JP4987288B2 - テトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法 - Google Patents

テトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、テトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類を工業的に容易に、収率よく製造する方法に関する。
さらに詳しくは、本発明は、テトラシクロドデセンカルボン酸を出発原料とし、液相中、シリカアルミナ系固体酸触媒の存在下でイソブチレンと反応させて、テトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステルを製造する方法に関する。
テトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類、例えばテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステルは高集積回路用、特にArFエキシマレーザー等の真空紫外領域の露光に好適なレジスト用樹脂原料として近年注目されてきている。従来、テトラシクロドデセンカルボン酸と3級アルコールとのエステル化反応は、1級又は2級アルコールとのエステル化反応の場合に通常用いられる酸塩基触媒によるエステル化方法では、反応が容易に進まない。その為、いくつかの製造方法が提案されている。例えば、5−カルボキシ−5−カルボキシメチル−2−ノルボルネンを濃硫酸等の鉱酸を触媒とし、イソブテンを反応させて5−t−ブトキシカルボニル−5−t−ブトキシカルボニルメチル−2−ノルボルネンを得ている(特開2001−354631号公報)。本発明者らは、この製法に関し、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸とイソブテンを酸触媒下に反応させると、目的物も得られるがそれ以外の高分子体も多く副生し、更に、反応率が低いことにも起因して、高純度品を得るための精製が煩雑で、収率も低いことがわかった。
また、メトキシカルボニルテトラシクロドデセンとt−ブトキシカリウムを合成ゼオライトの存在下にエステル交換反応させてt−ブトキシカルボニルテトラシクロドデセンを得ている(特開2002−114739号公報)。更には、テトラシクロドデセン−3−カルボン酸にt−ブタノールとp−トルエンスルホニルクロライドを反応させ、エステル交換させて、テトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルを得ている(特開2002−138067号公報)。しかしながら、上記した従来の方法は、いずれも、原料が高価、収率が低い、精製工程が煩雑等それぞれに問題点があり、工業的製法としては改良が望まれている。
特開2001−354631号公報 特開2002−114739号公報 特開2002−138067号公報
従って、本発明は、テトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステルの製造の困難性における上述したような状況に鑑み、テトラシクロドデセンカルボン酸とイソブチレンを原料とし、工業的に実施容易な製造条件において、高収率、高純度のテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、下記一般式(1)
Figure 0004987288
一般式(1)
(式中、R2は水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はカルボキシル基を表し、R、R3は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R4、R5は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、n、mは0、1又は2を示し、n、mが2である場合、R4又はR5はそれぞれ同一であっても違っていても良い。)
で表されるテトラシクロドデセンカルボン酸類をシリカアルミナ系固体酸触媒の存在下でイソブチレンと反応させることを特徴とする、一般式(2)
Figure 0004987288
一般式(2)
(式中、R、R〜R及びm、nは一般式1と同じであり、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はt−ブトキシカルボニル基を表す。)
で表されるテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法が提供される。
本発明の製造方法によれば、出発原料として、製造の容易なテトラシクロドデセンカルボン酸と汎用工業製品である安価なイソブチレンを用い、また、触媒として、硫酸などの酸と比べて腐食性の少ないシリカアルミナ系固体酸触媒を用いて反応させることにより、反応が進みにくい3級アルキルエステル化の反応時間が短く、副生物の高分子体の生成も極めて少なく、しかも目的のテトラシクロドデセンカルボン酸t-ブチルエステルを高選択率、高収率で製造することができ、また、目的物の精製も容易である。
更に、硫酸などの酸と比べて腐食性の少ない固体酸触媒を使用するので、ステンレス製の反応容器も使用することができる。
本発明の製造方法において、目的物であるテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類は、下記一般式(2)で表される。
Figure 0004987288
一般式(2)
(式中、R、R〜R及びm、nは一般式1と同じであり、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はt−ブトキシカルボニル基を表す。)
上記一般式(2)で表される、テトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルにおいて、R1及びR3は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はt−ブトキシカルボニル基を表し、炭素原子数1〜6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の直鎖状ないし分岐鎖状のアルキル基であり、また、R4、R5は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基等の直鎖状ないし分岐鎖状のアルキル基である。これらのうち、R〜Rは水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、R、Rはメチル基が、またn、mが0又は1が好ましい。特にR及びRが水素原子又はメチル基で、且つ、Rが水素原子、n、mが0のものが好ましい。
従って、上記一般式(2)で表されるテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルとしては、具体的には、例えば、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物A)、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−4−メチル−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物B)、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−4−n−プロピル−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物C)、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−メチル−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物D)、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−4−イソプロピル−3−メチル−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物E)、
4,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物F)、
5,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物G)、
2,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物H)、
11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物I)、
4,8,10−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物J)、
2,4,10−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル(化合物K)、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3,4−ジカルボン酸t−ブチルジエステル(化合物L)、
Figure 0004987288
(化合物A) (化合物B) (化合物C)
Figure 0004987288
(化合物D) (化合物E) (化合物F)
Figure 0004987288
(化合物G) (化合物H) (化合物I)
Figure 0004987288
(化合物J) (化合物K) (化合物L)
等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、下記一般式(1)で示されるテトラシクロドデセンカルボン酸類を出発原料とし、シリカアルミナ系固体酸触媒の存在下でイソブチレンと反応させて、目的とするテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類を得る。
Figure 0004987288
一般式(1)
(式中、R2は水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はカルボキシル基を表し、R、R3は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R4、R5は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、n、mは0、1又は2を示し、n、mが2である場合、R4又はR5はそれぞれ同一であっても違っていても良い。)
下記にテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸とイソブチレンの反応式を例示する。
Figure 0004987288
(反応式)
本発明の製造方法においては、上記一般式(1)で表されるカルボン酸とイソブチレンを、アルミニウム及びけい素の酸化物からなるシリカアルミナ系固体酸触媒の存在下に、液相において反応させることによって副生物の高分子体の生成を防いで、高い反応選択率で、テトラシクロドデセン環に結合したカルボン酸の3級アルキルエステルであるt−ブチルエステルを得ることができる。
出発原料の上記一般式(1)で示されるテトラシクロドデセンカルボン酸類において、式中の、R及びR、並びにR、R、n、mは、前述した一般式(2)の具体的記載と同じで、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はカルボキシル基を表す。
また、化合物の例示は、前述した一般式(2)の化合物に対応したカルボン酸化合物を例示することができ、具体的には、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−4−メチル−3−カルボン酸、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−4−n−プロピル−3−カルボン酸、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−メチル−3−カルボン酸、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−4−イソプロピル−3−メチル−3−カルボン酸、
4,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸、
5,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸、
2,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸、
11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸、
4,8,10−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸、
2,4,10−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3,4−ジカルボン酸、
等を挙げることが出来る。
このような本発明の出発原料であるテトラシクロドデセンカルボン酸は、公知の方法により、容易に製造することが出来る。例えば、シクロペンタジエンとアクリル酸メチル類のディールス・アルダー反応に得られたメトキシカルボニル置換ノルボルネン類とシクロペンタジエン類のディールス・アルダー反応により、メトキシカルボニル置換テトラシクロドデセン類を得、これを加水分解することにより製造することができる。
本発明において用いられるシリカアルミナ系固体酸触媒としては、アルミニウム及びけい素の酸化物を主成分とする固体酸であればよく、特に限定はないが、具体的には、白土触媒、シリカアルミナ触媒、アルミノケイ酸塩触媒、ゼオライト触媒等を挙げることができる。白土触媒としては、酸性白土、活性白土、例えば、有機合成化学協会誌53(5)、392(1995)に記載のようなルイス酸性白土等が挙げられる。また、白土の種類は特に限定されないが、モンモリロナイト、カオリナイト、サポナイト、ハイデライト、ノントロナイトなどが挙げられる。
これらのうち、反応速度、反応選択率及び収率が良好な点で白土触媒、シリカアルミナ触媒が好ましく、より好ましくは白土触媒であり、白土触媒の内では、活性白土が好ましく、乾燥した活性白土がさらに好ましい。
また、白土触媒を用いる場合は、白土に対して0.1〜30wt%程度のリン酸を併用しても良い。
シリカアルミナ系固体酸触媒の使用量としては、原料のテトラシクロドデセンカルボン酸類に対して、通常、乾燥重量で1〜50wt%の範囲、好ましくは5〜30wt%の範囲である。
シリカアルミナ系固体酸触媒の形状については、粉状、微粒子状、顆粒状など特に制限はなく、また、反応方法に応じて、流動床、固定床などに適した形状を、適宜選択することが出来る。また、反応はバッチ方式でも連続方式であってもよい。例えば、バッチ式の液相懸濁反応方法の場合は、反応活性の点で、触媒の形状は、通常、粉状又は微粒子状が好ましい。
本発明の製造方法において、原料のテトラシクロドデセンカルボン酸に対するイソブチレンのモル比は(イソブチレン/カルボン酸)、通常、テトラシクロドデセンモノカルボン酸の場合は1/1〜100/1の範囲、好ましくは5/1〜30/1の範囲、さらに好ましくは5/1〜15/1の範囲であり、テトラシクロドデセンジカルボン酸の場合は、2/1〜200/1の範囲、好ましくは10/1〜60/1の範囲、さらに好ましくは10/1〜30/1の範囲である。
反応は、原料のテトラシクロドデセンカルボン酸が固体状である理由で、通常、液相において行われる。
反応に際して、溶媒の添加は、加圧条件下でイソブチレン自体が液状であれば、それ自体溶媒となるので必ずしも必要ではない。しかしながら、一般式(1)で表される原料のテトラシクロドデセンカルボン酸は、高融点の結晶又は固体で得られるものが多く、原料の仕込みモル比が小さく、従って、イソブチレンが少ない場合は、原料カルボン酸がほとんど溶解せず、撹拌も困難であるので、溶媒が必要である。また、工業的に製造するには溶媒を使用する方が好ましい。
このような溶媒としては、本発明の製造方法における3級エステル化反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、n-ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素などが挙げられる。これらのなかでも、反応性が低く、原料カルボン酸に対する溶解性が高く、また工業的に安価な点でトルエン、キシレン、エチルベンゼン、ベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒を使用する場合、その使用量としては、反応液相が、反応温度に於いて原料を溶解し、白土等のシリカアルミナ系固体酸触媒を必要充分に懸濁撹拌できればよく、必要以上に多くても不経済である。従って、通常、原料のテトラシクロドデセンカルボン酸に対して0.5〜10重量倍の範囲、好ましくは1〜5重量倍の範囲、より好ましくは2〜4重量倍の範囲で用いられる。
本発明の製造方法において、エステル化反応の温度は、通常、0〜100℃の範囲、選択率が高く、反応速度も比較的速い理由で、好ましくは10〜60℃の範囲、より好ましくは30〜50℃の範囲である。
反応圧力は、特に制限はないが、上記好適温度条件で反応を行えば、原料イソブチレンの圧で反応容器内は加圧になり、通常、その圧力は0.4MPa程度以下である。
このような反応条件の下では、反応は、通常、例えば、活性白土触媒を用いた場合は1〜10時間程度、酸性白土触媒、シリカアルミナ触媒を用いた場合は10〜30時間程度で終了する。また、反応の終点は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析などにより確認することができる。
本発明の製造方法において、反応は、バッチ方式でも、連続方式でもよく、また、固体酸触媒の供給方式も流動床でも固定床でもよい。バッチ方式の場合は、例えば、反応容器に、原料のテトラシクロドデセンカルボン酸、白土等の固体酸触媒及び溶媒を仕込み、反応容器内を不活性ガスで置換した後、温度を30℃程度以下に保ちながら、懸濁状態を維持しつつ、撹拌下に、イソブチレンを反応容器内に導入し、その後、40℃程度で反応を行う。
反応収率は、通常、30〜100%程度である。反応終了後の反応混合物は、例えば、白土等の固体酸触媒をフィルターなどで濾別し、一方、未反応の原料カルボン酸はアルカリ水溶液で油層より抽出する。濾別した白土等の固体酸触媒は反応に再利用できる。抽出の際、反応溶媒に水層と分離し難いものを使用している場合には、必要に応じてトルエンなどの水層と分離しやすく目的物を溶解する溶剤を添加することにより目的物を含んだ油層を分離することができる。このようにして得られた目的物を含んだ油層は、必要に応じて更に水洗し、アルカリを除去した後、蒸留等で溶媒や水などの低沸点分を留去し、留出残分として、目的のテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステルを得ることができる。さらに必要に応じて、得られた留出残分を精密蒸留することにより目的物の高純度品を留出成分として得ることができる。
容量lLのステンレス製オートクレーブに、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸100.0g(0.489モル)、乾燥活性白土触媒15.0g(水澤化学工業(製):商品名ガレオンアースNV)、トルエン300gを仕込み、容器内を窒素置換した後、温度30℃以下に保ちながら、撹拌下にイソブチレン274.0g(4.88モル)をオートクレーブに導入した。その後、温度を40℃に昇温し、0.39〜0.32MPaの圧力で撹拌下に4時間反応をおこなった。
反応終了後の反応液を高速液体クロマトグラフィー(以下HPLC)で分析したところ、原料のカルボン酸反応率は89.8%、目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの存在収率は76.9%であった。さらにゲル浸透クロマトグラフィー(以下GPC)で分析したところ溶媒及びイソブチレンを除いた原料のカルボン酸及び目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの合計組成値は94.61%、副生物の高分子量体は4.17%であった。
反応終了後、得られた反応混合物を常温まで冷却した後、触媒を濾別した。得られたろ液に16%水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、未反応のカルボン酸を水層に抽出し、その後、水層を分液した。得られた油層に水を加えて撹拌し油層を水洗した後、水層を分液した。この操作を分液した水層が中性になるまで続けた。
その後、油層の溶媒を留去し、更に、得られた残留液を4〜5mmHg、内温131〜137℃の条件で単蒸留することによってHPLCによる純度が99.5%、ガスクロマトグラフィ−による純度が98.2%である透明液体のテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸−t−ブチルエステル77.6gを得た。
得られた透明液体は1H−NMRで構造分析し目的物であることを確認した。製品収率(対仕込みカルボン酸)は60.5%であった。
容量1Lのステンレス製オートクレーブにテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸50.0g(0.245モル)、シリカアルミナ触媒(日揮化学株式会社製、型番N633L)7.5g、トルエン150gを仕込み、容器内を窒素置換した後、温度30℃以下に保ちながら、撹拌下にイソブチレン137.0g(2.45モル)をオートクレーブに導入した。その後、温度を40℃に昇温し、0.32〜0.30MPaの圧力で撹拌下に4時間反応をおこなった。
反応終了後の反応液をHPLCで分析したところ原料のカルボン酸反応率が34.6%、目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの存在収率が25.9%であった。
さらにGPCで分析したところ、溶媒及びイソブチレンを除いた原料のカルボン酸及び目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの合計組成値が99.59%、副生物の高分子量体が0.40%であった。
(比較例1)
実施例1において触媒の白土を硫酸に替えた以外は実施例1と同様にして反応を行った。
反応終了後、得られた反応液をHPLCで分析したところ、原料のカルボン酸反応率は74.1%であり、目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの存在収率は61.8%であった。さらにGPCで分析したところ溶媒及びイソブチレンを除いた原料のカルボン酸及び目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの合計組成値は71.43%で、副生物の高分子量体は27.15%であった。
(比較例2)
実施例1において触媒の白土をp−トルエンスルホン酸に替えた以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応終了後、得られた反応液をHPLCで析したところ原料のカルボン酸反応率は30.8%で、目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの存在収率は21.3%であった。さらにGPCで分析したところ溶媒及びイソブチレンを除いた原料のカルボン酸及び目的物のテトラシクロドデセンカルボン酸−t−ブチルエステルの合計組成値は96.19%、副生物の高分子量体は3.80%であった。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表されるテトラシクロドデセンカルボン酸類をシリカアルミナ系固体酸触媒の存在下でイソブチレンと反応させることによる、下記一般式(2)で表されるテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法。
    Figure 0004987288
    一般式(1)
    (式中、R2は水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はカルボキシル基を表し、R、R3は水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R4、R5は炭素原子数1〜3のアルキル基を表し、n、mは0、1又は2を示し、n、mが2である場合、R4又はR5はそれぞれ同一であっても違っていても良い。)
    Figure 0004987288
    一般式(2)
    (式中、R、R〜R及びm、nは一般式1と同じであり、Rは水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基又はt−ブトキシカルボニル基を表す。)
  2. シリカアルミナ系固体酸触媒が白土触媒であることを特徴とする請求項1記載のテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法。
  3. シリカアルミナ系固体酸触媒がシリカアルミナ触媒であることを特徴とする請求項1に記載のテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法。
  4. テトラシクロドデセンカルボン酸がテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]ドデカ−8−エン−3−カルボン酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のテトラシクロドデセンカルボン酸t−ブチルエステル類の製造方法。
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