以下、本発明に係る制振構造及び制振装置の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(A)及び(B)に、本実施形態における制振構造1が示されている。該制振構造1は、例えば、FR車や4WD車などの後輪を駆動させる自動車の駆動系10の振動を制振するための構造であり、該駆動系10の振動を制振する制振装置20を備えてなる。
駆動系10は、動力を発生する動力発生部としてのエンジン11と、前記エンジン11に取り付けられるトランスミッション12と、該トランスミッション12に一端部が連結される伝達軸としてのプロペラシャフト13と、該プロペラシャフト13の他端部に連結され、前記エンジン11から発生した動力が伝達される被伝達部としてのデフ部14と、デフ部14に一端部151が連結される一対のドライブシャフト15と、各ドライブシャフト15の他端部152にそれぞれ接続される一対の後輪としてのタイヤ16とを備える。
エンジン11は、例えばガソリン等の液体燃料を燃焼することで動力を発生するように構成されている。本実施形態では、エンジン11の動力発生は、エンジンコントロールユニット(ECU111)によって制御されている。このECU111は、エンジン11の点火系や燃料系などの制御を行うものであり、エンジン11の回転数やエンジン11の点火指令などのエンジン回転数に関するエンジン回転数関連信号を出力することができるように構成されている。尚、エンジン回転数関連信号は、常時出力されている。
トランスミッション12は、変速機であり、エンジン11から発生した動力を適宜変換してプロペラシャフト13に伝達するものである。本実施形態では、トランスミッション12は、エンジン11の後端部に連結されている。
プロペラシャフト13は、エンジン11から発生した動力をデフ部14に伝達することができるように構成されている。具体的には、プロペラシャフト13は、その軸線C1が前後方向に沿って形成される軸であり、その一端部である前端部131がトランスミッション12に連結されている。かかるプロペラシャフト13は、エンジン11から発生した動力をトランスミッション12を介して捩れ荷重として受けて軸線C1回りに回転することで動力を前記デフ部14に伝達する。
デフ部14は、ドライブシャフト15に動力を伝達するためのデフギア(図示しない)と、該デフギアが収納されるデフケース140とを備えてなる。デフケース140は、本体部141と、該本体部141と一体的に形成される連結部142とを備えてなる。
本体部141は、高さ方向に対向する天壁部1411及び底壁部1412と、前後方向に対向する前壁部1413及び後壁部1414と、幅方向に対向する左壁部1415及び右壁部1416とを備える箱状体である。連結部142は、前記本体部141の前壁部1413から前方側へ向けて突設される筒状体である。本実施形態では、連結部142は、その軸線が前後方向に沿って形成される円筒形状であり、その外径は、本体部141の高さ方向及び幅方向の何れの寸法よりも小さくなっている。即ち、連結部142の高さ方向の寸法は、本体部141の高さ方向の寸法よりも小さく、また、連結部142の幅方向の寸法は、本体部141の幅方向の寸法よりも小さくなっている。尚、本実施形態では、連結部142の軸線は、デフ部14の中心線C1となっている。尚、連結部142は、円筒形状に限らず、前方側ほど小径となる円錐形状であってもよい。
かかるデフ部14は、プロペラシャフト13の他端部に連結されている。具体的には、デフ部14は、プロペラシャフト13の軸線C1とデフ部14の中心線C1とが一致する向きで、プロペラシャフト13の他端部である後端部132に連結部142が連結されることによって、プロペラシャフト13に連結されている。よって、デフ部14の中心線C1は、前後方向に沿った線となっている。尚、かかる連結によって、デフケース140に収納されているデフギアはプロペラシャフト13と噛み合うこととなる。このように、デフ部14がプロペラシャフト13の他端部に連結されることによって、前記エンジン11から発生する動力がプロペラシャフト13を介してデフ部14に伝達されることとなる。
ドライブシャフト15は、その軸線C2がデフ部14の幅方向に沿って形成される軸であり、デフ部14の幅方向両側に一対設けられており、一端部151がデフ部14にそれぞれの連結されている。具体的には、ドライブシャフト15の一端部151は、デフケース140の本体部141の右壁部1416又は左壁部1415に連結されており、デフケース140に収納されているデフギアに接続されている。そして、ドライブシャフト15の他端部152には、タイヤ16が取り付けられている。
このような構成の駆動系10は、エンジン11から発生した動力がトランスミッション12にて減速されてプロペラシャフト13に伝達されることにより、該プロペラシャフト13がその軸線C1周りに回転する。そして、かかるプロペラシャフト13の回転により、前記動力がデフ部14に伝達され、デフケース140に収納されているデフギアが作動する。そして、デフギアが作動することによって、デフ部14からドライブシャフト15に動力が伝達され、該ドライブシャフト15がその軸線C2周りに回転することによってタイヤ16が回転する。
前記制振装置20は、エンジン11から発生した動力が伝達されることで発生するデフ部14(若しくは、デフ部14及びプロペラシャフト13)の振動を、該振動によって変位することで検出することができる振動検出部21と、当該振動を制振することができる制振部22と、前記振動検出部21の検出結果に基づいて、振動検出部21が検出した振動を制振するように前記制振部22を制御する制御部23とを備えてなる。
振動検出部21は、変位することで振動の加速度や速度、変位量などを読み取って、当該振動の振動状態を検出することができるセンサであり、当該加速度や速度、変位量などの振動に関する振動関連信号を出力することができるように構成されている。尚、振動関連信号は、常時出力されている。振動検出部21としては、例えば、速度センサ又は加速度センサ、振動センサなどの各種センサを採用することができる。また、振動検出部21には、振動を検出することができる検出方向X1が設定されており、振動検出部21は、当該検出方向X1に変位することによって、変位に係る振動を検出することができるようになっている。つまり、振動検出部21は、設置されている位置における振動を検出することができるようになっている。
かかる振動検出部21は、デフ部14に取り付けられている。具体的には、振動検出部21は、デフ部14の中心線C1(プロペラシャフト13の軸線C1)を通り高さ方向に平行な平面Sよりも幅方向一方側(本実施形態では、前方向に対して右側)に取り付けられている。より詳細には、振動検出部21は、デフ部14の幅方向一端部、具体的には、前記デフケース140の本体部141の底壁部1412の右壁部1416側の端部1412aに取り付けられている。
また、振動検出部21は、その前記検出方向X1がデフ部14(若しくは、デフ部14及びプロペラシャフト13)に生じる振動の振動方向と一致するように設けられている。具体的には、振動検出部21は、その検出方向X1がデフ部14の高さ方向に沿う向きとなるようにデフ部14に取り付けられている。
尚、本実施形態では、振動検出部21は、ドライブシャフト15の軸線C2よりも後方側、具体的にはデフ部14の後端部14aに取り付けられており、しかも、当該軸線C2よりも下方側に取り付けられている。また、振動検出部21は、デフケース140の外面に取り付けられている。
前記制振部22は、図2に示すように、扁平な板状のベース部221と、該ベース上に設けられるアクチュエータ222と、該アクチュエータ222に支持される錘223とを備えてなる。制振部22は、錘223を振動させて制振振動を発生させることによって、デフ部14(若しくは、デフ部14及びプロペラシャフト13)に生じる振動の振動エネルギーを吸収し、これによりデフ部14(若しくは、デフ部14及びプロペラシャフト13)に生じる振動を制振するものである。つまり、制振部22は、設置位置に制振加振力を作用させて制振振動を加えることによって、制振すべき振動の振動エネルギーを吸収して該振動を打ち消すことができるように構成されている。尚、制振部22には、振動を制振することができる制振方向X2、つまり、発生させる制振振動の振動方向が設定されており、かかる制振方向X2に対応した振動を制振することができるようになっている。
アクチュエータ222は、モータ2221と、該モータ2221の駆動力によって振動する支持部2222とを備える。モータ2221は、直動式であり、本実施形態ではリニアモータである。このモータ2221は、固定子2221aがベース部221に設けられ、可動子2221bが支持部2222に取り付けられており、その駆動方向X21がベース部221の厚み方向となるように設置されている。尚、本実施形態においては、モータ2221は、可動子2221bが前記駆動方向X21に沿って振動するように駆動される。
支持部2222は、錘223を支持することができるように構成されており、モータ2221の可動子2221bの動きに伴って前記駆動方向X21に沿って振動する。即ち、支持部2222は、モータ2221によってベース部221の厚み方向に沿って当該ベース部221に接離するように振動する。故に、支持部2222に支持されている錘223は、ベース部221に接離するように振動し、該振動が制振振動となる。つまり、制振部22は、アクチュエータ222が制振加振力を作用させて錘223を振動させることによって制振振動を発生させるように構成されている。
かかる制振部22は、デフ部14に取り付けられている。具体的には、制振部22は、前記振動検出部21よりもデフ部14の幅方向に位置ずれして取り付けられている。より詳細に説明すると、制振部22は、デフ部14の中心線C1(プロペラシャフト13の軸線C1)を通り高さ方向に平行な平面Sよりも幅方向他方側(本実施形態では、前方向に対して左側)に取り付けられている。
更に、制振部22は、ドライブシャフト15の軸線C2よりも前方側、具体的にはデフ部14の前端部14bに取り付けられており、しかも、制振振動を付与する位置が前記軸線C2と同じ高さ位置となるように取り付けられている。本実施形態では、制振部22は、ベース部221が前記連結部142の径方向外方且つ前記幅方向他方側に突出するように取り付けられ、アクチュエータ222と錘223とが連結部142よりも前記幅方向他方側の配置となるように、当該連結部142に取り付けられている。
また、制振部22は、その前記制振方向X2がデフ部14(若しくは、デフ部14及びプロペラシャフト13)に生じる振動の振動方向と一致するように設けられている。具体的には、制振部22は、その制振方向X2がデフ部14の高さ方向に沿う向きとなるようにデフ部14に取り付けられている。
従って、前記振動検出部21と制振部22とは、プロペラシャフト13の軸線C1を境にしてデフ部14の幅方向一方側と他方側とに配置され、且つ、ドライブシャフト15の軸線C2を境にして後方側と前方側とに配置されている。しかも、振動検出部21の検出方向X1と制振部22の制振方向X2とは、互いに一致した方向となっている。
前記制御部23は、前記振動検出部21の検出結果に基づいて、振動検出部21が検出した振動の振動状態を演算し、この演算結果に基づいて、当該検出した振動を制振することができる制振振動を算出し、算出結果に基づいて、前記検出した振動を制振部22にて制振することができるように当該制振部22を制御するように構成されている。
具体的には、制御部23は、前記ECU111にて出力されるエンジン回転数関連信号と、前記振動検出部21にて出力される振動関連信号とを受信可能に構成されている。そして、制御部23は、エンジン回転数関連信号と振動関連信号とが入力されると、該エンジン回転数関連信号と振動関連信号とに基づいて、現に発生している振動の振動状態を演算する。つまり、デフ部14(若しくは、デフ部14及びプロペラシャフト13)に生じている振動の周波数や振幅、位相などを算出しての当該振動の振動状態を演算する。次に、制御部23は、当該振動の振動エネルギーを吸収することができる制振振動の周波数や振幅、位相などを算出し、当該算出された制振振動の周波数や振幅、位相などを示す制振信号を制振部22へ出力する。そして、制振部22は、制振信号を含む制振指令を受けると、該制振信号の内容に従ってアクチュエータ222を駆動して錘223を振動させて制振振動を発生させる。尚、制御部23には、制振部22によって発生する制振振動を起こさせるための制振加振力から振動検出部21による振動関連信号の出力までの伝達特性(位相特性)を考慮して位相補正手段を備えさせることも可能である。
続いて、以上のような構成の制振構造1及び制振装置20の制振作用について、図3乃至8を参酌して説明する。尚、ここで説明した駆動系10の振動には、エンジン11から発生する動力の周波数変動に応じて様々な振動モードがあるが、ここでは、上記制振構造1、制振装置20にて制振することができる主たる振動モードについて説明する。
図3は、第1振動モードにかかる振動を制振する様子を示している。この第1振動モードは、プロペラシャフト13とデフ部14とが共にデフ部14の高さ方向(図3では上下方向)に振動する振動モード、具体的には、プロペラシャフト13とデフ部14とが共にデフ部14の高さ方向に一体的に平行移動して振動する振動モードである。
この場合、振動検出部21は、デフ部14に取り付けられているため、プロペラシャフト13とデフ部14との振動に伴ってデフ部14の高さ方向(即ち、前記検出方向X1)に変位する。これにより、振動検出部21は、第1振動モードにかかる振動の振動状態を検出して振動関連信号を制御部23に出力する。
そして、振動検出部21から振動関連信号が入力された制御部23は、当該振動関連信号とECU111から受信したエンジン回転数関連信号とに基づいて現に発生している振動の振動状態を把握し、当該振動を制振するための制振振動を算出し、該制振振動に関する制振信号を制振部22に出力する。
そして、制御部23から制振信号を含む制振指令を受けた制振部22は、デフ部14に取り付けられているため、当該制振信号の内容に応じてアクチュエータ222を駆動させて制振振動を起こさせるための制振加振力を作用させることができ、これにより、錘223が振動して制振振動が発生し、第1振動モードの振動を制振することができる。
次に、図4は、第2振動モードにかかる振動を制振する様子を示している。この第2振動モードは、デフ部14のみがその高さ方向に振動する振動モード、具体的には、デフ部14のみがデフ部14の高さ方向に平行移動して振動する振動モードである。
この場合、振動検出部21は、デフ部14に取り付けられているため、デフ部14の振動に伴ってデフ部14の高さ方向(即ち、前記検出方向X1)に変位する。これにより、振動検出部21は、第2振動モードにかかる振動の振動状態を検出して振動関連信号を制御部23に入力する。
そして、振動検出部21から振動関連信号を受信した制御部23は、当該振動関連信号とECU111から受信したエンジン回転数関連信号とに基づいて現に発生している振動の振動状態を把握し、当該振動を制振するための制振振動を算出し、該制振振動に関する制振信号を制振部22に出力する。
そして、制御部23から制振信号を含む制振指令を入力された制振部22は、デフ部14に取り付けられているため、当該制振信号の内容に応じてアクチュエータ222を駆動させて制振振動を起こさせるための制振加振力を作用させることができ、これにより、錘223が振動して制振振動が発生し、第2振動モードの振動を制振することができる。
次に、図5は、第3振動モードにかかる振動を制振する様子を示している。この第3振動モードは、デフ部14がプロペラシャフト13との連結部分を通りドライブシャフト15の軸線C2に平行な軸線C3を中心としてデフ部14の高さ方向に揺振する振動モード、つまり、デフ部14がその前端部14bを通りドライブシャフト15の軸線C2に平行な軸線C3周りに高さ方向に振り子のように振動する振動モードである。
この場合、振動検出部21は、デフ部14に取り付けられているため、デフ部14の揺振に伴ってデフ部14の高さ方向(即ち、前記検出方向X1)に変位する。これにより、振動検出部21は、当該揺振の振動状態を検出して振動関連信号を制御部23に入力する。ここで、本実施形態では、振動検出部21は、デフ部14の後端部14aに取り付けられているので、デフ部14の前端部14bを通りドライブシャフト15の軸線C2に平行な軸線C3を中心とする揺振による変位量が大きくなり、従って、当該揺振を確実に検出することができる。
そして、振動検出部21から振動関連信号を受信した制御部23は、当該振動関連信号とECU111から受信したエンジン回転数関連信号とに基づいて現に発生している揺振の振動状態を把握し、当該揺振を制振するための制振振動を算出し、該制振振動に関する制振信号を制振部22に出力する。
そして、制御部23から制振信号を含む制振指令を受けた制振部22は、デフ部14に取り付けられているため、当該制振信号の内容に応じてアクチュエータ222を駆動させて制振振動を起こさせるための制振加振力を作用させることができ、これにより、錘223が振動して制振振動が発生し、第3振動モードの振動を制振することができる。
次に、図6は、第4振動モードにかかる振動を制振する様子を示している。この第4振動モードは、プロペラシャフト13とデフ部14との連結部分がデフ部14の高さ方向に変位し、これに伴ってプロペラシャフト13とデフ部14とがそれぞれ当該高さ方向に揺振する振動モード、より詳細には、デフ部14がドライブシャフト15の軸線C2周りに高さ方向に振り子のように振動し、それと共に、プロペラシャフト13がその前端部131を中心にして前記高さ方向に振り子のように振動する振動モードである。
この場合、振動検出部21は、デフ部14の後端部14aに取り付けられている、即ち、振動検出部21の振動検出の位置がデフ部14の揺振の中心軸線(即ち、ドライブシャフト15の軸線C2)よりも後方側となっているので、ドライブシャフト15の軸線C2を中心とするデフ部14の揺振に伴ってデフ部14の高さ方向(即ち、前記検出方向X1)に変位する。これにより、振動検出部21は、当該揺振の振動状態を検出して振動関連信号を制御部23に入力する。
そして、振動検出部21から振動関連信号を受信した制御部23は、当該振動関連信号とECU111から受信したエンジン回転数関連信号とに基づいて現に発生している揺振の振動状態を把握し、当該揺振を制振するための制振振動を算出し、該制振振動に関する制振信号を制振部22に出力する。
そして、制御部23から制振信号を含む制振指令を受けた制振部22は、デフ部14に取り付けられているため、当該制振信号の内容に応じてアクチュエータ222を駆動させて制振振動を起こさせるための制振加振力を作用させることができ、これにより、錘223が振動して制振振動が発生し、第4振動モードの振動を制振することができる。
尚、本実施形態では、制振部22は、デフ部14とプロペラシャフト13との連結部142の近傍であるデフ部14の前端部14bに取り付けられている、つまり、制振部22によって作用する制振加振力の作用点がデフ部14の揺振の中心軸線(即ち、ドライブシャフト15の軸線C2)よりも前方側に配置されており、当該作用点が第4振動モードの振動における振幅の大きい部分に配置されることとなるので、効果的に制振することができる。
次に、図7は、第5振動モードにかかる振動を制振する様子を示している。この第5振動モードは、デフ部14がプロペラシャフト13の軸線C1周りに回転振動する振動モードである。
この場合、振動検出部21は、デフ部14に取り付けられている、即ち、振動検出部21の振動検出の位置がデフ部14の回転振動の中心軸線(プロペラシャフト13の軸線C1)よりもデフ部14の幅方向一方側となっているので、デフ部14の回転振動に伴ってデフ部14の高さ方向(即ち、前記検出方向X1)に変位する。これにより、振動検出部21は、当該回転振動の振動状態を検出して振動関連信号を制御部23に入力する。ここで、本実施形態では、振動検出部21は、デフ部14の幅方向一端部に取り付けられているので、幅方向中央部に取り付けられている場合よりも、プロペラシャフト13の軸線C1周りの回転振動において高さ方向(検出方向X1)の変位量が大きくなり、従って、当該回転振動を確実に検出することができる。
そして、振動検出部21から振動関連信号が入力された制御部23は、当該振動関連信号とECU111から受信したエンジン回転数関連信号とに基づいて現に発生している回転振動の振動状態を把握し、当該回転振動を制振するための制振振動を算出し、該制振振動に関する制振信号を制振部22へ送信する。
そして、制御部23から制振信号を含む制振指令を受けた制振部22は、デフ部14に取り付けられているため、当該制振信号の内容に応じてアクチュエータ222を駆動させて制振振動を起こさせるための制振加振力を作用させることができ、これにより、錘223が振動して制振振動が発生し、第5振動モードの振動を制振することができる。
尚、本実施形態では、制振部22は、デフ部14の中心線C1(プロペラシャフト13の軸線C1)を通り高さ方向に平行な平面Sよりも幅方向他方側(本実施形態では、前方向に対して左側)に取り付けられている、つまり、制振部22によって作用する制振加振力の作用点は、デフ部14の回転振動の中心軸線(プロペラシャフト13の軸線C1)よりもデフ部14の幅方向他方側に配置されており、当該作用点が第5振動モードの振動における振幅の大きい部分に配置されることとなるので、効果的に制振することができる。
尚、前記第5振動モードにかかる振動が発生している場合においては、制振部22が制振振動を発生させて当該振動を制振しても、図8に示すように、制振部22の設置位置近傍を通るプロペラシャフト13の軸線C1に平行な軸線C4周りにデフ部14が揺振する残留振動、具体的には、デフ部14がその幅方向他端部側を通り且つプロペラシャフト13の軸線C1に平行な軸線C4周りに高さ方向に振り子のように振動する残留振動が生じる場合がある。
このような場合であっても、振動検出部21と制振部22とがデフ部14の幅方向に位置ずれして設けられているので、振動検出部21は、制振部22近傍の前記軸線C4周りのデフ部14の揺振に伴ってデフ部14の高さ方向(即ち、前記検出方向X1)に変位する。これにより、振動検出部21は、当該揺振の振動状態を検出して振動関連信号を制御部23へ送信する。
ここで、本実施形態では、プロペラシャフト13の軸線C1を境にして、振動検出部21がデフ部14の幅方向一端側に取り付けられ、制振部22がデフ部14の幅方向他端側に取り付けられている、換言すると、振動検出部21と制振部22とが前記幅方向に可及的に離間して設けられているので、振動検出部21は、制振部22の設置位置近傍の前記軸線C4周りのデフ部14の揺振において、その高さ方向(検出方向X1)の変位量が大きくなり、従って、当該揺振を確実に検出することができる。
そして、振動検出部21から振動関連信号を受信した制御部23は、当該振動関連信号とECU111から受信したエンジン回転数関連信号とに基づいて現に発生している揺振の振動状態を把握し、当該揺振を制振するための制振振動を算出し、該制振振動に関する制振信号を制振部22に出力する。
そして、制御部23から制振信号を受信した制振部22は、デフ部14に取り付けられているため、当該制振信号の内容に応じてアクチュエータ222を駆動させて制振振動を起こさせるための制振加振力を作用させることができ、これにより、錘223が振動して制振振動が発生し、当該残留振動を制振することができる。
以上のように、振動検出部21と制振部22とは、第1乃至第5振動モードにかかる振動及び残留振動をそれぞれ制振することができるように配置されている。具体的には、振動検出部21と制振部22とのそれぞれの配置が、制振部22によって作用する制振加振力から振動検出部21による振動関連信号の出力までの伝達関数を、制振の対象となる振動の振動モード(本実施形態においては、第1乃至第5振動モード)及び残留振動にかかる振動モードのピークゲインの差が60dB、好ましくは40dB以内になるような配置となっていれば、振動検出部21にて、第1乃至第5振動モードのそれぞれにかかる振動及び残留振動の振動状態を検出し、その検出結果に基づいて、制御部23にて制振部22を制御して前記検出された振動の振動エネルギーを吸収するための制振振動を発生させることによって、前記何れの振動モードの振動であっても確実に制振することができる結果、広範囲の周波数領域での複数の振動モードにかかる振動を確実に制振することができる。
尚、本実施形態では、動力発生部が液体燃料を燃焼することで動力を発生するエンジンである場合について説明したが、これに限らず、電気自動車であってもよい。
また、本実施形態では、デフ部14若しくはデフ部14とプロペラシャフト13とに生じる振動を制振する場合について説明したが、これに限らず、その他の駆動系10の部分に生じる振動を制振する場合であってもよい。
また、本実施形態では、振動検出部21と制振部22とが、プロペラシャフト13の軸線C1を境にして、デフ部14の幅方向一方側と他方側とに配置される場合について説明したが、これに限らず、例えば、振動検出部21又は制振部22の何れか一方を、デフ部14の幅方向中央部に配置してもよい。但し、振動検出部21と制振部22とがデフ部14の幅方向に可及的に離間するように配置するのが好ましい。
因みに、振動検出部21と制振部22とを、デフ部14の幅方向において一致するように配置した場合、具体的には、振動検出部21と制振部22とが高さ方向に並ぶように、例えば制振部22のベース部221の下面に振動検出部21を設けた場合には、残留振動を制振することが困難となるものの、第1乃至第5振動モードにかかる振動をそれぞれ制振することができる。また、振動検出部21と制振部22とを一体的に形成することができるので、装置の小型化を図ることができる。
更に、本実施形態では、エンジン11の動力発生をエンジンコントロールユニット(ECU111)にて制御し、該ECU111からエンジン回転数関連信号を得る場合について説明したが、これに限らず、ECU111を設けず、エンジン11から直接に点火パルス信号や点火電流信号、クランク角信号などの各種信号を得るようにすることもできる。
また更に、本実施形態では、振動検出部21がドライブシャフト15の軸線C2よりも後方側に設けられている場合について説明したが、これに限らず、当該軸線C2よりも前方側に設けられている場合であってもよい。
また、本実施形態では、制振部22がドライブシャフト15の軸線C2よりも前方側に設けられている場合について説明したが、これに限らず、当該軸線C2よりも後方側に設けられている場合であってもよい。
更に、本実施形態では、振動検出部21と制振部22とがドライブシャフト15の軸線C2を境にして後方側と前方側とに配置されている場合について説明したが、これに限らず、両方とも当該軸線C2の後方側又は前方側に配置される場合であってもよい。
また更に、本実施形態では、振動検出部21と制振部22とがデフケース140の外面に設けられている場合について説明したが、これに限らず、デフケース140の内部に設けられてもよい。
1…制振構造、10…駆動系、11…エンジン(動力発生部)、12…トランスミッション、13…プロペラシャフト(伝達部)、14…デフ部(被伝達部)、15…ドライブシャフト、16…タイヤ、20…制振装置、21…振動検出部、22…制振部、23…制御部、140…デフケース、141…本体部、142…連結部、221…ベース部、222…アクチュエータ、223…錘、1411…天壁部、1412…底壁部、1413…前壁部、1414…後壁部、1415…左壁部、1416…右壁部、2221…モータ、2221a…固定子、2221b…可動子、2222…支持部、X1…検出方向、X2…制振方向、X21…駆動方向、X22…振動方向