上記特許文献1によると、ホーニング砥石105のドレッシングにあたり、ホーニングヘッド101の主軸に電解ドレッシング用の砥石ホルダ102を取り付け、砥石ホルダ102にホーニング砥石105を取り付けて電解ドレッシングすることから、ホーニングヘッド101の主軸にホーニング工具に代えて電解ドレッシング用の砥石ホルダ102を取り付けると共にホーニング工具から取り外したホーニング砥石105を砥石ホルダ102に取り付け、更にドレッシングが施された後にホーニング砥石105を再びホーニング工具に取り付けると共にホーニングヘッド101の主軸から砥石ホルダ102を取り外してホーニング工具を取り付ける厄介な作業を要し、ホーニング砥石105のドレッシングのために多くの工数が必要になり、ホーニング加工サイクルに影響し、ホーニング作業効率の低下を招くことが懸念される。
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、装置の簡素化及び作業効率に優れる円筒内周面のホーニング装置を提供することにある。
請求項1に記載の円筒内周面のホーニング装置の発明は、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石が配置されたホーニング工具を被削材の円筒内周面内に挿入して上記円筒内周面をホーニング加工する円筒内周面のホーニング装置において、上記被削材の外であって上記ホーニング工具本体及びホーニング砥石の挿入を許容する螺旋状で電極面が上記ホーニング工具に配置された上記ホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて対向して配置された電解ドレッシング用電極と、導電性液を供給する導電性液供給手段と、上記ホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記導電性液供給手段により供給される導電性液の存在下で対向するホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に上記電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石を電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、ホーニング砥石が配置されたホーニング工具を被削材の円筒内周面内に挿入してホーニング加工する際に、導電性液供給手段から供給される導電性液の存在下で対向する螺旋状の電解ドレッシング用電極とホーニング砥石に電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、常に良好にドレッシングされたホーニング砥石による面粗度のバラツキの無い安定した品質のホーニング加工が可能になり、且つ、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。この螺旋状の電解ドレッシング用電極は、例えば導電性材料からなる線材を螺旋状に巻回することによって簡単且つ比較的少ない導線性材料によって製造することができる。
また、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、且つ、ドレッシング用の砥石ホルダを必要とすることなく、ホーニング砥石をホーニング工具に装着したまま電解ドレッシングを行うことができるため、装置及び作業の複雑化を招くことなく製造コストの削減が期待できる。
請求項2に記載の円筒内周面のホーニング装置の発明は、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石が配置されたホーニング工具を被削材の円筒内周面内に挿入して上記円筒内周面をホーニング加工する円筒内周面のホーニング装置において、上記被削材の外であって上記ホーニング工具に配置された上記ホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて電極面が対向して配置されると共に上記ホーニング工具の回転軸方向に延在する断面矩形形状或いは断面円弧形状で上記回転軸を中心に放射状に複数配置された電解ドレッシング用電極と、導電性液を供給する導電性液供給手段と、上記ホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記導電性液供給手段により供給される導電性液の存在下で対向するホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に上記電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石を電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、ホーニング砥石が配置されたホーニング工具を被削材の円筒内周面内に挿入してホーニング加工する際に、導電性液供給手段から供給される導電性液の存在下で対向する断面矩形形状或いは断面円弧形状の電解ドレッシング用電極とホーニング砥石に電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、常に良好にドレッシングされたホーニング砥石による面粗度のバラツキの無い安定した品質のホーニング加工が可能になり、且つ、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。
電解ドレッシング用電極が断面矩形形状の場合は、例えば平板状の導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。電解ドレッシング用電極が断面円弧形状の場合は、例えば、断面円弧状で連続する導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。
また、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、且つ、ドレッシング用の砥石ホルダを必要とすることなく、ホーニング砥石をホーニング工具に装着したまま電解ドレッシングを行うことができるため、装置及び作業の複雑化を招くことなく製造コストの削減が期待できる。
請求項3に記載の円筒内周面のホーニング装置の発明は、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石が配置されたホーニング工具を被削材の円筒内周面内に挿入して上記円筒内周面をホーニング加工する円筒内周面のホーニング装置において、上記被削材の外であって上記ホーニング工具に配置された上記ホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて電極面が対向して配置されると共に上記ホーニング工具の回転軸方向と直交する方向に延在する棒状で上記回転軸を中心に放射状に複数配置された電解ドレッシング用電極と、導電性液を供給する導電性液供給手段と、上記ホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記導電性液供給手段により供給される導電性液の存在下で対向するホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に上記電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石を電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、ホーニング砥石が配置されたホーニング工具を被削材の円筒内周面内に挿入してホーニング加工する際に、導電性液供給手段から供給される導電性液の存在下で対向する棒状の電解ドレッシング用電極とホーニング砥石に電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、ドレッシングされたホーニング砥石による安定した品質のホーニング加工が可能になり、且つ、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。この棒状の電解ドレッシング用電極は、例えば、棒状の導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。
また、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、且つ、ドレッシング用の砥石ホルダを必要とすることなく、ホーニング砥石をホーニング工具に装着したまま電解ドレッシングを行うことができるため、装置及び作業の複雑化を招くことなく製造コストの削減が期待できる。
請求項4に記載の円筒内周面のホーニング装置の発明は、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石が配置されたホーニング工具を回転軸方向に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入して上記円筒内周面をホーニング加工する円筒内周面のホーニング装置において、上記工具挿入ガイド内に該工具挿入ガイド内に挿入される上記ホーニング工具に配置された上記ホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて電極面が対向して配置された上記ホーニング工具本体及びホーニング砥石の挿入を許容する 螺旋状の電解ドレッシング用電極と、上記工具挿入ガイド内に導電性液を供給する導電性液供給手段と、上記ホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記導電性液供給手段により供給される導電性液の存在下で対向するホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に上記電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石を電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、ホーニング砥石が配置されたホーニング工具を回転軸方向に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入してホーニング加工する際に、導電性液供給手段から供給される導電性液の存在下で対向する工具挿入ガイドに配置された螺旋状の電解ドレッシング用電極とホーニング砥石に電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、常に良好にドレッシングされたホーニング砥石による面粗度のバラツキの無い安定した品質のホーニング加工が可能になる。
また、ホーニング工具が工具挿入ガイド内を通過する極めて短時間でホーニング砥石の電解ドレッシングが行え、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。この螺旋状の電解ドレッシング用電極は、例えば導電性材料からなる線材を螺旋状に巻回することによって簡単且つ比較的少ない導線性材料によって製造することができる。
また、工具挿入ガイドに螺旋状の電解ドレッシング用電極を配置することから新たに電解ドレッシング手段を備える必要がなく、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、装置及び作業の複雑化を招くことなく製造コストの削減が期待できる。
請求項5に記載の円筒内周面のホーニング装置の発明は、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石が配置されたホーニング工具を回転軸方向に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入して上記円筒内周面をホーニング加工する円筒内周面のホーニング装置において、上記工具挿入ガイド内に該工具挿入ガイド内に挿入される上記ホーニング工具に配置された上記ホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて電極面が対向して配置されると共に上記回転軸方向に延在する断面矩形形状或いは断面円弧形状で上記回転軸を中心に放射状に複数配置された電解ドレッシング用電極と、上記工具挿入ガイド内に導電性液を供給する導電性液供給手段と、上記ホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記導電性液供給手段により供給される導電性液の存在下で対向するホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に上記電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石を電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、ホーニング砥石が配置されたホーニング工具を回転軸に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入してホーニング加工する際に、導電性液供給手段から供給される導電性液の存在下で対向する工具挿入ガイドに配置された回転軸方向に延在する断面矩形形状或いは断面円弧形状の電解ドレッシング用電極とホーニング砥石に電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、常に良好にドレッシングされたホーニング砥石による安定した品質のホーニング加工が可能になる。また、ホーニング工具が工具挿入ガイド内を通過する極めて短時間でホーニング砥石の電解ドレッシングが行え、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。
電解ドレッシング用電極が断面矩形形状の場合は、例えば平板状の導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。電解ドレッシング用電極が断面円弧形状の場合は、例えば、断面円弧状で連続する導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。
また、工具挿入ガイドに断面矩形形状或いは断面円弧形状の電解ドレッシング用電極を配置することから、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、装置及び作業の複雑化を招くことなく製造コストの削減が期待できる。
請求項6に記載の円筒内周面のホーニング装置の発明は、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石が配置されたホーニング工具を回転軸方向に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入して上記円筒内周面をホーニング加工する円筒内周面のホーニング装置において、上記工具挿入ガイド内に該工具挿入ガイド内に挿入される上記ホーニング工具に配置された上記ホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて電極面が対向して配置されると共に上記回転軸方向と直交する方向に延在する棒状で上記回転軸を中心に放射状に複数配置された電解ドレッシング用電極と、上記工具挿入ガイド内に導電性液を供給する導電性液供給手段と、上記ホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記導電性液供給手段により供給される導電性液の存在下で対向するホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に上記電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石を電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、ホーニング砥石が配置されたホーニング工具を回転軸に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入してホーニング加工する際に、導電性液供給手段から供給される導電性液の存在下で対向する棒状の電解ドレッシング用電極とホーニング砥石に電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、ドレッシングされたホーニング砥石による安定した品質のホーニング加工が可能になる。また、ホーニング工具が工具挿入ガイド内を通過する極めて短時間でホーニング砥石の電解ドレッシングが行え、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。この棒状の電解ドレッシング用電極は、例えば、棒状の導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。
上記目的を達成する請求項7に記載の円筒内周面のホーニング装置の発明は、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石が配置されホーニング工具を水平乃至傾斜して延在する回転軸方向に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入して円筒内周面をホーニング加工する円筒内周面のホーニング装置において、上記工具挿入ガイドは上方が開放された断面円弧状で上記回転軸方向に沿って延在し、上記工具挿入ガイド内に該工具挿入ガイド内に挿入される上記ホーニング工具に配置された上記ホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて電極面が対向して配置されると共に上方が開放された断面円弧状で上記回転軸方向に沿って延在する電解ドレッシング用電極と、上記工具挿入ガイド内に導電性液を供給する導電性液供給手段と、上記ホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、上記導電性液供給手段により供給される導電性液の存在下で対向するホーニング砥石と電解ドレッシング用電極に上記電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石を電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、工具挿入ガイドは上方が開放された断面円弧状で回転軸に沿って延在し、工具挿入ガイド内に上方が開放された断面円弧状で回転軸に沿って延在する電解ドレッシング用電極を備え、ホーニング砥石が配置されたホーニング工具を水平乃至傾斜して延在する回転軸に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入してホーニング加工する際に、導電性液供給手段から供給される導電性液の存在下で対向する電解ドレッシング用電極とホーニング砥石に電圧印加手段により電圧を印加してホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、回転軸が水平乃至傾斜する場合であっても常に良好にドレッシングされたホーニング砥石による安定した品質のホーニング加工が可能になる。
また、ホーニング工具が工具挿入ガイド内を通過する極めて短時間でホーニング砥石の電解ドレッシングが行え、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の円筒内周面のホーニング装置において、ホーニング加工時間を計測する加工時間計測手段を有し、ホーニング加工時間が予め設定された閾値に達したときに、上記電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明は、研削により砥粒が摩耗すると研削能力が次第に低下して加工時間が次第に長くなることに着目してなされたものであって、予め設定された閾値にホーニング加工時間が達したときに、電解ドレッシングを行うことで、適切な時期に効果的に電解ドレッシングを行うことができ、砥石の目立て状態の維持と砥石の過剰な摩耗の抑制が可能となって、砥石による研削能力の過剰な低下が抑制される。これにより、加工時間が短縮されて加工サイクルの効率化が図れる共に、工具寿命の延長が図れ、且つ、安定した品質のホーニング加工が可能になる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項の円筒内周面のホーニング装置において、予め設定されたホーニング加工回数毎に電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明は、研削により砥粒が摩耗すると研削能力が次第に低下して加工時間が次第に長くなることに着目してなされたものであって、予め設定されたホーニング加工回数毎に電解ドレッシングすることで、的確なサイクル毎に効果的に電解ドレッシングを行うことができ、砥石の目立て状態の維持と砥石の過剰な摩耗の抑制が可能となって、砥石による研削能力の過剰な低下が抑制される。これにより、加工時間が短縮されて加工サイクルの効率化が図れる共に、工具寿命の延長が図れ、且つ、安定した品質のホーニング加工が可能になる。
請求項10に記載の発明は、請求項4、5、7のいずれか1項に記載の円筒内周面のホーニング装置において、上記工具挿入ガイド内をホーニング工具が通過する毎に上記電解ドレッシングすることを特徴とする。
この発明によると、ホーニング工具による円筒内周面のホーニング加工を繰り返し行う際に、電解ドレッシング用電極が配置された工具挿入ガイドにおいてホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、安定した品質のホーニング加工が可能になる。
本発明によると、ホーニング砥石が配設されたホーニング工具を挿入して被削材の円筒内周面をホーニング加工する際に、電解ドレッシング用電極が配置された工具挿入ガイドにおいてホーニング砥石に電解ドレッシングを施すことから、安定した品質のホーニング加工か可能になると共に、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、装置及び作業の複雑化を招くことなく製造コストの削減が得られる。
以下、本発明に係る円筒内周面のホーニング装置の実施の形態を図を参照して説明する。
(第1実施の形態)
本発明に係る円筒内周面のホーニング装置の第1実施の形態を図1乃至図12を参照して説明する。
図1は、ホーニング装置1の概要説明図、図2はホーニング工具の構成図、図3は図2のA矢視図である。ホーニング装置1は、被削材Wを位置決め保持する図示しない被削材保持部、ホーニングヘッド、このホーニングヘッドの主軸5に揺動自在に支持されたホーニング工具10、被削材保持部に位置決め保持された被削材Wの上部に近接して配置されたホーニング工具10を研削部となる円筒内周面Wa内に誘導案内する工具挿入ガイド30を備えている。
本実施の形態は、被削材Wの外として、工具挿入ガイド30に電解ドレッシング用電極35が配置されている。
ホーニング工具10は、主軸モータ等の駆動装置を備えるホーニングヘッドの主軸5に揺動可能に支持され、且つ、主軸5により回転軸Zを中心に回転駆動可能に構成されている。
ホーニング工具10は、図2及び図3に示すように、主軸5に上端が支持された中空円筒状のホーニング工具本体11を有している。ホーニング工具本体11の外周に回転軸Zの延在方向に沿って延在する複数、本実施の形態では12個のホーニングシューガイド穴12が等間隔で開口し、各ホーニングシューガイド穴12に摺動案内されて回転軸Zに対して接離する半径方向に移動可能に第1ホーニングシュー13Aと第2ホーシングシュー13Bが交互に嵌合して装着されている。
第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bは、外端面に回転軸Z方向に沿って延在する砥石装着溝13aが形成され、両側面13bがホーニングシューガイド穴12の端面12aに摺動自在に当接するブロック状であって、外周面の両端にそれぞれ係合溝13c及び13dが形成されている。
第1ホーニングシュー13Aの内端面の基端側範囲及び先端側範囲にそれぞれ基端側から先端側に移行するに従って回転軸Zに漸次接近する基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abが形成されている。第2ホーニングシュー13Bの内端面の基端側範囲及び先端側範囲にそれぞれ基端側から先端側に移行するに従って回転軸Zに漸次接近する基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbが形成されている。なお、第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bの各係合溝13c及び13dには、縮径付勢手段となる環状のスプリングバンド14a、14bが装着され、スプリングバンド14a及び14bによって各第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bを回転軸Z方向、即ち半径方向内向きの縮径方向に付勢している。
第1ホーニングシュー13A及び第2ホーミングシュー13Bの各砥石装着溝13aに回転軸Z方向に沿って延在する棒状の砥石、即ちホーニング砥石20が取り付けられている。このホーニング砥石20は、例えば、ダイヤモンド、CBN(立方晶窒化硼素)、結晶質の酸化アルミニウム、炭化珪素等の砥粒を青銅や鋳鉄からなる導電性結合部で結合したメタルボンド砥石によって構成されている。
また、ホーニング工具本体11の外周に等間隔で回転軸Z方向に沿って延在する複数のホーニングガイド部材取付溝11aが形成され、ホーニングガイド部材取付溝11aに取付部材15を介してセラミック等からなる矩形状で回転軸Z方向に延在するホーニングガイド部材16が取り付けられている。回転軸Zから各ホーニングガイド部材16の外周面16aまでの距離は一定に形成されている。更にホーニングガイド部材16の外周面16aと加工面との隙間を空気圧で精密測定する図示しないエアーマイクロメータ用のエアー通路11bがホーニング工具本体11内に穿設されてホーニングガイド部材16の外周面16aに開口している。
ホーニング工具本体11内を貫通して第1ホーニングシュー13Aの基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abに摺接可能に接し、先端側に移行するに従って回転軸Zに漸次接近する基端側テーパ面17Aa及び先端側テーパ面17Abが形成された第1拡縮バー17Aがホーニング工具本体11内に配置されている。また、第1拡縮バー17Aに結合されて第2ホーニングシュー13Bの基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbに摺接可能に接し、先端側に移行するに従って回転軸Zに漸次接近する基端側テーパ面17Ba及び先端側テーパ面17Bbが形成された第2拡縮バー17Bがホーニング工具本体11内に配置されている。
この第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bはホーニングヘッド内に配設された図示しない牽引動作機構によって牽引及びこの牽引が解除される。また、第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bは、ホーニング工具本体11内に配設されたスプリング18によって先端側に常時付勢されている。
このホーニングヘッドの牽引動作機構による牽引解除によりスプリング18の付勢によって第1拡縮バー17Aの基端側テーパ面17Aa及び先端側テーパ面17Abがそれぞれ第1ホーニングシュー13Aの基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abに圧接して各第1ホーニングシュー13Aを回転軸Zから離れる半径方向外向きに押動する。同様に、第2拡縮バー17Bの基端側テーパ面17Ba及び先端側テーパ面17Bbがそれぞれ第2ホーニングシュー13Bの基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbに圧接して各第2ホーニングシュー13Bを回転軸Zから離れる半径方向外向きに押動する。
一方、スプリング18の付勢に抗して牽引動作機構により第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bを牽引することにより、第1拡縮バー17Aの基端側テーパ面17Aa及び先端側テーパ面17Abによる第1ホーニングシュー13Aの基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abの押圧が解除されると共に、第2拡縮バー17Bの基端側テーパ面17Ba及び先端側テーパ面17Bbによる第2ホーニングシュー13Bの基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbの押圧が解除される。これら第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bによる押圧が解除された各第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bは、スプリングバンド14a及び14bによって回転軸Z方向、即ち縮径方向に移動する。なお、ホーニング工具本体11に電圧印加手段(図示せず)に接続する電極23が設けられている。
また、工具挿入ガイド30は、図4に示すように、被削材Wの上部に近接して位置し、回転軸Z方向に延在する中空円筒形状の工具挿入ガイド本体31を備え、固定部材6によって支持されている。
工具挿入ガイド本体31の内周に、例えばNCナイロン等からなる円筒状の絶縁部材33を介在して螺旋状に巻き回された電解ドレッシング用電極(以下、ELID用電極)35が設けられている。ELID用電極35は螺旋状の導電性線材からなり、円筒状の絶縁材33の内周面33aに沿って螺旋状に凹設された電極保持溝33bに嵌装される例えば鉄製であって、電極保持溝33bから電極面35aが露出し、電極面35aは上方から主軸5に支持されて下降するホーニング工具本体11及びホーニング砥石20の挿入を許容し、且つ、ホーニング砥石20の外表面21と対向して導電性液の介在を許容する隙間、例えば1〜5mm程度が形成される。この螺旋状のELID用電極35は、導電性線材を螺旋状に巻回することによって簡単且つ比較的少ない導線性材料により製造でき、優れた生産性が得られる。更にELID用電極35は、工具挿入ガイド本体31の外方に突出する電極端子36に接続され、この電極端子36が図示しない電圧印加手段の負極(−極)に接続される。
更に、工具挿入ガイド本体31のELID用電極35より上方に吐出口37aが開口する液供給孔37が穿設され、液供給孔37は固定部材6に形成された供給通路6aを介して導電性液供給手段39に接続されている。
工具挿入ガイド本体31の上端部内に嵌合する円筒状の挿入ガイド部38が取り付けられている。挿入ガイド部38は、工具挿入ガイド本体31の上部内に外周面38Bbが嵌合する管状の誘導部38Bと誘導部38Bの上端にフランジ状に拡径する導入部38Aを有している。導入部38Aの内周面38Aaは上方に移行するに従って漸次大径となるテーパ状に形成され、誘導部38Bの内周面38Baは導入部38Aの内周面38Aaに上端が連続すると共に絶縁部材33の内周面33aと略同径に形成されている。また、誘導部38Bの外周面38Bbの下部38Bcには液供給孔37の吐出口37aに対向して切欠きが形成され、導電性液供給手段39、供給通路6a、液供給孔37を介して送給される導電性液としての水性クーラントを工具挿入ガイド30内に供給可能としている。
次に、上記のように構成されたホーニング装置1の作動について説明する。
図1に示すようにホーニング工具10を待機位置となる上昇位置に保持した状態で、被削材Wを搬入して被削材保持部に位置決め保持する。
次に、導電性液供給手段39から導電性液である水性クーラントを固定部材6に形成された供給通路6a及び工具挿入ガイド本体31に穿設された液供給孔37を経由して工具挿入ガイド30内に供給する。ここで、液供給孔37の吐出口37aから工具挿入ガイド30内に導入される水性クーラントは、絶縁材33の内周面33aに誘導される。
一方、ホーニングヘッドの牽引動作機構によってホーニング工具10の第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bを牽引して第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bを回転軸Z方向、即ち縮径方向に移動した縮径状態のホーニング工具10を回転軸Zに沿って下降させる。下降するホーニング工具10は、工具挿入ガイド30の上端に設けられた挿入ガイド部38の内周面38Aa及び38Baに誘導されて図5に示すように工具挿入ガイド30内に挿入される。
このホーニング工具10の工具挿入ガイド部30内への挿入に伴ってホーニング砥石20の外表面21が螺旋状に形成されたELID用電極35の電極面35aと水性クーラントを介在して対向する。
このホーニング砥石20の外表面21とELID用電極35の電極面35aとが対向した状態で電圧印加手段からELID用電極35に負電圧を印加すると共に、電圧印加手段により各ホーニング砥石20に正電圧を印加し、電解作用により各ホーニング砥石20の外表面21における導電性結合部を電気分解させて電解ドレッシングする。この電解ドレッシングにあたり、ELID用電極35の電極面35aとホーニング砥石20の外表面21との間に介在する水性クーラントが導電性に優れることから安定した電解ドレッシングが得られる。この電解ドレッシング時間は電解電圧、砥粒突出量及び導電性結合部の材質等によって決定されるが実験やシミュレーション等によって適宜最適な任意の時間を求めて設定できる。また、電解電圧、電解ドレッシング時間により砥粒の突出量を最適化できる。
なお、ELID用電極35が螺旋状であることから、電解ドレッシング中は、主軸5によりホーニング工具10を回転させたり回転軸Z方向に動かすことで、各ホーニング砥石20の外表面21の全体に亘り、均質の電解ドレッシングを行うことが可能である。
ドレッシング時間の経過後、ホーニング砥石20,ELID用電極35に対する電圧印加を停止し、ホーニング砥石20の電解ドレッシングが終了すると、図6に示すようにホーニングヘッドの牽引動作機構によって縮径方向に移動した縮径状態のホーニング工具10を被削材Wの円筒内周面Wa内に挿入する。
この被削材Wの円筒内周面Wa内にホーニング工具本体11を挿入した状態で、水性クーラントを供給しつつホーニング工具10を回転しながら回転軸Z方向に往復動させ、且つ牽引動作機構によるホーニング工具10の第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bの牽引を解除する。この牽引の解除によりスプリング18の付勢力によって第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bが先端側に移動して第1拡縮バー17Aの基端側テーパ面17Aa及び先端側テーパ面17Abがそれぞれ第1ホーニングシュー13Aの基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abに圧接して各第1ホーニングシュー13Aを回転軸Zから離れる半径方向外向きに押動する。同様に、第2拡縮バー17Bの基端側テーパ面17Ba及び先端側テーパ面17Bbがそれぞれ第2ホーニングシュー13Bの基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbに圧接して各第2ホーニングシュー13Bを回転軸Zから離れる半径方向外向きに押動して各ホーニング砥石20の外表面21が被削材Wの円筒内周面Waに接触する。そして、予め設定された接触圧力でホーニング砥石20によって被削材Wの円筒内周面Waを研削、即ちホーニング加工を開始する。
ホーニング加工しつつエアーマイクロメータによりホーニングガイド部材16の外周面16aと加工面となる円筒内周面Waまでの隙間を検出し、ホーニングガイド部材16の外周面16aと被削材Wの円筒内周面Waとの隙間が所定値に達すると、牽引動作機構により第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bを上方に牽引し、第1拡縮バー17Aの基端側テーパ面17Aa及び先端側テーパ面17Abによる第1ホーニングシュー13Aの基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abの押圧を解除すると共に、第2拡縮バー17Bの基端側テーパ面17Ba及び先端側テーパ面17Bbによる第2ホーニングシュー13Bの基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbの押圧を解除する。これにより、各第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bは、スプリングバンド14a及び14bによって回転軸Z方向、即ち縮径方向に移動して各ホーニング砥石20が被削材Wの円筒内周面Waから離れてホーニング加工が終了する。このホーニング加工開始からホーニング加工終了までが加工時間となる。
ホーニング加工が終了すると、ホーニング工具10の回転及び回転軸Z方向の往復動、導電性液供給手段39からの水性クーラントの供給を停止し、ホーニング工具10を上昇して待機位置で停止する。そして、ホーニング加工された被削材Wを被削材保持部から搬出する。この被削材Wの搬入から搬出までの各工程を繰り返すことにより、電解ドレッシングされたホーニング工具10のホーニング砥石20により順次被削材Wの円筒内周面Waにホーニング加工を施すことができる。
従って、本実施の形態によると、被削材Wの円筒内周面Waをホーニングヘッドの主軸5に取り付けられたホーニング工具10によりホーニング加工を繰り返す際に、ELID用電極35が配設された工具挿入ガイド30において水性クーラント等の導電性液を使用してホーニング砥石20に電解ドレッシングを施すことから、常に良好にドレッシングされたホーニング砥石による面粗度のバラツキの無い安定した品質のホーニング加工が可能になる。また、ホーニング砥石20の過剰な摩耗が抑制されて加工時間の短縮に伴い作業効率が向上する。
また、工具挿入ガイド30における電解ドレッシングがホーニングヘッドの主軸5にホーニング工具10を取り付けた状態で且つホーニング工具10が工具挿入ガイド30を通過する極めて短時間で行え、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。
更に、工具挿入ガイド30にELID用電極35を配設することから、新たに電解ドレッシング手段を備える必要がなく、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、装置及び作業の複雑化を招くことなく、製造コストの削減が期待できる。
上記実施の形態では、工具挿入ガイド30の絶縁部材33の内周面33aに螺旋状に形成された電極保持溝33bに螺旋状のELID用電極35を配設したが、螺旋状のELID用電極35に代えて種々形状のELID用電極を設けることが可能である。
例えば、図7に図5に対応する工具挿入ガイド30の断面図を示し、図8に図8のI−I線断面図を示すように、絶縁部材33の内周面33aに沿って回転軸Z方向に連続する断面矩形形状の電極保持溝33dを周方向に等間隔で複数形成し、各電極保持溝33dに断面矩形形状の平板状に形成されたELID用電極35Aの電極面35Aaを内周面33aから露出させて回転軸Zを中心とする放射状に配設することも可能である。このELID用電極35Aは平板状の導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。また、断面矩形形状で回転軸Z方向に延在するELID用電極35Aを回転軸Zを中心に放射状に複数配置することから、良好な安定した電解ドレッシングをホーニング砥石20に施すことができる。なお、ELID用電極35が断面矩形形状の平板状に形成され、間隔をもって配設されることから、電解ドレッシング中は、主軸5によりホーニング工具10を回転させることで、各ホーニング砥石20の外表面21の全体に亘り、均質の電解ドレッシングを行うことが可能である。
さらに、断面矩形形状のELID用電極35Aは、回転軸Zを中心に放射状に複数配置するようにしているが、単一であってもよい。
また、図9に図5に対応する工具挿入ガイド30の断面図を示し、図10に図9のII−II線断面図を示すように、絶縁部材33の内周面33aに沿って回転軸Z方向に連続する断面円弧形の電極保持溝33eを周方向に等間隔で複数形成し、各電極保持溝33eに断面円弧状に形成されたELID用電極35Bの電極面35Baを内周面33aから露出させて回転軸Zを中心とする放射状に配設することも可能である。このELID用電極35Bは断面円弧状で連続する導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。また、断面円弧形状で回転軸Z方向に延在するELID用電極35Bが回転軸Zを中心に放射状に複数配置することから、良好な安定した電解ドレッシングをホーニング砥石20に施すことができる。なお、ELID用電極35が断面円弧形状に形成され、間隔をもって配設されることから、電解ドレッシング中は、主軸5によりホーニング工具10を回転させることで、各ホーニング砥石20の外表面21の全体に亘り、均質の電解ドレッシングを行うことが可能である。
さらに、断面円弧形状のELID用電極35Bは、回転軸Zを中心に放射状に複数配置するようにしているが、単一であってもよい。
更に、図11に図5に対応する工具挿入ガイド30の断面図を示し、図12に図11のIII−III線断面図を示すように、絶縁部材33に周方向に等間隔で回転軸Zと直交する半径方向に貫通する断面円形状の電極保持孔33fを複数形成し、各電極保持孔33fに棒状(円柱状)のELID用電極35Cの電極面35Caを露出させて放射状に複数配設することも可能である。このELID用電極35Cは棒状の導電性材料を切断することによって極めて容易に製造することができる。また、棒状のELID用電極35Cを等間隔で周方向に複数配設することから極めて少量の導電性材料から得ることができる。また、ELID用電極35Cを回転軸Zを中心に放射状に複数配置することから、良好な安定した電解ドレッシングをホーニング砥石20に施すことができる。なお、棒状のELID用電極35Cが回転軸Z方向と直交する方向に延在し、且つ、間隔をもって配設されていることから、電解ドレッシング中は、主軸5によりホーニング工具10を回転させると共に回転軸Z方向に動かすことで、各ホーニング砥石20の外表面21の全体に亘り、均質の電解ドレッシングを行うことが可能である。
さらに、ELID用電極35Cは、回転軸Zを中心に放射状に複数配置するようにしているが、単一であってもよい。また、棒状のELID用電極は円柱状に限らず角柱状であってもよい。
なお、上記実施の形態では、ホーニング工具10に各砥石20に対する拡縮径機構を備えて、電解ドレッシング時は各ホーニング砥石20をホーニングガイド部材16の外表面16aよりも縮径させてEILD用電極と各ホーニング砥石20との間に隙間を設けることで、電解ドレッシングを可能としているが、拡縮径機構を有さないワンパスのホーニング工具にも適用可能である。この場合は、工具挿入ガイド30の内径をホーニング工具が挿通自在の径に設定すると共に、砥石がELID用電極の電極面と接触せず砥石とELID用電極の電極面との間に電解ドレッシングを行うに適切な隙間を有するようELID用電極の電極面が絶縁部材33の内周面33aよりも奥に位置する様に、ELID用電極および電極保持溝を設定する。
また、上記実施の形態では各ホーニング加工毎にホーニング砥石20に電解ドレッシングを施したが、加工時間を計測して予め設定された加工時間毎にホーニング砥石20に電解ドレッシングを施すようにすることも、或いは予め設定されたホーニング加工回数毎に電解ドレッシングを施すこともできる。
すなわち、研削により砥粒が摩耗すると研削能力が次第に低下して加工時間が次第に長くなることに着目し、ホーニング加工時間を計測する加工時間計測手段を設けてホーニング加工時間を計測して、予め設定された閾値にホーニング加工時間が達したとき、或いは、予め設定されたホーニング加工回数毎に電解ドレッシング電解ドレッシングを行うことで、適切な時期、或いは的確なサイクル毎に効果的に電解ドレッシングを行うことができ、砥石の目立て状態の維持と砥石の過剰な摩耗の抑制が可能となって、砥石による研削能力の過剰な低下が抑制される。これにより、加工時間が短縮されて加工サイクルの効率化が図れる共に、工具寿命の延長が図れ、且つ、安定した品質のホーニング加工が可能になる。
また、上記実施の形態においては、被削材Wの外として、工具挿入ガイド30に電解ドレッシング用電極35を配置した例につき説明したが、工具挿入ガイド30は、ホーニング装置側、或いは被削材Wの何れに付設される場合であっても適用し得る。また、例えば、被削材としてシリンダブロックのアッパデッキ部上に取り付けられた筒状のダミーヘッド内を挿通し、砥粒を導電性結合部によって固定したホーニング砥石を装着したホーニング工具によりシリンダブロックのシリンダボアの内周面をホーニング加工するに際し、ダミーヘッド内に挿入されるホーニング工具に装着されたホーニング砥石と導電性液を介在させる間隙を隔てて対向する電解ドレッシング用電極をダミーヘッドに設けて電解ドレッシングする場合の電解ドレッシング用電極に適用することもできる。なお、ダミーヘッドは、特開2005−199378号公報等に開示されており周知であるため、説明は省略する。
さらに、ホーニング加工を行う加工部の他に、別途、電解ドレッシングを行う電界ドレッシング部を設け、上記非加工時間において電解ドレッシング部において砥石と電解ドレッシング用電極とを導電性液を存在させる間隔を隔てて対向させ、該砥石と電解ドレッシング用電極との間に導電性液を供給しつつ砥石と電解ドレッシング用電極に電圧を印加して砥石を電解ドレッシングする場合の電解ドレッシング用電極に適用することもできる。
(第2実施の形態)
本発明に係る第2実施の形態を図13乃至図16を参照して説明する。
図13は、ホーニング装置41の概要説明図であり、ホーニング工具10は第1実施の形態と同様の構成であり、対応する部分に同一符号を付することでホーニング工具10の詳細な説明は省略する。
本実施の形態は、ホーニング工具10を水平に延在する回転軸方向に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材Wの円筒内周面Wa内に挿入して円筒内周面Waをホーニング加工する、いわゆる横型のホーニング装置の適用例である。勿論、傾斜型のホーニング装置、すなわち、ホーニング工具を傾斜して延在する回転軸方向に沿って工具挿入ガイド内を挿通させて被削材の円筒内周面内に挿入して円筒内周面をホーニング加工するホーニング装置にも適用することができる。
ホーニング装置41は、被削材Wを位置決め保持する図示しない被削材保持部、ホーニングヘッド、このホーニングヘッドの主軸45に支持されたホーニング工具10、被削材保持部に位置決め保持された被削材Wの端部に近接して配置されたホーニング工具10の研削部となる円筒内周面Wa内に誘導案内する工具挿入ガイド50を備えている。
ホーニング工具10は、主軸モータ等の駆動装置を備えるホーニングヘッドの主軸45に水平方向移動可能に支持され、且つ、主軸45により水平方向に延在する回転軸Zを中心に回転駆動可能に構成されている。
工具挿入ガイド50は、図13に断面を示し、且つ図14に図13のIV−IV線断面を示すように、被削材保持部に支持された被削材Wの端部Wcに近接して回転軸Zと同軸上に中心軸を有して回転軸Z方向に断面円弧状で延在する上方が開口された略半円筒状の工具挿入ガイド本体51を備えている。工具挿入ガイド本体51の内周に回転軸Z方向に延在する断面円弧状で上方が開口された略半円筒状の絶縁部材53を介在して回転軸Z方向に延在する断面円弧状で上方が開口された略半円筒状のELID用電極55が設けられている。
ELID用電極55の電極面55aは、回転軸Z方向、より具体的には被削材Wと反対側から主軸45に支持されるホーニング工具本体11及びホーニング砥石20の挿入を許容し、且つ、ホーニング砥石20の外表面21と対向して導電性液の介在を許容する隙間、例えば1〜5mm程度が形成される。このELID用電極55は、工具挿入ガイド本体51の外方に突出する図示しない電極端子に接続され、この電極端子が電圧印加手段の負極(−極)に接続される。また、工具挿入ガイド本体51の被削部材保持部と反対側の端部に、回転軸Z方向に断面円弧状で延在する上方が開口された略半円筒状でテーパ状の内周面56aを有する挿入ガイド部56が取り付けられている。
更に、工具挿入ガイド50の上方に、工具挿入ガイド本体51の上方に開口する開口部51aから工具挿入ガイド50内に導電性液、例えば水性クーラントを供給する導電性液供給手段57が配置されている。
次に、上記のように構成されたホーニング装置41の作動について説明する。
図13に示すようにホーニング工具10が工具挿入ガイド50の挿入ガイド部56から離れた待機位置に保持した状態で、被削材Wが搬入されて被削材保持部に位置決め保持する。
次に、導電性液供給手段57から導電性液である水性クーラントを工具挿入ガイド50内に供給する。
一方、ホーニングヘッドの牽引動作機構によってホーニング工具10の第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bを牽引して第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bを回転軸Z方向、即ち縮径方向に移動した縮径状態のホーニング工具10を回転軸Zに沿って、図15に示すように挿入ガイド部56側から工具挿入ガイド50内に挿入する。
このホーニング工具10の工具挿入ガイド部50内への挿入に伴ってホーニング砥石20の外表面21がELID用電極55の電極面55aと水性クーラントを介在して対向する。
このホーニング砥石20の外表面21とELID用電極55の電極面55aとが対向した状態で電圧印加手段からELID用電極55に負電圧を印加すると共に、電圧印加手段により各ホーニング砥石20に正電圧を印加し、電解作用により各ホーニング砥石20の外表面21における導電性結合部を電気分解させて電解ドレッシングする。この電解ドレッシングにあたり、ELID用電極55の電極面55aとホーニング砥石20の外表面21との間に介在する水性クーラントが導電性に優れることから安定した電解ドレッシングが得られる。この電解ドレッシング時間は、第1実施の形態と同様に、電解電圧、砥粒突出量及び導電性結合部の材質等によって決定されるが実験やシミュレーション等によって適宜最適な任意の時間を求めて設定できる。
なお、ELID用電極55が断面円弧状で上方が開口された略半円筒状であることから、電解ドレッシング中は、主軸45によりホーニング工具10を回転させることで、各ホーニング砥石20の外表面21の全体に亘り、均質の電解ドレッシングを行うことが可能である。
ドレッシング時間の経過後、ホーニング砥石20,ELID用電極55に対する電圧印加を停止し、ホーニング砥石20の電解ドレッシングが終了すると、図16に示すようにホーニングヘッドの牽引動作機構によって縮径方向に移動した縮径状態のホーニング工具10を被削材Wの円筒内周面Wa内に挿入する。
この被削材Wの円筒内周面Wa内にホーニング工具本体11を挿入した状態で、水性クーラントを供給しつつホーニング工具10を回転しながら回転軸Z方向に往復動させ、且つ牽引動作機構によるホーニング工具10の第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bの牽引を解除する。この牽引の解除によりスプリング18の付勢力によって第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bが先端側に移動して第1拡縮バー17Aの基端側テーパ面17Aa及び先端側テーパ面17Abがそれぞれ第1ホーニングシュー13Aの基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abに圧接して各第1ホーニングシュー13Aを回転軸Zから離れる半径方向外向きに押動する。同様に、第2拡縮バー17Bの基端側テーパ面17Ba及び先端側テーパ面17Bbがそれぞれ第2ホーニングシュー13Bの基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbに圧接して各第2ホーニングシュー13Bを回転軸Zから離れる半径方向外向きに押動して各ホーニング砥石20の外表面21が被削材Wの円筒内周面Waに接触する。そして、予め設定された接触圧力でホーニング砥石20によって被削材Wの円筒内周面Waを研削、即ちホーニング加工を開始する。
ホーニング加工しつつエアーマイクロメータによりホーニングガイド部材16の外周面16aと加工面となる円筒内周面Waまでの隙間を検出し、ホーニングガイド部材16の外周面16aと被削材Wの円筒内周面Waとの隙間が所定値に達すると、牽引動作機構により第1拡縮バー17A及び第2拡縮バー17Bを図において右方向に牽引し、第1拡縮バー17Aの基端側テーパ面17Aa及び先端側テーパ面17Abによる第1ホーニングシュー13Aの基端側テーパ面13Aa及び先端側テーパ面13Abの押圧を解除すると共に、第2拡縮バー17Bの基端側テーパ面17Ba及び先端側テーパ面17Bbによる第2ホーニングシュー13Bの基端側テーパ面13Ba及び先端側テーパ面13Bbの押圧を解除する。これにより、各第1ホーニングシュー13A及び第2ホーニングシュー13Bは、スプリングバンド14a及び14bによって縮径方向に移動して各ホーニング砥石20が被削材Wの円筒内周面Waから離れてホーニング加工が終了する。
ホーニング加工が終了すると、ホーニング工具10の回転及び回転軸Z方向の往復動、導電性液供給手段57から水性クーラントの供給を停止し、ホーニング工具10を待機位置に移動して停止する。そして、ホーニング加工された被削材Wを被削材保持部から搬出する。この被削材Wの搬入から搬出までの各工程を繰り返すことにより、電解ドレッシングされたホーニング工具10のホーニング砥石20により順次被削材Wの円筒内周面Waにホーニング加工を施すことができる。
従って、本実施の形態によると、被削材Wの円筒内周面Waをホーニングヘッドの主軸45に取り付けられたホーニング工具10によりホーニング加工を繰り返す際に、ELID用電極55が配設された工具挿入ガイド50においてホーニング砥石20に電解ドレッシングを施すことから、常に良好にドレッシングされたホーニング砥石による面粗度のバラツキの無い安定した品質のホーニング加工が可能になる。また、ホーニング砥石20の過剰な摩耗が抑制されて加工時間の短縮に伴い作業効率が向上する。
また、工具挿入ガイド50における電解ドレッシングがホーニングヘッドの主軸45にホーニング工具10を取り付けた状態で且つホーニング工具10が工具挿入ガイド50を通過する極めて短時間で行え、ホーニング加工サイクルに影響することなく電解ドレッシングが可能になる。
更に、工具挿入ガイド50にELID用電極55を配設することから、新たに電解ドレッシング手段を備える必要がなく、既存のホーニング装置を大きく変更することなく実現でき、装置及び作業の複雑化を招くことなく、製造コストが削減できる。
なお、上記説明では回転軸Zが水平に延在する場合について説明したが、被切削材Wの形状等によって要求により回転軸Zを傾斜させることもできる。
また、上記実施の形態では各ホーニング加工毎にホーニング砥石20に電解ドレッシングを施したが、加工時間を計測して予め設定された加工時間毎にホーニング砥石20に電解ドレッシングを施すようにすることも、或いは予め設定されたホーニング加工回数毎に電解ドレッシングを施すこともできる。
更に、各実施の形態では導電性液として水性クーラント等の導電性研削液を用いたが、これに限らず、適宜の導電性液を用い得る。