JP4994425B2 - 分岐部を有する配管を備えたプラント及び沸騰水型原子力プラント - Google Patents

分岐部を有する配管を備えたプラント及び沸騰水型原子力プラント Download PDF

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Description

本発明は、分岐部を有する配管を備えたプラント及び沸騰水型原子力プラントに関する。
原子炉として沸騰水型原子炉(以下、BWRという)を有する沸騰水型原子力プラント(以下、BWRプラントという)では、発電容量を増大する際に、主蒸気流量の増大に伴って圧力変動が増大し、プラントの機器損傷に至る事例が報告されている。機器の損傷を避けるため、主蒸気系の流路形状の適正化及び構造強度の増大などの対策がとられている。このような事例及び対策が、G. Deboo, et al., “Quad cities unit 2 main steam line
acoustic source identification and load reduction”, ICONE14-89903 Proceedings of ICONE 14, (2006)に開示されている。
BWRプラントにおける主蒸気系(主蒸気配管等)での圧力変動の原因の一つとして、音響共鳴が考えられている。原子炉圧力容器の蒸気ドームから主蒸気配管を通って高圧タービンに至る主蒸気系では、主蒸気配管に設置されている主蒸気逃し安全弁などの分岐管において圧力波が発生し、主蒸気系内を伝播、反射する。これによって、大きな振幅を持つ定在波(音響共振モード)が形成され、圧力変動の振幅が増大する可能性がある。特に、発電容量を増大したBWRプラントでは、主蒸気流量の増大に伴って蒸気の圧力変動が大きくなるため、音響共鳴が生じやすくなる。
この音響共鳴を抑制する方法としては、例えば、特開2006−153869号公報には、ヘルムホルツ共鳴管を利用してBWRプラントの主蒸気系で発生する音響共鳴に伴う圧力変動を抑制する方法が開示されている。特開2008−14458号公報には、音響共鳴が発生すると考えられているキャビティに庇部材を設けることで、音響共鳴に伴う圧力変動を抑制する方法が開示されている。S. Ziada, et al., “Self-excited resonances of two side-branches in close proximity”, Journal of Fluids and Structures, 6, P583-601(1992)では、隣接する2本の分岐管の間で音響共鳴が発生した場合に、隣接する分岐管の長さに差をつけることで、音圧を抑制できることを開示している。
特開2006−153869号公報 特開2008−14458号公報
G. Deboo, et al., "Quad cities unit 2 main steam line acoustic source identification and load reduction", ICONE14-89903 Proceedings of ICONE 14, (2006) S. Ziada, et al., "Self-excited resonances of two side-branches in close proximity", Journal of Fluids and Structures, 6, P583-601(1992)
原子炉の主蒸気配管が引き回される原子炉格納容器内のスペースが限られていることから、発電容量増大時の音響共鳴の抑制方法としても、空間的な制約が小さく、コンパクトな手法が必要になる。
特開2006−153869号公報では、上記したように、主蒸気配管にヘルムホルツ管を設置することにより、ヘルムホルツ共鳴管が主蒸気系内の音響エネルギーを吸収して、効果的に音響共鳴モードを減衰させることができる。しかしながら、特開2006−153869号公報は、分岐管毎にヘルムホルツ管を設置する必要がある。BWRプラントにおいて、逃し安全弁は10ヶ所以上あることが多いため、原子炉格納容器を大きくする必要性が生じる。
特開2008−14458号公報も、分岐管毎に音響共鳴モードを減衰させる必要がある。この場合、配管の構造が複雑化する課題が生じる。
S. Ziada, et al., “Self-excited resonances of two side-branches in close proximity”, Journal of Fluids and Structures, 6, P583-601(1992)では、隣接する2本の分岐管の間で音響共鳴が発生した場合に、隣接する分岐管の長さに差をつけることで、音圧を抑制できることを開示している。しかしながら、分岐管が原子炉の主蒸気逃がし安全弁管台である場合、分岐管の下端には主蒸気逃がし安全弁が設置されていることから、場合によっては他の主蒸気配管と空間的に干渉する可能性がある。
本発明の目的は、音響共鳴に基づく圧力変動をさらに低減できる、分岐部を有する配管を備えたプラント及び沸騰水型原子力プラントを提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、分岐管に連絡される開口部が、 分岐管と内部に気体が流れる配管との接続部で配管に形成されており、
この開口部の、配管の軸方向における第1の差し渡し長さが、その開口部の、配管の中心軸に直交する方向で且つ分岐管の中心軸に直交する方向における第2の差し渡し長さよりも長くなっており、
第1の差し渡し長さが第2の差し渡し長さの10倍以下であることにある。
第1の差し渡し長さが第2の差し渡し長さよりも長くなっているので、分岐管と主配管の接続部において分岐管の上流側端部で発生したある渦が、その接続部での分岐管の下流側端部付近で分岐管の内面に衝突するまでの期間に発生する渦の発生周波数と、その下流側端部付近で分岐管の内面で発生した音波が、分岐管内を伝播し分岐管の上流側端部に到達するまでの期間における音波の周波数とのフィードバックループが、分岐管及び配管にまたがって形成されない。このため、分岐管で発生する音響共鳴による音を小さくすることができ、音響共鳴に基づく圧力変動をさらに低減できる。
本発明によれば、分岐管で発生する音響共鳴による音を小さくすることができ、音響共鳴に基づく圧力変動をさらに低減できる。
図2に示す主蒸気配管と分岐管の分岐部の拡大縦断面図である。 本発明の好適な一実施例である実施例1の分岐部を有する配管を備えたプラント(沸騰水型原子力プラント)の構成図である。 図2に示す主蒸気配管と分岐管の接続部で主蒸気配管に形成された開口部の拡大図である。 St数と二乗平均平方根(RMS)で表す圧力変動の関係を示す特性図である。 本発明の他の実施例である実施例2の分岐部を有する配管を備えたプラント(沸騰水型原子力プラント)において、主蒸気配管と分岐管の接続部で主蒸気配管に形成された開口部の拡大図である。 本発明の他の実施例である実施例3の分岐部を有する配管を備えたプラント(沸騰水型原子力プラント)における分岐部の拡大縦断面図である。
主蒸気逃し安全弁などの分岐管における音の発生メカニズムを、以下に説明する。弁の弁体により閉止される分岐管が主配管に設置されており、気体(例えば、空気または蒸気)が主配管内を流れている。分岐管と主配管の接続部において分岐管の上流側端部で、主配管内を流れる気体の流れが剥離し、渦が発生する。この渦は気体とともに下流に向って流れ、上記の接続部において分岐管の下流側端部付近で分岐管の内面に衝突する。この渦の分岐管内面への衝突により音波が発生する。音波は、分岐管内を伝播し、分岐管を封鎖している弁の弁体で反射される。反射された音波が、分岐管と主配管の接続部において分岐管の上流側端部に到達する。このため、反射されてこの接続部に到達した音波が、主配管から剥離した渦を強める働きをする。分岐管と主配管の接続部において分岐管の上流側端部で発生したある渦が、その接続部での分岐管の下流側端部付近で分岐管の内面に衝突するまでの期間に発生する渦の発生周波数と、その下流側端部付近で分岐管の内面で発生した音波が、分岐管内を伝播し分岐管の上流側端部に到達するまでの期間における音波の周波数とが近い値のときに、分岐管及び主配管内において、このような音波のフィードバックループが形成される。この渦と音波のフィードバックループの形成によって、音波の強度が数十〜数百倍に強められる。以上が分岐管の設置による音の発生メカニズムである。
分岐管で発生する音響共鳴に伴う圧力変動を低下させるためには、上記した渦と音波のフィードバックループが形成されないようにすればよい。分岐管の主配管への接続部である分岐部で発生する音響共鳴に伴う圧力変動は、ストローハル数(St)とよばれる無次元数で(1)式のように表される。
St=f×d/U ……(1)
ここで、dは分岐管との接続部で主配管に形成された開口部の、主配管の軸方向における差し渡し長さ(以下、第1の差し渡し長さという)、Lは分岐管の長さ(分岐管と主配管との接続部と、この分岐管に設けられた弁のうち、その接続部に最も近い弁の弁体との間の最短距離)、Uは主配管内の流体の流速、fは主配管と分岐配管の接続部で発生する音響共鳴に伴う圧力変動の周波数である。差し渡し長さとは、開口部での、開口部の対向する側面間の距離を示すもので、例えば、円の差し渡し長さは円の直径と等しくなる。
St数の値が0.3から0.6の範囲内にあるとき、前述した渦と音のフィードバックループが分岐管内等に形成されることにより、音響共鳴が発生することが知られている。特に、St数が0.4前後で強い音響共鳴が発生する。音響共鳴を回避する対策としては、St数を0.3よりも小さくする方法、及びSt数を0.6よりも大きくして渦と音のフィードバックループの形成を回避する方法がある。プラントの定格運転時のSt数を0.3よりも小さくした場合、その定格運転時での音響共鳴は回避できる。
しかしながら、プラントの起動時における主配管内の気体の流速はプラントの定格運転時におけるその気体の流速よりも遅いため、起動時のSt数は約0.3から約0.6の範囲内になる可能性がある。したがって、実質的な音響共鳴を回避する対策としては、定格運転時のSt数を0.6よりも大きくすることになるので、(1)式に基づけば、第1の差し渡し長さを、大きくすることになる。主配管に接続される従来の分岐管は、ほとんどが、横断面が円形をしている。横断面が円形をしている分岐管を設けた場合における第1の差し渡し長さを大きくするためには、横断面が円のまま、分岐管の内径を大きくすることになる。分岐管の内径は、主配管の外径との関係で制約があり、むやみに大きくできなく、音響共鳴の回避にも限界がある。
発明者らは、このような課題の解決策を鋭意検討した結果、分岐管との接続部で主配管に形成された開口部の、主配管の中心軸に直交する方向で且つ分岐管の中心軸に直交する方向における差し渡し長さ(以下、第2の差し渡し長さという)が、St数に影響を与えていないことに気がついた。この新たな知見に基づいて、発明者らは、第1の差し渡し長さと第2の差し渡し長さとを違う長さにすれば、音響共鳴を回避できることを見出した。特に、第2の差し渡し長さは、主配管の内径によって制約を受けるため、第1の差し渡し長さを第2の差し渡し長さよりも長くすることが望ましい。音響共鳴を回避するために、St数が0.6よりも大きくなるように第1の差し渡し長さを決定し、第2の差し渡し長さを第1の差し渡し長さよりも短くすれば、空間的にもコンパクトな体系で積極的に音響共鳴による音を抑制できることを、発明者らが初めて見出した。
以上の検討結果を考慮して得られた、本発明の実施例を以下に説明する。
本発明の好適な一実施例である分岐部を有する配管を備えたプラントを、図1、図2及び図3を用いて以下に説明する。本実施例の分岐部を有する配管を備えたプラントは、BWRプラント1である。BWRプラント1は、原子炉2、主蒸気配管10、タービン12、復水器(図示せず)及び給水配管を備えている。
原子炉2は、原子炉圧力容器(以下、RPVという)3、及びRPV3内に配置された炉心を有する。炉心には、多数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。取り外し可能な蓋4がRPV3に取り付けられている。RPV3内には、炉心の上方に気水分離器(図示せず)が設置され、気水分離器の上方に波板6を有する蒸気乾燥器5が設置される。主蒸気配管10は、RPV3に形成されたノズル9に接続され、蒸気乾燥器5よりも上方でRPV3内に形成される蒸気ドーム7に連絡される。タービン12が主蒸気配管10に接続される。分岐管15が主蒸気配管10に接続され、蒸気逃し安全弁13が分岐管15に設置される。分岐管15は、図示されていないが、原子炉2を取り囲んでいる原子炉格納容器内に設けられた圧力抑制室内まで伸びており、その先端部が圧力抑制室内のプール水に浸漬されている。
再循環ポンプ(図示せず)の駆動によってRPV3内の冷却水が昇圧されてRPV3内に設置されたジェットポンプ(図示せず)のノズルから噴出される。この噴出された冷却水流によって、ノズルの周囲に存在する冷却水が、ジェットポンプ内に吸引されてジェットポンプから吐出される。吐出された冷却水は、炉心に供給される。冷却水は、炉心を上昇する間に、燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気16になる。蒸気16に含まれている水分が、気水分離器及び蒸気乾燥器5で除去される。水分が除去された蒸気16は、主蒸気配管10を通ってタービン12に導かれ、タービン12を回転させる。タービン12に連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。タービン12から排出された蒸気16は、復水器(図示せず)で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水ポンプ(図示せず)で昇圧され、給水配管(図示せず)を通ってRPV3内に供給される。BWRプラントの原子炉2は蒸気発生装置である。蒸気乾燥器5で分離された水分は、ドレン管8を通って蒸気乾燥器5よりも下方で気水分離器の相互間に形成された領域に排出される。
万が一、RPV3内の圧力が設定値よりも高くなったとき、蒸気逃し安全弁13が自動的に開く。すなわち、蒸気逃し安全弁13の弁体17が押し上げられる。RPV3内の蒸気16は、主蒸気配管10及び蒸気逃し安全弁13を通り、分岐管15を経て圧力抑制室内のプール水中に放出され、凝縮される。これにより、RPV3内の圧力が設定値以下に抑えられ、原子炉2の安全性が確保される。
主蒸気配管10と分岐管15との接続部において、主蒸気配管10に開口部18が形成される(図1参照)。分岐管15は開口部18を介して主蒸気配管10に連絡される。本実施例において、主蒸気配管10に形成された開口部18は、真上から見た形状が図3に示すようになっている。すなわち、開口部18は、主蒸気配管10の軸方向において対向すされている、半円の2つの円弧21を有し、これらの円弧21のそれぞれの両端同士を2本の直線で結んで形成される側面を有している。これらの直線は主蒸気配管10の軸方向において互いに平行になっている。分岐管15との接続部で主蒸気配管10形成された開口部18の、主蒸気配管10の軸方向における差し渡し長さ、すなわち、第1の差し渡し長さ19は、開口部18の、主蒸気配管10の中心軸に直交する方向で且つ分岐管15の中心軸に直交する方向における差し渡し長さ、すなわち、第2の差し渡し長さ20よりも長くなっている。このため、(1)式によりSt数の値が大きくなり、St数が0.6よりも大きくなる。St数が0.6よりも大きくなったとき、前述したように、渦の発生周波数と音の周波数にずれが生じるため、分岐管15及び主蒸気配管10内に渦と音(音波)のフィードバックループが形成されない。すなわち、強い音の発生を抑制することができる。
第1の差し渡し長さ19が第2の差し渡し長さ20よりも長くなっている本実施例では、主蒸気配管10に接続された分岐管15は、主蒸気配管10と蒸気逃し安全弁13の間で以下の構成を有する。分岐管15は、主蒸気配管10から蒸気逃し安全弁13に向って、3つの領域、すなわち、拡大流路部23、流路縮小部24及び円管部25を有する(図1参照)。拡大流路部23は、流路断面積が開口部18を真上から見たときの開口部18の面積と同じであり、開口部10の位置で主蒸気配管10の外面に取り付けられる。拡大流路部23の内面が、開口部18の上記した形状と同じ形状を有している。円管部25が蒸気逃し安全弁13に取り付けられる。流路縮小部24は、拡大流路部23と円管部25に接続されている。流路縮小部24の流路断面積は、拡大流路部23の流路断面積から、この流路断面積よりも小さい円管部25の流路断面積になるように、徐々に減少している。
仮に、第2の差し渡し長さ20が第1の差し渡し長さ19と等しい場合、分岐管の外径が大きくなり、場合によっては分岐管の外径が主蒸気配管10の外径よりも大きくなる。このように分岐管の外径が主蒸気配管10の外径よりも大きい場合には、分岐部の形状が複雑になり、実機に適用することが困難になる。
本実施例において、分岐管15が主蒸気配管10に設置されている部分、すなわち、分岐部11における圧力変動の強さである二乗平均平方根(RMS)のSt数に対する変化を、図4に示す。St数の値が約0.3から約0.6の範囲内で、前述した渦と音のフィードバックループが形成され、音響共鳴が発生することが知られている。特に、St数が0.4前後になったときに、音響共鳴が大きくなることが知られている。St数を小さくするためには、(1)式から蒸気の流速を大きくするか、第1の差し渡し長さ19を小さくすればよい。また、St数を大きくするためには、蒸気の流速を小さくするか、第1の差し渡し長さ19を大きくすればよい。
音響共鳴を回避する対策としては、St数を小さくする方法と大きくする方法がある。BWRプラント1の定格出力運転時のSt数を0.3よりも小さくした場合、その定格出力運転時の音響共鳴は回避できる。しかしながら、BWRプラント1の起動時における主蒸気配管10内での蒸気の流速は定格出力運転時におけるその蒸気の流速よりも遅いため、起動時のSt数は約0.3から約0.6の範囲内の値になる可能性がある。したがって、実質的な音響共鳴を回避する対策としては、定格出力運転時でのSt数を0.6よりも大きくすることになる。このため、主蒸気配管10内の蒸気の流速を小さくするか、第1の差し渡し長さ19を大きくする必要がある。しかしながら、主蒸気配管10の内径を変えない限り、原子炉出力が一定であれば蒸気の流速はほぼ一定であるので、実質的な音響共鳴対策は、前述したように、第1の差し渡し長さ19を第2の差し渡し長さ20よりも大きくすることになる。ただし、第1の差し渡し長さ19は第2の差し渡し長さ20の10倍以下にすることが望ましい。
特開2006−153869号公報に記載されたBWRプラントは、主蒸気配管に接続された分岐管にヘルムホルツ共鳴管を設けることによって、音響共鳴を回避している。しかしながら、BWRプラント1の主蒸気配管10には、10本程度の分岐管が接続されている。音響共鳴を回避するためには、これらすべての分岐管にそれぞれヘルムホルツ共鳴管を設置する必要がある。しかし、このようなヘルムホルツ共鳴管の設置は原子炉格納容器を大きくすることになる。
本実施例では、主蒸気配管10と分岐管15との接続部で主蒸気配管10に形成された開口部18が、第1の差し渡し長さ19を第2の差し渡し長さ20よりも長くすることにより、音響共鳴を抑制することができ、音響共鳴に基づく圧力変動をさらに低減することができる。さらに、第1の差し渡し長さ19を第2の差し渡し長さ20よりも長くしているので、原子炉格納容器を大きくする必要がない。
特開2008−14458号公報に記載されたキャビティに庇部材を設けたBWRプラントは、複数の分岐管に庇部材を設置する必要があり、構造が複雑化する。第1の差し渡し長さ19を第2の差し渡し長さ20よりも長くする本実施例では、BWRプラント1の構成が、ヘルムホルツ共鳴管を設置する特開2006−153869号公報及び庇部材を設置する特開2008−14458号公報にそれぞれ記載されたBWRプラントよりも単純化される。
本実施例は、第1の差し渡し長さ19を第2の差し渡し長さ20よりも長くしているので、原子炉格納容器の拡大を抑えつつ、音響共鳴に基づく圧力変動をさらに低減することができる。これにより、分岐部11での音響共鳴の発生を抑制して主蒸気配管10内を流れる蒸気16の圧力変動を低減することができる。このため、BWRプラント1の出力向上を容易に達成することができる。BWRプラント1の出力向上は、炉心流量を増加させて原子炉出力を定格出力(100%出力)よりも増大させるものである。この出力向上においてはタービン12に供給される蒸気の流量が増大される。本実施例は、第1の差し渡し長さ19を第2の差し渡し長さ20よりも長くして分岐部11での音響共鳴の発生を抑制でき、主蒸気配管10内を流れる蒸気16の圧力変動を低減できる。このため、本実施例は、タービン12に供給する蒸気16の流量を容易に増加させることができ、BWRプラントの出力向上を容易に達成できるのである。
本発明の他の実施例である分岐部を有する配管を備えたプラントを、図5を用いて以下に説明する。本実施例の分岐部を有する配管を備えたプラントは、BWRプラント1Aである。BWRプラント1Aは、実施例1のBWRプラント1において主蒸気配管10に形成した開口部18を開口部18Aに替えた構成を有する。BWRプラント1Aの他の構成はBWRプラント1と同じである。
本実施例における主蒸気配管10と分岐管15の接続部において、開口部18Aが形成される(図5参照)。分岐管15は開口部18Aを介して主蒸気配管10に連絡される。本実施例において、主蒸気配管10に形成された開口部18Aは、真上から見た形状が図5に示すように楕円形状になっている。開口部18Aにおいても、第1の差し渡し長さ19Aが第2の差し渡し長さ20Aよりも長くなっている。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
本発明の他の実施例である分岐部を有する配管を備えたプラントを、図6を用いて以下に説明する。本実施例の分岐部を有する配管を備えたプラントは、BWRプラント1Bである。BWRプラント1Bは、実施例1のBWRプラント1において分岐管15を分岐管15Aに替えた構成を有する。BWRプラント1Bの他の構成はBWRプラント1と同じである。
分岐管15Aとの接続部で主蒸気配管10に形成される開口部18は、実施例1において主蒸気配管10に形成される開口部18と同じ形状を有している。分岐管15Aは、蒸気逃し安全弁13に接続された端部の横断面が円形であり、主蒸気配管10に接続された他の端部が開口部18を取り囲んでいる。分岐管15Aの、蒸気逃し安全弁13に接続された端部の内面は、横断面が円形であり、主蒸気配管10に接続された他の端部の内面が、開口部18の上記した形状(図3参照)と同じ形状を有している。
本実施例においても、第1の差し渡し長さ19が、実施例1と同様に、第2の差し渡し長さ20よりも長くなっている。このため、(1)式によりSt数の値が大きくなり、St数が0.6よりも大きくなる。St数が0.6よりも大きくなったとき、実施例1で述べたように、渦の発生周波数と音の周波数にずれが生じ、分岐管15及び主蒸気配管10内に渦と音(音波)のフィードバックループが形成されない。すなわち、本実施例は、強い音の発生を抑制することができる。
本実施例も、実施例1で生じる各効果を得ることができる。
以上に述べた各実施例は、蒸気発生器(蒸気発生装置)とタービンを連絡する蒸気配管を有する加圧水型原子力プラント、及びボイラ(蒸気発生装置)とタービンを連絡する蒸気配管を有する火力プラント等の分岐部を有して気体(蒸気及び空気等)が流れる配管を備えたプラントに適用することができる。また、蒸気発生装置に連絡される蒸気配管を有する暖房システムにも、上記した各実施例を適用することができる。
本発明は、蒸気配管を有する原子力プラント及び火力プラント等のプラントに適用することができる。
1,1A,1B…沸騰水型原子力プラント、2…原子炉、3…原子炉圧力容器、10…主蒸気配管、15,15A…分岐管、13…主蒸気逃し安全弁、11…分岐部、18,18A…開口部。

Claims (7)

  1. 分岐管が接続されて内部に気体が流れる配管を備え、
    前記分岐管に連絡される開口部が、前記分岐管と前記配管との接続部で前記配管に形成されており、
    前記開口部の、前記配管の軸方向における第1の差し渡し長さが、前記開口部の、前記配管の中心軸に直交する方向で且つ前記分岐管の中心軸に直交する方向における第2の差し渡し長さよりも長くなっており、
    前記第1の差し渡し長さが前記第2の差し渡し長さの10倍以下であることを特徴とする分岐部を有する配管を備えたプラント。
  2. 前記分岐管が弁を設けており、
    前記配管と前記弁との間で前記分岐管の少なくとも一部において、前記分岐管の流路断面積が前記配管から前記弁に向って減少している請求項1に記載の分岐部を有する配管を備えたプラント。
  3. 前記配管が蒸気発生装置に接続される蒸気配管である請求項1または2に記載の分岐部を有する配管を備えたプラント。
  4. 前記プラントが原子力プラント及び火力プラントのいずれかである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分岐部を有する配管を備えたプラント。
  5. 前記分岐管に弁が設けられている請求項1,3及び4のいずれか1項に記載の分岐部を有する配管を備えたプラント。
  6. 原子炉と、前記原子炉に接続されて前記原子炉で発生した蒸気を導き、分岐管が接続されている蒸気配管とを備え、
    前記分岐管に連絡される開口部が、前記分岐管と前記蒸気配管との接続部で前記蒸気配管に形成されており、
    前記開口部の、前記蒸気配管の軸方向における第1の差し渡し長さが、前記開口部の、前記蒸気配管の中心軸に直交する方向で且つ前記分岐管の中心軸に直交する方向における第2の差し渡し長さよりも長くなっており、
    前記第1の差し渡し長さが前記第2の差し渡し長さの10倍以下であることを特徴とする分岐部を有する配管を備えた沸騰水型原子力プラント。
  7. 前記分岐管に蒸気逃し安全弁が設けられている請求項6に記載の沸騰水型原子力プラント。
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