以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
<実施形態1>
図1〜図11を参照して、本発明に係る画像形成装置1について説明する。なお、図1〜図3においては、画像形成装置1の前後左右上下を矢印で示している。図1〜図11のうち、図1は、画像形成装置1の全体を、その前側の左斜め上方から見た斜視図である。図2は、画像形成装置1の全体を、その左側の後斜め上方から見た斜視図である。図3は、左側から見た画像形成装置1の内部の構造を模式的に示す図である。図4は、図1の状態から取り外された前面カバー3の斜視図を示している。ただし、同図においては後述する手差しトレイ16が取り外されている。図5は、前面カバー3及び搬送ユニット73を説明する模式図であり、(a)は前面カバー3及び搬送ユニット73の閉鎖位置A1,B1を示し、(b)は開放位置A2,B2を示している。なお、図5(a),(b)では、画像形成装置本体2の本体フレーム6の一部を構成する左側板76及び右側板77を二点鎖線で図示している。左側板76は、上述の搬送ユニット73及び前面カバー3の左側面を覆い、また、右側板77は、搬送ユニット73及び前面カバー3の右側面を覆うように配置されている。図6は、図1の状態から前面カバー3を取り外して、シート再搬送路53の後側ガイド53a及び定着カバー81を露出させた状態を示している。図7は、図6の状態から搬送ユニット73を取り外して、シート搬送路52の後側ガイド52aを露出させた状態を示している。図8は、図7に示す状態から取り出した定着ユニット80を示し、定着カバー81が閉位置C1に配置されている状態を示している。図9は、図8に示す状態から定着カバー81が開放されて開位置C2に配置された状態を示している。図10は、図8の状態からガイド面53cを取り外して拡大して示す斜視図である。図11は、図9の状態からガイド面53cを取り外して拡大して示す斜視図であり、カム部材86とカムフォロア83との係合状態を説明する図である。
ここで、画像形成装置1としては、プリンタ,複写機,ファクシミリ,及びこれらの複合機等があげられるが、以下の説明では、画像形成装置1がプリンタである場合を例に説明する。同図に示す画像形成装置1は、電子写真方式、中間転写方式、タンデム方式を採用した、4色フルカラーの画像形成装置1である。
図1,図2を参照して、画像形成装置1の全体を外側から見た構成について説明する。画像形成装置1は、ほぼ箱型(直方体状)の画像形成装置本体2と、この画像形成装置本体2によって開閉自在に支持された前面カバー3とを備えている。
画像形成装置本体2は、前面が、前面カバー3によって覆われ、左側面及び右側面が合成樹脂製の左外装パネル4及び右外装パネル5によって覆われている。画像形成装置本体2の後面は、構造物として本体フレーム6を構成する板金の一部7が露出されている。画像形成装置本体2の上面は、前部が前面カバー3によって覆われ、中間部から後部にかけてが、後上がりのシート積載面8を有する排紙トレイ10によって覆われている。
前面カバー3は、前外装パネル11と、この内側に構成された後述のシート搬送部24の一部とによって構成されている。前外装パネル11は、前パネル12と、この上端に続く後上がりの上パネル13と、逆「L」字形の左パネル14及び右パネル15とが一体に構成されている。前パネル12には、長方形状の手差しトレイ16が配設されている。手差しトレイ16は、下端側に揺動中心を有していて、図1に示す、起立姿勢の閉鎖位置にあっては、前パネル12の一部を構成するとともに、上端側が前方に引き出された後下がりの開放位置(不図示)にあっては、上面にシートを載せる給紙台となる。上パネル13には、操作パネル(操作部)17が配置されている。操作パネル17は、画像形成装置1の正面側に立って操作する操作者(例えば、ユーザ)が見やすいように、後端側が少し高くなるようにゆるく傾斜してほぼ上向きに配置されている。操作パネル17には、タッチパネル式の液晶表示部や、各種ボタンが配置されていて、操作者は、画像形成装置1の正面に立った状態で、この操作パネル17により画像形成装置1の全体を操作することができるようになっている。左パネル14及び右パネル15は、前面カバー3の内側に構成されたシート搬送部24の一部をそれぞれ左側及び右側から覆うように配設されている。
前面カバー3は、後述するように、下端側が画像形成装置本体2によって揺動自在に支持されていて、全体が開閉自在となっている。前面カバー3を開放する際に操作するボタン75が付いた解除レバー(解除部材)74は、図2に示すように、左パネル14の上端側でかつ後端側の内側(右側)と、右パネル15の上端側でかつ後端側の内側(左側)とに配設されている。上述の構成の前面カバー3は、操作者が、画像形成装置1の正面側から前面カバー3を手前側に開いて、ジャム処理(紙詰まりを起こしたシートを除去する作業)を行うことが可能である。さらに、後述するように、画像形成対象となるシートが収納される給紙カセット25を、同じく正面側から着脱できるようになっている。このように、操作者は、操作パネル17を使用しての画像形成装置1の操作全般、ジャムが発生したときのそのジャム処理、シートがなくなったときの給紙カセット25に対するシートの補給等をすべて画像形成装置1の正面側から行うことができるようになっている。なお、前面カバー3については、後にさらに詳述する。
以上で、画像形成装置1の全体を外側から見た構成についての説明を終了する。
次に、図3を参照して、画像形成装置1の内部の構造について説明する。画像形成装置1には、画像形成装置本体2の下側から上側かけて順に、シート収納部20、基板収納部21、画像形成部22、トナー補給部23、排紙トレイ(シート排出部)10が設けられている。また、画像形成装置本体2の前側と、前面カバー3との間には、シート搬送部24が設けられている。
シート収納部20には、給紙カセット25が配設されている。給紙カセット25は、複数枚のシートを積層状態で収納しており、底部に配設されたリフト板26によって積層状態のシートの先端側(同図中の右側)を上方に付勢している。これにより、給紙カセット25内の最上位のシートが、後述するシート搬送部24のピックアップローラ27によって給紙され、さらに給送ローラ28、リタードローラ30によって重送が防止されて1枚だけ下流側に給送される。この給紙カセット25は、画像形成装置1の正面側(前側)から抜差しできるようになっている。給紙カセット25の上方には基板収納部21が配設されている。
基板収納部21には、画像形成装置1の全体を制御する基板や電装品等(不図示)が配設されている。基板収納部21の上方には、画像形成部22が配設されている。
画像形成部22には、中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31の回転方向(矢印R31方向)に沿って同様な構成の4つ(4色)の画像形成ステーション、すなわちイエロー(Y)の画像形成ステーション32,マゼンタ(M)の画像形成ステーション33,シアン(C)の画像形成ステーション34,ブラック(Bk)の画像形成ステーション35が配設されている。イエローの画像形成ステーション32は、感光ドラム36と、感光ドラム36の周囲にその回転方向(矢印方向)に沿って配設された、帯電装置37、露光装置38、現像装置40、1次転写ローラ41、ドラムクリーナ42等を有している。感光ドラム36は矢印方向に所定のプロセススピードで回転駆動される。感光ドラム36の表面(外周面)は、帯電装置37によって所定の極性・電位に一様(均一)に帯電された後、パーソナルコンピュータ(不図示)等から送られてきた画像情報に基づく露光装置38の露光によって露光部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像装置40によって現像剤中のトナーが付着されてトナー像として現像される。なお、本実施形態では、現像剤は、トナーとキャリヤとを主成分とする2成分現像剤が使用されている。
上述のようにして感光ドラム36の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31に転写される。中間転写ベルト31は、駆動ローラ43と従動ローラ44とに張架されており、駆動ローラ43の矢印方向の回転によって矢印R31方向に回転する。感光ドラム36上に形成されたイエローのトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ41により、中間転写ベルト31上に1次転写される。トナー像の1次転写後に感光ドラム36の表面に残ったトナー(1次転写残トナー)は、ドラムクリーナ42によって除去される。
残りの3色(シアン,マゼンタ,ブラック)の画像形成ステーション33,34,35も上述のイエローの画像形成ステーション32と同様の構成であり、これらの画像形成ステーション33,34,35の感光ドラム36の表面にも同様にして、シアン,マゼンタ,ブラックの各色のトナー像が形成され、中間転写ベルト31上に順次に1次転写される。こうして、4色のトナー像は、中間転写ベルト31上で重ね合わされる。これら中間転写ベルト31上の4色のトナー像は、後述するシート搬送部24によって搬送されるシートに、2次転写部T2において、2次転写ローラ45によって一括で2次転写される。トナー像の2次転写後に中間転写ベルト31の表面に残ったトナー(2次転写残トナー)は、従動ローラ44の近傍に配置されたベルトクリーナ46によって除去される。画像形成部22の上方には、トナー補給部23が設けられている。
トナー補給部23には、各色のトナーをそれぞれ個別に収納した4つのトナーコンテナ、すなわちイエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナーコンテナ47,48,50,51が配設されている。上述の各色の画像形成ステーション32〜35の現像装置40には、現像剤の残量を検知するための残量センサ(不図示)が配設されていて、この残量センサが、現像装置40内の現像剤量が所定値よりも少なくなったことを検知したときに、各色のトナーコンテナ47,48,50,51から各色の現像装置40にトナーが補給されるようになっている。トナー補給部23の上方には、排紙トレイ10が設けてある。
排紙トレイ10は、画像形成装置本体2の上面を覆うように形成されていて、前後方向の中間部は、後端側が上方に位置するように傾斜しており、後端側はこの中間部に連続するように平らに形成されている。この排紙トレイ10の上面のシート積載面8には、次に説明するシート搬送部24のシート排出口55から後方に向かって排出されたシートが積載される。
シート搬送部24は、本実施形態においては、画像形成装置本体2の前側と前面カバー3との間に設けられていて、下方から上方に向かうシートをガイドするシート搬送路52と、このシート搬送路52よりも前側に配設されて、上方から下方に向かうシートをガイドするシート再搬送路53とを有しており、さらに、手差し給送部54を有している。なお、本実施形態においては、シート再搬送路53は、後述する前面カバー3の開放によって直接開放されるシート搬送路ということになる。これに対し、シート搬送路52は、前面カバー3の開放により、後述の搬送ユニット73を介して間接的に開放されるシート搬送路ということになる。
シート搬送路52は、上述の給送ローラ28の近傍から上方に立ち上がり、後方に凸状にゆるく湾曲しながら上方に延び、中間転写ベルト31の近傍で、湾曲方向を前方に変えて上方に延び、後方に向けて斜め上方に延びて、シート排出口55に至る。シート搬送路52は、相互に対面する後側ガイド52aと前側ガイド52bとによって構成されており、前側ガイド52bの一部が後述する搬送ユニット73に形成されている。シート搬送路52には、下方から順に、ピックアップローラ27、給送ローラ28、リタードローラ30、搬送ローラ対56、レジストローラ対57、上述の中間転写ベルト31を駆動ローラ43との間に挟みこむ2次転写ローラ45、定着装置(定着部)58、搬送ローラ対60、切り換えフラッパ61、排紙ローラ対62等が配設されている。上述の定着装置58は、ヒータ(不図示)を内蔵した定着ローラ(定着部材)63とこれに圧接されて定着ニップNを構成する加圧ローラ(加圧部材)64とを有している。
上述の給紙カセット25からピックアップローラ27、給送ローラ28、リタードローラ30によって1枚だけ給送されたシートは、搬送ローラ対56、レジストローラ対57によって搬送され、2次転写部T2において、中間転写ベルト31上の4色のトナー像が一括で2次転写され、定着ニップNを通過する際に加熱・加圧されて表面にトナー像が定着される。トナー像定着後のシートは、搬送ローラ対60によって切り換えフラッパ61の下面にガイドされて排紙ローラ対62に搬送され、排紙ローラ対62によって、背面側を向いたシート排出口55から後方に向けて排出されて、排紙トレイ10のシート積載面8上に積載させる。なお、同図では、排紙ローラ対62のすぐ下流側に配置された排紙センサのセンサフラグ65が、排出中のシートPによって動作している状態を示している。
シート再搬送路53は、上述のシート排出口55の少し上から前側に向かって傾斜して延び、緩やかに湾曲しながら、急勾配で後側に傾斜して延び、下端部において下方に凸状に湾曲しながら、上述のシート搬送路52に合流する。シート再搬送路53は相互に対面する後側ガイド53aと前側ガイド(ガイド部)53bとによって構成されている。後側ガイド53aの一部は、後述する搬送ユニット73に形成されている。また、前側ガイド53bは、そのほとんどが外装パネル11の内側(後端側)に組み込まれて、外装パネル11とともに前面カバー3を構成している。シート再搬送路53には、シートの再搬送時に上流側となる上方から順に、反転ローラ対66、切り換えフラッパ61、第1,第2,第3,第4の再搬送ローラ対67,68,70,71が配設されている。
シートの両面に画像を形成する場合には、切り換えフラッパ61が二点鎖線で示す位置に切り換えられ、表面にトナー像が定着されたシートは、搬送ローラ対60に搬送されて、切り換えフラッパ61の上面に沿って搬送され、さらに反転ローラ対66によって後方に向けて搬送される。そして、シートの後端が搬送ローラ対60を抜けて、反転ローラ対66を抜ける前に反転ローラ対66が逆回転され、第1〜第4の再搬送ローラ対67,68,70,71によって下方に搬送され、シート搬送路52に搬送される。そして、シートはその裏面に、表面のときと同じようにしてトナー像が転写され、定着され、シート排出口55から後方に向けて排出されて、排紙トレイ10のシート積載面8に積載される。なお、シート搬送部24における搬送ローラ対56のすぐ前側には、手差し給送ローラ72が配設されていて、閉鎖状態においては前面カバー3の一部を構成する手差しトレイ16が引き出され、この手差しトレイ16上にセットされたシートを、搬送ローラ対56側に向けて給紙するようになっている。
上述のシート搬送部24においては、その一部が開閉可能な搬送ユニット73を構成している。搬送ユニット73は、シート搬送路52とシート再搬送路53との間に配置されていて、シート搬送路52における前側ガイド52bの一部と、シート再搬送路53における後側ガイド53aの一部と、レジストローラ対57の一方のローラ57a、2次転写ローラ45、第3,第4の再搬送ローラ対70,71のそれぞれの一方のローラ70a,71aとが一体に組み込まれて構成されている。この搬送ユニット73は、下端側に揺動中心を有していて、画像形成装置本体2によって開閉自在に支持されている。搬送ユニット73は、後述するように、前面カバー3が開放されることにより、上端側が前側に開放されて、シート搬送路52の一部及びシート再搬送路53の一部を開放するようになっている。
以上で、画像形成装置1の内部の構造についての説明を終える。
次に、図4,図5を参照して、前面カバー3について説明する。このうち、図4は、上述のように画像形成装置本体2から取り外した状態の前面カバー3を示す斜視図である。また、図5(a),(b)は、前面カバー3及び搬送ユニット73の開閉動作を説明する図であり、(a)は前面カバー3及び搬送ユニット73がそれぞれ閉鎖位置A1,B1に配置された状態を示し、(b)は前面カバー3及び搬送ユニット27がそれぞれ開放位置A2,B2に配置された状態を示している。
図4に示すように、前面カバー3は、下端に揺動中心78を有していて、この揺動中心78が画像形成装置本体2によって揺動自在に支持されている。画像形成装置本体2は、図5(a),(b)に示すように、板金製の本体フレーム6のうちの、左側板76及び右側板77を、前側に延ばして上述の前面カバー3の左側面及び右側面の一部及び搬送ユニット73の左側面及び右側面を覆うようになっている。これら左側板76及び右側板77の前端側の下端には軸79が突設されていて、上述の前面カバー3の揺動中心78は、この軸79によって揺動自在に支持されている。これにより、前面カバー3は、図5(a)に示す閉鎖位置A1と、図5(b)に示す開放位置A2とをとることができる。上述の搬送ユニット73も、下端側に揺動中心(不図示)を有していて、画像形成装置本体2側の左側板76及び右側板77から突設された軸(不図示)によって揺動自在に支持されている。これにより、搬送ユニット73は、図5(a)に示す閉鎖位置B1と図5(b)に示す開放位置B2とをとることができる。
本実施形態では、この搬送ユニット73は、操作者が特に積極的に開閉動作を行う必要がなく、前面カバー3の開閉動作に連動して開閉されるようになっている。すなわち、操作者が画像形成装置1の正面に位置して、操作レバー74(図2参照)のボタン75を手前側に引くことにより、前面カバー3を画像形成装置本体2に固定しているフック(不図示)が解除されて、前面カバー3の開放が可能となる。そして、前面カバー3を開放すると、これに伴って搬送ユニット73も開放される。一方、前面カバー3を閉鎖して、上述のフックを画像形成装置本体2に係合させると、搬送ユニット73も閉鎖される。なお、前面カバー3及び搬送ユニット73は、画像形成装置本体2側に設けられたストッパ,ばね等によって、図5(b)に示すように、適度な傾斜姿勢を保持した状態でとまるようになっている。前面カバー3及び搬送ユニット73が開放された場合には、シート搬送路52及びシート再搬送路53は大きく開放されるため、ジャム紙の除去を簡単に行うことができる。
さらに、本発明においては、定着装置(定着部)58をほぼ前面側から覆っている定着カバー81が、前面カバー3の開放動作に連動して開放され、また前面カバー3の閉鎖動作に連動して閉鎖されるように構成されている。以下、この点について図6〜図11を参照して詳述する。なお、後述するように、本実施形態では、前面カバー3と定着カバー81との間に定着カバー開閉機構82が介装されていて、両者の間に連動関係を設定するようになっているが、この定着カバー開閉機構82は、定着装置58における加圧ローラ64のニップ圧を解除するニップ圧解除機構としても作用するものである。
図8,図9に示すように、本実施形態では、定着装置58(ただし、同図においては、定着カバー81で覆われていて見えない。)は、定着ユニット80に組み込まれており、図6に示すように、定着ユニット80として、画像形成装置本体2における搬送ユニット73の上方に組み込まれている。
定着ユニット80は、図8,図9に示すように、左に配置された左側壁80aと右に配置された右側壁80bとこれらを左右に連結する連結部80cとを有していて、上述の定着ローラ63及び加圧ローラ64は、左側壁80a及び右側壁80bによって回転可能に支持されている。左側壁80aと右側壁80bとの間には、加圧ローラ64の前側にガイド面53cが固定的に配設されている。ガイド面53cは、左側壁80aと右側壁80bとの間のほぼ全幅にわたって左右方向に長く形成されるとともに、上端側が後方に位置するように傾斜している。ガイド面53cには、ほぼ上下方向を向いたガイドリブ53c1が左右方向に多数配設されている。このガイド面53cは、図6に示すように、シート再搬送路53の後側ガイド53aの一部を構成している。
定着カバー81は、ガイド面53cの上方に配設されている。定着カバー81は、左側壁80aと右側壁80bとの間のほぼ全幅にわたって左右方向に長く形成されていて、その軸81bが左側壁80a及び右側壁80bによって揺動自在に支持されている。定着カバー81は、図8に示す閉位置C1と図9に示す開位置C2との間で揺動可能である。定着カバー81における、加圧ローラ64に対向する裏面側とは逆の表面側(図8,図9中に図示されている面)にはガイド面53dが形成されている。このガイド面53dは、定着カバー53が図8に示す閉位置C1に配置されたときには、上述のガイド面53cに連続して、後側ガイド53aの一部を構成するようになっている。ガイド面53dにも、ガイド面53cと同様、多数のガイドリブ53d1が突設されている。定着カバー81が開位置C2に配置された場合には、上述のガイド面53cの上端53eと、定着カバー81の下端81aとの間に間隙Gが形成され、この間隙Gを介して内側の定着装置58が覗けるようになっている。つまり、定着装置58におけるジャムの状況、例えば、ジャム紙の有無や、ジャムの程度等を確認することができるようになっている。
定着カバー81の開閉は、定着カバー81と上述の前面カバー3との間に介装された定着カバー開閉機構82によって行われる。図10,図11を参照して、定着カバー開閉機構82について説明する。ここで、図10は、図8に示す定着ユニット80の右側壁80b近傍を示す拡大図であり、図11は、図9に示す定着ユニット80の右側壁80b近傍を示す拡大図である。ただし、これらの図においては、定着カバー開閉機構82の一部を覆っているガイド面53c等の部材は、説明の便宜上、適宜図示を省略している。
定着カバー開閉機構82は、レバー84と、このレバー84と一体の軸85と、この軸85に固定されたカム部材86と、右側壁80bによって揺動可能に支持された加圧ローラ押圧アーム87と、この加圧ローラ押圧アーム87に係合されたL字形部材88と、これら加圧ローラ押圧アーム87及び上述のカム部材86に係合されたロッド91と、このロッド91とL字形部材88との間に介装された圧縮ばね92と、ロッド91の下端側が係合される保持部材90とを有している。また、定着カバー81の裏面側には、上述のカム部材86に対応する位置にカムフォロア83が突設されていて、このカムフォロア83には、後述するカム部材86のカム面86aに摺動する倣い面83aが形成されている。
また、上述の前面カバー3には、図12,図13に示すように、開閉動作に伴って、上述のレバー84に係脱する係合凹部3aが形成されている。係合凹部3aは、前面カバー3の左側壁及び右側壁(不図示)からそれぞれ内側に向けて突出されて、上述のレバー84のボス84aに対応する位置に配置されている。係合凹部3aは、下方に向けて開口するように形成されていて、後側には開放時当接面3bを有し、前側には閉鎖時当接面3cを有している。開放時当接面3bは、図12に示すように、前面カバー3が閉鎖位置A1に配置された状態においては、下端側が前側に位置するように傾斜されている。これにより、前面カバー3は、レバー84が第1の位置D1に配置されたときには、後述するようにこのレバー84によって付勢されて閉鎖位置A1に付勢状態で配置されるようになっている。一方、閉鎖時当接面3cは、図12に示すように、前面カバー3が閉鎖位置A1に配置された状態においては、ほぼ垂直に配置されていて、上下方向の寸法は、上述の開放時当接面3bのほぼ2倍となっている。レバー84は、図12に示すように、前面カバー3が矢印R3a方向に開放されると、ボス84aが前面カバー3側の開放時当接面3bに押されてほぼ同方向に回転し、前面カバー3が完全に開放される前に、開放動作の途中で、開放時当接面3bから外れる。一方、図13に示すように、レバー84は、前面カバー3が開放位置A2(図5(b)参照)から矢印R3b方向に閉鎖される際に、閉鎖動作の途中で、ボス84aが閉鎖時当接面3cに当接され、さらに押されることでほぼ同方向に回転し、図12に示す第1の位置D1に配置される。
本実施形態においては、定着カバー開閉機構82は、上述のカムフォロア83、レバー84、軸85、カム部材86、加圧ローラ押圧アーム87、L字形部材88、保持部材90、ロッド91、圧縮ばね92、そして前面カバー3の係合凹部3aによって構成されている。なお、これら定着カバー開閉機構82を構成する構成要素のうち、軸85以外の各構成要素は、同様のものが定着ユニット80の左側壁80a側にも配設されているが、同様の構成及び作用であるので説明は省略する。上述の軸85は、右側壁80b側のレバー84と左側壁80a側のレバー84とを連結している。
レバー84は、左側壁80a及び右側壁80bによって回動自在に支持された軸85の端部に固定されて、図10に示す第1の位置D1と図11に示す第2の位置D2との間で揺動することができる。このときの揺動動作は、図8,図9に示す、左側壁80a及び右側壁80bのガイド溝80dによってガイドされる。レバー84には、先端側(軸85から遠い側)に外側に向けてボス84aが突出されている。このボス84aは、前面カバー3が開閉される際に、前面カバー3の係合凹部3aによって係脱されるものである。なお、本実施形態においては、レバー84は、操作者が手動によって操作するのではなく、操作者が前面カバー3を開閉する動作に連動して、操作されるようになっている。これにより、操作者はテコの原理で、レバー84を間接的に力で操作することができる。
軸85は、左側壁80a及び右側壁80bによって回動自在に支持されるとともに、左端側のレバー84と右端側のレバー84とを連結している。この軸85の中心がレバー84の揺動中心となる。
カム部材86は、軸85における端部近傍、つまりレバー84のすぐ内側に配設されている。カム部材86は、図11に示すように、その一部に後述のカムフォロア83側の倣い面83aに摺擦するカム面86aを有しており、また、図10に示すように端部には、ほぼ円板状の二股部86bを有している。この二股部86bには、左右方向にピン(不図示)が貫通されており、このピンの中間は、二股部86bに挿入された、後述のロッド91の挿入部91cを貫通している。カム部材86は、図10に示すレバー84の第1の位置D1に対応して待機位置E1に配置され、また、図11に示すようにレバー84の第2の位置D2に対応して動作位置E2に配置される。カム部材86は、この動作位置E2においては、カム面86aが上述の定着カバー81のカムフォロア83の倣い面83aを右方に押し上げる。これにより、揺動自在な定着カバー81の下端81aを持ち上げて、図9に示すように、ガイド面53aの上端53eと定着カバー81の下端81aとの間にギャップGを形成している。このギャップGの上下方向の寸法は、カム部材86やカムフォロア83の形状や大きさを変更することで、所望の大きさに設定することが可能である。また、図11に示すように、定着カバー81は、その開位置C2においては、カム部材86に対してカムフォロア83を介して乗っかった状態を保持しているので、例えば、操作者が下端81aを持って持ち上げることで、間隙Gをさらに大きく開口させることができる。このため、定着装置58におけるジャム紙を容易に発見することができるとともに、ジャム紙の除去作業が容易となる。なお、前面カバー3の開放動作に連動して、定着カバー81が開位置C2に配置された際に、間隙Gが大きすぎる場合には、この間隙Gを介して操作者が不用意に高温の定着装置58に手を入れるおそれがある。これを防止するためには、例えば、前面カバー3の開放動作に連動して開口される間隙Gを小さく設定しておき、その後、必要に応じて、操作者が意図的に手動で定着カバー81を開放して間隙Gを大きくするようにしてもよい。
加圧ローラ押圧アーム87は、後端側に、右側壁80bによって揺動自在に支持された軸(不図示)を有し、中間部には加圧ローラ64の軸を定着ローラ63に向けて押圧する押圧部(不図示)を有し、前端側には、後述のL字形部材88が引っかけられる係合溝87aを有している。この係合溝87aは、後述するL字形部材88の板厚よりも少し広く形成されていて、この係合溝87aに係合されたL字形部材88が適度に揺動することができるようになっている。加圧ローラ押圧アーム87は、前端側が下降されると中間部が加圧ローラ64を定着ローラ63に押圧して所定のニップ圧を確保し、逆に前端側が上昇されると中間部がニップ圧を解除するようになっている。
L字形部材88は、垂直部分に、上述の加圧ローラ押圧アーム87の係合溝87aが係合されるスリット88aを有し、水平部分に、後述のロッド91が上下方向に貫通する透孔88bを有している。この透孔88bは、前後方向に適度な余裕をもって形成されていて、貫通されたロッド91が適度に前後方向に移動することができるようになっている。L字形部材88は、スリット88aの上端を基準にして、後述のロッド91の動きに応じて、ほぼ前後方向に適度に揺動できるようになっている。
保持部材90は、右側壁80bの一部が内側に屈曲されてほぼ水平に形成されたものである。保持部材90は、L字形部材88の下方に位置していて、上述のロッド91の下端側が上下方向に貫通する透孔90aが形成されている。この透孔90aは、上述のL字形部材88の透孔88bと同様、前後方向に適度な余裕をもって形成されていて、貫通されたロッド91が適度に前後方向に移動することができるようになっている。この保持部材90は、ロッド91の下端側の前後方向の移動を緩く規制するための部材である。
ロッド91は棒状のロッド本体91aと、このロッド本体91aの上端に形成されてロッド本体91aよりも面積の大きいフランジ部91bと、このフランジ部91bの上面に突設されたほぼ円板状の挿入部91cとを有している。ロッド91は、ロッド本体91aの下端側が上述の保持部材90及びL字形部材88のそれぞれの透孔90a,88bに貫通され、上端側の挿入部91cが上述のカム部材86の二股部86bの間に挿入されてピンによって保持されている。ロッド91は、カム部材86の二股部86bに対して揺動自在となっている。すなわち、軸85の回転に伴ってカム部材86が回転すると、ロッド91は、そのフランジ部91bが、ほぼ円板状の二股部86bの外周縁に倣うようにして移動することができる。
圧縮ばね92は、ロッド91のフランジ部91bとL字形部材88の水平部分との間に介装されている。これにより、圧縮ばね92は、ロッド91に対してL字形部材88をほぼ下方に押し下げることで、加圧ローラ押圧アーム87を下方に押し下げている。また、見方を変えると、圧縮ばね92は、L字形部材88に対してロッド91を押し上げることで、二股部86bを介してカム部材86を押し上げている。図10に示すレバー84の第1の位置D1及び定着カバー81の閉位置C1においては、圧縮ばね92がロッド91を介して、カム部材86の二股部86bに作用する力は、その作用線F1がレバー84の揺動中心である軸85の中心よりも前側を通る。これによりレバー84には、矢印a方向のモーメントが作用する。一方、図11に示すレバー84の第2の位置D2及び定着カバー81の開位置C2においては、圧縮ばね92がロッド91を介して、カム部材86の二股部86bに作用する力は、その作用線F2がレバー84の揺動中心である軸85の中心よりも後側を通る。そして、圧縮ばね92が伸びた状態で、レバー84は、図11に示す開位置D2に保持されるようになっている。なお、本実施形態では、上述のように、レバー84は、閉位置C1に配置されたときには、圧縮ばね91によって閉じる方向に付勢された状態にある。このため、この閉位置C1に配置されたレバー84は、係合凹部3aを介してこれに係合されている前面カバー3を閉鎖位置A1に保持するように作用する。
上述の画像形成装置1において、定着カバー81は、定着カバー開閉機構82により、前面カバー3の開閉動作に連動して以下のように開閉され、及び定着ニップ圧の解除及び発生が行われる。
シートPに対して画像を形成する際には、前面カバー3は、図5(a)に示す閉鎖位置A1に配置される。このとき、搬送ユニット73は閉鎖位置B1に、レバー84は第1の位置D1に、定着カバー81は閉位置C1に配置される。この状態では、圧縮ばね92に付勢された加圧ローラ押圧アーム87により加圧ローラ64が定着ローラ63に圧接されて両者間に定着ニップNが形成される。また、圧縮ばね92に付勢されたカム部材86が待機位置E1に配置されることで、レバー84が第1の位置に保持され、定着カバー81が閉位置C1に保持される。
ここで、ジャム等が発生した場合、ジャム紙を除去するために前面カバー3を図5(a)中の矢印R3a方向に開放する。この前面カバー3の開放動作に伴って、搬送ユニット73が開放位置B2に開放され、前面カバー3の係合凹部3aに係合しているレバー84が図10に示す第1の位置D1から図11に示す第2の位置D2に揺動される。このレバー84の揺動により、軸85と一体のカム部材86が回転して、カム面86aが倣い面83aに摺動してカムフォロア83を上方に持ち上げ、定着カバー81を開位置C2に配置する。これにより、ガイド面53aの上端53eと定着カバー81の下端81aとの間に間隙Gが形成される。この間隙Gを介して、定着装置58の内部を視認することができ、ジャム紙を除去することができる。ここで、間隙Gが形成されるのと並行して、カム部材86の回転により、圧縮ばね91が伸びるため、加圧ローラ押圧アーム87により、加圧ローラ64のニップ圧が解除される。
ジャム紙の除去が終了して、前面カバー3を図5(b)中の矢印R3b方向に移動させて、図5(a)中に示す閉鎖位置A1に配置する。これにより、前面カバー3に押されて搬送ユニット73が閉鎖位置B1に配置され、図10に示すように、レバー84が第1の位置D1に、カム部材86が待機位置E1に、定着カバー81が閉位置C1に配置されて間隙Gが閉じられる。これに並行して、圧縮ばね92が短縮されて、L字形部材88を介して、加圧ローラ押圧アーム87の係合溝87a側が強く下方に引かれて、加圧ローラ押圧アーム87の中間部が加圧ローラ64の軸を定着ローラ63に向けて付勢する。これにより、定着ローラ63の表面に加圧ローラ64が押圧されて、定着ニップが構成される。そして、次のシートに対する画像形成が可能となる。
以上の説明では、定着カバー開閉機構82が、定着装置58における加圧ローラ64のニップ圧を解除するニップ圧解除機構としても作用する場合について説明したが、定着カバー開閉機構82が、単に、前面カバー3の開閉動作に連動して、定着カバー81を開閉するものである場合には、上述の定着カバー開閉機構82の構成要素のうち、前面カバー3の係合凹部3a、定着カバー81側のカムフォロア83、レバー84、軸85、カム部材86を有していれば、定着カバー81を開閉するための機構を構成することが可能である。ただし、上述の実施形態のように、定着カバー開閉機構82とニップ圧解除機構とを兼用することにより、両機構で複数の部材を共用することができ、その分、構成を簡略化することができる。
1……画像形成装置、2……画像形成装置本体、3……前面カバー、22……画像形成部、24……シート搬送部、52……シート搬送路、53……シート再搬送路、58……定着装置(定着部)、63……定着ローラ(定着部材)、64加圧ローラ(加圧部材)、78……前面カバーの揺動中心、81……定着カバー、81a……定着カバーの下端、81b……軸(定着カバーの揺動中心)、82……定着カバー開閉機構(ニップ圧解除機構)、83……カムフォロア、84……レバー、86……カム部材、A1……前面カバーの閉鎖位置、A2……前面カバーの開放位置、D1……レバーの第1の位置、D2……レバーの第2の位置、N……定着ニップ、P……シート