JP4996100B2 - 焼結鉱の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、結晶水の含有率が高い多孔質の劣質鉱石である高結晶水鉱石を多量に使用する焼結鉱の製造方法に関する。
焼結鉱は、その塩基度(CaO/SiO)、SiO含有量を目標値とするように鉄鉱石に石灰石、珪石、蛇紋岩等の副原料を配合し、さらに粉コークス等の固体燃料を加えた焼結原料をドラムミキサやディスクペレタイザで混合造粒した後、DL型焼結機で焼成して得られる。
従来から結晶水を高濃度に含有する鉄鉱石を多量に配合したり、微粉の多い鉄鉱石を多量に配合したりして焼結した場合には、生産性や成品歩留等を悪化させることがよく知られている。しかも、原料事情により今後さらに鉄鉱石原料は劣質化する傾向にあり、結晶水含有量は高いが微粉は比較的少ないピソライト鉱石に加え、結晶水含有率が高くかつ微粉の多いマラマンバ鉱石の配合比率を増加させた焼結鉱の製造技術の開発が急務となっている。
焼結原料中の結晶水含有量が増加すると、その結晶水を分解し蒸発させるための熱量が余分に必要となり、固体燃料の添加量を増加させる必要がある。もし固体燃料の添加量を増加させないと、焼結ベッドが熱不足状態になり、成品焼結鉱の品質が低下したり、返鉱が増加して成品歩留が低下したりする。いっぽう、逆に固体燃料の添加量が過多になると、焼結ベッドの赤熱帯が大幅に拡がるとともに、融液が過剰に生成して、焼結ベッドの通気抵抗が増大して生産性が低下したり、焼結ベッド内に偏流が生じたりして成品歩留が低下するなどの悪影響が見られる。
また、微粉の多い原料を多量に使用すると、焼結原料の造粒性が悪くなり焼結ベッドの通気性が悪化して生産性が低下する。また、通気性悪化部位ならびにその下部の焼成が不十分となるために成品歩留も悪化する。
さらに、マラマンバ鉱石は他の原料鉱石に比してSiO含有量が少ないため、マラマンバ鉱石を使用すると、焼結鉱の塩基度(CaO/SiO2)一定の場合は焼結鉱中のSiO2低下に伴いCaO量も低下するので、焼結鉱形成に必要な造滓量が不足して、焼結鉱の成品歩留や強度が悪化することは良く知られている。
またマラマンバ鉱石は、ピソライト鉱石と同様に気孔率の高い多孔質鉱石であるため、マラマンバ鉱石を使用する場合、造粒時に添加する水分の一部がその気孔中に侵入し、微粒鉱石を粗粒鉱石に付着させる水分が不足するため、焼結原料の造粒性が悪化し、生産性や成品歩留、冷間強度が低下することになる。
すなわち、粒径が0.25mm以下の微粉が多い多孔質な細粒原料であるマラマンバ鉱石を粗粒原料と高水分で造粒しても、粗粒原料への付着力が弱いために焼結原料の擬似粒子強度が劣るので、焼結機への輸送中に粉化したり、焼結ベッド内での乾燥時に崩壊して焼結ベッドの通気性を悪化させ、生産性や成品歩留を低下させる問題があった。
そこで、本願発明者らは、上記マラマンバ鉱石多配合時の造粒性悪化および造滓量不足の問題を一挙に解決する方法として、「結晶水を3.0質量%以上、SiOを4.0質量%以下、0.25mm以下の微粉を20質量%以上含有するマラマンバ鉱石に、結晶水を2.0〜4.0質量%、SiOを3.0質量%以上、0.25mm以下の微粉を20質量%未満含有するピソライト鉱石を添加して、SiOが3.0〜5.0質量%、0.5mm以下の微粉が25%以上30質量%未満となる配合物とし、この配合物の含水率が5〜10質量%、好ましくは7.5〜9.5質量%となるように水分を添加して高速攪拌混合機で混合造粒した後、さらに、固体燃料およびその他の鉱石を添加し、再度、混合造粒した後に焼結することを特徴とする焼結鉱の製造方法。」を提案した(特許文献1参照)。
いっぽう、高結晶水鉱石多配合時の造粒性悪化の問題を解決する方法として、「原料鉄鉱石の少なくとも一部として結晶水含有率が4%以上の高結晶水鉱石を用いて高炉用焼結鉱を製造する方法において、所定鉱種の高結晶水鉱石(マラマンバ系鉱石)Aを粗粒鉱石と微粒鉱石とに分級すること又は/及び破砕処理することにより得られた前記微粒鉱石aに対して、水分を添加した状態で撹拌・混合を行う事前処理を施しておき、他の所定鉱種の高結晶水鉱石(ピソライト系鉱石)Bを粗粒鉱石と微粒鉱石とに分級し、該分級により得られた粗粒鉱石bに対して、混合・造粒工程での水分添加段階よりも前の段階で予め水分を添加しておき、前記事前処理が施された微粒鉱石aと前記水分添加された粗粒鉱石bを他の焼結原料とともに混合・造粒し、造粒された焼結原料を焼結機に装入して焼結鉱を製造することを特徴とする高炉用焼結鉱の製造方法。」が開示されている(特許文献2参照)。
特開2004−137575号公報 特開2003−293043号公報
特許文献1に記載の方法は、事前に微粉の多いマラマンバ鉱石と核粒子となる粗粒の多いピソライト鉱石とを配合し、この配合物を高速攪拌混合機で混合造粒することにより、高速攪拌混合機に備えられた高速攪拌羽根の強力な混合力によって添加水分が配合物全体に浸透し、微粉の粒子表面にも水膜が形成され、微粉粒子の可塑性が向上して、ピソライト鉱石の開気孔に付着しやすくなり、フリーな微粉が減少し、造粒性が改善されるものである。
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法を採用した場合、造粒性について一定の改善効果が認められたものの、マラマンバ鉱石とピソライト鉱石とからなる配合物を高速攪拌混合機で造粒して得られた造粒物の造粒性指数GI(造粒性を定量的に表すための指標)にバラツキが生じて焼結鉱の成品歩留が変動し、所定の成品歩留が得られない場合があり、安定した成品歩留確保のためさらなる造粒性改善の余地があった。
いっぽう、上記特許文献2に記載の方法は、事前処理として、保水能力は大きいものの濡れ速度が遅いマラマンバ系鉱石の特に微粒部分に対して水分を添加した状態で攪拌・混合処理を、吸水性は高いものの吸水速度が遅いピソライト系鉱石の特に粗粒部分に対して水分添加処理をそれぞれ施していることから(同文献の段落[0040]参照)、造粒性について一定の改善効果を期待しうるものである。
しかしながら、マラマンバ系鉱石の微粒部分のみに対して水分を添加した状態で攪拌・混合処理を行うと、微粒鉱石のみで構成された低強度造粒物が形成されてしまい、これを前記水分添加された粗粒鉱石bや他の焼結原料とともに混合・造粒すると、かえって粗粒鉱石bや他の焼結原料表面への微粒部分の付着が妨げられ、造粒物の強度を十分に高めることができないため、上記特許文献1に記載の発明と同様、さらなる造粒性改善の余地があった。
そこで、本発明は、焼結原料の一部として高結晶水鉱石を使用して焼結鉱を製造するに際し、従来よりさらに造粒性を改善することによって生産性や製品歩留をより向上させうる焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、焼結原料の一部として高結晶水鉱石を配合して焼結鉱を製造する方法であって、下記(1)〜(5)の工程を備え、かつ、下記第1分級工程および下記第2分級工程の分級点がともに2〜5mmの範囲にあることを特徴とする焼結鉱製造方法である。
(1)結晶水を4質量%(乾量基準、以下同じ。)以上含有し、0.25mm以下の微粉の割合が20質量%以上であるマラマンバ鉱石を篩上と篩下とに分級する第1分級工程
(2)結晶水を4質量%以上含有し、0.7mm以上の粗粒の割合が50質量%以上であるピソライト鉱石を篩上と篩下とに分級する第2分級工程
(3)前記マラマンバ鉱石の篩下と前記ピソライト鉱石の篩上とを高速攪拌混合機にて混合した後、予備造粒機で造粒して予備造粒物となす予備造粒工程
(4)さらに、前記予備造粒物と前記マラマンバ鉱石の篩上と前記ピソライト鉱石の篩下とを焼結原料の残部とともに最終造粒機で造粒して最終造粒物となす最終造粒工程
(5)その後、前記最終造粒物を焼結することにより焼結鉱を製造する焼結工程
本発明によれば、マラマンバ鉱石の篩下(微粉部分)と、ピソライト鉱石の篩上(粗粒部分)だけを選択的に高速攪拌混合機にて混合することで、前記篩上(粗粒部分)を核として、その表面の開気孔内に前記篩下(微粉部分)が効率的に付着するので、従来より高強度の造粒物が得られ、焼結時の通気性がさらに改善されて、焼結鉱の生産性や製品歩留がより向上する。
以下、図面を参照しつつ、本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る焼結鉱製造工程全体の概略を示すフロー図である。同図において、符号1は第1高結晶水鉱石Aを分級する第1篩、符号2は第2高結晶水鉱石Bを分級する第2篩、符号3は第1高結晶水鉱石Aの篩下と第2高結晶水鉱石Aの篩上とを混合する高速攪拌混合機、符号4は高速攪拌混合機3で混合されて得られた混合物を予備造粒する予備造粒機、符号5は予備造粒機4で造粒された予備造粒物と焼結原料の残部とを混合造粒する最終造粒機、符号6は最終造粒機で造粒された最終造粒物を焼成して焼結鉱を製造する焼結機である。
焼結原料の一部として使用する高結晶水鉱石は、結晶水を4質量%(乾量基準、以下同じ。)以上含有し、0.25mm以下の微粉の割合が20質量%以上である第1高結晶水鉱石Aと、結晶水を4質量%以上含有し、0.7mm以上の粗粒の割合が50質量%以上である第2高結晶水鉱石Bとであるが、第1高結晶水鉱石Aとしては、例えばマラマンバ鉱石を、第2高結晶水鉱石Bとしては、例えばピソライト鉱石を用いる。
これらの高結晶水鉱石A,B以外の焼結原料の残部Cとしては、結晶水含有量が4質量%未満の鉱石(返鉱を含む)、フラックス(石灰石、生石灰、珪石、蛇紋岩など)、および固体燃料(コークス粉や無煙炭など)を用いる。
[第1分級工程]
まず、マラマンバ鉱石Aを第1篩としての篩目2〜5mmの乾式篩1で篩って篩上aと篩下a’とに分級する。
[第2分級工程]
いっぽう、ピソライト鉱石Bも第2篩としての篩目2〜5mmの乾式篩2で篩って篩上bと篩下b’とに分級する。第1分級工程および第2分級工程とも、篩目すなわち分級点を2〜5mmの範囲とするのは、篩目(分級点)が2mm未満では、湿った鉱石を乾式篩で篩うため篩が目詰まりしやすく分級が困難になるためであり、5mmを超えるとマラマンバ鉱石Aの場合は篩下a’に混入する粗い粒子の割合が多くなるいっぽうで、ピソライト鉱石Bの場合は篩上b中の核粒子の数が減少して、次工程である予備造粒工程における高速攪拌混合機3での混合時においてピソライト鉱石Bの篩上b中の核粒子の表面へのマラマンバ鉱石Aの篩下a’中の微粒子の付着が不十分になるためである。なお、乾式篩2と3の篩目の大きさは、必ずしも同じである必要はなく、各鉱石A,Bの粒度分布および配合割合に応じて2〜5mmの範囲で適宜選択しうるものである。
[予備造粒工程]
つぎに、マラマンバ鉱石Aの篩下a’とピソライト鉱石Bの篩上bとを所定量の水分とともに高速攪拌混合機3にて混合して混合物とした後、この混合物を予備造粒機としてのディスクペレタイザ4に装入して造粒することにより、予備造粒物Dを得る。
マラマンバ鉱石Aの篩下a’とピソライト鉱石Bの篩上bとを選択的に高速攪拌混合機3にて混合した後、通常の造粒機であるディスクペレタイザ4で予備造粒するのは以下の理由による。
すなわち、マラマンバ鉱石Aは微粉部分が多いため保水能力は大きいものの濡れ速度が遅いという特質を有し、いっぽう、ピソライト鉱石Bは開気孔が多いため吸水性が高いものの吸水速度が遅いという特質を有する。したがって、濡れ速度が特に遅いマラマンバ鉱石Aの微粉部分(篩下)a’と、給水速度が特に遅いピソライト鉱石Bの粗粒部分(篩上)bとを選択的に高速攪拌混合機3にて混合することで、高速攪拌混合機3の強力な混合力により、添加水分は優先的にマラマンバ鉱石Aの微粉部分a’に浸透してその鉱石表面を濡らすので、この鉱石表面が濡れた微粉部分a’がピソライト鉱石Bの粗粒部分bの開気孔内に付着し充填する。この結果、ピソライト鉱石Bの粗粒部分bに吸収される水分量が少なくてすむので、添加水分がマラマンバ鉱石Aの微粉部分a’に有効に行き渡りその鉱石表面が十分に濡れることとなる。そして、このように鉱石表面が十分に濡れたマラマンバ鉱石Aの微粉部分a’とピソライト鉱石Bの粗粒部分bとからなる混合物を通常のディスクペレタイザ4で転動造粒することで、ピソライト鉱石Bの粗粒部分bが核となってその表面にマラマンバ鉱石Aの微粉部分a’が付着して造粒が進行し、高強度の擬似粒子(予備造粒物)Dが得られることとなる。
ここで、例えば、ピソライト鉱石Bを粗粒部分bだけでなく全量用いると、吸水性の高いピソライト鉱石Bの微粉部分b’が添加水分を優先的に吸収してしまい、マラマンバ鉱石Aの微粉部分a’に水分が十分に行き渡らなくなり、フリーの微粉が残りやすくなるため、造粒性が低下し擬似粒子Dの強度が低下してしまうこととなる(後記実施例の比較例5参照)。
また、例えば、マラマンバ鉱石Aを微粉部分a’だけでなく全量用いると、濡れ速度がそれほど遅くないマラマンバ鉱石Aの粗粒部分aも一緒に混合するため、高速攪拌混合機3の混合力が分散されてマラマンバ鉱石Aの微粉部分a’への添加水分の浸透が不十分となり、やはりフリーの微粉が残りやすくなるため、造粒性が低下し擬似粒子Dの強度が低下してしまうこととなる(後記実施例の比較例4参照)。
また、例えば、マラマンバ鉱石Aの微粒部分a’とピソライト鉱石Bの粗粒部分bとを高速攪拌混合機3で混合しただけでディスクペレタイザ4による予備造粒を行わずに、直接、マラマンバ鉱石Aの粗粒部分aとピソライト鉱石Bの微粉部分b’と焼結原料の残部(以下、「焼結原料の残部等」ともいう。)を添加して最終造粒だけを行うと、せっかくマラマンバ鉱石Aの微粒部分a’に行き渡った水分が焼結原料の残部等に奪われて、この微粒部分a’の造粒性が低下するため、最終造粒物Eの強度が低下してしまうこととなる。
よって、マラマンバ鉱石Aの篩下a’とピソライト鉱石Bの篩上bとを所定量の水分とともに高速攪拌混合機3にて混合した後に、ディスクペレタイザ4にて予備造粒することが重要である。
予備造粒工程にて添加する全水分量は、以下のようにして決定すればよい。すなわち、予備造粒物Dが必要な強度を保持するよう、あらかじめ予備造粒物Dの目標水分含有量を設定しておく。なお、使用するマラマンバ鉱石Aおよびピソライト鉱石Bの各粒度、各分級点および配合割合によって予備造粒物Dが必要な強度を保持する適正な水分含有量は異なるため、例えば、使用するマラマンバ鉱石Aおよびピソライト鉱石Bの組み合わせに対して、事前に分級点、配合割合、および添加水分量を種々変更して製造した予備造粒物Dの造粒性(GI等)を測定し、これより適正水分含有量を決定すればよい。予備造粒物Dの適正水分含有量の範囲は8〜12質量%程度である。なお、この予備造粒工程にて添加する全水分量は、マラマンバ鉱石Aの微粒部分a’へ水を行き渡らせるため、高速攪拌混合機3にて全量添加することを基本とするが、マラマンバ鉱石Aの微粉部分a’とピソライト鉱石Bの粗粒部分bの粒度構成およびその配合割合や、高速攪拌混合機3の性能等によっては、必ずしも全水分量を高速攪拌混合機3に全量添加する必要はなく、その一部をディスクペレタイザ4に分けて添加するようにしてもよい。
[最終造粒工程]
さらに、上記予備造粒工程で得られた予備造粒物Dに、マラマンバ鉱石Aの篩上aとピソライト鉱石Bの篩下b’と焼結原料の残部Cとを添加し所定量の水分を追加して最終造粒機である例えばドラムミキサ5で造粒して最終造粒物Eを得る。
マラマンバ鉱石Aの篩上aは、微粉部分がカットされているため濡れ速度がそれほど遅くなく、他方、ピソライト鉱石Bの篩下b’は、粗粒部分がカットされているため、吸水速度はそれほど遅くない。したがって、通常の造粒機であるドラムミキサ5を用いても十分な擬似粒子(最終造粒物)Eの強度が得られることとなる。
最終造粒工程にて添加する全水分量は、以下のようにして決定すればよい。すなわち、最終造粒物Eが必要な強度を保持するよう、あらかじめ最終造粒物Eの目標水分含有量を設定しておく。なお、使用する焼結原料の各粒度および配合割合によって最終造粒物Eが必要な強度を保持する適正な水分含有量は異なるため、例えば、使用する焼結原料の配合割合にて、事前に添加水分量を種々変更して製造した最終造粒物Eの造粒性(GI等)を測定し、これより適正水分含有量を決定すればよい。最終造粒物Eの適正水分含有量の範囲は6〜8質量%程度である。
[焼結工程]
そして、最終造粒物Eを焼結機6のパレット上に充填装入した後、点火炉で焼結ベッド表面に点火し、吸引ブロアーで焼結ベッド下方に吸引しながら焼結するという通常の焼結操業を行う。最終造粒物Eの擬似粒子強度は十分に高いため、焼結ベッドの通気性が向上して焼結時間が短縮され生産性が上昇するとともに、焼結鉱強度が上昇して歩留が改善されることとなる。
〔変形例〕
上記実施形態では、第1高結晶水鉱石Aとしてマラマンバ鉱石を例示したが、このマラマンバ鉱石は、単一銘柄で用いてもよいし、複数銘柄をブレンドしたものを用いてもよい。さらに、第1高結晶水鉱石Aとして、マラマンバ鉱石に他の種類の鉱石(例えば、ピソライト鉱石、高りんブロックマン鉱石等)をブレンドしたものを用いてもよい。
また、上記実施形態では、第2高結晶水鉱石Bとしてピソライト鉱石を例示したが、このピソライト鉱石は、単一銘柄で用いてもよいし、複数銘柄をブレンドしたものを用いてもよい。
また、上記実施形態では、予備造粒機4としてディスクペレタイザを例示したが、ドラムミキサを用いてもよい。
また、上記実施形態では、最終造粒機5としてドラムミキサを例示したが、ディスクペレタイザを用いてもよい。
本発明の効果を確認するため、以下に示すように種々の造粒法で最終造粒物を作製し、評価試験を実施して、造粒性および生産性に及ぼす影響を調査した。なお、再現性を確保するため、造粒および評価試験は各造粒法で3回ずつ(ただし、比較例1のみ2回)行った。
[発明例]:マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石の篩上とを予備造粒
第1高結晶水鉱石として、マラマンバ鉱石である豪州産のウェストアンジェラス鉱(WA鉱石と略称)、第2高結晶水鉱石として、ピソライト鉱石である豪州産のローブリバー鉱(RR鉱石と略称)を用いた。これらの鉱石の結晶水含有量および粒度分布を表1に示す。また、焼結原料の残部の銘柄とともに焼結原料の配合割合を表2に示す。
Figure 0004996100
Figure 0004996100
そして、上記実施形態の図1で説明したフローにしたがって造粒を行った。まず、WA鉱石およびRR鉱石をそれぞれ篩目3mmの篩を用いて篩上と篩下とに分級した。つぎに、WA鉱石の篩下とRR鉱石の篩上とに、混合物の水分含有量が11.0質量%となるように水分を添加して、高速攪拌混合機で混合を行った。ここに、高速攪拌混合機としては、高速攪拌羽根(アジテータ)を内蔵したアイリッヒミキサ(処理量:3〜5L/バッチ、パン回転数:47rpm、アジテータ回転数:891rpm、滞留時間:45s)を用いた。得られた混合物を造粒水分を追加することなく、ディスクペレタイザ(処理量:1〜4kg/バッチ、内径400mm、パン回転数:34rpm、滞留時間:10min)で造粒して予備造粒物とした。この予備造粒物にWA鉱石の篩上とRR鉱石の篩下と焼結原料の残部とを加え、5.1質量%の水分を追加してドラムミキサ(処理量:5〜7kg/バッチ、内径335mm、長さ270mm、ドラム回転数:34rpm、滞留時間:8min)で混合造粒し最終造粒物を作製した。
[参考例]:高結晶水鉱石無配合の焼結原料をドラムミキサだけで一括造粒
高結晶水鉱石(WA鉱石およびRR鉱石)を配合していない表3に示す配合割合の焼結原料を用い、ドラムミキサ(上記発明例と同じ条件)だけで一括造粒し造粒物(最終造粒物)を作製した。
Figure 0004996100
[比較例1]:高結晶水鉱石を配合した焼結原料を予備造粒を行うことなくドラムミキサだけで一括造粒
上記発明例と同じ表1に示す配合割合の焼結原料を用い、高結晶水鉱石(WA鉱石およびRR鉱石)を分級および予備造粒を行うことなく、焼結原料全量をドラムミキサ(上記発明例と同じ造粒条件)だけで一括造粒し造粒物(最終造粒物)を作製した。
[比較例2]:マラマンバ鉱石の篩下だけを予備造粒
上記発明例と同じ表1に示す配合割合の焼結原料を用い、WA鉱石は上記発明例と同様、篩目3mmの篩を用いて篩上と篩下とに分級したが、RR鉱石は分級を行わなかった。そして、WA鉱石の篩下だけに、混合物の水分含有量が11.6質量%となるように水分を添加して、高速攪拌混合機で混合した後、ディスクペレタイザ(上記発明例と同じ造粒条件)で造粒して予備造粒物とした。この予備造粒物にWA鉱石の篩上とRR鉱石全量と残りの焼結原料とを加え、5.1質量%の水分を追加してドラムミキサ(上記発明例と同じ造粒条件)で混合造粒し最終造粒物を作製した。
[比較例3]:マラマンバ鉱石全量とピソライト鉱石全量とを予備造粒
上記発明例と同じ表1に示す配合割合の焼結原料を用い、WA鉱石全量とRR鉱石全量とに、混合物の水分含有量が9.0質量%となるように水分を添加して、高速攪拌混合機で混合した後、ディスクペレタイザ(上記発明例と同じ造粒条件)で造粒して予備造粒物とした。この第1の造粒物に残りの焼結原料を加え、5.1質量%の水分を追加してドラムミキサ(上記発明例と同じ造粒条件)で混合造粒し最終造粒物(第2の造粒物)を作製した。
[比較例4]:マラマンバ鉱石全量とピソライト鉱石の篩上とを予備造粒
上記発明例と同じ表1に示す配合割合の焼結原料を用い、RR鉱石は上記発明例と同様、篩目3mmの篩を用いて篩上と篩下とに分級したが、WA鉱石は分級を行わなかった。そして、WA鉱石全量とRR鉱石の篩上とに、混合物の水分含有量が9.4質量%となるように水分を添加して、高速攪拌混合機で混合した後、ディスクペレタイザ(上記発明例と同じ造粒条件)で造粒して予備造粒物とした。この予備造粒物にRR鉱石の篩下と残りの焼結原料とを加え、5.1質量%の水分を追加してドラムミキサ(上記発明例と同じ造粒条件)で混合造粒し最終造粒物を作製した。
[比較例5]:マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石全量とを予備造粒
上記発明例と同じ表1に示す配合割合の焼結原料を用い、WA鉱石は上記発明例と同様、篩目3mmの篩を用いて篩上と篩下とに分級したが、RR鉱石は分級を行わなかった。そして、WA鉱石の篩下とRR鉱石全量とに、混合物の水分含有量が10.2質量%となるように水分を添加して、高速攪拌混合機で混合した後、ディスクペレタイザ(上記発明例と同じ造粒条件)で造粒して予備造粒物とした。この予備造粒物にWA鉱石の篩上と残りの焼結原料とを加え、5.1質量%の水分を追加してドラムミキサ(上記発明例と同じ造粒条件)で混合造粒し最終造粒物を作製した。
[比較例6] :マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石の篩下とを予備造粒
上記発明例と同じ表1に示す配合割合の焼結原料を用い、WA鉱石およびRR鉱石は上記発明例と同様、それぞれ篩目3mmの篩を用いて篩上と篩下とに分級した。そして、WA鉱石の篩下とRR鉱石の篩下とに、混合物の水分含有量が10.7質量%となるように水分を添加して、高速攪拌混合機で混合した後、ディスクペレタイザ(上記発明例と同じ造粒条件)で造粒して予備造粒物とした。この予備造粒物にWA鉱石の篩上とRR鉱石の篩上と残りの焼結原料とを加え、5.1質量%の水分を追加してドラムミキサ(上記発明例と同じ造粒条件)で混合造粒し最終造粒物を作製した。
〔評価試験およびその結果〕
上記発明例、参考例および比較例1〜6の各最終造粒物について、造粒性指数GIを求めるとともに、焼結鍋試験装置を用いて冷間通気性指数JPUおよび焼成時間を測定する評価試験を実施した。
(造粒性指数)
造粒性指数GIは以下の方法により求めた。すなわち、採取した造粒物を雰囲気温度105℃に調整された乾燥器内に24h保持して十分に乾燥する。乾燥した造粒物を篩目0.25mmで篩い(乾式篩い)、篩上の質量割合(−0.25mmの質量%)Fdを求める。ついで、前記乾式篩い後のサンプル全量(篩上+篩下)を流水下で前記と同じ篩目0.25mmで篩い(湿式篩い)、篩上の質量割合(−0.25mmの質量%)Fwを求める。そして、GI(%)=(Fw−Fd)/Fw×100の式より、造粒性指数GIを算出した。
得られた結果を図2にまとめた。図2に示すように、高結晶水鉱石を配合した焼結原料を、従来のように高結晶水鉱石の予備造粒を行うことなくドラムミキサだけで一括造粒すると、高結晶水鉱石を配合しない場合(参考例)に比べて造粒性指数GIが大きく低下し、造粒性が大幅に悪化するのが認められる(比較例1)。そして、なんらかの高結晶水鉱石の予備造粒を行うことで、造粒性指数GIは、高結晶水鉱石無配合の焼結原料をドラムミキサで一括造粒したときのレベル(参考例)までは回復し、一定の造粒性改善効果が認められる(比較例2〜6)。これに対し、マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石の篩上とを選択的に組み合わせて予備造粒することで、造粒性指数GIは、高結晶水鉱石無配合の焼結原料をドラムミキサで一括造粒したときのレベル(参考例)を大きく超えて、造粒性が大幅に改善されるのが認められる(発明例)。
(冷間通気性指数)
最終造粒物を焼結鍋試験装置(大気吸引、吸引圧:3.53kPa)に充填し、着火直後の吸引風量16Nm/h一定の条件で冷間通気性指数JPUを測定した。測定結果を図3にまとめた。図3に示すように、高結晶水鉱石を配合した焼結原料を、従来のように高結晶水鉱石の予備造粒を行うことなくドラムミキサだけで一括造粒すると、高結晶水鉱石無配合の場合(参考例)に比べて冷間通気性指数JPUが大きく低下し、焼結ベッドの通気性が大幅に悪化するのが認められる(比較例1)。そして、なんらかの高結晶水鉱石の予備造粒を行うことで、冷間通気性指数JPUは、一括造粒した場合(比較例1)に比べ少し上昇し、通気性の改善効果が認められるものの、高結晶水鉱石無配合の場合のレベル(参考例)までは回復していないことが認められる(比較例2〜6)。これに対し、マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石の篩上とを選択的に組み合わせて予備造粒することで、冷間通気性指数JPUは、高結晶水鉱石無配合の焼結原料をドラムミキサで一括造粒したときのレベル(参考例)とほぼ同等のレベルまで回復し、通気性が大幅に改善されるのが認められる(発明例)。
(焼結時間)
つぎに、上記冷間通気性指数の測定で用いた焼結鍋試験装置により焼結鉱の製造実験を行い、焼成時間を測定した。測定結果を図4にまとめた。図4に示すように、高結晶水鉱石を配合した焼結原料を、従来のように高結晶水鉱石の予備造粒を行うことなくドラムミキサだけで一括造粒しても、高結晶水鉱石無配合の場合(参考例)と比べて焼成時間に大きな変化は認められない(比較例1)。そして、なんらかの高結晶水鉱石の予備造粒を行うことで、焼成時間が短縮されるのが認められる(比較例2〜6)。これに対し、マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石の篩上とを選択的に組み合わせて予備造粒することで、焼成時間は、さらに短縮されるのが認められる(発明例)。
以上のように、高結晶水鉱石を相当量配合しても、マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石の篩上とを選択的に組み合わせて予備造粒することで、造粒性が大幅に改善されるとともに、焼成時間が顕著に短縮することが確認できた。
なお、上記焼結鉱の製造実験で得られた焼結鉱の歩留については、なんらかの高結晶水鉱石の予備造粒(比較例2〜6)はもちろん、マラマンバ鉱石の篩下とピソライト鉱石の篩上との選択的な組み合わせによる予備造粒(発明例)によっても、明確な改善効果が認められなかった。この原因としては、比較例1〜6および発明例では高結晶水鉱石を相当量配合したにもかかわらず、焼結原料中のコークス粉配合量および最終造粒物の水分含有量を、参考例の高結晶水鉱石無配合の場合と同量としたことにより、熱量不足が生じたためと考えられる。したがって、高結晶水鉱石の配合量に応じてコークス粉配合量および最終造粒物の水分含有量を適正化することで、焼結鉱の歩留も改善可能と考えられる。
本発明の実施形態に係る焼結鉱製造工程全体の概略を示すフロー図である。 各種造粒法における造粒性指数GIを比較するためのグラフ図である。 各種造粒法における冷間通気性指数JPUを比較するためのグラフ図である。 各種造粒法における焼成時間を比較するためのグラフ図である。
符号の説明
1:第1篩
2:第2篩
3:高速攪拌混合機
4:予備造粒機(ディスクペレタイザ)
5:最終造粒機(ドラムミキサ)
6:焼結機
A:第1高結晶水鉱石(マラマンバ鉱石)
a:篩上、a’:篩下
B:第2高結晶水鉱石(ピソライト鉱石)
b:篩上、b’:篩下
C:焼結原料の残部
D:予備造粒物
E:最終造粒物

Claims (1)

  1. 焼結原料の一部として高結晶水鉱石を配合して焼結鉱を製造する方法であって、下記(1)〜(5)の工程を備え
    かつ、下記第1分級工程および下記第2分級工程の分級点がともに2〜5mmの範囲にある
    ことを特徴とする焼結鉱製造方法。
    (1)結晶水を4質量%(乾量基準、以下同じ。)以上含有し、0.25mm以下の微粉の割合が20質量%以上であるマラマンバ鉱石を篩上と篩下とに分級する第1分級工程
    (2)結晶水を4質量%以上含有し、0.7mm以上の粗粒の割合が50質量%以上であるピソライト鉱石を篩上と篩下とに分級する第2分級工程
    (3)前記マラマンバ鉱石の篩下と前記ピソライト鉱石の篩上とを高速攪拌混合機にて混合した後、予備造粒機で造粒して予備造粒物となす予備造粒工程
    (4)さらに、前記予備造粒物と前記マラマンバ鉱石の篩上と前記ピソライト鉱石の篩下とを焼結原料の残部とともに最終造粒機で造粒して最終造粒物となす最終造粒工程
    (5)その後、前記最終造粒物を焼結することにより焼結鉱を製造する焼結工程
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