JP2007018649A - 記録媒体用基板の製造方法 - Google Patents

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博一 内山
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Abstract

【課題】微細形状を有するモールドの形状を、記録媒体用基板へ確実に転写することができる記録媒体用基板の製造方法を提供する。
【解決手段】平板状の記録媒体の主面上に記録信号に対応する凹凸パターンをモールド2A、2Bにより転写形成する方法であって、転写用のモールド2A、2Bの主面に形成された記録信号に対応する凹凸パターン領域D2より大きな外形寸法D1で、かつ記録媒体用基板3として規定された外形寸法D3より小さな外形寸法D1を有する転写前基板1を準備する工程と、モールド2A、2Bを転写前基板1に押圧して凹凸パターンを転写するとともに、転写前基板1を記録媒体用基板3の外形寸法まで拡張させる転写工程とを備えた方法からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハードディスクドライブに用いられる磁気ディスク用または光ディスクや光磁気ディスク等に用いられる光ディスク用の記録媒体用基板の製造方法に関する。
ハードディスクドライブは、近年、画像や動画等大容量のデータを記録するニーズの高まりやビデオレコーダー等のコンピュータ用以外の記憶装置としての用途拡大に伴い、記憶容量の増大とともに低価格化が求められている。高密度記録化を実現するためには、ビット占有面積の微細化に伴って増加する遷移領域からのノイズを抑制し、かつ磁化反転単位を小さくする必要がある。しかし、磁化反転単位を小さくしていくと、その体積に比例する異方性エネルギーも低下する。その結果、熱エネルギーによって磁化が反転することで記録情報が失われてしまう現象、いわゆる熱擾乱の問題が近年顕在化している。
この熱擾乱による記録情報の消失を解決する手段として、パターンドメディアが提案されている。パターンドメディアとは、記録情報を担う磁性膜を所定の形状にパターニングすることで、磁性膜を磁気的に孤立させ、それを磁化反転単位と使用する方法である。それによって、磁化反転単位の形状の不規則さに起因するノイズを減らし、磁化反転単位を微細化することなしに、高記録密度を実現するというものである。
また、高密度記録を実現するための別の手段として、ディスクリートトラック型メディアも提案されている。これは、磁性膜をトラックごとにパターニングすることで、磁気的に分離する方法である。それによって、トラックの狭小化に伴い上昇するサイドフリンジ(記録にじみ)とよばれるノイズを低減し、高密度記録を実現する方法である。
しかしながら、上述のパターンドメディアやディスクリートトラック型メディアにおいて、数百ギガビット/平方インチ級の高密度記録を実現するためには、数十nm程度の非常に微細なパターニング加工技術を必要とする。そのため、加工コストの上昇がこれらの磁気記録媒体実現のための最大の課題となっている。
また、上述のハードディスクドライブと同様、光ディスクや光磁気ディスク等の情報記録媒体においても、ランド/グルーブとよばれる非常に微細な凹凸形状を基板の表面に付与する加工を施す必要があり、この微細加工を低コストで、かつ安定して行うことが求められている。
その解決法として、近年インプリント法とよばれる形状転写工法を用いて、安価にナノメータオーダーのパターニングを行う方法の開発が精力的になされている。
このインプリント法の一つに、主面に所定の形状を付与した金型をパターニング前のレジストに押し当てることでレジストを変形させ、露光せずにレジストのパターニングを行う方法(レジストインプリント法)がある。この方法によれば、コスト高の一因となる露光工程を省略することが可能となり、ナノメータオーダーの加工を要するパターンドメディアやディスクリートトラック型メディアを低コストで実現することができる(例えば、特許文献1参照)。
また、別のインプリント法として、ガラス基板や樹脂基板を圧縮成形することでパターニングする方法(ダイレクトインプリント法)がある(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
ここで、圧縮成形を用いるこれらの加工方法は、金型の微細形状を転写するという点で、レジストインプリント法と同じ形状転写技術であって、本願ではこのような手法もインプリント法の一つとして扱う。
このダイレクトインプリント法は、レジストを用いずにガラス基板や樹脂基板等の表面にモールドの表面に形成された所定のパターン形状を直接形状転写する方法である。
特許文献2では、表面に微細な加工溝が形成された成形用金型をガラス基板にプレスすることにより、微細な溝をガラス基板の表面に直接形成する方法が開示されている。
また、特許文献3では、転写前の基板の表面を梨地状に加工することで、生産性と基板の平面性を高める記録媒体の製造方法が開示されている。
また、特許文献4では、完成時のディスク径よりも大きな外形を有する基板を射出成形によって作製する工程と、情報が凹凸パターンの形で記録されたスタンパを用いて完成時のディスク径よりも小さい外形を有する領域に凹凸を転写する工程とを含む光ディスクの製造方法が開示されている。
なお、上記のダイレクトインプリント法においては、転写後に基板の周辺部を加工することを前提としている。この周辺部の加工工程を簡略化または省略する方法として、プレス時に外形寸法を規制するためにキャビティ・リングを用いる方法が開発されている(例えば、特許文献5参照)。このキャビティ・リングの内径は記録媒体の外形に等しく形成されており、プレス時に基板の外形が拡ってキャビティ・リングに到達した時点でそれ以上には拡張しないようにしている。
これらのダイレクトインプリント法によれば、露光工程のみならず、実際に基板を加工するエッチング工程も省略できるため、露光工程のみを省略する前述のレジストインプリント法よりもさらにコスト低減が可能であるとされている。
図4は、従来の記録媒体の製造装置の構成図である。図4において、上下モールド2A、2Bが転写前基板1に当接する面には、記録媒体に応じた凹凸パターン等の微細加工が施されている。なお、図4においては、この凹凸パターンは図示していない。上下金型4A、4Bと上下モールド2A、2Bを介してヒーター5A、5Bによって転写前基板1は変形可能な温度(例えば、ガラス転移点以上)に加熱される。加熱された状態で、図4に示したように圧力を加えることで、上下モールド2A、2Bの表面に形成されている微細形状の凹凸パターンに対応した凹凸パターンが転写前基板1の表面に形成される。
なお、特許文献2および特許文献3においては、転写工程(インプリント工程)前の基板の形状については、何の記載もされていない。
また、特許文献4では、転写工程を行う前の基板の大きさ(射出成形後の基板の外形)は、完成後の基板の大きさよりも大きいことが示されている。
また、特許文献5では、転写後の基板の外形を制限するためのリングを用いている。
特開2003−157520号公報 特開平9−245345号公報 特開2003−203398号公報 特開平8−124222号公報 特開2005−025822号公報
しかしながら、ダイレクトインプリント法における従来の製造方法において、非常に微細な形状を転写する場合、モールドの微細形状の凹凸パターンが基板の表面に忠実に転写できない領域が発生することがある。この原因は、以下のようである。すなわち、ダイレクトインプリント法において、転写工程後の基板の大きさは、転写工程前の大きさよりも拡大する。しかし、その拡大した領域における微細形状の凹凸パターンの転写性は、それ以外の領域に比べて劣る。その結果、従来の製造方法では、高記録密度を達成する記録媒体用基板として、全面にわたって充分な品質を確保することが困難であった。
このとき、拡大した領域を最終の基板の大きさよりも大きくすれば、上記の転写性に関する課題は解決できる。しかしながら、転写工程後に、最終の基板の外形を得るためには、打ち抜き加工あるいは切削加工等の加工工程を行う必要が生じる。この結果、コストアップや基板材料の有効活用が困難となるという課題が生じる。
また、基板の外形を制限するためのリングを用いた場合、転写後の基板に関して所定の寸法は得られるものの、リングとの当接部分に対しての仕上げ加工が必要である。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、モールドに形成された微細形状の凹凸パターンを記録媒体となる基板表面に確実に転写し、かつ転写工程後の機械的加工を不要にすることで、高い記録密度を持つ、高品質なディスク用基板を、低価格で、効率的に実現する加工方法を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の記録媒体用基板の製造方法は、平板状の記録媒体の主面上に記録信号に対応する凹凸パターンをモールドにより転写形成する方法であって、転写用のモールドの主面に形成された記録信号に対応する凹凸パターン領域より大きな外形寸法で、かつ記録媒体用基板として規定された外形寸法より小さな外形寸法を有する転写前基板を準備する工程と、モールドを転写前基板に押圧して凹凸パターンを転写するとともに、転写前基板を記録媒体用基板の外形寸法まで拡張させる転写工程とを備えた方法からなる。
この方法により、モールド表面の非常に微細な形状を基板へ精度よく転写し、高品位な記録媒体用基板を製造することができる。さらに、転写工程のみで、記録媒体用基板として要求される外形寸法とすることができるので、外形加工等の工程を省略することができる。したがって、記録媒体用基板を安価に得ることができる。
また、上記方法において、転写工程が転写前基板を上モールドと下モールドの間に挟持し、転写前基板の両面に凹凸パターンを転写する方法としてもよい。
また、上記方法の転写工程において、基板の主面に転写する形状は少なくとも算術平均粗さ(Ra)において、0.5nm以下の粗さを持つ平滑面を含む方法であってもよい。
この方法により、記録媒体用基板の主面をポリッシング等で平滑に加工するための研磨工程を省略することができる。したがって、その主面において平滑面を持つ記録媒体用基板を安価に得ることができる。
また、上記方法において、凹凸パターンは少なくとも記録ビットに対応する凹凸を含んでいてもよい。あるいは、少なくとも記録トラックに対応する凹凸を含んでいてもよい。
この方法により、いわゆるパターンドメディアやディスクリートトラック型メディア等の高記録密度に対応した記録媒体をより安価に得ることができる。
本発明の記録媒体用基板の製造方法によれば、安価で、高品質な記録媒体用基板を製造することができる。
以下、図面を用いて、ハードディスクドライブに使用されるガラス基板の製造方法を例として、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかる記録媒体用基板の製造工程を説明する断面図である。図1において、転写前基板1の外形寸法をD1、モールド2A、2Bに形成されている記録信号に対応する凹凸パターン領域の最外周部の直径をD2、転写後基板、すなわち記録媒体用基板3の外形寸法をD3としている。また、転写前基板の厚みをT1、転写後基板、すなわち記録媒体用基板3の厚みをT2としている。
まず、図1(a)に示すように、記録信号に対応する凹凸パターン領域の最外周部の直径D2より大きく、かつ記録媒体用基板3の外形寸法D3より小さな外形寸法D1を有する転写前基板1を準備する。さらに、その表面に所定の微細形状の凹凸パターンが施された1組のモールド2A、2Bを準備する。
つぎに、モールド2A、2Bの凹凸パターンが形成された領域と転写前基板1とが同心状になるように位置決めして、モールド2A、2Bの間に転写前基板1を設置する。
つぎに、図1(b)に示すように、転写前基板1とモールド2A、2Bを当接し、ヒーター(図示せず)で転写前基板1をガラス転移点以上に加熱する。加熱状態で外部から圧力を加え、転写前基板1の表面にモールド2A、2Bの凹凸パターンを転写する。このとき、転写前基板1は、その主面にモールド2A、2Bの凹凸パターンが転写されると同時に、その厚みが減少し、逆にその直径は拡大する。
つぎに、図1(c)に示すように、加熱を停止して転写後基板3を冷却する。その後、モールド2A、2Bからその形状が転写された転写後基板3を離間させると転写プロセスが完了する。これにより、転写後基板、すなわち記録媒体用基板3の外形寸法はD3で、厚みはT3となる。
この外形寸法は、記録媒体用基板3として要求される外形寸法と同じとすることができる。すなわち、記録媒体用基板の外形寸法D3は、図1(b)に示す工程においてモールド2A、2Bによる転写前基板1に対する押圧距離を制御することにより精密に制御可能である。
図2は、転写工程前後における基板の外形寸法および厚さの関係を説明するための断面模式図である。なお、図2では、転写前基板1と転写後基板3を重ねて示している。
図2において、転写前基板1は、転写後基板3として残る領域1a(本体部分)と押圧によって厚みが減少する領域1b、1cにより構成されているとして模式的に示している。また、転写後基板3は、転写前基板1に相当する領域3a(領域1aと同じである)と押圧によって直径が拡大した領域3bにより構成されているとして模式的に示している。
また、転写前基板1の厚みをT1、転写後基板3の厚みをT3とし、上モールド2Aによって減少した厚みをT11、下モールド2Bによって減少した厚みをT12で示している。また、転写工程を経た後の転写前基板1に対する転写後基板3の直径の増分をD31としている。
すなわち、転写後基板3の領域3bは、直径の増分D31によるものであり、転写前基板1の領域1b、1cの体積分がこの領域3bに移動することにより形成されたものである。したがって、転写後基板3の外形寸法D3が記録媒体用基板として要求される外形寸法になるように、体積増分を求めて押圧すれば、モールド2A、2Bに形成されている凹凸パターンを精度よく転写しながら、かつ記録媒体用基板として要求される外形寸法を同時に実現することができる。この結果、プレス工程後に、記録媒体用基板として要求される外形寸法とするための研磨等の加工作業が不要となる。ところで、この記録媒体用基板として要求される外形寸法には許容誤差が認められているので、転写前基板を押圧したときにこの許容誤差内に入ればよい。
なお、転写後基板3の厚さT3に対して凹凸パターンの構造データも繰り入れれば、転写後基板3の外形寸法D3をより精度よく記録媒体用基板として要求される外形寸法に合せることができる。ただし、ハードディスクドライブ用の記録媒体用基板の場合には、凹凸パターンの深さは数十nmであるので実質的には無視してもよい程度である。
以上の製造プロセスによれば、転写工程前の転写前基板1の外形寸法D1を、モールド2A、2Bの記録信号に対応する凹凸パターン領域の最外周部の直径D2よりも大きく設定しているため、転写後基板3に転写された凹凸パターンは全域にわたって非常に精度よく微細形状の凹凸パターンが転写できる。これにより、記録媒体用基板の主面における微細形状の凹凸パターンの加工が露光やエッチング工程なしに実現できる。
さらに、転写後基板の打ち抜きや研削等の後加工をすることなく、記録媒体用基板として要求されている基板直径を得ることができる。その結果、低コストで記録媒体用基板を製造することができる。さらに、上記したように後加工を施す必要がなくなるので、打ち抜きや研削等の加工工程での転写後基板をハンドリングする際に発生しやすい基板面の損傷も防ぐことができる。
以下、転写(インプリント)工程の詳細を実施例に基づき説明する。
インプリント装置は、従来のインプリント装置を用いた。インプリント条件は以下のようにした。
転写条件としては、加工温度を580℃、プレス圧力を10MPa(直径21.6mmの基板換算)、装置雰囲気は窒素雰囲気(ただし、酸素濃度が50ppm以下)とした。
つぎに、基板材料は、転写前基板1としてガラス転移点が520℃、軟化点が610℃であるアルミノシリケート系ガラスを用いた。その厚みが約350μmで、円盤状に加工して用いた。
なお、比較例として、基板の直径が20.4mm、21.2mmの2種類のものを用意した。
なお、ディスク装置に使用する際の記録媒体用基板として要求される直径は21.6mmで、情報が記録される記録領域の最外周の直径は21.0mmである。
転写性の評価方法としては、以下のように行った。微細形状の凹凸パターンの転写性を評価するため、転写率というパラメータを定義して評価した。この方法は、以下のような方法により行った。
まず、モールドおよび転写後基板について、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて10μm平方の測定範囲で512×512点の測定を行う。その後、計算によって大きなうねりを除去するデータの平坦化処理を施した後、高さのヒストグラムのピーク間隔から凹凸深さを求める。これにより、モールドおよび転写後基板の凹凸深さが求められる。
つぎに、このようにして求めた凹凸深さを用いて、モールドの凹凸深さと転写後基板であるガラス基板に転写された凹凸深さとの比を求める。この比を転写率と定義した。
また、凹凸深さは、直径20.0mm(中心から10.0mm)の部分と、記録領域の最外周に相当する直径21.0mm(中心から10.5mm)の部分の2点について評価した。したがって、転写率も上記2点について評価した。
(実施例1)
表面にピッチ200.0nmで幅100.0nmの同心円状の凹凸パターンが形成されたモールド(以下、トラック型モールドと表記する)を用いて、直径21.2mmのガラス基板へ転写を行った。
このトラック型モールドの凹凸深さを上記評価方法により測定した結果、50.0nmであった。また、転写工程の後に得られた転写後基板であるガラス基板の直径は21.6mmであった。直径20.0mm(中心から10.0mm)の位置および直径21.0mm(中心から10.5mm)の位置で、ガラス基板の表面に形成された凹凸深さをそれぞれ測定したところ、ともに50.0nm(転写率100%)であった。
(実施例2)
表面に直径100.0nmの円柱状の突起が200.0nmピッチで正方格子状に配列されたモールド(以下、ピット型モールドと表記する)を用いて、直径21.2mmのガラス基板へ転写を行った。
このピット型モールドの凹凸深さは上記評価方法を用いて測定したところ、50.0nmであった。また、転写工程の後に得られた転写後基板であるガラス基板の直径は21.6mmであった。直径20.0mmの位置および直径21.0mmの位置で、ガラス基板の表面に形成された凹凸深さをそれぞれ測定したところ、ともに50.0nm(転写率100%)であった。
(実施例3)
表面粗さ(Ra)が0.4nm(AFMで測定)の平滑面を持つモールド(以下、平滑型モールドと表記する)を用いて、直径21.2mmのガラス基板へ転写を行った。
転写工程の後に得られた転写後基板であるガラス基板の直径は21.6mmであった。直径20.0mmの位置および直径21.0mmの位置で、ガラス基板の表面粗さをAFMで測定したところ、その表面粗さ(Ra)はモールドの表面粗さと同じでRa=0.4nmの平滑面が得られた。
上記の実施例1から実施例3で得られた転写後基板と比較するために、下記の比較例の基板を作製した。
(比較例1)
実施例1と同じトラック型モールドを用いて、直径が20.4mmのガラス基板へ転写を行った。
転写工程の後に得られた転写後基板であるガラス基板の直径は21.6mmであった。直径20.0mmの位置および直径21.0mmの位置で、ガラス基板の表面に形成された凹凸深さをそれぞれ測定したところ、20.0mmの位置では50.0nm(転写率100%)だったが、21.0mmの位置では、凹凸深さが約39nmで、その転写率は約78%であり充分な転写が行われないことがわかった。
(比較例2)
実施例2と同じピット型モールドを用いて、直径が20.4mmのガラス基板へ転写を行った。
転写工程の後に得られた転写後基板であるガラス基板の直径は21.6mmであった。直径20.0mmの位置および直径21.0mmの位置で、ガラス基板の表面に形成された凹凸深さをそれぞれ測定したところ、20.0mmの位置では50.0nm(転写率100%)だったが、21.0mmの位置では凹凸深さが約37nmで、その転写率は約74%であり充分な転写が行われないことがわかった。
実施例1から実施例3および比較例1から2までの結果をまとめて(表1)に示す。
Figure 2007018649
(表1)からわかるように、モールドの記録信号に対応する凹凸パターン領域の最外周部の直径(21.0mm)より大きな外形寸法(21.2mm)を有する転写前基板を用いた実施例1から実施例3までについては、記録媒体用基板として要求される記録領域の最外周の直径(21.0mm)の位置においても、転写率は100%が得られた。また、記録媒体用基板として要求される外形寸法である21.6mmを精度よく実現することもできた。
しかし、モールドの記録信号に対応する凹凸パターン領域の最外周部の直径(21.0mm)より小さな外形寸法(20.4mm)を有する転写前基板を用いた比較例1と比較例2については、記録媒体用基板として要求される記録領域の最外周の直径(21.0mm)の位置においては、転写率が74%および78%となった。一方、記録媒体用基板として要求される外形寸法については、21.6mmを実現することができた。
つぎに、転写率と転写前基板の直径との関係を明らかにするため、実施例1および比較例1で得られた転写後基板について、その転写率をさらに詳細に測定した。
図3は、転写後基板について、その中心からの位置における転写率を測定した結果を示す図である。この図面から、実施例1および比較例1の双方の転写後基板において、転写前の基板端部を境に転写率が低下することが見出された。転写後基板の外形寸法は、どちらの場合においても記録媒体用基板として要求される直径にすることが可能であった。
また、実施例1の場合には、記録媒体として要求される記録領域の最外周の直径(21.0mm)の位置までは転写率が100%となり、転写前基板の外形寸法(21.2mm)をこえる位置で、その転写率が80%に低下した。
一方、比較例1の場合には、転写前基板の外形寸法(20.4mm)をこえる位置では、その転写率が80%程度となった。したがって、比較例1の場合には、記録媒体用基板として要求される記録領域の全域では充分な転写率が得られないことがわかった。
これは、転写工程における基板の変形の過程において、基板が伸張する領域では、微細形状の凹凸パターンを転写するために充分な圧力が印加されないことによるためであると推察している。
この結果から、記録媒体用基板として要求される記録領域の最外周部まで精度よく微細形状の凹凸パターンを転写するためには、転写前基板の主面を記録領域の最外周の直径より大きくすることが必要である。一方、記録媒体用基板として要求される直径より小さくしておき、モールドで押圧することにより転写前基板の厚み減少分による直径の拡大分を計算して押圧工程を行えばよいことが見出せた。
以上の結果から明らかなように、転写工程における基板の大きさを情報の記録領域よりも大きくすることで、記録領域全域にモールドの微細な形状を確実に転写することが可能となる。さらに、転写前基板に関しては、図1に示すようにその直径D1をD3>D1>D2の範囲に設定すれば、記録媒体用基板として要求される所定の直径にすることができる。
ここで、上記実施の形態では、ガラス基板への形状転写の例を挙げたが、本発明は、例えば樹脂基板等、プレス成形技術によって加工可能な基板であれば、同様の効果が得ることができる。
また、上記実施例では、ハードディスクドライブに用いる記録媒体用基板への形状転写の例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、光ディスクや光磁気ディスク等の微細加工が要求される記録媒体においても、同様の効果を得ることができる。
さらに、上記実施例では、円盤状の基板への形状転写の例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、四角形等の多角形状の基板を用いても同様の効果を得ることができる。
本発明にかかる記録媒体用基板の製造方法によれば、微細加工が施された高記録密度対応の記録媒体用基板を安価に作製することができ、ハードディスクドライブ装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置等のディスク記録装置分野に有用である。
本発明の実施の形態にかかる記録媒体用基板の製造工程を説明する断面図 同実施の形態にかかる記録媒体用基板の製造方法において、転写工程前後における基板の直径および厚さの関係を説明するための断面模式図 同実施の形態にかかる記録媒体用基板の製造方法において、転写後基板について、その中心からの位置における転写率を測定した結果を示す図 従来の記録媒体用基板の製造装置の構成図
符号の説明
1 転写前基板
2A,2B モールド
3 転写後基板(記録媒体用基板)
4A,4B 金型
5A,5B ヒーター

Claims (5)

  1. 平板状の記録媒体の主面上に記録信号に対応する凹凸パターンをモールドにより転写形成する記録媒体用基板の製造方法であって、
    転写用の前記モールドの主面に形成された前記記録信号に対応する凹凸パターン領域より大きな外形寸法で、かつ、前記記録媒体用基板として規定された外形寸法より小さな外形寸法を有する転写前基板を準備する工程と、
    前記モールドを前記転写前基板に押圧して前記凹凸パターンを転写するとともに、前記転写前基板を前記記録媒体用基板の外形寸法まで拡張させる転写工程とを備えたことを特徴とする記録媒体用基板の製造方法。
  2. 前記転写工程が、前記転写前基板を上モールドと下モールドの間に挟持し、前記転写前基板の両面に前記凹凸パターンを転写するものであることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体用基板の製造方法。
  3. 前記転写工程において前記転写前基板の主面に転写する形状は、少なくとも算術平均粗さ(Ra)において、0.5nm以下の粗さを持つ平滑面を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録媒体用基板の製造方法。
  4. 前記凹凸パターンは、少なくとも記録ビットに対応する凹凸を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録媒体用基板の製造方法。
  5. 前記凹凸パターンは、少なくとも記録トラックに対応する凹凸を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録媒体用基板の製造方法。
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