ法で用いる固相としては、磁性微粒子が挙げられ、特に好ましくは磁性マイクロ粒子(マイクロパーティクル)が挙げられる。本免疫測定法において使用する磁性微粒子、または非磁性微粒子としては、ポリマー微粒子が最も好適ではあるが、全自動測定に適した微粒子であれば、例えば、シリカ微粒子などであってもよい。全自動免疫測定に有効な微粒子サイズとしては、10 nm から 100μm の範囲の微粒子が好適である。また、直径100μm を越える粒子については本発明で述べる微粒子には相当しない。
標識物質としては、蛍光物質、発光物質、酵素、放射性同位元素等が挙げられ、特に好ましくはアクリジニウム誘導体、例えば、10-(3-スルホプロピル)-N-(p-トルエンスルホニル)-N-(カルボキシエチル)-9-アクリジニウムカルボキサミドなどが挙げられる。アクリジニウム誘導体は、米国特許明細書第5,468,646号、同第5,543,524号などに記載のものなどが挙げられる。固相又は標識物への抗体や抗原を結合させる方法としては、周知の物理的吸着方法、化学的な反応による結合方法などが挙げられる。
2ステップサンドイッチ法では、抗原(例えば、TP抗原、HIV抗原、HCV抗原、それらのリコンビナント抗原など)を磁性微粒子(磁性マイクロパーティクル; μ-P)に結合してある固相化抗原(抗原固相化磁性微粒子)、あるいは、抗体(例えば、抗PIVKA-II抗体)を磁性微粒子に結合してある固相化抗体(固相化磁性微粒子)を、検体と接触せしめるが、その時、該磁性体を含むポリマー微粒子と同じポリマーまたは類似のポリマーを用いて製造されており且つ磁性体を含まないポリマー微粒子を共存させ、インキュベーション処理後、磁石の影響下、B/F分離及び洗浄を行い(この操作で該磁性体を含まないポリマー微粒子は除かれる)、次に該固相化磁性微粒子をアクリジニウム誘導体で標識されている特異抗体コンジュゲートと接触せしめ、インキュベーション処理し、その後、磁石の影響下、B/F分離及び洗浄を行い、標識を測定することにより、目的物質(抗原特異的ヒト免疫グロブリンなどを含めた、測定する物質)を測定(定量測定を含む)する。
標識の測定は、例えば、プレトリガー液やトリガー液を使用して標識アクリジニウムを化学発光を起こす分子種に変換するなどして達成される。プレトリガー液としては、例えば、過酸化水素を含む酸性溶液などが挙げられ、アクリジニウム標識抗体を磁性マイクロパーティクル上から切り離し、アクリジニウムを溶液中に均一に溶出させる。トリガー液としては、例えば、Triton X-100を含む水酸化ナトリウム溶液などが挙げられ、発光反応を発生させる。
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
アボットジャパン(株)のARCHITECTTMアナライザーi2000を用いて実施した実施例を示す。本免疫測定装置は、システムコントロールセンター(System Control Center, SCC)、プロセッシングモジュール(Processing Module, PM)、そしてサンプルハンドラー(Sample Handler, SH)から構成され、さらにプロセッシングモジュールの主要部分はプロセッシングセンターと呼ばれ、25項目の試薬を同時搭載できる試薬カローセルを備え、その周りにプロセスパスがあって、該プロセスパス内を反応セルが移動し、周りにサンプルピペッター、試薬ピペッター、内部攪拌装置、ウオッシュゾーンなどが配置されている。反応セルは、プロセスパス内を1ステップずつ移動しながら、それぞれのポジションへ移送される。プロセッシングセンター内には1200個の反応セルを収容できる。また、ダブルトレーも利用可能とされている。本装置は、輸血用血液の安全性を向上させ、効率的な血液供給を行うに適して全自動血液スクリーニングシステムである。独自の化学発光免疫測定法による優れた感度と特異性に加え、大量検体の処理を実現する。
本システムでは、高発光量の得られるアクリジニウム誘導体を標識に使用しているので、試薬の高い安定性(検量線の安定化、日差再現性の向上)、高い発光収率(感度の向上、測定範囲の拡張)が達成できる。また、磁性マイクロパーティクルを利用しているので、固相を磁石で押さえた状態で短時間のB/F分離、洗浄が可能となっており、内部攪拌装置で簡単に磁性マイクロパーティクルを分散させるので、均一な免疫反応が得られ、さらにプラスチック性消耗品の損耗が大幅に低減し、大量のテストを連続的に行うことができ、短時間で大量の検体の測定が可能である。
ABBOTT ARCHITECTTM システムに適した測定系を構築する。
1)一次反応 反応セルで、以下に示す容量の検体、検体希釈液、及びTP抗原を固相化したマイクロパーティクル懸濁液を混合する。
検体(血清、または血漿) 30μL
検体希釈液 90μL
TP抗原固相化マイクロパーティクル懸濁液
+
非磁性マイクロパーティクル懸濁液 50μL
2)第一回インキュベーション 攪拌装置で攪拌した後、37℃、18分間インキュベーションし、検体中の抗体を特異的にマイクロパーティクル上の抗原に反応させる。
3)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応物及び非磁性マイクロパーティクルを除去(B/F分離)し、洗浄液で、反応セル内を洗浄する。
5)インキュベーション 攪拌装置で攪拌した後、37℃、4分間インキュベーションし、反応生成物とアクリジニウム標識コンジュゲートの反応を進行させ、検体中にヒト抗TP抗体が存在した場合、TP抗原固相化マイクロパーティクル−ヒト抗TP抗体−標識抗ヒト抗体コンジュゲート複合体を形成させる。
6)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応標識コンジュゲートを除去(B/F分離)し、洗浄液で、未反応のコンジュゲートを洗い流し、複合体を浄化する。
7)アクリジニウムの活性化 プレトリガー液を100μL、次いでトリガー液300μLを加え、複合体上のアクリジニウムを活性化する。
8)検出 アクリジニウムの活性化により引き起こされた化学発光を光電子増倍管で検出する(化学発光度は、RLU(相対的化学発光単位)値として数値化される)。
結果を図1に示した。陽性キャリブレーターの結果は示されていないが、そのシグナルの1/5である、Cut-off(陽性/陰性の判定基準となるシグナル)が示されている。非磁性粒子を加えて行くにつれて、陰性コントロール液(図1の表示ではNeg control。以下同じ)、陽性コントロール液(Pos control)、市販セロコンバージョンパネル(Bleed 3 1/3)およびCut-offのシグナルには、変化がなかったが、偽陽性検体8種(310053, 309463, 309187, 310428, 309057, 310944, 342473, 308941)のシグナルはいずれも大きく減少した。これにより、非磁性粒子を添加することによるヒト免疫グロブリンの非特異的反応の減少効果を示すことが認められた。
*:非磁性粒子を含む液にカゼイン4%を含む液を等量加えて室温で1時間攪拌後、遠心して溶液を除き、さらに緩衝液で洗浄した。こうして得られたものを抗原固相化磁性粒子を含む液に分散させた。
この2種類の試薬、すなわち、アーキテクト Syphilis TP試薬の抗原固相化磁性粒子を含む液(以下、「通常試薬」と称する)および該アーキテクト Syphilis TP試薬の抗原固相化磁性粒子を含む液にカゼイン処理した非磁性粒子を分散させた液(以下、「非磁性粒子含有試薬」と称する)について、陽性検体に対する感度、陰性であることが確認された検体に対する特異性、およびかつて偽陽性を示した検体に対する特異性を測定した。
市販セロコンバージョンパネルを使った比較では、2種類の試薬の感度には違いが見られなかった(図2:通常試薬はCurrent(A)およびCurrent (B))。また陽性検体のシグナル強度は、差がなかった(図3)。陰性であることが確認された検体の特異性は、通常試薬(Current assay)が99.72% (5335/5350)であったのに対し、非磁性粒子含有試薬(Improved assay)は99.91% (5345/5350)と大きな改善が認められた。(表1)
特許第2,702,616号明細書(特許文献2)で示されるように、PIVKA-II測定においてトロンビンに由来する非特異シグナルは深刻な問題である。ここでは、PIVKA-IIとは関係ないモノクローナル抗体を磁性微粒子に結合させ、また、標識抗体として抗トロンビン抗体を用いることにより、非特異的に磁性微粒子に結合するトロンビンを検出した。そして非磁性微粒子の添加による、非特異的トロンビンシグナルの減少を観察した。また測定にはABBOTT ARCHITECTTM システムを用いた。
1)一次反応 反応セルで、以下に示す容量の検体、検体希釈液(アッセイ緩衝液)、及びマウスモノクローナル抗体を固相化した磁性微粒子懸濁液を混合する。非磁性粒子は、アッセイ緩衝液または、固相化磁性微粒子懸濁液中に添加した。非特異結合を十分に減らせるように、固相化微粒子には牛血清アルブミンがオーバーコートされまた、アッセイ緩衝液および磁性微粒子縣濁液中には界面活性剤が添加されている。磁性微粒子には英国ポリマーラボ社製カルボキシル基修飾磁性微粒子を、非磁性微粒子には、米国セラディン社製、カルボキシル基修飾ラテックス微粒子を用いた。粒子直径はそれぞれ、約5μm(磁性微粒子), 約0.5μm(非磁性粒子)である。非特異物質の反応は微粒子表面で生じるため、非磁性粒子の粒子径を小さいものにし、添加量当たりの表面積を増やした方が有効であることは言うまでも無い。この検討では、固相化磁性微粒子は0.025%、非磁性粒子は1.25%添加されているため、各微粒子が真球であるとした場合の表面積は非磁性微粒子が磁性微粒子の500倍になっている。またこの検討にはトロンビンの非特異シグナルが観察される血清検体をサンプルとして用いた。
血清検体 50μL
アッセイ緩衝液 50μL
マウスモノクローナル抗体固相化磁性微粒子縣濁液 50μL
3)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応物及び非磁性マイクロパーティクルを除去(B/F分離)し、洗浄液で、反応セル内を洗浄する。
4)二次反応 アクリジニウム標識コンジュゲート(アクリジニウム化抗ヒトトロンビン)溶液 50μLを反応セルに分注する。
5)インキュベーション 攪拌装置で攪拌した後、37℃、4分間インキュベーションし、反応生成物とアクリジニウム標識コンジュゲートの反応を進行させ、磁性微粒子上にトロンビンが非特異的に結合した場合に、磁性微粒子上のトロンビン−標識抗ヒトトロンビン抗体コンジュゲート複合体を形成させる。
6)B/F分離/洗浄 反応セルを次のステップに移送する間に磁石により磁性マイクロパーティクルを反応セルの内壁に押し付けておいて未反応標識コンジュゲートを除去(B/F分離)し、洗浄液で、未反応のコンジュゲートを洗い流し、複合体を浄化する。
7)アクリジニウムの活性化 プレトリガー液を100μL、次いでトリガー液300μLを加え、複合体上のアクリジニウムを活性化する。
8)検出 アクリジニウムの活性化により引き起こされた化学発光を光電子増倍管で検出する(化学発光度は、RLU(相対的化学発光単位)値として数値化される)。
測定結果を図7(非磁性微粒子、未添加時)、図8(非磁性微粒子、添加時)に示した。非磁性微粒子添加時に極めて顕著に、非特異的トロンビンシグナルを減少させる効果が認められた。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
Claims (10)
- 測定検体試料を、抗原又は抗体が固相化されており且つ磁性体を含む微粒子と、該磁性微粒子の表面素材と同じかまたは類似の素材表面を持ち且つ磁性体を含まない微粒子(以下、非磁性微粒子)の共存下、接触せしめる工程、
磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、
磁性微粒子固相に結合している測定する物質と抗原又は抗体の結合物と標識化された抗体とを接触せしめる工程、
磁石の影響下にB/F分離及び洗浄処理する工程、並びに
標識を指標に測定する物質を定量する工程、
を含むことを特徴とする免疫測定方法。 - 前記測定検体試料を前記磁性微粒子と接触させる工程において、前記磁性微粒子に対して、表面積換算で過剰量の前記非磁性微粒子を共存させることを特徴とする請求項1に記載の免疫測定方法。
- 前記磁性微粒子が、ポリマーを用いて製造され且つ抗原が固相化されているものであり、免疫測定方法が抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法であることを特徴とする請求項1又は2に記載の免疫測定方法。
- 抗原が、HIV、HTLV-1、HCV、HBs抗原、HBc抗原、HBe抗原、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスI、水痘ヘルペス、麻疹、カンジダ、トキソプラズマ、マイコプラズマ、風疹、及び梅毒からなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項3に記載の免疫測定方法。
- 抗原特異的ヒト免疫グロブリン測定法が、抗原固定化磁性微粒子と標識化抗ヒト免疫グロブリン抗体とを用いるサンドイッチ法であることを特徴とする請求項3又は4に記載の免疫測定方法。
- 検体が血清、又は血漿などの血液検体である請求項3〜5のいずれか一に記載の免疫測定方法。
- ヒト免疫グロブリンがヒトIgG及び/又はヒトIgMである請求項3〜6のいずれか一に記載の免疫測定方法。
- 測定する物質が、血液凝固因子関連物質またはその分解物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の免疫測定方法。
- 測定する物質が、PIVKA-IIであることを特徴とする請求項8に記載の免疫測定方法。
- 微粒子表面がポリマー素材であることを特徴とする請求項1、2、8及び9のいずれか一に記載の免疫測定方法。
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