本発明は電圧無印加状態において基板面に対して略平行配向(ホモジニアス配向)し、電圧印加状態において基板面に対して略垂直配向(ホメトロピック配向)する、例えばECBモードの、液晶表示装置に関し、視野角特性を向上させる光学補償法に関するものである。
液晶表示装置については従来種々のモードが提案されている。その一つとして、電気的に制御される複屈折効果を利用した、いわゆるECBモードの液晶表示装置が知られている。ECBモードの液晶表示装置は、通常、2枚のクロスニコル配置の偏光板で液晶セルを挟み、液晶セルに電界を印加して液晶セルの複屈折を変化させて、液晶セルを通過する光量を調整して、表示する方式である。その一例として、電圧無印加時に液晶層をホモジニアス配向させて黒表示とし、電圧印加時に配向を制御して白表示とする、ノーマリーブラック表示方式がある。
ECBモードの液晶表示装置は、液晶のねじれ配向を利用していないので、応答速度が速いという利点を有する。しかし、電圧無印加時に液晶層がホモジニアス配向したECBモードの液晶表示装置では、表示色のシフトやコントラストの低下が、斜め方向において観察され、視野角の拡大が望まれている。例えば、特許文献1には、視角に依存した表示色の変化を軽減することを目的として、基板面に対して垂直な方向に光軸を有する正の光学異方性の一軸媒体を液晶層と偏光子との間に配置し、各表示画素ごとに定まる表示色の違いに応じて、前記一軸媒体の屈折率異方性と該一軸媒体の厚みとの積が異なるようにしたECBモードの液晶表示装置が提案されている。また、特許文献2には、液晶セルと偏光板との間に光学的補償手段を配置して、電圧無印加時(ホモジニアス配向時)の液晶セルのレターデーションを相殺することが提案されている。また特許文献2には、光学的補償手段として、液晶中の液晶性分子の配向を制御するためのラビング軸と直交する方向のラビング軸で配向制御されたホモジニアス配向の液晶セルが利用可能であること、及び複屈折フィルムを使用してもよいことが記載されている。
しかし、大画面用等、用途によっては、より広い視野角にわたって、高コントラストな高品位の画像を表示することが必要であり、上記の技術では満足できるものではない。
特開平03−9319号公報
特開平04−40427号公報
本発明は、広い視野角にわたって、高コントラスな高品質の画像を表示可能な、電圧無印加時にホモジニアス配向した液晶セルを利用した液晶表示装置、特にECBモードの液晶表示装置、を提供することを課題とする。
液晶表示装置が有する偏光板は、通常、偏光膜の表面にそれを保護するためのフィルムを有する。この保護フィルムには、市販のセルロースアシレートフィルム等が多用されているが、これらのフィルムはある程度のレターデーションを示す。本発明者は、上記特許文献に記載の技術は、こういった他の部材のレターデーションを加味していないため、保護フィルム等、他の部材の光学特性によっては、十分な効果を奏さないことを見出した。さらにこの知見に基づいて検討を重ねた結果、液晶セルの複屈折を相殺する第1の位相差層とともに、所定の光学特性を満足する第2の位相差層を配置することによって、例えば、偏光板の保護フィルムとして配置することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 互いに対向して配置され、且つ少なくとも一方が透明電極を有する第1及び第2の基板;前記第1及び第2の基板間に、電圧無印加状態で液晶分子が前記基板間でツイスト角45°以下で、且つ基板面に略平行に配向し、電圧印加状態で液晶分子が前記基板面の法線方向に配向する液晶層;及び該液晶層を挟んで配置され、互いに直交する偏光軸を有する第1及び第2の偏光層;前記第1及び/又は第2の偏光層と前記液晶層との間に第1の位相差層;ならびに前記第1及び/又第2の偏光層と前記液晶層との間に第2の位相差層;を有する液晶表示装置であって、
前記第1の位相差層は、棒状液晶化合物を含有する液晶組成物を硬化させて形成された層であり、該層の面内遅相軸は、電圧無印加状態における前記液晶層中の液晶分子の長軸の平均配向方向に直交した方向にあり、
前記第2の位相差層の面内遅相軸は、該層により近い位置に配置された第1又は第2の偏光層の吸収軸に平行もしくは直交し、且つ該層の波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth(550)が、下記式(1)を満足することを特徴とする液晶表示装置:
(1) −200nm < Rth(550) < 0nm 。
[2] 前記第2の位相差層のRth(550)が、下記式(1)’を満足することを特徴とする[1]の液晶表示装置:
(1)’ −150nm ≦ Rth(550) ≦ −70nm 。
[3] 前記第1の位相差層の面内レターデーションReと、黒表示時の前記液晶層のパネル法線方向における実効リタデーションが、波長550nmにおいて略等しいことを特徴とする[1]又は[2]の液晶表示装置。
[4] 前記第2の位相差層の面内遅相軸が、該層により近い位置に配置された第1又は第2の偏光層の吸収軸と略平行であり、且つ該層の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、下記式(2)を満足することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置:
(2) 0nm ≦ Re(550) ≦ 130nm 。
[5] 前記第1の位相差相が、2個以上の光重合性官能基を有する棒状液晶化合物の一種を少なくとも含有する硬化性組成物を硬化させて形成されたことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[6] 前記第2の位相差層が、下記式(A)で表される分極率異方性Δαが2.5×10-24cm-3以上である置換基を含むセルロースアシレートを含有するフィルムからなる[1]〜[5]のいずれかの液晶表示装置:
Δα=αx−(αy+αz)/2 (A)
式中、αx、αy及びαzは分極率テンソルを対角化後に得られる固有値であり、αx≧αy≧αzを満足する。
[7] 前記第2の位相差層が、2個以上の光重合性官能基を有する棒状液晶化合物の一種を少なくとも含有する硬化性組成物を硬化させて形成されたことを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの液晶表示装置。
発明の実施の形態
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは層の厚みである。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
以下、図面を用いて、本発明の液晶表示装置について説明する。
図1は本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。なお、図1は概略図であって、層の厚さ等の相対的関係、各層中の液晶性分子の形状及び大きさ等については、実際のものと必ずしても一致しているわけではない。後述する図面についても同様である。
図1に示す液晶表示装置は、ECBモードの液晶セル18、及び液晶セルを挟んで配置された一対の上偏光板20a及び下偏光板20bを有する。偏光板20a、20bはそれぞれ、偏光膜12a、12b、第2の位相差層としての光学特性を満足する保護フィルム14a、14b、及び第1の位相差層16を有する。
液晶セル18は、ホモジニアスECBモードの液晶セルである。図中、詳細な構造は省略するが、一般的には、一対の透明基板と、その間に封入された液晶層とを有し、透明基板の内面には、電圧無印加時に液晶の配向を制御する配向膜、及び液晶の配向を制御可能な電極膜を有する。ホモジニアスECB液晶セル18中の液晶性分子は、電圧無印加時には基板面に略平行配向し、基板間のツイスト角は、配向膜に施されたラビング処理等の方向に依存する。配向膜に施されるラビング処理の方向を45°以下とするのが好ましく、略平行(±10°)とするのがより好ましい。かかる範囲とすることで、ツイスト構造を持たない略平行配向(ツイスト角が45°以下)を実現できる。電極膜は、液晶セル18中の液晶に電圧を印加して、その配向を制御する。電極膜は、通常、透明であり、例えば、酸化インジウム錫(ITO)からなる。上下透明基板間に封入される液晶としては、特に制限されない。誘電率異方性Δεが正で、一般的には屈折率異方性Δn=0.06〜0.1(589nm、20°C)程度の材料を用いる。液晶層の厚さdは2.5〜5μm程度である。厚さdと屈折率異方性Δnの積Δn・dの大きさにより白表示時の明るさが変化するので、200nm≦Δn・d≦400nmの範囲になるように設定すると、良好な明るさの白表示となる。Δndは、260nm〜320nmであるのがより好ましい。
なお、本態様のECBモード液晶表示装置は、電圧無印加時(本明細書において、「電圧無印加」とは「駆動電圧」を印加していない状態をいい、駆動電圧未満の電圧を印加した状態も含むものとする)において黒表示となるノーマリーブラック表示方式でも、電圧無印加時において白表示となるノーマリーホワイト表示方式でもよいが、ノーマリーブラック表示方式であるのが好ましい。
偏光膜12a、12bの吸収軸は互いに直交にして配置され、直交ニコル配置となっている。また、偏光膜12a、12bの吸収軸は、液晶セル18のより近くに位置する透明基板の近傍に位置する液晶性分子の配向方向(一般的には内面に形成された配向膜のラビング方向)に対して、略45°をなすようにして配置されている。偏光膜12a、12bは、一般的には双方の表面に、偏光膜を保護するセルロースアシレートフィルム等からなる保護膜を有するが、図1では、外側表面を保護する保護膜は省略した。
図1に示す本態様では、上下偏光膜12a、12bの保護フィルムである14a、14bは、それぞれ面内遅相軸を有し、保護フィルム14aの面内遅相軸は偏光膜12aの吸収軸と平行にして、及び保護フィルム14bの面内遅相軸は偏光膜12bの吸収軸と平行にして配置されている。保護フィルム14a及び14bは第2の位相層としての光学特性を満足し、即ち下記の式(1)を満足し、後述する第1の位相差層16とともに、視野角特性の改善に寄与している。
(1) −200nm < Rth(550) < 0nm
保護フィルム14a及び14bが下記式(1)’を満足していると、より広視野角となるので好ましい。
(1)’ −150nm ≦ Rth(550) ≦ −70nm
第1の位相差層16は、棒状液晶化合物を含有する液晶組成物を硬化させて形成された層であり、該層の面内遅相軸は、前記棒状液晶化合物の分子の長軸の平均配向方向に直交した方向にある。液晶セル18のホモジニアス配向時における複屈折性を相殺するためには、第1の位相差層16の面内レターデーションReは、液晶セル18の液晶層の黒表示時のパネル法線方向の実効リタデーションと等しいのが好ましい。少なくとも可視光の中心波長である550nmにおいて等しいのが好ましい。上記した通り、本態様では、液晶層の黒表示時の実効リタデーションが、200nm〜400nmであるのが好ましく、260〜320nmであるのが好ましいので、第1の位相差層16の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)も、200〜400nmであるのが好ましく、260〜320nmであるのがより好ましい。第1の位相差層16の面内遅相軸は、ホモジニアス配向時の液晶セル18中の液晶分子の長軸の配向方向に対して、略90°であるのが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、図1に示す態様に限定されない。図2に示す通り、表示面側又はバックライト側の保護フィルム15a、15bとして、第2の位相差層としての光学特性を満足しないセルロースアシレート等を用いてもよく、第2の位相差層としての光学特性を満足する保護フィルムは、一方の偏光膜の保護フィルムのみに用いられていてもよい。また、図4に示す通り、第2の位相差層としての光学特性を満足するフィルム等は、偏光膜の表面に接触して配置されていなくてもよく、即ち、保護フィルムとして配置されていなくてもよく、液晶セル18と第1の位相差層16との間に配置されていてもよい(図4中、14b’)。但し、本発明の液晶表示装置は、順序に制限はないが、他の位相差領域を介さずに、偏光膜、第1の位相差層、第2の位相差層及び液晶セルが積層された部分構造(但し、積層順については限定されない)を含んでいるのが好ましい。
次に、本発明の液晶表示装置に使用可能な種々の部材に用いられる材料、その製造方法等について、詳細に説明する。
[第1の位相差層]
第1の位相差層は、組み合せる液晶セルの複屈折に応じて、好ましいレターデーションになるように設計される。具体的には、無電圧印加時のホモジニアス配向した液晶層の複屈折(Δ・d)と等しいのが好ましく、上記した通り、ECBモードの液晶表示装置の態様では、Re(550)は200〜400nmであるのが好ましく、260〜320nmであるのがより好ましい。第1の位相差層は、棒状液晶化合物を含有する液晶組成物を硬化させて形成された層であり、該層の面内遅相軸は、前記棒状液晶化合物の分子の長軸の平均配向方向に直交した方向にある。
前記第1の位相差層の形成に利用される棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
前記第1の位相差層の形成には、2個以上の光重合性官能基を有する棒状液晶化合物の一種を少なくとも含有する硬化性組成物を硬化させて形成するのが好ましい。例えば、前記組成物を塗布液として調製し、該塗布液をポリマーフィルム等の表面(好ましくは配向膜の表面)に塗布し、該塗布層を乾燥すると同時にもしくは乾燥後に、前記棒状液晶性化合物の分子を配向させて、紫外線を照射して液晶性分子の重合を進行させて硬化させ、その配向状態に液晶性分子を固定して、第1の位相差層を形成するのが好ましい。前記光硬化性の組成物中には、棒状液晶性化合物の他、重合を開始するための重合開始剤、液晶性分子を所望の配向状態にするための配向制御剤、及び塗布性の良化のための界面活性剤等を添加してもよい。
また、前記第1の位相差層を形成する際に、棒状液晶を配向させるための配向膜を利用してもよい。配向膜としては、ポリマー層の表面をラビング処理して形成したものが好ましい。液晶セルの作製に利用される配向膜と同様にして作製できる。
第1の位相差層を支持する支持体については、特に制限されず、種々の高分子フィルム等を用いることができる。第2の位相差層がセルロースアシレートフィルム等のポリマーフィルムである場合は、第2の位相差層が第1の位相差層の支持体であるのが好ましい。また、第1の位相差層のより近くに配置された偏光板の保護フィルムが支持体であってもよく、市販のトリアセチルセルロースフィルム、ノルボルネン樹脂のフィルム等を用いることができる。第2の位相差層以外のポリマーフィルム等を支持体として用いる場合は、該ポリマーフィルムはレターデーションがほぼゼロである、光学的に等方性のフィルムが好ましく、例えば、例えば、特開2005−138375号公報に記載のセルロースアシレートフィルムが好ましい。
[第2の位相差層]
第2の位相差層は、下記式(1)を満足し、下記式(1)’を満足するのがより好ましい。
(1) −300nm < Rth(550) < 50nm
(1)’ −200nm ≦ Rth(550) ≦ 0nm
また、ECBモードの液晶表示装置に用いる場合は、Re(550)が、下記式(2)を満足するのが好ましく、下記式(2)’を満足するのがより好ましい。
(2) 0nm ≦ Re(550) ≦ 130nm
(第2の位相差層用セルロースアシレートフィルム)
第2の位相差層は、偏光膜の保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んでもよい。偏光膜を保護するのに必要な性能を有するフィルムとしては、セルロースアシレートフィルムが好ましい。以下、本発明において第2の位相差層として好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムについて詳細に説明する。
本発明において、前記第2の位相差層として好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、その原料として用いるセルロースアシレートが、その構成単位であるβ−グルコース環上の3つの水酸基に連結する置換基として、分極率異方性が大きい置換基を有することが好ましい。セルロースシレートに分極率異方性が大きい置換基を導入し、かつ他の置換基及び置換度を調整することで、膜厚方向に屈折率が最大となり、上記式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムが得られる。
(置換基の末端間距離及び分極率異方性)
セルロースアシレートの分極率異方性は下記数式(A)により定義される。
数式(A): Δα=αx−(αy+αz)/2
(式中、αx、αy、αzは分極率テンソルを対角化後に得られる固有値であり、αx≧αy≧αzである。)該分極率異方性は、フィルム延伸時の延伸直交方向への屈折率発現性と関係がある。すなわち、該分極率異方性が小さい場合には延伸方向に遅相軸が発現し、大きい場合には延伸直交方向に遅相軸が発現する。前記数式(A)を満足するセルロースアシレートフィルムを作製するためには、原料であるセルロースアシレートの分極率異方性が大きいほど好ましく、好ましくは2.5×10-24cm-3以上であり、より好ましくは3.5×10-24cm-3以上であり、特に好ましくは4.5×10-24cm-3以上である。
なお、セルロースアシレートの置換基の末端間距離及び分極率異方性はGaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社ソフトウェア)を用いて計算する。末端間距離はB3LYP/6−31G*レベルの計算で構造最適化した後、最も離れた原子間の距離として算出する。分極率異方性はB3LYP/6−31G*レベルで最適化された構造を用いて、3LYP/6−311+G**レベルで分極率を計算し、得られた分極率テンソルを対角化した後、対角成分より算出する。置換基の末端間距離および分極率異方性の計算においては、セルロースアシレートの構成単位であるβ−グルコース環上の水酸基に連結する置換基を、水酸基の酸素原子を含む部分構造にて計算して求める。
前記セルロースアシレートフィルムの作製に用いるセルロースアシレートは、脂肪酸アシル基と置換もしくは無置換の芳香族アシル基とを有する混合酸エステルであることが好ましい。ここで置換もしくは無置換の芳香族アシル基としては下記一般式(1−A)で表される基があげられる。
一般式(1−A)中、Xは置換基で、置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基およびアリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)2、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)2、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)2、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)2、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)2−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)2、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)2、−SiH2−R、−SiH(−R)2、−Si(−R)3、−O−SiH2−R、−O−SiH(−R)2および−O−Si(−R)3が含まれる。上記Rは脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基である。置換基の数は、一個〜五個であることが好ましく、一個〜四個であることがより好ましく、一個〜三個であることがさらに好ましく、一個または二個であることがよりさらに好ましい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基およびウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基およびカルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基およびアリールオキシ基がさらに好ましく、ハロゲン原子、アルキル基およびアルコキシ基がよりさらに好ましい。
上記ハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が含まれる。上記アルキル基が最も好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチルおよび2−エチルヘキシルが含まれる。上記アルコキシ基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4であることがよりさらに好ましい。アルコキシ基は、さらに別のアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシおよびオクチルオキシが含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシ基の例には、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。上記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。アシル基の例には、ホルミル、アセチルおよびベンゾイルが含まれる。上記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルボンアミド基の例には、アセトアミドおよびベンズアミドが含まれる。上記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミドおよびp−トルエンスルホンアミドが含まれる。上記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。ウレイド基の例には、(無置換)ウレイドが含まれる。
またアルキル基は、環状構造あるいは分岐を有していてもよい。アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜4である。
上記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチルおよびナフチルメチルが含まれる。上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であること
が好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルが含まれる。上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがさらに好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニルが含まれる。上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがさらに好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例には、ベンジルオキシカルボニルが含まれる。上記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。カルバモイル基の例には、(無置換)カルバモイルおよびN−メチルカルバモイルが含まれる。上記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがさらに好ましい。スルファモイル基の例には、(無置換)スルファモイルおよびN−メチルスルファモイルが含まれる。上記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシおよびベンゾイルオキシが含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよびイソプロペニルが含まれる。上記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがさらに好ましい。アルキニル基の例には、チエニルが含まれる。上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがさらに好ましい。上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。
前記セルロース混合酸エステル中脂肪酸エステル残基において、脂肪族アシル基の炭素原子数は2〜20であるのが好ましく、具体的にはアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等があげられる。好ましくはアセチル、プロピオニル及びブチリルであり、特に好ましいのはアセチルである。なお、脂肪族アシル基とはさらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては、例えば前記の一般式(1−A)のXとして例示したものがあげられる。
また、前記一般式(1−A)において芳香族環に置換する置換基Xの数(n)は、0または1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。一般式(1−A)で表される芳香族アシル基の具体例は下記に示す通りであるが、好ましいのは、No.1、3、5、6、8、13、18、28、より好ましいのはNo.1、3、6、13である。
セルロースの水酸基を芳香族アシル基で置換する方法としては、一般的には、芳香族カルボン酸クラロイドあるいは芳香族カルボン酸から誘導される対称酸無水物及び混合酸無水物を用いる方法等が挙げられる。特に好ましいのは芳香族カルボン酸から誘導した酸無水物を用いる方法(Journal of AppliedPolymer Science、Vol.29、3981−3990(1984)記載)が挙げられる。上記の方法として本発明のセルロース混合酸エステル化合物の製造方法としては、(1)セルロース脂肪酸モノエステル又はジエステルを一旦製造したのち、残りの水酸基に前記一般式(1−A)で表される芳香族アシル基を導入する方法、(2)セルロースに直接に、脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の混合酸無水物を反応させる方法、などがあげられる。前者においては、セルロース脂肪酸エステル又はジエステルの製造方法自体は周知の方法であるが、これにさらに芳香族アシル基を導入する後段の反応は、該芳香族アシル基の種類によって異なるが好ましくは反応温度0〜100℃、より好ましくは20〜50℃で、反応時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは30〜300分で行われる。また後者の混合酸無水物を用いる方法も、反応条件は混合酸無水物の種類によって変わるが、好ましくは反応温度0〜100℃、より好ましくは20〜50℃、反応時間は好ましくは30〜300分、より好ましくは60〜200分である。上記のいずれの反応も、反応を無溶媒又は溶媒中のいずれで行ってもよいが、好ましくは溶媒を用いて行われる。溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサンなどを用いることができる。
本発明においては、前記置換度は、セルロースの水酸基が100%置換されたとき3.0となる。なお、置換度はC13−NMRにおけるアシル基中のカルボニル炭素のピーク強度から求めることができる。
前記芳香族アシル基の置換度はセルロース脂肪酸モノエステルの場合、残存する水酸基に対して2.0以下、好ましくは0.1〜2.0、さらに好ましくは0.1〜1.0である。また、セルロース脂肪酸ジエステル(二酢酸セルロース)の場合、残存する水酸基に対して1.0以下、好ましくは0.1〜1.0である。また、セルロースアシレートの総置換度PAは2.4〜3であるのが好ましい。
前記セルロースアシレートは、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
前記セルロースアシレートは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のようなプロトン性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
この方法において、綿花リンターや木材パルプのようなセルロースは、酢酸のような有機酸で活性化処理した後、硫酸触媒の存在下で、上記のような有機酸成分の混合液を用いてエステル化する場合が多い。有機酸無水物成分は、一般にセルロース中に存在する水酸基の量に対して過剰量で使用する。このエステル化処理では、エステル化反応に加えてセルロース主鎖β1→4−グリコシド結合)の加水分解反応(解重合反応)が進行する。主鎖の加水分解反応が進むとセルロースエステルの重合度が低下し、製造するセルロースエステルフィルムの物性が低下する。そのため、反応温度のような反応条件は、得られるセルロースエステルの重合度や分子量を考慮して決定することが好ましい。
重合度の高い(分子量の大きい)セルロースエステルを得るためには、エステル化反応工程における最高温度を50℃以下に調節することが重要である。最高温度は、好ましくは35〜50℃、さらに好ましくは37〜47℃に調節する。反応温度が35℃以上であれば、エステル化反応が円滑に進行するので好ましい。反応温度が50℃以下であれば、セルロースエステルの重合度が低下するなどの不都合が生じないので好ましい。
エステル化反応の後、温度上昇を抑制しながら反応を停止すると、さらに重合度の低下を抑制でき、高い重合度のセルロースエステルを合成できる。すなわち、反応終了後に反応停止剤(例えば、水、酢酸)を添加すると、エステル化反応に関与しなかった過剰の酸無水物は、加水分解して対応する有機酸を副成する。この加水分解反応は激しい発熱を伴い、反応装置内の温度が上昇する。反応停止剤の添加速度が大きすぎることがなければ、反応装置の冷却能力を超えて急激に発熱して、セルロース主鎖の加水分解反応が著しく進行し、得られるセルロースエステルの重合度が低下するなどの問題が生じることはない。また、エステル化の反応中に触媒の一部はセルロースと結合しており、その大部分は反応停止剤の添加中にセルロースから解離する。このとき反応停止剤の添加速度が大きすぎなければ、触媒が解離するために充分な反応時間が確保され、触媒の一部がセルロースに結合した状態で残るなどの問題は生じにくい。強酸の触媒が一部結合しているセルロースエステルは安定性が非常に悪く、製品の乾燥時の熱などで容易に分解して重合度が低下する。これらの理由により、エステル化反応の後、好ましくは4分以上、さらに好ましくは4〜30分の時間をかけて反応停止剤を添加して、反応を停止することが望ましい。なお、反応停止剤の添加時間が30分以下であれば、工業的な生産性の低下などの問題が生じないので好ましい。
反応停止剤としては、一般に酸無水物を分解する水やアルコールが用いられている。ただし、本発明では、各種有機溶媒への溶解性が低いトリエステルを析出させないために、水と有機酸との混合物が、反応停止剤として好ましく用いられる。以上のような条件でエステル化反応を実施すると、質量平均重合度が500以上である高分子量セルロースエステルを容易に合成することができる。
前記一般式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムには、所望の厚み方向のレターデーションRthを実現するために、Rthを低下させる化合物(Rth低減剤ともいう)を用いてもよい。該Rthを低下させる化合物は、前記セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜25質量%であり、さらに好ましくは0.1〜20質量%である。
Rthを低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。logP値が7以下である化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、フィルムの白濁や粉吹きを生じにくい。また、logP値が0以上である化合物は親水性が適切であり、セルロースアシレートフィルムの耐水性を向上させる。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
Rthを低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
Rthを低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
Rthを低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
Rthを低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中のいずれであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
Rthを低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80−99%である。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
以下に前記第1の位相差層として好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムの作製に用いられるRthを低下させる化合物の具体例を示すが、これら化合物に限定されない。
上記一般式(B)において、R11はアルキル基又はアリール基を表し、R12及びR13はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。また、R11、R12及びR13の炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。
上記のアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が特に好ましい。
アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシルなど)が特に好ましい。
アリール基としては、炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニルなど)が特に好ましい。
以下に、一般式(B)で表される化合物の好ましい例を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
上記一般式(C)において、R31はアルキル基又はアリール基を表し、R32及びR33はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがさらに好ましく、1〜12のものがよりさらに好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
上記のアルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素など)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基及びアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基及びアシルアミノ基である。
以下に、一般式(C)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前記セルロースアシレートフィルムは、所望の波長分散にするために波長分散調整剤を含有していてもよい。
前記波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、これら化合物だけに限定されるものではない。
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(101)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(101) Q1−Q2−OH
式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環、Q2は芳香族環を表す。
Q1は含窒素芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
Q1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、該置換基は、後述の置換基Tから選ぶことができる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
Q2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
Q2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tから選ばれるのが好ましい。
置換基Tには、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)が含まれる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基は前述の置換基Tから選ぶのが好ましい。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
R1およびR3として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
R2およびR4として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
R5およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
R6およびR7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
式中、R1、R3、R6およびR7は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下の化合物を用いるのが好ましい。
また前記波長分散調整剤としては、一般式(102)で表されるベンゾフェノン系化合物も好ましく用いられる。
一般式(102)中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子または硫黄原子を表す。
一般式(102)中、Q1およびQ2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
Q1およびQ2で表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
Q1およびQ2で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
Q1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
Q1およびQ2は更に置換基を有してもよく、前述の置換基Tから選ばれるのが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。該置換基は、前述の置換基Tから選ぶことができる)、酸素原子または硫黄原子を表し、Xとして好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。)、またはOであり、特に好ましくはOである。
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
一般式(102−A)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9は
それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。
一般式(102−A)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、該置換基は、前述の置換基Tから選ぶことができる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
R1、R3、R4、R5、R6、R8およびR9として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
R2として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
R7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
一般式(102−B)中、R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。
R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、それらの置換基は、前述の置換基Tから選択できる。
R10として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
一般式(102)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
また、前記波長分散調整剤として、一般式(103)で表されるシアノ基を含む化合物を用いるのも好ましい。
一般式(103)中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基であり、他方は好ましくはカルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。)Q1およびQ2であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
Q1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
Q1およびQ2は更に置換基を有してもよく、前述の置換基Tから選ばれるのが好ましい。
X1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基であり、他方は好ましくは、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X1およびX2で表される置換基は、前述の置換基Tから選ぶことができる。また、X1およびX2はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X1およびX2はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
X1およびX2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
一般式(103−A)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X1およびX2は一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、該置換基は前述の置換基Tから選ばれる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9、およびR10として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
R3、およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
一般式(103−B)中、R3およびR8は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X3は水素原子、または置換基を表す。
X3は水素原子、または置換基を表し、置換基としては、前述の置換基Tから選ぶことができ、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X3として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
一般式(103−C)中、R3およびR8は一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R21は炭素数1〜20のアルキル基を表す。
R21として好ましくはR3およびR8が両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
R21として好ましくはR3およびR8が水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
本発明一般式(103)で表される化合物はJounal of American Chemical Society 63巻 3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、下記具体例に何ら限定されるものではない。
前記セルロースアシレートフィルムは、押出し法、溶液流延法等の種々の方法を利用して長尺状に作製することができる。フィルム状に成形した後、所定の光学特性を得るために、さらに延伸処理を施すことが望ましい。溶液流延法を利用して前記フィルムを作製する場合は、ドープ中に、可塑剤(好ましい添加量はセルロースエステルに対して0.1〜20質量%、以下同様)、改質剤(0.1〜20質量%)、紫外線吸収剤(0.001〜10質量%)、平均粒径が5〜3000nmである微粒子粉体(0.001〜5質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜2質量%)、剥離剤(0.0001〜2質量%)、劣化防止剤(0.0001〜2質量%)、光学異方性制御剤(0.1〜15質量%)、赤外線吸収剤(0.1〜5質量%)等の添加剤を含有させてもよい。その他、フィルムの作製方法については、公開技法2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)等に詳細が記載されていて、本発明に適用することができる。
得られたセルロースアシレートフィルムには、適宜、表面処理を行うことにより、セルロースアシレート層と他の層との接着を改善することが可能となる。表面処理には、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、ケン化処理(酸ケン化処理、アルカリケン化処理)が含まれ、特にグロー放電処理およびアルカリケン化処理が好ましい。
なお、前述した様に、分極率異方性Δαが2.5×10-24cm-3以上である置換基を含むセルロースアシレートを含むフィルムのみで前記第1の位相差層に要求される光学特性を満たすこともできるが、本発明の範囲には、前記第1の位相差層が、前記セルロースアシレートフィルムとともに他の複屈折性フィルムや位相差膜を含む態様も、含まれる。
また、本発明において、第2の位相差層は、ホメオトロピック配向を固定して形成された層であってもよい。この様な第2の位相差層の形成に使用可能な棒状液晶の例については、上記第1の位相差層の形成に使用可能な棒状液晶として例示した化合物と同様である。ただし、前記第2の位相差層の形成に用いられる液晶組成物中には、棒状液晶をホメオトロピック配向させるのを促進する配向助剤を添加するのが好ましく、かかる配向助剤としては、フッ素系ポリマー、フッ素系化合物、オニウム塩などが好ましい。
以下、配向助剤として、第2の位相差層の形成に利用可能なフッ素系ポリマー及びオニウム塩について説明する。
前記第2の位相差層は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族含有ポリマー(以下、「ポリマーA」という場合がある)を含有しているのが好ましい。前記ポリマーAは、主に、層の空気界面において、前記液晶性化合物の分子を垂直配向させるのに寄与する。
一般式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Qはカルボキシル基(−COOH)又はその塩、スルホ基(−SO3H)又はその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}又はその塩、又は親水性基(−OH)を表す。Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR4−(R4は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR5)−(R5はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。
一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は特開2004−333852号公報に例示した下記置換基群から選ばれる置換基を表す。
(置換基群)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、又は後述する−L−Qで表される基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子、−L−Qで表される基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基であることが特に好ましく、R2及びR3が水素原子で、R1が水素原子又はメチル基であることが最も好ましい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
Lは、上記連結基群から選ばれる2価の連結基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。上記連結基群中、−NR4−のR4は、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくは水素原子又はアルキル基である。また、−PO(OR5)−のR5はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくはアルキル基である。R4及びR5がアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す場合の炭素数は「置換基群」で説明したものと同じである。Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、アルキレン基又はアリーレン基を含むことが好ましく、単結合、−CO−、−O−、−NR4−、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいることが特に好ましく、単結合であることが最も好ましい。Lがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては先にR1〜R3における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
以下にLの具体的構造を例示するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前記式(1)中、Qはカルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホノキシ基、ホスホノキシ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、親水基(ヒドロキシル基)を表す。より好ましくはカルボキシル基、スルホ基、ホスホ基、親水基であり、特に好ましいのはカルボキシル基又は親水基である。
本発明に使用可能な前記ポリマーAに含まれる前記一般式(1)に対応するモノマーの具体例を以下に挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
前記ポリマーAは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また前記ポリマーAは、前記フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位を1種又は2種以上有していてもよい。好ましくは、特開2004−333852号公報の一般式[1]で記載されているフルオロ脂肪族基含有モノマーを含むことが好ましい。さらに、前記ポリマーAはそれら以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。前記他の繰り返し単位については特に制限されず、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。前記ポリマーAは、特開2004−46038[0026]〜[0033]記載のモノマー群から選ばれるモノマーから誘導される繰り返し単位を1種含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
また、前記ポリマーAは、特開2004−333852号公報に記載されている一般式[2]で表されるモノマーから誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。
前記ポリマーAのフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、30質量%以上であるのがさらに好ましい。前記フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位において、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の量は、該フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位の構成モノマー総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましく、1〜10質量%であるのが特に好ましく、1〜5質量%であるのが最も好ましい。
本発明に用いる前記ポリマーAの質量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、500,000以下であるのがより好ましく、5,000以上50,000以下であるのがさらに好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
前記ポリマーAを製造する際に採用される重合方法については、特に限定されるものではないが、特開2004−46038号公報の[0035]〜[0041]に記載の方法を用いることが好ましい。
なお、前記ポリマーAは、棒状液晶化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
以下に、前記ポリマーAとして本発明に好ましく用いられる具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によってなんら限定されるものではない。ここで式中の数値(a、b、c、d等の数値)は、それぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、MwはTSK Gel GMHxL、TSK Gel G4000 HxL、TSK Gel G2000 HxL (いずれも東ソー(株)の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した質量平均分子量である。
本発明に用いられる前記ポリマーAは、上記した様に、公知慣用の方法で製造することができる。例えば、先にあげたフルオロ脂肪族基を有するモノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、さらに添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
第2の位相差層形成用組成物中における前記ポリマーAの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。前記フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位の添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学補償フィルムとしての性能(例えばレタデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす場合がある。
[オニウム塩]
前記第2の位相差層は、オニウム塩の少なくとも一種を含有するのが好ましい。オニウム塩は配向膜界面側において棒状液晶化合物の分子を垂直配向させるのに寄与する。また、前記オニウム塩の例には、窒素原子を含むアンモニウム塩、硫黄原子を含むスルホニウム塩、リン原子を含むホスホニウム塩等が含まれる。
前記オニウム塩としては、好ましくは、4級オニウム塩であり、より好ましくは第4級アンモニウム塩である。
第4級アンモニウム塩は、一般に、第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなど)あるいは含窒素複素環(ピリジン環、ピコリン環、2,2’−ビピリジル環、4,4’−ビピリジル環、1,10−フェナントロリン環、キノリン環、オキサゾール環、チアゾール環、N−メチルイミダゾール環、ピラジン環、テトラゾール環など)をアルキル化(メンシュトキン反応)、アルケニル化、アルキニル化あるいはアリール化して得られる。
第4級アンモニウム塩としては、含窒素複素環からなる第4級アンモニウム塩が好ましく、特に好ましくは第4級ピリジニウム塩である。
より具体的には、前記第4級アンモニウム塩は、下記一般式(3a)又は後述する一般式(3b)で表される第4級ピリジニウム塩から選ばれるのが好ましい。
式(3a)中、R8は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基を表し、Dは水素結合性基を表し、mは1〜3の整数を表し、X-はアニオンを表す。
まず、前記一般式(3a)について説明する。
上記R8で表されるアルキル基は、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基である。これらは、直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状であってもよい。これらの例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基及びシクロプロピル基等が挙げられる。
アルキル基の置換基の例としては、以下のものを挙げることができる。炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルケニル基(例えば、ビニル基);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルキニル基(例えば、エチニル基);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基);ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ビフェニルオキシ基、p−メトキシフェノキシ基);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ基);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基);
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基);炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例えば、ナフトキシカルボニル基);無置換のアミノ基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基、メトキシフェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、n−ブトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、エチルチオカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、エチルチオカルバモイルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、クロロアセチルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基);
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、tert−ブチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルバモイル基、ピロリジノカルバモイル基);無置換のスルファモイル基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基);シアノ基;ニトロ基;カルボキシ基;水酸基;ヘテロ環基(例えば、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、クマリン環)。アルキル基の置換基としては、特に好ましくは、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基である。
上記R8で表されるアルケニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基等が挙げられる。
アルケニル基の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
上記R8で表されるアルキニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルキニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルキニル基であり、例えば、エチニル基、2−プロピニル等が挙げられる。アルキニル基の置換基は、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
上記R8で表されるアラルキル基は、炭素数7〜18の置換もしくは無置換のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、メチルベンジル基、ビフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が好ましい。アラルキル基の置換基は前記アルキル基の置換基として挙げたものが挙げられる。
上記R8で表されるアリール基は、炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が挙げられる。アリール基の置換基は前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。またこれらの他に、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等)、アルキニル基、ベンゾイル基も好ましい。
上記R8で表される複素環基は、炭素原子、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和又は不飽和の複素環であり、これらの例としては、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、及びクマリン環が挙げられる。複素環基は置換されていてもよく、その場合の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。R8で表される複素環基としては、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環が特に好ましい。
上記R8は好ましくは、置換もしくは無置換の、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基である。
Dは水素結合性基を表す。水素結合は、電気的に陰性な原子(例えば、O,N,F,Cl)と、同じように電気的に陰性な原子に共有結合した水素原子間に存在する。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H. Uneyama and K.Morokuma、Jounal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、Angewante Chemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
好ましい水素結合性基としては、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、ピリジル基を挙げることができ、特に好ましくは、アミノ基、カルバモイル基、ピリジル基を挙げることができる。
X-で表されるアニオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸イオンなどが挙げられる。
X-は、好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン、水酸イオンである。なおX-は1価のアニオンである必要はなく、2価以上のアニオンであってもよく、かかる場合は、前記化合物中のカチオンとアニオンとの比率も1:1である必要はなく、適宜決定される。
前記一般式(3a)中、mは好ましくは1である。
式(3b)中、R9及びR10は各々置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基を表し、X-はアニオンを表す。
R9及びR10で各々表される置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基は、前記一般式(3a)中、R8で表される基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。X-で表されるアニオンは、前記一般式(3a)中、X-で表されるアニオンと同義であり、その好ましい範囲も同一である。上述した様に、X-は1価のアニオンである必要はなく、2価以上のアニオンであってもよく、かかる場合は、前記化合物中のカチオンとアニオンとの比率も1:2である必要はなく、適宜決定される。
以下に、一般式(3a)又は(3b)で表される第4級ピリジニウム塩、その他本発明で好ましく用いられるオニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるオニウム塩はこれらに限定されるものではない。
前記第2の位相差層中におけるオニウム塩の含有量は、その種類によって好ましい含有量が変動するが、通常は、併用される液晶性化合物の含有量に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.05〜7質量%であるのがより好ましく、0.05〜5質量%であるのがさらに好ましい。オニウム塩は二種類以上用いてもよいが、かかる場合は、使用する全種類のオニウム塩の含有量の合計が前記範囲であるのが好ましい。
前記第2の位相差層を液晶組成物から形成する場合は、第2の位相差層を支持するポリマーフィルム等からなる支持体が必要となる場合がある。該支持体は、例えば、偏光膜の保護フィルムであってもよい。かかる保護フィルムとしては、レターデーションがほぼゼロの光学的に等方性のフィルムであるのが好ましく、例えば、特開2005−138375に記載のセルロースアシレートフィルムが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[実施例1]
図1と同様の構成のECBモード液晶表示装置を作製した。
(ECBモード液晶セルの作製)
液晶セルは、セルギャップ3.28umとし、正の誘電率異方層を持つ液晶材料を基板間に真空注入で封入し、液晶層のΔn・dを280nmとした。液晶材料は誘電異方性が正で、屈折率異方性、Δn=0.0854(589nm、20°C)、Δε=+8.5程度の液晶(例えばメルク社製のMLC−9100)を使用した。また、液晶配向はホモジニアス配向になるようにラビングして液晶セル形成した後、上下偏光板と貼り合わせる際に、液晶セルの上下基板ラビング方向(配向制御方向)が保護フィルム遅相軸(流延方向と平行方向)と45°の交差角になるようにする。
(保護フィルム用セルロースアシレートフィルムの作製)
アルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)を出発原料として、対応する酸クロリドとの反応により、以下の合成例に従って、上記式(A)で定義される分極率異方性が8.6×10-24cm-3であるセルロースアシレート1を得た。なお、出発原料として、ダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41(商品名:L−70)、2.14(商品名:LM−80))を用いてもよい。
・ アサロン酸クロリドの合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアサロン酸(2,4,5−トリメトキシ安息香酸)106.1g、トルエン400mlを量り取り、80℃で攪拌した。ここに40.1mLの塩化チオニルをゆっくりと滴下し、添加後さらに80℃にて2時間攪拌した。反応後、アスピレーターを用いて反応溶媒を溜去すると白色固体が得られた。得られた白色固体にヘキサン300mlを加えて激しく攪拌・分散し、吸引ろ過により白色固体をろ別し、さらに大量のヘキサンで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で4時間真空乾燥することにより目的のアサロン酸クロリドを白色粉体として得た。(115.3g、収率99%)
・ セルロースアシレート1の合成
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた1Lの三ツ口フラスコにアルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)40g、ピリジン46.0ml、塩化メチレン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに、上記合成したアサロン酸クロリド84.0gを数回に分割して粉体添加し、添加後さらに室温にて6時間攪拌した。反応後、反応溶液をメタノール4Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白桃色固体が析出した。白桃色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白桃色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の化合物を白桃色粉体として得た。得られたサンプル、セルロースアシレート1、について、置換度の測定はC13−NMRにおけるアシル基中のカルボニル炭素のピーク強度から置換度を求めた。式(A) Δα=αx−(αy+αz)/2で定義される分極率異方性Δαが8.6×10-24cm-3である置換基を含むセルロースアシレート1を得た。このセルロースアシレート1のアシル基の総置換度(PA)は2.91で、芳香族アシル基の置換度は0.46であった。
上記で製造したセルロースアシレート1を、120℃で2時間乾燥させた後、下記に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
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メチレンクロライド 261質量部
メタノール 39質量部
トリフェニルホスフェート 5.9質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 5.9質量部
セルロースアシレート1 100質量部
2酸化ケイ素微粒子 0.25質量部
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ミキシングタンクは攪拌羽根を有し、外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製のものを使用した。上記溶媒、およびセルロースアシレート以外の添加剤を投入して撹拌し、分散もしくは溶解させた後、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌して、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施した。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
このようにして得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して、バンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延点は18℃に設定したロールの上に設定し、バンドを支持する他方のロールの温度は35℃とした。また、流延部全体の空間温度は80℃に設定した。流延速度は40m/分、塗布幅は140cmとした。
流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、テンターでフィルム両端を把持した。フィルム幅を徐々に狭めながら110℃のテンター部を搬送し、フィルムを把持した時の幅の98%になるようにしてテンターから離脱させた。フィルム両端のクリップ跡部分を切り取った後、複数のパスロールからなる135℃〜140℃の乾燥部にフィルムを通して残留溶媒量が0.2%以下になるように乾燥させた。このようにして長尺状で膜厚90μmのセルロースアシレートフィルム1を得た。
得られたセルロースアシレートフィルム1について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、レターデーションの光入射角度依存性を測定し、光学特性を算出した。結果を以下の表に示した。
上記セルロースアシレートフィルムの作製において、原料として用いるセルロースアシレートを代えた以外、及び/又は延伸倍率、膜厚等の製膜条件を代えた以外は、同様にして、Re(550)及び/又はRth(550)が互いに異なるセルロースアシレートフィルムを長尺状に種々作製した。作製したセルロースアシレートフィルム1〜17のRe(550)及びRth(550)を表1に示す。また、参考のため、後述する比較例で用いたフジタックTD80UL(富士フイルム社製)の光学特性も併せて表1中に示す。
作製したセルロースアシレートフィルム1〜7のうち、セルロースアシレートフィルム1〜5は、第2の位相差層としての光学特性を満足していることが理解できる。なお、セルロースアシレートフィルム1〜5は、いずれも上記合成したセルロースアシレート1を原料として作製したフィルムであった。
(第1の位相差層の形成)
上記で作製した各セルロースアシレートフィルムの一方の表面をケン化処理した後、このフィルムを搬送しながら、フィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にラビング処理を施して配向膜とした。このとき、フィルム搬送方向に対してラビング角度は液晶分子長軸がフイルムMD方向(長手方向)に対して45°方位に棒状液晶が配向するようにラビングする必要がある。通常、45°配向を実現するには搬送方向に対して45°以上の方位にラビングする必要がある。
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
以下の組成の位相差層形成用塗布液を調製した。
位相差層形成用塗布液組成
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下記の棒状液晶化合物 38.4質量%
下記の増感剤 0.38質量%
下記の光重合開始剤 1.15質量%
下記の空気界面水平配向剤 0.06質量%
メチルエチルケトン 60.0質量%
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配向膜の表面に、上記塗布液をバーコーターを用いて連続的に塗布した。塗布層を100℃で1分間加熱して、棒状液晶分子を配向させた後、紫外線を照射して棒状液晶分子を重合させ、配向状態を固定して、位相差層を形成した。
形成した位相差層は、厚さ3.5μmであり、且つRe(550)は280nmであった。この様にして、上記で作製したセルロースアシレートフィルムのそれぞれの表面に、位相差層を有する積層フィルム101〜107をそれぞれ作製した。
また、フジタックTD80UL(富士フイルム社製)の表面に上記と同一の方法で位相差層を形成した積層フィルム108を作製した。
(偏光板の作製)
表示面側偏光板として、ポリビニルアルコール系偏光膜の一方の表面にフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を貼り付け、且つ他方の表面に上記作製したセルロースアシレートフィルム1〜7のそれぞれ、又はフジタックTD80ULを貼り付けて作製した偏光板201A〜208Aをそれぞれ用いた。
また、バックライト側偏光板として、ポリビニルアルコール系偏光膜の一方の表面にフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を貼り付け、且つ他方の表面に上記作製した積層フィルム101〜108のそれぞれを、セルロースアシレートフィルム面を偏光膜側にして貼り付けて作製した偏光板201B〜208Bのそれぞれを用いた。
上記作製したEBCモード用液晶セルを、上記で作製した表示面側偏光板201A〜208Aのそれぞれと、バックライト側偏光板201B〜208Bのそれぞれとを対向配置した間に挟み、図1と同一の構成のECBモードの液晶表示装置301〜308を作製した。図1中、表示面側及びバックライト側偏光膜12a、12bの吸収軸は、液晶セル18の配向方向(基板面のラビング方向)と概略45°で交差し、かつ偏光膜12a、12bの板吸収軸の交差角は概略90°の直交ニコルとした。また、第1の位相差層16の遅相軸は、電圧無印加状態において液晶セル18中の液晶分子の長軸の平均配向方向に対して直交する方向とした。
作製した各ECBモードの液晶表示装置301〜308のそれぞれについて、上下左右に視野角を変化させてコントラスト(CR; 電圧無印加状態(黒表示時)と電圧印加状態(白表示時)の輝度の比)を測定し、CR>10となる上下左右の視野角方位の合計を算出した。結果を下記表2に示す。
表2に示した結果から、図1の構成のECBモードの液晶表示装置において、式(1)を満足するセルロースアシレートフィルムを、保護フィルム14a、14bとして用いた実施例(液晶表示装置301〜305)は、いずれも、CR>10の表示能を広い視野角(上下左右の合計が240度以上)において得られることがわかった。式(1)を満足していないセルロースアシレートフィルムを、保護フィルム14a、14bとして用いた比較例(液晶表示装置306〜308)と比較して、その効果は顕著であった。
さらに、セルロースアシレートフィルム1〜5について、延伸条件をかえて、Re(550)が互いに異なるセルロースアシレートフィルムを保護膜14a及び14bとして用いた場合に、図1の構成の液晶表示装置のコントラストを算出したところ、Re(550)が0〜130nmの範囲内であれば、CR>10を上下左右の視野角度合計が240度を超え、広い視野角にわたって高コントラストな画像表示能を得られることを確かめた。また、セルロースアシレートフィルムが、−200nm≦Rth≦0nmであると、視野角特性のセルロースアシレートフィルムのRe(550)に対する依存性がさらに軽減されることがわかった。
特に、−50≦Rth(550)≦−150、0≦Re(550)≦130の領域であると、特に優れている、より具体的には、CR>10が得られる上下左右の視野角度合計が320度を超える、ことがわかった。
[実施例2]
実施例1において、図1中の保護フィルム14a及び14bとして、Rthが上記式(1)を満足する、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、及びノルボルネン骨格を有する樹脂をそれぞれ延伸処理して製作したポリマーフィルムを、それぞれ用いても、実施例1と同様の効果が得られることがわかった。
[実施例3]
実施例1において、図1中の保護フィルム14a及び14bとして、下記の通り作製した積層フィルムを用いた。
まず、特開2005−138375号公報に記載の実施例に従って、レターデーションがほぼゼロのセルロースアシレートフィルムF1を作製した。
セルロースアセテートフィルムF1の表面ケン化処理を行い、その表面に、下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成し、配向膜を得た。
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液を、上記作製した配向膜上に#5.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は20m/minとした。室温から80℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、80℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を80℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、第1の位相差層を形成した。続いて、55℃の1.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液中に作製したフィルムを2分間浸漬した後、水に浸漬し十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、35℃の5mmol/L硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。このようにして、セルロースアシレートフィルムF1に位相差層が積層された積層フィルム120を作製した。また日本電色工業(株)社製ヘイズメータ(NDH−2000)によりヘイズ測定を行ったところ、0.61%であった。
棒状液晶化合物を含む塗布液の組成
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下記の棒状液晶性化合物 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のポリマーA 0.2質量部
下記のオニウム塩(21) 1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
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作製した積層フィルム120から棒状液晶性化合物を含む位相差層のみを剥離し、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて光学特性を測定した。波長590nmで測定した位相差層のみのReは0nmであり、Rthは−100nmであった。即ち、第2の位相差層に要求される前記式(1)及び(2)を満足する層が形成されたことを確認した。また、棒状液晶分子が層面に対して実質的に垂直に配向している位相差層が形成されたことが確認できた。
表示面側の偏光板として、ポリビニルアルコール系偏光膜の一方の表面にフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を貼り付け、且つ他方の表面に上記作製した積層フィルム120を貼り付けて作製した偏光板220Aを用いた以外は、実施例1と同様にしてECBモードの液晶表示装置を作製し、同様に評価し、実施例1と同様の効果が得られたことを確認した。
[実施例4]
図2と同一の構成、即ち、バックライト側の偏光板として、上記作製した偏光板201B〜205B及びBのそれぞれを用い、但し、いずれに対しても、表示面側の偏光板として偏光板208Aを組み合せて用い、液晶表示装置をそれぞれ作製したが、実施例1よりは若干劣るものの、十分に広い視野角の表示能を示した。
図3と同一の構成、即ち、表示面側の偏光板として、上記作製した偏光板201A〜205Aのそれぞれを用い、但し、いずれに対しても、バックライト側の偏光板として偏光板208Bを組み合せて用い、液晶表示装置をそれぞれ作製したが、実施例1よりは若干劣るものの、十分に広い視野角の表示能を示した。
図4と同一の構成、即ち、表示面側の偏光板として、上記作製した偏光板201A〜205Aのそれぞれを用い、バックライト側の偏光板として、偏光板201B’〜205B’を用いた。具体的には、偏光板201B’〜205B’は、偏光板201B〜205Bの作製において、ポリビニルアルコール系偏光膜に、積層フィルム101〜105を貼り合せる際に、第1の位相差層側を偏光膜表面側にしてそれぞれ貼り合せた偏光板であり、それ以外については、偏光板201B〜205Bの作製方法と同様である。
表示面側偏光板として、偏光板201B’〜205B’を用いた場合も、実施例1と同様の効果が得られたことを確認した。
本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
本発明の液晶表示装置の他の例の断面模式図である。
本発明の液晶表示装置の他の例の断面模式図である。
本発明の液晶表示装置の他の例の断面模式図である。
符号の説明
12a、12b 偏光膜
14a、14b、15a、15b 保護フィルム(第2の位相差層)
14b’ 第2の位相差層
16 第1の位相差層
18 液晶セル