JP4998653B2 - 厚鋼板の熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱処理材厚鋼板の焼入れ・焼鈍し・焼戻しの熱処理プロセスにおいて従来の雰囲気加熱炉より高能率な、急速加熱に好適のソレノイド型誘導加熱装置を適用した厚鋼板の熱処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
厚鋼板の焼入れ・焼鈍し・焼戻しの熱処理プロセスに急速加熱に好適の誘導加熱装置を適用する場合、ステンレスを除く被加熱物が常温の強磁性体であることに起因する幾つかの問題を解決することが必要である。すなわち、
1.板厚および板幅方向の温度分布を均一に加熱すること。すなわち板厚中心と表面の温度差を最小化すること。温度不均一の場合、熱処理の品質に大きな影響を与える。
2.加熱過程で目標上限温度を超えないこと。上記に定められた目標上限温度を超えると鋼中添加元素の析出が起こり品質に影響を与えると同時に、磁気変態点を超えた場合、浸透深さが増大し加熱効率を悪化させる。
3.誘導加熱装置の加熱周波数を被加熱材の板厚の範囲内で最適な選定をすること。これは板厚方向均一性およびエッジ過加熱防止の均熱特性や加熱効率や生産性に大きな影響を与える。
【0003】
特開昭48−25237号には、ソレノイド型誘導加熱装置を直列に複数個配置した時の板長手方向の先後端の温度不均一防止について対策が示されている。
【0004】
また、特開昭48―64534号には、キュリー点以下の加熱であれば低周波数誘導加熱と高周波数誘導加熱の交互加熱により不等厚断面材料の均一な昇温が可能と示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術には次のような問題がある。
【0006】
特開昭48−25237号では、加熱歪による板変形を防止する観点及び板厚方向の温度不均一について記載されてなく、板断面全体の熱処理を均一に行うことができない。
【0007】
また、特開昭48―64534号では、キュリー点以下の加熱であれば低周波数誘導加熱と高周波数誘導加熱の交互加熱により不等厚断面材料の均一な昇温が可能とあるが、被加熱材料板厚が薄い場合は十分な昇温ができないという問題がある。これは約50〜200Hzの商用周波数付近の低周波数誘導加熱の場合、下式(1)に示すように、入熱電力が周波数に比例して低下しさらに十分な磁界を得るためには電流を莫大にとる必要があること、加熱周波数が低いと加熱できる板厚の下限値が存在すること(例えば加熱周波数200Hzの場合、下限値は約17mmとなる。)から、工業的に成立する加熱装置にはなりにくい。この技術では多種の厚みを有する厚鋼板の熱処理が困難となる。
【0008】
P= π・μ・f・H 2 ・S・L・Q ・・・(1)
ここで、P:加熱吸収電力、μ:透磁率、f:周波数、H:磁界の強さ、S:材料断面積、L:材料長、Q:吸収係数を示す。
【0009】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、高効率な誘導加熱装置を用いて板厚および板幅方向の温度分布の均一化を図り、さらに表面温度上限を加えることにより品質不良が発生しない厚鋼板の熱処理装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の厚鋼板の熱処理装置は以下のような特徴を有する。
【0011】
(1)複数台のソレノイド型誘導加熱装置(以下インダクターという)を直列に配置した厚鋼板の熱処理装置において、各インダクターの加熱周波数を200Hz〜2000Hz、単機昇温量を400℃以下とし、3台以上のインダクターを直列に配置し、かつ、インダクター間距離を通過時間換算で1秒〜20秒分あけた配置として、インダクター間で表面温度を低下させた後、次インダクターで加熱する間欠加熱することとし、鋼板表面温度が磁気変態点(キュリー温度)以下の目標上限温度を超えないように、各インダクターの単機昇温量を設定することを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
【0012】
(2)各インダクターのコイル長さを1.5m以下とすることを特徴とする(1)に記載の厚鋼板の熱処理装置。
【0013】
(3)各インダクターを300mm以上の距離を隔てて配置することを特徴とする(1)または(2)に記載の厚鋼板の熱処理装置。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の複数台のソレノイド型誘導加熱装置(以下インダクターという)を直列に配置した厚鋼板の熱処理装置は、鋼板表面温度が磁気変態点(キュリー温度)以下の目標上限温度を超えないように、各インダクターの単機昇温量を設定している。加熱過程で鋼板表面温度が目標上限温度を超えると、鋼中添加元素の析出が起こり品質に影響を与えると同時に、磁気変態点を超えた場合浸透深さが増大し加熱効率を悪化させるからである。
【0019】
本発明の要件は、複数台直列配置したソレノイド型インダクターの加熱電力分布とインダクター間の通過時間(均熱時間)の最適化を図り、特に加熱範囲の中で厚物(板厚14mm以上)の板厚方向温度の均一化を図ることである。薄物は厚物に比べ熱拡散しやすく、均熱条件が厚物より有利となる。
【0020】
これらの範囲内で板厚方向温度分布の均一化を可能とした厚鋼板の熱処理装置の好ましい条件は以下の通りである。
1.各インダクターの単機昇温量を400℃以下とし、インダクターを3台以上直列配置すること。
2.各インダクターの加熱周波数は200Hz〜2000Hzとすること。
3.各インダクターを300mm以上の距離を隔てて配置すること。
4.各インダクターのコイル長さを1.5m以下とする。
5.板厚方向温度均一化に対しては、複数個直列配置したインダクターおよびインダクター間距離を通過時間換算で1秒〜20秒分あけた配置とし、均熱度の高い加熱電力配分すなわち前段インダクター強加熱を用いる。
6.表面過加熱防止に対してはインダクター1台あたり昇温量を規定し、インダクター間距離を通過時間換算で1秒〜20秒分の均熱時間内で表面温度を下げられる配置として、次インダクターで加熱する。
【0021】
以下に問題解決の根拠について示す。
[表面温度上昇に基づく加熱方法とインダクター間距離の考え方]
インダクターの台数は、少なくとも3台以上直列に配置する必要がある。以下にインダクターの台数および加熱制御方法の根拠を示す。
【0022】
1.表面および板エッジ温度上限に基づく加熱方法の必要性
厚鋼板の熱処理においては例えば650℃まで加熱することが考えられる。この加熱は応力除去を目的とした熱処理として一般に知られている。炭素鋼で450℃以上650℃の範囲に加熱し、その後徐冷あるいは空冷するプロセスである。この時、650℃以上に加熱されると、機械強度の低下といった問題、板厚および板幅方向に温度むらがあると、応力開放の不均一といった問題が生じる。従って加熱過程においても、表面温度上限を厳守して加熱する必要がある。これはインダクターの後段側(高温域)で大電力を投入できないことを意味する。このように厚鋼板の熱処理においては前段強加熱、後段弱加熱として各インダクターの投入電力配分を変化させることが好ましい。
【0023】
2.表面温度上限加熱とインダクター間距離の関係
次に、均熱時間(表面と中心温度の均一化)の確保について考える。誘導加熱の原理上、厚物(板厚14mm以上)の方が均熱時間を長く確保する必要があるので、厚物を中心に検討する。また前段強加熱の原則から、第1あるいは第2加熱インダクターの均熱時間を板厚8mm〜50mm材で比較する。図3は同一能率で加熱した時の、厚鋼板の板厚別必要均熱時間と厚鋼板の誘導加熱装置間の通過時間の比較である。図3を求めるのに際し、下記の計算用定数を用いた。
空冷放射率ε:0.78、平均熱伝導率λ:37(kcal/mh℃)、平均密度ρ:7800(kg/m 3 )、平均比熱Cp:0.132(kcal/kg℃)(0.16kcal/kg=670J/kgを100℃換算)
これによれば、板厚50mm材の均熱には約20秒かかることから、3.5mpmで通板した場合、1.15m以上インダクター間距離を確保する必要がある。また、8mm材の均熱には約1秒確保する必要から18mpmで通板した場合、0.3m以上のインダクター間距離とする必要がある。よって、各インダクターを300mm以上の距離を隔てて配置することが好ましい。
【0024】
この均熱時間はインダクター1台当りの昇温量に対し単調増加の関係にあるため、均熱時間からインダクター間距離が規定され、さらに昇温量が規定されることになる。この場合単機昇温量400℃以下であれば、0.65m以上インダクター間を確保することにより、20mmまでの厚鋼板を高能率で加熱できる。また、1.15mまでインダクター間を離隔すれば、50mmまでの厚鋼板を20mm材と同一能率で加熱できる。
【0025】
3.インダクター台数が3台以上必要な根拠
インダクターは被加熱材表層からエネルギーを投入するものであり、原理的に均一加熱と矛盾する。したがって均熱化を指向する場合、上記2に示すような均熱化プロセスを持つと同時に、加熱インダクターにも極力均熱特性を持たせる。
【0026】
インダクター長を可能な限り長くし、均熱特性を持たせたいがロールによって厚鋼板を支持できるロール間隔は、1.5mが鋼板がたわみロールに突っかける限界なので、インダクター長は1.5m以下に制約することが好ましい。
【0027】
この限界インダクター長(コイル長さ)における最大可能昇温量は実用的には400℃が限界となる。板厚20mm、板幅4500mm、インダクター通過速度0.6mpm、インダクター長1.5m、加熱入口温度20℃(常温)から目標温度650℃まで上昇させたときのインダクター1台当たりの最大昇温量は約400℃が限界であった。これは商用周波数以上で加熱すると板エッジ温度が板中央温度の約1.5倍上昇するためであり、図4に昇温の関係を示す。またインダクター通過速度の根拠はガス焚き炉の能率25T/Hと等価能率で誘導加熱した場合の速度である。
【0028】
このような検討から630℃(650−20)昇温を考えた場合、加熱インダクターは630/400>1であるからインダクターは2台以上必要となる。また板エッジ温度を目標上限温度未満とする均一加熱条件を制約条件として加熱計画を考えると、
第1インダクターのエッジ温度制約
630℃=1.5×θ1(第1インダクター平均昇温量)よりθ1=420℃
第2インダクター以降の必要昇温量は630−420=210℃
第2インダクターのエッジ温度制約
210℃=1.5×θ2(第2インダクター平均昇温量)よりθ2=140℃
第3インダクター以降の必要昇温量は210−140=70℃
第3インダクターのエッジ温度制約
70℃=1.5×θ3(第3インダクター平均昇温量)よりθ3=47℃
θ1〜θ3の総和は607℃であるから630℃昇温の場合、単機昇温量が400℃以下で少なくとも3台以上のインダクターが好ましい。
【0029】
さらに、この問題は一般的な最適化問題として取り扱うことが可能であり、例えば(7)式において定式化される。
【0030】
すなわち、各インダクター出口均熱後の平均昇熱温度θi(i=1,n)、
目標平均昇熱温度θref、各インダクター出口の平均温度と板エッジ温度の偏差Ki(i=1,n)、加熱効率ηi(i=1,n)とすると、
θ1+θ2+・・・+θn =θref (昇熱温度の収支)
Σθi-1+Ki <θmax (上限温度制約)
J=Σω・(θmax―Σθi-1―Ki)2 →min(温度偏差最小化…(7)
これは数理計画法で簡単に解ける一般的な最適化問題であり、この数式により加熱計画を立てれば良いことがわかる。これによればn≧3において厚鋼板の熱処理可能な温度領域に到達できる。
【0031】
[周波数選定の考え方]1.加熱周波数を200Hz未満の商用周波数付近としても均一加熱効果が少ない。
【0032】
板厚方向の温度差を下記の式で定義する。
【0033】
Δθ = θs − θc ・・・(2)
Δθ:表面と中心の温度差、θs:表面温度、θc:中心温度
また、Δθは(3)式により加熱条件において計算される。
【0034】
Δθ = F・p・t / k ・・・(3)
ここで、F:温度差の発生具合を表す係数、p:断面単位面積当りの加熱吸収電力でP/(W・L)(P:(1)式の加熱吸収電力、S:材料断面積=t・W)、t:材料板厚、W:材料幅、k:熱伝導率を示す。
【0035】
今、可能な範囲でΔθを小さくするには、(a)Fを小さくする方法と、(b)pを小さくする方法とがあり、両者について検討する。
【0036】
(a)Fを小さくする方法。
【0037】
浸透深さδと板厚tの関係 χ = t / δ ・・・(4)
を用いて表現すると、Fは(5)式で表現される。
【0038】
F = 1 − ( W − 1 ) / χ / Y ・・・(5)
W = 1/2・( cosh(χ) + cos(χ) )
Y = sinh(χ) − sin(χ)
となる。図1に(5)式に基づいて常温付近約20℃から加熱を開始する時のFとχの関係を示す。
【0039】
強磁性体の600℃付近の抵抗率ρを75(μΩ・cm)、600℃付近の比透磁率μが加熱周波数100Hzのとき15、加熱周波数1500Hzのとき32として、加熱周波数fが100〜1500Hzの範囲で浸透深さδは2.0mm<δ<11.2mmとなる。よって、板厚30mmとすると、χは2.7<χ<15.0となる。この時のFの値域は0.88<F<0.97であり、周波数fを1/15倍に低下させてもFの低減効果は9%程度しか得られない。この加熱装置は鋼の磁性領域の加熱であるため、浸透深さが元々小さく、加熱周波数fを大幅に下げても温度差の発生具合を表す係数であるFの低減効果は極めて低いことがわかる。
【0040】
(b)pを小さくする方法。
【0041】
断面単位面積当りの加熱吸収電力pは昇温のエネルギーであるから、温度差最小化だけを考えれば十分小さくpを規定すれば良いが、インダクター個数が増えたりインダクター長が長くなったりするという問題が生じる。また、装置台数が増えれば空冷抜熱による損失も増大し加熱効率が低下するという問題も無視できず、単純にpを低下させることはできない。pを低下させたらインダクター長を長くする必要がある。したがってインダクター装置の加熱能力を最大限向上しながら、限られた板厚範囲(熱処理厚鋼板は8mm〜50mm)の中で均一加熱を実現する単機昇温量を見出す必要がある。
【0042】
単位表面積当たりの加熱吸収電力pは(6)式で表される。
【0043】
p=π・μ・f・H 2 ・t・Q ・・・(6)
ここで、p:単位面積当りの加熱吸収電力、f:加熱周波数、H:磁界の強さ、μ:透磁率、Q:電力吸収係数を示す。
【0044】
Maxwellの方程式から誘導加熱の基本方程式を導出すると、∇ 2 ・H=μ/ρ・∂H/∂tとなり、図2に平板(幅方向無限遠方条件)に関する条件でQの推移を求めたものを示す。
【0045】
χ=t/δに対するQの推移は、前項で求めたχの範囲(2.7<χ<15.0)では約1/6程度になることがわかる。従って(6)式においてpを決定する時、1500Hzを選定すれば加熱周波数fは15倍となるので磁界の強さHを大きく取る必要がない。磁界Hを大きく取るということはインダクターの起磁力・磁束密度も大きくすることになり、装置全体の設計の難しさが増大する。
【0046】
一方、加熱周波数は先に示したように10倍以上変化させることは容易であるから、周波数を高くすることにより高い加熱吸収電力を得ることができる。ここで、60Hzと600Hzで加熱したときの吸収電力の比較を行う。加熱材の板厚を30mm、600℃付近の比透磁率μを、60Hzと600Hzで加熱したときそれぞれ12および25とし、600℃付近の抵抗率ρを75(μΩ・cm)として、χを計算すると、
60Hz加熱時、δ=16.2mmより、χ=30mm/16.2=1.9
600Hz加熱時、δ=3.6mmより、χ=30mm/3.6=8.3
f×Qが入熱量に比例するのでf×Qの値を比較すると、
60Hz加熱時はf×Q=60×0.3=18程度
600Hz加熱時のf×Q=600×0.12=72程度
以上のように、加熱周波数を商用周波数の10倍程度に設定することにより、4倍近い吸収電力を得ることができる。
【0047】
現在数千KWの出力を得られる周波数上限は1500Hz程度であるので、少なくとも200Hz以上で加熱するのは装置技術上何ら問題ない。以上のことから加熱吸収電力確保を重視して加熱周波数を高くすることが必要であると同時に、温度差低減のために加熱吸収電力pをインダクター長を延ばせる範囲内で低減することが必要となる。(p=P/(W・L)であるから、L=0.3mとL=1.5mでは5倍異なる。また、厚板のロール間隔の限界は通板上1.5mであるので、インダクター長限界は1.5mとなる。)
2.加熱周波数を200Hz〜2000Hzとすると加熱能力を確保し、均一加熱効果も得られる。
【0048】
図2のQ値ピークとなるχ=t/δ=2.3よりχ値が小さくなると、加熱効率が著しく低下することにより、加熱周波数が200Hz未満では薄物(板厚14mm未満)の加熱ができない。つまり、加熱周波数が低いと加熱できる板厚の下限値が存在する。(例えば加熱周波数200Hzの場合、下限値は約17mmとなる。)
加熱周波数が200Hz〜2000Hzとすると、薄物から厚物(板厚14mm以上)までの均一加熱が可能となり好ましい。
【0049】
一方、加熱周波数が2000Hzを超えると、厚物の場合、加熱周波数が200Hz〜2000Hzのときに比べてエッジの温度上昇量が高くなる。これは、加熱周波数が2000Hzを超えると、浸透深さδと板厚の比(χ値)が小さくなり、厚鋼板のコーナーにも回りこみ電流があってコーナーに沿っての加熱が著しくなりエッジ部過加熱が増大するが、加熱周波数が2000Hz以下ではコーナー電流が小さくなって加熱されなくなるからである。
【0050】
このように、被加熱材料の板厚方向均一化を図る時には必ずしも低周波加熱(加熱周波数約200Hz以下)が必要ではないことがわかる。
【0051】
【実施例】
厚鋼板の加熱能率390T/Hにより板厚範囲8〜50mm、板幅4600mmの厚鋼板の熱処理を実施した。熱処理装置の仕様は以下の通りである。
1.各インダクターの加熱周波数を1000Hzとする。
2.各インダクターの単機昇温量を400℃以下とし、3台以上のインダクターを直列に配置する。
3.各インダクターのコイル長さを1.2mとする。
4.各インダクターを650mmの距離を隔てて配置する。
【0052】
(実施例1)
本発明例では、図5に板厚12mmの厚鋼板について、上記の仕様のインダクターを用いて、20℃から650℃まで加熱して630℃昇温したときの、板上面温度、板上面より1/4板内部すなわち1/4板上面温度、板厚中央部温度および平均温度についての温度上昇曲線を示した。昇温量630℃を実現するためにはインダクターが5台必要であった。また、インダクター間で表面温度を低下させた後、次インダクターで加熱する間欠加熱を実施した。
【0053】
(実施例2)
本発明例では、図6に板厚50mmの厚鋼板について、上記の仕様のインダクターを用いて、20℃から650℃まで加熱して630℃昇温したときの、板上面温度、板上面より1/4板内部すなわち1/4板上面温度、板厚中央部温度および平均温度についての温度上昇曲線を示した。昇温量630℃を実現するためにはインダクターが8台必要であった。また、インダクター間で表面温度を低下させた後、次インダクターで加熱する間欠加熱を実施した。
【0054】
【発明の効果】
従来のガス焚き炉に比べ高能率な熱処理設備がより安価に提供できる。薄物から厚物まで、加熱終了時点で板厚・板幅方向で±10℃の極めて精度の良い一様加熱が実現できる。材料の加熱歪による変形、反り、蛇行を発生させないで加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】常温付近約20℃から加熱を開始する時のF(温度差の発生具合を表す係数)とχ(χ=t/δ、板厚tと浸透深さδとの関係)の関係を示す説明図
【図2】平板(幅方向無限遠方条件)に関する条件でのχ(χ=t/δ、板厚tと浸透深さδとの関係)とQ(電力吸収係数)の関係を示す説明図
【図3】同一能率で加熱した時の、厚鋼板の板厚別必要均熱時間と厚鋼板の誘導加熱装置間の通過時間の比較
【図4】インダクター1台当たりの最大昇温量が約400℃としたときの、厚鋼板(板厚20mm)の加熱の一例を示す昇温特性グラフ
【図5】本発明法の実施例で厚鋼板(板厚12mm)の加熱の一例を示す昇温特性グラフ
【図6】本発明法の実施例で厚鋼板(板厚50mm)の加熱の一例を示す昇温特性グラフ
Claims (3)
- 複数台のソレノイド型誘導加熱装置(以下インダクターという)を直列に配置した厚鋼板の熱処理装置において、各インダクターの加熱周波数を200Hz〜2000Hz、単機昇温量を400℃以下とし、3台以上のインダクターを直列に配置し、かつ、インダクター間距離を通過時間換算で1秒〜20秒分あけた配置として、インダクター間で表面温度を低下させた後、次インダクターで加熱する間欠加熱することとし、鋼板表面温度が磁気変態点(キュリー温度)以下の目標上限温度を超えないように、各インダクターの単機昇温量を設定することを特徴とする厚鋼板の熱処理装置。
- 各インダクターのコイル長さを1.5m以下とすることを特徴とする請求項1に記載の厚鋼板の熱処理装置。
- 各インダクターを300mm以上の距離を隔てて配置することを特徴とする請求項1または2に記載の厚鋼板の熱処理装置。
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JP2000051910A (ja) * | 1998-08-10 | 2000-02-22 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 連続化熱間圧延設備 |
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