JP5005472B2 - 植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離の抑制方法 - Google Patents

植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離の抑制方法 Download PDF

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本発明は、植物ステロールを含有したヨーグルトの発酵時や保存時に生じる油脂の分離を抑制する、植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離抑制剤及び、油脂分離抑制方法に関する。
植物ステロールは、植物に含まれる種々のステロールおよびそれらの混合物の総称で、主要成分として、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、およびプラシカステロール、およびこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、配糖体などが知られている。また植物ステロールは、古くから体内のコレステロールの吸収を阻害して、血清内のコレステロール値を低下させる作用が知られており、最近では大腸ガンや前立腺肥大の改善作用など多くの研究結果が報告されている。従って、このように優れた生理効果を持つ植物ステロールを飲食物に、特にヨーグルトなどの発酵乳食品、飲料やアイスクリームといった食品に添加されることが期待されてきた。しかしながら、植物ステロールはその構造上、油、溶剤、及び水に対する溶解性が極めて低く、高融点であることなどから、食品中に均一に安定化させることが困難であり、時間と共に植物ステロールの油脂が分離するといった問題があり、各種多糖類を用いて水や油に乳化させる方法が検討されてきた。
例えば特許文献1には、水性媒質中に少なくとも1種の疎水性物質及び/又は融点が約130℃よりも高い物質、並びに増粘剤を含む、安定で乳化剤を含まない均一懸濁液が記載されており、疎水性物質及び/又は融点が約130℃よりも高い物質としてフィトステロール類が、増粘剤としてセルロース及びその誘導体が開示されている。同様にして、フィトステロールを含有するマイクロエマルジョンの安定剤としてセルロースエーテルが(特許文献2)、微結晶性セルロースオキシドおよびヒドロキシド(特許文献3)がそれぞれ開示されている。また、特許文献4には、植物ステロールを含有する治療用組成物がヨーグルト等の食品に添加できること、及び更なる食物繊維の使用としてセルロース、ヘミセルロースを使用できること、特許文献5には、フィトステロール製剤に用いられる保護コロイドとして、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが、そして上記保護コロイドを用いて調製されたフィトステロール製剤をヨーグルトに適用できることが開示されている。
一方、特許文献6、7には発酵セルロースを任意添加でヨーグルトに添加できること、特許文献8には、カルシウム強化食品の一例であるヨーグルト等に添加できることが開示されているが、植物ステロールを含有すること、及び発酵セルロースを用いて発酵時や保存時の油脂分離を抑制できることについて一切記載も示唆もされていない。
特表2002−505093号公報 特表2002−535975号公報 特表2002−517418号公報 特表2005−513143号公報 特表2006−514829号公報 特開2006−34112号公報 特開2004−305071号公報 特開平11−187826号公報
このように従来から、セルロースなどの各種多糖類を用いて植物ステロールを水や油に乳化させる方法が検討されてきたが、植物ステロールをヨーグルトに添加させた場合は、植物ステロール中の油脂が分離してヨーグルトの表面に浮く、膜を張るといった問題点を有していた。特に、通常、ヨーグルトは製造工程中に数時間〜数十時間、40℃程度の恒温下に保存する「発酵」という特有過程を有し、この発酵工程中に植物ステロールの油脂の分離が生じ、白い膜状物を形成し、食感、味に悪影響を与えるといった問題点を抱えていた。一方で、この発酵工程中の油脂の分離、浮きを防止しようと微結晶セルロースやヘミセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースや増粘多糖類を用いた場合であっても、発酵工程中の油脂分離を抑制することはできず、むしろセルロースや増粘多糖類を添加することによって、ヨーグルトの組織が荒れてしまう、離水が生じるなど、ヨーグルト自体の味や食感に影響を与えることは避けられず、大きな課題となっていた。同様に、特許文献6〜8には任意添加でヨーグルトに発酵セルロースを添加できる旨が開示されているが、植物ステロールを含有したヨーグルトに発酵セルロースを添加して油脂の分離を抑制することはおろか、植物ステロールを含有したヨーグルト特有の課題自体一切記載も示唆もされていない。
そこで本発明は、ヨーグルトの味や食感に影響を与えることなく、植物ステロール含有ヨーグルト中での油脂の分離・浮きを防止できる、ヨーグルトの油脂分離抑制剤を提供することを目的とする。詳細には、植物ステロールを含有したヨーグルトの発酵工程中に生じる油脂の分離や白い膜状物の生成を顕著に抑制することのできる油脂分離抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、発酵セルロースを添加することにより、植物ステロールを含有したヨーグルトの油脂分離を抑制できることを見出して本発明に至った。また、特に植物ステロールに対して発酵セルロースを2〜20質量%添加することにより、40℃程度で数時間〜数十時間といった過酷な発酵条件下でも、油脂の分離や白い膜状物の生成を顕著に抑制できることを見出して本発明に至った。
本発明は、以下の態様を有する植物ステロール含有ヨーグルト用の油脂分離抑制剤、及び植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離抑制方法に関する;
項1.発酵セルロースを含有することを特徴とする、植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離抑制剤。
項2.更に、ゼラチン、乳清タンパク質、植物性タンパク質、アラビアガム、ガティガム、寒天及び澱粉からなる群から選ばれる1種以上を併用する、項1に記載の植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離抑制剤。
項3.項1又は2に記載の油脂分離抑制剤をヨーグルトに添加することを特徴とする、植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離抑制方法。
項4.植物ステロールに対し、発酵セルロースを1〜20質量%添加する、項3記載の油脂分離抑制方法。
本発明により、味や食感に影響を与えることなく、発酵工程中や保存時に生じる油脂の分離や、白い膜状物の生成が顕著に抑制された植物ステロール含有ヨーグルトを提供することができる。
本発明は、植物ステロール含有ヨーグルト中での油脂の分離を抑制する、油脂分離抑制剤に関する。ここで、油脂分離抑制剤とは、ヨーグルトに植物ステロールを配合した際に生じる、油脂が分離してヨーグルトの表面に浮上する現象や、膜状物を形成する現象等を抑制することができるものをいう。
本発明でいう植物ステロールとは、大豆、菜種、綿実などの植物油脂から抽出、精製されたものであり、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、プラシカスステロール、シトスタノール、カンペスタノール及びそれらのエステル塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上を主成分とするものを使用することができ、好ましくは、β−シトステロール、カンペステロール、およびスチグマステロール及びそれらのエステル化物からなる群から選ばれる1種又は2種以上を主成分とするものである。また、植物ステロールの飽和型である植物スタノールも、植物ステロールの代わりに用いられるか、もしくは植物ステロールと組み合わせて用いることができる。
本発明で植物ステロールは固体のまま、若しくは水やアルコールなどの溶媒に溶解/分散させた液体のいずれの状態でも添加しても良いが、水易溶性となるような加工を施した状態で添加することが好ましい。水易溶性となるような加工の方法としては、通常の方法を使用できるが、例えば、当該植物ステロールと、グリセリン脂肪酸エステルやポリソルベート等の親油性乳化剤およびデキストリンを練り合わせ混合し篩分別したり、流動層造粒したり、噴霧乾燥したりして、粉末化した植物ステロールを含有する易溶性の粉末とする方法(特開2005−269941号公報に記載の方法)や、植物ステロールを融点以上の温度に加熱、溶解した後、アラビアガム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤、水及び多価アルコールを含む液と混合し、乳化若しくは可溶化する方法、植物ステロールと前記乳化剤とを混合した後、融点以上に加熱溶解後、水及び多価アルコールを混合し、乳化若しくは可溶化する方法、植物ステロール、前記乳化剤、水及び多価アルコールを混合した後、融点以上に加熱、溶解後、乳化若しくは可溶化する方法などが挙げられるが、これらの方法に限定されない。水易溶性となるような加工を施した製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンステロール[商標]No.3を挙げることができる。
本発明は前述の油脂分離抑制剤に発酵セルロースを含有することを特徴とする。そして、係る油脂分離抑制剤を添加することにより、ヨーグルトの味や食感に影響を与えることなく、油脂が分離してヨーグルトの表面に浮上する、又は膜状物を生成する等の現象を顕著に抑制することができるようになった。
本発明の原料で用いられる発酵セルロースは、セルロース生産菌が生産するセルロースであれば特に限定されない。通常、セルロース生産菌を既知の方法、例えば特開昭61−212295号公報、特開平3−157402号公報、特開平9−121787号公報に記載される方法に従って培養し、得られる発酵セルロースを所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。
セルロース生産菌としては、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌が挙げられるが、好適にはアセトバクター属である。発酵セルロースを生産するアセトバクター属の細菌として、より具体的には、アセトバクター・パスツリアヌス株(例えば、ATCC10245等)、アセトバクター・エスピーDA株(例えば、FERM P−12924等)、アセトバクター・キシリナム株(例えば、ATCC23768、ATCC23769、ATCC10821、ATCC1306−21等)を挙げることができる。好ましくは、アセトバクター・キシリナム株である。
かかるセルロース生産菌を培養する培地及び条件としては、特に限定されず、常法に従うことができる。例えば、培地は、基本的に窒素源、炭素源、水、酸素及びその他の必要な栄養素を含有しており、上記微生物が増殖して目的の発酵セルロースを産生することができるものであればよく、例えばHestrin−Schramm培地を挙げることができる。なお、セルロースの生産性を向上させるために、培地中にセルロースの部分分解物、イノシトール、フィチン酸等を添加することもできる(特開昭56−46759号公報、特開平5−1718号公報)。培養条件としては、例えばpH5〜9、培養温度20〜40℃の範囲が採用され、発酵セルロースが十分産生されるまで培養が続けられる。培養方法は、静置培養、攪拌培養、通気培養のいずれでもよいが、好適には通気攪拌培養である。
発酵セルロースを大量生産するためには、多段階接種法が好ましい。この場合、通常、2段階の予備接種プロセス、一時接種発酵プロセス、二次接種発酵プロセス及び最終発酵プロセスからなる5段階の発酵プロセスが採用され、各プロセスで増殖された細菌について細胞の形態およびグラム陰性であることを確認しながら、次プロセスの発酵器に継代される。
発酵後、産生された発酵セルロースは培地から分離処理され、洗浄されて、適宜精製される。精製方法は特に限定されないが、通常、培地から回収した発酵セルロースを洗浄後、脱水し、再度水でスラリー化した後に、アルカリ処理によって微生物を除去し、次いで該アルカリ処理によって生じた溶解物を除去する方法が用いられる。具体的には、次の方法が例示される。
まず、微生物の培養によって得られる培養物を脱水し、固形分約20%のケーキとした後、このケーキを水で再スラリー化して固形分を1〜3%にする。これに水酸化ナトリウムを加えて、pH13程度にして攪拌しながら数時間、系を65℃に加熱して、微生物を溶解する。次いで、硫酸でpHを6〜8に調整し、該スラリーを脱水して再度水でスラリー化し、かかる脱水・スラリー化を数回繰り返す。精製された発酵セルロースは、必要に応じて乾燥処理を施すことができる。乾燥処理としては特に制限されることなく、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等の公知の方法を用いることができる。好ましくはスプレードライ法、ドラムドライ法である。
かくして得られる発酵セルロースは、白色から黄褐色の無臭の物質であり、水に急速に分散できる非常に繊細な繊維性粒子からなる。なお、本発明で用いられる発酵セルロースは、上記方法で調製される発酵セルロースと同一若しくは類似の性質を有し、本発明の目的を達成しえるものであれば、その調製方法によって限定されるものではない。
本発明の発酵セルロースは、更に高分子物質と複合化されていることが好ましい。ここで、上記高分子物質と発酵セルロースを複合化させる方法としては、特開平9−121787号公報に記載される2種類の方法が挙げられる。第一の方法は、微生物を培養して発酵セルロースを産生させるにあたり、培地中に高分子物質を添加して培養を行い、発酵セルロースと高分子物質とが複合化した発酵セルロース複合化物として得る方法である。
第二の方法は、微生物の培養によって生産された発酵セルロースのゲルを高分子物質の溶液に浸漬して、高分子物質を発酵セルロースのゲルに含浸させて複合化する方法である。発酵セルロースのゲルは、そのままか、あるいは常法により均一化処理を行ったのちに高分子物質の溶液に浸漬する。均一化処理は、公知の方法で行えばよく、例えばブレンダー処理や500kg/cmで40回程度の高圧ホモジナイザー処理、1000kg/cmで3回程度のナノマイザー処理などを用いた機械的解離処理が有効である。浸漬時間は30分以上24時間程度、好ましくは1夜であり、浸漬終了後は遠心分離や濾過などの方法で浸漬液を除去することが望ましい。さらに、水洗いなどの処理を行って過剰の高分子物質を除去することにより、発酵セルロースと高分子物質の比率が一定になり、複合化に利用されないで残存する高分子物質の影響を抑えることができるため好ましい。
発酵セルロースとの複合化に使用される高分子物質としては、特に限定されず、例として、キサンタンガム、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カラギナン、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)といった各種高分子物質を挙げることができる。
特に、本発明で使用する発酵セルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Naと略す。)、キサンタンガム、及びグァーガムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の高分子物質によって複合化された発酵セルロース複合体を用いることが好ましい。また上記組み合わせの中でも、CMC−Naとキサンタンガム、又はCMC−Naとグァーガムの組み合わせによって複合化された発酵セルロースを用いることがより好ましく、更にはCMC−Naとグァーガムの組み合わせによって複合化された発酵セルロースを用いることが好ましい。前述の複合化された発酵セルロース複合体を用いることにより、ヨーグルトの味や食感に影響を与えることなく、顕著に発酵工程中や保存中の油脂分離や浮き、膜状物の生成を抑制することができる。
発酵セルロースに対する各高分子物質の割合は、複合化させる高分子物質により適宜調節することが可能であるが発酵セルロースに対し、高分子物質が10〜200質量%、更に好ましくは15〜100質量%となるように複合化させることができる。また、高分子物質の中でもCMC−Naとキサンタンガム、若しくはCMC−Naとグァーガムを用いて複合化を行う場合は、発酵セルロースに対し、CMC−Naを10〜200質量%、キサンタンガム又はグァーガムを10〜200質量%、より好ましくはCMC−Naを15〜100質量%、キサンタンガム又はグァーガムを15〜100質量%となるように複合化させることが好ましい。なお、上記複合化物は商業上入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンアーティスト[商標]PX、サンアーティスト[商標]PGなどが挙げられる。
植物ステロール含有ヨーグルトへの油脂分離抑制剤の添加量は、例えば、ヨーグルトに対して、発酵セルロースが0.01〜0.15質量%、好ましくは0.02〜0.1質量%、更に好ましくは0.024〜0.08質量%添加することができる。植物ステロールに対する添加量としては、植物ステロールに対して、発酵セルロースが1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは2.4〜10質量%となるように添加することが好ましい。植物ステロールに対して発酵セルロースの添加量が1質量%より極端に少なくなると、油脂の分離や浮き、白い膜状物の生成を抑制することができない場合があり、一方で発酵セルロースの添加量が20質量%より極端に多くなると、ヨーグルト組織が荒れる場合がある。このように、発酵セルロースを含有した油脂分離抑制剤を用いることにより、少ない添加量においてもヨーグルト中の油脂分離を顕著に抑制することができる。
なお、植物ステロールを含有すると発酵工程時や保存時に油脂の分離が発生するが、本発明の油脂分離抑制剤は特に、植物ステロールの添加量がヨーグルトに対して0.1〜5.0質量%、更には0.5〜3.0質量%であるヨーグルトに対する安定性効果が高いため、上記植物ステロール含量を有するヨーグルトに適用することが好ましい。
本発明の油脂分離抑制剤は、発酵セルロースに加え、ゼラチン、乳清タンパク質、植物性タンパク質、アラビアガム、ガティガム、寒天及び澱粉からなる群から選ばれる一種以上、特に好ましくはゼラチン、乳清タンパク質、ガティガム及び寒天からなる群から選ばれる一種以上を併用することにより、植物ステロール含有ヨーグルトの食感を滑らかにすることができる。植物性タンパク質は、ポテトタンパク質や小麦タンパク質、大豆タンパク質、コーンタンパク質、及び米タンパク質などが例示できる。油脂分離抑制剤中の添加量は、ヨーグルトに対して、ゼラチン、乳清タンパク質、植物性タンパク質、アラビアガム、ガティガム、寒天及び澱粉からなる群から選ばれる一種以上が0.05〜2質量%、好ましくは0.08〜1.5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%となるように添加することが好ましい。油脂分離抑制剤中の発酵セルロースに対する、ゼラチン、乳清タンパク質、植物性タンパク質、アラビアガム、ガティガム、寒天及び澱粉からなる群から選ばれる一種以上の添加量の具体例としては、発酵セルロース1質量部に対して、0.3〜100質量部、好ましくは0.5〜75質量部、更に好ましくは0.6〜50質量部を挙げることができる。
ヨーグルトへの本発明の油脂分離抑制剤の添加方法は、発酵工程中若しくは発酵工程前に油脂分離抑制剤が添加されていれば特に限定されず、様々な添加方法を用いることができる。例えばハードヨーグルトであれば、本発明の油脂分離抑制剤、脱脂粉乳等の乳成分などを50〜90℃の水に適宜添加、攪拌溶解したものに、植物ステロールを加え、更に攪拌溶解、均質化、加熱殺菌を行うことにより添加することができる。また、乳成分及び水などを含む原料を加えて撹拌溶解を行い、全量補正後、均質化してから油脂分離抑制剤を添加することもできる。そして、上記組成物にスターター(乳酸菌)を加え、発酵を行うことにより油脂分離や浮きが抑制された植物ステロール含有ヨーグルトを調製することができる。
本発明の油脂分離抑制剤の対象となるヨーグルトは、原料をタンクなどに入れて発酵した後、製造された発酵乳を容器充填する方法(前発酵方式)によって調製されるソフトヨーグルト(撹拌ヨーグルト)や、原料乳と乳酸菌などを混合した混合原料を容器充填し、その容器内で発酵させる方法(後発酵方法)によって調製されるハードヨーグルト(固形ヨーグルト)等が挙げられる。中でも、後発酵方式で製造されるハードヨーグルトは、混合原料を容器充填し、そのまま発酵する製法をとるため、発酵後にカードの破砕工程を経るソフトヨーグルトに比べ、特に油脂の分離や浮き、膜状物の生成が商品価値に多大な影響を与えるが、本発明の油脂分離抑制剤は係る問題点を解決できるものである。更に、本発明の油脂分離抑制剤を用いることによって、例えば35〜42℃で4〜25時間といった長時間高温にさらされる発酵工程中においても顕著に油脂の分離や浮き、膜状物の生成を顕著に抑制することが可能である。
発酵セルロースを含有した本発明の油脂分離抑制剤のヨーグルトへの添加時期は、発酵工程中若しくは発酵工程前に油脂分離抑制剤が添加されていれば特に限定されず、様々な添加方法を用いることができる。例えばハードヨーグルトであれば、本発明の油脂分離抑制剤、脱脂粉乳等の乳成分などを50〜90℃の水に適宜添加、攪拌溶解したものに、植物ステロールを加え、更に攪拌溶解、均質化、加熱殺菌を行うことにより添加することができる。また、乳成分及び水、植物ステロールなどを含む原料を加えて撹拌溶解を行い、全量補正後、均質化してから油脂分離抑制剤を添加することもできる。そして、上記組成物にスターター(乳酸菌)を加え、発酵を行うことにより油脂分離や浮きが抑制された油脂含有ヨーグルトを調製することができる。
均質化は、一般的な方法を用いることができる。例えば、市販のホモミキサーやホモゲナイザーにて処理する方法を挙げることができるが、2段均質化を行うのが好ましい。均質化条件として、例えば2段均質化を行う場合、60〜80℃で、第一段階 9.8×10Pa(100kgf/cm)、第二段階 4.7×10Pa(50kgf/cm)の計14.7×10Pa(150kgf/cm)を挙げることができる。また、均質化を数回繰り返しても良い。
本発明の油脂分離抑制剤は、本発明の効果を妨げない範囲内において、増粘多糖類や乳化剤、カゼインナトリウム、有機酸及びその塩、糖類、高甘味度甘味料、香料、色素等を添加することができる。
本発明は、上述の油脂分離抑制剤を添加することを特徴とする、植物ステロール含有ヨーグルトの油脂分離抑制方法を提供するものである。当該方法は、上述するように、発酵セルロースを含有する油脂分離抑制剤を植物ステロール含有ヨーグルトに添加することにより実施することができる。なお、油脂分離抑制剤をヨーグルトに添加する方法としては、上述の方法をとることができる。
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明は
これらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量部
」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
実験例1 植物ステロール入りヨーグルトの調製
表1〜3の処方に従って、植物ステロール含有ヨーグルト(ハードヨーグルト)を調製した。詳細には、水に牛乳、全脂粉乳、植物ステロールエステル、油脂分離抑制剤、砂糖の混合物を加え70℃で撹拌、溶解した。同温度で均質化し(条件:50kgf/cm)、90℃で10分間バッチ殺菌を行った。殺菌した液を約40℃まで水冷した後、スターターを3%添加し、液をカップに充填、40℃の恒温機でヨーグルトのpHが4.5になるまで発酵させ(4.5〜6時間程度)植物ステロール入りヨーグルトを調製した。調製したヨーグルトは、発酵後4℃にて2日間冷蔵保存し、油脂の分離状態(表面に生じる白い膜)、食感、風味について評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 0005005472
注1)植物ステロールエステル製剤として、サンステロール※No.3*を使用した。
Figure 0005005472
注2)発酵セルロース含有製剤:サンアーティスト※PG*(発酵セルロース20%、CMC−Na6.7%、グァーガム6.7%含有製剤)を用いた。表2に示す値は発酵セルロース自体の添加量である。
Figure 0005005472
Figure 0005005472
<表中の記号の説明>
++++:極めて多い
+++:多い
++:少ない
+:ごくわずか
±:ない
発酵セルロースを油脂分離抑制剤として添加した実施例1〜11は、植物ステロールを含有した状態で40℃、4.5〜6時間といった発酵工程を経たにも関わらず、その油脂の分離や浮きを顕著に抑制することができた。一方、油脂分離抑制剤を添加しないで調製されたヨーグルト(比較例5)は、油脂の分離や浮きの顕著な発生が確認された。また、セルロースであっても、発酵セルロースではなく、微結晶セルロース(比較例1)やカルボキシメチルセルロースナトリウム(比較例2)、大豆多糖類(水溶性ヘミセルロース、比較例3)を用いた場合は、油脂の分離・浮きを防止することはできず、更にはヨーグルト自体が荒れたり、異味を付与させてしまうものであった。また、発酵セルロースを含有する油脂分離抑制剤の中でも、特にゼラチン、乳清タンパク質、ガティガム、又は寒天と併用した油脂分離抑制剤(実施例5〜8)を用いることによって、植物ステロールの油脂分離や浮きが抑制された上に、ヨーグルトの組織自体の荒れもほぼなく、滑らかな食感のヨーグルトを調製することができた。一方、発酵セルロースに加え、グァーガム、キサンタンガム又はタマリンドシードガムを併用した油脂分離抑制剤を添加したヨーグルト(実施例9〜11)は、植物ステロールの油脂の分離・浮きは防止できるものの、ヨーグルトの組織が荒れる、ざらつきが残る、離水が多くなるといった現象が生じた。
実験例2 植物ステロール入りヨーグルト
表5、6に示す処方に従って植物ステロール入りヨーグルトを調製した。詳細には、水に牛乳、全脂粉乳、植物ステロールエステル、油脂分離抑制剤、砂糖の混合物を加え70℃で撹拌、溶解した。同温度で均質化し(条件:50kgf/cm)、90℃で10分間バッチ殺菌を行った。殺菌した液を約40℃まで水冷した後、スターターを2%添加し、液をカップに充填、40℃の恒温機でヨーグルトのpHが4.5になるまで発酵させ(7〜15時間程度)植物ステロール入りヨーグルトを調製した。調製したヨーグルトは、発酵後4℃にて2日間冷蔵保存し、油脂の分離状態について評価を行った。結果を表6に示す。
Figure 0005005472
Figure 0005005472
注3)発酵セルロース含有製剤:サンアーティスト※PX*(発酵セルロース20%、CMC−Na3.3%、キサンタンガム10%含有製剤)を用いた。実験例1と同様、表6に示す値は発酵セルロース自体の添加量である。
発酵セルロースを油脂分離抑制剤として添加することによって、40℃、7〜15時間といった長時間発酵を経たにも関わらず、顕著に植物ステロールの油脂分離を抑制できるヨーグルトを調製することができた。
本発明により、油脂の分離や浮きが抑制された、植物ステロール含有ヨーグルトを提供することができる。

Claims (3)

  1. 発酵工程前若しくは発酵工程中に、植物ステロールに対して1〜20質量%の発酵セルロースを添加することを特徴とする、植物ステロール含有ヨーグルトの発酵工程中に生じる油脂分離の抑制方法。
  2. 発酵工程前若しくは発酵工程中に、植物ステロールに対して1〜20質量%の発酵セルロースを添加することを特徴とする、発酵工程中に生じる油脂分離が抑制された植物ステロール含有ヨーグルト。
  3. 更に、ゼラチン、乳清タンパク質、植物性タンパク質、アラビアガム、ガティガム、寒天及び澱粉からなる群から選ばれる1種以上を併用する、請求項2に記載の植物ステロール含有ヨーグルト。

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