JP4997676B2 - 電子レンジ対応紙カップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙カップに関するものであり、詳しくは、電子レンジなどで使用可能な電子レンジ対応紙カップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、紙カップの胴部材および底部材の材料構成は、基材層を紙とし、最内層にヒートシール性樹脂層を設けた構成が一般的であり、また、内容物を保存するため、基材層と最内層の間に、アルミニウム箔等のバリア層を設けた材料構成のものもある。このような材料構成の紙カップでは、最内層のヒートシール性樹脂層の樹脂には、ヒートシール性、柔軟性などの観点から主にポリエチレン樹脂が使用されており、一般的に、ポリエチレン樹脂層/紙層/ポリエチレン樹脂層のような材料構成、あるいは、ポリエチレン樹脂層/紙層/接着層/アルミニウム箔/ポリエチレン樹脂層のような材料構成となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の材料構成では、最内層がポリエチレン樹脂からなるため、耐熱性が不足し、例えば、冷凍食品、特にカレー、シチューのように油分を多く含む内容物を、加熱状態で充填したり、これら内容物をいれたまま、電子レンジで加熱した場合、ポリエチレン樹脂層に、発泡、あるいは溶解などが発生していた。特に、電子レンジの加熱時間が所定の時間より長くなった場合、前記の現象が著しく発生するという問題があった。ポリエチレン樹脂に代わるものとして、耐熱性のある樹脂があるが、ヒートシール性が不十分なことから、紙カップの最内層には使用されていなかった。
【0004】
いずれにしろ、紙カップの用途も広がり、これらの紙カップに、95℃以上に加熱された内容物を充填したり、紙カップに充填した内容物を、そのまま電子レンジあるいはオーブンで加熱調理することができる電子レンジ対応紙カップが要望されている。このように、加熱された内容物を充填したり、電子レンジあるいはオーブンで加熱調理する場合、紙カップにより高い耐熱性が要求される。しかし、耐熱性を有する樹脂層を最内層にした場合、密着性が悪く通常の紙カップ成形機で紙カップに成形することが困難であるという問題がある。
【0005】
従って、本発明は、紙カップの成形が可能であり、かつ、加熱状態の内容物の充填、あるいは、紙カップの中に内容物を入れて電子レンジあるいはオーブンで加熱調理を行っても、発泡、溶解などの現象が発生しない、耐熱性のある電子レンジ対応紙カップを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明は、胴部と底部を備え、内容物を収容して電子レンジで加熱調理することができる紙カップであって、前記胴部と前記底部とが、最外層を紙の基材層とし、最内層をポリプロピレン樹脂からなるヒートシール性樹脂層とした積層体を構成材料とし、前記ポリプロピレン樹脂のMIの値が15〜60の範囲であることを特徴とする電子レンジ対応紙カップである。また、前記最外層の前記基材層と前記最内層の前記ヒートシール性樹脂層の間にバリア層を設けることができることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、紙カップの材料である積層体において、基材層を紙として、最内層をMIの値が15〜60の範囲のポリプロピレン樹脂からなるヒートシール性樹脂層とすることによって、ヒートシールによる紙カップ成形が可能であり、かつ、加熱状態の内容物の充填、あるいは、紙カップの中に内容物を入れて電子レンジあるいはオーブンで加熱調理を行っても、発泡、溶解などの現象が発生しない、耐熱性のある電子レンジ対応紙カップを得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明に係る電子レンジ対応紙カップの第一の実施の形態の一実施例を構成する積層体の構成図であり、本実施例における積層体10Aでは、図1に示すように、基材層1が紙であり、最内層2がポリプロピレン樹脂(以下PP樹脂と略す)からなるヒートシール性樹脂層である。
【0010】
本発明者らは、ヒートシール適性がよく、かつ、耐熱性を有する樹脂としてポリプロピレン樹脂に着目し、種々のポリプロピレン樹脂について比較検討した。しかし、PP樹脂のすべてにおいて、ヒートシール性と耐熱性とを備えているとはいえなかった。そこで、溶融樹脂の流動性の指数であるMI(melt inndexの略)の値によっては、PP樹脂においてもヒートシール性と耐熱性とのバランスのとれたものが存在することを見い出し、種々のPP樹脂を用いて実験をした。その結果、MIの値が15〜60の範囲のPP樹脂を基材層1の紙の内面に積層した積層体を使用した紙カップがヒートシール性と耐熱性とを備えたものであることが判明した。
【0011】
つまり、MIの値の範囲を15〜60にすることによって、紙カップの成形工程における最内層2であるヒートシール性樹脂層の流動性を良くし(前記ヒートシール樹脂が動き易くなる)、従って、基材層1の紙との密着性を良くなり、また、成形した紙カップの中に内容物を入れて加熱調理した時に、最内層2に発泡、溶融などの現象が発生しない耐熱性を有することが判明した。
【0012】
このMIの値が15未満の場合、基材層1の紙との密着性が悪く、紙カップの成形が困難となり、60を超えた場合、基材層1の紙に積層する工程でネックインが大きくなり、積層が困難となり、また、耐熱性が劣るため、発泡、溶融などの現象が発生しやすくなる。
【0013】
基材層1の紙は、紙カップの成形適性の良いカップ原紙を使用することが好ましい。坪量は、とくに限定されないが、紙カップ成形適性上、150〜300g/m2の範囲が好ましい。また、PP樹脂を積層する紙の面は、JIS P−8119における表面粗さの値が10〜150秒の範囲であることが好ましい。PP樹脂を積層する紙の面の表面粗さの値を10〜150秒の範囲にすることによって、基材層1の紙の面とPP樹脂からなる最内層2との密着性を上げる効果がある。
【0014】
実際に、MIの値が15〜60の範囲のPP樹脂を用いて基材層1の紙に積層する方法として、PP樹脂層を押し出し機により、直接基材上にコートする方法と、他の方法により製膜されたPP樹脂層をポリエチレンによりサンドイッチラミネーション又はドライラミネーションする方法などがある。
【0015】
図2は、本発明に係る電子レンジ対応紙カップの第二の実施の形態の一実施例を構成する積層体の構成図であり、その積層体10Bは、第一の実施の形態における積層体10Aの基材層1と最内層2の間にバリア層3を設けた積層体の構成となっている。
【0016】
このバリア層3は、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、酸化珪素等の無機化合物蒸着フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのガスバリアフィルムのいずれか、目的に応じて使用するが、電子レンジで加熱する必要がない場合は、バリア層はいずれの材料を用いてもよいが、電子レンジで加熱する必要がある場合は、アルミニウム箔、あるいはアルミニウム蒸着フィルムの使用は好ましくなく、酸化珪素等の無機化合物蒸着フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが好ましい。
【0017】
図3は、本発明に係る電子レンジ対応紙カップを示す斜視図であり、図4は、図3の電子レンジ対応紙カップのブランクを示す展開図である。上記の積層体10A、10Bを用いて、図4に示すようなブランク15、16を作製し、つぎに、このブランク15、16を用いて、図3に示すような電子レンジ対応紙カップAを作製することができる。
【0018】
つぎに、本発明の電子レンジ対応紙カップの製造方法について説明する。この電子レンジ対応紙カップの製造方法は、最内面がポリエチレン樹脂の積層体を用いた場合の一般的な紙カップと同様に、胴部成形工程、底部挿入工程、胴部・底部接合工程、トップカール工程からなっている。
【0019】
本発明の電子レンジ対応紙カップの製造方法における胴部・底部接合工程は、まず、底ホットエアー加工があり、図5−aに示すように、ノズルNの先端より熱風(ホットエアー)HAを吹き出させ紙カップの胴部11と底部12の屈曲部12aを内側から加熱する。
【0020】
つぎに、底カール加工があり、図5−bに示すように、胴部11の先端部を底カール型Pによって折り曲げて、底部12の屈曲部12aを挟むようように接合して接合部13を形成する。
【0021】
つづいて、圧締加工があり、図5−cに示すように、底カール加工で胴部1の先端部を底カール型Pによって折り曲げて、底部12の屈曲部12aを挟むようようにして接合して接合部13を形成した後に、接合部13の内側からローレットローラーRを偏芯して外側のウスQと挟みながら圧締していく。
【0022】
このような胴部・底部接合工程を有する本発明の電子レンジ対応紙カップの製造方法により、胴部11および底部12の構成材料として、基材層1が紙であり、最内層2がポリプロピレン樹脂からなるヒートシール性樹脂層である積層体を使用した電子レンジ対応紙カップAを製造することができる。
【0023】
【実施例】
つぎに、本発明の電子レンジ対応紙カップを実施例をあげて説明する。
【0024】
〔実施例1〕
外側からカップ原紙215g/m2(大昭和製紙(株)製カップ原紙)/PP樹脂30μm(サンアロマー(株)製サンアロマーPHA03A(MIの値は42))の積層体を用いて、上述のような電子レンジ対応紙カップの製造方法により電子レンジ対応紙カップを製造した。
【0025】
そして、この紙カップに市販の各種冷凍食品をそれぞれ充填し、570Wの電子レンジで1分間、2分間、および5分間の加熱を行い、電子レンジ対応紙カップの状態を観察した。その結果を表1に示す。
【0026】
〔実施例2〕
外側からカップ原紙215g/m2(大昭和製紙(株)製カップ原紙)/接着剤/酸化珪素蒸着ポリエチレンテレフタレート(12μm)/PP樹脂30μm(サンアロマー(株)製サンアロマーPHA03A)の積層体を用いて、上述のような電子レンジ対応紙カップの製造方法により電子レンジ対応紙カップを製造した。
【0027】
そして、この紙カップに市販の各種冷凍食品をそれぞれ充填し、570Wの電子レンジで1分間、2分間、および5分間の加熱を行い、電子レンジ対応紙カップの状態を観察した。その結果を表1に示す。
【0028】
〔比較例1〕
実施例1のPP樹脂を低密度ポリエチレンに代えた以外は、実施例1と同じ構成の材料を用い、一般的な紙カップの製造方法により、実施例1と同形の紙カップを製造して、実施例1と同様のテストを行った。
【0029】
実施例1、2および比較例1を実際に電子レンジで使用した結果を表1に示した。加熱調理時間において、1分間調理では、部分的に冷たいところがあり、加熱不足気味であり、2分間調理では、全体的に温まっており、5分間調理では、加熱過剰となっていた。
【0030】
電子レンジ対応紙カップの状態。
○:異常なし。
△:漏れはないが、樹脂層は溶けている。
×:樹脂層が溶け、穴があき、外面にシミが発生している。
【0031】
【表1】
【0032】
結果は表1で示すように、比較例1においては、加熱調理時間が2分を超えると内面の樹脂層が溶け始め、そして、5分後には穴があき、外面にシミが発生した。一方、実施例1、2においては、調理が完了する5分まで特に異常は見られなかった。
【0033】
【発明の効果】
本発明の電子レンジ対応紙カップでは、紙カップの材料である積層体において、基材層を紙として、最内層をMIの値が15〜60の範囲のPP樹脂からなるヒートシール性樹脂層とすることによって、ヒートシールによる紙カップ成形が可能であり、かつ、加熱状態の内容物の充填、あるいは、紙カップの中に内容物を入れて電子レンジあるいはオーブンで加熱調理を行っても、耐熱性があり、発泡、溶解などの現象が発生しないという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子レンジ対応紙カップの第一の実施の形態の一実施例に用いる積層体を示す断面図である。
【図2】本発明の電子レンジ対応紙カップの第二の実施の形態の一実施例に用いる積層体を示す断面図である。
【図3】本発明の電子レンジ対応紙カップの一実施例を示す斜視図である。
【図4】図4の電子レンジ対応紙カップのブランクの展開図である。
【図5】本発明の電子レンジ対応紙カップの製造方法の胴部・底部接合工程を説明する概略図である。
【符号の説明】
A 電子レンジ対応紙カップ
1 基材層
2 最内層
3 バリア層
10A 積層体(第一の実施の形態)
10B 積層体(第二の実施の形態)
11 胴部
12 底部
12a 屈曲部
13 接合部
14 トップカール部
15 ブランク(胴部)
16 ブランク(底部)
N ノズル
HA 熱風(ホットエアー)
P 底カール型
Q ウス
R ローレットローラー
Claims (2)
- 胴部と底部を備え、内容物を収容して電子レンジで加熱調理することができる紙カップであって、
前記胴部と前記底部とが、最外層を紙の基材層とし、最内層をポリプロピレン樹脂からなるヒートシール性樹脂層とした積層体を構成材料とし、前記ポリプロピレン樹脂のMIの値が15〜60の範囲であることを特徴とする電子レンジ対応紙カップ。 - 前記最外層の前記基材層と前記最内層の前記ヒートシール性樹脂層間にバリア層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ対応紙カップ。
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