JP4992274B2 - ファインブランキング加工性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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通常の打抜き加工では、工具間のクリアランスは、被打抜き材である金属板の板厚の5〜10%程度であるが、ファインブランキング加工は、通常の打抜き加工とは異なり、工具間のクリアランスをほぼゼロ(実際は、被打抜き材である金属板の板厚の2%以下程度)と極めて小さく設定すると共に、さらに工具切刃付近の材料に圧縮応力を作用させて打抜く加工方法である。そして、ファインブランキング加工は、
(1)工具切刃からの亀裂発生を抑制して、通常の打抜き加工で見られる破断面がほぼゼロとなり、加工面(打抜き端面)がほぼ100%剪断面の、平滑な加工面が得られる、
(2)寸法精度がよい、
(3)複雑な形状を1工程で打抜ける、
などの特徴を有している。しかし、ファインブランキング加工においては、材料(金属板)の受ける加工度は極めて厳しいものとなる。また、ファインブランキング加工では、工具間のクリアランスをほぼゼロとして行うため、金型への負荷が過大となり、金型寿命が短くなるという問題がある。
このような要望に対し、例えば、特許文献1には、C:0.15〜0.90重量%、Si:0.4重量%以下、Mn:0.3〜1.0重量%を含有する組成と、球状化率80%以上、平均粒径0.4〜1.0μmの炭化物がフェライトマトリックスに分散した組織を有し、切欠き引張伸びが20%以上である、精密打抜き加工性に優れた高炭素鋼板が提案されている。特許文献1に記載された技術によれば、精密打抜き性が改善され、さらに金型寿命も改善されるとしている。しかし、特許文献1に記載された高炭素鋼板は、ファインブランキング加工後の成形加工性が劣るという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑みて成されたものであり、ファインブランキング加工性に優れ、さらにファインブランキング加工後の成形加工性にも優れた鋼板、特にファインブランキング加工後の伸びフランジ性に非常に優れた鋼板、およびその製造方法を提供することを目的とする。
質量%で、0.34%C−0.2%Si−0.8%Mnを含有する高炭素鋼スラブ(S35C相当)に、1150℃に加熱後、5パスの粗圧延、7パスの仕上圧延からなる熱間圧延を施し、板厚4.3mmの熱延鋼板とした。なお、熱間圧延の仕上圧延においては、Ar3変態点〜850℃の温度範囲における累積圧下率(総圧下率)を15〜20%の範囲で変化し、仕上圧延終了温度をAr3変態点以上の温度である800〜820℃とした。仕上圧延後に、平均冷却速度:60℃/sで、冷却停止温度を500〜650℃の範囲の温度とする冷却を施し、巻取り温度:550℃で巻き取った。ついでこれら熱延鋼板に酸洗を施した後、熱延板焼鈍としてバッチ焼鈍(720℃×40h)を行った。
得られた鋼板から試験片を採取し、該試験片の圧延方向に平行な断面を研磨し、ナイタール腐食したのち、板厚1/4位置について、走査型電子顕微鏡(SEM)で金属組織を観察し、フェライト粒径、および炭化物の球状化率を測定した。
組織観察の各視野(倍率:1000倍、視野:30個所)で画像解析装置を用いて、各フェライト粒についてその面積を測定し、得られた面積から円相当径を求め、おのおのの粒径とした。得られた各フェライト粒径を算術平均し、その値を、その鋼板の平均フェライト粒径とした。
また、組織観察の各視野で、フェライト粒界上に存在する炭化物およびフェライト粒内に存在する炭化物を識別し、画像解析装置を用いて、単位面積あたりに存在する炭化物について、フェライト粒界上に存在する炭化物の占有面積Son、およびフェライト粒内に存在する炭化物の占有面積Sinを測定し、次式
Sgb(%)={Son/(Son+Sin)}×100
で定義されるフェライト粒界炭化物量(Sgb)を算出した。 なお、炭化物粒の面積測定は各30視野(倍率:3000倍)とした。
得られた熱延鋼板から、穴広げ用試験片(大きさ:t×130×130mm)を採取した。採取した穴広げ用試験片の中央に、直径10mm(do)の打抜き穴をFB加工により形成した。なお、試験片はクリアランスに対する板厚偏差の影響を除くため、予め両面を等量ずつ研削し、板厚を4.0±0.010mmとし、FB加工は工具間のクリアランスを0.060mmとした。そして、円筒平底ポンチ(50mmφ、5R)にて該穴広げ用試験片を押し上げ、打抜き穴の縁に板厚を貫通するクラックが発生した時点での穴径(d)を測定し、FB加工後の穴広げ率λf(%)を求め、FB加工後の穴広げ性を評価した。なお、穴広げ率λf(%)は次式
λf(%)={(d−d0)/d0}×100
で定義される値とした。
図1から、FB加工後の穴広げ率λfは、フェライト粒界炭化物量Sgbが60%を超えて多くなると、急激に向上することが分かる。さらにその傾向はフェライト粒径が15μmの場合に比べてフェライト粒径が8μmの場合の方が顕著である。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに研究を重ねて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.1〜0.5%、Si:0.5%以下、Mn:0.2〜1.5%、P:0.03%以下、S:0.02%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライトおよび炭化物を主体とする組織とを有し、前記フェライトの平均粒径が1〜10μm、隣接するフェライト粒の方位差が20度未満の粒が集合した領域であるフェライトコロニーの平均径が20μm未満で、板厚1/4位置について倍率:3000倍、視野数:30箇所の組織を走査型電子顕微鏡で観察し、各炭化物の最大長さaと最小長さbを求め、比a/bを計算し、a/bが3以下の炭化物粒数を、測定した全炭化物個数に対する割合(%)で表示した前記炭化物の球状化率が80%以上、かつ前記炭化物のうち、フェライトの結晶粒界に存在する炭化物の量である、次(1)式
Sgb(%)={Son/(Son+Sin)}×100 ……(1)
(ここで、Son:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト粒界上に存在する炭化物の総占有面積、Sin:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト粒内に存在する炭化物の総占有面積)
で定義されるフェライト粒界炭化物量Sgbが60%以上であることを特徴とするファインブランキング加工性およびファインブランキング加工後の成形加工性に優れた鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:3.5%以下、Mo:0.7%以下、Ni:3.5%以下、Ti:0.01〜0.1%およびB:0.0005〜0.005%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする鋼板。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:3.5%以下、Mo:0.7%以下、Ni:3.5%以下、Ti:0.01〜0.1%およびB:0.0005〜0.005%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする鋼板の製造方法。
C:0.1〜0.5%
Cは、熱延焼鈍後および焼入れ後の硬さに影響する元素であり、本発明では0.1%以上の含有を必要とする。Cが0.1%未満では、自動車用部品として要求される硬さを得ることができなくなる。一方、0.5%を超える多量の含有は、鋼板が硬質化するため、工業的に十分な金型寿命が確保できなくなる。このため、Cは0.1〜0.5%の範囲に限定した。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶強化により強度(硬さ)を増加させる元素であるが、0.5%を超えて多量に含有するとフェライト相が硬質化し、FB加工性を低下させる。また0.5%を超えてSiを含有すると、熱延段階で赤スケールと呼ばれる表面欠陥を生じる。このため、Siは0.5%以下に限定した。なお、好ましくは0.35%以下である。
Mnは、固溶強化により鋼の強度を増加するとともに、焼入れ性向上に有効に作用する元素である。このような効果を得るためには、0.2%以上含有することが望ましいが、1.5%を超えて過剰に含有すると、固溶強化が強くなりすぎてフェライトが硬質化し、FB加工性が低下する。このため、Mnは0.2〜1.5%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.6〜0.9%である。
Pは、粒界等に偏析し加工性を低下させるため、本発明では極力低減することが望ましいが、0.03%までは許容できる。このようなことから、Pは0.03%以下に限定した。なお、好ましくは0.02%以下である。
S:0.02%以下
Sは、鋼中ではMnSなどの硫化物を形成して介在物として存在し、FB加工性を低下させる元素であり、極力低減することが望ましいが、0.02%までは許容できる。このようなことから、Sは0.02%以下に限定した。なお、好ましくは0.01%以下である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト粒の粗大化防止に寄与する元素である。Bとともに含有する場合には、Nを固定し、BがBNとなり焼入れ性向上に有効なB量の低減を防止する効果も有する。このような効果は0.02%以上の含有で顕著となるが、0.1%を超える含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、含有する場合には、Alは0.1%以下に限定することが好ましい。なお、不可避的不純物としてのAlは0.01%以下である。
Cr:3.5%以下
Crは、焼入れ性の向上に有効な元素であり、このような効果を得るためは0.1%以上含有することが好ましいが、3.5%を超える含有は、FB加工性が低下するとともに、焼戻軟化抵抗の過度の増大を招く。このため、Crは含有する場合には3.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜1.5%である。
Moは、焼入れ性の向上に有効に作用する元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上含有することが好ましいが、0.7%を超える含有は鋼の硬質化を招き、FB加工性が低下する。このため、Moは含有する場合には0.7%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.3%である。
Niは、焼入れ性を向上させる元素であり、このような効果を得るためには0.1%以上含有することが好ましいが、3.5%を超える含有は鋼の硬質化を招き、FB加工性が低下する。このため、Niは含有する場合には3.5%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜2.0%である。
Tiは、Nと結合しTiNを形成しやすく、焼入れ時のオーステナイト粒の粗大化防止に有効に作用する元素である。また、Bとともに含有する場合にはBNを形成するNを低減するため、焼入れ性向上に必要なBの添加量を少なくすることができるという効果も有する。このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.1%を超える含有は、TiCなどの析出によりフェライトが析出強化されて硬質化し、金型寿命の低下を招く。このため、含有する場合には、Tiは0.01〜0.1%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.015〜0.08%である。
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、微量で焼入れ性を改善させる元素であり、特にTiと複合添加した場合に効果的である。焼入れ性改善のためには、0.0005%以上の含有を必要とする。一方、0.005%を超えて含有しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、含有する場合には、Bは0.0005〜0.005%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.0008〜0.004%である。
次に、本発明鋼板の組織限定理由について説明する。
本発明鋼板は、フェライトおよび炭化物を主体とする組織を有する。フェライトおよび炭化物を主体とする組織とは、フェライトと炭化物とで体積率で95%以上となる組織をいうものとする。すなわち、本発明鋼板は、ほぼフェライトおよび炭化物からなるものであるが、その他の組織として、体積率で5%程度までは許容することができる。
隣接するフェライト粒の方位差が20度未満の粒が集合した領域であるフェライトコロニーの平均径が20μm未満の場合、FB加工性が向上するのに加えて、図2に示すように、FB加工後の穴広げ性(λf)が格段に向上する。このため、本発明では、フェライトコロニーの平均径を20μm未満に限定した。なお、好ましくは15μm以下である。
Sgb(%)={Son/(Son+Sin)}×100 ……(1)
(ここで、Son:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト結晶粒界上に存在する炭化物の総占有面積、Sin:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト粒内に存在する炭化物の総占有面積)
で定義される値である。フェライト粒界炭化物量Sgbが60%未満では、フェライト粒内に存在する炭化物量が多くなり、FB加工性が低下するともに、図1に示すように、FB加工後の穴広げ性が急激に低下する。これは、微細で球状化された炭化物でもフェライト粒内に存在すると、FB加工時に炭化物の周りに微細な亀裂が発生し、それらの連結によりFB加工性が低下し、FB加工時に炭化物の周りに微細な亀裂が発生し残存することにより、その後の成形加工でそれらが連結し、成形加工性が低下すると考えられる。また、フェライト粒内に炭化物が存在するとフェライト粒自身が硬質化し、金型寿命の低下を招く。このため、本発明では、フェライト粒界炭化物量Sgbを60%以上に限定した。なお、好ましくは70%以上である。
上記した組成を有する溶鋼を、転炉等の常用の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で鋼素材(スラブ)とすることが好ましい。
ついで、得られた鋼素材には、鋼素材を加熱し圧延して熱延板とする熱間圧延を施す。
熱間圧延は、仕上圧延におけるAr3変態点〜850℃の温度域の累積圧下率を10%以上25%以下、仕上圧延の終了温度をAr3変態点以上とし、該仕上圧延の終了後に、50℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、500〜700℃の範囲の温度で該冷却を停止し、450〜700℃の巻取り温度で巻取る処理とすることが好ましい。
熱間圧延の仕上圧延において、圧下率を大きくすることにより、オーステナイト粒径が小さくなり、それに伴って変態後のパーライトコロニーが小さくなる。パーライトは、熱延板焼鈍により、ポリゴナルフェライトと球状セメンタイトに変化する。この熱延板焼鈍により生成するフェライトは、詳細に解析すると、見かけ上、粒界で区分されていても、その粒界の多くは、隣接するフェライト粒間の方位差が20度未満の粒界であることが多く、隣接するフェライト粒間の方位差が20度未満の粒が集合した領域を形成することになる。この隣接するフェライト粒間の方位差が20度未満の粒が集合した領域は、フェライトコロニーと称する。フェライトコロニーは、熱延板焼鈍前のパーライトコロニーに対応するが、結晶方位差が小さく、FB加工時およびFB加工後の成形加工時に一つの変形単位となりやすい。
仕上圧延の圧延終了温度は、Ar3変態点以上とすることが好ましい。仕上圧延の終了温度がAr3変態点未満では、圧延負荷の増大が著しくなり、圧延機への過大な負荷が問題となる。一方、仕上圧延の圧延終了温度が850℃を超えて高くなると、Ar3変態点〜850℃の温度域の累積圧下率を10%以上25%以下とすることができなくなり、FB加工性が低下する。このため、仕上圧延の圧延終了温度は、Ar3変態点以上とすることが好ましく、より好ましくは850℃以下である。
仕上圧延終了後、50℃/s以上の平均冷却速度で冷却する。なお、該平均冷却速度は仕上圧延の終了温度から該冷却(強制冷却)の停止温度までの平均冷却速度とする。平均冷却速度が50℃/s未満では、冷却中に炭化物を含まないフェライトを生じ、冷却後の組織がフェライト+パーライトの不均一な組織となり、ほぼ100%のパーライトからなる均一な組織を確保できなくなる。熱延板組織がフェライト+パーライトの不均一な組織では、その後の熱延板焼鈍をいかに工夫しても、粒内に存在する炭化物が多くなり、粒界に存在する炭化物量が減少する。このため、FB加工性が低下する。このようなことから、仕上圧延終了後の平均冷却速度を50℃/s以上に限定することが好ましい。なお、ベイナイトの生成を防止するために、120℃/s以下とすることがより好ましい。
上記冷却(強制冷却)を停止する温度は500〜700℃とすることが好ましい。冷却停止温度が500℃未満では、硬質なベイナイトやマルテンサイトを生じて熱延板焼鈍が長時間となるという問題や、巻取時に割れを生じるなど操業上の問題を生じる。一方、冷却停止温度が700℃を超えて高温となると、フェライト変態ノーズが700℃近傍であるため、冷却停止後の放冷中にフェライトを生じ、ほぼ100%のパーライトからなる均一な組織を確保できなくなる。このようなことから、冷却の停止温度は、500〜700℃の範囲内の温度に限定することが好ましい。なお、より好ましくは500〜650℃、さらに好ましくは500〜600℃である。
巻取り温度が450℃未満では、巻取り時に鋼板に割れが発生し、操業上問題となる。一方、巻取り温度が700℃を超えると、巻取り中にフェライトが生成するという問題がある。
得られた熱延鋼板について、酸洗後、組織、FB加工性、FB加工後の穴広げ性を調査した。調査方法はつぎのとおりである。
得られた鋼板から組織観察用試験片を採取した。そして、試験片の圧延方向に平行な断面を研磨し、ナイタール腐食したのち、板厚1/4位置について、走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率;フェライト:1000倍、炭化物:3000倍)で金属組織を観察(視野数:30個所)し、画像解析装置を用いて、フェライトおよび炭化物の体積率、フェライト粒径、炭化物の球状化率、フェライト粒界炭化物量、およびフェライト粒界上の炭化物の平均粒径を測定した。
フェライト粒径は、各フェライト粒についてその面積を測定し、得られた面積から円相当径を算出し、おのおのの粒径とした。得られた各フェライト粒径を算術平均し、その値を、その鋼板のフェライトの平均粒径とした。
フェライト粒界炭化物量Sgbは、金属組織観察(倍率:3000倍)の各視野(視野数:30個所)で、フェライト粒界上に存在する炭化物およびフェライト粒内に存在する炭化物を識別し、画像解析装置を用いて、単位面積あたりの、フェライト粒界上に存在する炭化物の占有面積Son、およびフェライト粒内に存在する炭化物の占有面積Sinを測定し、次(1)式
Sgb(%)={Son/(Son+Sin)}×100 ……(1)
を用いて算出した。
また、上記した各鋼板の組織観察用試験片を用いて、フェライトコロニー径を測定した。各試験片について、各フェライト粒の結晶方位を、EBSD(E1ectron Backscattering Diffraction Pattern)法により測定し、隣接する測定点間の方位差が20度以上の場合を粒界と認識させ、方位差20度以上の結晶粒界を画像処理により描かせたのち、方位差20度以上の結晶粒界で囲まれた領域、すなわちフェライト粒間の方位差が20度未満の粒の集合する領域であるフェライトコロニーの面積を測定し、得られた面積から円相当径を求め、各フェライトコロニーの粒径とした。そして、得られた各フェライトコロニーの粒径を算術平均した平均値を、各鋼板のフェライトコロニーの平均径とした。
得られた鋼板から試験板(大きさ:100×80mm)を採取し、FBテストを実施した。FBテストは、110t油圧プレス機を用いて、試験片から、大きさ:60mm×40mm(コーナー部半径R:10mm)のサンプルを、工具間のクリアランス:0.060mm(板厚の1.5%)、加工力:8.5ton、潤滑:有りの条件で打抜いた。打抜かれたサンプルの端面(打抜き面)について、表面粗さ(十点平均粗さRz)を測定して、FB加工性を評価した。なお、試験片は、クリアランスに対する板厚偏差の影響を除くため、予め両面を等量ずつ研削し、板厚を4.0±0.010mmとした。
Rz ave=(Rz 1+ Rz 2+ Rz 3+ Rz 4)/4
(ここで、Rz 1,Rz 2,Rz 3,Rz 4:各面のRz)
で定義される平均表面粗さ:Rz ave(μm)を算出した。
なお上記と異なる板厚の試験片の表面粗さを測定する場合は、上記と同様にパンチ側表面0.5mmから板厚方向に、(板厚(mm)−0.1mm)程度の範囲でかつ表面に平行に10mmの領域を板厚方向に繰り返し100μmピッチで走査して各面のRzを求め、各面のRzからRz aveを求めればよい。
(3)FB加工後の穴広げ性
得られた熱延鋼板から、穴広げ用試験片(大きさ:t×130×130mm)を採取した。採取した穴広げ用試験片の中央に、直径10mm(do)の打抜き穴をFB加工により形成した。なお、クリアランスに対する板厚偏差の影響を除くため、予め両面を等量ずつ研削し、板厚を4.0±0.010mmとし、FB加工は工具間のクリアランスを0.060mmとした。そして、円筒平底ポンチ(50mmφ、5R)にて該穴広げ用試験片を押し上げ、打抜き穴の縁に板厚を貫通するクラックが発生した時点での穴径(d)を測定し、FB加工後の穴広げ率λf(%)を求め、FB加工後の穴広げ性を評価した。なお、穴広げ率λf(%)は次式
λf(%)={(d−d0)/d0}×100
で定義される値とした。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.1〜0.5%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.2〜1.5%、 P:0.03%以下、
S:0.02%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、フェライトおよび炭化物を主体とする組織とを有し、前記フェライトの平均粒径が1〜10μm、隣接するフェライト粒の方位差が20度未満の粒が集合した領域であるフェライトコロニーの平均径が20μm未満で、板厚1/4位置について倍率:3000倍、視野数:30箇所の組織を走査型電子顕微鏡で観察し、各炭化物の最大長さaと最小長さbを求め、比a/bを計算し、a/bが3以下の炭化物粒数を、測定した全炭化物個数に対する割合(%)で表示した前記炭化物の球状化率が80%以上、かつ前記炭化物のうち、フェライトの結晶粒界に存在する炭化物の量である、下記(1)式で定義されるフェライト粒界炭化物量Sgbが60%以上であることを特徴とするファインブランキング加工性およびファインブランキング加工後の成形加工性に優れた鋼板。
記
Sgb(%)={Son/(Son+Sin)}×100 ……(1)
ここで、Son:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト粒界上に存在する炭化物の総占有面積、
Sin:単位面積あたりに存在する炭化物のうち、フェライト粒内に存在する炭化物の総占有面積 - 前記フェライトの結晶粒界に存在する炭化物が、平均粒径で5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:3.5%以下、Mo:0.7%以下、Ni:3.5%以下、Ti:0.01〜0.1%およびB:0.0005〜0.005%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鋼板。
- 鋼素材に、該鋼素材を加熱し圧延を施し熱延板とする熱間圧延と、該熱延板にバッチ焼鈍を施す熱延板焼鈍と、を順次施す鋼板の製造方法において、
前記鋼素材を、質量%で、
C:0.1〜0.5%、 Si:0.5%以下、
Mn:0.2〜1.5%、 P:0.03%以下、
S:0.02%以下
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
前記熱間圧延を、仕上圧延におけるAr3変態点〜850℃の温度域における累積圧下率を10%以上25%以下、仕上圧延の終了温度をAr3変態点以上とし、該仕上圧延の終了後に、50℃/s以上の平均冷却速度で冷却し、500〜700℃の範囲の温度で該冷却を停止し、450〜700℃の巻取り温度で巻取る処理とすることを特徴とするファインブランキング加工性およびファインブランキング加工後の成形加工性に優れた鋼板の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、質量%で、Al:0.1%以下を含有する組成とすることを特徴とする請求項5に記載の鋼板の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cr:3.5%以下、Mo:0.7%以下、Ni:3.5%以下、Ti:0.01〜0.1%およびB:0.0005〜0.005%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項5または6に記載の鋼板の製造方法。
- 前記熱延板焼鈍を、焼鈍温度:600〜750℃とする処理とすることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の鋼板の製造方法。
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