JP4992339B2 - 炭素繊維織物および繊維強化プラスチックの製造方法 - Google Patents

炭素繊維織物および繊維強化プラスチックの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は炭素繊維織物の製造方法および繊維強化プラスチックの製造方法に関するものである。より詳しくは、炭素繊維織物の組織崩れ(織糸の目曲がり)、裁断時の解れを抑えることができ、目隙を抑えた織組織の形態保持に有効で、かつ、繊維強化プラスチックに成形した時に外観品位(特に表面平滑性)に優れる目どめ処理を施された炭素繊維織物の製造方法および繊維強化プラスチックの製造方法に関するものである。
従来より、炭素繊維などの強化繊維は、比強度、比弾性率が高いことから、繊維強化プラスチック(以下FRPということがある。)として軽量化効果の大きいスポーツ・レジャー用品をはじめ、航空機用途や一般産業用に多く使われている。かかるFRPの成形方法としては、ハンドレイアップ成形をはじめとしてオートクレーブ成形、RTM成形など種々の方法でがあり、成形品の形状、個数、要求される特性などにより適宜選ばれている。これら成形法では、強化繊維は中間基材として織物の形態にしたものが多用されている。かかる織物においては、取り扱う際に変形したり織糸がずれる目ズレの問題や、織物を裁断した際に織糸が解れ易いという問題があった。
かかる問題に対し、強化繊維と熱可塑性繊維とを織り込んで加熱したり、織物に粒子を塗布したりして、熱可塑性繊維や粒子でたて糸とよこ糸との交錯点を目どめし、解れ抑制機能や形態安定機能を与える提案がなされている(例えば、特許文献1、2など参照)。
これらの提案では、ガイドロールを経た後に加熱し、さらに押圧ロールを通過して巻き取られる旨の記載がある。しかしながら、織成した織物が複数のロールを通過した後に加熱するため、織物が、既に組織崩れ(織糸の目曲がり)が発生している場合があり、織糸が真直に配列した織物が得られない問題があった。かかる現象は、特に強化繊維をたて糸とし、強化繊維よりも細繊度の補助繊維をよこ糸とした、一方向性織物において顕著に発現する。
また、目どめ剤として、比較的寸法の大きい熱可塑性繊維や粒子の形態を有するものを用い、かつ、目どめ剤とマトリックス樹脂との相溶性が考慮されていなかったため、得られたFRPにおいて、目どめ剤がマトリックス樹脂中で目視できる寸法のドメインを形成してしまい(目どめ剤とマトリックス樹脂とが非相溶)、FRPの外観品位、特に表面平滑性に劣るという問題があった。さらには、得られたFRPを高温環境下で使用すると、FRP表面に形成された目どめ剤のドメインから、目どめ剤自体がブリード(溶出)してしまう問題もあった。
これに対して、目どめ剤として樹脂エマルジョンなどを用いる提案がなされている(例えば、特許文献3、4など参照)。しかしながら、特許文献3では織成した後の織物に樹脂エマルジョンを付与しているため、織物自体が硬くなってしまい、ドレープ性に劣り取り扱い難くなってしまうだけでなく、付与される目どめ剤が不必要に多くなり過ぎる問題があった。また、特許文献4では織糸に予め付与して織糸を開繊した状態で固定して織成しているため、予め織糸に付与・開繊する余分な工程が増え、同様に目どめ剤が不必要に多くなり過ぎる問題があった。
一方、炭素繊維織物の製造方法においては、製織時に炭素繊維から発生する毛羽を抑制するために、液体をたて糸やよこ糸に付与する提案がなされている(例えば、特許文献5、6など参照)。これらの提案では、水または糊剤(ポリエチレングリコールと水とメタノール)を付与することにより、毛羽を抑制できる旨の記載がある。しかしながら、かかる提案は毛羽抑制を作用効果としており、織組織の形態保持するための目どめや、優れた外観品位を有するFRPを得るために必要な目どめ材の形態や、目どめ剤とマトリックス樹脂との相溶性に関する記載は一切見られない。また、特許文献5は、緯糸を再度集束させるが、炭素繊維織物においては、集束させることは織物のクリンプを大きくすることを意味し、炭素繊維本来の優れた強度・弾性率を発現することを阻害するだけでなく、織物の目開き(目隙)が大きくなり、得られるFRPの外観品位に劣るという問題もあった。
すなわち、以上に提案された技術では、織組織の形態保持に有効で、かつ、強化繊維織物の組織崩れ(織糸の目曲がり)や裁断時の解れを完全に抑えた織物の製造方法は得られていなかったのである。つまり、従来技術により得られた強化繊維織物は、炭素繊維が配列がずれ易いるので、FRPにおいて本来の力学的特性が発揮できないばかりか、得られたFRPの外観品位、特に表面平滑性に劣っていたのである。
特開昭63−152637号公報(図11) 特開2004−256930号公報(図1) 特開平08−158207号公報(図1) 特開2001−226850号公報(図1) 特開平05−005252号公報(図1) 特開2002−115145号公報(図1)
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、炭素繊維織物の組織崩れ(織糸の目曲がり)、裁断時の解れを抑えることができて、目隙を抑えた織組織の形態保持に有効で、かつ、繊維強化プラスチックに成形した時に外観品位(特に表面平滑性)に優れる目どめ処理を施された炭素繊維織物の製造方法および繊維強化プラスチックの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
(1)たて糸またはよこ糸の少なくとも一方が炭素繊維糸条からなり、織組織の形態を保持する目どめ処理が施された炭素繊維織物の製造方法であって、次の(A)〜(E)の工程を経ることを特徴とする炭素繊維織物の製造方法。
(A)たて糸を、織機に導く引出工程
(B)よこ糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らす付着工程
(C)少なくとも部分的に濡れたよこ糸を、たて糸と交錯させて織物を織成する織成工程
(D)織成した織物を加熱して乾燥させることにより、よこ糸に含まれる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液を乾燥し、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂でたて糸とよこ糸とを目止めする乾燥工程
(E)織物を巻き取って巻物にする巻取工程
(2)前記(D)の乾燥工程と(E)の巻取工程との間において、次の(F)の工程を経る、前記(1)に記載の炭素繊維織物の製造方法。
(F)加熱乾燥した織物を、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂の融点未満に冷却する冷却工程
(3)前記(A)の引出工程と(C)の織成工程との間において、次の(G)の工程を経る、前記(1)または(2)に記載の炭素繊維織物の製造方法。
(G)たて糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らす第二付着工程
(4)前記(C)の織成工程において、よこ糸を横取りして解舒撚を混入させずに杼口に打ち込む、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
(5)前記(C)の織成工程において、少なくとも部分的に濡らされた後のよこ糸の糸幅保持率が70%以上である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
(6)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂が、後述(D)の乾燥工程後の炭素繊維織物において常温(25℃)で固体のものである、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
(7)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂が、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
(8)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルホルマール、ポリエーテルスルフォンから選ばれる少なくとも1種である、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
(9)炭素繊維織物が、扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条をたて糸とし、該炭素繊維糸条よりも細繊度である補助繊維糸条をよこ糸とする一方向性織物である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
(10)前記一方向性織物のよこ糸である補助繊維糸条の融点が300℃以下である、前記(9)に記載の炭素繊維織物の製造方法。
(11)炭素繊維織物が、扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条をたて糸およびよこ糸とする二方向性織物であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
(12)前記(1)〜(11)のいずれかに記載の製造方法により得られる炭素繊維織物と、マトリックス樹脂とで構成される繊維強化プラスチックの製造方法であって、繊維強化プラスチックにおいて、炭素繊維織物に含まれる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂をマトリックス樹脂に相溶させることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
本発明は、よこ糸を、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らして、織成後に溶媒または分散媒を乾燥させているので、強化繊維織物の組織崩れ、裁断時の解れを抑えて織組織の形態保持に有効な目どめ処理を施すことができる。
かかる製造方法で得られた炭素繊維織物は、炭素繊維が配列がずれないので、FRPに成形した場合に本来の力学的特性を発現できる。また、マトリックス樹脂と相溶性のある、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂で目どめしているので、優れた外観品位を有するFRPを得ることができる。本効果は、二方向性織物において最大限に発揮される。
本発明の炭素繊維織物の製造方法は、たて糸またはよこ糸の少なくとも一方が炭素繊維糸条であり、織組織の形態を保持する目どめ処理を施された炭素繊維織物の製造方法であって、次の(A)〜(E)の工程を経る。好ましくは、下記(D)の加熱乾燥工程と(E)の巻取工程との間に、次の(F)の工程を経ることができる。さらに好ましくは、下記(A)の引出工程と(C)の織成工程との間に、次の(G)の工程を経ることができる。以下に、各工程について順に説明する。
(A)たて糸を、織機に導く引出工程。
(B)よこ糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らす付着工程。
(G)たて糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らす第二付着工程。
(C)少なくとも部分的に濡れたよこ糸を、たて糸と交錯させて織物を織成する織成工程。
(D)織成した織物を加熱して乾燥させることにより、よこ糸に含まれる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液を乾燥し、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂でたて糸とよこ糸とを目止めする乾燥工程。
(F)加熱乾燥した織物を、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である樹脂の融点未満に冷却する冷却工程。
(E)織物を巻き取って巻物にする巻取工程。
(A)引出工程
本工程は、たて糸を織機に導く工程である。たて糸に炭素繊維糸条を用いる場合は、炭素繊維糸条を各ボビンから解舒して引き揃えて、直接織機に導いて製織することが好ましい。一旦、各ボビンの炭素繊維糸条を整経または部分整経してから(ビーミングしてから)シート状のたて糸群を引き揃えて織機に導くと、特に、繊度が350〜3,500texである太繊度の炭素繊維糸条を用いた場合、各炭素繊維糸条での厚みムラが発生し易いため糸条間に糸長の差が生じる場合が多い。上記問題は、整経または部分整経を行わずに、各ボビンから炭素繊維糸条をそれぞれ引き揃えて直接織機に導き製織することによって解消される。
また、本工程において、たて糸を横取りして解舒撚を混入させずに織機に導くのが好ましい。前記の通り、たて糸である炭素繊維糸条を無撚で導くことにより、例えば扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条を用いた場合でも、開口率が5%未満の炭素繊維織物を容易に得ることができる。なお、本発明における扁平率とは、炭素繊維糸条を平面で見た際の糸条厚と糸条幅との除の百分率にて表される。実際の測定では、用いる炭素繊維糸条を1m毎に均等間隔に5箇所取り出し、取り出したものの糸条厚をダイヤルゲージで、糸条幅をノギスでそれぞれ読みとり算出する(n=5の平均値)。また、本発明における開口率とは、炭素繊維織物を平面で見た際の炭素繊維糸条が存在しない空隙部の面積と検査面積との除の百分率にて表される。実際の測定では、15cm×15cmの正方形(検査面積225cm)を幅方向に均等間隔に5枚切り取り、切り取ったものの空隙部の面積を光学顕微鏡でそれぞれ読みとり算出する(n=5の平均値)。
(B)付着工程
本工程は、よこ糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液(ソリューション:溶媒中に溶質が溶けあっている液体)、乳濁液(エマルジョン:液体である分散質が分散媒中に分散している液体)または懸濁液(サスペンジョン:固体である分散質が分散媒中に分散している液体)で少なくとも部分的に濡らす工程である。本工程により、かかる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂を付与し、後述の(C)の織成工程にてよこ糸が濡れた状態でたて糸と交錯して、後述の(D)の乾燥工程にて目どめすることができる。本工程により、目どめに必要な箇所に必要最小限の量の目どめ樹脂を付着できため、目隙を抑えた織組織の形態保持することができるのである。また、かかる炭素繊維織物は、マトリックス樹脂と相溶性のある目どめ樹脂を、その形態の制限を受けずに選択できるので、優れた外観品位を有するFRPを安価に得ることができる。
ここで、付与する際に繊維状や粒子状の固形の目どめ樹脂であると、目どめ樹脂の選択に制限があるだけでなく、目どめ剤がマトリックス樹脂中で目視できる寸法のドメインを形成してしまう。また、織成した後に付与・固定したものであると、織物自体が硬くなってしまい、ドレープ性に劣り取り扱い難くなってしまうだけでなく、付与される目どめ樹脂が不必要に多くなり過ぎる。さらに、織成する前に事前に付与・固定しておいた織糸を織成して、改めて目どめするものであると、余分な工程が増えるだけでなく、同様に目どめ樹脂が不必要に多くなり過ぎる。かかる従来の技術では、この本発明の効果は発現しないのである。
本工程において、よこ糸を少なくとも部分的に濡らす手段が、(b1)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で濡らされているロールに接触させるコンタクトロール手段、(b2)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で濡らされている液体を保持できる多孔質体に接触させる多孔質体接触手段、(b3)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液を滴下する滴下手段、(b4)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液をスプレーするスプレー手段、(b5)前記(b1)〜(b4)の組み合わせ、のいずれかであるのが好ましい。
前記(b1)のコンタクトロール手段の場合、簡易な装置で樹脂溶液、乳濁液または懸濁液である液体を定量供給することができる。また、本手段であると、よこ糸の動きによりコンタクトロールが回転するようにしておくと、よこ糸の間欠的な動きに追従するために特別な装置が必要とならない利点もある。特に扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条を用いる場合や、よこ糸を横取りして打ち込む場合には、炭素繊維糸条を狭めることがなく、特に好ましい手段ということができる。
前記(b2)の多孔質体接触手段の場合、簡易な装置で樹脂溶液、乳濁液または懸濁液である液体を定量供給することができる。特に多孔質体が柔軟なものであると、よこ糸の糸道の僅かな変化にも追従することができるため好ましい。かかる柔軟な多孔質体としては、例えば、耐擦過性に優れる材質(例えばポリアミドやポリアセタールなど)のスポンジ、ネット、などを挙げることができる。また、本手段であると、よこ糸の間欠的な動きに追従するために特別な装置が必要とならない利点もある。よこ糸にまんべんなく付着させるという観点からは、特に好ましい手段ということができる。
前記(b3)の滴下手段の場合、ロードセルやメタリングポンプなどの液体の定量供給手段を併用することにより、簡易な装置で液体を定量供給することができる。かかる定量供給手段に、よこ糸を打ち込む織機からの信号を入力することにより、よこ糸の間欠的な運動にも追従することができる。よこ糸の所定の箇所に付着させるという観点からは、特に好ましい手段ということができる。
前記(b4)のスプレー手段の場合、ロードセルやメタリングポンプなどの液体の定量供給手段を併用することにより、よこ糸に付与する目どめ樹脂の付着量を正確に制御することができる。かかる定量供給手段に、よこ糸を打ち込む織機からの信号を入力することにより、よこ糸の間欠的な運動にも追従することができる。本手段によると、よこ糸に接触することがないため、特に扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条を用いる場合や、よこ糸を横取りして打ち込む場合には、炭素繊維糸条を狭めることがなく、特に好ましい手段ということができる。
かかる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、後述のマトリックス樹脂との相溶性などの各目的により適宜選択されるものである。かかる目どめ樹脂は、後述(D)の乾燥工程後の炭素繊維織物において常温(25℃)で固体のものであるのが好ましい。常温固体のものであると、目どめ効果を高く発現することができる。常温液体のものであると、液状であるためたて糸とよこ糸との交錯点においてそれぞれが運動する外力が働いた場合、その外力に対する抵抗力が発現し難い。また、目どめ樹脂は溶媒に溶解または分散媒に分散している状態で常温固体であるのが更に好ましい。この場合、樹脂溶液または懸濁液を用いるのが好ましい。
熱硬化性樹脂の目どめ樹脂としては、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、ベンゾオキサジン、アクリル、酢酸ビニルから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。かかる熱硬化性樹脂であると、後述のマトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合に優れた相溶性を発現し、FRPに成形した時に外観品位、特に表面平滑性に優れたものを得ることができる。
熱可塑性樹脂の目どめ樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルホルマール、ポリエーテルスルフォンから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。特にポリアミド、ポリエステルであると、乳化剤を用いずに水を溶媒または分散媒とすることができるため好ましい(他の樹脂では乳化剤が必要となる場合が多い)。但し、後述のマトリックス樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合には、上記の熱硬化性樹脂を目どめ樹脂とした場合よりも外観品位に劣る場合が多いため、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合に好ましいといえる。
(G)第二付着工程
本工程は、たて糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らす工程である。本工程により、後述の(C)織成工程にてよこ糸およびたて糸がいずれも濡れた状態で交錯して、後述の(D)の乾燥工程にて目どめすることにより、より一層目どめ効果を高く発現することができる。また、前記(B)の付着工程と同様に本工程でも、目どめに必要な箇所に必要最小限の量の目どめ樹脂を付着できため、目隙を抑えた織組織の形態保持することができる。
用いる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂は、前記(B)の付着工程と同じものを用いるのが好ましい。樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の濃度は適宜よこ糸と異なる濃度のものを使用することができる。よこ糸よりもボビン交換頻度の低いたて糸に関しては、糸道の汚れを最小限にするのが好ましく、かかる観点から、よこ糸を部分的に濡らする樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の濃度よりも、たて糸を部分的に濡らすものの方が低いのが好ましい。
また、たて糸を少なくとも部分的に濡らす手段は、前記(B)の付着工程と同じ手段をとることができる。具体的には、(g1)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で濡らされているロールに接触させるコンタクトロール手段、(g2)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で濡らされている液体を保持できる多孔質体に接触させる多孔質体接触手段、(g3)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液を滴下する滴下手段、(g4)樹脂溶液、乳濁液または懸濁液をスプレーするスプレー手段、(g5)前記(g1)〜(g4)の組み合わせ、のいずれかであるのが好ましい。特に、多数本が引き揃えて導かれるたて糸に適用する場合は、前記(g1)のコンタクトロール手段が好ましい。
(C)織成工程
本工程は、少なくとも部分的に濡れたよこ糸を、たて糸と交錯させて織物を織成する工程である。好ましくは、たて糸も少なくとも部分的に濡れているものを用いる。よこ糸とたて糸との交錯には織機(例えば、シャトル織機、レピア織機、ニードル織機、ウォータージェット織機、エアジェット織機など)を用いる。
交錯させる組織としては、平織、綾織、繻子織、それらの組み合わせまたは変化組織などが挙げられる。織組織がルーズで目どめの効果が最大限に発現される綾織、繻子織、それらの組み合わせまたは変化組織であるのが好ましい。織物形態としては、炭素繊維糸条をたて糸とし炭素繊維糸条よりも細繊度である補助繊維糸条をよこ糸とする一方向性織物、炭素繊維糸条をたて糸およびよこ糸とする二方向性織物または多方向性織物、さらに織物厚み方向(Z方向)に炭素繊維糸条または補助繊維糸条を配列した三次元織物などを製織することができる。中でも、扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条をたて糸とし、炭素繊維糸条よりも細繊度である補助繊維糸条をよこ糸とする一方向性織物、または、扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条をたて糸およびよこ糸とする二方向性織物であるのが好ましい。かかる扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条を用いることにより、織物の交錯点におけるクリンプを最小限にすることができ、力学特性(引張や圧縮)に優れるFRPを得ることができる。
特に、一方向性織物の場合、よこ糸である補助繊維糸条の融点が100〜300℃の範囲内であると、比較的低温で目どめできるため、本発明の効果が最大限に発現される。つまり、本発明においては、溶媒または分散媒である水を乾燥させるだけでよいため、高温で目どめ処理する必要がない。この効果により高温の目どめ処理において補助繊維糸条が熱収縮して織物の幅方向の寸法安定性を損なうことを最小限に抑制することができるのである。より好ましい融点は120〜260℃、さらに好ましくは140〜230℃の範囲内である。なお、本発明における融点とは、DSC(示差走査熱量計)を用いてJIS K7121(1987)「プラスチックの転移温度測定方法」に従って絶乾状態で20℃/minの昇温速度にて測定される融解温度を指す。
本工程において、よこ糸を横取りして解舒撚を混入させずに杼口に打ち込むのが好ましい。前記の通り、よこ糸である炭素繊維糸条を無撚で打ち込むことにより、例えば扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条を用いた場合でも、開口率が5%未満の炭素繊維織物を容易に得ることができる。なお、たて糸に関しても同様で、前記(A)の引出工程で記載した通りである。
本工程において、少なくとも部分的に濡らされた後のよこ糸の糸幅保持率が70〜100%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは80〜100%、さらに好ましくは90〜100%の範囲内である。なお、ここでいう糸幅保持率とは、濡らされる前(ドライ状態)のよこ糸幅Wdと、少なくとも部分的に濡らされた後のよこ糸幅Wwとを測定して、糸幅保持率=(少なくとも部分的に濡らされた後のよこ糸幅Ww)×100/(濡らされる前のよこ糸幅Wd)により求められた値を指す。糸幅減少率が70%未満のよこ糸を用いると、織成した後の炭素繊維織物において、よこ糸同士の間に解消できないレベルの大きな隙間を形成してしまう。例えば扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条を用いた場合はこのような隙間が顕著に形成され、開口率が5%未満の炭素繊維織物になり易い。なお、上述の糸幅保持率はよこ糸に関する内容であるが、たて糸を少なくとも部分的に濡らす場合、よこ糸と同様の理由で糸幅保持率が70〜100%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは80〜100%、さらに好ましくは90〜100%の範囲内である。
(D)乾燥工程
本工程は、織成した織物を加熱して乾燥させる。本工程によりたて糸とよこ糸とが目どめされる工程である。織成した織物を、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂の融点以上に加熱するのが好ましい。目どめ樹脂が融点を有さないものである場合は融点に替えて軟化点以上に加熱するのが好ましい。加熱する温度の上限としては、目どめ樹脂の分解温度未満であるのが一般的である。なお、本発明における軟化点とは、JIS K7234(1986)「エポキシ樹脂の軟化点試験方法」に従って測定される値を指す。また、分解温度とはTG(熱重量分析)法で窒素雰囲気中で昇温速度10℃/分で測定した熱減量が30%を越える温度を指す。
本工程において、織成した織物を加熱する手段が、(d1)ロールに接触していない状態で熱を放射または送風する非接触加熱手段、(d2)ロールに接触している状態で熱を放射または送風する疑似接触加熱手段、(d3)加熱源に直接接触させる接触加熱手段、(d4)前記(d1)〜(d3)の組み合わせ、のいずれかであるのが好ましい。
前記(d1)の場合、引取ロールに接触する前、すなわち、織前において加熱するのが好ましい。かかる態様であると、たて糸およびよこ糸との交錯している角度が織成された状態のまま正確に目どめすることができるだけでなく、織機の引取ロールをはじめとしたロール類に樹脂溶液、乳濁液または懸濁液が付着して汚れるのを最小限に抑制することができる。また、別の観点からは、引取ロールを通過した後の巻取ロールまでの間で加熱されてもよい。かかる態様であると製織の作業性に特に優れる。正確な交錯角度を保持し、汚れを最小限にするという観点からは、特に好ましい手段ということができる。
前記(d2)の場合、ロールが織機の引取ロールであるのが好ましい。かかる態様であると、たて糸とよこ糸とが確実に接触している状態で目どめすることができる。強固に目どめするという観点からは、特に好ましい手段ということができる。
前記(d3)の場合、加熱源がロール、特に織機の引取ロールであるのが好ましい。かかる態様であると、前記(d2)と同様にたて糸とよこ糸とが確実に接触している状態で目どめすることができるだけでなく、直接接触しているため熱伝達効率にも優れる。強固に目どめし、省エネルギーという観点からは、特に好ましい手段ということができる。
前記(d4)の場合、設備費は嵩むが、それぞれの長所を反映することができる利点がある。
(F)冷却工程
本工程は、加熱した織物を、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂の融点未満に冷却する工程である。なお、目どめ樹脂が融点を有さないものである場合は融点に替えて軟化点未満に冷却する。目どめ樹脂の融点以上の温度で巻き取られると、巻物において織物同士が接着されて織物を巻物からスムーズに巻出できない問題が発生する場合がある。本工程を経ることにより、下記(E)の巻取工程で、織物同士が接着するという問題を解決することができるのである。
(E)巻取工程
本工程は、織物を巻き取って巻物にする工程である。
本発明で得られる炭素繊維織物は、その開口率は5%未満であるのが好ましい。開口率が5%以上であると、本発明の課題であるFRPに成形した時にFRPにおいて樹脂リッチ部分を形成することとなり、外観品位、特に表面平滑性に優れるものが得られ難いだけでなく、軽量性、耐久性(疲労強度)、耐環境性などに劣る場合がある。
本発明のFRPの製造方法は、上述した製造方法により得られる炭素繊維織物と、マトリックス樹脂とで構成されるFRPにおいて、炭素繊維織物に含まれる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂をマトリックス樹脂に相溶させるのが好ましい。目どめ樹脂とマトリックス樹脂との組み合わせを適切に選択することにより、両者を相溶させることができる。目どめ樹脂とマトリックス樹脂とが相溶することにより、FRPに成形した時に外観品位、特に表面平滑性だけでなく、力学特性にも優れたものを得ることができる。
なお、本発明における相溶とは、目どめ樹脂を10wt%、マトリックス樹脂を90wt%を配合したモデル的な樹脂組成物を、FRPの成形条件と同じ熱履歴を与えて硬化・固化させた硬化物を、DSC(示差走査熱量計)を用いてJIS K7121(1987)「プラスチックの転移温度測定方法」に従って絶乾状態で20℃/minの昇温速度にて測定されるガラス転移点が1つであり、かつ、目どめ樹脂をFRPの成形条件と同じ熱履歴を与えて硬化・固化させた硬化物、および、マトリックス樹脂をFRPの成形条件と同じ熱履歴を与えて硬化・固化させた硬化物、のそれぞれのガラス転移点と同一でなく、かつ、両者の間に位置していることを指す。
マトリックス樹脂を炭素繊維織物に含浸させてFRPを成形する方法としては、炭素繊維織物に予めマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグ(ホットメルト法、ウェット法など)を用いたオートクレーブ法、炭素繊維織物でプリフォーム(予成形体)を形成してキャビティ(雄型と雌型とが金型である両面型で形成されるもの、雄型または雌型の一方が金型でもう一方がバッグフィルムなどの柔軟型である片面型で形成されるものなど)内で直接マトリックス樹脂を含浸させる直接注入法、などが挙げられる。中でも、生産性に優れ、低コスト化が容易な後者(特に両面型を用いたRTM法)が好ましい。
本発明で用いる炭素繊維糸条としては、繊維直径が5〜10μmのポリアクリルニトリル系で、引張強度が3〜7GPa、引張弾性率が200〜500GPaのマルチフィラメントとすることにより高い力学特性を発揮するFRPが得られることから好ましい。かかる炭素繊維糸条は、一般に繊度が大きくなるほど製造コストが安価であるから低コストの織物基材を提供できることから、本発明に用いる炭素繊維糸条の繊度は350〜3,500texの太繊度糸が好ましい。炭素繊維糸条の繊度が350texより小さい細繊度糸では、たて糸とよこ糸の交錯点数が多いので織物形態が安定しており、目どめする必要もなく本発明の熱処理を施すことなくそのままの形で用いることが可能である。これより太繊度の炭素繊維糸条の場合、たて糸とよこ糸の交錯点数が少なくなり目ずれし易く、取扱の難しい織物であるから目どめが必要となり、本発明の効果が高く発揮される。しかし、3,500texを越える太繊度の炭素繊維糸条となると、糸幅を均一に拡げない限り繊維分散が均一な織物が得られない問題があり、力学特性を十分に発揮させる織物を得ることが難しい場合がある。
(実施例1)
たて糸に、炭素繊維糸条(JIS R7601に沿って測定された引張強度4,900MPa、引張弾性率234GPa、繊度800tex、撚数0ターン/m、扁平率70の扁平状炭素繊維糸条)を用い、よこ糸に、ポリエステル繊維(融点260℃、繊度55dtex)を用いて、たて糸密度が2.5本/cm、よこ糸密度が3本/cmである一方向性織物(炭素繊維目付200g/m)を製織した。以下に詳細な工程を記載する。
(A)引出工程:炭素繊維糸条をたて糸とし、各ボビンから横取り解舒して引き揃えて、整経せずに織機に導いて製織した。なお、炭素繊維糸条として、扁平率70の扁平状のものを用いた。
(B)付着工程:ポリアミド樹脂を水に溶解させた樹脂溶液1(水溶性ポリアミド樹脂、濃度は7重量%、東レ(株)製AQナイロン)で、縦取り解舒したよこ糸を全体的に濡らした。よこ糸を濡らす手段として多孔質体接触手段を用いた。具体的には、多孔質体としてポリアミド製スポンジを用い、よこ糸はスポンジの上部は接触させ、スポンジの下部には乳濁液1を浸し、スポンジの浸透圧でスポンジ上部に乳濁液1が供給され、よこ糸が接触する上部からよこ糸が持ち出すようにした。
(C)織成工程:よこ糸を、たて糸と交錯させてレピア織機で織成した。
(D)乾燥工程:織成した織物を、非接触加熱手段にて分散媒である水を乾燥させた繊度800tex。具体的には、織前(引取ロールに接触する前)で遠赤外線ヒーターを用いて120℃に加熱した。
(E)巻取工程:織物を巻き取って巻物にした。
得られた一方向性織物1は、よこ糸に沿って線状にポリアミド樹脂がたて糸とよこ糸とを接着して目どめしており取扱性に優れた。また、開口率は4%であった。
(実施例2)
たて糸およびよこ糸に、繊度が800texの炭素繊維糸条(JIS R7601に沿って測定された引張強度4,900MPa、引張弾性率234GPa、撚数0ターン/m、扁平率70の扁平状炭素繊維糸条)を用いて、たて糸密度およびよこ糸密度が3.1本/cmである二方向性織物(炭素繊維目付200g/m)を、レピア織機にて製織した。製織にあたり、
(B)の付着工程で、エポキシ樹脂を水に乳化剤で乳化させた乳濁液1(エマルジョン型エポキシ樹脂、濃度は12重量%、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンEM−82−75Wを水で希釈したもの)で、横取り解舒したよこ糸を、扁平率70の扁平状炭素繊維糸条の片面のみを濡らし、よこ糸を濡らす手段としてロールに接触させるコンタクトロール手段を用いたこと、
(D)の乾燥工程で、接触加熱手段(織機の引取ロールを通過した後の巻取ロールまでの間に配置した、3つの加熱ロールと織物とを直接接触させながら、それぞれ接触する順に100℃、110℃、130℃に加熱)にて加熱・乾燥したこと、
(F)加熱した織物を、送風装置(扇風機)にて35℃未満(エポキシ樹脂である目どめ樹脂の融点および軟化点未満)に冷却する冷却工程を追加したこと、
以外は、実施例1と同様にして炭素繊維織物を得た。
得られた二方向性織物2は、よこ糸に沿って帯状にエポキシ樹脂がたて糸とよこ糸とを接着して目どめしており取扱性に優れた。また、開口率は1.2%であり、外観品位に非常に優れた。
(実施例3)
実施例2と同じ織構造を有する二方向性織物を、レピア織機にて製織するにあたり、
(B)の付着工程で、エポキシ樹脂を水に乳化剤で乳化させた乳濁液2(エマルジョン型エポキシ樹脂、濃度は12重量%、ジャパンエポキシレジン(株)製エピレッツ3540WY55を水で希釈したもの)で、横取り解舒したよこ糸を、扁平率70の扁平状炭素繊維糸条の片面のみを濡らし、よこ糸を濡らす手段として、スプレー手段を用いたこと、
(G)横取り解舒したたて糸全てを、乳濁液2で扁平率70の扁平状炭素繊維糸条の片面のみを濡らし、たて糸を濡らす手段としてロールに接触させるコンタクトロール手段を用いた第二付着工程を追加したこと、
(D)の乾燥工程で、織成した織物を、非接触加熱手段(織前の遠赤外線ヒーターで150℃に加熱)と、接触加熱手段(織機の引取ロールを通過した後の巻取ロールまでの間に配置した、3つの加熱ロールと織物とを直接接触させながら、それぞれ接触する順に100℃、110℃、130℃に加熱)とで加熱・乾燥したこと、
以外は、実施例2と同様にして炭素繊維織物を得た。
得られた二方向性織物3は、たて糸およびよこ糸に沿って帯状にエポキシ樹脂がたて糸とよこ糸とを接着して目どめしており、実施例2の二方向性織物2よりもさらに取扱性に優れた。また、開口率は2%であり、実施例2の二方向性織物2よりも僅かに大きくなったが、外観品位上は問題ないレベルであった。
(実施例4)
実施例1、2、3で得られた一方向性織物1、二方向性織物2、3をそれぞれ30cm×30cmの正方形に裁断した。裁断時にたて糸やよこ糸がバラバラに成らず、得られたそれぞれの炭素繊維織物は十分に目どめされていた。裁断した炭素繊維織物を同じ方向に合計8枚積層してアイロン(160℃)で加熱・加圧してプリフォームを得た。得られたプリフォームは、二方向性織物がバラバラにならず、目どめ樹脂により接着されていた。このプリフォームを、雄型と雌型とでの両面型(金型)で形成されたキャビティ内に配置し、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製エピコート630(主剤)、エピキュアW(硬化剤)を混合比0.464で混ぜたもの)を含浸させ、1.5℃/分で180℃まで昇温し、180℃に到達後120分間保持して硬化させ、2.5℃/分で25℃まで降温してFRPを得た。
得られたFRPは、目どめ樹脂がドメインを形成することなることなく、いずれも表面平滑性に非常に優れた。なお、二方向織物3に較べて二方向性織物2の方が開口率が僅かに低かったため、その分表面平滑性に優れた。
(比較例1)
(B)の付着工程で、乳濁液を1を用いずに、低融点ポリアミド繊維(東レ(株)製“エルダー”(登録商標)110dtex)を縦取り解舒したよこ糸と引き揃えたこと、
(C)の織成工程で、縦取り解除したよこ糸と低融点ポリアミド繊維とを引き揃えたものを一緒に打ち込み織成したこと、以外は、実施例2と同様にして二方向性織物1を得た。
得られた二方向性織物1は、目どめ樹脂であるポリアミド樹脂が安定して引き揃えられておらず、たて糸とよこ糸との交錯点によっては目どめされていない箇所も存在し、目どめにバラツキが大きかった。また、開口率は6%であり、実施例2、3の二方向性織物2、3よりもかなり大きくなり、外観品位上は問題があるレベルであった。
(比較例2)
よこ糸に、ガラス繊維(ECE225 1/2、扁平率20未満のガラス繊維糸条)と低融点ポリアミド繊維(東レ(株)製“エルダー”(登録商標)330dtex)とを合糸した撚糸を用いたこと、
(B)の付着工程で、樹脂溶液1を用いなかったこと、
(D)の乾燥工程で、非接触加熱手段(巻取前の遠赤外線ヒーターで170℃)加熱したこと、以外は、実施例1と同様にして一方向性織物2を得た。
得られた一方向性織物2は、よこ糸に沿って線状にポリアミド樹脂がたて糸とよこ糸とを接着して目どめしていた。しかしながら、目どめするのに実施例1よりも高い温度が必要であった。
(比較例3)
比較例1、2で得られた二方向性織物1、一方向性織物2を実施例4と同様にしてFRPを成形した。
得られたFRPは、目どめ樹脂であるポリアミド樹脂がドメインを形成し、表面平滑性に非常に劣った(ポリアミド樹脂が溶け出していた)。
本発明は、強化繊維織物の組織崩れ、裁断時の解れを抑えて織組織の形態保持に有効な目どめ処理を施すことができ、かつ、マトリックス樹脂と相溶性のある、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂で目どめしているため、優れた外観品位のFRPを得ることができる。かかるFRPは、表面平滑性の要求が厳しい自動車用途や航空機用途の外装部材に特に好適である。

Claims (12)

  1. たて糸またはよこ糸の少なくとも一方が炭素繊維糸条からなり、織組織の形態を保持する目どめ処理が施された炭素繊維織物の製造方法であって、次の(A)〜(E)の工程を経ることを特徴とする炭素繊維織物の製造方法。
    (A)たて糸を、織機に導く引出工程
    (B)よこ糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らす付着工程
    (C)少なくとも部分的に濡れたよこ糸を、たて糸と交錯させて織物を織成する織成工程
    (D)織成した織物を加熱して乾燥させることにより、よこ糸に含まれる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液を乾燥し、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂でたて糸とよこ糸とを目止めする乾燥工程
    (E)織物を巻き取って巻物にする巻取工程
  2. 前記(D)の乾燥工程と(E)の巻取工程との間において、次の(F)の工程を経る、請求項1に記載の炭素繊維織物の製造方法。
    (F)加熱乾燥した織物を、樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂の融点未満に冷却する冷却工程
  3. 前記(A)の引出工程と(C)の織成工程との間において、次の(G)の工程を経る、請求項1または2に記載の炭素繊維織物の製造方法。
    (G)たて糸を、溶媒または分散媒が水である樹脂溶液、乳濁液または懸濁液で少なくとも部分的に濡らす第二付着工程
  4. 前記(C)の織成工程において、よこ糸を横取りして解舒撚を混入させずに杼口に打ち込む、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
  5. 前記(C)の織成工程において、少なくとも部分的に濡らされた後のよこ糸の糸幅保持率が70%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
  6. 樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂が、後述(D)の乾燥工程後の炭素繊維織物において常温固体のものである、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
  7. 樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂が、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
  8. 樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂が、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルホルマール、ポリエーテルスルフォンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
  9. 炭素繊維織物が、扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条をたて糸とし、該炭素繊維糸条よりも細繊度である補助繊維糸条をよこ糸とする一方向性織物である、請求項1〜8のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
  10. 前記一方向性織物のよこ糸である補助繊維糸条の融点が300℃以下である、請求項9に記載の炭素繊維織物の製造方法。
  11. 炭素繊維織物が、扁平率20〜200の範囲内の扁平状炭素繊維糸条をたて糸およびよこ糸とする二方向性織物である、請求項1〜8のいずれかに記載の炭素繊維織物の製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法により得られる炭素繊維織物と、マトリックス樹脂とで構成される繊維強化プラスチックの製造方法であって、繊維強化プラスチックにおいて、炭素繊維織物に含まれる樹脂溶液、乳濁液または懸濁液の溶質または分散質である目どめ樹脂をマトリックス樹脂に相溶させることを特徴とする繊維強化プラスチックの製造方法。
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