以下、添付図面を参照して、本発明に係るインプリント方法、情報記録媒体製造方法およびインプリントシステムの最良の形態について説明する。
最初に、本発明に係るインプリント方法に従ってインプリント処理を実行するインプリントシステム1Aの構成について、図面を参照して説明する。
図1に示すインプリントシステム1Aは、本発明に係るインプリントシステムの一例であって、後述するようにして、磁気ディスク100(本発明における情報記録媒体の一例:図2参照)の製造時に本発明に係るインプリント方法に従って中間体70(本発明における基材の一例:図3参照)にエッチング処理用のマスクを形成可能に構成されている。この場合、磁気ディスク100は、図示しない制御装置、磁気ヘッドおよびモータ等と共に筐体内に収容されてハードディスクドライブを構成するディスクリートトラック媒体(パターンド媒体の一例)であって、図2に示すように、軟磁性層72、中間層73および磁性層74がガラス基板71の第1面71aおよび第2面71bにこの順でそれぞれ形成されて、一例として、垂直記録方式による記録データの記録が可能に構成されている。なお、同図および図3では、本発明についての理解を容易とするために、各層の厚みの比率を実際の比率とは相違する比率で図示している。
また、この磁気ディスク100では、一例として、突端部側が磁性材料(磁性層74)で形成された複数の凸部81と、隣り合う凸部81の間の凹部82とが形成されて、データトラックパターンやサーボパターンを構成する凹凸パターン80a,80bが形成されている。さらに、凹凸パターン80a,80bの各凹部82内には、SiO2、C(炭素)、非磁性金属材料および樹脂材料等の非磁性材料75が埋め込まれ、これにより、磁気ディスク100の表裏両面がそれぞれ平坦化されている。また、この磁気ディスク100では、各凹部82内に埋め込まれた(隣り合う凸部81,81の間に埋め込まれた)非磁性材料75、および磁性層74(凸部81)の表面を覆うようにして、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等によって保護層76(DLC膜)が形成されている。さらに、保護層76の表面には、磁気ヘッドおよび磁気ディスク100の双方の傷付きを回避するための潤滑剤(一例として、フッ素系の潤滑剤)が塗布されている。
この磁気ディスク100は、後述するようにして、本発明に係る情報記録媒体製造方法に従って、図3に示す中間体70と図4に示すスタンパー50A1a(スタンパー50A1b,50A2a,50A2b,50A3),50B1a(スタンパー50B1b,50B2a,50B2b,50B3)とを使用して製造される。中間体70は、図3に示すように、軟磁性層72、中間層73、磁性層74、Bマスク層77およびAマスク層78がガラス基板71の第1面71aおよび第2面71bにこの順でそれぞれ形成されている。ガラス基板71は、ガラス板を表面研磨して厚みが0.6mm程度の円板状に形成されている。なお、中間体70(磁気ディスク100)に使用する基板は、ガラス基板に限定されず、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で円板状に形成した基材を使用することができる。
軟磁性層72は、CoFeNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが30nm〜200nm程度の薄膜状に形成されている。中間層73は、磁性層74を形成するための下地層として機能する層であって、Ru、CrおよびCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが20〜40nm程度の薄膜状に形成されている。磁性層74は、前述した凹凸パターン80a,80b(凸部81の先端部側)を構成する層であって、例えばCoCrPt合金をスパッタリングして形成した厚み10〜30nm程度の層に対してBマスク層77をマスクとして用いたエッチング処理を実行することによって中間層73に達する深さの各凹部82が形成されている。
Bマスク層77は、エッチング処理によって磁性層74に上記の各凹部82を形成するためのマスクとして機能する層であって、一例として、NiやTa等の金属材料、またはC(炭素)などによって厚み10〜30nm程度の薄膜状に形成されている。Aマスク層78は、エッチング処理によってBマスク層77をマスクとして機能させるように加工するためのマスク層であって、一例として、紫外線硬化型の樹脂材料(一例として、アクリル樹脂)によって厚みが10nm〜80nm程度の薄膜状に形成されている。この場合、この中間体70では、後述する転写処理によって、このAマスク層78に本発明におけるC凹凸パターンおよびD凹凸パターンが形成される。なお、以下の説明においては、ガラス基板71の第1面71a側に形成されたAマスク層78の表面を中間体70の第1面70aといい、ガラス基板71の第2面71b側に形成されたAマスク層78の表面を中間体70の第2面70bという。
スタンパー50A1aは、本発明におけるA1スタンパーの一例であって、図4に示すように、磁気ディスク100における凹凸パターン80aの各凹部82に対応する複数の凸部61と、凹凸パターン80aの各凸部81に対応する複数の凹部62とが形成されて、凹凸パターン80aとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン60a(本発明における「A凹凸パターン」の一例)が形成されている。また、スタンパー50B1aは、本発明におけるB1スタンパーの一例であって、磁気ディスク100における凹凸パターン80bの各凹部82に対応する複数の凸部61と、凹凸パターン80bの各凸部81に対応する複数の凹部62とが形成されて、凹凸パターン80bとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン60b(本発明における「B凹凸パターン」の一例)が形成されている。
このスタンパー50A1a,50B1aは、図5に示すように、その平面視形状が相似形(この例では、双方とも円形)で、かつ、平面積が互いに相違するように形成されて(この例では、スタンパー50A1aの平面積よりもスタンパー50B1aの平面積が大きくなるように形成されて)、本発明におけるAスタンパーおよびBスタンパーをそれぞれ構成する。具体的には、スタンパー50A1aは、その直径L2(一例として、60mm)が中間体70の直径L1(一例として、48mm)よりも大径で、かつ、スタンパー50B1aの直径L3(一例として80mm)よりも小径となるように円板状に形成されている。また、スタンパー50B1aは、その直径L3が中間体70の直径L1およびスタンパー50A1aの直径L2よりも大径となるように円板状に形成されている。したがって、このスタンパー50A1a,50B1aは、その平面積が中間体70の平面積よりもそれぞれ大きくなるように形成されている。この場合、スタンパー50A1a,50B1aは、一例として、公知の製造方法に従って製造した金属スタンパーを用いた射出成形によって光透過性を有する樹脂材料で厚み0.6mm程度の平板状に形成されている。なお、金属スタンパーの製造方法や、射出成形による樹脂スタンパー(スタンパー50A1a,50B1a等)の製造方法については公知のため、その説明を省略する。
また、図5に示すように、スタンパー50A1bは、本発明におけるA1スタンパーの他の一例であって、上記のスタンパー50A1aと同様にして、本発明におけるA凹凸パターンに相当する凹凸パターン60aが形成されている。さらに、スタンパー50B1bは、本発明におけるB1スタンパーの他の一例であって、上記のスタンパー50B1aと同様にして、本発明におけるB凹凸パターンに相当する凹凸パターン60bが形成されている。このスタンパー50A1b,50B1bは、その平面視形状が相似形(この例では、双方とも正方形)で、かつ、平面積が互いに相違するように形成されて(この例では、スタンパー50A1bの平面積よりもスタンパー50B1bの平面積が大きくなるように形成されて)、本発明におけるAスタンパーおよびBスタンパーを構成する。
具体的には、スタンパー50A1bは、一辺の長さL12(一例として、60mm)が中間体70の直径L1(一例として、48mm)よりも長く、かつスタンパー50B1bの一辺の長さL13(一例として80mm)よりも短くなるように平板状に形成されている。また、スタンパー50B1bは、一辺の長さL13が中間体70の直径L1およびスタンパー50A1bの一辺の長さL12よりも長くなるように平板状に形成されている。したがって、このスタンパー50A1b,50B1bは、その平面積が中間体70の平面積よりもそれぞれ大きくなるように形成されている。なお、以下の説明においては、本発明についての理解を容易とするために、一例として、前述したスタンパー50A1a,50B1aを使用する例について説明する。したがって、以下の説明におけるスタンパー50A1a,50B1aについての一連の処理内容をスタンパー50A1b,50B1bに置き換えて実行することにより、スタンパー50A1a,50B1aを用いたときと同様の効果が奏される。
一方、図1に示すように、インプリントシステム1Aは、スタンパー取り付け装置2A、搬送装置5Aおよびプレス装置4Aを備えている。スタンパー取り付け装置2Aは、本発明におけるAスタンパー取り付け装置に相当し、図6に示すように、本発明における第1下側基台に相当する固定側基台21aと、本発明における第1上側基台に相当する可動側基台22aと、固定側基台21aに対して可動側基台22aを上下動させる上下動装置(図示せず)とを備えている。
この場合、固定側基台21aの上面には、上記の凹凸パターン60a,60bを形成すべき中間体70を設置した際に中間体70における第2面70bの中周領域および外周領域(中央領域(図示しない装着用中心孔およびその周囲の領域)を除く領域:完成状態の磁気ディスク100において上記のデータトラックパターンやサーボパターンが形成される領域)に対して非接触状態で中間体70を保持することができるように、円環状の凹部23が形成されている。これにより、同図に示すように、第1面70aを上向きにした状態で中間体70を固定側基台21aの上に設置した際に、第2面70bの中央領域と、中間体70の外縁部とに固定側基台21aが当接するようにして(第2面70bにおける中周領域および外周領域に固定側基台21aが非接触の状態で)中間体70が保持される。また、可動側基台22aは、その下面が平坦に形成されると共に、スタンパー50A1aの外縁部に係合可能な保持用爪部を有する円筒状の保持部24が取り付けられている。この場合、保持部24の保持用爪部は、スタンパー50A1aを確実に保持可能な十分な厚みとなるように形成されている。
一方、プレス装置4Aは、本発明におけるBスタンパー取り付け装置および本発明におけるプレス装置に相当し、図8に示すように、本発明における第2下側基台および第3下側基台に相当する固定側基台41aと、本発明における第2上側基台および第3上側基台に相当する可動側基台42aと、固定側基台41aに対して可動側基台42aを上下動させる上下動装置(図示せず)とを備えている。固定側基台41aの上面には、後述するようにしてスタンパー取り付け装置2Aによってスタンパー50A1aを取り付けた中間体70を反転させて設置した際にスタンパー50A1aの中心孔Hに嵌入してスタンパー50A1aを規定の設置位置に位置決め可能な凸部43が形成されている。この場合、凸部43は、その外径がスタンパー50A1aの中心孔Hの内径と等しく(または、ほぼ等しく)なるように形成されている。また、可動側基台42aは、その下面が平坦に形成されると共に、スタンパー50B1aの外縁部に係合可能な保持用爪部を有する円筒状の保持部44が取り付けられている。この場合、保持部44の保持用爪部は、スタンパー50B1aを確実に保持可能な十分な厚みとなるように形成されている。
搬送装置5Aは、スタンパー取り付け装置2Aによってスタンパー50A1aを取り付けた中間体70をプレス装置4Aまで搬送する。この場合、搬送装置5Aは、後述するようにして、搬送した中間体70(スタンパー50A1aの取り付けが完了した中間体70)をプレス装置4Aの固定側基台41aに設置する際に、スタンパー取り付け装置2Aから取り外した中間体70を反転させて、スタンパー50A1aを下側にした状態で固定側基台41a上に設置する。なお、本発明に係るインプリント方法およびインプリントシステムは、搬送装置5Aによって中間体70を搬送する方法(搬送装置5Aを備えた構成)に限定されず、例えば作業者がスタンパー取り付け装置2Aからプレス装置4Aまで中間体70を搬送する方法(搬送装置5Aを備えていない構成)を採用することができる。
次に、磁気ディスク100の製造方法について、主としてインプリントシステム1Aによるインプリント方法を中心に説明する。
上記の磁気ディスク100の製造に際しては、まず、前述したスタンパー50A1a,50B1aを用いてエッチング処理用のマスクを中間体70の第1面70aおよび第2面70bに形成する。具体的には、図6に示すように、第1面70aを上向きにした状態で中間体70をスタンパー取り付け装置2Aの固定側基台21a上に設置する。この際には、前述したように、中間体70の中央領域および外縁部だけに固定側基台21aが接触するようにして中間体70が保持される。これにより、中間体70における第2面70bの中周領域および外周領域(後にデータトラックパターンやサーボパターンが形成される領域)に対する固定側基台21aの接触が回避されて、第2面70bにおけるAマスク層78の傷付きが回避される。
次いで、凹凸パターン60aの形成面を下向きにした状態で保持部24によってスタンパー50A1aを可動側基台22aに保持させる(可動側基台22aに設置する)。この際に、保持部24は、スタンパー50A1aの外縁部(後述するように中間体70に対する取り付けが完了した状態において中間体70からはみ出す部位)を保持する。なお、中間体70およびスタンパー50A1aの設置が完了した状態においては、位置合わせ作業を行うことによって、中間体70の中心(一例として、磁気ディスク100として使用される際の回転中心)と、スタンパー50A1aの中心(一例として、凹凸パターン60aで構成された同心円状のデータトラックパターンの中心)とが固定側基台21aに対する可動側基台22aの上下動方向において一致させられているものとする。
続いて、同図に示す矢印Dの向きで、固定側基台21aに対して可動側基台22aを下動させ(本発明における「第1下側基台に対して第1上側基台を相対的に接近させる」との処理の一例)、図7に示すように、固定側基台21a上の中間体70における第1面70a(Aマスク層78)にスタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aの形成面を押し当てる。これにより、中間体70の第1面70aとスタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aの形成面(各凸部61の突端面)とが密着して中間体70に対するスタンパー50A1aの取り付けが完了する(本発明における「Aスタンパー取り付け処理」の完了)。
次いで、図7に示す矢印Uの向きで、可動側基台22aを上動させた後に、搬送装置5Aが、スタンパー50A1aが取り付けられた中間体70をスタンパー取り付け装置2Aから取り外してプレス装置4Aまで搬送する。この際に、搬送装置5Aは、スタンパー取り付け装置2Aから取り外した中間体70およびスタンパー50A1aの上下を反転させることにより、図8に示すように、中間体70における第2面70bを上向きにした状態でプレス装置4Aにおける固定側基台41aに設置する。この場合、前述したように、固定側基台41aには、その外径がスタンパー50A1aの中心孔Hの内径と等しい凸部43が形成されている。したがって、スタンパー50A1aの中心孔H内に凸部43を嵌入するようにして固定側基台41a上にスタンパー50A1aおよび中間体70を設置することにより、固定側基台41aに対してスタンパー50A1aおよび中間体70が共に位置決めされる。
次いで、凹凸パターン60bの形成面を下向きにした状態で保持部44によってスタンパー50B1aを可動側基台42aに保持させる(可動側基台42aに設置する)。この際に、保持部44は、スタンパー50B1aの外縁部(後述するように中間体70に対する取り付けが完了した状態において中間体70およびスタンパー50A1aの双方からからはみ出す部位)を保持する。なお、中間体70(スタンパー50A1a)およびスタンパー50B1aの設置が完了した状態においては、位置合わせ作業を行うことによって、中間体70の中心(一例として、磁気ディスク100として使用される際の回転中心)と、スタンパー50B1aの中心(一例として、凹凸パターン60bで構成された同心円状のデータトラックパターンの中心)とが固定側基台41aに対する可動側基台42aの上下動方向において一致させられているものとする。
続いて、同図に示す矢印Dの向きで、固定側基台41aに対して可動側基台42aを下動させ(本発明における「第2下側基台に対して第2上側基台を相対的に接近させる」との処理の一例)、図9に示すように、固定側基台41a上の中間体70における第2面70b(Aマスク層78)にスタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bの形成面を押し当てる。これにより、中間体70の第2面70bとスタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bの形成面(各凸部61の突端面)とが密着して中間体70に対するスタンパー50B1aの取り付けが完了する(本発明における「Bスタンパー取り付け処理」の完了)。
この場合、可動側基台42aに設置されているスタンパー50B1aの直径L3が、固定側基台41aに設置されているスタンパー50A1aの直径L2および中間体70の直径L1よりも十分に大径となっているため、本発明における「Bスタンパー取り付け処理」に際して、スタンパー50B1aを保持している保持部44の先端部がスタンパー50A1aや中間体70の外縁部に当接する事態が回避される。また、スタンパー50B1aの取り付けが完了した状態においては、スタンパー50B1aにおける外縁部の全域(本発明における「少なくとも一部」が全域となっている例)がスタンパー50A1aに対して中間体70の厚み方向において重ならない状態となっている。
続いて、固定側基台41aに対して可動側基台42aをさらに下動させることにより、プレス装置4Aを本発明におけるプレス装置として機能させて(固定側基台41aを本発明における第3下側基台として機能させると共に、可動側基台42aを本発明における第3上側基台として機能させて)、スタンパー50A1aの凹凸パターン60aを第1面70aに押し付けると共に、第2面70bに取り付けられているスタンパー50B1aの凹凸パターン60bを第2面70bに押し付ける。具体的には、固定側基台41aに対する可動側基台42aの下動に伴い、スタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aが中間体70の第1面70aにおけるAマスク層78に押し付けられて、凹凸パターン60aの各凸部61が第1面70aのAマスク層78に押し込まれると共に、スタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bが中間体70の第2面70bにおけるAマスク層78に押し付けられて、凹凸パターン60bの各凸部61が第2面70bのAマスク層78に押し込まれる。この際に、凹凸パターン60a,60bの各凸部61が押し込まれた部位の樹脂材料(Aマスク層78)が、凹凸パターン60a,60bにおける各凹部62内に向けて移動する。これにより、スタンパー50A1a,50B1aの各凸部61が、中間体70の第1面70aおよび第2面70bの両Aマスク層78に対して十分に奥深くまで押し込まれる。
次いで、スタンパー50A1a,50B1aを中間体70に押し付けた状態を維持しつつ、スタンパー50A1a,50B1aを介して両Aマスク層78に紫外線を照射して硬化させる。これにより、スタンパー50A1aの凹凸パターン60aが中間体70における第1面70aのAマスク層78に転写されて、凹凸パターン60aとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン(本発明におけるC凹凸パターン:図示せず)が第1面70aのAマスク層78(本発明における一方の面)に形成されると共に、スタンパー50B1aの凹凸パターン60bが中間体70における第2面70bのAマスク層78に転写されて、凹凸パターン60bとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン(本発明におけるD凹凸パターン:図示せず)が第2面70bのAマスク層78(本発明における他方の面)に形成される。以上により、本発明における「プレス処理」が完了する。
なお、上記の説明では、中間体70の第2面70bに対するスタンパー50B1aの取り付けが完了した後に直ちにプレス処理を開始する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、Aマスク層78を形成する樹脂材料として熱可塑性樹脂材料を使用すると共に、スタンパー50B1aを取り付けるための取り付け装置(上記の例におけるプレス装置4A)とは別個のプレス装置を用いて、中間体70およびスタンパー50A1a,50B1aを所定温度(一例として、Aマスク層78のガラス転移点以上の温度)まで加熱した後にプレス処理を開始することもできる。このような方法を採用することにより、Aマスク層78に対して各凸部61をスムーズに押し込むことが可能となる。
この場合、図10に示すように、プレス装置4Aによるプレス処理が完了した状態においては、スタンパー50A1aが中間体70の外縁部から長さL4だけはみ出すようにして第1面70aに密着すると共に、スタンパー50B1aがスタンパー50A1aの外縁部から長さL5だけはみ出すようにして中間体70の第2面70bに密着した状態となる。したがって、対象物に対する両スタンプの押し付けが完了した状態において、両スタンプの外縁部が対象物の外縁部に対して対象物の厚み方向で一致した状態(外縁部が互いに重なった状態)となる従来のインプリント方法(対象物と同程度の平面積で、かつ、互いにほぼ等しい平面積の第1スタンプおよび第2スタンプを使用したインプリント方法)とは異なり、スタンパー50A1aからはみ出しているスタンパー50B1aの外縁部に剥離処理用の工具を引っ掛けて中間体70(第2面70b)からスタンパー50B1aをスムーズに剥離することができると共に、中間体70からはみ出しているスタンパー50A1aの外縁部に剥離処理用の工具を引っ掛けて中間体70(第1面70a)からスタンパー50A1aをスムーズに剥離することができる。
なお、スタンパー50A1a,50B1aの剥離方法は、上記のように剥離処理用の工具をスタンパー50A1a,50B1aの外縁部に引っ掛けて剥離する方法に限定されない。具体的には、例えばスタンパー50B1aの剥離に際して、図11,12に示す剥離装置6を用いることができる。この剥離装置6は、複数の吸着パット12が配設されたベース部11aと、複数の吸着パット12が配設されたベース部11bと、ベース部11aに対して上下動可能に構成された複数のピン部材13とを備えて構成されている。この場合、各吸着パット12は、図示しないエアポンプに接続されて、このエアポンプが作動することによってスタンパー50A1a,50B1aを吸着して保持するように構成されている。また、この剥離装置6では、一例として、ベース部11aが図示しないフレームに固定されると共に、ベース部11bが図示しない上下動機構によってベース部11aに対して接離動する構成が採用されている。さらに、各ピン部材13は、図示しない上下動機構によってベース部11aに対して上下方向にスライドさせられる。
この剥離装置6を用いたスタンパー50B1aの剥離に際しては、まず、図11に示すように、プレス装置4Aによるプレス処理が完了した状態のスタンパー50A1a、中間体70およびスタンパー50B1aの積層体を処理位置にセットする。具体的には、ベース部11aに配設された各吸着パット12に裏面を吸着させるようにしてスタンパー50A1aを保持させると共に、ベース部11bに配設された各吸着パット12に裏面を吸着させるようにしてスタンパー50B1aを保持させる。次いで、ベース部11aに対して各ピン部材13を矢印Uの方向にスライドさせる。この際には、スタンパー50A1aからはみ出しているスタンパー50B1aの外縁部に各ピン部材13の先端部が当接し、その状態において各ピン部材13がさらにスライドさせられることにより、図12に示すように、スタンパー50B1aの外縁部が上向きに反るようにしてスタンパー50B1aに撓みが生じる。
この場合、スタンパー50A1aが中間体70の外縁部から長さL4だけはみ出すようにして第1面70aに密着すると共に、スタンパー50B1aがスタンパー50A1aの外縁部から長さL5だけはみ出すようにして中間体70の第2面70bに密着した状態となっているため、各ピン部材13をスタンパー50A1aや中間体70に接触させることなく、スタンパー50B1aの外縁部に当接させて、スタンパー50B1aを十分に撓ませることができる。これにより、図12に示すように、中間体70の外縁部において、中間体70の第2面70bからスタンパー50B1aが剥離する。この状態において、ベース部11aに対してベース部11bを矢印Uの向きに移動させることにより、中間体70の第1面70aにスタンパー50A1aを密着させた状態を維持しつつ、中間体70の全域において中間体70の第2面70bからスタンパー50B1aをスムーズに剥離することができる。
次いで、図示しない剥離装置を用いて中間体70からスタンパー50A1aを剥離する。この場合、スタンパー50A1aの剥離に際しては、上記の剥離装置6におけるベース部11aに代えて、例えば、周面を挟持するようにして中間体70を保持する保持部を配設したベース部を有する装置を使用する。なお、この剥離装置によるスタンパー50A1aの剥離処理(各ピン部材によってスタンパー50A1aを撓ませて剥離する方法)については、上記の剥離装置6によるスタンパー50B1aの剥離処理(剥離方法)と同様であるため、詳細な説明および図示を省略する。以上のように、剥離処理用の工具を用いた剥離処理、または、剥離装置6等を用いた剥離処理を実行することにより、中間体70の両Aマスク層78に対するマスクパターンの形成が完了する。
この後、スタンパーの剥離処理が完了した中間体70の第1面70aおよび第2面70bに対して例えば酸素プラズマ処理を実行することにより、両Aマスク層78に形成された凹凸パターンにおける各凹部の底面に残存する樹脂材料(残渣)を除去して、Aマスク層78に形成された凹凸パターンにおける凹部の底面においてAマスク層78からBマスク層77を露出させる。次いで、Aマスク層78に形成された凹凸パターン(マスク)を用いたエッチング処理によって両Bマスク層77をそれぞれエッチングして、両磁性層74の上にBマスク層77からなる凹凸パターン(Bマスクパターン:図示せず)をそれぞれ形成する。続いて、両Bマスクパターンをマスクとして用いて中間体70の第1面70aおよび第2面70b(両磁性層74)に対するエッチング処理を実行して、複数の凸部81および複数の凹部82を有する凹凸パターン80a,80bを磁性層74に形成する。これにより、データトラックパターンおよびサーボパターンが中間層73の上に形成される(図示せず)。
次いで、各凸部81の上に残存しているBマスク層77をエッチング処理によって選択的に除去して各凸部81の突端面を露出させる。続いて、非磁性材料75としてのSiO2をスパッタリングすることにより、凹凸パターン80a,80bの形成面を非磁性材料75でそれぞれ覆う。次いで、磁性層74の上(各凸部81の上および各凹部82の上)の非磁性材料75の層に対してイオンビームエッチング処理を実行する。この際には、一例として、各凸部81における突端面が非磁性材料75から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。これにより、中間体70の表面が平坦化される。続いて、中間体70の表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層76を形成する。この後、保護層76の表面にフッ素系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布することにより、図2に示すように、磁気ディスク100が完成する。以上により、本発明に係る情報記録媒体製造方法が完了する。
次に、本発明に係るインプリント方法の他の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、上記のインプリントシステム1A、中間体70およびスタンパー50A1a,50B1aと同一の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
上記のインプリントシステム1Aでは、本発明におけるAスタンパー取り付け処理に際して、本発明におけるAスタンパー取り付け装置として、固定側基台21aに対して可動側基台22aを上下動させる構成のスタンパー取り付け装置2Aを使用すると共に、本発明におけるBスタンパー取り付け装置として、固定側基台41aに対して可動側基台42aを上下動させる構成のプレス装置4Aを使用し、そのプレス装置4Aを使用して本発明におけるプレス処理を実行したが、本発明はこれに限定されない。具体的には、インプリントシステム1Aに代えて、図13に示すインプリントシステム1Bを使用することができる。
このインプリントシステム1Bは、本発明に係るインプリントシステムの他の一例であって、スタンパー取り付け装置2B、スタンパー取り付け装置3B、プレス装置4Bおよび搬送装置5Bを備えている。スタンパー取り付け装置2Bは、本発明におけるAスタンパー取り付け装置の他の一例であって、図14に示すように、本発明における第1下側基台の他の一例である可動側基台21bと、本発明における第1上側基台の他の一例である固定側基台22bと、固定側基台22bに対して可動側基台21bを上下動させる上下動装置(図示せず)とを備えている。この場合、可動側基台21bの上面には、前述したインプリントシステム1Aにおけるスタンパー取り付け装置2Aの固定側基台21aと同様にして円環状の凹部23が形成されている。また、固定側基台22bには、スタンパー50A1aの外縁部に係合可能な保持用爪部を有する円筒状の保持部24が取り付けられている。この場合、保持部24の保持用爪部は、スタンパー50A1aを確実に保持可能な十分な厚みとなるように形成されている。
また、スタンパー取り付け装置3Bは、本発明におけるBスタンパー取り付け装置の他の一例であって、図16に示すように、本発明における第2下側基台の他の一例である可動側基台31bと、本発明における第2上側基台の他の一例である固定側基台32bと、固定側基台32bに対して可動側基台31bを上下動させる上下動装置(図示せず)とを備えている。この場合、可動側基台31bの上面には、前述したインプリントシステム1Aにおけるプレス装置4Aの固定側基台41aの凸部43と同様な円柱状の凸部33が形成されている。また、固定側基台32bは、スタンパー50B1aの外縁部に係合可能な保持用爪部を有する円筒状の保持部34が取り付けられている。この場合、保持部34の保持用爪部は、スタンパー50B1aを確実に保持可能な十分な厚みとなるように形成されている。
一方、プレス装置4Bは、本発明におけるプレス装置の他の一例であって、図18に示すように、本発明における第3下側基台の他の一例である固定側基台41bと、本発明における第3上側基台の他の一例である可動側基台42bと、固定側基台41bに対して可動側基台42bを上下動させる上下動装置(図示せず)とを備えている。搬送装置5Bは、スタンパー取り付け装置2Bによってスタンパー50A1aを取り付けた中間体70をスタンパー取り付け装置3Bまで搬送すると共に、スタンパー取り付け装置3Bによってスタンパー50B1aを取り付けた中間体70をプレス装置4Bまで搬送する。この場合、搬送装置5Bは、後述するようにして、スタンパー取り付け装置2Bから搬送する中間体70(スタンパー50A1aの取り付けが完了した中間体70)をスタンパー取り付け装置3Bの可動側基台31bに設置する際に、中間体70を反転させて、スタンパー50A1aを下側にした状態で可動側基台31bに設置する。なお、本発明に係るインプリント方法およびインプリントシステムは、搬送装置5Bによって中間体70を搬送する方法(搬送装置5Bを備えた構成)に限定されず、例えば作業者がスタンパー取り付け装置2Bからスタンパー取り付け装置3Bまで中間体70を搬送すると共にスタンパー取り付け装置3Bからプレス装置4Bまで中間体70を搬送する方法(搬送装置5Bを備えていない構成)を採用することができる。
次に、磁気ディスク100の他の製造方法について、主としてインプリントシステム1Bによるインプリント方法を中心に説明する。
まず、図14に示すように、第1面70aを上向きにした状態で中間体70をスタンパー取り付け装置2Bの可動側基台21bに設置する。この際には、前述したように、中間体70の中央領域および外縁部だけに可動側基台21bが接触するようにして中間体70が保持される。次いで、凹凸パターン60aの形成面を下向きにした状態で保持部24によってスタンパー50A1aを固定側基台22bに保持させる(固定側基台22bに設置する)。この際に、保持部24は、スタンパー50A1aの外縁部(後述するように中間体70に対する取り付けが完了した状態において中間体70からはみ出す部位)を保持する。なお、中間体70およびスタンパー50A1aの設置が完了した状態においては、位置合わせ作業を行うことによって、中間体70の中心(一例として、磁気ディスク100として使用される際の回転中心)と、スタンパー50A1aの中心(一例として、凹凸パターン60aで構成された同心円状のデータトラックパターンの中心)とが固定側基台22bに対する可動側基台21bの上下動方向において一致させられているものとする。
続いて、同図に示す矢印Uの向きで、固定側基台22bに対して可動側基台21bを上動させ(本発明における「第1下側基台に対して第1上側基台を相対的に接近させる」との処理の他の一例)、図15に示すように、固定側基台22bに設置されたスタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aの形成面に中間体70における第1面70a(Aマスク層78)を押し当てる。これにより、中間体70の第1面70aとスタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aの形成面(各凸部61の突端面)とが密着して中間体70に対するスタンパー50A1aの取り付けが完了する(本発明における「Aスタンパー取り付け処理」の完了)。
次いで、図15に示す矢印Dの向きで、可動側基台21bを下動させた後に、搬送装置5Bが、スタンパー50A1aの取り付けが完了した中間体70をスタンパー取り付け装置2Bから取り外してスタンパー取り付け装置3Bまで搬送する。この際に、搬送装置5Bは、スタンパー取り付け装置2Bから取り外した中間体70およびスタンパー50A1aを反転させることにより、図16に示すように、中間体70における第2面70bを上向きにした状態でスタンパー取り付け装置3Bにおける可動側基台31bに設置する。この場合、前述したように、可動側基台31bには、その外径がスタンパー50A1aの中心孔Hの内径と等しい凸部33が形成されている。したがって、スタンパー50A1aの中心孔H内に凸部33を嵌入するようにして可動側基台31b上にスタンパー50A1aおよび中間体70を設置することにより、可動側基台31bに対してスタンパー50A1aおよび中間体70が位置決めされる。
次いで、凹凸パターン60bの形成面を下向きにした状態で保持部34によってスタンパー50B1aを固定側基台32bに保持させる(固定側基台32bに設置する)。この際に、保持部34は、スタンパー50B1aの外縁部(後述するように中間体70に対する取り付けが完了した状態において中間体70およびスタンパー50A1aの双方からからはみ出す部位)を保持する。なお、中間体70(スタンパー50A1a)およびスタンパー50B1aの設置が完了した状態においては、位置合わせ作業を行うことによって、中間体70の中心(一例として、磁気ディスク100として使用される際の回転中心)と、スタンパー50B1aの中心(一例として、凹凸パターン60bで構成された同心円状のデータトラックパターンの中心)とが固定側基台32bに対する可動側基台31bの上下動方向において一致させられているものとする。
続いて、同図に示す矢印Uの向きで、固定側基台32bに対して可動側基台31bを上動させ(本発明における「第2下側基台に対して第2上側基台を相対的に接近させる」との処理の他の一例)、図17に示すように、固定側基台32bに設置されたスタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bの形成面に対して、可動側基台31b上の中間体70における第2面70b(Aマスク層78)を押し当てる。これにより、中間体70の第2面70bとスタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bの形成面(各凸部61の突端面)とが密着して中間体70に対するスタンパー50B1aの取り付けが完了する(本発明における「Bスタンパー取り付け処理」の完了)。
この場合、固定側基台32bに設置されているスタンパー50B1aの直径L3が、可動側基台31bに設置されているスタンパー50A1aの直径L2および中間体70の直径L1よりも十分に大径となっているため、本発明における「Bスタンパー取り付け処理」に際して、スタンパー50B1aを保持している保持部34の先端部がスタンパー50A1aや中間体70の外縁部に当接する事態が回避される。また、スタンパー50B1aの取り付けが完了した状態においては、スタンパー50B1aにおける外縁部の全域(本発明における「少なくとも一部」が全域となっている例)がスタンパー50A1aに対して中間体70の厚み方向において重ならない状態となっている。
次いで、同図に示す矢印Dの向きで、可動側基台31bを下動させた後に、搬送装置5Bが、スタンパー50B1aの取り付けが完了した中間体70をスタンパー取り付け装置3Bから取り外してプレス装置4Bまで搬送し、プレス装置4Bにおける固定側基台41bおよび可動側基台42bの間に設置する。続いて、固定側基台41bに対して可動側基台42bを下動させることにより、固定側基台41bおよび可動側基台42b間に挟み込まれているスタンパー50A1a、中間体70およびスタンパー50B1aをプレスする。この際には、中間体70の第1面70aに取り付けられているスタンパー50A1aの凹凸パターン60aが第1面70aに押し付けられると共に、第2面70bに取り付けられているスタンパー50B1aの凹凸パターン60bが第2面70bに押し付けられる。
具体的には、固定側基台41bに対する可動側基台42bの下動に伴い、スタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aが中間体70の第1面70aにおけるAマスク層78に押し付けられて、凹凸パターン60aの各凸部61が第1面70aのAマスク層78に押し込まれると共に、スタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bが中間体70の第2面70bにおけるAマスク層78に押し付けられて、凹凸パターン60bの各凸部61が第2面70bのAマスク層78に押し込まれる。この際に、凹凸パターン60a,60bの各凸部61が押し込まれた部位の樹脂材料(Aマスク層78)が、凹凸パターン60a,60bにおける各凹部62内に向けて移動する。これにより、スタンパー50A1a,50B1aの各凸部61が、中間体70の第1面70aおよび第2面70bの両Aマスク層78に対して十分に奥深くまで押し込まれる。
次いで、スタンパー50A1a,50B1aを中間体70に押し付けた状態を維持しつつ、スタンパー50A1a,50B1aを介して両Aマスク層78に紫外線を照射して硬化させる。これにより、スタンパー50A1aの凹凸パターン60aが中間体70における第1面70aのAマスク層78に転写されて、凹凸パターン60aとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン(本発明におけるC凹凸パターン:図示せず)が第1面70aのAマスク層78(本発明における一方の面)に形成されると共に、スタンパー50B1aの凹凸パターン60bが中間体70における第2面70bのAマスク層78に転写されて、凹凸パターン60bとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン(本発明におけるD凹凸パターン:図示せず)が第2面70bのAマスク層78(本発明における他方の面)に形成される。以上により、本発明における「プレス処理」が完了する。
なお、上記の説明では、スタンパー50A1a,50B1aの取り付けが完了した中間体70に対してプレス装置4Bによって後に直ちにプレス処理を開始する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、Aマスク層78を形成する樹脂材料として熱可塑性樹脂材料を使用すると共に、中間体70およびスタンパー50A1a,50B1aを所定温度(一例として、Aマスク層78のガラス転移点以上の温度)まで加熱した後にプレス処理を開始することもできる。このような方法を採用することにより、Aマスク層78に対して各凸部61をスムーズに押し込むことが可能となる。
この場合、図10に示すように、プレス装置4Bによるプレス処理が完了した状態における中間体70では、前述したインプリントシステム1Aのプレス装置4Aによるプレス処理が完了した状態と同様にして、その外縁部から長さL4だけはみ出すようにしてスタンパー50A1aが第1面70aに密着すると共に、そのスタンパー50A1aの外縁部から長さL5だけはみ出すようにしてスタンパー50B1aが第2面70bに密着した状態となる。したがって、スタンパー50A1aからはみ出しているスタンパー50B1aの外縁部に剥離処理用の工具を引っ掛けて中間体70(第2面70b)からスタンパー50B1aをスムーズに剥離することができると共に、中間体70からはみ出しているスタンパー50A1aの外縁部に剥離処理用の工具を引っ掛けて中間体70(第1面70a)からスタンパー50A1aをスムーズに剥離することができる。
なお、スタンパー50A1a,50B1aの剥離方法は、上記のように剥離処理用の工具をスタンパー50A1a,50B1aの外縁部に引っ掛けて剥離する方法に限定されない。具体的には、例えばスタンパー50B1aの剥離に際して、前述した剥離装置6(図11,12参照)を用いることができる。この場合、上記のインプリントシステム1Bによってインプリント処理した場合においても、前述したインプリントシステム1Aによってインプリント処理したときと同様にして、スタンパー50A1aが中間体70の外縁部から長さL4だけはみ出すようにして第1面70aに密着すると共に、スタンパー50B1aがスタンパー50A1aの外縁部から長さL5だけはみ出すようにして中間体70の第2面70bに密着した状態となっている。このため、各ピン部材13をスタンパー50A1aや中間体70に接触させることなく、スタンパー50B1aの外縁部に当接させて、スタンパー50B1aを十分に撓ませることができる。これにより、中間体70の第2面70bからスタンパー50B1aをスムーズに剥離することができる。また、スタンパー50A1aについても、前述した剥離装置(周面を挟持するようにして中間体70を保持しつつ、ピン部材によってスタンパー50A1aの外縁部を押圧して剥離する装置)を用いることによって、中間体70の第1面70aからスムーズに剥離することができる。
以上のように、剥離処理用の工具を用いた剥離処理、または、剥離装置6等を用いた剥離処理を実行することにより、中間体70の両Aマスク層78に対するマスクパターンの形成が完了する。この後、前述したインプリントシステム1Aによって両Aマスク層78にマスクパターンを形成した中間体70に対する一連の手順と同様にして各種のエッチング処理等を実行することにより、図2に示すように、磁気ディスク100が完成する。
次に、本発明に係るインプリント方法のさらに他の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、上記のインプリントシステム1A,1B、中間体70およびスタンパー50A1a,50B1aと同一の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
上記のインプリントシステム1A,1Bによるインプリント方法では、本発明におけるAスタンパー取り付け処理が完了した中間体70およびAスタンパー(スタンパー50A1a)を反転させた後にBスタンパー取り付け処理を開始しているが、本発明に係るインプリント方法およびインプリントシステムはこれに限定されない。具体的には、インプリントシステム1A,1Bに代えて、図19に示すインプリントシステム1Cを使用することにより、Aスタンパー取り付け処理の完了後に中間体70を反転させることなくBスタンパー取り付け処理を実行することができる。
このインプリントシステム1Cは、本発明に係るインプリントシステムのさらに他の一例であって、スタンパー取り付け装置3C、プレス装置4Cおよび搬送装置5Cを備えている。スタンパー取り付け装置3Cは、本発明におけるBスタンパーを中間体70(基材)に取り付ける装置であって、図20に示すように、固定側基台31c、可動側基台32c、および固定側基台31cに対して可動側基台32cを上下動させる上下動装置(図示せず)とを備えている。この場合、固定側基台31cの上面には、前述したインプリントシステム1Aにおけるスタンパー取り付け装置2Aの固定側基台21aと同様にして円環状の凹部23が形成されている。また、可動側基台32cは、その下面が平坦に形成されると共に、スタンパー50B1aの外縁部に係合可能な保持用爪部を有する円筒状の保持部34が取り付けられている。この場合、保持部34の保持用爪部は、スタンパー50B1aを確実に保持可能な十分な厚みとなるように形成されている。
また、プレス装置4Cは、本発明におけるAスタンパーを中間体70(基材)に取り付けると共に、本発明におけるCパターンおよびDパターンを形成するためのプレス処理を実行する装置であって、図22に示すように、固定側基台41c、可動側基台42c、および固定側基台41cに対して可動側基台42cを上下動させる上下動装置(図示せず)を備えている。この場合、固定側基台41cの上面には、前述したインプリントシステム1Aにおけるプレス装置4Aの固定側基台41aと同様にして凸部43が形成されている。また、可動側基台42cは、スタンパー50A1aの外縁部に係合可能な保持用爪部を有する円筒状の保持部44が取り付けられている。この場合、保持部44の保持用爪部は、スタンパー50A1aを確実に保持可能な十分な厚みとなるように形成されている。搬送装置5Cは、スタンパー取り付け装置3Cによってスタンパー50A1aを取り付けた中間体70をプレス装置4Cまで搬送する。
次に、磁気ディスク100の他の製造方法について、主としてインプリントシステム1Cによるインプリント方法を中心に説明する。
まず、図20に示すように、第2面70bを上向きにした状態で中間体70をスタンパー取り付け装置3Cの固定側基台31cに設置する。この際には、中間体70の第1面70aにおける中央領域および外縁部だけに固定側基台31cが接触するようにして中間体70が保持される。次いで、凹凸パターン60bの形成面を下向きにした状態で保持部34によってスタンパー50B1aを可動側基台32cに保持させる(可動側基台32cに設置する)。この際に、保持部34は、スタンパー50B1aの外縁部(後述するように中間体70に対する取り付けが完了した状態において中間体70からはみ出す部位)を保持する。なお、中間体70およびスタンパー50B1aの設置が完了した状態においては、位置合わせ作業を行うことによって、中間体70の中心(一例として、磁気ディスク100として使用される際の回転中心)と、スタンパー50B1aの中心(一例として、凹凸パターン60bで構成された同心円状のデータトラックパターンの中心)とが固定側基台31cに対する可動側基台32cの上下動方向において一致させられているものとする。
続いて、同図に示す矢印Dの向きで、固定側基台31cに対して可動側基台32cを下動させ、図21に示すように、固定側基台31c上の中間体70における第2面70b(Aマスク層78)に対して、可動側基台32cに設置されたスタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bの形成面を押し当てる。これにより、中間体70の第2面70bとスタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bの形成面(各凸部61の突端面)とが密着して中間体70に対するスタンパー50B1aの取り付けが完了する。
次いで、同図に示す矢印Uの向きで、可動側基台32cを上動させた後に、搬送装置5Cが、スタンパー50B1aの取り付けが完了した中間体70をスタンパー取り付け装置3Cから取り外してプレス装置4Cまで搬送する。この際に、搬送装置5Cは、図22に示すように、中間体70における第1面70aを下向きにした状態を維持しつつ、プレス装置4Cにおける可動側基台42cに対して保持部44によってスタンパー50B1aを保持させるようにして設置する。この際に、保持部44は、スタンパー50B1aの外縁部(後述するように中間体70に対する取り付けが完了した状態において中間体70およびスタンパー50A1aの双方からからはみ出す部位)を保持する。
次いで、凹凸パターン60aの形成面を上向きにした状態でスタンパー50A1aを固定側基台41cに設置する。この場合、前述したように、固定側基台41cには、その外径がスタンパー50A1aの中心孔Hの内径と等しい凸部43が形成されている。したがって、スタンパー50A1aの中心孔H内に凸部43を嵌入するようにして固定側基台41c上にスタンパー50A1aを設置することにより、固定側基台41cに対してスタンパー50A1aが位置決めされる。なお、中間体70(スタンパー50B1a)およびスタンパー50A1aの設置が完了した状態においては、位置合わせ作業を行うことによって、中間体70の中心(一例として、磁気ディスク100として使用される際の回転中心)と、スタンパー50A1a,50B1aの中心(一例として、凹凸パターン60a,60bで構成された同心円状のデータトラックパターンの中心)とが固定側基台41cに対する可動側基台42cの上下動方向において一致させられているものとする。
続いて、同図に示す矢印Dの向きで、固定側基台41cに対して可動側基台42cを下動させ、図23に示すように、固定側基台41c上のスタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aの形成面に対して、可動側基台42cによって保持されている中間体70の第1面70a(Aマスク層78)を押し当てる。これにより、中間体70の第1面70aとスタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aの形成面(各凸部61の突端面)とが密着して中間体70に対するスタンパー50A1aの取り付けが完了する。
この場合、可動側基台42cに設置されているスタンパー50B1aの直径L3が、固定側基台41cに設置されているスタンパー50A1aの直径L2および中間体70の直径L1よりも十分に大径となっているため、中間体70に対する取り付け処理に際して、スタンパー50B1aを保持している保持部44の先端部がスタンパー50A1aや中間体70の外縁部に当接する事態が回避される。また、スタンパー50A1aの取り付けが完了した状態においては、スタンパー50B1aにおける外縁部の全域(本発明における「少なくとも一部」が全域となっている例)がスタンパー50A1aに対して中間体70の厚み方向において重ならない状態となっている。
次いで、固定側基台41cに対して可動側基台42cをさらに下動させることにより、スタンパー50A1a、中間体70およびスタンパー50B1aをプレスする。この際には、中間体70の第1面70aに取り付けられているスタンパー50A1aの凹凸パターン60aが第1面70aに押し付けられると共に、第2面70bに取り付けられているスタンパー50B1aの凹凸パターン60bが第2面70bに押し付けられる。具体的には、固定側基台41cに対する可動側基台42cの下動に伴い、スタンパー50A1aにおける凹凸パターン60aが中間体70の第1面70aにおけるAマスク層78に押し付けられて、凹凸パターン60aの各凸部61が第1面70aのAマスク層78に押し込まれると共に、スタンパー50B1aにおける凹凸パターン60bが中間体70の第2面70bにおけるAマスク層78に押し付けられて、凹凸パターン60bの各凸部61が第2面70bのAマスク層78に押し込まれる。
この際に、凹凸パターン60a,60bの各凸部61が押し込まれた部位の樹脂材料(Aマスク層78)が、凹凸パターン60a,60bにおける各凹部62内に向けて移動する。これにより、スタンパー50A1a,50B1aの各凸部61が、中間体70の第1面70aおよび第2面70bの両Aマスク層78に対して十分に奥深くまで押し込まれる。次いで、スタンパー50A1a,50B1aを中間体70に押し付けた状態を維持しつつ、スタンパー50A1a,50B1aを介して両Aマスク層78に紫外線を照射して硬化させる。これにより、スタンパー50A1aの凹凸パターン60aが中間体70における第1面70aのAマスク層78に転写されて、凹凸パターン60aとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン(本発明におけるC凹凸パターン:図示せず)が第1面70aのAマスク層78(本発明における一方の面)に形成されると共に、スタンパー50B1aの凹凸パターン60bが中間体70における第2面70bのAマスク層78に転写されて、凹凸パターン60bとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン(本発明におけるD凹凸パターン:図示せず)が第2面70bのAマスク層78(本発明における他方の面)に形成される。以上により、プレス処理が完了する。
なお、上記の説明では、スタンパー50A1a,50B1aの取り付けが完了した中間体70に対してプレス装置4Cによって後に直ちにプレス処理を開始する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、Aマスク層78を形成する樹脂材料として熱可塑性樹脂材料を使用すると共に、中間体70およびスタンパー50A1a,50B1aを所定温度(一例として、Aマスク層78のガラス転移点以上の温度)まで加熱した後にプレス処理を開始することもできる。このような方法を採用することにより、Aマスク層78に対して各凸部61をスムーズに押し込むことが可能となる。
この場合、図10に示すように、プレス装置4Cによるプレス処理が完了した状態における中間体70では、前述したインプリントシステム1A,1Bのプレス装置4A,4Bによるプレス処理が完了した状態と同様にして、その外縁部から長さL4だけはみ出すようにしてスタンパー50A1aが第1面70aに密着すると共に、そのスタンパー50A1aの外縁部から長さL5だけはみ出すようにしてスタンパー50B1aが第2面70bに密着した状態となる。したがって、スタンパー50A1aからはみ出しているスタンパー50B1aの外縁部に剥離処理用の工具を引っ掛けて中間体70(第2面70b)からスタンパー50B1aをスムーズに剥離することができると共に、中間体70からはみ出しているスタンパー50A1aの外縁部に剥離処理用の工具を引っ掛けて中間体70(第1面70a)からスタンパー50A1aをスムーズに剥離することができる。
なお、スタンパー50A1a,50B1aの剥離方法は、上記のように剥離処理用の工具をスタンパー50A1a,50B1aの外縁部に引っ掛けて剥離する方法に限定されない。具体的には、例えばスタンパー50B1aの剥離に際して、前述した剥離装置6(図11,12参照)を用いることができる。この場合、上記のインプリントシステム1Cによってインプリント処理した場合においても、前述したインプリントシステム1A,1Bによってインプリント処理したときと同様にして、スタンパー50A1aが中間体70の外縁部から長さL4だけはみ出すようにして第1面70aに密着すると共に、スタンパー50B1aがスタンパー50A1aの外縁部から長さL5だけはみ出すようにして中間体70の第2面70bに密着した状態となっている。このため、各ピン部材13をスタンパー50A1aや中間体70に接触させることなく、スタンパー50B1aの外縁部に当接させて、スタンパー50B1aを十分に撓ませることができる。これにより、中間体70の第2面70bからスタンパー50B1aをスムーズに剥離することができる。また、スタンパー50A1aについても、前述した剥離装置(周面を挟持するようにして中間体70を保持しつつ、ピン部材によってスタンパー50A1aの外縁部を押圧して剥離する装置)を用いることによって、中間体70の第1面70aからスムーズに剥離することができる。
以上のように、剥離処理用の工具を用いた剥離処理、または、剥離装置6等を用いた剥離処理を実行することにより、中間体70の両Aマスク層78に対するマスクパターンの形成が完了する。この後、前述したインプリントシステム1Aによって両Aマスク層78にマスクパターンを形成した中間体70に対する一連の手順と同様にして各種のエッチング処理等を実行することにより、図2に示すように、磁気ディスク100が完成する。
このように、上記のインプリントシステム1A〜1Cによるインプリント方法では、本発明におけるAスタンパー(A1スタンパー)およびBスタンパー(B1スタンパー)として、平面視形状が互いに相似形で、かつ平面積が中間体70の平面積よりも大きいスタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を使用すると共に、スタンパー50B1a(50B1b)における外縁部の少なくとも一部(この例では、全域)がスタンパー50A1a(50A1b)に対して中間体70の厚み方向において重ならないように両スタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を中間体70の第1面70aおよび第2面70bにそれぞれ押し付けて本発明におけるC凹凸パターンおよびD凹凸パターンを中間体70に形成する。また、上記の磁気ディスク100の製造方法では、本発明に係るインプリント方法に従って本発明におけるC凹凸パターンおよびD凹凸パターンを形成し、形成したC凹凸パターンおよびD凹凸パターンを用いて磁気ディスク100を製造する。
したがって、このインプリントシステム1A〜1Cによるインプリント方法および磁気ディスク100の製造方法によれば、プレス処理が完了した状態において、中間体70からスタンパー50A1a(50A1b)の外縁部を長さL4だけはみ出させることができると共に、そのスタンパー50A1a(50A1b)からスタンパー50B1a(50B1b)の外縁部を長さL5だけはみ出させることができるため、スタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)の外縁部に例えば剥離処理用の工具を引っ掛けたり、ピン部材等を当接させて押圧したりしてスタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を中間体70から容易に剥離することができる。また、このインプリント方法および磁気ディスク100の製造方法によれば、スタンパー50B1a(50B1b)がスタンパー50A1a(50A1b)からはみ出している部位を保持することにより、例えばプレス処理時等において、スタンパー50B1a(50B1b)を保持している保持部(この例では、プレス装置4Aにおける可動側基台42aの保持部44、スタンパー取り付け装置3Bにおける固定側基台32bの保持部34、およびプレス装置4Cにおける可動側基台42cの保持部44)がスタンパー50A1a(50A1b)や中間体70に接触する事態が回避され、これにより、中間体70の第1面70aおよび第2面70bにスタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を確実に押し付けて、所望の凹凸パターンを高精度で形成することができる。
また、上記のインプリントシステム1A,1Bによるインプリント方法および磁気ディスク100の製造方法では、一方の面(この例では、第1面70a)を上向きにして中間体70を第1下側基台(固定側基台21aまたは可動側基台21b)に設置すると共に凹凸パターン60a(A凹凸パターン)の形成面を下向きにしてスタンパー50A1a(50A1b)を第1上側基台(可動側基台22aまたは固定側基台22b)に設置した後に第1下側基台に対して第1上側基台を相対的に接近させて(固定側基台21aに対する可動側基台22aの下動、または、固定側基台22bに対する可動側基台21bの上動)中間体70の第1面70aにスタンパー50A1a(50A1b)を取り付けるAスタンパー取り付け処理と、スタンパー50A1a(50A1b)が取り付けられた中間体70における第2面70bを上向きにしてスタンパー50A1a(50A1b)を第2下側基台(固定側基台41aまたは可動側基台31b)に設置すると共に凹凸パターン60b(B凹凸パターン)の形成面を下向きにしてスタンパー50B1a(50B1b)を第2上側基台(可動側基台42aまたは固定側基台32b)に設置した後に第2下側基台に対して第2上側基台を相対的に接近させて(固定側基台41aに対する可動側基台42aの下動、または、固定側基台32bに対する可動側基台31bの上動)中間体70における第2面70bにスタンパー50B1a(50B1b)を取り付けるBスタンパー取り付け処理と、第3下側基台(固定側基台41aまたは固定側基台41b)および第3上側基台(可動側基台42aまたは、可動側基台42b)を有するプレス装置(プレス装置4A,4B)を用いてスタンパー50A1a(50A1b)、中間体70およびスタンパー50B1a(50B1b)の積層体をプレスすることによって中間体70にC凹凸パターンおよびD凹凸パターンを形成するプレス処理とをこの順で実行する。
また、上記のインプリントシステム1A,1Bは、第1面70aを上向きにした状態で中間体70を設置可能な第1下側基台(固定側基台21aまたは可動側基台21b)および凹凸パターン60aの形成面を下向きにした状態でスタンパー50A1a(50A1b)を設置可能な第1上側基台(可動側基台22aまたは固定側基台22b)を有して第1下側基台に対して第1上側基台を相対的に接近させること(固定側基台21aに対する可動側基台22aの下動、または、固定側基台22bに対する可動側基台21bの上動)で中間体70における第1面70aにスタンパー50A1a(50A1b)を取り付け可能に構成されたAスタンパー取り付け装置(スタンパー取り付け装置2A,2B)と、スタンパー50A1a(50A1b)が取り付けられた中間体70における第2面70bを上向きにした状態でスタンパー50A1a(50A1b)を設置可能な第2下側基台(固定側基台41aまたは可動側基台31b)および凹凸パターン60bの形成面を下向きにした状態でスタンパー50B1a(50B1b)を設置可能な第2上側基台(可動側基台42aまたは固定側基台32b)を有して第2下側基台に対して第2上側基台を相対的に接近させること(固定側基台41aに対する可動側基台42aの下動、または、固定側基台32bに対する可動側基台31bの上動)で中間体70における第2面70bにスタンパー50B1a(50B1b)を取り付け可能に構成されたBスタンパー取り付け装置(プレス装置4Aまたはスタンパー取り付け装置3B)と、第3下側基台(固定側基台41aまたは固定側基台41b)および第3上側基台(可動側基台42aまたは、可動側基台42b)を有すると共にスタンパー50A1a(50A1b)、中間体70およびスタンパー50B1a(50B1b)の積層体をプレスすることによって中間体70にC凹凸パターンおよびD凹凸パターンを形成するプレス装置(プレス装置4A,4B)とを備えている。
したがって、このインプリントシステム1A,1B、インプリントシステム1A,1Bによるインプリント方法および磁気ディスク100の製造方法によれば、本発明におけるAスタンパー取り付け処理に際して本発明における第1下側基台に対して第1上側基台を相対的に接近させる方向(この例では、スタンパー取り付け装置2Aにおける固定側基台21aに対して可動側基台22aを接近させる方向、または、スタンパー取り付け装置2Bにおける固定側基台22bに対して可動側基台21bを接近させる方向)と、本発明におけるBスタンパー取り付け処理に際して本発明における第2下側基台に対して第2上側基台を相対的に接近させる方向(この例では、プレス装置4Aにおける固定側基台41aに対して可動側基台42aを接近させる方向、または、スタンパー取り付け装置3Bにおける固定側基台32bに対して可動側基台31bを接近させる方向)とを同じ方向とすることができる。したがって、Aスタンパー取り付け処理用の設備(この例では、スタンパー取り付け装置2A,2B)とBスタンパー取り付け処理用の設備(この例では、プレス装置4Aおよびスタンパー取り付け装置3B)とで固定側基台に対する可動側基台の接近方向および離間方向(接離動方向)が同じ同種の設備を使用してインプリント処理を実行することができる。
また、上記のインプリントシステム1A〜1Cによれば、本発明に係るインプリント方法に従って中間体70の第1面70aにC凹凸パターンを形成すると共に中間体70の第2面70bにD凹凸パターンを形成可能に構成したことにより、スタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を中間体70から容易に剥離することができると共に、中間体70の第1面70aおよび第2面70bにスタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を確実に押し付けて、所望の凹凸パターンを高精度で形成することができる。
なお、本発明は、上記の方法および構成に限定されない。例えば、上記のインプリントシステム1A〜1Cによるインプリント方法についての説明に際して参照した各図では、本発明におけるAスタンパーだけに中心孔Hを形成した構成を図示しているが、本発明はこれに限定されず、本発明におけるBスタンパーや基材にも中心孔を形成してもよい。また、平面視形状が相似形のスタンパー50A1a,50B1a(この例では、双方とも円形)、または、スタンパー50A1b,50B1b(この例では、双方とも正方形)を使用したインプリント方法について説明したが、本発明におけるAスタンパーおよびBスタンパーの構成はこれに限定されない。
具体的には、一例として、図24に示すように、その直径L2が中間体70の直径L1よりも長さL4の2倍だけ大径の円形のスタンパー50A2a(本発明におけるA2スタンパーの一例)と、その一辺の長さL13がスタンパー50A2aの直径L2と等しい正方形のスタンパー50B2a(本発明におけるB2スタンパーの一例)とを本発明における「AスタンパーおよびBスタンパー」として使用することができる。この場合、スタンパー50A2a,50B2aは、その平面積が中間体70の平面積よりもそれぞれ大きくなるように形成されている。なお、スタンパー50B2aにおける一辺の長さL13をスタンパー50A2aの直径L2よりも長く規定した構成や、長さL13をスタンパー50A2aの直径L2よりも僅かに短く規定した構成を採用することもできる。
このスタンパー50A2a,50B2aを使用したインプリント方法では、中間体70の第1面70aおよび第2面70bにスタンパー50A2a,50B2aをそれぞれ取り付けた状態において、同図に示すように、スタンパー50A2aの外縁部が長さL4だけ中間体70からはみ出すと共に、そのスタンパー50A2aに対してスタンパー50B2aの4つの角部が長さL5aだけはみ出した状態(スタンパー50B2aの外縁部の一部がスタンパー50A2aに対して中間体70の厚み方向において重ならない状態)となる。したがって、前述したスタンパー50A1a,50B1aに代えて、このスタンパー50A2a,50B2aを使用する際に、本発明におけるAスタンパー取り付け処理時には、スタンパー50A2aの外縁部(Aスタンパー取り付け処理が完了した状態において中間体70からはみ出す部位)を保持部によって保持すると共に、本発明におけるBスタンパー取り付け処理時には、スタンパー50B2aの外縁部(Bスタンパー取り付け処理が完了した状態において中間体70およびスタンパー50A2aの双方からはみ出す部位)を保持部によって保持することにより、スタンパー50A1a,50B1aを使用したインプリント方法と同様の効果を奏することができる。
また、図25に示すように、その一辺の長さL12が中間体70の直径L1よりも長さL4aの2倍だけ長い正方形のスタンパー50A2b(本発明におけるA2スタンパーの他の一例)と、その直径L3bがスタンパー50A2bの一辺の長さL12よりも長さL5bの2倍だけ大きい円形のスタンパー50B2b(本発明におけるB2スタンパーの他の一例)とを本発明における「AスタンパーおよびBスタンパー」として使用することができる。この場合、スタンパー50A2b,50B2bは、その平面積が中間体70の平面積よりもそれぞれ大きくなるように形成されている。
このスタンパー50A2b,50B2bを使用したインプリント方法では、中間体70の第1面70aおよび第2面70bにスタンパー50A2b,50B2bをそれぞれ取り付けた状態において、同図に示すように、スタンパー50A2bの外縁部が長さL4a〜L4bだけ中間体70からはみ出すと共に、そのスタンパー50A2bに対してスタンパー50B2aが長さL5bだけはみ出した状態(スタンパー50B2bの外縁部の一部がスタンパー50A2bに対して中間体70の厚み方向において重ならない状態)となる。したがって、前述したスタンパー50A1a,50B1aに代えて、このスタンパー50A2b,50B2bを使用する際に、本発明におけるAスタンパー取り付け処理時には、スタンパー50A2bの外縁部(Aスタンパー取り付け処理が完了した状態において中間体70からはみ出す部位)を保持部によって保持すると共に、本発明におけるBスタンパー取り付け処理時には、スタンパー50B2bの外縁部(Bスタンパー取り付け処理が完了した状態において中間体70およびスタンパー50A2bの双方からはみ出す部位)を保持部によって保持することにより、スタンパー50A1a,50B1aを使用したインプリント方法と同様の効果を奏することができる。
このように、本発明におけるAスタンパー(A2スタンパー)およびBスタンパー(B2スタンパー)として、平面視形状が互いに相違し、かつ平面積が中間体70の平面積よりも大きいスタンパー50A2a(50A2b),50B2a(50B2b)を使用すると共に、スタンパー50B2a(50B2b)における外縁部の一部がスタンパー50A2a(50A2b)に対して中間体70の厚み方向において重ならないように両スタンパー50A2a(50A2b),50B2a(50B2b)を中間体70の第1面70aおよび第2面70bにそれぞれ押し付けて本発明におけるC凹凸パターンおよびD凹凸パターンを中間体70に形成することにより、上記のスタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を使用したインプリント方法と同様にして、プレス処理が完了した状態において、中間体70からスタンパー50A2a(50A2b)の外縁部を長さL4または長さL4a〜L4bだけはみ出させることができると共に、そのスタンパー50A2a(50A2b)からスタンパー50B2a(50B2b)の外縁部を長さL5aまたは長さL5bだけはみ出させることができる。このため、スタンパー50A2a(50A2b),50B2a(50B2b)の外縁部に例えば剥離処理用の工具を引っ掛けたり、ピン部材等を当接させて押圧したりしてスタンパー50A2a(50A2b),50B2a(50B2b)を中間体70から容易に剥離することができる。また、このインプリント方法によれば、スタンパー50B2a(50B2b)がスタンパー50A2a(50A2b)からはみ出している部位を保持することにより、例えばプレス処理時等において、スタンパー50B2a(50B2b)を保持している保持部がスタンパー50A2a(50A2b)や中間体70に接触する事態が回避され、これにより、中間体70の第1面70aおよび第2面70bにスタンパー50A2a(50A2b),50B2a(50B2b)を確実に押し付けて、所望の凹凸パターンを高精度で形成することができる。
また、図26に示すように、平面視形状が互いに合同形(この例では、一辺の長さL12a,L12bが互いに等しく、平面積が互いに等しい正方形)で、かつ平面積が中間体70の平面積よりも大きいスタンパー50A3,50B3(本発明におけるA3スタンパーおよびB3スタンパーの一例)を本発明における「AスタンパーおよびBスタンパー」として使用することができる。このスタンパー50A3,50B3を使用したインプリント方法では、一例として、中間体70およびスタンパー50A3の中心を中心点として、スタンパー50A3に対してスタンパー50B3を45°だけ回動させた状態で中間体70の第1面70aおよび第2面70bにスタンパー50A3,50B3をそれぞれ取り付ける。この際には、同図に示すように、スタンパー50A3の外縁部が長さL4a〜L4bだけ中間体70からはみ出すと共に、そのスタンパー50A3に対してスタンパー50B3の4つの角部が長さL6aだけはみ出した状態(スタンパー50B3の外縁部の一部がスタンパー50A3に対して中間体70の厚み方向で重ならない状態)となっている。
したがって、前述したスタンパー50A1a,50B1aに代えて、このスタンパー50A3,50B3を使用する際に、本発明におけるAスタンパー取り付け処理時には、スタンパー50A3の外縁部(Aスタンパー取り付け処理が完了した状態において中間体70からはみ出す部位:例えば4つの角部)を保持部によって保持すると共に、本発明におけるBスタンパー取り付け処理時には、スタンパー50B3の角部(Bスタンパー取り付け処理が完了した状態において中間体70およびスタンパー50A3の双方からはみ出す部位)を保持部によって保持することにより、スタンパー50A1a,50B1aを使用したインプリント方法と同様の効果を奏することができる。なお、この状態においては、スタンパー50B3に対してスタンパー50A3の4つの角部が長さL6aと等しい長さL6bだけはみ出した状態(スタンパー50A3の外縁部の一部がスタンパー50B3に対して中間体70の厚み方向で重ならない状態)となっている。
このように、本発明におけるAスタンパー(A3スタンパー)およびBスタンパー(B3スタンパー)として、平面視形状が互いに合同形で、かつ平面積が中間体70の平面積よりも大きいスタンパー50A3,50B3を使用すると共に、両スタンパー50A3,50B3のいずれか一方(例えばスタンパー50A3)における外縁部の一部が他方(この例では、スタンパー50B3)に対して中間体70の厚み方向において重ならないように両スタンパー50A3,50B3を中間体70の第1面70aおよび第2面70bにそれぞれ押し付けてC凹凸パターンおよびD凹凸パターンを中間体70に形成することにより、上記のスタンパー50A1a(50A1b),50B1a(50B1b)を使用したインプリント方法、およびスタンパー50A2a(50A2b),50B2a(50B2b)を使用したインプリント方法と同様にして、プレス処理が完了した状態において、中間体70からスタンパー50A3の外縁部を長さL4a〜L4bだけはみ出させることができると共に、そのスタンパー50A3からスタンパー50B3の外縁部を長さL6aだけはみ出させる(スタンパー50B3からスタンパー50A3の外縁部を長さL6bだけはみ出させる)ことができる。このため、スタンパー50A3,50B3の外縁部に例えば剥離処理用の工具を引っ掛けたり、ピン部材等を当接させて押圧したりしてスタンパー50A3,50B3を中間体70から容易に剥離することができる。また、このインプリント方法によれば、スタンパー50B3がスタンパー50A3からはみ出している部位を保持することにより、例えばプレス処理時等において、スタンパー50B3を保持している保持部がスタンパー50A3や中間体70に接触する事態が回避され、これにより、中間体70の第1面70aおよび第2面70bにスタンパー50A3,50B3を確実に押し付けて、所望の凹凸パターンを高精度で形成することができる。
また、本発明におけるAスタンパーおよびBスタンパーを円形または正方形に形成した例について説明したが、AスタンパーおよびBスタンパーの平面視形状は円形や正方形に限定されず、例えば、正方形以外の各種多角形や楕円形等の各種の形状を採用することができる。さらに、金属スタンパーを用いた射出成形によって樹脂材料で形成した樹脂スタンパー(スタンパー50A1a,50B1a等)を使用する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、石英によって平板状に形成したスタンパーを本発明におけるAスタンパーおよびBスタンパーとして使用することができる。また、前述した紫外線硬化型の樹脂材料に代えて、例えば熱可塑性を有する樹脂材料や熱硬化型の樹脂材料でAマスク層78を形成したときには、ニッケル等の各種金属材料で形成したスタンパーを本発明におけるAスタンパーおよびBスタンパーとして使用することができる。
さらに、第1下側基台および第1上側基台のいずれか一方に対して他方を上下動させる構成、第2下側基台および第2上側基台のいずれか一方に対して他方を上下動させる構成、および第3下側基台および第3上側基台のいずれか一方に対して他方を上下動させる構成について説明したが、本発明に係るインプリント方法およびインプリントシステムはこれに限定されず、第1下側基台および第1上側基台の双方を上下動させることによって接離動させる構成、第2下側基台および第2上側基台の双方を上下動させることによって接離動させる構成、および第3下側基台および第3上側基台の双方を上下動させることによって接離動させる構成を採用することができる。